説明

掘削ドリル脱着式掘削穴形成方法及びそのための装置

【課題】サヤ管を逆回転させることなく掘削ドリルを容易に、確実に離脱できるので作業性に優れているし、地質に応じて掘削ドリルを正逆回転できるので掘削能率に優れており、またサヤ管の回転に伴って掘削土を掻き揚げるので掘削ドリルに掛かる負荷を低減し、掘削効率を上げることができる。
【解決手段】油圧モータにより回転駆動されるサヤ管1は、軸方向に連結自在な複数の連結管体から構成してある。サヤ管1の先端に掘削ドリル5が着脱機構9により着脱自在に取着してある。着脱機構9は操作ロッド17により操作するねじ軸10が回動することにより、係合ピン13が横方向に進退して掘削ドリル5をサヤ管1に係脱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばヒートポンプ採熱管、接地極、管路、地中センサー等を埋設するための掘削穴を形成する方法として好適な掘削ドリル脱着式掘削穴形成方法及びそのための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプ採熱管等の長尺埋設物を地中に設置する方法として、従来はオーガにより目的深度まで掘削して掘削穴を形成し、オーガを抜き取った掘削穴に長尺埋設物を押し込んで埋設する方法が採られていた。しかし、土質によってはオーガを抜き取った後に掘削穴が崩れる場合が多く、特に穴が深い程この崩れが生じるという欠点がある。そこで、先端に掘削ドリルを設けたサヤ管により掘削穴を形成し、目的深度に達したら逆転して掘削ドリルをサヤ管から分離し、埋設物をサヤ管内に挿装した後サヤ管を引抜く方法が提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2002−303088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、土質によっては掘削ドリルを正回転のみならず逆回転させなければ掘削が困難な場合があるが、サヤ管を逆回転させて掘削ドリルを離脱させる従来技術では、サヤ管を逆回転させることにより掘削効率を上げることには限界がある。また、掘削ドリルの離脱に土砂との摩擦を利用することから、土質の違いによっては離脱が円滑に行えずに作業に長時間かかるという問題があるし、土壌との摩擦力が小さいときにはサヤ管から掘削ドリルを離脱できない虞があるという欠点がある。
【0004】
本発明は従来技術の工法及び先行技術の欠点、問題点に鑑みなされたもので、サヤ管を逆方向に回転させることなく掘削ドリルを容易に、かつ確実に離脱できるので作業性に優れているし、地質に応じて掘削ドリルを正逆回転できるので掘削能率に優れており、またサヤ管の回転に伴って掘削土を掻き揚げるので掘削ドリルに掛かる負荷を低減し、掘削効率を上げることができる掘削ドリル脱着式掘削穴形成方法及びそのための装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決する請求項1に係る本発明を構成する手段は、 操作ロッドにより作動する着脱機構を介してサヤ管の先端に装着した掘削ドリルを用い、複数本の操作ロッドとサヤ管を軸方向に逐次連結しながら掘削穴を形成し、目的深度まで掘削したら前記着脱機構を作動して前記サヤ管から掘削ドリルを離脱し、次いで前記操作ロッド及び着脱機構を前記サヤ管から撤去した後、該サヤ管を掘削穴から撤去するようにしたことにある。
【0006】
請求項2に係る本発明を構成する手段は、軸方向に連結自在な複数の連結管体から構成され、駆動源により回転駆動されるサヤ管と、該サヤ管の先端に着脱自在に取着する掘削ドリルと、軸方向に連結自在な操作ロッドにより地上から操作可能に構成され、前記掘削ドリルとサヤ管を着脱可能に連結する着脱機構とからなる。
【0007】
そして、前記サヤ管から掘削ドリルの略全長に亘って、外周面に螺旋状の掻揚げ羽根を設けるとよい。
【0008】
