説明

採血器具及びスライド式流路切替手段

【課題】作業者のクランプの閉め忘れ、これに伴う採血バッグへの採血初流の混入や、破断が速やかにできないとか、封止部材の破断片が発生したりする懸念が解消できる採血器具を提供すること。
【解決手段】第1採血チューブT1.1は、第1端部を採血針8に接続し、第2採血チューブT1.2は、第2端部を採血バッグ4に接続している。第1採血チューブT1.1と第2採血チューブT1.2との間にスライド式流路切替手段60を配置し、当該流路切替手段60に、初流血液チューブT2の第1端部を接続している。当該初流血液チューブT2の第2端部は、採血初流除去バッグBに接続している。
採血器具1は、スライド式流路切替手段60により、当該流路切替手段60の液体流路62aと、第1採血チューブT1.1、第2採血チューブT1.2及び初流血液チューブT2との液体流路の開閉を調整できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、初流血液を採取するとともに、検査用血液の採取を容易に行うことのできる採血器具とスライド式流路切替手段に関する。スライド式流路切替手段は、採血器具以外の医療分野、その他の一般産業分野にも利用できる。
【背景技術】
【0002】
採血針から採取した血液を血液バッグに導入する際、供血者の穿刺位置をアルコール等で消毒を行うが、消毒を行なっても、皮膚や皮下に存在する細菌が採取した血液の中に混入することがある。
混入した細菌は、細菌の種類によっては、血液バッグを保存している間にも増殖し、細菌の増殖に気づくことなく輸血などに用いられると輸血された患者に感染症などを引き起こし、重篤な事態となるおそれもある。
そこで、採取された血液の細菌汚染防止を図ることができるように、特に採血時の初流の血液を除去するシステムが発明されるようになった。
【0003】
特許文献1から特許文献4には、血液を採取する採血針と、採取された血液を収納する採血バッグと、一方端が採血バッグに他方端が採血針にそれぞれ連通し、採取された血液を採血バッグへ導入する第1の流路(採血チューブ)と、分岐部を介して第1の流路から分岐し、末端に血液の取り出し口を有する第2の流路(初流血液チューブ)を有し、分岐部と採血バッグの間の第1の流路(採血チューブ)に、流路用封止手段(外付けのクランプ、破断すると流路が開通する封止部材)を装着した採血用器具の発明が開示されている。
【0004】
中でも特許文献2と特許文献3は、第1の流路(採血チューブ)の流路用封止手段として、外付けのクランプを使用した場合、作業者のクランプの閉め忘れ、これに伴う採血バッグへの採血初流の混入を確実に防止するために、流路用封止手段として、破断すると流路が開通する封止部材を使用するのが良いと明記されている。
【0005】
特許文献1から特許文献4の発明では、(1)初流血液の採血初流除去バッグ等へ採血、(2)第2の流路(初流血液チューブ)のクランプ等による閉塞、(3)採血バッグへ至る第1の流路(採血チューブ)の解放(外付けのクランプ、破断すると流路が開通する封止部材等)、(4)採血終了後の第1の流路(採血チューブ)の閉塞(クランプをかける)等の作業が必要であった。(1)から(4)の作業手順では、(2)閉塞、(3)解放の順番を間違えることが懸念され、順番を間違えると製剤の無菌保証が低下し、閉塞までの操作が遅くなるため採血初流除去バッグ等への採血が過量になる懸念がある。
また特許文献2と特許文献3のように、分岐部と採血バッグの間の第1の流路(採血チューブ)に、破断すると流路が開通する封止部材を装着する手段では、(1)破断が速やかにできないとか、封止部材の破断片が発生したりする懸念がある。(2)第1の流路(採血チューブ)内に配置するため、第1の流路(採血チューブ)と異なる管状部材内に配置して、第1の流路(採血チューブ)に接続しないといけないので、構成が複雑になる。
【0006】
【特許文献1】特許3361440(特許請求の範囲、図1、9、10)
【特許文献2】特許3776227(特許請求の範囲、図1、2、11から13)
【特許文献3】特許3813974(特許請求の範囲、図1、2、5)
