排液バッグ
【課題】排液が泡として排液バッグの上部を伝って水封部に流入することを防止する排液バッグを提供する。
【解決手段】排液を貯留するための排液槽12と、排液槽12の上部に形成され排液を流入させる流入口14と、排液槽12の上部に対して下部で連結された水封槽16と、水封槽16の上部に形成され負圧源に連通する吸引口18とを含んで構成される排液バッグ10において、排液槽12の上部と前記水封槽16の下部とを連結する連結管32を備えるようにし、連結管32内の上部に、消泡剤を含有する消泡剤担体20を配置する。
【解決手段】排液を貯留するための排液槽12と、排液槽12の上部に形成され排液を流入させる流入口14と、排液槽12の上部に対して下部で連結された水封槽16と、水封槽16の上部に形成され負圧源に連通する吸引口18とを含んで構成される排液バッグ10において、排液槽12の上部と前記水封槽16の下部とを連結する連結管32を備えるようにし、連結管32内の上部に、消泡剤を含有する消泡剤担体20を配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用の排液バッグに関し、特に低圧吸引排出装置に用いられる排液バッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、患者の体腔内において滲出し続ける血液等の体液を体腔内から除去する場合など、この体液を採集するために用いられる排液バッグが知られている。このような排液バッグには体液流入用の流入孔が設けられており、この孔は患者の体腔に挿入されたカテーテルに接続するようになっている。患者側で発生した体液はカテーテルを通って流入孔に入り排液バッグ内に導かれるようになっている。
【0003】
また、この排液バッグには吸引用のガス出口孔が設けられており、この孔は外部の負圧源に連通するようになっている。排液バッグと体液通路内とを減圧することにより、体腔内の体液を吸引して、積極的に体液を排液バッグ内に溜めるようになっている。排液バッグには、患者側の方が吸引圧よりも強い陰圧になったときに、気体が患者体内に逆流するのを防ぐための水封部が設けられており、排液バッグのガス出口孔には、排液バッグ内の排液等が負圧源に入り込まないようにオーバーフロー防止弁が通常設けられる。
【0004】
ここで、例えば特許文献1には、排液バッグ内面や排液の流通路を消泡剤で被覆して、排液とともに吸引した泡を消泡剤の化学作用で消滅させることにより、泡が水封部に入り込まないようにすることが提案されている。
【0005】
さらに、こうした排液バッグには、例えば特許文献2に開示されるように、水封部と集液部の上部とを連結する細管部が設けられ、この細管部の上部は拡幅されてウォータートラップとして機能する水留め室が形成されるようになっている。そして、この水留め室の細管部側の流通口と水留め室の集液部側の流通口とを結ぶ線上にほぼ直交するように邪魔板部が形成され、水封部の液が細管部を遡って集液部側に向かって逆流するのを防止するようになっている。
【特許文献1】特開2002−369879号公報
【特許文献2】実開昭62−107843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記した従来の排液バッグにおいては、排液が排液バッグに直接流れ込むような構造となっているため、この排液に泡状の吸引物が混入されていて、術後排液等の吸引中に、この泡状の吸引物がバッグ内に吸引されると、排液槽の容量が一杯になる前に、この泡状の吸引物が排液槽に滴下せずに排液槽の上部を伝わって水封部に流れ込むことがあった。
【0007】
そして、水封部に連行された泡が水封部の陰圧側の液槽に混入して液面が泡状となることによって水封部の見かけ上の液位が上昇し、吸引口に設けられたオーバーフロー防止弁がこの泡によって閉塞して吸引口からの吸引を停止させることがあった。その一方で、この泡が吸引口から負圧源の吸引器に流入すると汚染の原因となることもある。
【0008】
さらに、上記の特許文献1記載の排液バッグでは、排液バッグ内面や排液の流通路を消泡剤で被覆する構成を採用しているが、被覆される表面積が限定されることから消泡剤が不足しがちになるとともに、消泡剤と泡が十分に接触せず、期待した消泡作用を発揮できないおそれがあった。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、水封部での泡の発生を防止することにより、オーバーフロー防止弁が吸引停止する誤作動を防止するとともに、吸引口に接続された器械に対する汚染の発生を防止する排液バッグを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る排液バッグでは、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
