説明

排煙処理装置

【課題】粘性の高い物質の除去効率が高く、且つ長時間の連続運転が可能な排煙処理装置を提供する。
【解決手段】外筒10と、外筒10内で回転する回転構造体20とを備え、回転構造体20内に導入される排煙から液分を分離して該液分を生成燃料貯蔵タンク200に貯蔵する排煙処理装置100であって、外筒10は、排煙を導入する排煙導入管11と、排煙から分離されたガスを排出するガス排出管13と、生成燃料貯蔵タンク200に接続されて排煙から分離された液分を排出する液分排出管14と、が接続されている。回転構造体20は、内部に排煙が流入し延在方向を軸として回転し、内表面から外表面を貫通する放散口21aが複数形成された回転式排煙導入管21と、回転式排煙導入管21の周囲に配設され液分が衝突すると共に液分が外周方向に透過する充填材23と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排煙処理装置に係り、特に粘性の高い物質の除去効率が高く、長時間の連続運転が可能な排煙処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造工場、化学工場等の各種工場や、焼却設備、各種の反応装置等から排出される煙には有機物が含まれており、適切な処理が必要である。このような有機物を含む排煙は、タール状物質が主成分となっている場合が多く、その他、ミスト状に分散したヒューム(微粒子)、オイル(液分)等の粘性物質が含まれている。
【0003】
したがって、排煙中のタール状物質や、その他の物質を除去する方法が種々検討されている。そして従来の排煙処理は主に、比重の違いを利用した遠心分離による方式、バグフィルタ等のフィルタによる方式、電気的吸引力による方式、ウォーターシャワー、ミスト等の水洗方式、液体に微小気泡として放出し吸着する方式、溶剤を発泡しその中を通過させる吸着方式、活性炭等による吸着方式、触媒による分解方式のいずれかの方式を用いたものであった。
【0004】
たとえば、特許文献1では、外筒と、その内側に同心円状に配設された内筒と、内筒の上方に、案内羽根を備えた円錐ドラムが配設されたミスト除去装置が開示されている。そして、円錐ドラムが回転することにより、外筒上部から流入した排ガスは外筒と内筒の間の空間において螺旋運動をしながら移動し、遠心力を受ける。その結果、比重の大きいミストを外筒の内壁に沿って集めることができ、排ガスからミストを分離することができる。
【0005】
また特許文献2では、筒体の下方から排煙を導入し、筒体内の軸方向に沿って筒体内を排煙が移動し、軸方向に対して略垂直に配設された回転フィルタによって排煙中の液分及び粉塵を捕捉する技術が開示されている。
この構成により、回転フィルタに捕捉された液分及び粉塵は、回転フィルタの回転により得られる遠心力によって筒体の内周面に飛ばされ、自重により下方に流下する。
【0006】
さらに、特許文献3では、導電性の外筒内に配設された導電性の内筒の内部に排ガスを導入し、内筒内で排ガスを旋回させることにより排ガス中の未燃焼物質を内筒に付着させて分離する技術が開示されている。そして、外筒と内筒との間で間欠的に電圧を印加することにより、内筒内に導入された排ガス中の未燃焼物質を外筒に静電吸着させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2595193号公報
【特許文献2】特許第3803402号公報
【特許文献3】特許第4288492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1において開示された技術では、外筒上部から導入された排ガスが螺旋運動をするため、排ガス中に含まれる微粒子や液分が外筒内壁に捕集され、排ガスを洗浄する構成が開示されている。また、外筒の内周壁にはスリットが設けられており、微粒子を外筒の外へ排出することができる。
【0009】
しかしながら、特許文献1の技術は、排ガスがひとたび外筒の内周面に達すると、その排ガスは再度回転の中心軸付近に戻ることができないため、排ガス中に含まれる粘性物質の濾過処理効果が低いという問題点がある。
【0010】
また、排煙は、炉内に流入した空気、及び燃焼反応によって生成した混合ガスの中に、熱分解反応によって生成した微小粒子が混在している状態にあると一般に考えられている。したがって排ガス中の微粒子が極めて小さい場合や、微粒子が極めて大量に含まれている場合、特許文献1に開示されたミスト除去装置の構成を適用すると、粘性物質の除去率を高めるため、装置を大型化する必要があるという問題点がある。
【0011】
さらに、特許文献1の技術では粘着状物質の粘性が高く、特に排ガス中の微粒子が大量に含まれている場合、外筒の内周壁に設けられたスリットが極めて短時間で塞がってしまうという不都合もある。
【0012】
また、特許文献2では、回転フィルタによって捕捉された液分及び粉塵を、回転フィルタを軸芯方向(上下方向)に振動させて払い落とす構成が示されているが、回転フィルタを上下動するための構成が複雑であると共に、タール等の極めて粘性が高い液分を払い落とすのが困難であるという問題点があった。
【0013】
さらに、特許文献2に開示された技術では、筒体の下方から排煙を導入し、回転フィルタで排ガス中の液分及び粉塵を捕捉する際、排煙の一部が筒体と回転フィルタとの間に入り込み、逆流するのを防ぐためにラビリンスシールが設けられているが、その構成が複雑である。
したがって、特許文献2に開示された技術は、装置構成が複雑であるとともに、粘性が高いタールを捕捉する際、回転フィルタから払い落とすことが難しく、耐久性が低下し、連続して運転可能な時間が短くなるという問題点があった。
【0014】
特許文献3では、気流による遠心力によって排ガス内の未燃焼物質を内筒に付着させ、外筒と内筒の間に電圧を印加することにより、外筒に未燃焼物質を静電吸着させて除去する技術が開示されている。
【0015】
