説明

排紙装置

【課題】印刷用紙が逆U字状(下向)にカールする場合にも、印刷用紙がU字状(上向)にカールする場合にもカールを矯正し、かつ用紙搬送面における摩擦を軽減し、印刷用紙の排出飛形を所定の形状に整える。
【解決手段】用紙を用紙搬送面に沿って吸着搬送する用紙吸着搬送ベルト47を有する本体51と、用紙搬送方向に沿う本体51の両側に配設したジャンプ台52と、用紙をジャンプ台52の用紙搬送面に沿った姿勢に矯正するカール矯正手段をなす吸引ボックス91および用紙吸引搬送ベルト95とを備え、用紙吸引搬送ベルト95がジャンプ台52の用紙搬送面において用紙を搬送することで摩擦を軽減する摩擦軽減手段をなす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔版印刷機等の機械装置から紙受け台等へ用紙を排出する排紙装置に関し、排出時に用紙のカールを矯正する技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、孔版印刷機のインクとしては、オイル成分を含んだウォーターインオイル型のエマルジョンインクを主として使用している。また、インクジェット式印刷機のインクとしては、オイル成分をほとんど含まない水性インクを主として使用している。
【0003】
前述の液体インクを用いる印刷機においては、粉体トナーを用いて熱定着する複写機とは異なり、いわゆるカール現象の問題がある。すなわち、印刷時に用紙表面に液体インクを刷り写すと、そのインク水分が用紙表面から急速に用紙中へ浸透し、印刷済用紙の巻き込み現象、つまりカール現象が急速に発生する。
【0004】
片面印刷時には、一般的に液体インクを刷り写した紙面側から表裏反対の紙面側へ向けて印刷済用紙が巻き込む。このため、印刷した紙面を上方に向けて印刷済用紙を紙受け台へ排出する際には、上方に向く用紙表面側から用紙裏面側へ下向に、逆U字状にカールする。
【0005】
両面印刷時には、印字率が多い紙面側から印字率の少ない紙面側へ向けて印刷済用紙が巻き込む。このため、印刷済用紙を紙受け台へ排出する際には、上方に向く用紙表面側の表面印字率が多い場合に、上方に向く用紙表面側から用紙裏面側へ下向に、逆U字状にカールし、下方に向く用紙裏面側の裏面印字率が多い場合に、下方に向く用紙裏面側から用紙表面側へ上向きに、U字状にカールする。
【0006】
ところで、従来の孔版印刷機は、一般的な技術として、印字した印刷済用紙を用紙吸着搬送ベルトにて搬送し、排紙装置から紙受け台へ排出している。排紙装置には、排紙装置から紙受け台へ飛行する印刷済用紙の排出飛形を所定の形状に整えるために、いわゆるジャンプ台を設けている。このジャンプ台を経ることで、印刷済用紙の排出飛形は、飛行方向に沿う軸心と平行な用紙両側を上方に持ち上げた状態に湾曲する形状となる。
【0007】
このため、印字した印刷済用紙が逆U字状(下向)にカールする場合には、印刷済用紙を用紙吸着搬送ベルトでエア吸引し、印刷済用紙の紙面を用紙搬送面に沿わせることで、用紙のカール形状を矯正することが可能である。さらに、排紙装置のジャンプ台を経ることで、用紙のカール形状を反転させて矯正し、印刷済用紙の排出飛形を所定の形状に整えることが可能である。
【0008】
しかしながら、排紙装置は中央部では印刷済用紙を用紙吸着搬送ベルトでエア吸引するものの、ジャンプ台にはエア吸引する手段を備えていない。このため、用紙の種類によっては、印刷済用紙の中央部を用紙吸着搬送ベルトでエア吸引して紙面を用紙搬送面に沿わせることで、用紙のカール形状を概ね矯正できても、用紙の両縁端がジャンプ台の用紙搬送面に当接する状態で用紙の両縁端付近の紙面が用紙搬送面から浮き上がり、小さなカール形状が用紙の両縁端付近に残ることがあり、カールを確実に矯正することができず、印刷済用紙の排出飛形を所定の形状に整えることができないために、紙受け台上で用紙の姿勢が乱れる場合がある。
【0009】
また、印字した印刷済用紙がU字状(上向)にカールする場合には、印刷済用紙を用紙吸着搬送ベルトでエア吸引するだけでは、印刷済用紙の紙面を用紙搬送面に沿わせることはできない。
【0010】
