説明

掘削物改質剤

【課題】 短時間であっても掘削廃棄物を分別可能な程度に改質できる掘削物改質剤の提供。
【解決手段】 短繊維を含有するココヤシダストと、界面活性剤と、を含有することを特徴とする、含水掘削物改質剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工事現場などで発生する掘削物を改質する改質剤に関し、特に、廃棄処理場跡地等の工事で発生する水を含む掘削廃棄物を分別可能な程度に扱い易くする改質剤に関する。
【背景技術】
【0002】
土木・建設工事において、廃棄処理場跡地などを掘り返す際には、掘削廃棄物が発生する。これらの掘削廃棄物は、現在の法令に即した処理をする必要があるので、分別して廃棄する必要がある。しかし、これらの掘削廃棄物は土砂様物を含む自然含水状態にある物体であり、これを分別しようすると、機械類への廃棄物への付着や、選別スクリーンの目詰まり等、作業上の障害が発生する。そこでこれらの含水廃棄物を乾燥させる必要があった。この乾燥には多くの時間を費やす必要があるという問題があった。
【0003】
ヘドロ、スラッジ等の掘削泥土の改質剤として、椰子屑と水溶性高分子を含有する掘削汚泥改質剤が提案されている(特許文献1)。これによれば、椰子屑を含有せしめることにより、椰子屑の有する吸水効果、繊維構造による補強効果等により、短時間で取扱の容易な処理土が得られるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−20889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係る改質剤を掘削廃棄物の改質に適用したとしても、ココダストに撥水性があるため、改質剤を混ぜてからしばらく吸水に要する時間を経過しなければ、掘削廃棄物の分別処理を行うことができる程度の状態にはならなかった。そこで、本発明は、短時間であっても掘削廃棄物を分別可能な程度に改質できる掘削物改質剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明(1)は、短繊維を含有するココヤシダストと、
界面活性剤と、
を含有することを特徴とする、含水掘削物改質剤である。
【0007】
本発明(2)は、前記含水掘削物改質剤が、前記界面活性剤と前記ココヤシダストとあらかじめ混合して得られる、前記発明(1)の含水掘削物改質剤である。
【0008】
本発明(3)は、前記ココヤシダストが乾燥ココヤシダストである、前記発明(1)又は(2)の含水掘削物改質剤である。
【0009】
本発明(4)は、前記界面活性剤が、アニオン系又はノニオン系界面活性剤である、前記発明(1)〜(3)のいずれか一つの含水掘削物改質剤である。
【0010】
本発明(5)は、前記界面活性剤が、スルホン酸系又はアルキルエーテル系界面活性剤である、前記発明(4)の含水掘削物改質剤である。
【0011】
本発明(6)は、前記界面活性剤が、25℃、0.1重量%水溶液においてウィルヘルミー法により測定した表面張力が50mN/m以下であることを特徴とする、前記発明(1)〜(5)のいずれか一つの含水掘削物改質剤である。
【0012】
本発明(7)は、前記含水掘削物改質剤のpHが、5.0〜9.0であることを特徴とする、前記発明(1)〜(6)のいずれか一つの含水掘削物改質剤である。
【0013】
本発明(8)は、前記ココヤシダストの粒径が、0.1〜5.0mmであることを特徴とする、前記発明(1)〜(7)のいずれか一つの含水掘削物改質剤である。
【0014】
本発明(9)は、含水掘削廃棄物と、前記発明(1)〜(8)のいずれか一つの含水掘削物改質剤とを混合する混合工程と、
前記混合工程後連続して、前記改質剤の混合された掘削廃棄物を分別機により分別する分別工程と、
を有することを特徴とする、含水掘削廃棄物の分別方法である。
【0015】
本発明(10)は、前記混合工程が、前記含水掘削廃棄物に前記含水掘削物改質剤を散布してこれらを混練機により混練することにより、前記含水掘削廃棄物が改質されることを特徴とする、前記発明(9)の含水掘削廃棄物の分別方法である。
【0016】