本発明は、排液を貯留するための排液槽と、前記排液槽の上部に形成され排液を流入させる流入口と、前記排液槽の上部に対して下部で連結された水封槽と、前記水封槽の上部に形成され負圧源に連通する吸引口とを含んで構成される排液バッグにおいて、前記排液槽の上部と前記水封槽の下部とを連結する連結管を備え、前記連結管内の上部には、消泡剤を含有する消泡剤担体が配置されることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、排液槽の上部を伝って連結管に入り込んだ排液の泡状物は、連結管内の上部に配置された消泡剤担体の消泡剤の化学的作用によって消泡されて液化する。そして、この液中には消泡剤が含まれることとなるので、液体として連結管を流下して水封部に入り込んでも、水封部には泡が立たない。
【0012】
また、本発明によれば、流入口に接続された患者の体腔が一時的に高陰圧となることによって水封部の液を逆流させるような圧力が働く場合においても、連結管内の上部に配置された消泡剤担体が従来技術における邪魔板部のように機能するので、水封部の液が排水槽に向かって逆流することを妨げる。このため、流入口側が一時的な高陰圧となった場合に、連結管を遡って逆流する水封部の液は、消泡剤担体に跳ね返されることで進入を妨げられ、排液槽に入り込まない。
【0013】
また、本発明に係る他の排液バッグは、上記において、前記消泡剤担体は、多孔質材料に消泡剤を含ませて形成されることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、スポンジ材、不織布、紙、ろ過膜のようなフィルター、焼結体などの多孔質材料の多数の微小な孔内に、消泡剤を含ませることができるので、消泡剤を長時間保持させることができるとともに泡と消泡剤との接触面積を大きく確保することができる。しかも、このような多孔質材料によって消泡剤担体が形成されていることにより、上述のように流入口側が一時的な高陰圧となった場合にも水封部の液の逆流を一層確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、排液に含まれる泡状の吸引物は、少なくとも連結管内の上部で消泡されて液状になる。このため、流入口から入り込んだ泡が排液バッグの上部を伝って連結管に流入しても、泡は連結管内の上部に設けられた消泡剤担体で消泡されて液化することができる。そして、この液中には消泡剤が含まれることとなるので、連結管を流下しても水封部に泡立ちが生じないので、水封槽内の水封部における泡立ちを防止することができる。
【0016】
また、流入口側が一時的な高陰圧となった場合に、水封部から連結管を逆流した液は、消泡剤担体に跳ね返されることによって進入を妨げられるので、水封部の液が排液槽に入り込むのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に図面を用いて、本発明に係る排液バッグの実施の形態につき詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る排液バッグ10の一例を示す正面図であり、図2は、排液バッグ10の縦断面図である。
【0018】
排液バッグ10は、患者の肺臓などの手術後、創部からの排液を吸引して貯留するために用いられる。この排液バッグ10は、図1に示すように、患者の体腔内で発生した排液を貯留するための排液槽12と、排液槽12の上部に形成され、外部から排液を流入させる流入口14と、排液槽12の上部に対して下部で連結された水封槽16と、水封槽16の上部に形成され、外部の負圧源(不図示)に連通する吸引口18とを含んで一体的に構成されている。
【0019】
この排液バッグ10は、図1に示すように、排液槽12に溜まった排液の液位や、水封槽16内の水封水の液位が外部から観測できるように透明な材質で形成されており、特に、負圧がかかっても変形して排液バッグ10内の容積が変化しないように透明な硬質プラスチック製が用いられる。このようなプラスチックとして、例えば、ポリカーボネート、ポリスルホン、アクリル樹脂、ポリスチレン、スチレン・ブタジエン樹脂を用いることができる。また、排液バッグ10の壁面には、各槽に溜まった液量を示すための目盛りが付されている。