この種の排紙装置としては、例えば特許文献1に記載するものがある。これは、エアー吸引して用紙を搬送する用紙搬送ユニットにおいて、印刷装置から排出される印刷済用紙に腰を与えることを目的として用紙腰付け板(上述したジャンプ台に相当)が取り付けてあり、用紙腰付け板の用紙搬送面に、用紙を搬送面に吸着させるためのエアー吸引用の穴を設けている。
【0011】
この特許文献1では、印字した印刷済用紙が逆U字状(下向)にカールする場合には、用紙腰付け板に対向する紙面をエアー吸引することで、印刷済用紙の両側が用紙腰付け板の用紙搬送面に沿った状態となり、カールを矯正することができる。
【0012】
他の先行技術文献としては、特許文献2がある。
【特許文献1】特開2007−246181号公報
【特許文献2】特開2001−18512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1の構成においては、エアー吸引によって印刷済用紙に作用する力が印刷済用紙の紙面を用紙腰付け板の用紙搬送面に押し付けるので、印刷済用紙の紙面と用紙腰付け板の用紙搬送面との間の摩擦力が搬送抵抗となる。このため、用紙の種類によっては、例えば腰の弱い薄い用紙等では皺が発生するおそれがある。
【0014】
また、特許文献1の構成においても、印字した印刷済用紙がU字状(上向)にカールする場合には、エアー吸引の吸引力が用紙腰付け板に対向する印刷済用紙の紙面に有効に作用せず、印刷済用紙の両側を用紙腰付け板の用紙搬送面に沿った状態にすることはできない。
【0015】
本発明は上記した課題を解決するものであり、印刷済用紙が逆U字状(下向)にカールする場合にも、印刷済用紙がU字状(上向)にカールする場合にも、確実にカールを矯正し、かつ用紙搬送面における摩擦を軽減して円滑な排出を確保して印刷済用紙の排出飛形を所定の形状に整えることができる排紙装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の排紙装置は、用紙を用紙搬送面に沿って吸着搬送する吸着搬送ベルトを有する本体と、用紙搬送方向に沿う本体の両側に配設したジャンプ台と、用紙をジャンプ台の用紙搬送面に沿った姿勢に矯正するカール矯正手段を備えたことを特徴とする。
【0017】
また、ジャンプ台は、用紙搬送面に用紙との摩擦を軽減する摩擦軽減手段を有することを特徴とする。
また、カール矯正手段は、用紙をジャンプ台の用紙搬送面に吸着する吸着手段からなることを特徴とする。
【0018】
また、摩擦軽減手段は、ジャンプ台の用紙搬送面をなす低摩擦部材からなることを特徴とする。
また、摩擦軽減手段は、ジャンプ台の用紙搬送面に形成した複数の突起部もしくは凹凸部からなることを特徴とする。
【0019】
また、摩擦軽減手段は、ジャンプ台の用紙搬送面に用紙搬送方向に沿って形成した複数条のリブからなることを特徴とする。
また、摩擦軽減手段は、ジャンプ台の用紙搬送面に設けた複数のローラからなることを特徴とする。
【0020】
また、摩擦軽減手段は、用紙を用紙搬送面に沿って吸着搬送する吸着搬送ベルトからなることを特徴とする。
また、カール矯正手段は、用紙をジャンプ台の用紙搬送面に向けて押すようにエアを送風するエア送風手段からなることを特徴とする。
【0021】
また、エア送風手段は、用紙中央部から用紙搬送方向と平行をなす両側の用紙側端部に向けて送風することを特徴とする。
また、本体および摩擦軽減手段は、吸着搬送ベルトの搬送速度が調整可能であることを特徴とする。
【0022】
また、カール矯正手段は、吸着手段がエア吸引力を調整可能なエア吸引装置からなることを特徴とする。
また、ジャンプ台は、本体の用紙搬送面に対して任意角度に傾動可能で、かつ用紙搬送方向に対して直交する方向の任意位置へ移動可能な用紙搬送面を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
以上のように本発明によれば、カール矯正手段が用紙をジャンプ台の用紙搬送面に沿った姿勢に矯正することで、用紙両側の浮き上がりを防止して用紙の排出飛形を所定の形状に整えることが可能である。この際に、ジャンプ台の用紙搬送面では摩擦軽減手段が用紙との摩擦を軽減することで、用紙の紙面と用紙搬送面との間の摩擦力が搬送抵抗となることはなく、例えば腰の弱い薄い用紙等でも皺を発生させることなく所定の排出飛形で排出できる。