タール等の粘性の高い液分は、粘着力が高く、固化し易いという性質を備えているため、付着後直ちに除去する必要がある。しかし、特許文献3に開示された技術において、間欠的に電圧を印加しただけでは内筒から効果的に未燃焼物質を除去することが難しく、除去効率が低い。その結果、長時間安定して稼働させることが難しいという問題点があった。
【0016】
また、外筒と内筒の間に電圧を印加する構成が開示されているが、未燃焼物質を除去するためには高圧電源が必要となり、費用が嵩むという問題点があった。さらに、電圧を印加する構成であるため、絶縁が極めて重要であり、排煙のような水分の多いガスに使用することは難しいという問題点があった。
【0017】
本発明の目的は、タール状等の粘性の高い物質を多く含む排煙を処理する際に、粘性の高い物質の除去効率を高く維持すると共に、長時間の連続運転が可能な排煙処理装置を提供することにある。また、排煙中に存在する可燃性成分を回収し、燃料の回収が可能な排煙処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前記課題は、請求項1の排煙処理装置によれば、外筒と、該外筒内で回転する回転構造体とを備え、該回転構造体内に導入される排煙から液分を分離する排煙処理装置であって、前記外筒は、前記排煙を導入する排煙導入管と、前記排煙から分離されたガスを排出するガス排出管と、前記排煙から分離された液分を排出する液分排出管と、が接続され、前記回転構造体は、内部に前記排煙が流入し延在方向を軸として回転すると共に内表面から外表面を貫通する放散口が複数形成された回転式排煙導入管と、該回転式排煙導入管の周囲に配設され前記液分が衝突すると共に前記液分を外周方向に透過させる充填材と、を有すること、により解決される。
【0019】
本発明の排煙処理装置において、回転式排煙導入管の内部に排煙を流入させ、回転式排煙導入管の延在方向を軸として回転構造体を回転させることにより、放散口から排煙及び排煙中に含まれる微粒子や液分が飛散する。このとき、比重の重い微粒子や液分は遠心力を受けて外周方向に飛散しやすくなる。そして、排煙に含まれる微粒子や液分の中でも、粘着性が高いものは回転式排煙導入管の周囲に配設された充填材に衝突すると共に、その粘着性に起因して互いに凝集する。充填材によって凝集した液分は、遠心力を受けて充填材の内部を外周方向に移動し、充填材を透過して外周方向に飛散する。
このように、排煙から分離された液分は、液滴の粒径が大きいほど、外筒の壁面をつたって下方に流下しやすくなる。したがって、排煙から分離された液分は充填材内部を通過する過程でその粒径が増大し、外筒の内壁をつたって流下し、外筒底部に蓄積する。この底部に蓄積した液分を液分排出管で抜き取ることにより液分が燃料として回収される。そして、液分が連続的に排出されることにより、本発明の排煙処理装置は長時間連続して運転することができる。
【0020】
このとき、請求項2のように、前記外筒の内壁と前記充填材の間には、前記液分が衝突すると共に前記液分を外周方向に透過させる衝突グリッドと、前記外筒の径方向内側に突出した衝突板と、前記排煙が流れる方向を調整する整流板と、が配設されてなると好適である。
このように、本発明の排煙処理装置において、衝突グリッド、衝突板、整流板は充填材の外周側に設けられた構成とすると、充填材から飛散した液滴の粒径をさらに増大させることができる。充填材を透過して飛散した液分は、外筒の内壁と充填材との間に配設された衝突グリッドに衝突し、さらに外周方向へ透過する。また、充填材及び衝突グリッドを透過した液分は衝突板に衝突することにより、さらに凝集し、液滴をさらに増大させることができる。また、整流板を設けることにより、液滴が衝突板に対してより高速で衝突するように制御することができるため、さらに効率的に液分を分離することができる。
【0021】
このとき、請求項3のように、前記充填材は、前記回転式排煙導入管を軸として該回転式排煙導入管の外側に、平面視軸対称形状に形成された充填材保持枠に保持され、該充填材保持枠は、径方向外側に突出して接合された板状の支持部に支持されてなると好適である。
本発明の排煙処理装置において、充填材は回転式排煙導入管を軸として、一体となって回転する。したがって回転式排煙導入管の回転時、充填材には遠心力が作用するが、回転式排煙導入管を軸とした平面視軸対称の充填材保持枠を備えることにより、充填材が保持され、充填材が径方向外側に移動するのを防止することができる。
また、充填材保持枠は回転式排煙導入管に接合された支持部によって支持されているため、回転式排煙導入管と一体となって回転することができる。
【0022】
また、請求項4のように、前記充填材は、微小固体の集合体からなり、通気性及び通液性を備えると共に充填材保持網内に収納されていると好ましい。
このように、微小固体を多数備えた充填材が充填材保持網の内部に収納されることにより、回転式排煙導入管が回転して遠心力が加わった場合であっても微小固体が飛散することがない。また、充填材として微小固体の集合体を用いることにより、その表面積が増大し、排煙から分離された微粒子及び液分が衝突する面積が大きくなるため、より効率よく排煙中の液分を凝集させることができる。
【0023】
また、請求項5のように、前記外筒内であって前記充填材よりも下方位置には、前記外筒内部を横断する気液分離板が配設され、該気液分離板は、上面から下面を貫通して下方に延設された管体からなるサイフォンを複数備えてなると好適である。
このように本発明の排煙処理装置は、その内部上方を「粘着性物質結合領域」、内部下方を「気液分離領域」に二分する気液分離板を備える構成とすると良い。そして、気液分離板には外筒下方に延設されるサイフォンが配設される。気液分離板にサイフォンを設けることにより、「気液分離領域」の内部における乱気流の発生を防止し、気液分離効果を高めることができる。また、サイフォンを備えた構成とすることで、排煙を流入させるために用いられる送風機によって、装置内部の圧力が低下するのを抑制することができる。
【0024】
