説明

掘削装置に取り付ける回転支持具

【課題】地盤等を長距離にわたって横方向にボーリング掘削する際に長尺状態のロッド材の自重によるたわみを抑制する。
【解決手段】複数のロッド部材8の任意のロッド部材8の間に接続された回転支持具の支持筒部材26を掘削孔3の内壁に当接させ、筒部材23により回転ロッド部材22を回転支持した状態で、複数のロッド部材8及び回転ロッド部材22が回転して掘削回転を伝達し、長尺状態のロッド材の自重によるたわみを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤等を長距離にわたって横方向に掘削する際に用いられる、掘削装置に取り付ける回転支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高レベル放射性廃棄物を地下深部に処分する研究が実施されており、このための地下研究施設が国内でも2箇所に建設され、さらに炭鉱などの鉱山の地下を利用した研究もおこなわれている。これらの研究は非常に柔らかい堆積岩が対象となっている場合もあり、坑道周辺の岩盤性状調査、水質調査を行う場合、横方向のボーリング掘削が必要となっている。
【0003】
所望の場所の環境を評価するために地盤に掘削孔を設ける場合、処理部の直下等に延びる掘削孔が必要になる。このため、立坑を設け、立坑から横方向に延びる掘削孔を設けることが従来から実施されている(例えば、特許文献1参照)。横方向に掘削孔を設ける場合、スペースの関係から、切削工具の後端側に複数のロッド部材を連結した装置を用いることが従来から実施されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
トンネル内からの環境評価のための掘削孔は直径10cm以下の掘削孔であることが多く、安全である範囲やトンネル掘削の影響が及んでいる範囲を明らかにする研究においてはこのような小径の掘削孔を長距離にわたり掘削する必要が生じている。掘削孔が長尺になると、複数のロッド部材を連結して長尺状態になったロッド材が自重によってたわみ、掘削孔の孔壁がロッド部材により削られてしまうことがあった。
【0005】
このため、限られた径の入り口に対し途中の掘削孔が大径・非円形状になってしまうことがあり、水理、水質試験で設置するゴム製の封止部材(パッカー)による地下水の封止ができなくなると共に、岩盤性状の評価においては予定していた個所に設置する予定であった機器の移動が必要となるなど調査に支障が生じているのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−270786号公報
【特許文献2】特開2008−175030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、地盤等を長距離にわたって横方向に掘削する際に長尺状態のロッド材の自重によるたわみを抑制することができる、掘削装置に取り付ける回転支持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の掘削装置に取り付ける回転支持具は、掘削刃部材が設けられた掘削手段に長尺状態のロッド材が接続され、前記ロッド材の軸心周りの回転が伝えられることで前記掘削刃部材を掘削回転させ、前記掘削刃部材の回転により長尺の掘削孔を掘削するに際し、前記長尺状態のロッド材の掘削孔内でのたわみを抑制する掘削装置に取り付ける回転支持具であって、前記掘削孔の径よりも小径の回転ロッド部材と、前記回転ロッド部材の外周に相対的に自在に回転するように設けられた筒部材とからなることを特徴とする。
【0009】
請求項1に係る本発明では、掘削孔の内壁に当接した筒部材に対して回転ロッド部材が回転することで、長尺状態のロッド材が掘削孔に支持された状態で掘削回転され、地盤等を長距離にわたって横方向に掘削する際に長尺状のロッド部材の自重によるたわみを抑制することができる。
【0010】
そして、請求項2に係る本発明の掘削装置に取り付ける回転支持具は、前記筒部材が、軸受を介して前記回転ロッド部材の外周に支持され前記掘削孔の内壁に当接することを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る本発明では、軸受を介して筒部材が回転ロッドに対して相対的に支持され、筒部材を確実に相対回転させることができる。
【0012】
また、請求項3に係る本発明の掘削装置に取り付ける回転支持具は、前記軸受は、前記回転ロッド部材の軸方向に間をあけて複数設けられ、前記複数の軸受の軸方向の間における前記回転ロッド部材の外周にはスペーサが設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る本発明では、スペーサを介して軸方向の複数個所で筒部材を回転ロッド部材に対して相対的に回転支持させることができる。
【0014】
また、請求項4に係る本発明の掘削装置に取り付ける回転支持具は、前記軸受が、メタル軸受であることを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る本発明では、メタル軸受を用いることで筒部材の回転支持部の径方向の寸法を最小限に抑制することができる。
【0016】
