説明

掘削工法

【課題】水抜き効果の低減を防止するとともに、削孔の形成とともに水抜き管を削孔内に効率的に挿入することができ、しかも水抜き管内の繰り粉の滞留を防ぐ。
【解決手段】フレキシブル筒状織物を用いた水抜き部1Aを有する水抜き管1内に、先端部に掘削工具本体4が装着される掘削ロッド8が挿入されて、水抜き管1の先端に掘削工具本体4が突出させられ、水抜き管1と掘削ロッド8との間には、管状をなすとともに径方向に貫通部が形成されていない無孔管10がこの径方向に掘削ロッド8と間隔をあけて介装された掘削工具を用いて、掘削ロッド8を介して掘削工具本体4により削孔を形成するとともに、この削孔を形成する際の掘削ロッド8の前進によって無孔管10と水抜き管1とを牽引して削孔内に挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地山の改良・維持・補修などにおいて、特に地盤からの水抜き管としてフレキシブル筒状織物を用いた水抜き部を有する水抜き管を削孔と同時に埋設可能とした掘削工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネルなどを構築する際に、このように水抜き管を削孔に埋設する工法としては、例えば特許文献1に、削孔ビットに内管ロッドを介して推力と回転力および打撃とを加えながら削孔を掘削し、掘削された削孔内に有孔外管(有孔管)を水抜き管として挿入し、所定長さの有孔外管を地山に設置した後に、削孔ビットの一部と内管ロッドとを抜き出す水抜き工法において、有孔外管の先端側に推力と打撃との動力伝達部分を設け、有孔外管を前引き方式で削孔内に挿入する工法が提案されている。
【特許文献1】特許第3198087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、この特許文献1に記載の工法では、掘削工具が内管ロッドと有孔外管より成る二重管構造であり、削孔の際に削孔ビットによって生成された地盤の掘削屑である繰り粉(スライム)は、上記内管ロッド内を通して供給される削孔水やエアにより、内管ロッドと有孔外管との間の間隔部分を通して掘削工具の後端側(削孔の開口部側)に送り出されて排出されることになる。
【0004】
しかしながら、この特許文献1の掘削工具では、上記間隔部分の外周側には有孔外管の貫通孔が開口していて削孔に連通した状態となっているため、特に貫通孔の開孔率(浸透率)の高い有孔外管を用いたりすると、繰り粉排出のための上記削孔水やエアーが貫通孔から削孔内に漏れ出してしまい、繰り粉を確実に排出することが困難となって途中で滞留してしまうおそれがある。そして、このように繰り粉の滞留が生じると、その後に送り出された繰り粉が詰まりを生じて削孔作業に支障を来したり、削孔後に削孔ビットや内管ロッドを抜き出すことができなくなったりすることになる。
【0005】
また、この特許文献1に開示された水抜き工法においては、地盤に埋設する水抜き管として有孔鋼管が用いられている。このため、地盤における水抜きを行う際、地盤内の細粒分や砂分が流出して地盤内に空洞を生じさせたり、有孔鋼管における孔が細粒分や砂分によって目詰まりして水抜き効果が低減したりするという問題があった。また、地山からの土圧や地山の変形などにより、埋設した水抜き管が折れ曲がり、湧水の排出路が遮断されるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような背景の下になされたもので、このような地盤内の細粒分や砂分の流出による地盤内の空洞の発生や、水抜き管の目詰まり、さらには水抜き管の折れ曲がりによる水抜き効果の低減を防止することができるとともに、削孔の形成とともに水抜き管をこの削孔内に効率的に挿入することができ、しかもこうして水抜き管を削孔と同時に埋設する場合にでも水抜き管内に繰り粉の滞留を生じることがなく、確実かつ円滑な削孔および水抜き管の埋設を行うとともに効果的な水抜きが可能な掘削工法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の掘削工法は、フレキシブル筒状織物を用いた水抜き部を有する水抜き管内に、先端部に掘削工具本体が装着される掘削ロッドが挿入されて、上記水抜き管の先端に上記掘削工具本体が突出させられており、上記水抜き管と掘削ロッドとの間には、径方向に該掘削ロッドと間隔をあけて管状をなすとともに径方向に貫通部が形成されていない無孔管が介装された掘削工具を用いて、上記掘削ロッドを介して上記掘削工具本体により削孔を形成するとともに、この削孔を形成する際の上記掘削ロッドの前進によって上記無孔管と上記水抜き管とを牽引して該削孔内に挿入することを特徴とする。
【0008】
本発明においては、まず水抜き管として、フレキシブル筒状織物を用いた水抜き部を有するものを用いている。フレキシブル筒状織物は網目が細かいため、細粒分や砂分が流出しにくい。このため、地山内の細粒分や砂分の流出による地山内の空洞の発生を防止することができる。また、フレキシブル筒状織物は全周面で集水する構造であることから、目詰まりがし難く、しかも透水係数を高くすることができる。従って、目詰まりによる水抜き効果の低減を防止することができる。また、水抜き管としてフレキシブル筒状織物を用いることにより、地山から土圧がかかったり、地山が変形したりした場合でも、地山の変形に追従等して水抜き管が変形するので、水抜き管の折れ曲がりによる湧水の排出路の遮断を防止することができ、水抜き効果の低減を防止することができる。
【0009】