さらにまた、請求項6のように、前記気液分離板の縁端は、前記外筒の内壁から離間して形成されてなると好ましい。
このように、気液分離板の縁端と外筒の内壁の間に間隙を設けることにより、気液分離領域の上方に区画された粘着性物質結合領域において凝集した液分が流下しても、気液分離板上に堆積することがない。その結果、液分が気液分離板の下方に区画された気液分離領域に速やかに流下するので、気液分離板上に液分が蓄積して固化することがなく、長時間連続して運転することが可能となる。
【0025】
さらに、請求項7のように、前記排煙導入管及び前記ガス排出管は、一端が前記外筒と接合された接続部をそれぞれ備え、他方の端部が前記接続部に対して上方に配設されてなると好ましい。
このように、排煙導入管及びガス排出管が、外筒に対して傾斜して配設され、且つ外筒との接続部がそれぞれ開口部に対して低くなっているため、排煙中又は処理後のガス中に含まれた水等の液分が外筒内部に流入する構成となっている。排煙導入管及びガス排出管を水平に接続すると液分が排煙導入管及びガス排出管の内部で滞留する可能性があるが、排煙導入管及びガス排出管を傾斜して接続することにより、液分の滞留を防止することができる。
【0026】
また、請求項8のように、前記外筒は、開状態又は閉状態を維持する外筒分割機構を備え、前記外筒は複数部分に分割されると好適である。
このように、外筒を複数部分に分割し、外筒の一部分を開閉できる構成とすると、回転構造体や、衝突グリッド等、外筒の内部に収納されている部材の洗浄や保守作業を容易に行うことができる。
【0027】
さらにまた、請求項9のように、前記外筒、前記排煙導入管、前記ガス排出管、前記回転式排煙導入管のうち少なくとも一つの内部には、前記排煙から分離された液分を溶解する溶剤を流通させる機構を備えてなると好ましい。
このように、排煙処理装置内において特に液分が蓄積しやすい箇所に液分を溶解させる機構を備えることにより、内部の洗浄作業をより簡単に行うことができ、長時間安定して作動させることができる。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明の排煙処理装置では、充填材や衝突板を設けているために排煙中の微粒子が液化する効率が向上するため、排煙に含有される微粒子や液分の除去効率を高く維持することができる。
また、本発明の排煙処理装置では、排煙に含まれる粘着性の微粒子を凝集させて、装置内で凝集した液分を流下させる構成であるため、フィルタで微粒子を濾過する装置等とは異なり目詰まりしにくく、長時間の連続運転が可能な排煙処理装置を提供することができる。
さらにまた、排煙中に存在する液分が外筒の底部に蓄積するため、その液分を燃料として回収可能な排煙処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る排煙処理装置と生成燃料貯蔵タンクの概略斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る排煙処理装置の内部構造を示す概略斜視図である。
【図3】図2のA−A線における断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る回転構造体の概略斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る回転構造体の平面図である。
【図6】図2のB−B線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、配置、材料等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
【0031】
図1乃至図6は本発明の一実施形態に係るものであり、図1は排煙処理装置と生成燃料貯蔵タンクの概略斜視図、図2は排煙処理装置の内部構造を示す概略斜視図、図3は図2のA−A線における断面図、図4は回転構造体の概略斜視図、図5は回転構造体の平面図、図6は図2のB−B線における断面図である。
【0032】
本実施形態に係る排煙処理装置100は、図1で示すように、円筒状に形成されており、上方から排煙が導入される。そして、排煙処理装置100の下方に備えられた液分排出管14によって生成燃料貯蔵タンク200と接続されている。生成燃料貯蔵タンク200には、排煙処理装置100において排煙から分離されたタール等の可燃性成分(燃料)を貯蔵することができる。そして生成燃料貯蔵タンク200は、下方にバルブ210が設けられており、バルブ210を開くことにより、内部に貯蔵された燃料を適宜別の容器に移し替えることができる。
【0033】
本実施形態に係る排煙処理装置100の構成に関し、図2及乃至図5を参照して説明する。
排煙処理装置100は、略鉛直方向を軸方向とした外筒10と、その内部に配設される回転構造体20を備えている。外筒10には、排煙導入管11と、ガス排出管13と、液分排出管14とが接続されている。外筒10には、その内部に配設される回転構造体20の回転軸となる回転式排煙導入管21を軸支する導入管回転軸受12と、回転式排煙導入管21に接続されるシャフト26を軸支するシャフト回転軸受15が配設されており、その内部が密閉できる構成である。
【0034】
そして、円筒状の外筒10の軸方向中間付近には、外筒分割機構16が備えられており、外筒10は、外筒上部10aと、外筒下部10bに分割可能である。外筒分割機構16は、外筒上部10aに対して外筒下部10bを開状態又は閉状態に固定するものである。したがって、外筒上部10aと、外筒下部10bとを固定することができる構成のものであれば、ヒンジ等、公知のいかなる技術を用いてもよい。外筒分割機構16を備えることにより、外筒上部10aと外筒下部10bを分割して、その内部をメンテナンスすることが容易となる。
【0035】
また、外筒上部10aと外筒下部10bが互いに接合する面は、密閉性が保持できるようにシール機構を備えていると好ましい。