本発明(11)は、前記混合工程後に得られる混合物のpHが、5.0〜9.0の範囲であり、前記混合工程において、pH調整剤を添加しないことを特徴とする、前記発明(9)又は(10)のいずれか一つの含水掘削廃棄物の分別方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る含水掘削物改質剤によれば、界面活性剤を含有することにより高い濡れ性を有するココヤシダストを含有するため、当該改質剤と含水掘削物を混合することにより、当該改質剤が高い吸水性を発揮するので即座に掘削物を塊状にならないように改質することができる。
【0018】
本発明(2)に係る改質剤によれば、ココヤシダストの濡れ性が高まり、高い吸水性を発揮するので速く含水掘削物が改質される。
【0019】
本発明(3)に係る改質剤によれば、ココヤシダストの含水率が低くなるため、高い吸水性を発揮する。
【0020】
本発明(4)に係る改質剤によれば、これらの界面活性剤を選択することにより、ココヤシダストの濡れ性が高まり、高い吸水性を発揮するので速く含水掘削物が改質される。
【0021】
本発明(5)に係る改質剤によれば、これらの界面活性剤を選択することにより、ココヤシダストの濡れ性が特に高まり、高い吸水性を発揮するので特に速く含水掘削物が改質される。
【0022】
本発明(6)に係る改質剤によれば、このような性質を有する界面活性剤を選択することにより、ココヤシダストの濡れ性が特に高まり、高い吸水性を発揮するので特に速く含水掘削物が改質される。
【0023】
本発明(7)に係る改質剤によれば、改質剤が当該pHの範囲内にあることにより、改質剤を掘削物に添加した場合、改質後の掘削物が中性のpH領域に入り易くなるという効果を有する。特に、本発明に係る改質剤はココヤシダストを含有するため、これがpHの緩衝効果を有するので、特に中性のpH領域となり易くなる。
【0024】
本発明(8)に係る改質剤によれば、ココヤシダストが当該粒径を有することにより、改質剤を散布したとしても空中に舞い難くなるので、取扱が容易になる。
【0025】
本発明(9)に係る改質剤によれば、改質するための時間をほとんど必要としないため、含水掘削廃棄物と当該改質剤を混合してすぐに分別機により分別することができる。したがって、短い時間で、且つ、低コストの分別処理を実現することが可能である。
【0026】
本発明(10)に係る改質剤によれば、混練することにより含水掘削廃棄物が改質されるため、含水掘削廃棄物が改質されるまで時間を要しないため、別途改質スペースを設ける必要がないので、低コストの分別処理を行うことができる。
【0027】
本発明(11)に係る改質剤によれば、別途pH調整を行なう必要なく、掘削廃棄物を処理することができるので、低コストの分別処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明に係る掘削廃棄物の分別に使用される分別装置の概略構成図である。
【図2】図2は、改質試験において使用した掘削試料の篩前後の写真であり、(a)は篩前、(b)は篩後の様子を示す写真である。
【図3】図3は、改質試験において使用した掘削試料を手で強く握り締めて、丸い塊状となった様子を示す写真である。
【図4】図4は、改質試験において実施例4に係る改質剤を所定量混合した後に、当該試料を手で強く握り締めた後の様子を示す写真である。
【図5】図5は、改質試験において実施例4に係る改質剤を所定量混合した後に、当該試料を手で強く握り締めた後の様子を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明に係る改質剤は、短繊維を含有する乾燥ココヤシダストと、界面活性剤と、を含有することを特徴とする。ココヤシダストとして乾燥したココヤシダストを使用することにより、当該ココヤシダストに含まれる短繊維が、集合した土砂様物をばらばらにして、更にココヤシダストを構成する軟組織が含水掘削廃棄物の水分を吸収し廃棄物を分別可能な程度にさらさらの状態にすることができる。
【0030】
「ココヤシダスト」とは、ココヤシを脱穀等して長繊維を取り出した際に得られる材料である。すなわち、ココヤシの果皮から表皮及び長繊維(以下「ココヤシ長繊維」という)を除いた残部であり、軟組織と0.5〜30mm程度の短繊維が混在する材料である。ココヤシダストに含まれる軟組織及び短繊維は生分解しにくく、天然有機物の中でも生分解しにくいことが知られているピートモスよりもさらに分解しにくい。ココヤシダストは、公知の方法により得られたものを使用することができるが、例えば、ココヤシの果皮を乾燥して破砕したココヤシダストを使用することができる。