さらに、本発明に用いる掘削工具では、上記水抜き管内に無孔管と、この無孔管内にはさらに掘削ロッドとが挿入されることになり、この掘削ロッドも、その内部に繰り粉排出用の媒体(水やエアー)が供給される供給路が形成された管状のものである場合には、これら水抜き管、無孔管、および掘削ロッドによって三重管構造をなすことになる。そして、このうち掘削ロッドと無孔管との間には径方向に間隔があけられているので、例えば掘削ロッド先端に装着される掘削工具本体に、上記掘削ロッドと無孔管との間の間隔部分に連通する排出路を形成したりすることによって、この排出路を介して、上記掘削工具本体により生成された繰り粉を上記掘削ロッドと無孔管との間の間隔部分を通して排出することができる。
【0010】
従って、繰り粉は上記排出用の媒体とともに、貫通部が形成されていない無孔管内を、掘削ロッドとの間隔部分を通って後端側に送り出されて排出されることになるので、開孔率(浸透率)の高い水抜き管を用いたとしても、この排出用の水やエアー等の媒体が削孔内に漏れ出るようなことがなく、該媒体によって繰り粉を確実に押し出して排出することができて、水抜き管内で繰り粉の滞留等が生じるのを防ぐことができる。そして、本発明では、このような無孔管と上記水抜き管とが、削孔を形成する際の掘削ロッドの前進によって牽引されて該削孔内に挿入されるため、これら無孔管や水抜き管を、例えば掘削ロッドとは異なる駆動手段で前進させたりするのに比べて、効率的に削孔内に挿入しながら掘削を行うことができ、上述のように繰り粉を排出して削孔を形成した後は水抜き管を削孔内に残して掘削ロッドと無孔管とを水抜き管内から抜き出すことにより、地山に含まれている水を上記フレキシブル筒状織物よりなる水抜き部から該水抜き管内に効果的に導いて排出することができる。
【0011】
ここで、上記掘削工具本体が掘削ロッドを介して与えられる上記軸線方向先端側への推力や特に打撃力によって削孔を形成するものである場合には、上記掘削ロッドの先端部外周に、後端側に向けて外径が一段大きくなる第1当接部を備えるとともに、上記無孔管の先端部内周には、先端側に向けて内径が一段小さくなる第1被当接部を備え、この第1被当接部に上記第1当接部を先端側に向けて当接させて、掘削ロッドからの上記推力や打撃力を無孔管にも与えることによって、上記無孔管を上記掘削ロッドの前進により牽引して上記削孔に挿入することができる。
【0012】
また、この場合には、さらに上記無孔管の先端部に第2当接部を備えるとともに、上記水抜き管の先端部内周には、先端側に向けて内径が一段小さくなる第2被当接部を備え、この第2被当接部に上記第2当接部を先端側に向けて当接させて、上述のように無孔管に与えられた推力や打撃力をその外周の水抜き管にも伝播させ、水抜き管を上記掘削ロッドおよび上記無孔管の前進により牽引して削孔に挿入し、埋設することが可能となる。
【0013】
一方、こうして水抜き管が削孔内に埋設された後に、内部の無孔管と掘削ロッドとを後退させて引き抜く際には、上記掘削ロッドの先端部外周に、後端側に向けて外径が一段小さくなる第3当接部を形成するとともに、上記無孔管の先端部内周には、後端側に向けて内径が一段小さくなる第3被当接部を備え、この第3被当接部に上記第3当接部を後端側に向けて当接させて、掘削ロッドを後退させることでその第3当接部に第3被当接部が当接した無孔管も一体に後退させるようにして、上記無孔管を上記掘削ロッドとともに後退させることにより該掘削ロッドと無孔管とを上記水抜き管内から抜き出すことができ、これらを別々に引き抜く場合に比べて作業の効率化を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、地盤内の細粒分や砂分の流出による地盤内の空洞の発生や、水抜き管の目詰まりによる水抜き効果の低減を防止することができるとともに、この水抜き管内で繰り粉が滞留してしまうのを防ぐことができ、さらに削孔時の掘削ロッドの前進に伴って無孔管と水抜き管とを前進させて効率的に削孔内に挿入することができる。従って、これらにより、削孔の形成および水抜き管の打設を確実かつ円滑に行うことが可能となり、また、これら削孔および打設後に掘削ロッドや無孔管を引き抜くときにも支障のない作業を促すことができて、る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1ないし図5は、本発明の掘削工法の一実施形態に用いる掘削工具を示すものである。この掘削工具において水抜き管1は軸線Oを中心とした外形略円管状をなしており、その管本体1Aの先端部には内周に雌ネジ部が形成された先端口金1Bが取り付けられるとともに、後端部には外周に雄ネジ部が形成された後端口金1Cが取り付けられ、必要に応じて、同径で所定の長さの複数本の水抜き管1がこれら先後端口金1B、1Cを螺合させることによって軸線O方向に順次継ぎ足されつつ、当該掘削工具の先端側(図1において左側)から削孔内に挿入されてゆく。
【0016】
なお、これら雄ネジ部と雌ネジ部とは、互いに入れ違えて配置した態様とすることもできる。また、口金1B、1Cと管本体1Aとの接続を強固にするために、接着剤を併用したり、各ネジ部をタケノコ状にしたりすることもできる。さらに、最も後端側に配設された水抜き管1の後端口金1Cには保護キャップをねじ込むことによりネジ山の損傷を防止するようにしてもよい。さらにまた、これら雌雄ネジ部の螺合による連結に代えて、先後端口金1B、1Cを嵌合、あるいは突き合わせて溶接等により接合することにより連結するようにしてもよい。
【0017】
そして、この水抜き管1の管本体1Aは、可撓性を有するフレキシブル筒状織物によって構成されていて、本実施形態における水抜き部とされている。このフレキシブル筒状織物は、複数本のタテ糸と2種類のヨコ糸とによって形成されて、タテ糸はポリエステル繊維の紡績糸7090dtexからなり、2種類のヨコ糸はそれぞれ亜塩めっき硬鋼線60Cφ1.6mmとポリエステル樹脂からなる剛直なモノフィラメント糸φ1.6mmからなる。このフレキシブル筒状織物では、複数本のタテ糸に対して2種類のヨコ糸がスパイラル(螺旋)状に織り込まれている。例えば、タテ糸の本数は144本、ヨコ糸の打ち込み(長さ方向への込み具合)は4.0本/cmである。