そして、外筒上部10aと外筒下部10bに分割し、回転構造体20(図2参照)や整流板41、衝突グリッド42、衝突板43(図6参照)を取り外すことにより、排煙処理装置100内の調整、洗浄を容易に行うことができる。
【0036】
本実施形態では、外筒10を上下に二分割する構成を示しているが、三以上の複数部分に分割し、粘着性物質が堆積した部分を洗浄する構成としても良い。
外筒10の材質は、セメント、煉瓦、金属などを用いることができるが、機械的強度、耐候性、耐食性、耐熱性等が高いものを用いるのが好ましい。したがって、ステンレス鋼が好適に用いられる。
【0037】
また、外筒上部10aの上方には、外筒10の軸芯方向に突出した凸部10cが設けられており、排煙導入管11は、凸部10cに接続される。排煙導入管11は、排煙導入口11aから排煙が導入され、排煙導入口11aは、焼却設備等、排煙が発生する装置及び設備に接続される。そして、外筒10の凸部10cに対して排煙導入管11の延在方向が略水平となるように接続されているが、このとき、導入管接続部11bが排煙導入口11aと比較して低くなるように配設されていると好ましい。この構成により、排煙導入管11が傾斜して配設されるため、排煙内に含有される水等の液分が凝集しても排煙処理装置100内に流入させることができる。
【0038】
凸部10cには、回転構造体20の回転式排煙導入管21が挿通され、凸部10cの付け根部分(外筒上部10aと凸部10cの境目)には、導入管回転軸受12が備えられている。導入管回転軸受12は、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受、円錐ころ軸受等、公知の軸受けが用いられる。
【0039】
また、凸部10cに挿通される回転式排煙導入管21の上端と、凸部10cの内壁との間には、回転式シール機構17が備えられ、排煙導入管11から導入された排煙が漏れることなく回転式排煙導入管21に流入する構成となっている。回転式シール機構17は、回転式排煙導入管21に対して密封性の高いものであれば、公知の技術を適用可能である。
【0040】
本実施形態では、凸部10cの上方が開口しており、その周囲にフランジが設けられた構成を説明しているが、この開口上部に適当な装置を組み付ける構成としても良い。排煙処理装置100に備え付けられる装置として例えば、回転式排煙導入管21(図2参照)の内部に堆積した残留物を洗浄する自動管内クリーニング装置が挙げられる。
また、凸部10cの上方は必ずしも開口している必要はなく、凸部10cの側面と連続して閉塞した構成としてもよい。
【0041】
外筒下部10bの底面には、液分排出管14が配設され、外筒10の内部に蓄積した液体成分を抜き出すことが可能である。また、外筒下部10bの下方の壁面にはガス排出管13が配設されており、外筒10の内部で処理されたガスが排出される。そして、排煙導入管11と同様に、ガス排出管13も傾斜して取り付けられている。すなわち、ガス排出口13aが排出管接続部13bよりも若干高い位置に配設され、内部に凝集した液分が排煙処理装置100内に流入する構成となっている。
【0042】
外筒下部10bの底面には回転構造体20のシャフト26が挿通されており、当該部分には、シャフト回転軸受15が配設されている。なお、シャフト回転軸受15は、導入管回転軸受12と同様に、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受、円錐ころ軸受等、公知の軸受けが用いられる。また、シャフト26と外筒下部10bの底部との間に、シール機構を設ける構成としても良い。
【0043】
本発明の排煙処理装置100は、上記構成の外筒10の内部に回転構造体20が取り外し可能に嵌合され、外筒10の軸芯方向、すなわち略鉛直方向に沿って配設された回転式排煙導入管21及びその下方に配設されたシャフト26を軸として、回転構造体20が回転する構成である。なお、シャフト26には不図示のモーター(回転制御装置)が取り付けられており、モーターによってシャフト26を回転させることにより、回転構造体20が連動して外筒10内で回転する。
【0044】
回転構造体20は、排煙中に含まれる微粒子(液分)を凝集させる役割を担うものである。回転構造体20は、回転式排煙導入管21の周囲に、通気性及び通液性を備えた充填材23を保持するための充填材保持枠22が取り付けられている。そして充填材23は、回転式排煙導入管21を軸としてその周囲を取り囲むように配設される。充填材保持枠22は所定の間隔をあけて回転式排煙導入管21の軸方向に沿って複数段配設されており、各充填材保持枠23の間には、板状の架橋部22bが架設されている。なお、図2は簡略化のため、充填材23の一部及び充填材保持枠22の一部を省略して図示している。
【0045】
そして充填材23は、離間して所定数配設された各充填材保持枠22の間に架設される。回転式排煙導入管21は、最上段に配設された充填材保持枠22よりも上方に延設されて凸部10cに達し、最下段に配設された充填材保持枠22よりも下方に延設される。
【0046】
充填材保持枠22は、図4に示すように、回転式排煙導入管21の表面に対して略垂直に接合された支持部22aによって支持されている。支持部22aは、回転式排煙導入管21の表面に溶接等の手段によって接合されている。したがって、充填材23は回転式排煙導入管21に対する相対位置を一定とし、回転式排煙導入管21を軸として回転することができる。回転式排煙導入管21を軸として回転構造体20を回転させた際に安定して回転させるため、支持部22aは、互いに等間隔となるように複数配設されている。なお、本実施形態で支持部22aは回転式排煙導入管21の外表面上に接合された6枚の板片によって構成されているが、この数に限定されるものではない。
【0047】
また本実施形態において、充填材保持枠22は回転式排煙導入管21を軸として、その外側に平面視正六角形に形成されているが、平面視軸対称形状であれば、円形等のその他の形状としても良い。また、充填材保持枠22は、全体として略六角柱状に形成されているが、これに限定されるものではなく、例えば、円筒形状、風車形状、扇形状、渦巻き形状、束管形状、積層形状等、回転式排煙導入管21を軸として均一に回転させることが可能な形状であればよい。