【0020】
排液槽12は、図2に示すように、流入口14直下に設けられる第一排液槽24と、上下方向に延びた仕切り壁26により区画されて第一排液槽24に隣接して設けられる第二排液槽28とから構成されている。
仕切り壁26の上側は開口しており、第一排液槽24と第二排液槽28の上部は連通状態となっている。また、第二排液槽28の上部の第一排液槽24と隣接しない側には、横方向に向かって延びる連通孔30が設けられる。
連通孔30は、第二排液槽28に隣接して設けられて上下方向に延びた連結管32の上部と連通している。連結管32は、その下端で水封槽16の下部に連結している。
【0021】
連結管32の上部の一部は、拡幅されて略直方体状の水溜室36が形成されるようになっている。そして、この水溜室36内には、消泡剤を含有する消泡剤担体20が固定収容されている。
消泡剤担体20は、略直方体状を有し、少なくとも水溜室36の連結管32側の下部流通口38と、水溜室36の第二排液槽28側の連通孔30の流通口40とを結ぶ線上に配置されることで、流通口40と下部流通口38との間を移動する液が消泡剤担体20に接触することなく流動することがないようになっている。
消泡剤担体20としては、例えばスポンジ材、不織布、紙、ろ過膜のようなフィルター、焼結体などの多孔質材料に消泡剤を含ませた構造体を用いることができる。
【0022】
上記構成の動作を説明する。
排液に伴って吸引された泡状物は、流入口14から入り込んで、第一排液槽24と第二排液槽28の上部23を伝って連通孔30の入口に向かって略水平方向に移動する。
そして泡状物は、連通孔30に入ってこれを通り抜け、流通口40から水溜室36に入り込む。
水溜室36に入り込んだ泡状物は、水溜室36内に配置された消泡剤担体20に接触することで、消泡剤担体20に含有される消泡剤の化学的作用により消泡されて液化する。そして、この液化した排液は、下部流通口38から出て連結管32を流下し、水封部34に入り込む。ここで、この液化された排液中には消泡剤が含まれているので、この液が連結管32を流下し、水封部34に入り込んでも、水封部34には泡が立たない。
【0023】
このように、消泡剤担体20を、連結管32の上部の水溜室36内に設けることで、排液槽12から水溜室36に入り込んだ泡状の吸引物を、少なくとも連結管32内の上部で消泡し液化することができ、この液中に消泡剤を含ませることができる。
このため、流入口14から入り込んだ泡が排液バッグ10の上部を伝って連結管32に流入しても、泡は連結管32内の上部の水溜室36内に設けられた消泡剤担体20で消泡されて液化され、液中に消泡剤を含んだ液状物として連結管32を流下するので、水封槽16内の水封部34に泡が入り込むことを防止するとともに、水封部34で泡が発生することを防止することができる。
【0024】
次に、患者の体腔が一時的に高陰圧となる場合の動作について説明する。
患者の体腔が一時的に高陰圧となると、排液バッグ10の内部には、流入口14を介して水封部34の液を排液槽12に向かって逆流させるような圧力が一時的に働くようになり、水封部34の液は連結管32を上向きに遡って排液槽12側へ移動しようとする。
この場合、連結管32を遡って逆流する水封部34の液は、連結管32の上部の水溜室36内に配置された消泡剤担体20に当たって跳ね返されるので、排液槽12へ進入することができない。このため、患者の体腔が一時的に高陰圧となっても、水封部34の液は排液槽12へ入り込まない。
このように、消泡剤担体20が従来の邪魔板の役割を果たすように機能することで、患者の体腔が一時的に高陰圧となる場合における水封部34の液の逆流を防止することができる。
【0025】
本発明で用いる消泡剤としては、排液の発泡を防止するために医療用機器表面等への被覆に通常用いられる消泡剤を用いることができ、特に限定されるものではないが、例えばシリコーン系の消泡剤を用いるようにしてもよい。
【0026】
以上のように、本発明に係る排液バッグ10は、排液に含まれる泡状の吸引物は、少なくとも水封槽16の上流側に連結された連結管32の上部の水溜室36内で消泡されて液状になる。
このため、流入口14から入り込んだ泡が排液バッグ10の上部23を伝って連通孔30に入り込んでも、泡は水溜室36内に設けられた消泡剤担体20で消泡されて液化して連結管32を流下し、消泡剤を含みながら水封槽16内の水封部34に流入するので、水封槽16内の水封部34における泡立ちを防止することができる。