また、前記着脱機構は、前記操作ロッドにより回動するねじ軸と、該ねじ軸が挿通した状態で前記掘削ドリルに保持された不動支持体と、前記ねじ軸に螺合して進退する可動支持体と、該可動支持体と不動支持体にピン結合され、可動支持体の進退により拡縮する一対のリンクと、該各リンクに支持され、横方向に進退することにより前記掘削ドリルからサヤ管にかけて係脱するロックピンとから構成するとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は以上詳述した如く構成したから、下記の諸効果を奏する。
(1)操作ロッドにより作動する着脱機構によって掘削ドリルをサヤ管に離脱可能に、かつ正逆方向に一体回転可能に設けたから、掘削ドリルを地質に応じて正、逆回転することが可能であり、掘削効率を上げることができる。
(2)着脱機構を操作ロッドで操作することにより、掘削ドリルはサヤ管から容易に、かつ確実に切離すことが可能であるから、切離し作業が地質に左右されるといったこともなく、作業性に優れている。
(3)サヤ管から掘削ドリルにかけて外周面に螺旋状の掻揚げ羽根を設け、掘削しながら廃土するようにしたから、掘削土によって掘削ドリルの掘削性能が損われる事態を解消し、掘削効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基いて詳述する。図1乃至図6において、1は内部が中空部1Aになった長尺のサヤ管を示し、該サヤ管1は複数本の連結管体2と、先端連結管体3と、これらを連結する複数本の接続管4とから構成してあり、これらを接続することにより軸方向に伸長可能になっている。
【0011】
前記連結管体2は鋼管からなり、軸方向両端側に小径段部2Aを形成し、該小径段部2Aに凹凸状の係合部2Bを形成し、小径段部2Aの先端側に係合突起2Cを設けたものからなる。先端連結管体3は鋼管からなり、軸方向上側に小径段部3A(但し、図示せず。)を形成し、該小径段部3Aの先端側と軸方向下側の先端側に凹凸状の係合部3B(下側係合部3Bのみ図示)を形成し、該下側係合部3Bの上側に連結穴3Cを穿設したものからなる。また、連結管体2に外嵌する接続管4は鋼管からなり、軸方向両端側には前記係合突起2Cが嵌入する略L字状の係合溝4A、4Aが形成してある(図1参照)。
【0012】
かくして、各連結管体2の両端に接続管4を嵌合し、係合突起2Cと係合溝4Aを係合して径方向に捻ることにより、一体回転が可能な状態で連結管体2同士を連結できると共に、サヤ管1を伸長することができる。また、先端連結管体3は下端の連結管体2に係合することにより軸方向に連結できるようにしてある。
【0013】
5はサヤ管1の先端に着脱可能に設ける掘削ドリルを示す。6は該掘削ドリル5を構成する鋼管からなる接続筒体で、該接続筒体6は上部側に先端連結管体3と挿嵌する小径嵌入部6Aを形成し、該小径嵌入部6Aに凹凸状の係合部6Bを形成し、小径段部6Aの下側に対向して一対の嵌合穴6C、6Cを穿設したものからなる。7は該接続筒体6の下側に固着したドリル本体で、該ドリル本体7は略弾頭状の基体7Aと、該基体7Aの先端から軸方向に突設した錐7Bと、基体7Aの先端から横方向に突設した掘削刃7Cとから構成してある。
【0014】
8は上述したサヤ管1から掘削ドリル5にかけて外周面に設けられ、掘削により出る廃土を地上に排出するための掻揚げ羽根を示す。該掻揚げ羽根8は連結管体2、先端連結管体3、接続管4及び掘削ドリル5に対応して掻揚げ羽根部8A、8B、8C、8Dに分割してあり、サヤ管1から掘削ドリル5にかけて螺旋状に一体に連続するようにしてある。
【0015】
9は前記掘削ドリル5を先端連結筒体3に係脱可能に連結する着脱機構を示す。10は着脱機構9を構成するねじ軸で、該ねじ軸10は外面にねじが刻設してある軸本体10Aと、後述する操作ロッド17を着脱可能に連結するために該軸本体10Aの上端に形成した連結頭部10Bとからなる。11は該ねじ軸10の上部側に回動自在に嵌合された不動支持体で、該不動支持体11は金属製円板からなる上側基板11Aと、該上側基板11Aの下面に固着した金属製立方体からなる軸受部11Bと、上側基板11Aから該基体11Bに縦方向に貫通して穿設した軸穴11Cとからなる。
【0016】