【0048】
充填材保持枠22は複数、互いに離間して配設されるが、その間に、補強リング27が嵌合された構成としても良い。補強リング27は、架橋部22bの略中間位置に設けられ、架橋部22bの外側端部に接するように嵌合される。
補強リング27により、その内側に配設される充填材23に外周方向の力が加わっても、充填材23を押し止めることができ、回転構造体20において充填材23が好適に保持される。なお、図2では簡略化のため、補強リング27を設けない状態を図示している。
【0049】
このように、充填材23は、充填材保持枠22と、支持部22aと、架橋部22bと、補強リング27とによって区画される領域内に保持される。このとき、充填材23を後述の充填材保持網22cの内部に収納し(図5を参照)、充填材保持網22cを充填材保持枠22等に保持させる構成とすると、遠心力が加わった場合であっても飛散することなく、充填材23が確実に保持されるため好ましい。
【0050】
充填材23は、全体として通気性及び通液性を備える必要がある。したがって、充填材23の形状は、直径が数ミリメートル以下の微小な固体であり、隣接する小片同士が密着しない形状の小片球状、樹脂のペレット状、楕円球状、棒状(円柱、角柱)、不定形小片(微小木片チップ形)、微細メッシュ片(数ミリメートル程度の円形や不定形の微細網片)、綿状塊(金属タワシ状の微小フィルム塊)、不定形箔片、折畳み微小箔片(数ミリ程度の屏風状に折った箔)等であると好ましい。このような形状の微小固体の集合体を充填材保持網22cの内部に収納して充填材23として用いることにより、充填材23は通気性及び通液性を備えることができる。
【0051】
また、充填材23の材料は、含水性及び含油性がなく、耐油性、耐熱性(100〜200℃程度)が高いものが好ましい。また、粘着性物質が脱離し易い材質であると共に、軽量であることが望ましい。さらに、充填材23は微粒子を濾過するために設けるのではなく、微粒子の粘着力を用いて微粒子同士の衝突、凝集により液分を外周方向に飛散させて分離する構成であるから、充填材23に用いられる素材は多孔質ではない材料を用いるのが好ましい。
【0052】
このような条件を満たすものであれば材質は限定されるものではなく、たとえば、シリコンボール、テフロン(登録商標)ボール、ガラスボール、ナイロンボール、ガラスビーズ、その他の耐油性耐熱性樹脂ボール、耐油耐熱樹脂ペレット、タワシ状ステンレス、真鍮タワシ、鉄タワシ等の金属綿、綿状耐熱性樹脂、アルミボール、アルミ箔、タワシ状アルミ綿等が挙げられる。
【0053】
回転式排煙導入管21は外筒10に対して内筒に相当し、上端部が開口した管体であり、外筒上部10aの凸部10cに嵌入される。そして、排煙導入管11から流入した排煙が回転式排煙導入管21の上端から流入する構成である。なお、本実施形態においては上端部が開口した回転式排煙導入管21を示したが、これに限定されず、パイプ内に排煙を導入する構造であると共に、内部に堆積した液分が容易に除去できる構造であれば、その構造は限定されることはない。
【0054】
なお、本実施形態では、回転式排煙導入管21の内部に堆積した残留物を除去するため、排煙処理装置100の凸部10cの上方に備えられた開口部に、自動管内クリーニング装置を配設し、回転式排煙導入管21に接続した構成を例示しているが、これに限定されず、その他の構成により、回転式排煙導入管21の内壁を洗浄できる構成としてもよい。
【0055】
そして、回転式排煙導入管21は、内表面から外表面まで貫通する微小な放散口21aが複数形成されている。回転式排煙導入管21に排煙が流入すると、回転式排煙導入管21が回転した時、遠心力により放散口21aから排煙が流出し、回転構造体20に到達する。
なお、排煙から微粒子を分離する工程に関しては後述する。
【0056】
回転式排煙導入管21の下端部は閉口しており、その近傍の側壁面にはドレン抜き口21bが形成され(図4を参照)、回転式排煙導入管21の内部に付着した液分が排出される構成となっている。
【0057】
回転式排煙導入管21の下方であって軸芯上には、不図示のモーターに接続されたシャフト26が接合されている。モーターの動力によりシャフト26が回転すると、それと連動して回転式排煙導入管21、充填材保持枠22及び充填材23が外筒10内で回転する。
【0058】
また、充填材保持枠22が回転式排煙導入管21に接合された部分の上端及び下端には、略ドーナツ形状の上部気流制御板24及び下部気流制御板25(図3参照)が取り付けられている。上部気流制御板24及び下部気流制御板25は、それぞれ回転式排煙導入管21の外周面に沿って形成されており、充填材保持枠22の上方又は下方において、それぞれ回転式排煙導入管21に嵌合されている。
【0059】
上部気流制御板24及び下部気流制御板25を設けることにより、回転式排煙導入管21の放散口21aから流出する排煙の気流を鉛直方向及び水平方向に調整することができ、排煙を効率よく充填材23に透過させることができる。
【0060】
回転構造体20を構成する部材のうち、充填材23以外(回転式排煙導入管21、充填材保持枠22等)の材質は、回転時の摩耗に耐えうる機械的強度、耐候性、耐食性、耐熱性等が高い金属を用いるのが好ましい。したがって、ステンレス鋼が好適に用いられる。
【0061】
本発明の排煙処理装置100内では、回転構造体20の下方に、外筒10の内部を仕切るように形成された気液分離板30が配設される。気液分離板30は回転構造体20によって分離された液分と、処理されて微粒子が除去された後のガスを分離するために設けられ、外筒10の内部を上下に二分する構成である。
【0062】