【0024】
カール矯正手段は、用紙をジャンプ台の用紙搬送面に吸着する吸着手段、もしくは用紙をジャンプ台の用紙搬送面に向けて押すようにエアを送風するエア送風手段で実現でき、両者を同時に用いることも可能である。吸着手段は、エア吸引もしくは静電吸着により実現でき、エア送風手段は、用紙中央部から用紙搬送方向と平行をなす両側の用紙側端部に向けてスポット的に送風することで、用紙両側の側端部をジャンプ台の用紙搬送面に向けて押して用紙をジャンプ台の用紙搬送面に沿った姿勢に矯正し、かつ不必要な箇所へエアが回り込むことを防止する。
【0025】
また、吸着搬送ベルトの搬送速度が調整可能であること、吸着手段がエア吸引力を調整可能なエア吸引装置からなること、ジャンプ台が本体の用紙搬送面に対して任意角度に傾動可能で、かつ用紙搬送方向に対して直交する方向の任意位置へ移動可能な用紙搬送面を有することにより、用紙の種類が異なっても、種々の条件設定を行なって排出飛形の安定化を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。はじめに、本発明の排紙装置を適用した印刷装置について図面を参照して説明する。
本発明の排紙装置の適用用途として、ここではインクジェット印刷装置を例示するが、孔版印刷装置、スクリーン印刷装置等にも適用することは可能である。インクジェット印刷装置は、図11に示すように、片面印刷および両面印刷を行なう構成とすることも、図12に示すように片面印刷のみを行なう構成とすることも可能であり、ここでは、図11を参照して説明し、図12に示す構成は同様の符号を付して説明を省略する。
【0027】
図11において、インクジェット印刷装置1は、給紙機構部2、印刷装置本体部3、用紙搬送機構部4、排紙装置5、紙受け機構部6からなる。
給紙機構部2は、用紙21を積載する給紙台22と、給紙台22から用紙21を1枚ずつ繰り出すための給紙ローラ23および捌き台24と、繰り出した用紙21を印刷装置本体部3へ供給する上下で対をなす搬送ローラ25を備えている。
【0028】
印刷装置本体部3は、ここでは水性インクをインクジェット方式で用紙の紙面に噴射して印刷を行うものである。
用紙搬送機構部4は、複数の搬送ユニット41と、ゲート42と、対をなす反転ローラ43とを組み合わせて搬送経路を形成しており、ここでは図面の煩雑化を避けるために、搬送ユニット41は印刷装置本体部3に対応する搬送ユニット41のみを図示している。複数の搬送ユニット41で構成する搬送経路の分岐点、合流点にはゲート42を配置しており、ゲート42の操作によって搬送経路が切り替わる。
【0029】
搬送ユニット41は、吸引源に連通する吸引ボックス44と、吸引ボックス44の前後に配置して一対をなす駆動ローラ45および従動ローラ46と、前後のローラ45、46に掛け渡した用紙吸着搬送ベルト47を備えており、吸引ボックス44および用紙吸着搬送ベルト47に形成した複数の孔を通して用紙吸着搬送ベルト47の上面に用紙21をエア吸引して搬送するものである。
【0030】
紙受け機構部6は、排紙装置5から排出する印字後の印刷済用紙71を受け止める紙受け台61を備えている。
排紙装置5は、印字後の印刷済用紙71をエア吸引して搬送するものであり、本体51および本体51の両側に配置したジャンプ台52とジャンプ台52の用紙搬送面に向けてエアをファン等によって送風するエア送風部53を備えている。エア送風部53による送風は、用紙の中央部から両端に向けて送風する。
【0031】
図1〜図5に示すように、本体51は、吸引源に連通する吸引ボックス81と、吸引ボックス81の前後に配置した一対をなす駆動ローラ82および従動ローラ83と、駆動軸84と、前後のローラ82、83に掛け渡した用紙吸着搬送ベルト85とを備えている。一対のローラ82、83および用紙吸着搬送ベルト85はその二組を平行に配置し、一つの駆動軸84で左右の用紙吸着搬送ベルト85を同期駆動し、吸引ボックス81および用紙吸着搬送ベルト85に形成した複数の孔を通して用紙吸着搬送ベルト85の上面に印刷済用紙71をエア吸引して搬送する。
