説明

掘削機のロッド掴み変え装置

【課題】 掴み変え時の操作ミスによる誤ったインターロック解除を防止し、しかも操作を簡単にする。
【解決手段】 スイッチ22〜25の操作に基づいて第1及び第2両チャック装置7,8の締め/緩め動作を制御する制御部21を備え、この制御部21は、一方のチャック装置に対する緩め操作が行われたときに、タイマー28,29の作用により、他方のチャック装置の締め動作を一定時間行わせた後に、上記一方のチャック装置の緩め動作を行わせるシーケンス制御を行うように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は上下二つのチャック装置の締め/緩め動作によって掘削用のロッドの掴み変えを行う掘削機のロッド掴み変え装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、掘削機として、図4に示すように、クローラ式のベースマシン1の前部にリーダ2を垂直に立て、四角パイプ状の掘削ロッド3(以下、単にロッドという)を回転させながらリーダ2に沿って下降させることにより地中に縦穴を掘削するものが公知である。図中、4はリーダ2を下部で支持するリーダサポートである。
【0003】
なお、掘削された縦穴に地盤改良材を注入し、ロッド3の回転によって攪拌する場合もある。この場合、ロッド3は攪拌ロッドとして機能する。
【0004】
ロッド3は、リーダ2に昇降自在に設けられた昇降体5を貫通し、この昇降体5に設けられた駆動部6によって回転駆動される。
【0005】
また、駆動部6に第1チャック装置7、リーダサポート4に第2チャック装置8がそれぞれ設けられ、この両チャック装置7,8によりロッド3を尺取虫式に掴み変えて掘進する手法がとられる。
【0006】
これを図5によって簡単に説明する。
【0007】
図5(イ)はロッド3を施工地盤上にセットした施工準備状態を示し、この状態から(ロ)に示すようにロッド3を回転させながら下降させて縦穴Hを掘削し、一定深度に達すると、(ハ)に示すように駆動部6(第1チャック装置7)を上昇させてロッド3の上部を掴み直し、(ニ)に示すように再び掘進する。
【0008】
この場合、チャック装置7,8は、掴み変えのタイミングに合わせて、図中に示すようにロッド3を掴み固定する『締め動作』と、ロッド3を解放する『緩め動作』を交互に行う必要がある。
【0009】
いいかえれば、図5(ハ)の掴み変えの段階で両チャック装置7,8を同時に緩めると、ロッド3が支持を失って落下するおそれがある。
【0010】
この『同時緩め』を回避するインターロック機能を備えた従来の掴み変え装置の構成を図6に示す。
【0011】
第1及び第2両チャック装置7,8は、それぞれ電磁切換式のコントロールバルブ9,10によって制御される油圧シリンダ11,12を備え、この油圧シリンダ11,12と図示しないバネとでチャックピースを作動させることによって『締め』と『緩め』の両動作を行う。
【0012】
コントロールバルブ9,10を制御する制御部13は、第1チャック装置緩め、同締め、第2チャック装置緩め、同締めの各スイッチ(以下、第1緩めスイッチ、第1締めスイッチ、第2緩めスイッチ、第2締めスイッチという)14〜17と、この各スイッチ14〜17の操作に基づいて作動制御される第1及び第2両リレー18,19とを備えたシーケンス回路として構成され、第1チャック装置7の緩め操作時には第2チャック装置8の緩め操作を無効とし、逆に第2チャック装置8の緩め操作時には第1チャック装置7の緩め操作を無効とするインターロック作用を行う。
【0013】
たとえば、図5(ハ)の掴み変え段階で、第1チャック装置7を緩め、第2チャック装置8を締めるところ、誤って両チャック装置7,8をともに緩め操作した場合でも、この両緩め操作がともに無効となる。これにより、両チャック装置7,8がともに緩む『両緩み』の発生が回避される。
【0014】
また、このインターロック作用は、一方のチャック装置について他方のチャック装置の締め操作(締めスイッチ15,17の操作)が行われることによって解除される。
【0015】
なお、このようなロッド掴み変え装置に関する先行特許文献は見当たらない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところが、従来技術によると締めスイッチ15,17が操作されるとリレー18,19が作動してすぐさまインターロックが解除される構成をとっているため、スイッチ操作時間とチャック装置7,8の動作時間の差によってインターロックが誤って解除され、『両緩み』が発生するおそれがあった。
【0017】
たとえば、図5(ハ)の掴み変え時、すなわち、第2チャック装置8を締めて第1チャック装置7を緩めようとする場合、第2締めスイッチ17を操作した後、第1緩めスイッチ14を操作する。
【0018】
この場合、第2締めスイッチ17が操作されて第2チャック装置8が作動し、実際に締め動作が完了するまでには一定の時間がかかるにもかかわらず、締め動作完了前に同スイッチ17の操作が解除されることがある。
【0019】
こうなると、第2チャック装置8の締め動作が未完のまま、第1リレー18がリセットされてインターロックが解除されるため、この時点で第1緩めスイッチ14が操作されると、同チャック装置7が緩め動作を行ってしまう。
【0020】
すなわち、『両緩み』の状態が発生し、ロッド3が落下するおそれがある。
【0021】