外筒10の内部を横断する気液分離板30が外筒10に対して固定手段によって設置されることにより、気液分離板30の上方で排煙中から微粒子を分離するための粘着性物質結合領域と、気液分離板30の下方で微粒子と処理済のガスとを分離する気液分離領域とに分割される。
【0063】
気液分離板30は、その縁端が外筒10の内壁に対して所定距離離間した大きさに形成されている。本実施形態において、気液分離板30は、外筒10の内径よりもわずかに直径が小さい円板によって形成されている。この構成により、排煙から分離された液分が、外筒10と気液分離板30との間に形成される隙間を通って下方の気液分離領域に流入しやすくすることができる。
【0064】
したがって、気液分離板30は、気液分離領域内において乱気流が発生するのを防止して気液分離効果を高めることができる。
【0065】
気液分離板30には、複数の円筒状のサイフォン31が設けられており、分離された液分は、サイフォン31の内部を伝って外筒10の下方に蓄積する。サイフォン31は、気液分離板30の板面から下方に向かって略鉛直となるように形成されている。
【0066】
サイフォン31は、排煙が通過するように配設された不図示の送風機によって生じる気流により生じる圧力の低下を抑制するため、外筒10の内壁の近傍、及び回転式排煙導入管21の近傍に配設される。
【0067】
サイフォン31を配設することにより、外筒10の内壁近傍の間隙には下降気流を発生させ、回転式排煙導入管21の周囲には上昇気流を発生させることによって対流を起させ、気液分離領域内の気流を整流することができる。
【0068】
また、気液分離板30にはその中心部に、鉛直方向に延設された筒部32を備えている。筒部32は、気液分離板30の板面から下方に向かって開口して形成されており、その内部には回転式排煙導入管21の下端及びシャフト26の上端が挿入される。筒部32の内径は、回転式排煙導入管21の外径よりも若干大きく形成されており、回転式排煙導入管21が回転する際に干渉しないように設計されている。
【0069】
また、筒部32の内部には、少なくとも回転式排煙導入管21の下方に設けられたドレン抜き口21bが配設される位置まで回転式排煙導入管21が挿入される。この構成により、ドレン抜き口21bから流出した液分が、外筒10の底部に蓄積しやすいため、好適である。
【0070】
気液分離板30の下方に蓄積した液分は、外筒10の底面に配設された液分排出管14から適宜排出され、燃料として排煙処理装置100の下方に設けられた生成燃料貯蔵タンク200に蓄えられる。一方、微粒子が取り除かれ、浄化されたガスは、気液分離板30の下方に接続されたガス排出管13から排出される。
【0071】
気液分離板30、サイフォン31、筒部32は一体に成形されており、これらを構成する部材の材質は、機械的強度、耐候性、耐食性、耐熱性等が高いものを用いるのが好ましい。したがって、ステンレス鋼が好適に用いられる。
【0072】
次に、回転構造体20について、図5を参照して説明する。なお、図5は簡略化のため、充填材23の一部を省略して図示しているが、通常は充填材保持枠22及び支持部22aによって区画される領域内の全域にわたって充填材23が備えられる。また、充填材23を微小な球体の集合体として図示しているが、充填材23の形状はこれに限定されるものではなく、上述のように、多様な形状の充填材23が適用可能である。
【0073】
充填材保持枠22は、回転式排煙導入管21を軸として配設された二重の板材によって構成されており、その間に充填材23が配設される。充填材保持枠22は支持部22aによって回転式排煙導入管21に固定されており、充填材保持枠22と、支持部22aの間に形成された空間には、充填材保持網22cが配設されている。充填材保持網22cは、充填材23が充填材保持枠22に好適に保持されるために配設されるものであり、袋状又はケース状に成形されている。
【0074】
そして、充填材23は充填材保持網22c内に内包され、充填材保持網22cが充填材保持枠22に係合されることにより、充填材23が回転構造体20に保持される。このように、充填材保持網22cを備えることにより、回転構造体20が回転しても、充填材23が外方向に飛散することなく、好適である。
【0075】
充填材保持網22cを構成する材料は、耐腐食性、耐熱性の高い材料からなる線材であると共に、通水性及び通液性を備えていると好ましい。したがって、充填材保持網22cは、金網によって構成されていると好ましい。
【0076】
以下、本発明の排煙処理装置100を用いて排煙中の微粒子を分離する構成に関し、図2及び図6を参照して説明する。
【0077】
まず、排煙導入管11から高温の排煙が排煙処理装置100内に導入される。その後、排煙は回転構造体20に備えられた回転式排煙導入管21に流入する。
この時回転構造体20は、回転式排煙導入管21及びシャフト26を軸として高速回転させることにより遠心力が作用し、回転式排煙導入管21に形成された放散口21aから排煙が放射状に流出する。
【0078】
なお、図6中の太い矢印は回転構造体20の回転方向を示している。また、液滴D及び排煙の旋回する向きを細い矢印で示している。
【0079】
そして、回転構造体20に備えられた充填材23に排煙中の微粒子を衝突させ、微粒子の粘着性を利用して微粒子同士を凝集させることができる。したがって、回転構造体20により、排煙中に含まれた微粒子の粒径を増大することができる。
【0080】
さらに、回転構造体20を外筒10内で回転させることにより、粘着性の微粒子同士の衝突回数や接触度合いを増加させることができる。その結果、微粒子の粒径を増大させることができ、高速回転する回転構造体20の外面に到達した煙中の微小粒子は、その粒径が数百倍、数万倍、数十万倍に増大する。したがって充填材23において目詰まりを防ぐために、微粒子の結合によって生じた液滴Dを順次取り除く必要がある。
【0081】