【特許文献4】特開2001−17539(特許請求の範囲、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする問題点は、特許文献1から特許文献4の(1)から(4)の作業手順では、(2)閉塞、(3)解放の順番を間違えることが懸念され、作業者の操作ミスを防止できない懸念がある点である。
また特許文献2、3のように、破断すると流路が開通する封止部材を装着する手段では、(1)破断が速やかにできないとか、封止部材の破断片が発生したりする懸念がある。(2)第1の流路(採血チューブ)の構成が複雑になる等の点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]本発明は、
供血者より血液を採取する採血針(8)と、
前記採取された血液を収納する採血バッグ(4)と、
前記採取された血液を前記採血バッグ(4)へ導入する第1採血チューブ(T1.1)及び第2採血チューブ(T1.2)と、
前記採取された血液の初流を除去する初流血液チューブ(T2)と、
採血初流除去バッグ(B)とを有し、
前記第1採血チューブ(T1.1)、第2採血チューブ(T1.2)及び前記初流血液チューブ(T2)は、前記採血針(8)からみて、前記採血針(8)に近い側の第1端部と前記採血針(8)に遠い側の第2端部とを有し、
前記第1採血チューブ(T1.1)は、第1端部を前記採血針(8)に接続し、
前記第2採血チューブ(T1.2)は、第2端部を前記採血バッグ(4)に接続し、
前記第1採血チューブ(T1.1)と前記第2採血チューブ(T1.2)との間に流路切替手段(V)を配置し、当該流路切替手段(V)に前記初流血液チューブ(T2)の第1端部を接続し、
当該初流血液チューブ(T2)の第2端部は、採血初流除去バッグ(B)に接続し、
前記流路切替手段(V)は、スライド式流路切替手段(60、60A、60B、60C、60D、60E、60F)であり、
当該スライド式流路切替手段(60、60A、60B、60C、60D、60E、60F)は、外筒(61)と内筒(62)とを有し、
前記外筒(61)と前記内筒(62)は、長手方向と当該長手方向と略垂直に交わる側部方向を有し、
前記長手方向は、上部方向である第1長手方向と、下部方向である第2長手方向とを有し、
前記スライド式流路切替手段(60、60D、60E)において、
前記外筒(61)は、側部方向に三つの分岐管(63、64、65)を有し、当該三つの分岐管(63、64、65)は、それぞれ開口部(63a、64a、65a)により、当該外筒(61)の内部と連通し、
前記内筒(62)は、第1長手方向から第2長手方向に沿って、側部方向に、
少なくとも三つのパッキングを装着し、
前記内筒(62)は、第1長手方向から第2長手方向にみて、
第二番目のパッキングと第三番目のパッキングとの間に、液体流路(62a)を形成するか、または第一番目のパッキングと第二番目のパッキングとの間に、液体流路(62a)を形成し、
前記内筒(62)を前記外筒(61)内に、第1長手方向に、スライドできるように装着するか、または第1長手方向に、スライドし、さらに側部方向に回動できるように装着し、
前記内筒(62)と前記外筒(61)を、前記のようにスライド、またはスライドし、さらに回動することにより、
前記内筒(62)の液体流路(62a)と、前記採血針(8)側の第1採血チューブ(T1.1)、前記採血バッグ(4)側の第2採血チューブ(T1.2)及び前記初流血液チューブ(T2)との液体流路の開閉を調整できるようにした採血器具(1)を提供する。
【0009】
[2]本発明は、
前記[1]に記載の前記スライド式流路切替手段(60、60D、60E)に代えて、
スライド式流路切替手段(60A、60B、60C、60F)を装着し、
当該スライド式流路切替手段(60A、60B、60C、60F)において、
前記外筒(61)は、側部方向に二つの分岐管(63、65)を有し、当該二つの分岐管(63、65)は、それぞれ開口部(63a、65a)により、当該外筒(61)の内部と連通し、
前記内筒(62)は、第1長手方向から第2長手方向に沿って、側部方向に、少なくとも三つのパッキングを装着し、
前記内筒(62)は、当該内筒(62)内部の長手方向に沿って、液体流路(62c)を形成し、
前記内筒(62)は、第1長手方向または第2長手方向に分岐管(64)を形成し、