また、両チャック装置7,8の一方を緩め、他方を締めるという二つの操作を作業員がタイミングに注意しながら行わなければならないため、操作が面倒であった。
【0022】
そこで本発明は、このような操作ミスによる誤ったインターロック解除を防止でき、しかも操作が簡単な掘削機のロッド掴み変え装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
請求項1の発明は、掘削用のロッドを掴み固定するチャック装置として、ロッドを回転駆動する昇降自在な駆動部に設けられた第1のチャック装置と、この第1のチャック装置よりも下方位置でロッドを保持する第2のチャック装置とを備え、この両チャック装置は、それぞれの操作部の締め操作及び緩め操作に基づいてロッドを掴み固定するための締め動作、及びロッドを解放するための緩め動作を行うように構成され、この両チャック装置の締め/緩め動作によってロッドの掴み変えを行う掘削機のロッド掴み変え装置において、上記操作部の操作に基づいて両チャック装置の作動を制御する制御手段を備え、この制御手段は、一方のチャック装置に対する緩め操作が行われたときに、他方のチャック装置の締め動作を一定時間行わせた後、上記一方のチャック装置の緩め動作を行わせるシーケンス制御を行うように構成されたものである。
【0024】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、両チャック装置は、コントロールバルブによって制御される油圧シリンダによって締め動作及び緩め動作を行うように構成され、制御手段は、操作部としてのスイッチの操作に基づくタイマーの作動により上記コントロールバルブに対するシーケンス制御を行うように構成されたものである。
【0025】
請求項3の発明は、請求項1または2の構成において、制御手段は、一方のチャック装置の締め動作時間内に同チャック装置に対する緩め操作が行われてもこの操作を無効とするように構成されたものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、一方のチャック装置に対する緩め操作が行われたときに、まず、他方のチャック装置の締め動作を一定時間(締め動作完了に要する時間)行わせた後に一方のチャック装置の緩め動作を行わせるため、操作ミスによる『両緩み』の発生を確実に防止することができる。
【0027】
しかも、上記一連のチャック動作を一回の操作で自動的に行わせることができるため、操作が簡単となり、作業員の操作負担を軽減することができる。
【0028】
この場合、請求項2の発明によると、上記シーケンス制御をタイマーを用いて行うため、設備コストが安くてすむ。
【0029】
また、請求項3の発明によると、一方のチャック装置の締め動作時間内に同チャック装置に対する緩め操作(誤操作)が行われてもこの操作を無効とするため、誤った緩め操作に対しても適正なチャック動作を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の実施形態を図1〜図3によって説明する。
【0031】
第1実施形態(図1,2参照)
実施形態において、図6に示す従来回路と同一部分(チャック装置7,8、コントロールバルブ9,10、油圧シリンダ11,12)には同一符号を付して示し、その重複説明を省略する。
【0032】
コントロールバルブ9,10を制御する制御部21は、第1チャック装置締め、同緩め、第2チャック装置緩め、同締めの各スイッチ(以下、第1締めスイッチ、第1緩めスイッチ、第2緩めスイッチ、第2締めスイッチという)22〜25を備え、両締めスイッチ22,25の操作時には、操作されたチャック装置の締め動作がそのまま行われる。
【0033】
26はロッド差込み時等に両チャック装置7,8を同時に緩めるためのリリーススイッチである。
【0034】
また、制御部21は、両緩めスイッチ23,24の操作によって作動するトリガーリレー27と、このトリガーリレー27の作動を引き金として一定時間T1だけ作動する第1タイマー(ワンョットパルスタイマー)28と、この第1タイマー28から一定時間T2(<T1)遅れて作動する第2タイマー29と、締め動作中の緩め操作を無効とする無効リレー30と、一方のチャック装置の緩め操作時に他方のチャック装置の緩め操作を無効とするインターロックリレー31,32とを備えている。
【0035】
この構成において、両チャック装置7,8の一方に対する緩め操作が行われる(緩めスイッチ23,24の一方が操作される)と、他方のチャック装置の締め動作が一定時間(第1タイマー28のセット時間)T1行われた後、上記一方のチャック装置の緩め動作が一定時間行われる。
【0036】
この作用を図2に示すタイムチャートを併用して説明する。
【0037】
たとえば第1緩めスイッチ23が操作されると、トリガーリレー27が作動してその接点27aが閉じ、第1タイマー28が一定時間T1作動する。
【0038】
これにより、タイマー接点28aが閉じるため、第2チャック装置8が締め動作を行う(図2の一点鎖線より左側参照)。
【0039】
一方、第2タイマー29が一定時間T2だけ遅れて作動し、そのタイマー接点29aが閉じることにより、第1チャック装置7の緩め動作が一定時間(T1−T2)行われる。
【0040】
ここで、第2タイマー29の作動遅れ時間T2は、第2チャック装置8の締め動作が完了するのに必要かつ十分な時間として設定されている。
【0041】
従って、チャック動作としては、第2チャック装置8の締め動作が完了した後、第1チャック装置7が緩め動作を行うことになるため、両チャック装置7,8がともに緩む『両緩み』の発生、すなわち掴み変えミスによるロッド3の落下を確実に防止することができる。