また、請求項5に係る掘削装置に取り付ける本発明の回転支持具は、前記筒部材には円盤状のフランジ部が設けられ、フランジ部の盤面には流体が流通する流通孔が前記盤面を貫通して形成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項5に係る本発明では、円盤状のフランジ部を掘削孔の内壁に当接させることができ、流通孔により排出流体を流通させることができる。
【0018】
また、請求項6に係る掘削装置に取り付ける本発明の回転支持具は、前記フランジ部は前記筒部材の軸方向に複数設けられ、前記複数のフランジ部の外周にわたり一つの支持筒部材が嵌合していることを特徴とする。
【0019】
請求項6に係る本発明では、フランジ部を複数設けて一つの支持筒部材を嵌合させることで、掘削孔の軸方向に対して広い接触面積で支持筒部材を当接させることができ、掘削孔の内壁をフランジ部で削り取ることなく筒部材を回転自在に支持することができる。
【0020】
また、請求項7に係る本発明の掘削装置に取り付ける回転支持具は、前記筒部材の端部と前記回転ロッド部材の間には、前記筒部材の軸方向の移動を規制すると共に前記回転ロッド部材に対して前記筒部材を相対的に自在に回転することのできる規制軸受が設けられ、前記規制軸受にはボーリング掘進時に推進力が載荷されないように、前記回転支持部と前記規制軸受を受ける前記回転ロッド部材との間にわずかな隙間が設けられていることを特徴とする。
【0021】
請求項7に係る本発明では、筒部材の端部と回転ロッド部材との間に規制軸受が設けられているので、筒部材の端部と回転ロッド部材が軸方向で直接接触することがなく、回転ロッド部材と共に筒部材が連れ回りすることがない。
【発明の効果】
【0022】
本発明の掘削装置に取り付ける回転支持具は、地盤等を長距離にわたって横方向に掘削する際に長尺状のロッド部材の自重によるたわみを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態例に係る回転支持具の概略状況図である。
【図2】回転支持具の断面図である。
【図3】図2中のIII−III線矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1には本発明の一実施形態例に係る掘削装置に取り付ける回転支持具の概略状況、図2には回転支持具の断面構造を説明する状況、図3には図2中のIII−III線断面を見た状態を示してある。
【0025】
図1に示すように、小径で長尺の掘削孔3を掘削する場合、複数のロッド部材8を連結し、複数のロッド部材8の先端に掘削用の掘削部材を備えた装置が使用される。
【0026】
掘削孔3が長尺になると、複数のロッド部材8を連結した長尺状態のロッド材が自重によってたわみ、中央部の掘削孔3だけがロッド部材8により削られてしまう虞がある。限られた径の入り口に対し途中の掘削孔3が大径・非円形状になってしまうと、封止部材による封止ができなくなると共に、予定していた形状の部位に対する評価手段(作業具)の選定が困難になることが考えられる。
【0027】
このため、掘削装置4には複数のロッド部材8の任意のロッド部材8の間に接続され、掘削孔3の内壁面に対して長尺状態のロッド材を回転自在に支持する回転支持具21が備えられている。
【0028】
図2、図3に基づいて回転支持具21を説明する。
【0029】
図2に示すように、両端の雄ねじa及び雌ねじbを挟んで回転ロッド部材22が備えられ、回転ロッド部材22の外周には回転支持部材としての筒部材23が独立して回転できるように取り付けられている。回転ロッド部材22の軸心部には軸方向に延びる流体流路31が設けられ、流体流路31はロッド部材8の流体流路と連通して掘削用の水が供給される。
【0030】
筒部材23はオイルレスのメタル軸受24を介して回転ロッド部材22に支持され、メタル軸受24は回転ロッド部材22の両端部にそれぞれ2個設けられている。メタル軸受24は高分子油が含有されている無潤滑金属で構成されている。2個のメタル軸受24の間にはスペーサ32が設けられ、スペーサ32を介して間を空けてメタル軸受24が配されている。これにより、軸方向における回転支持部の支持長さが十分に確保されている。
【0031】
スペーサ32を介して2個のメタル軸受24を配することで、軸方向の複数個所で筒部材23を回転ロッド部材22に対して回転支持させることができ、また、メタル軸受24を用いることで筒部材23の回転支持部の径方向の寸法を最小限に抑制して筒部材23を確実に回転自在に支持することができる。
【0032】
尚、メタル軸受24は1個もしくは3個以上配することも可能である。
【0033】
図2、図3に示すように、筒部材23には円盤状のフランジ部25が設けられ、フランジ部25は筒部材23の軸方向に2個設けられている。フランジ部25の盤面には流体である排水が流通する流通孔29が盤面を貫通して周方向に複数形成されている。フランジ部25の径は掘削孔3の内径と同程度の径とされている。そして、2個のフランジ部25の外周にわたり一つの支持筒部材26が嵌合し、支持筒部材26が掘削孔3の内壁に当接するようになっている。
【0034】
支持筒部材26を介して筒部材23が掘削孔3の内壁に当接することで、筒部材23に対して回転ロッド部材22が回転し、筒部材23が回転ロッド部材22に対して相対回転自在に支持された状態にされる。2個のフランジ部25に対して一つの支持筒部材26を嵌合させることで、掘削孔3の軸方向に対して広い接触面積で筒部材23側の部材を当接させることができ、掘削孔3の内壁がフランジ部25で削り取られない状態で筒部材23を回転自在に支持することができる。
【0035】