12は前記不動支持体11に対向してねじ軸10に螺合した可動支持体としての昇降支持体を示し、該可動支持体14は金属製円板からなる下側基板12Aと、該下側基板12Aの上面に固着した金属製立方体からなるねじ受部12Bと、下側基板12Aからねじ受部12Bに縦方向に貫通して穿設したねじ穴12C(但し、図示せず。)とからなる。
【0017】
13、13は掘削ドリル5をサヤ管1に係脱可能に連結する左右一対の係合ピンを示し、該各係合ピン13は基部13Aと、該基部13Aから横方向に突出したピン本体13Bとから形成してある。14、14は前記係合ピン13を横方向に進退可能に支持する上下一対のリンクで、該各リンク14は昇降支持体12のねじ受部12Bと不動支持体11の軸受部11Bに基端側を連結ピン15、15で軸支し、先端側を係合ピン13の基部13Aに連結ピン16、16で軸支して連結してある。
【0018】
着脱機構9は上述の構成からなっており、掘削ドリル5をサヤ管1に連結する前は、図3及び図4に示すように、昇降支持体12は最も下降した位置にあり、リンク14、14は伸長した状態になって係合ピン13、13は内側に後退し、掘削ドリル5及びサヤ管1から離間した状態にある。
【0019】
逆に、掘削ドリル5をサヤ管1に連結する場合は、ねじ軸10の連結頭部10Bに連結した操作ロッド17を所定方向に回転操作し、ねじ軸10の回転によって昇降支持体12を上昇させると、不動支持体11に接近することによりリンク14、14が略く字状に屈曲して縮小した状態になる。これにより、係合ピン13が押出されるように横方向に進出し、掘削ドリル5の連結穴6Cからサヤ管1の連結穴3Cにまで進入する結果(図5及び図6参照)、掘削ドリル5をサヤ管1に対して離脱不能の状態に連結することができる。
【0020】
なお、上記操作ロッド17は複数本のロッド構成軸17A、17A、・・・からなっており、サヤ管1と同様に軸方向に連結することにより伸長可能に構成してある。また、サヤ管1の上端には駆動用の可逆型油圧モータ18が継手19を介して着脱可能に接続するようになっている(図7参照)。
【0021】
次に、本実施の形態に係る掘削ドリル脱着式掘削穴形成装置を用いる掘削の工法について、図7及び図8を参照しつつ説明する。なお、図中の数字は工程順を示す。先ず、着脱機構9を前述した操作を行うことにより、先端連結管体3の先端に掘削ドリル5を取着する。他方、複数本のロッド構成軸17Aを連結して操作ロッド17を伸長すると共に、適宜の本数の連結管体2を接続してサヤ管1を伸長し、サヤ管1の上端に継手19を介して油圧モータ18を接続する(工程1)。各構成要素の組み付けが完了したら、例えばクレーンで吊り下げた状態にして、掘削ドリル5を回転して掘削を開始し(工程2)、継手19が埋まる近くまで掘削する(工程3)。
【0022】
次に、継手19と油圧モータ18をサヤ管1から外し、ロッド構成軸17Aを継ぎ足して操作ロッド17を伸長し、連結管体2を継ぎ足してサヤ管1を伸長した後、継手19及び油圧モータ18を再度接続して掘削を行う(工程4乃至8)。以下、この工程4〜8を繰り返して掘削を行う(工程9)。
【0023】
目的深度まで掘削したら、操作ロッド17を逆方向に回転して着脱機構9の昇降支持体12を降下させ、各係合ピン13を後退させて連結穴6C、3Cから離脱させ、先端連結管体3から掘削ドリル5を離脱可能な状態にする。しかる後、サヤ管1から操作ロッド17及び着脱機構9を抜き出し(工程10)、掘削穴にサヤ管1のみを残す(工程11)。
【0024】
次に、サヤ管1の中空部1Aを介して例えば採熱管、地中センサー等の埋設物Aを掘削先端まで挿入したら(工程12及び13)、サヤ管1に継手19、油圧モータ18を再度接続し(工程14)、サヤ管1を回転させながらクレーン等の吊り上げ手段によって引抜き(工程15)、ある程度の長さ引抜いたら継手19、油圧モータ18を取外して接続してある連結管体2を取外す(工程16)。この工程14〜16を繰り返すことにより、サヤ管体1を掘削穴から撤去し、最後に掘削穴に砂を充填することにより掘削、埋設作業が完了する(工程17)。
【0025】