【0032】
ジャンプ台52は、吸着手段をなして吸引源に連通する吸引ボックス91と、吸引ボックス91の前後に配置した対をなす駆動ローラ92および従動ローラ93と、駆動軸94と、前後のローラ92、93に掛け渡した用紙吸着搬送ベルト95と、用紙搬送面をなす傾動ガイド板96および拡張ガイド板97と、駆動軸94の途中に設けたユニバーサルジョイント98を備えている。
【0033】
拡張ガイド板97は駆動軸94を回転自在に保持し、駆動軸94が本体51の駆動軸84の孔部84aに軸心方向へスライド可能に嵌合しており、ジャンプ台52の駆動軸94と本体51の駆動軸84とがキー94aによって軸心廻りで係合し、キー94aが本体51の駆動軸84の孔部84aに形成したキー溝84bに係合しつつ軸心方向へジャンプ台52の駆動軸94とともにスライドする。この構成により、ジャンプ台52が本体51の駆動軸84の軸心方向へスライドすること、つまり用紙搬送方向に対して直交する方向の任意位置へ移動することが可能になる。
【0034】
傾動ガイド板96は拡張ガイド板97に対してヒンジ99を介して上下方向で任意角度に傾動自在に連結しており、ヒンジ99の傾動軸心は用紙搬送方向と平行である。しかしながら、ヒンジ99は、その傾動軸心が用紙搬送方向に対して非平行な状態となるように配置することも可能である。これについては後述する。
【0035】
ジャンプ台52では、駆動軸94が本体51の駆動軸84と連動して回転し、用紙吸着搬送ベルト95を本体51の用紙吸着搬送ベルト85と同期駆動し、吸引ボックス91および用紙吸着搬送ベルト95に形成した複数の孔を通して用紙搬送面の一部をなす用紙吸着搬送ベルト95の上面に印刷済用紙71をエア吸引して搬送する。
【0036】
排紙装置5は、用紙の種類に応じて以下の調整が可能である。吸引ボックス81、91におけるエア吸引力は、吸引源のファン回転数の制御等によって調整可能である。用紙吸着搬送ベルト85、95の移動速度、つまり用紙の搬送速度は、駆動軸84、94の回転数制御により調整可能である。ジャンプ台52はヒンジ99での傾動による角度調整、および駆動軸84、94でのスライドによるピッチ調整が可能である。
【0037】
本実施の形態の排紙装置5では、印刷済用紙71をエア吸引する吸引ボックス91によるカール矯正手段、ジャンプ台52の用紙搬送面に向けてエアを送風するエア送風部53によるカール矯正手段を併設するが、何れか一方のカール矯正手段だけを設けることも可能であり、吸引ボックス91および用紙吸着搬送ベルト95に代えて静電吸着方式の搬送ベルトを採用することでも実現できる。
【0038】
以下に、本発明の印刷装置における用紙の搬送経路について以下に説明する。
(片面印刷)
図11に示すように、給紙機構部2は用紙21を一枚ずつ印刷装置本体部3に給紙する。搬送ユニット41が用紙吸着搬送ベルト47により用紙21を吸引搬送し、印刷装置本体部3が用紙21の片面に印刷する。印刷した印字後の印刷済用紙71は搬送ユニット41から排紙装置5に移送し、排紙装置5が用紙吸着搬送ベルト85、95により印刷済用紙71を吸引搬送して紙受け台61へ排出する。
【0039】
ところで、片面印刷時には、印刷済用紙71が液体インクを刷り写した紙面側から表裏反対の紙面側へ向けて巻き込むことがあり、印刷した紙面を上方に向けて印刷済用紙71を紙受け台61へ排出する際には、上方に向く用紙表面側から用紙裏面側へ下向に、逆U字状にカールする場合がある。
【0040】
この印刷機では、排紙装置5において本体51の用紙吸着搬送ベルト85およびジャンプ台52の用紙吸着搬送ベルト95の上面に印刷済用紙71をエア吸引することで、印刷済用紙71の紙面が本体51の吸引ボックス81の上面の用紙搬送面およびジャンプ台52の傾動ガイド板96および拡張ガイド板97の上面の用紙搬送面に沿った形状となり、印刷済用紙71のカール形状を矯正することが可能である。
【0041】
さらに、ジャンプ台52の傾動ガイド板96の用紙搬送面が本体51の用紙搬送面に対して所定の角度で傾斜することで、印刷済用紙71のカール形状を反転させて矯正し、飛行方向に沿う軸心と平行な用紙両側を上方に持ち上げた状態に湾曲する形状となし、印刷済用紙71の排出飛形を所定の形状に整えることが可能である。