尚、フランジ部25を備えた筒部材23を交換することで、掘削孔3の径が変更になった場合に対処することができる。
【0036】
両端の雄ねじa、雌ねじbと筒部材23の端部の間には、筒部材23の軸方向の移動を規制すると共に回転ロッド部材22に対して筒部材23を相対的に回転自在に支持する規制軸受としてベアリング27が設けられている。ボーリング掘進時に推進力が載荷されないように、筒部材23とベアリング27を受ける回転ロッド部材22との間にわずかな隙間が設けられている。
【0037】
筒部材23の端部と回転ロッド部材22との間にベアリング27が設けられているので、筒部材23の端部と回転ロッド部材22が軸方向で直接接触することがなく、回転ロッド部材22と共に筒部材23が連れ回りすることがない。
【0038】
上述した回転支持具21は、複数のロッド部材8の任意のロッド部材8の間に接続され、掘削孔3の内壁に支持筒部材26が当接した状態で掘削が実施される。即ち、支持筒部材26が掘削孔3の内壁に当接して筒部材23により回転ロッド部材22が回転支持された状態で、複数のロッド部材8及び回転ロッド部材22が回転して掘削部材5の掘削回転が実施される。
【0039】
従って、回転支持具21の部位で長尺状態のロッド材が掘削孔3に支持された状態で掘削回転され、地盤等を長距離にわたって横方向に掘削する際に、長尺状態のロッド材の自重によるたわみを抑制することができる。これにより、中央部の掘削孔3だけがロッド材により削られてしまう等で掘削孔3が変形することがなくなり、封止部材等の機器や工具を確実に適用することができる。
【0040】
掘削を行う際には、ロッド部材8の流体流路及び回転ロッド部材22の流体流路31を通して図示しない掘削部材に給水が行われ、掘削後の泥水等は、ロッド部材8と掘削孔3の間の隙間、及び、回転支持具21のフランジ部25の流通孔29を流通して外部に排出される。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、地盤等を長距離にわたって横方向に掘削する際に用いられる回転支持具の産業分野で利用することができる。
【0042】
また、本発明は、地盤等を長距離にわたって横方向に掘削し測定機器等を所定の箇所に設置する産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
3 掘削孔
21 回転支持具
22 回転ロッド部材
23 筒部材
24 メタル軸受
25 フランジ部
26 支持筒部材
27 ベアリング
29 流通孔
31 流体流路
32 スペーサ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削刃部材が設けられた掘削手段に長尺状態のロッド材が接続され、前記ロッド材の軸心周りの回転が伝えられることで前記掘削刃部材を掘削回転させ、前記掘削刃部材の回転により長尺の掘削孔を掘削するに際し、前記長尺状態のロッド材の掘削孔内でのたわみを抑制する掘削装置に取り付ける回転支持具であって、
前記掘削孔の径よりも小径の回転ロッド部材と、
前記回転ロッド部材の外周に相対的に自在に回転するように設けられた筒部材とからなる
ことを特徴とする掘削装置に取り付ける回転支持具。
【請求項2】
請求項1に記載の掘削装置に取り付ける回転支持具において、
前記筒部材が、軸受を介して前記回転ロッド部材の外周に支持され前記掘削孔の内壁に当接する
ことを特徴とする掘削装置に取り付ける回転支持具。
【請求項3】
請求項2に記載の掘削装置に取り付ける回転支持具において、
前記軸受は、前記回転ロッド部材の軸方向に間をあけて複数設けられ、前記複数の軸受の軸方向の間における前記回転ロッド部材の外周にはスペーサが設けられている
ことを特徴とする掘削装置に取り付ける回転支持具。
【請求項4】
請求項3に記載の掘削装置に取り付ける回転支持具において、
前記軸受が、メタル軸受である
ことを特徴とする掘削装置に取り付ける回転支持具。
【請求項5】
請求項4に記載の掘削装置に取り付ける回転支持具において、
前記筒部材には円盤状のフランジ部が設けられ、フランジ部の盤面には流体が流通する流通孔が前記盤面を貫通して形成されている
ことを特徴とする掘削装置に取り付ける回転支持具。
【請求項6】
請求項5に記載の掘削装置に取り付ける回転支持具において、
前記フランジ部は前記筒部材の軸方向に複数設けられ、前記複数のフランジ部の外周にわたり一つの支持筒部材が嵌合している
ことを特徴とする掘削装置に取り付ける回転支持具。
【請求項7】
請求項4〜請求項6のいずれか一項に記載の掘削装置に取り付ける回転支持具において、
前記筒部材の端部と前記回転ロッド部材の間には、前記筒部材の軸方向の移動を規制すると共に前記回転ロッド部材に対して前記筒部材を相対的に自在に回転することのできる規制軸受が設けられ、
前記規制軸受にはボーリング掘進時に推進力が載荷されないように、前記回転支持部と前記規制軸受を受ける前記回転ロッド部材との間にわずかな隙間が設けられている
ことを特徴とする掘削装置に取り付ける回転支持具。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−185193(P2010−185193A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29135(P2009−29135)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】