【0018】
さらに説明すると、2種類のヨコ糸はいずれもスパイラル状をなしており、それぞれ交互に挿入された状態で配置されている。この2本のヨコ糸に対して、タテ糸が、ヨコ糸が形成するスパイラルの軸方向に沿って配置されている。このとき、タテ糸は、ヨコ糸が形成するスパイラルの半径方向に振幅を有する波状をなしており、隣り合うタテ糸とは、ヨコ糸のうちいずれか1本分の位相差を持って配置されている。
【0019】
このフレキシブル筒状織物は網目が細かいため、細粒分や砂分が流出しにくく、全周面で集水する構造であるため、有孔管に比べて目詰まりしにくい。しかしながら、透水係数は10−1〜10−2cm/sec程度と大きく、集水能力が高い水抜き管である。また、一方のヨコ糸として硬鋼線を用いることにより、水抜き管1を削孔に挿入した後、地山の土圧に対して偏平につぶれないだけの剛性を確保することができる。また、他方のヨコ糸としてモノフィラメント糸を用いることにより、水抜き管1の全体としての軽量化を図ることができる。
【0020】
一方、上述のように必要に応じて継ぎ足される水抜き管1のうち最先端の水抜き管1の先端口金1Bの雌ネジ部には、径方向への貫通部を有することのない該先端口金1Aと同内外径の接続管2の後端部外周に形成された雄ネジ部がねじ込まれて取り付けられているとともに、この接続管2の先端部内周には、後端側部分が先端側部分よりも内外径ともに一段小さくされた多段円筒状の水抜き管ケーシングトップ3の上記後端側部分が挿入されて溶接により接合されている。従って、この水抜き管ケーシングトップ3の後端側部分は水抜き管1の管本体1Aおよび口金1B、1Cや接続管2の内径よりも一段小さくされて、その後端面が、水抜き管1の先端部内周に形成されて先端側に向けて内径が一段小さくなる本実施形態における水抜き管1の第2被当接部3Aとされる。
【0021】
なお、この第2被当接部3Aは、外周側に向かうに従い僅かに後端側に向かうように傾斜した軸線Oを中心とする凹円錐状面とされている。また、水抜き管ケーシングトップ3の先端部の外径は水抜き管1および接続管2の外径と等しくされるとともに、この先端部の内周先端側には雌ネジ部3Bが環状をなして内周側に一段縮径するように形成されている。
【0022】
さらに、この水抜き管ケーシングトップ3の先端部には、掘削工具本体4が突出するように取り付けられている。この掘削工具本体4は、先端部が軸線Oを中心とする円盤状をなすとともに、後端部は先端部よりも外径が一段小径とされた軸線Oを中心とする略円筒状をなして先端部と一体形成されたものであり、この先端部の先端面には超硬合金等の硬質材料よりなるチップ5が図2に示すように多数植設されている。
【0023】
この掘削工具本体4の先端部の外径は、上記水抜き管1、接続管2、および水抜き管ケーシングトップ3の外径よりも大径とされるとともに、後端部の外径は、水抜き管ケーシングトップ3の上記雌ネジ部3B内に嵌挿可能な大きさとされている。ただし、この後端部の外周部後端側には、雌ネジ部3Bに螺合する雄ネジ部4Aが環状をなして外周側に一段拡径するように形成されていて、この雄ネジ部4Aの外径は、水抜き管ケーシングトップ3先端部内周の雌ネジ部3Bよりも後端側の部分に嵌挿可能な大きさとされている。
【0024】
このような掘削工具本体4は、雄ネジ部4Aが雌ネジ部3Bに螺合させられて後端側にねじ込まれ、さらに雄ネジ部4Aが雌ネジ部3Bを後端側に越えて抜け出た状態で、その後端部が水抜き管ケーシングトップ3の先端部内周に収容されるようにして取り付けられる。そして、こうして取り付けられた掘削工具本体4は、水抜き管ケーシングトップ3および水抜き管1に対して、軸線O回りに回転自在とされるとともに、軸線O方向後端側に向けては水抜き管ケーシングトップ3の先端面に先端部の後端面が当接するところまで、また先端側に向けては雄ネジ部4Aが雌ネジ部3Bの後端に当接するところまでの間で、該軸線O方向に所定のストロークで進退自在とされ、すなわち先端側には抜け止めされた状態とされる。
【0025】
また、図3に示すように掘削工具本体4の後端部内周には、軸線Oに平行に延びる複数(本実施形態では3つ)の断面略円弧状の凹溝4Bが周方向に等間隔に形成されており、隣接するこれら凹溝4B同士の間には、掘削工具本体4の後端面から後端部内周の底面4Cの手前にまで延びる複数(凹溝4Bと同じ本実施形態では3つ)の突条部4Dがそれぞれ形成される。なお、これらの突条部4D内周の突端面は軸線Oを中心とした1の凹円筒面上に位置するように形成されている。また、この掘削工具本体4後端部内周の底面4C側には、突条部4Dよりも径方向外周側に凹み、かつ凹溝4Bよりは径方向外周側に浅い内径を有する軸線Oを中心とした環状溝4Eが形成されている。
【0026】
さらに、この掘削工具本体4後端部内周の上記底面4Cは、軸線Oに垂直な平坦面とされていて、この底面4Cからは軸線Oに沿って先端側に凹孔6Aが形成されるとともに、この凹孔6Aからは先端側に向けて外周側に分岐して掘削工具本体4の先端面に開口する複数(本実施形態ではやはり凹溝4Bと同じ3つ)の分岐孔6Bが周方向に等間隔に形成されていて、これら凹孔6Aおよび分岐孔6Bにより、後述する繰り粉排出用媒体の掘削工具本体4における供給路6が形成される。なお、この底面4Cは、掘削工具本体4の先端部の後端面よりも先端側に位置するようにされている。
【0027】