【0042】
この場合に、ジャンプ台52の吸引ボックス91がカール矯正手段を構成するが、用紙の種類に応じて、吸引ボックス81、91におけるエア吸引力、用紙吸着搬送ベルト85、95の移動速度、ジャンプ台52の角度調整、およびピッチ調整を行うことで、より良くカール矯正を行なうことができる。
【0043】
また、本実施の形態の排紙装置5では、用紙吸着搬送ベルト95が用紙を伴って移動することで、ジャンプ台52の用紙搬送面における摩擦を軽減する摩擦軽減手段を実現する。つまり、エアー吸引によって印刷済用紙71に作用する力は、印刷済用紙71の紙面を用紙搬送面の一部をなす用紙吸着搬送ベルト95に押し付ける力として作用するが、印刷済用紙71の紙面を傾動ガイド板96の他の用紙搬送面に押し付けることはない。よって、印刷済用紙71の紙面と用紙搬送面との間の摩擦力は弱くて搬送抵抗となることはなく、例えば腰の弱い薄い用紙等でも皺が発生することがない。
【0044】
また、摩擦軽減手段は、上述したもの以外に、その他のものでも実現することも可能であり、後に詳述する。
(両面印刷)
図11に示すように、給紙機構部2は用紙を一枚ずつ印刷装置本体部3に給紙する。搬送ユニット41が用紙吸着搬送ベルト47により用紙21を吸引搬送し、印刷装置本体部3が用紙21の片面に印刷する。
【0045】
印刷装置本体部3で印刷後に、用紙搬送機構部4において印刷済用紙71を反転させ、その後に印刷装置本体部3の給紙口へ返送する。このため、印刷装置本体部3の直下の搬送ユニット41と排紙装置5との間にあるゲート42を操作して印刷済用紙71を対をなす反転ローラ43に一旦送り込み、その後に反転ローラ43を逆転させて復路をなす搬送ユニット41に印刷済用紙7を送り、搬送ローラ25と印刷装置本体部3の直下の搬送ユニット41との間にあるゲート42を操作して印刷済用紙71を印刷装置本体部3の給紙口へ返送する。
【0046】
搬送ユニット41が用紙吸着搬送ベルト47により印刷済用紙71を吸引搬送し、印刷装置本体部3が印刷済用紙71の裏面に印刷する。印刷した印字後の印刷済用紙71は搬送ユニット41から排紙装置5に移送し、排紙装置5が用紙吸着搬送ベルト85、95により印刷済用紙71を吸引搬送して紙受け台61へ排出する。
【0047】
ところで、両面印刷時には、印字率が多い紙面側から印字率の少ない紙面側へ向けて印刷済用紙が巻き込むことがあり、両面印刷した印刷済用紙71を紙受け台61へ排出する際には、上方に向く用紙表面側の表面印字率が多い場合に、上方に向く用紙表面側から用紙裏面側へ下向に、逆U字状にカールし、下方に向く用紙裏面側の裏面印字率が多い場合に、下方に向く用紙裏面側から用紙表面側へ上向きに、U字状にカールする場合がある。
【0048】
この印刷機では、排紙装置5において本体51の用紙吸着搬送ベルト85およびジャンプ台52の用紙吸着搬送ベルト95の上面に印刷済用紙71をエア吸引することで、印刷済用紙71の紙面が本体51の吸引ボックス81の上面の用紙搬送面およびジャンプ台52の傾動ガイド板96および拡張ガイド板97の上面の用紙搬送面に沿った形状となり、印刷済用紙71のカール形状を矯正することが可能である。
【0049】
また、両面印刷時には、エア送風部53からエアを送風し、このエアで印刷済用紙71の両側をジャンプ台52の傾動ガイド板96の用紙搬送面に向けて押すことで、用紙両端部を強制的に外側へ広げてジャンプ台52の用紙搬送面に沿わせて矯正し、ジャンプ台52の吸引ボックス91のエア吸引による印刷済用紙71の吸着を促進する。このエア送風部53によるエアの送風は、印刷済用紙71の中央部から用紙両端部へ向けてスポット的に行うことで、余分な箇所へのエアの廻り込みを防いで、効率良くカールを矯正することができる。
【0050】
よって、印刷済用紙71が下向へ逆U字状にカールしている場合はもちろんに、上方へU字状にカールしている場合にあっても確実に印刷済用紙71のカール形状を矯正することが可能である。
【0051】