【0031】
ここで、ココヤシダストの粒径は、0.1〜5.0mmが好適であり、0.2〜4.0mmがより好適であり、0.2〜3.0mmが更に好適である。尚、ここで粒径とは、篩により粒径分布の測定を行い、90重量%以上の粒子が分布する粒径範囲を意味する。このような範囲の粒径とすることにより、掘削廃棄物に改質剤を散布する際にココヤシダストが空中に浮遊しにくくなる。
【0032】
また、本発明に係る改質剤は界面活性剤を含有することを特徴とする。界面活性剤が含まれることにより、ココヤシダストの濡れ性が高まり、つまり吸水速度が上り、改質速度が著しく速くなる。ここでいう界面活性剤は、水とココダストとの二物質間の界面の性質、特に表面張力を下げる等して、ココダストの吸水、湿潤、水の浸透性能を著しく高めるものである。界面活性剤とは、例えば、分子内に親水部位と疎水部位とが分かれて存在している物質を意味する。
【0033】
また、界面活性剤としては、種々のアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性イオン系界面活性剤が使用できるが、これらのなかでもアニオン系界面活性剤又はノニオン系界面活性剤が特に好ましい。すなわち、アニオン系界面活性剤又はノニオン系界面活性剤を使用することにより、界面活性剤の添加量が少なくても、改質速度を高める効果を発揮する。
【0034】
アニオン系界面活性剤としては、カルボン酸系界面活性剤や、スルホン酸系界面活性剤や、硫酸エステル系界面活性剤や、リン酸エステル系界面活性剤や、アシル−N−メチルタウリン系界面活性剤が挙げられるが、これらの中でもスルホン酸系界面活性剤が特に好適である。スルホン酸系界面活性剤はアニオン系界面活性剤の中でも特に高い速度で掘削廃棄物を改質するという効果を有する。
【0035】
ここで、スルホン酸系界面活性剤としては、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、アルカンスルホネート、スルフォクスシネイト、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のスルホン酸基を有する界面活性剤が挙げられる。
【0036】
ノニオン系界面活性剤としては、アルキルエーテル系、フェニルエーテル系等のエーテル系界面活性剤や、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル(ソルビタン誘導体)、ショ糖脂肪酸エステル等のエステル系界面活性剤が挙げられるが、中でのアルキルエーテル系は特に高い速度で改質する効果を有する。
【0037】
アルキルエーテル系の界面活性剤としては、ペンタエチレングリコールモノドデシルエーテル、オクタエチレングリコールモノドデシルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテルが挙げられる。
【0038】
本発明に係る界面活性剤は、25℃、0.1重量%水溶液においてウィルヘルミー法により測定した表面張力が50mN/m以下であることが好適であり、35mN/m以下であることがより好適である。下限値は、特に限定されないが、例えば、15mN/mである。このような範囲の性質を有する界面活性剤を使用することにより、特に改質速度の高い改質剤が得られる。
【0039】
本発明に係る改質剤においてココヤシダストは、乾燥物換算で改質剤全体のうち30重量%以上含有されていることが好適であり、60重量%以上含有されていることがより好適であり、70重量%以上含有されていることが更に好適である。また、本発明に係る改質剤において、界面活性剤は、改質剤の全重量中、0.005〜0.3重量%が好適であり、0.01〜0.1重量%がより好適であり、0.01〜0.05重量%が更に好適である。
【0040】
ここで本発明に係る含水掘削物改質剤のpHは、中性から弱酸性領域であることが好適であり、5.0〜9.0が好適であり、5.0〜8.6がより好適であり、5.0〜7.0が更に好適である。ここでpHは、実施例記載の方法により測定する。このようなpHの範囲に調製することにより、掘削廃棄物との混合後、当該混合物が適切なpHの範囲内となりやすくなるため好適である。また、含水掘削物改質剤は、ココヤシダストを使用しているので、pHの緩衝性を有するため、他の物質と混合した場合であってもpHの変動が小さく抑えられる。