掘削ドリル脱着式掘削穴形成装置を用いた作業工程は上述のとおりであるが、掘削ドリル5は着脱機構9によってサヤ管1に正逆回転可能に接続してあるから、掘削作業において地質の変化により掘削ドリル5を逆回転させる必要がある場合にも対応することが可能であり、掘削効率を高めることができる。
【0026】
また、サヤ管1からの掘削ドリル5の離脱は着脱機構9という機械的仕組みによって行い、土砂との摩擦を利用しないから土質の違いによる不安定な影響を受けることがなく、掘削ドリル5を確実に離脱させることができる。
【0027】
更に、サヤ管1から掘削ドリル5に至る略全長に螺旋状の掻揚げ羽根8を設けることにより掘削しながら廃土するようにしたから、掘削土によって掘削ドリル5の掘削性能が阻害される事態を解消することができる。また、掻揚げ羽根8は掘削穴の内壁に線接触して回転するから、サヤ管1を掘削穴から抜出す場合の抵抗は小さくなり、作業効率を上げることができる。
【0028】
なお、本実施の形態では連結管体2は接続管4を用いて接続したが、連結管体同士を例えば雌雄嵌合により連結する構成、或いは他の公知の連結構成にしてもよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は本発明の実施の形態に係るサヤ管の構成を示す説明図である。
【図2】サヤ管に連結した掘削ドリルの外観図である。
【図3】連結機構の説明図である。
【図4】図3中のIV−IV矢示方向断面図である。
【図5】サヤ管と掘削ドリルを連結した連結機構の説明図である。
【図6】図5中のVI−VI矢示方向断面図である。
【図7】掘削穴形成工程の前半を示す説明図である。
【図8】掘削穴形成工程の後半を示す説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 サヤ管
1A 中空部
2 連結管体
3 先端連結管体
4 接続管
5 掘削ドリル
8 掻揚げ羽根
9 着脱機構
10 ねじ軸
11 不動支持体
12 可動支持体
13 係合ピン
14 リンク
17 操作ロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作ロッドにより作動する着脱機構を介してサヤ管の先端に装着した掘削ドリルを用い、複数本の操作ロッドとサヤ管を軸方向に逐次連結しながら掘削穴を形成し、目的深度まで掘削したら前記着脱機構を作動して前記サヤ管から掘削ドリルを離脱し、次いで前記操作ロッド及び着脱機構を前記サヤ管から撤去した後、該サヤ管を掘削穴から撤去するようにしてなる掘削ドリル脱着式掘削穴形成工法。
【請求項2】
軸方向に連結自在な複数の連結管体から構成され、駆動源により回転駆動されるサヤ管と、該サヤ管の先端に着脱自在に取着する掘削ドリルと、軸方向に連結自在な操作ロッドにより地上から操作可能に構成され、前記掘削ドリルとサヤ管を着脱可能に連結する着脱機構とから構成してなる掘削ドリル脱着式掘削穴形成装置。
【請求項3】
前記サヤ管から掘削ドリルの略全長に亘って、外周面に螺旋状の掻揚げ羽根を設けてあることを特徴とする請求項2記載の掘削ドリル脱着式掘削穴形成装置。
【請求項4】
前記着脱機構は、前記操作ロッドにより回動するねじ軸と、該ねじ軸が挿通した状態で前記掘削ドリルに保持された不動支持体と、前記ねじ軸に螺合して進退する可動支持体と、該可動支持体と不動支持体にピン結合され、可動支持体の進退により拡縮する一対のリンクと、該各リンクに支持され、横方向に進退することにより前記掘削ドリルからサヤ管にかけて係脱する係合ピンとから構成してある請求項2記載の掘削ドリル脱着式掘削穴形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−291684(P2007−291684A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−119486(P2006−119486)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(391024892)北海電気工事株式会社 (7)
【Fターム(参考)】