しかしながら、本発明のカール矯正手段は、印刷済用紙71が逆U字状にカールする場合に特に有効であるので、印刷に先立って用紙21の両方の紙面における印字率を制御装置(図示省略)において判断し、排紙装置5への排出時に印字率が多くなる紙面が上面となるように、用紙21の表裏の紙面に対する画像データを入れ替えて印字することが好ましい。
【0052】
本実施の形態では、吸引ボックス91のエア吸引によるカール矯正手段と、エア送風部53のエア送風によるカール矯正手段とを組み合わせたが、吸引ボックス91によるエア吸引を行なわずに、エア送風部53によるエアの送風のみを行なうことでも、印刷済用紙71を矯正することは可能である。
【0053】
また、片面印刷時と同様に、ジャンプ台52の傾動ガイド板96の用紙搬送面が本体51の用紙搬送面に対して所定の角度で傾斜することで、印刷済用紙71のカール形状を反転させて矯正し、飛行方向に沿う軸心と平行な用紙両側を上方に持ち上げた状態に湾曲する形状となし、印刷済用紙71の排出飛形を所定の形状に整えることが可能である。
【0054】
上述したように、本実施の形態では、傾動ガイド板96は拡張ガイド板97に対してヒンジ99を介して上下方向に傾動自在に連結しており、ヒンジ99の傾動軸心は用紙搬送方向と平行である。しかしながら、図6および図7に示すように、傾動ガイド板96と拡張ガイド板97との傾動軸は用紙搬送方向との間に所定角度を形成するように配置することも可能であり、ヒンジ99は、その傾動軸心が用紙搬送方向に対して非平行な状態となるように配置する。
【0055】
この場合に、傾動ガイド板96を上方へ傾動した姿勢に配置すると、傾動ガイド板96の端部は用紙搬送方向の先端側へ行くほどに高くなる。よって、印刷済用紙71のカール形状を反転させて矯正し、飛行方向に沿う軸心と平行な用紙両側を上方に持ち上げた状態に湾曲させることがスムーズに行なえる。
【0056】
また、図6および図7に示す構成において、ジャンプ台52の傾動ガイド板96および拡張ガイド板97は先の実施の形態と同様に用紙の幅方向へスライド可能である。また、傾動ガイド板96および拡張ガイド板97に吸引孔96a、97aを形成し、傾動ガイド板96の吸引孔96aを蛇腹管等のフレキシブルな管部材96bで吸引ボックス91に連通させ、吸引孔96a、97aを通して吸引ボックス91でエア吸引することで、カール矯正手段を実現する。
【0057】
また、先の実施の形態の排紙装置5では、ジャンプ台52の用紙搬送面の一部をなす用紙吸着搬送ベルト95が用紙を伴って移動することで、ジャンプ台52の用紙搬送面における摩擦を軽減する摩擦軽減手段を実現している。
【0058】
しかしながら、摩擦軽減手段は用紙搬送面を形成する傾動ガイド板96や拡張ガイド板97等の部材の材質そのものを例えば樹脂等の低摩擦部材とすることでも実現でき、傾動ガイド板96や拡張ガイド板97等の部材の表面に従来において公知の低摩擦部材、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等をコーティングすることでも実現できる。
【0059】
さらには、摩擦軽減手段として、図8(a)、(b)に示すように、排紙装置5の用紙搬送面に、複数の突起部100、または凹凸部(図示省略)を形成し、用紙搬送面と用紙との接触面積を低減することでも実現できる。この突起部100、または凹凸部(図示省略)は面的な広がりを伴って形成しても良く、あるいは用紙の搬送方向に沿って列状に形成しても良い。
【0060】
また、摩擦軽減手段として、図9(a)、(b)に示すように、排紙装置5の用紙搬送面に、複数条のリブ101を用紙の搬送方向に沿って形成し、用紙搬送面と用紙との接触面積を低減することでも実現できる。
【0061】
また、摩擦軽減手段として、図10(a)、(b)に示すように、排紙装置5の用紙搬送面に、複数のローラ102を設けて転がり摩擦とすることでも実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施の形態における排紙装置を示す平面図
【図2】図1のA−A矢視断面図
【図3】図1の正面図
【図4】図3のB部拡大図
【図5】図4の断面図
【図6】本発明の他の実施の形態における排紙装置を示す平面図