【0027】
このように、本発明に係る排液バッグ10は、水封槽16の上流側に連結された連結管32の上部の水溜室36内で消泡することができるとともに、水封部34には消泡剤が溶け込むことになるので水封部34での泡の発生をなくすことができる。このため、本発明に係る排液バッグ10では、吸引口18に設けられたオーバーフロー防止弁(不図示)が水封槽16内を上昇する泡を検知しないので誤作動するおそれがなく、泡が負圧源の吸引器(不図示)に流入しないので吸引器を汚染することがない。
【0028】
また、本発明に係る排液バッグ10は、スポンジ材、不織布、紙、ろ過膜のようなフィルター、焼結体などの多孔質材料の多数の微小な孔内に、消泡剤を含ませることができるので、消泡剤を長時間保持させることができるとともに泡と消泡剤との接触面積を大きく確保することができる。しかも、このような多孔質材料によって消泡剤担体が形成されていることにより、上記したように流入口側が一時的な高陰圧となった場合にも水封部の液の逆流を一層確実に防止することができる。
【0029】
なお、上述した実施の形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせあるいは動作手順等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施形態に係る排液バッグ10の一例を示す正面図である。
【図2】排液バッグ10の縦断面図である。
【符号の説明】
【0031】
10…排液バッグ
12…排液槽
14…流入口
16…水封槽
18…吸引口
20…消泡剤担体
32…連結管
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用の排液バッグに関し、特に低圧吸引排出装置に用いられる排液バッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、患者の体腔内において滲出し続ける血液等の体液を体腔内から除去する場合など、この体液を採集するために用いられる排液バッグが知られている。このような排液バッグには体液流入用の流入孔が設けられており、この孔は患者の体腔に挿入されたカテーテルに接続するようになっている。患者側で発生した体液はカテーテルを通って流入孔に入り排液バッグ内に導かれるようになっている。
【0003】
また、この排液バッグには吸引用のガス出口孔が設けられており、この孔は外部の負圧源に連通するようになっている。排液バッグと体液通路内とを減圧することにより、体腔内の体液を吸引して、積極的に体液を排液バッグ内に溜めるようになっている。排液バッグには、患者側の方が吸引圧よりも強い陰圧になったときに、気体が患者体内に逆流するのを防ぐための水封部が設けられており、排液バッグのガス出口孔には、排液バッグ内の排液等が負圧源に入り込まないようにオーバーフロー防止弁が通常設けられる。
【0004】
ここで、例えば特許文献1には、排液バッグ内面や排液の流通路を消泡剤で被覆して、排液とともに吸引した泡を消泡剤の化学作用で消滅させることにより、泡が水封部に入り込まないようにすることが提案されている。
【0005】
さらに、こうした排液バッグには、例えば特許文献2に開示されるように、水封部と集液部の上部とを連結する細管部が設けられ、この細管部の上部は拡幅されてウォータートラップとして機能する水留め室が形成されるようになっている。そして、この水留め室の細管部側の流通口と水留め室の集液部側の流通口とを結ぶ線上にほぼ直交するように邪魔板部が形成され、水封部の液が細管部を遡って集液部側に向かって逆流するのを防止するようになっている。
【特許文献1】特開2002−369879号公報
【特許文献2】実開昭62−107843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記した従来の排液バッグにおいては、排液が排液バッグに直接流れ込むような構造となっているため、この排液に泡状の吸引物が混入されていて、術後排液等の吸引中に、この泡状の吸引物がバッグ内に吸引されると、排液槽の容量が一杯になる前に、この泡状の吸引物が排液槽に滴下せずに排液槽の上部を伝わって水封部に流れ込むことがあった。
【0007】