さらにまた、掘削工具本体4の先端面には、これらの分岐孔6Bの開口部から径方向外周側に延びる先端排出溝7Aが形成されるとともに、掘削工具本体4の先端部外周面には、これらの先端排出溝7Aの外周端にそれぞれ連通して後端側に延びる先端排出溝7Aよりも幅広の外周排出溝7Bが、該先端部の後端面よりも手前にまで形成されている。さらに、これらの外周排出溝7Bの後端部からは、内周側に向けて後端側に向かうように排出孔7Cがそれぞれ形成されていて、これらの排出孔7Cは、掘削工具本体4後端部内周の上記凹溝4Bの内周側を向く底面に各々開口させられ、これら排出溝7A、7B、および排出孔7Cによって掘削工具本体4の繰り粉の排出路7が構成されている。
【0028】
一方、水抜き管1内には、その後端側から接続管2にかけて上記軸線Oに沿って掘削ロッド8が挿入されている。この掘削ロッド8は、そのロッド本体8Aが軸線Oを中心とした外形正六角柱状に形成されるとともに、このロッド本体8Aの両端部には、該ロッド本体8Aよりも小径の雄ネジ部8Bが同軸に延びるように一体形成されたものであって、水抜き管1と同様に必要に応じて複数本の掘削ロッド8が、上記雄ネジ部8Bに螺合する雌ネジ部が形成された図示されない連結部材を介して軸線O方向に継ぎ足されて水抜き管1に挿入されるようになされている。
【0029】
そして、このうち最後端に位置した掘削ロッド8の後端には、図1に示すようにカップリングCを介して削岩機の駆動軸Dが連結され、この削岩機により掘削時に掘削ロッド8は、図2ないし図5に符号Tで示す回転方向に向けた軸線O回りの回転力と、該軸線O方向先端側に向けた推力および打撃力とを受ける。また、上記駆動軸DおよびカップリングCには、上記掘削工具本体4が地盤を掘削することによって生成された繰り粉を排出するための媒体(掘削水やエアー)を供給する供給孔Eが軸線Oに沿って形成されるとともに、この供給孔Eに連通するように各掘削ロッド8には、その上記両端部間に亙って貫通孔8Cが軸線Oに沿って形成されている。
【0030】
なお、水抜き管1の上記管本体1Aにおけるフレキシブル筒状織物において、タテ糸に対してヨコ糸がスパイラルに挿入される方向(スパイラル状の回転進行方向)は、この掘削時における掘削ロッド8の回転方向Tとされている。スパイラル状をなすヨコ糸の回転進行方向を掘削ロッド8の回転方向Tとすることにより、掘削ロッド8の回転力が水抜き管1に影響を与えたとしても、掘削ロッド8の回転によってヨコ糸がタテ糸に対して締め付けられる方向に対する回転が付与されることになる。従って、タテ糸に対するヨコ糸の緩みを防止することができる。この結果、水抜き管1の軸方向の剛性が損なわれることによる水抜き管1の蛇行を防止することができる。
【0031】
さらに、複数の掘削ロッド8のうち最先端の掘削ロッド8の先端側には、デバイス9が取り付けられて当該掘削ロッド8の先端部を構成している。このデバイス9は、その外形が、先端側部分が後端側部分に対して一段縮径した概略多段円柱状をなし、この先端側部分の外径は水抜き管ケーシングトップ3の後端側部分の内径よりも僅かに小さくされている。従って、デバイス9のこれら先後端側部分の間には、後端側に向けて外径が一段大きくなる段差部が形成されることになって、この段差部が本実施形態における掘削ロッド8先端部外周の第1当接部9Aとされる。なお、この第1当接部9Aは、外周側に向かうに従い僅かに後端側に向かうように傾斜した軸線Oを中心とする凸円錐状面とされている。
【0032】
また、デバイス9の外周には、その先端から後端に亙って軸線Oに平行に延びる複数(本実施形態では凹溝4Bや分岐孔6B、排出溝7A、7B、および排出孔7Cと同じ3つ)の凹溝9Bが、周方向に等間隔に形成されている。これらの凹溝9Bは、デバイス9外周面からの溝深さが略一定となるようにされていて、すなわち該凹溝9Bの溝底が、図1に示すように先端側では軸線Oに平行に延びるように軸線Oからの外径が一定とされるとともに、後端側に向けて上記第1当接部9Aを僅かに越えたところで軸線Oに沿った断面で凹曲線状をなすように外径が一段大きくなり、後端側で再び一定の外径となって軸線Oに平行に延びるように形成されている。
【0033】
さらに、各凹溝9Bの周方向の幅は、図3および図4に示すように小径のデバイス9先端側部分で大径の後端側部分よりも大きくなるようにされていて、このうち後端側部分で凹溝9Bは、その軸線Oに垂直な断面形状が図4に示すように外周側に「コ」字状に開口するように形成されている。一方、これらの凹溝9Bは、デバイス9の先端側部分では図3に示すようにその溝底面が軸線Oを中心とした1の凸円筒面上に位置するように形成されていて、この凸円筒面の半径は、掘削工具本体4の後端部内周に形成された上記突条部4D内周の突端面が位置する1の凹円筒面の半径より僅かに小さくされている。
【0034】
さらにまた、こうして複数の凹溝9Bが形成されることによって、デバイス9の外周には隣接する凹溝9B同士の間に、軸線O方向に延びる凹溝9Bと同数の突条部9Cが形成されることになる。これらの突条部9Cは、デバイス9の小径とされた先端側部分で、その軸線Oからの外径が、掘削工具本体4の上記突条部4Dの突端面が位置する1の凹円筒面の半径より大きくされるとともに、上記環状溝4Eの内径よりは僅かに小さくされ、従って軸線Oから凹溝4Bの溝底までの内径よりも小さくされている。
【0035】
また、デバイス9の先端面9Dは軸線Oに垂直な平坦面とされるとともに、各突条部9Cの先端には、掘削時の掘削ロッド8の上記回転方向Tに突出する凸部9Eが形成されており、上記先端面9Dからこれらの凸部9Eの後端面までの軸線O方向の間隔は、掘削工具本体4後端部内周の上記底面4Cから環状溝4Eの先端側を向く面までの間隔よりも僅かに小さくされるとともに、凸部9Eの軸線Oからの外径は環状溝4Eの軸線Oからの内径よりも僅かに小さくされている。さらに、この凸部9Eを含めた各突条部9Cの周方向の幅は、掘削工具本体4の凹溝4Bの溝幅よりも小さくされている。