【0041】
本発明に係る改質剤は、乾燥したココヤシダストと界面活性剤水溶液とを混合する(任意で混合物を乾燥させる)ことにより得られる。当該製造方法により製造すると、ココヤシダストの短繊維や軟組織が改質されて水との親和性が高まり、特に高い吸水性を発揮するため、高い改質速度を有する改質剤が得られる。
【0042】
ここで界面活性剤水溶液の界面活性剤濃度は、特に限定されず、当該水溶液のウィルヘルミー法にて測定した表面張力が、50mN/m以下となるように調製された水溶液を使用することが好適である。尚、前記表面張力は、35mN/m以下がより好適である。下限値は特に限定されないが例えば15mN/mである。
【0043】
本発明に係る改質剤は、トンネル工事、浚渫工事、建設工事、石油井、ガス井、地熱井などの工事現場で発生する泥土や、ヘドロや、スラッジ類等の掘削泥土の改質に使用することができるが、廃棄処理場跡地などで発生する含水掘削廃棄物を改質するために使用するのに特に適している。
【0044】
掘削廃棄物は、従来、掘削により発生する掘削廃棄物に対して改質剤を混合する改質剤混合工程と、改質剤混合後、改質されるまで放置する改質熟成工程と、前記改質された掘削廃棄物を分別機により分別する分別工程とを経て分別されてきた。掘削廃棄物に対して、本発明にかかる改質剤を混合することにより、当該掘削廃棄物が即座にさらさらの状態になり、機械で分別することが可能となる。すなわち、本発明に係る改質剤を用いることにより、改質熟成工程が必要なくなる。
【0045】
本発明に係る掘削廃棄物分別方法は、掘削により発生する掘削廃棄物に対して改質剤を混合する改質剤混合工程と、前記改質剤混合後に連続して、掘削廃棄物を分別機により分別する分別工程とを有する。このように簡略化された方法により、掘削廃棄物を分別することができるので、掘削廃棄物が改質されるまで、放置するスペースを確保する必要がなく、掘削廃棄物と改質剤を添加して、その後引き続き連続して分別工程に送り、分別することが可能となる。
【0046】
本発明に係る掘削廃棄物分別方法をより具体的に示す。まずは、掘削廃棄物分別に使用する装置の説明をする。図1は、本発明に係る掘削廃棄物の分別に使用される分別装置の概略構成図である。分別装置は、含水掘削廃棄物を導入するエプロンフィーダ1と、前記フィーダに導入された含水掘削物が運搬されるベルトコンベア2と、前記ベルトコンベアの上に載置された含水掘削物上に改質剤を散布する掘削物散布手段3と、前記含水掘削物と改質剤を混合する掘削物混合ミキサー4と、前記混合ミキサーにより改質された掘削物を分別する1次分別振動ふるい5と、前記ふるいにかけられた掘削物から鉄などの磁性体を取り除く磁選機6と、掘削物を分別する2次分別振動ふるい7とを有する。
【0047】
エプロンフィーダ1に導入された含水掘削廃棄物は、ベルトコンベアに送られる。このベルトコンベアで運搬される際に、改質剤を散布する。改質剤が散布された掘削物を混合ミキサーにより混合する。この際混合は、約2分程度行なわれるが、その間に改質剤により掘削物が改質されてしまう。そのため、化学的反応を利用した場合のように反応させるための時間を必要とせず、混合後連続して、すぐに1次分別振動ふるい5へと送ることが可能となる。したがって、別の建屋などを用意して掘削物を改質するためのスペースを別に確保する必要がなく、低コストの分別が可能となる。また、混合後の掘削廃棄物のpHは、5.0〜9.0が好適であり、5.8〜8.6がより好適であり、6.2〜8.5が更に好適である。本発明に係る改質剤を用いると、このようなpH範囲に収まることが多く、pH処理を更に行う必要がなく直接分別できる。1次分別振動ふるい5においては、比較的大きな廃棄物を分別する。ここで分別された廃棄物は、手作業によって更に分別される。当該ふるいを通過した掘削廃棄物は、磁選機6に送られて、鉄などの廃棄物が除去される。その後、2次分別振動ふるい7によって、廃棄物が取り除かれる。ふるいを通過した廃棄物は、ストックヤードに送られる。また、ふるいにより除去された廃棄物は、手作業により分別される。
【実施例】
【0048】
実施例1