そして、水封部に連行された泡が水封部の陰圧側の液槽に混入して液面が泡状となることによって水封部の見かけ上の液位が上昇し、吸引口に設けられたオーバーフロー防止弁がこの泡によって閉塞して吸引口からの吸引を停止させることがあった。その一方で、この泡が吸引口から負圧源の吸引器に流入すると汚染の原因となることもある。
【0008】
さらに、上記の特許文献1記載の排液バッグでは、排液バッグ内面や排液の流通路を消泡剤で被覆する構成を採用しているが、被覆される表面積が限定されることから消泡剤が不足しがちになるとともに、消泡剤と泡が十分に接触せず、期待した消泡作用を発揮できないおそれがあった。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、水封部での泡の発生を防止することにより、オーバーフロー防止弁が吸引停止する誤作動を防止するとともに、吸引口に接続された器械に対する汚染の発生を防止する排液バッグを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る排液バッグでは、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
本発明は、排液を貯留するための排液槽と、前記排液槽の上部に形成され排液を流入させる流入口と、前記排液槽の上部に対して下部で連結された水封槽と、前記水封槽の上部に形成され負圧源に連通する吸引口とを含んで構成される排液バッグにおいて、前記排液槽の上部と前記水封槽の下部とを連結する連結管を備え、前記連結管内の上部には、消泡剤を含有する消泡剤担体が配置されることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、排液槽の上部を伝って連結管に入り込んだ排液の泡状物は、連結管内の上部に配置された消泡剤担体の消泡剤の化学的作用によって消泡されて液化する。そして、この液中には消泡剤が含まれることとなるので、液体として連結管を流下して水封部に入り込んでも、水封部には泡が立たない。
【0012】
また、本発明によれば、流入口に接続された患者の体腔が一時的に高陰圧となることによって水封部の液を逆流させるような圧力が働く場合においても、連結管内の上部に配置された消泡剤担体が従来技術における邪魔板部のように機能するので、水封部の液が排水槽に向かって逆流することを妨げる。このため、流入口側が一時的な高陰圧となった場合に、連結管を遡って逆流する水封部の液は、消泡剤担体に跳ね返されることで進入を妨げられ、排液槽に入り込まない。
【0013】
また、本発明に係る他の排液バッグは、上記において、前記消泡剤担体は、多孔質材料に消泡剤を含ませて形成されることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、スポンジ材、不織布、紙、ろ過膜のようなフィルター、焼結体などの多孔質材料の多数の微小な孔内に、消泡剤を含ませることができるので、消泡剤を長時間保持させることができるとともに泡と消泡剤との接触面積を大きく確保することができる。しかも、このような多孔質材料によって消泡剤担体が形成されていることにより、上述のように流入口側が一時的な高陰圧となった場合にも水封部の液の逆流を一層確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、排液に含まれる泡状の吸引物は、少なくとも連結管内の上部で消泡されて液状になる。このため、流入口から入り込んだ泡が排液バッグの上部を伝って連結管に流入しても、泡は連結管内の上部に設けられた消泡剤担体で消泡されて液化することができる。そして、この液中には消泡剤が含まれることとなるので、連結管を流下しても水封部に泡立ちが生じないので、水封槽内の水封部における泡立ちを防止することができる。
【0016】
また、流入口側が一時的な高陰圧となった場合に、水封部から連結管を逆流した液は、消泡剤担体に跳ね返されることによって進入を妨げられるので、水封部の液が排液槽に入り込むのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に図面を用いて、本発明に係る排液バッグの実施の形態につき詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る排液バッグ10の一例を示す正面図であり、図2は、排液バッグ10の縦断面図である。
【0018】