【0036】
従って、このデバイス9は、その先端側部分の各突条部9Cを凹溝4Bに収容しつつ、軸線Oに沿って掘削工具本体4の後端部内周に同軸に挿入可能とされる。さらに、こうしてデバイス9を挿入してその先端面9Dが上記底面4Cに当接したところで上記回転方向Tに回転させることにより、該デバイス9先端側部分の突条部9Cが掘削工具本体4後端部内周の突条部4Dに上記回転方向Tに向けて当接するとともに凸部9Eが環状溝4Eに収容され、これによって掘削工具本体4がデバイス9に対して軸線O方向に係合し、かつ該軸線O回りには上記回転方向Tに係合して一体に回転可能とされる。
【0037】
また、こうして係合した状態において掘削工具本体4後端部内周の各凹溝4Bとデバイス9の各凹溝9Bとは図3に示すように互いに連通するようにされ、これにより、これら掘削工具本体4とデバイス9との間には、掘削工具本体4の上記排出溝7A、7B、および排出孔7Cからなる排出路7からこれら凹溝4B、9Bを介してデバイス9の後端面に開口する繰り粉の排出経路が形成される。
【0038】
このようなデバイス9は、その後端部に形成された雌ネジ部9Fに、上記最先端の掘削ロッド8の先端側の雄ネジ部8Bがねじ込まれて、ピン止めされることにより軸線Oに同軸に取り付けられる。また、この雄ネジ部8Bの底面からは、掘削ロッド8の貫通孔8Cに連通する貫通孔9Gが軸線Oに沿って先端面9D中央に開口させられて、この先端面9Dを掘削工具本体4の底面4Cに当接させた状態で、掘削工具本体4の上記供給路6の凹孔6Aから分岐孔6Bに連通するようにされており、これら貫通孔8C、9Gおよび供給路6(凹孔6A、分岐孔6B)により、上記削岩機から供給される媒体の供給経路が形成されている。なお、貫通孔9Gからは外周側の各凹溝9Bの溝底に向けて後端側に傾斜するように分岐孔9Hが貫設されている。
【0039】
そして、さらに上記水抜き管1と掘削ロッド8との間には、軸線Oに対する径方向に該掘削ロッド8と間隔をあけて、該軸線Oを中心とした管状をなす無孔管10が挿入されて介装されている。この無孔管10は、鋼管等から形成されて軸線Oを中心とした外形円管状をなし、水抜き管1と同様に必要に応じて同径で所定の長さの複数本の無孔管10が溶接や螺合によって軸線O方向に順次継ぎ足されてゆくが、水抜き管1のフレキシブル筒状織物よりなる管本体1A(水抜き部)のように透水性を有してはおらず、軸線Oに対する径方向には液密かつ気密とされている。
【0040】
また、この無孔管10の外径は、水抜き管1の口金1B、1Cや接続管2の内径よりも僅かに小さい程度とされるとともに、水抜き管ケーシングトップ3の後端部の内径よりは大きくされていて、水抜き管1の口金1B、1Cや接続管2の内周に摺接可能か、この内周との間に極小さな間隔があけられる程度の大きさとされている。一方、無孔管10の内径は、掘削ロッド8の外径(ロッド本体8Aがなす正六角柱に外接する円筒の径)よりも十分大きくされ、これら無孔管10と掘削ロッド8との間の軸線Oに対する径方向の間隔は、無孔管10と水抜き管1との間の間隔よりも大きくされている。ただし、これら口金1B、1Cや接続管2と無孔管10の径方向の厚さ自体は略等しくされている。
【0041】
さらに、上述のように必要に応じて複数本継ぎ足される無孔管10のうち最先端の無孔管10の先端部には、無孔管ケーシングトップ11が取り付けられている。この無孔管ケーシングトップ11は、ともに軸線Oを中心とした多段円筒状をなす先端側部材11Aと後端側部材11Bとが、後端側部材11Bの内周に上記デバイス9の後端側部分を収容するとともに先端側部材11Aからデバイス9の先端側部分を突出させるようにして、溶接により同軸に継ぎ合わされて構成されている。
【0042】
このうち、後端側部材11Bは、全長に亙って無孔管10と等しい外径を有するとともに、その先端側部分の内径はデバイス9の上記後端側部分の外径より僅かに大きく、後端側部分の内径はこの先端側部分より一段縮径して小さくされた多段円筒状をなしている。なお、本実施形態ではこの後端側部材11Bは、さらに上記先端側部分と内径が小さくされた上記後端側部分とが螺合されて構成されており、またこのうち後端側部分の後端側では内径が再び大きくされて、この後端側部分の後端側内周に形成された雌ネジ部11Cに、上記最先端の無孔管10の先端部外周に形成された雄ネジ部10Aが螺合されることにより、当該後端側部材11Bは該無孔管10の先端に同軸に取り付けられる。
【0043】
ここで、この後端側部材11Bの上記後端側部分の一段縮径した内径はデバイス9の後端側部分の外径および無孔管10の内径よりも小さくされていて、後端側部材11Bの先端側部分内周に収容されたデバイス9の後端側部分の後端面の外周部が、内径が上述のように一段縮径したこの後端側部材11Bの段部に軸線O方向後端側に向けて当接可能とされている。すなわち、本実施形態では、このデバイス9の後端面外周部が掘削ロッド8において後端側に向け外径が一段小さくなる第3当接部9Iとされ、また無孔管ケーシングトップ11の後端側部材11Bの上記段部が無孔管10の第3被当接部11Dとされる。なお、こうして内径が小さくされた後端側部材11Bの後端側部分においても、その掘削ロッド8との間隔は、無孔管10と水抜き管1との間隔よりは大きく確保されている。
【0044】
さらに、上記先端側部材11Aは、その先端側部分がやはり無孔管10と等しい外径とされるとともに後端側部分は上記後端側部材11Bの先端側部分内周に嵌挿可能な外径とされ、さらに内径は先端側部分から後端側部分に亙って、デバイス9の上記先端側部分が挿通可能で該デバイス9後端側部分の外径よりも小さな一定内径とされている。そして、上記無孔管ケーシングトップ11は、上記後端側部材11Bの先端側部分内周にデバイス9の後端側部分を収容した状態で、先端側から先端側部材11Aの内周部にデバイス9先端側部分を挿通しつつ、該先端側部材11Aの後端側部分を後端側部材11Bの先端側部分内周に嵌挿した上で溶接することにより、これら先後端側部材11A、11Bが一体化されて構成される。