【0042】
しかも、第2チャック装置8の締め動作−第1チャック装置7の緩め動作という一連のチャック動作が第1緩めスイッチ23の一回の操作のみによって自動的に行われるため、締めと緩めの二つの操作を要する従来装置と比較して操作が簡単となり、作業員の操作負担を軽減することができる。
【0043】
なお、上記説明では第1チャック装置7を緩めて第2チャック装置8を締める場合を例にとったが、逆に第2チャック装置8を緩めて第1チャック装置7を締める場合は、図2中の一点鎖線よりも右側に示すように第2緩めスイッチ24の操作に基づいて第1チャック装置7の締め動作が一定時間T1行われ、遅れ時間T2後に第2チャック装置8の緩め動作が行われる。
【0044】
また、第1タイマー28は、トリガーリレー27からのトリガー信号(ワンショットパルス)に基づいて作動した後は、設定時間T1が経過するまでは後続の信号が入力されても作動状態を保つため、一方のチャック装置の締め動作時間T1中に誤って同チャック装置に対する緩め操作が行われた場合(図2中の緩め操作信号S1,S2が発せられた場合)でもこの操作が無効となる。このため、誤った緩め操作に対しても適正なチャック動作を確保することができる。
【0045】
さらに、第1タイマー28は、設定時間T1が経過すると自動的に作動解除されるため、誤操作の一種としてたとえば図2中のS3で示すように第1緩めスイッチ22を操作した後これを戻し忘れた場合でも、設定時間T1が経過すると第2チャック装置8の締め動作が停止する。すなわち、締め動作が無駄に長く行われるおそれがない。
【0046】
第2実施形態(図3参照)
第1実施形態では、制御部21としてタイマー28,29とリレー27,30,31,32を組み合わせたシーケンス回路を用いるため、設備コストが安くてすむという利点を有する。
【0047】
これに対し、第2実施形態ではコンピュータによるコントローラ33を制御部として用いている。
【0048】
コントローラ33には、第1実施形態のシーケンス制御と同一内容の制御プログラムが書き込まれ、スイッチ22〜25の操作に基づき、このプログラムに従って両チャック装置7,8が制御される。
【0049】
この第2実施形態によっても、基本的に第1実施形態と同じ作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるロッド掴み変え装置の全体構成図である。
【図2】同装置の作用を説明するためのタイムチャートである。
【図3】本発明の第2実施形態にかかるロッド掴み変え装置の全体構成図である。
【図4】本発明が適用される掘削機の概略側面図である。
【図5】(イ)〜(ニ)は掘削機による掘削手順を示す図である。
【図6】従来の掴み変え装置の全体構成図である。
【符号の説明】
【0051】
3 掘削ロッド
6 駆動部
7 第1チャック装置
8 第2チャック装置
9,10 チャック装置制御用のコントロールバルブ
11,12 チャック装置の油圧シリンダ
21 制御部(制御手段)
22〜25 操作部としてのスイッチ
28,29 制御部を構成するタイマー
27,30〜32 同リレー
33 コントローラ(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削用のロッドを掴み固定するチャック装置として、ロッドを回転駆動する昇降自在な駆動部に設けられた第1のチャック装置と、この第1のチャック装置よりも下方位置でロッドを保持する第2のチャック装置とを備え、この両チャック装置は、それぞれの操作部の締め操作及び緩め操作に基づいてロッドを掴み固定するための締め動作、及びロッドを解放するための緩め動作を行うように構成され、この両チャック装置の締め/緩め動作によってロッドの掴み変えを行う掘削機のロッド掴み変え装置において、上記操作部の操作に基づいて両チャック装置の作動を制御する制御手段を備え、この制御手段は、一方のチャック装置に対する緩め操作が行われたときに、他方のチャック装置の締め動作を一定時間行わせた後、上記一方のチャック装置の緩め動作を行わせるシーケンス制御を行うように構成されたことを特徴とする掘削機のロッド掴み変え装置。
【請求項2】
両チャック装置は、コントロールバルブによって制御される油圧シリンダによって締め動作及び緩め動作を行うように構成され、制御手段は、操作部としてのスイッチの操作に基づくタイマーの作動により上記コントロールバルブに対するシーケンス制御を行うように構成されたことを特徴とする請求項1記載の掘削機のロッド掴み変え装置。
【請求項3】
制御手段は、一方のチャック装置の締め動作時間内に同チャック装置に対する緩め操作が行われてもこの操作を無効とするように構成されたことを特徴とする請求項1または2記載の掘削機のロッド掴み変え装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−46397(P2007−46397A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−233941(P2005−233941)
【出願日】平成17年8月12日(2005.8.12)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【出願人】(000105682)コベルコ建機エンジニアリング株式会社 (12)
【Fターム(参考)】