排液バッグ10は、患者の肺臓などの手術後、創部からの排液を吸引して貯留するために用いられる。この排液バッグ10は、図1に示すように、患者の体腔内で発生した排液を貯留するための排液槽12と、排液槽12の上部に形成され、外部から排液を流入させる流入口14と、排液槽12の上部に対して下部で連結された水封槽16と、水封槽16の上部に形成され、外部の負圧源(不図示)に連通する吸引口18とを含んで一体的に構成されている。
【0019】
この排液バッグ10は、図1に示すように、排液槽12に溜まった排液の液位や、水封槽16内の水封水の液位が外部から観測できるように透明な材質で形成されており、特に、負圧がかかっても変形して排液バッグ10内の容積が変化しないように透明な硬質プラスチック製が用いられる。このようなプラスチックとして、例えば、ポリカーボネート、ポリスルホン、アクリル樹脂、ポリスチレン、スチレン・ブタジエン樹脂を用いることができる。また、排液バッグ10の壁面には、各槽に溜まった液量を示すための目盛りが付されている。
【0020】
排液槽12は、図2に示すように、流入口14直下に設けられる第一排液槽24と、上下方向に延びた仕切り壁26により区画されて第一排液槽24に隣接して設けられる第二排液槽28とから構成されている。
仕切り壁26の上側は開口しており、第一排液槽24と第二排液槽28の上部は連通状態となっている。また、第二排液槽28の上部の第一排液槽24と隣接しない側には、横方向に向かって延びる連通孔30が設けられる。
連通孔30は、第二排液槽28に隣接して設けられて上下方向に延びた連結管32の上部と連通している。連結管32は、その下端で水封槽16の下部に連結している。
【0021】
連結管32の上部の一部は、拡幅されて略直方体状の水溜室36が形成されるようになっている。そして、この水溜室36内には、消泡剤を含有する消泡剤担体20が固定収容されている。
消泡剤担体20は、略直方体状を有し、少なくとも水溜室36の連結管32側の下部流通口38と、水溜室36の第二排液槽28側の連通孔30の流通口40とを結ぶ線上に配置されることで、流通口40と下部流通口38との間を移動する液が消泡剤担体20に接触することなく流動することがないようになっている。
消泡剤担体20としては、例えばスポンジ材、不織布、紙、ろ過膜のようなフィルター、焼結体などの多孔質材料に消泡剤を含ませた構造体を用いることができる。
【0022】
上記構成の動作を説明する。
排液に伴って吸引された泡状物は、流入口14から入り込んで、第一排液槽24と第二排液槽28の上部23を伝って連通孔30の入口に向かって略水平方向に移動する。
そして泡状物は、連通孔30に入ってこれを通り抜け、流通口40から水溜室36に入り込む。
水溜室36に入り込んだ泡状物は、水溜室36内に配置された消泡剤担体20に接触することで、消泡剤担体20に含有される消泡剤の化学的作用により消泡されて液化する。そして、この液化した排液は、下部流通口38から出て連結管32を流下し、水封部34に入り込む。ここで、この液化された排液中には消泡剤が含まれているので、この液が連結管32を流下し、水封部34に入り込んでも、水封部34には泡が立たない。
【0023】
このように、消泡剤担体20を、連結管32の上部の水溜室36内に設けることで、排液槽12から水溜室36に入り込んだ泡状の吸引物を、少なくとも連結管32内の上部で消泡し液化することができ、この液中に消泡剤を含ませることができる。
このため、流入口14から入り込んだ泡が排液バッグ10の上部を伝って連結管32に流入しても、泡は連結管32内の上部の水溜室36内に設けられた消泡剤担体20で消泡されて液化され、液中に消泡剤を含んだ液状物として連結管32を流下するので、水封槽16内の水封部34に泡が入り込むことを防止するとともに、水封部34で泡が発生することを防止することができる。
【0024】
次に、患者の体腔が一時的に高陰圧となる場合の動作について説明する。
患者の体腔が一時的に高陰圧となると、排液バッグ10の内部には、流入口14を介して水封部34の液を排液槽12に向かって逆流させるような圧力が一時的に働くようになり、水封部34の液は連結管32を上向きに遡って排液槽12側へ移動しようとする。
この場合、連結管32を遡って逆流する水封部34の液は、連結管32の上部の水溜室36内に配置された消泡剤担体20に当たって跳ね返されるので、排液槽12へ進入することができない。このため、患者の体腔が一時的に高陰圧となっても、水封部34の液は排液槽12へ入り込まない。
このように、消泡剤担体20が従来の邪魔板の役割を果たすように機能することで、患者の体腔が一時的に高陰圧となる場合における水封部34の液の逆流を防止することができる。