【0045】
従って、こうしてデバイス9の後端側部分を収容した後端側部材11Bに先端側部材11Aが接合されて無孔管ケーシングトップ11が構成されることにより、無孔管10の先端部の内周には、後端側部材11Bの先端部内周に嵌挿された先端側部材11Aの後端面によって先端側に向けて内径が一段小さくなる部分が形成されることになる。そして、この部分が本実施形態における無孔管10の第1被当接部11Eとされて、この第1被当接部11Eに、掘削ロッド8先端部のデバイス9において後端側に向けて外径が一段大きくなる上記第1当接部9Aが当接可能とされる。
【0046】
なお、この第1被当接部11Eは、第1当接部9Aと等しいテーパ角で外周側に向かうに従い僅かに後端側に向かうように傾斜した軸線Oを中心とする凹円錐状面とされる。また、この第1被当接部11Eと上記第3被当接部11Dとの間の軸線O方向の間隔は、デバイス9の上記第1当接部9Aからその後端面の第3当接部9Iまでの軸線O方向の長さより僅かに大きくされている。
【0047】
一方、水抜き管1の先端側の接続管2のさらに先端部に取り付けられた上記水抜き管ケーシングトップ3の後端側部分は、その内径が無孔管ケーシングトップ11のこれら先後端側部材11A、11Bや無孔管10の外径より小さくされており、従って無孔管10の先端部となる無孔管ケーシングトップ11の先端側部材11Aの先端面は、この水抜き管1の上記第2被当接部3Aとなる水抜き管ケーシングトップ3後端面に先端側に向けて当接可能とされて、本実施形態における無孔管10の第2当接部11Fとされる。なお、この第2当接部11Fも、第2被当接部3Aと等しいテーパ角で外周側に向かうに従い僅かに後端側に向かうように傾斜した軸線Oを中心とする凸円錐状面とされている。
【0048】
次に、このように構成される掘削工具により地盤を掘削して削孔を形成するとともに、この削孔に上記水抜き管1を挿入して埋設する場合の本発明の掘削工法の一実施形態について説明する。本実施形態では、掘削ロッド8の先端部にデバイス9を取り付けて、このデバイス9を、まず後端側部材11Bにその上記後端側部分が取り付けられていない状態での無孔管ケーシングトップ11内に後端側から挿入して、該デバイス9をこの後端側部材11B内に収容し、次いで掘削ロッド8の後端側から後端側部材11Bの後端側部分と無孔管10とを、その内周に掘削ロッド8を収容するようにして挿通して、後端側部材11Bの先端側部分に後端側部分を螺合させるとともに、この後端側部分の雌ネジ部11Cに無孔管10先端部の雄ネジ部10Aを螺合させる。
【0049】
その一方で、水抜き管1先端部の水抜き管ケーシングトップ3の先端に掘削工具本体4を取り付けて、この水抜き管1の後端側から、それぞれ先端部に無孔管ケーシングトップ11を取り付けた無孔管10とデバイス9を取り付けた掘削ロッド8とを一体に挿入する。さらに、上述のようにデバイス9先端側部分の突条部9Cを掘削工具本体4後端部内周の凹溝4Bに、掘削工具本体4の突条部4Dをデバイス9先端側部分の凹溝9Bにそれぞれ収容しつつ、該デバイス9先端側部分を掘削工具本体4の後端部内周に挿入し、先端面9Dが底面4Cに当接したところで掘削ロッド8およびデバイス9を上記回転方向Tに回転させることにより、掘削工具本体4をデバイス9に対して軸線O方向に係合させるとともに回転方向Tに向けて一体回転可能に係合させる。
【0050】
このようにデバイス9と掘削工具本体4とが軸線O方向と回転方向Tとに係合させられた掘削工具は、掘削工具本体4の先端面が地盤に当接させられて設置される。そして、上記削岩機の駆動軸DからカップリングC、掘削ロッド8、およびデバイス9を介して伝播される軸線O方向先端側への打撃力および推力と回転方向Tへの回転力とにより、この先端面に植設されたチップ5によって地盤を掘削して、水抜き管1の外径よりも大きな径の削孔を形成してゆく。
【0051】
また、こうして駆動軸Dから与えられる軸線O方向先端側への打撃力と推力は、デバイス9の第1当接部9Aから無孔管ケーシングトップ11の第1被当接部11Eにも伝えられて、これにより無孔管10が非回転で掘削ロッド8、デバイス9、掘削工具本体4とともに前進して削孔内に挿入される。さらに、この打撃力と推力は、無孔管ケーシングトップ11の第2当接部11Fから水抜き管ケーシングトップ3の第2被当接部3Aにも伝播して、これにより水抜き管1も非回転で前進して削孔内に挿入されてゆき、すなわち掘削ロッド8の前進により無孔管10と水抜き管1とが牽引されるように上記掘削工具全体が一体的に削孔内に挿入されて建て込まれてゆく。
【0052】
なお、こうして削孔を形成しつつ掘削工具を建て込んでゆく際には、削岩機から上述のように構成された供給路6を介して掘削水やエアー等の媒体が供給されて掘削工具本体4の先端側に噴出され、チップ5による掘削によって地盤が削り取られて生成した繰り粉(掘削屑)を除去してゆく。そして、こうして除去された繰り粉は、やはり上述のように構成された排出路7を介して、デバイス9の後端から掘削ロッド8と無孔管10との間の間隔部分に排出され、さらに媒体の圧力により後端側に押し出されて当該掘削工具後端から削孔外に排出される。
【0053】
また、こうして所定の深さまで削孔が形成されるとともに掘削工具が建て込まれた後は、掘削ロッド8およびデバイス9を回転方向Tの反対側に回転させて掘削工具本体4との係合をとき、デバイス9ごと掘削ロッド8を軸線O方向後方側に後退させる。すると、デバイス9の第3当接部9I外周が無孔管ケーシングトップ11の上記第3被当接部11Dに当接したところで、無孔管10もこれらデバイス9および掘削ロッド8と一体に後退させられて水抜き管1内から引き抜かれ、削孔内には水抜き管ケーシングトップ3を含めた水抜き管1と掘削工具本体4だけが残されて埋設された状態となる。