乾燥したココヤシダスト30kgに対して、アニオン系界面活性剤A(ソディウムスルフォクスシネイト系界面活性剤)の50ppm水溶液を3L散布して風乾し、実施例1に係る改質剤を製造した。尚、用いた界面活性剤水溶液の表面張力は、下記の表1に示した。
【0049】
使用したココヤシダストをふるいにかけて粒径を測定した。結果は以下の通りであった。
4.75mm〜2mm 12.8重量%
2mm〜1mm 23.7重量%
1mm〜0.2mm 48.1重量%
0.2mm〜0.071mm 13.8重量%
0.071mm> 1.6重量%
【0050】
実施例2
アニオン系界面活性剤A水溶液の濃度を100ppmにした以外は、実施例1と同様の条件で、実施例2に係る改質剤を製造した。界面活性剤水溶液の表面張力は、下記の表1に示した。
【0051】
実施例3
アニオン系界面活性剤A水溶液の濃度を500ppmにした以外は、実施例1と同様の条件で、実施例3に係る改質剤を製造した。界面活性剤水溶液の表面張力は、下記の表1に示した。
【0052】
実施例4
アニオン系界面活性剤A水溶液の濃度を1000ppmにした以外は、実施例1と同様の条件で、実施例4に係る改質剤を製造した。界面活性剤水溶液の表面張力は、下記の表1に示した。
【0053】
実施例5
界面活性剤水溶液として、アニオン系界面活性剤B(ソディウムスルフォネイト系界面活性剤)1000ppmのものを用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例5に係る改質剤を製造した。
【0054】
実施例6
界面活性剤水溶液として、ノニオン系界面活性剤C(ノニオン系アルキルエーテル型界面活性剤)1000ppmのものを用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例6に係る改質剤を製造した。
【0055】
実施例7
界面活性剤水溶液として、ノニオン系界面活性剤D(ノニオン系エステル型界面活性剤)1000ppmのものを用いた以外は、実施例1と同様にして、実施例7に係る改質剤を製造した。
【0056】
比較例1
界面活性剤水溶液の代わりに界面活性剤を含まない水を用いた以外は実施例1と同様にして、比較例1に係る改質剤を製造した。
【0057】
(吸水試験)
実施例及び比較例に係る改質剤を直径90mmの濾紙(東洋濾紙製)をガラス板上に置き、水を7g加えた。水は濾紙上を均一に覆った。その上から上記8種類のココダストを2g均一に散布し1分間放置した。その後、ガラス板を傾け、ココダストと余剰水を落とした。吸水したココダストは濾紙面に付着したままであった。この付着したココダストの重量は表の通りであった。
この表から、界面活性剤の表面張力が35mN/m以下であれば、放置1分間でココダストが吸水し、濾紙に付着するココダスト量が明らかに多くなることがわかる。
【0058】
【表1】

【0059】
上記の実施例のうち良い結果を示した実施例4および実施例6のうち、アニオン系のソディウムスルフォスクシネイト系界面活性剤Aを含有する実施例4の改質剤を用いて次のふるい分け試験を行った。
【0060】
(ふるい分け性能試験)
ゴミが混合されている混合試料体に実施例4に係る改質剤(つまり当該界面活性剤濃度0.1%の水溶液をココダスト重量の1/10散布したもの)を重量比で1%、2%混合し、ふるい分け試験を行なった。
1.供試体
(1)混合試験体
粘性の高い土砂にゴミを50%混合した混合物500kgに水を25L加えて改質剤を加えずに、直径1m長さ5mのトロンメルで約2分間混合した。
(2)混合試料体+実施例4の改質剤(1%)
(1)に実施例4に係る改質剤を重量比で1%散布し、上記トロンメルを用い約2分間混合した。
(3)混合試料体+実施例4の改質剤(2%)
(2)に実施例1を更に重量比で1%散布し、上記トロンメルを用い約2分間混合した。ドラム付着物を考慮すると実際の混合率は2%強であった。
【0061】
2.試験結果
何れの供試体も、重量で約3400g採取して、ふるい目16mmでふるい分け試験を行い、篩上残留物と篩通過物の重量を測定した。結果は下記の通りであった。
【0062】
【表2】

【0063】
混合供試体は、篩う作業に時間がかかり、篩い残留物も多かった。実施例4に係る改質剤1%、2%混合したものは試料体への投入時にほぼ全ての土壌が篩を通過した。篩の残留物も500g前後で少なかった。礫とそれに付着した若干量の土砂を除いて、ほぼ全てが通過した。