【図7】図6の正面図
【図8】本発明の他の実施の形態における排紙装置を示し、(a)は平面図、(b)は要部拡大図
【図9】本発明の他の実施の形態における排紙装置を示し、(a)は平面図、(b)は要部拡大図
【図10】本発明の他の実施の形態における排紙装置を示し、(a)は平面図、(b)は要部拡大図
【図11】インクジェット印刷装置の構成を示す模式図
【図12】インクジェット印刷装置の他の構成を示す模式図
【符号の説明】
【0063】
1 インクジェット印刷装置
2 給紙機構部
3 印刷装置本体部
4 用紙搬送機構部
5 排紙装置
6 紙受け機構部
21 用紙
22 給紙台
23 給紙ローラ
24 捌き台
25 搬送ローラ
41 搬送ユニット
42 ゲート
43 反転ローラ
44 吸引ボックス
45 駆動ローラ
46 従動ローラ
47 用紙吸着搬送ベルト
51 本体
52 ジャンプ台
53 エア送風部
61 紙受け台
71 印刷済用紙
81、91 吸引ボックス
82、92 駆動ローラ
83、93 従動ローラ
84、94 駆動軸
84a 孔部
84b キー溝
85、95 用紙吸着搬送ベルト
94a キー
96 傾動ガイド板
96a、97a 吸引孔
96b フレキシブルな管部材
97 拡張ガイド板
98 ユニバーサルジョイント
99 ヒンジ
100 突起部
101 リブ
102 ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を用紙搬送面に沿って吸着搬送する吸着搬送ベルトを有する本体と、用紙搬送方向に沿う本体の両側に配設したジャンプ台と、用紙をジャンプ台の用紙搬送面に沿った姿勢に矯正するカール矯正手段を備えたことを特徴とする排紙装置。
【請求項2】
ジャンプ台は、用紙搬送面に用紙との摩擦を軽減する摩擦軽減手段を有することを特徴とする請求項1に記載の排紙装置。
【請求項3】
カール矯正手段は、用紙をジャンプ台の用紙搬送面に吸着する吸着手段からなることを特徴とする請求項1または2に記載の排紙装置。
【請求項4】
摩擦軽減手段は、ジャンプ台の用紙搬送面をなす低摩擦部材からなることを特徴とする請求項2に記載の排紙装置。
【請求項5】
摩擦軽減手段は、ジャンプ台の用紙搬送面に形成した複数の突起部もしくは凹凸部からなることを特徴とする請求項2に記載の排紙装置。
【請求項6】
摩擦軽減手段は、ジャンプ台の用紙搬送面に用紙搬送方向に沿って形成した複数条のリブからなることを特徴とする請求項2に記載の排紙装置。
【請求項7】
摩擦軽減手段は、ジャンプ台の用紙搬送面に設けた複数のローラからなることを特徴とする請求項2に記載の排紙装置。
【請求項8】
摩擦軽減手段は、用紙を用紙搬送面に沿って吸着搬送する吸着搬送ベルトからなることを特徴とする請求項2に記載の排紙装置。
【請求項9】
カール矯正手段は、用紙をジャンプ台の用紙搬送面に向けて押すようにエアを送風するエア送風手段からなることを特徴とする請求項1または2に記載の排紙装置。
【請求項10】
エア送風手段は、用紙中央部から用紙搬送方向と平行をなす両側の用紙側端部に向けて送風することを特徴とする請求項9に記載の排紙装置。
【請求項11】
本体および摩擦軽減手段は、吸着搬送ベルトの搬送速度が調整可能であることを特徴とする請求項8に記載の排紙装置。
【請求項12】
カール矯正手段は、吸着手段がエア吸引力を調整可能なエア吸引装置からなることを特徴とする請求項3に記載の排紙装置。
【請求項13】
ジャンプ台は、本体の用紙搬送面に対して任意角度に傾動可能で、かつ用紙搬送方向に対して直交する方向の任意位置へ移動可能な用紙搬送面を有することを特徴とする請求項1に記載の排紙装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−202952(P2009−202952A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−43676(P2008−43676)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(390002129)デュプロ精工株式会社 (351)
【Fターム(参考)】