【0025】
本発明で用いる消泡剤としては、排液の発泡を防止するために医療用機器表面等への被覆に通常用いられる消泡剤を用いることができ、特に限定されるものではないが、例えばシリコーン系の消泡剤を用いるようにしてもよい。
【0026】
以上のように、本発明に係る排液バッグ10は、排液に含まれる泡状の吸引物は、少なくとも水封槽16の上流側に連結された連結管32の上部の水溜室36内で消泡されて液状になる。
このため、流入口14から入り込んだ泡が排液バッグ10の上部23を伝って連通孔30に入り込んでも、泡は水溜室36内に設けられた消泡剤担体20で消泡されて液化して連結管32を流下し、消泡剤を含みながら水封槽16内の水封部34に流入するので、水封槽16内の水封部34における泡立ちを防止することができる。
【0027】
このように、本発明に係る排液バッグ10は、水封槽16の上流側に連結された連結管32の上部の水溜室36内で消泡することができるとともに、水封部34には消泡剤が溶け込むことになるので水封部34での泡の発生をなくすことができる。このため、本発明に係る排液バッグ10では、吸引口18に設けられたオーバーフロー防止弁(不図示)が水封槽16内を上昇する泡を検知しないので誤作動するおそれがなく、泡が負圧源の吸引器(不図示)に流入しないので吸引器を汚染することがない。
【0028】
また、本発明に係る排液バッグ10は、スポンジ材、不織布、紙、ろ過膜のようなフィルター、焼結体などの多孔質材料の多数の微小な孔内に、消泡剤を含ませることができるので、消泡剤を長時間保持させることができるとともに泡と消泡剤との接触面積を大きく確保することができる。しかも、このような多孔質材料によって消泡剤担体が形成されていることにより、上記したように流入口側が一時的な高陰圧となった場合にも水封部の液の逆流を一層確実に防止することができる。
【0029】
なお、上述した実施の形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせあるいは動作手順等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施形態に係る排液バッグ10の一例を示す正面図である。
【図2】排液バッグ10の縦断面図である。
【符号の説明】
【0031】
10…排液バッグ
12…排液槽
14…流入口
16…水封槽
18…吸引口
20…消泡剤担体
32…連結管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排液を貯留するための排液槽と、
前記排液槽の上部に形成され排液を流入させる流入口と、
前記排液槽の上部に対して下部で連結された水封槽と、
前記水封槽の上部に形成され負圧源に連通する吸引口とを含んで構成される排液バッグにおいて、
前記排液槽の上部と前記水封槽の下部とを連結する連結管を備え、
前記連結管内の上部には、消泡剤を含有する消泡剤担体が配置されること
を特徴とする排液バッグ。
【請求項2】
前記消泡剤担体は、多孔質材料に消泡剤を含ませて形成されること
を特徴とする請求項1に記載の排液バッグ。
【請求項1】
排液を貯留するための排液槽と、
前記排液槽の上部に形成され排液を流入させる流入口と、
前記排液槽の上部に対して下部で連結された水封槽と、
前記水封槽の上部に形成され負圧源に連通する吸引口とを含んで構成される排液バッグにおいて、
前記排液槽の上部と前記水封槽の下部とを連結する連結管を備え、
前記連結管内の上部には、消泡剤を含有する消泡剤担体が配置されること
を特徴とする排液バッグ。
【請求項2】
前記消泡剤担体は、多孔質材料に消泡剤を含ませて形成されること
を特徴とする請求項1に記載の排液バッグ。
【図1】
【図2】
【図2】
【公開番号】特開2008−284141(P2008−284141A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131570(P2007−131570)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(000200677)泉工医科工業株式会社 (56)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(000200677)泉工医科工業株式会社 (56)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]