前記内筒(62)を前記外筒(61)内に、第1長手方向にスライドできるように装着するか、または第1長手方向にスライドし、さらに側部方向に回動できるように装着し、
前記内筒(62)と前記外筒(61)を、前記のようにスライド、またはスライドし、さらに回動することにより、
前記内筒(62)の液体流路(62c)と、前記採血針(8)側の第1採血チューブ(T1.1)、前記採血バッグ(4)側の第2採血チューブ(T1.2)及び前記初流血液チューブ(T2)との液体流路の開閉を調整できるように形成した採血器具(1)を提供する。
【0010】
[3]本発明は、
前記外筒(61)の三つの分岐管(63、64、65)は、それぞれ第一分岐管(63)、第二分岐管(64)及び第三分岐管(65)であり、
前記第一分岐管(63)に、前記第2採血チューブ(T1.2)の第1端部を接続し
前記第二分岐管(64)に、前記第1採血チューブ(T1.1)の第2端部を接続し
前記第三分岐管(65)に、前記初流血液チューブ(T2)の第1端部を接続した前記[1]に記載の採血器具(1)を提供する。
[4]本発明は、
前記外筒(61)の二つの分岐管(63、65)は、第一分岐管(63)及び第三分岐管(65)であり、
前記内筒(62)の分岐管(64)は、第二分岐管(63)であり、
前記第一分岐管(63)に、前記第2採血チューブ(T1.2)の第1端部を接続し
前記第二分岐管(64)に、前記第1採血チューブ(T1.1)の第2端部を接続し
前記第三分岐管(65)に、前記初流血液チューブ(T2)の第1端部を接続した前記[2]記載の採血器具(1)を提供する。
[5]本発明は、前記[1]から[4]のいずれか1に記載の前記スライド式流路切替手段(60、60A、60B、60E、60F)において、
前記外筒(61)の第2長手方向でかつ、側部方向に係合部(61b)を形成し、
前記内筒(62)の第2長手方向でかつ、側部方向に係合部(62b)を形成し、
前記内筒(62)を側部方向に回動したときに、
前記外筒(61)の係合部(61b)と、前記内筒(62)の係合部(62b)を係合できるように形成した前記[1]から[4]のいずれか1に記載の採血器具(1)を提供する。
【0011】
[6]本発明は、
スライド式流路切替手段(60、60D、60E)は、外筒(61)と内筒(62)とを有し、前記外筒(61)と前記内筒(62)は、長手方向と当該長手方向と略垂直に交わる側部方向を有し、
前記長手方向は、上部方向である第1長手方向と、下部方向である第2長手方向とを有し、前記外筒(61)は、側部方向に三つの分岐管(63、64、65)を有し、当該三つの分岐管(63、64、65)は、それぞれ開口部(63a、64a、65a)により、当該外筒(61)の内部と連通し、
前記内筒(62)は、第1長手方向から第2長手方向に沿って、側部方向に、
少なくとも三つのパッキングを装着し、
前記内筒(62)は、第1長手方向から第2長手方向にみて、
第二番目のパッキングと第三番目のパッキングとの間に、液体流路(62a)を形成するか、または 第一番目のパッキングと第二番目のパッキングとの間に、液体流路(62a)を形成し、
前記内筒(62)を前記外筒(61)内に、第1長手方向にスライドできるように装着するか、または第1長手方向にスライドし、さらに側部方向に回動できるように装着し、
前記外筒(61)の三つの分岐管(63、64、65)は、それぞれ
第一分岐管(63)、第二分岐管(64)及び第三分岐管(65)であり、
前記第一分岐管(63)に、第一チューブを接続し、
前記第二分岐管(64)に、第二チューブを接続し、
前記第三分岐管(65)に、第三チューブを接続し、
前記内筒(62)と前記外筒(61)を、前記内筒(62)と前記外筒(61)を、前記のようにスライド、またはスライドし、さらに回動することにより、
前記内筒(62)の液体流路(62a)と、
前記第一チューブ、前記第二チューブ及び前記第三チューブの液体流路の開閉を調整できるようにしたスライド式流路切替手段(60、60D、60E)を提供する。
【0012】
[7]本発明は、
スライド式流路切替手段(60A、60B、60C、60F)は、
外筒(61)と内筒(62)とを有し、前記外筒(61)と前記内筒(62)は、長手方向と当該長手方向と略垂直に交わる側部方向を有し、前記長手方向は、上部方向である第1長手方向と、下部方向である第2長手方向とを有し、