液滴Dを充填材23から脱離させるため、回転構造体20の回転速度は、排煙中に含まれる微粒子の粘着力、粒径、比重、粘度及び排煙の温度により決定され、適当な遠心力を得られるように調整される。このように、充填材23を備えた回転構造体20を高速回転させることにより、微粒子が充填材23に衝突すると共に、微粒子が充填材23を透過する。つまり、充填材保持枠22が設けられていない部分において、充填材23から液滴Dが外周方向へ飛散する。
【0082】
この工程を経ることにより、微粒子同士が結合して液滴Dの粒径を増大させることが可能となると共に、遠心力により液滴Dを外周方向に放散させることができる。したがって上述の従来技術のように、静電力等により液滴Dを除去する構成ではなく、遠心力を利用して液滴Dを収集するため、消費電力を抑えることができると共に、安全性の高い排煙処理装置100を提供することができる。
【0083】
そして、遠心力で周囲に放散した液滴D同士を更に衝突、凝集させ、より大きな粒径にするため、再度網状の衝突グリッド42に衝突及び通過させる。液滴Dは、回転構造体20の周囲に配置された網状又は簾状の衝突グリッド42を通過中に更なる凝集が促され粒径を増す。
【0084】
この時、液滴Dが粘度の高いタールであると衝突グリッド42は短時間で目詰まりしてしまうため、微細な線材を上下方向に延設し、すだれ状に配したものを使用するのが好ましい。
すだれ状の衝突グリッド42は垂直方向に配設されることにより、再結合した液滴Dが目詰まりしにくくなると共に、下方に流下しやすくなる。
また、十分な通気性及び通液性を備えるものであれば、衝突グリッド42として微細な孔を形成した板材を用いてもよい。
【0085】
またこの衝突グリッド42を通過した液滴Dは外筒10の内壁表面に衝突し、さらに凝集する。その結果、液滴Dは粒径を増すため、垂直方向下方に向かって移動しやすい。なお、図6では衝突板43が外筒10の外周を略四等分する間隔で4枚配設されているが、液分を効果的に分離することができれば、衝突板43の枚数はこれに限定されない。
【0086】
このように、排煙中に含まれる微粒子はタール状になり外筒10の内面を下方に移動し、外筒10の下方に設けられた気液分離領域に蓄積される。
そして、外筒10の下方に液分排出管14を介して配設された生成燃料貯蔵タンク200に液分が流下して燃料として貯蔵され、連続的に液分の回収を行うことが可能である。
【0087】
なお、液分の粘度が高く、下方に自然移動しない程度に粘度が高いタールに関しては、外筒10内壁等にスクレーパーを設けて堆積物を強制的に下方に押し流すような構成とすると良い。
【0088】
外筒10と回転構造体20の間には、空隙が形成されており、この空隙内には整流板41、衝突グリッド42、衝突板43がそれぞれ4カ所に配設されている。そして、整流板41、衝突グリッド42、衝突板43は少なくとも充填材22が配設される高さ範囲に設けられている。なお、本実施形態では整流板41、衝突グリッド42、衝突板43をそれぞれ4カ所配設した構成となっているが、その数は限定されない。ただし、図6のように、これら部材は、配設位置がそれぞれ軸対称となっていることが好ましい。
【0089】
整流板41は、回転構造体20が回転式排煙導入管21を軸として回転した時の接線方向にその板面が沿うように複数配設されており、外筒10に対して取り外し可能に配設されている。すなわち、整流板41は、排煙の流路の下流に移行するにしたがって、外筒10との間の流路面積を狭めるように配設されており、後述の衝突板43に排煙を導き入れるように傾斜している。
【0090】
なお、整流板41の板幅は、外筒10の直径を起点とし、回転構造体20が回転する方向に接線方向に沿って配設された際に、外筒10の壁面に到達しない程度の幅で形成されている。
【0091】
整流板41を設けることにより、排煙が流れる向き、及び回転構造体20から放散される微粒子が凝集した液分の飛散方向を調整することができ、液分を一定の方向に集合させやすくなる。そして、放散口21aから放出した排煙を加速させることにより排煙中に含まれる微粒子に働く慣性力を増大させ、後述の衝突板43に衝突させることができる。その結果、効率よく排煙中の液分を回収することができる(慣性集塵)。
【0092】
また、衝突グリッド42は、回転構造体20が回転式排煙導入管21を軸として回転した時の接線に対して傾斜した状態で、外筒10に対して取り外し可能に配設されている。図6では簡略化のため、衝突グリッド42を板材として示したが、より詳細には、衝突グリッド42は適当な線径の線材で形成されている。そして、その線材は回転構造体20の軸方向に沿って平行な簾状に配設されている。
【0093】
衝突グリッド42を設けることにより、排煙から分離された微粒子が衝突グリッド42に衝突することによりさらに凝集して粒径を増し、液分となって流下しやすくなる。本実施形態では線材を簾状に配した衝突グリッド42を例示したが、衝突グリッド42の構成はこれに限定されるものではなく、排煙から分離される液分の流下が好適に行われるものであればよい。
【0094】
衝突板43は、外筒10の内壁表面に対して略垂直に、径方向内側に突出するようにして外筒10に対して取り外し可能に配設される。衝突板43は、回転構造体20に対して接触しない程度の板幅で構成されている。衝突板43が配設される位置は、整流板41の近傍であって、排煙が流れる下流側(すなわち、整流板41の外筒10に近い方の端部)の近傍に設けられていると好ましい。
【0095】
衝突板43を設けることにより、整流板41によって飛散方向が制御された液分が衝突板43に衝突しやすくなり、衝突板43に液分が衝突することでさらに液分の粒径が増大し、流下しやすくなる。したがって、整流板41、衝突グリッド42、衝突板43は、少なくとも回転構造体20の充填材23が備えられた高さ範囲、すなわち液分が飛散する範囲にわたって配設されていると好ましい。
【0096】
また、本発明の排煙処理装置100において、外筒10、排煙導入管11、ガス排出管13、回転式排煙導入管21等の内部に粘着性物質が滞留し固化することによる処理機能の低下を防止するための自動洗浄機構を設けても良い。自動洗浄機構の例として、粘着性物質を溶解する溶剤を霧化して自動添加することにより装置内に流通させ、各部分の自動洗浄を可能にする機構が挙げられる。