【0064】
(改質試験)
掘削試料(河川敷堆積物:土色がHue2.5Y黒褐色、2mm以上の礫や夾雑物が多い。)を2cmの篩を通過させて掘削試料を準備した。尚、掘削試料中の含水比は34、pHは7.6であった。掘削試料の篩前後の写真を図2に示した。尚、図2(a)は篩前、(b)は篩後の様子を示す。また、掘削試料は、手で強く握り締めると丸い塊状となる(図3)。この塊は廃棄物分別装置の篩の目を詰まらせることになる。
【0065】
上記の掘削試料(500g)に対して、実施例4に係る改質剤を所定量混合した。混合後、試料を手で握り締めた様子を、図4、図5に示した。尚、実施例4に係る改質剤のpHは、5.4であった。
【0066】
実施例4に係る改質剤を掘削試料に対して5%の重量比で混合して手で強く握り締めてもすぐにほぐれた。土壌の周りに改質剤に含まれる繊維が付着して結合を阻止している様子であった(図4)。尚、混合後の試料は、含水比28.1、pH6.4であった。
【0067】
実施例4に係る改質剤の添加量を掘削試料に対して3重量%として手で握り締めてもすぐにほぐれた。土壌の周りに改質剤に含まれる繊維が付着して結合を阻止している様子であった(図5)。尚、混合後の試料は、含水比22.6(参考)、pH6.4であった。
【0068】
上記のpH測定は改質剤に改質剤の重量の15倍量の純水を加え1時間浸蕩し、その直後にガラス電極法で測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
短繊維を含有するココヤシダストと、
界面活性剤と、
を含有することを特徴とする、含水掘削物改質剤。
【請求項2】
前記含水掘削物改質剤が、前記界面活性剤と前記ココヤシダストとあらかじめ混合して得られる、請求項1記載の含水掘削物改質剤。
【請求項3】
前記ココヤシダストが乾燥ココヤシダストである、請求項1又は2記載の含水掘削物改質剤。
【請求項4】
前記界面活性剤が、アニオン系又はノニオン系界面活性剤である、請求項1〜3のいずれか一項記載の含水掘削物改質剤。
【請求項5】
前記界面活性剤が、スルホン酸系又はアルキルエーテル系界面活性剤である、請求項4記載の含水掘削物改質剤。
【請求項6】
前記界面活性剤が、25℃、0.1重量%水溶液においてウィルヘルミー法により測定した表面張力が50mN/m以下であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項記載の含水掘削物改質剤。
【請求項7】
前記含水掘削物改質剤のpHが、5.0〜9.0であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項記載の含水掘削物改質剤。
【請求項8】
前記ココヤシダストの粒径が、0.1〜5.0mmであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項記載の含水掘削物改質剤。
【請求項9】
含水掘削廃棄物と、請求項1〜8のいずれか一項記載の含水掘削物改質剤とを混合する混合工程と、
前記混合工程後連続して、前記改質剤の混合された掘削廃棄物を分別機により分別する分別工程と、
を有することを特徴とする、含水掘削廃棄物の分別方法。
【請求項10】
前記混合工程が、前記含水掘削廃棄物に前記含水掘削物改質剤を散布してこれらを混練機により混練することにより、前記含水掘削廃棄物が改質されることを特徴とする、請求項9記載の含水掘削廃棄物の分別方法。
【請求項11】
前記混合工程後に得られる混合物のpHが、5.0〜9.0の範囲であり、前記混合工程において、pH調整剤を添加しないことを特徴とする、請求項9又は10のいずれか一項記載の含水掘削廃棄物の分別方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−231234(P2011−231234A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103514(P2010−103514)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(390039907)株式会社クレアテラ (16)
【出願人】(000172813)佐藤工業株式会社 (73)
【Fターム(参考)】