【0054】
従って、こうして水抜き管1が埋設された地盤からは、この水抜き管1の水抜き部である管本体1Aを通して地盤中の水分が水抜き管1内に浸透して水抜きが行われ、こうして抜かれた水分は該水抜き管1内を通して外部に排出される。そして、この水抜き部を形成する管本体1Aが、本実施形態ではフレキシブル筒状織物により形成されているため、上述のように細粒分や砂分が流出しにくい。また、全周面で集水する構造であるため、有孔管に比べて目詰まりしにくい。しかしながら、透水係数は10−1〜10−2cm/sec程度と大きい。このため、高い集水能力を発揮することができる。従って、目詰まりによる水抜き効果の低減を防止することができ、水抜き管として好適に用いることができる。
【0055】
また、フレキシブル筒状織物のヨコ糸として硬鋼線およびモノフィラメント糸の2種類のヨコ糸を用いることにより、水抜き管1を削孔に挿入した後、地山の土圧に対して扁平につぶれないだけの剛性を確保するとともに水抜き管1の全体としての軽量化を図ることができる。しかも、本実施形態では、無孔管10の外径が水抜き管1の口金1B、1Cや接続管2の内周に摺接可能か極小さな間隔があけられる程度の大きさとされているので、無孔管10によって水抜き管1を内周側から補強するように支持することができ、可撓性を有するフレキシブル筒状織物よりなる管本体1Aが削孔に挿入される際に変形したりするのも防ぐことが可能となる。
【0056】
さらに、上記構成の掘削工法では、こうして地盤に埋設される水抜き管1と、掘削工具本体4に推力および打撃力と回転力とを伝えて削孔を形成する掘削ロッド8との間に、水抜き管1のような水抜き部が形成されることのない径方向に液密かつ気密な無孔管10が介装されていて、掘削工具がこれら水抜き管1、無孔管10、および掘削ロッド8からなる三重管構造とされている。このため、削孔の際に生成された繰り粉を掘削水やエアー等の繰り粉排出用の媒体によって排出する際に、この三重管構造のうち上述のように掘削ロッド8と無孔管10との間の間隔部分を通して繰り粉を排出することにより、このような媒体が水抜き管1の水抜き部から外周の削孔内に漏れ出てしまって繰り粉が滞留するような事態を防止することができる。
【0057】
従って、上記構成の掘削工法によれば、水抜き管1として上述のような透水係数が高いフレキシブル筒状織物よりなる管本体1A(水抜き部)を備えたものを用いても、削孔時に繰り粉の排出が阻害されたりすることがなく、これによって掘削ロッド8や無孔管10の水抜き管1内からの引き抜きに支障が生じたりすることも防ぐことができる。このため、このように透水係数の高い水抜き管1を用いても、確実かつ円滑な削孔および水抜き管1の埋設を促すことが可能となって、一層効率的な地盤の水抜きを促すことができる。
【0058】
しかも、本実施形態の掘削工法では、このように掘削工具本体4によって生成された繰り粉を掘削ロッド8と無孔管10との間の間隔部分を通して排出するのに、この掘削ロッド8先端部のデバイス9に装着される掘削工具本体4に、この繰り粉を排出する排出路7を、掘削工具本体4およびデバイス9の凹溝4B、9Bを介して上記掘削ロッド8と無孔管10との間の間隔部分に連通するように形成している。従って、掘削工具本体4の先端面側で生成される繰り粉を、この排出路7から上記間隔部分に円滑に導入して一層確実な排出を促すことが可能となる。
【0059】
そして、さらに本実施形態では、上述のように削岩機の駆動軸Dから掘削ロッド8を介して掘削工具本体4に与えられる回転力と推力および打撃力により削孔が形成されるとともに、この削孔を形成する際の掘削ロッド8の前進によって無孔管10および水抜き管1を牽引して削孔内に挿入するようにしている。すなわち、本実施形態ではまず、この掘削ロッド8の先端部であるデバイス9の外周に、後端側に向けて外径が一段大きくなる第1当接部9Aが形成される一方、無孔管10の先端部である無孔管ケーシングトップ11の内周には、先端側に向けて内径が一段小さくなる第1被当接部11Eが形成されていて、この第1被当接部11Eに第1当接部9Aを掘削工具の先端側に向けて当接させることにより、削孔を形成する際の掘削ロッド8の推力や打撃力によって無孔管10を前進させて、掘削ロッド8および掘削工具本体4と一体に無孔管10をこの削孔内に引っ張り込むように牽引して挿入している。
【0060】
このため、例えば無孔管10は削岩機とは別の駆動手段によって削孔内に挿入したりするのに比べて、装置構造の簡略化を図るとともに駆動力を軽減することが可能となって効率的であり、また上述のように掘削ロッド8や無孔管10を継ぎ足す際の作業も容易とすることができる。その一方で、上記第1当接部9Aと第1被当接部11Eとは互いにテーパ角の等しい凹凸円錐面状とされているだけなので、掘削ロッド8の回転力は無孔管10に伝えられることはなく、従って掘削工具本体4に与えられる回転力のロスを少なくして、効率的な掘削を促すことができる。
【0061】
さらに、本実施形態では、この無孔管10先端部の無孔管ケーシングトップ11に第2当接部11Fが形成されるとともに、水抜き管1の先端部である水抜き管ケーシングトップ3には先端側に向けて内径が一段小さくなる第2被当接部3Aが形成されており、この第2被当接部3Aに第2当接部11Fを先端側に向けて当接させることにより、上述のように無孔管10(無孔管ケーシングトップ11)に与えられる推力や打撃力によって、この水抜き管1も掘削ロッド8および無孔管10とともに前進させて削孔内に牽引するように挿入している。このため、一層の装置構造の簡略化と駆動力の軽減とを促すことができるとともに、水抜き管1の継ぎ足し作業も容易とすることが可能となる。