【0097】
より具体的には、排煙処理装置100内の各部分に溶剤を噴霧するノズル等の洗浄装置を配設し、ノズルの開閉を制御する洗浄装置制御装置を排煙処理装置100の外部に設けて洗浄装置と接続する構成とすると好ましい。
【0098】
さらに本実施形態では、排煙導入管11に三方弁状の切替え装置を配設し、内部洗浄実施時には排煙発生源からの気流を停止する機構を設けると好ましい。上述の粘着性物質の溶剤を添加する装置で発生したミストを排煙処理装置100内に導入しつつ、排煙処理時と同様の運転を行うことにより、容易に排煙処理装置100内をクリーニングすることができる。ただし、自動洗浄機構は上記の溶剤を添加する方式に限定されるものではなく、装置内部に堆積した粘着物質を外部に排出する機能を有するものであればこれに限定されない。
【0099】
なお、本発明の排煙処理装置100は、排煙中に含まれた微粒子の粘着性を利用して排煙処理を行うものであるため、基本的には粘着性の低い物質はその分離が難しい。しかし、排煙には粘着性物質が含有されているため、粘着性の低い物質が粘着性物質に取り込まれるようにして凝集するので、粘着性の低い物質であっても分離することができる。
【0100】
また、本発明の排煙処理装置100は、可燃性の物質を低温燃焼(すなわち、可燃物が燻っているか焦げている状態を指し、熱分解で生成した気体が炎をあげて燃えていない状態での燃焼)させる場合に発生する排煙に対して特に好適である。
なお、低温燃焼させる場合は不完全燃焼が起こっており、一酸化炭素を発生する可能性があるため、二次燃焼させるなど、他の方式で一酸化炭素を取り除く設備を備えていると好ましい。
【符号の説明】
【0101】
100 排煙処理装置
200 生成燃料貯蔵タンク
210 バルブ
10 外筒
10a 外筒上部
10b 外筒下部
10c 凸部
11 排煙導入管
11a 排煙導入口
11b 導入管接続部(接続部)
12 導入管回転軸受
13 ガス排出管
13a ガス排出口
13b 排出管接続部(接続部)
14 液分排出管
15 シャフト回転軸受
16 外筒分割機構
17 回転式シール機構
20 回転構造体
21 回転式排煙導入管
21a 放散口
21b ドレン抜き口
22 充填材保持枠
22a 支持部
22b 架橋部
22c 充填材保持網
23 充填材
24 上部気流制御板
25 下部気流制御板
26 シャフト
27 補強リング
30 気液分離板
31 サイフォン
32 筒部
41 整流板
42 衝突グリッド
43 衝突板
D 液滴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒と、該外筒内で回転する回転構造体とを備え、該回転構造体内に導入される排煙から液分を分離する排煙処理装置であって、
前記外筒は、前記排煙を導入する排煙導入管と、前記排煙から分離されたガスを排出するガス排出管と、前記排煙から分離された液分を排出する液分排出管と、が接続され、
前記回転構造体は、内部に前記排煙が流入し延在方向を軸として回転すると共に内表面から外表面を貫通する放散口が複数形成された回転式排煙導入管と、該回転式排煙導入管の周囲に配設され前記液分が衝突すると共に前記液分を外周方向に透過させる充填材と、を有することを特徴とする排煙処理装置。
【請求項2】
前記外筒の内壁と前記充填材の間には、前記液分が衝突すると共に前記液分を外周方向に透過させる衝突グリッドと、前記外筒の径方向内側に突出した衝突板と、前記排煙が流れる方向を調整する整流板と、が配設されてなることを特徴とする請求項1に記載の排煙処理装置。
【請求項3】
前記充填材は、前記回転式排煙導入管を軸として該回転式排煙導入管の外側に、平面視軸対称形状に形成された充填材保持枠に保持され、
該充填材保持枠は、径方向外側に突出して接合された板状の支持部に支持されてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の排煙処理装置。
【請求項4】
前記充填材は、微小固体の集合体からなり、通気性及び通液性を備えると共に充填材保持網内に収納されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の排煙処理装置。
【請求項5】
前記外筒内であって前記充填材よりも下方位置には、前記外筒内部を横断する気液分離板が配設され、該気液分離板は、上面から下面を貫通して下方に延設された管体からなるサイフォンを複数備えてなることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の排煙処理装置。
【請求項6】
前記気液分離板の縁端は、前記外筒の内壁から離間して形成されてなることを特徴とする請求項5に記載の排煙処理装置。
【請求項7】
前記排煙導入管及び前記ガス排出管は、一端が前記外筒と接合された接続部をそれぞれ備え、他方の端部が前記接続部に対して上方に配設されてなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の排煙処理装置。
【請求項8】
前記外筒は、開状態又は閉状態を維持する外筒分割機構を備え、前記外筒は複数部分に分割されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の排煙処理装置。
【請求項9】
前記外筒、前記排煙導入管、前記ガス排出管、前記回転式排煙導入管のうち少なくとも一つの内部には、前記排煙から分離された液分を溶解する溶剤を流通させる機構を備えてなることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の排煙処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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