【0062】
さらにまた、本実施形態では、掘削ロッド8先端部外周に、上記デバイス9の後端面によって後端側に向けて外径が一段小さくなる第3当接部9Iが形成されるとともに、無孔管10の先端部である無孔管ケーシングトップ11の内周には、後端側に向けて内径が一段小さくなる第3被当接部11Dが形成されていて、この第3被当接部11Dに上記第3当接部9Iを掘削工具の後端側に向けて当接させることにより、所定の深さの削孔が形成されて水抜き管1が埋設された後に、掘削ロッド8と無孔管10とを水抜き管1内から引き抜く際にも、掘削ロッド8だけを後退させることで無孔管10も一体に引き抜くことができる。従って、やはりこれら掘削ロッド8と無孔管10とを別々の手段によって引き抜くのに比べて装置構造の簡略化や作業の効率化を図ることができる。
【0063】
なお、本実施形態では、掘削工具本体4は、掘削ロッド8および無孔管10を引き抜いた後は、その全体がいわゆるロストビットとして削孔内に残されて埋設されることになるが、例えばこの掘削工具本体4を、水抜き管1の先端部に回転自在に取り付けられるリングビットと、掘削ロッド8の先端部に取り付けられて上記リングビットの内周から突出するインナービットとから構成し、掘削ロッド8を引き抜く際には掘削工具本体4の一部であるこのインナービットも引き抜くようにしてもよく、また例えば掘削工具本体4を拡縮径可能なビットを備えた拡径ビットとして、削孔時にはビットを拡径させて掘削を行う一方、掘削ロッド8を引き抜く際にはビットを縮径させて水抜き管1内を引き抜き可能とし、掘削工具本体4の全体を掘削ロッド8とともに回収するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の掘削工法の一実施形態に係わる掘削工具を示す一部破断側面図である。
【図2】図1に示す掘削工具(掘削工具本体4)を軸線O方向先端側から見た正面図である。
【図3】図1におけるA断面図である。
【図4】図1におけるB断面図である。
【図5】図1におけるC断面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 水抜き管
1A 管本体(水抜き部)
3 水抜き管ケーシングトップ(水抜き管1の先端部)
3A 第2被当接部
4 掘削工具本体
6 媒体の供給路
7 繰り粉の排出路
8 掘削ロッド
9 デバイス(掘削ロッド8の先端部)
9A 第1当接部
9I 第3当接部
10 無孔管
11 無孔管ケーシングトップ(無孔管10の先端部)
11D 第3被当接部
11E 第1被当接部
11F 第2当接部
O 水抜き管1の軸線
T 掘削時の掘削ロッドの回転方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブル筒状織物を用いた水抜き部を有する水抜き管内に、先端部に掘削工具本体が装着される掘削ロッドが挿入されて、上記水抜き管の先端に上記掘削工具本体が突出させられており、上記水抜き管と掘削ロッドとの間には、径方向に該掘削ロッドと間隔をあけて管状をなすとともに径方向に貫通部が形成されていない無孔管が介装された掘削工具を用いて、上記掘削ロッドを介して上記掘削工具本体により削孔を形成するとともに、この削孔を形成する際の上記掘削ロッドの前進によって上記無孔管と上記水抜き管とを牽引して該削孔内に挿入することを特徴とする掘削工法。
【請求項2】
上記掘削ロッドの先端部外周には、後端側に向けて外径が一段大きくなる第1当接部が備えられるとともに、上記無孔管の先端部内周には、先端側に向けて内径が一段小さくなる第1被当接部が備えられており、この第1被当接部に上記第1当接部を先端側に向けて当接させて、上記無孔管を上記掘削ロッドの前進により牽引することを特徴とする請求項1に記載の掘削工法。
【請求項3】
上記無孔管の先端部には第2当接部が備えられているとともに、上記水抜き管の先端部内周には、先端側に向けて内径が一段小さくなる第2被当接部が備えられており、この第2被当接部に上記第2当接部を先端側に向けて当接させて、上記水抜き管を上記掘削ロッドおよび上記無孔管の前進により牽引することを特徴とする請求項2に記載の掘削工法。
【請求項4】
上記掘削ロッドの先端部外周には、後端側に向けて外径が一段小さくなる第3当接部が形成されるとともに、上記無孔管の先端部内周には、後端側に向けて内径が一段小さくなる第3被当接部が備えられており、上記水抜き管が上記削孔に挿入された後に、この第3被当接部に上記第3当接部を後端側に向けて当接させて、上記無孔管を上記掘削ロッドとともに後退させることにより該掘削ロッドと無孔管とを上記水抜き管内から抜き出すことを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の掘削工法。
【請求項5】
上記掘削工具本体には、上記掘削ロッドと無孔管との間の間隔部分に連通する排出路が形成されていて、この排出路を介して、上記掘削工具本体により生成された繰り粉を上記掘削ロッドと無孔管との間の間隔部分を通して排出することを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか一項に記載の掘削工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−77700(P2010−77700A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247757(P2008−247757)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】