前記外筒(61)は、側部方向に二つの分岐管(63、65)を有し、当該二つの分岐管(63、65)は、それぞれ開口部(63a、65a)により、当該外筒(61)の内部と連通し、
前記内筒(62)は、第1長手方向から第2長手方向に沿って、側部方向に、
少なくとも三つのパッキングを装着し、
前記内筒(62)は、当該内筒(62)内部の長手方向に沿って、液体流路(62c)を形成し、
前記内筒(62)は、第1長手方向または第2長手方向に分岐管(64)を形成し、
前記内筒(62)を前記外筒(61)内に、第1長手方向にスライドできるように装着するか、または 第1長手方向にスライドし、さらに側部方向に回動できるように装着し、
前記外筒(61)の二つの分岐管(63、65)は、第一分岐管(63)及び第三分岐管(65)であり、
前記内筒(62)の分岐管(64)は、第二分岐管(63)であり、
前記第一分岐管(63)に、第一チューブを接続し、
前記第二分岐管(64)に、第二チューブを接続し、
前記第三分岐管(65)に、第三チューブを接続し、
前記内筒(62)と前記外筒(61)を、前記のようにスライド、またはスライドし、さらに回動することにより、前記内筒(62)の液体流路(62c)と、前記第一チューブ、前記第二チューブ及び前記第三チューブの液体流路の開閉を調整できるようにしたスライド式流路切替手段(60A、60B、60C、60F)を提供する。
【0013】
[8]本発明は、前記[6]または[7]に記載の前記スライド式流路切替手段(60、60A、60B、60E、60F)において、
前記外筒(61)の第2長手方向でかつ、側部方向に係合部(61b)を形成し、
前記内筒(62)の第2長手方向でかつ、側部方向に係合部(62b)を形成し、
前記内筒(62)を側部方向に回動したときに、
前記外筒(61)の係合部(61b)と、前記内筒(62)の係合部(62b)を係合できるように形成した前記前記[6]または[7]に記載のスライド式流路切替手段(60、60A、60B、60E、60F)を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の採血器具は、特許文献1から特許文献4に記載の分岐部を、流路切替手段V[スライド式流路切替手段(60、60A、60B、60C、60D、60E、60F)]とし、当該流路切替手段V[スライド式流路切替手段(60、60A、60B、60C、60D、60E、60F)]に、特許文献1から特許文献4に記載の流路用封止手段(外付けのクランプ、破断すると流路が開通する封止部材等)の機能を付与したので、
(1)作業者のクランプの閉め忘れ、これに伴う採血バッグへの採血初流の混入や、破断が速やかにできないとか、封止部材の破断片が発生したりする懸念が解消できる。
(2)第1の流路(採血チューブ)の構造も簡略化できる。
(3)また特許文献1から特許文献4に記載の発明では、初流血液の採取から血液の採取に移行する時、第2の流路(初流血液チューブ)を流路用封止手段(外付けのクランプ)で閉塞し、さらに第1の流路(採血チューブ)の流路用封止手段(外付けのクランプ)を開放する等、二ステップの操作が必要であるが、本発明は、流路切替手段Vを切り替えるのみで済むので、これらの操作がワンステップで容易となるとともにどちらかの操作を忘れる等の操作ミスを防止できる。
【0015】
(4)また特許文献1から特許文献4に記載の発明では、第1の流路(採血チューブ)と第2の流路(初流血液チューブ)に、複数の流路用封止手段(外付けのクランプ、破断すると流路が開通する封止部材)を装着する旨が記載されているが、本発明では、これらの流路用封止手段を、全て廃止し、一つの流路切替手段Vで、複数の流路用封止手段の役割を代替することができる。
(5)操作する部分が一か所なので操作が単純化され操作ミスが減る。
(6)すべての操作を片手で行うことができる(特許文献2、3の破断すると流路が開通する封止部材は両手が必要)。
(7)特許文献1から4の複数の流路用封止手段(外付けのクランプ、破断すると流路が開通する封止部材)と分岐管の働きを一つの部品にまとめるため組立工数が減り、製品全体がシンプルになる。
また本発明のスライド式流路切替手段は、
(8)内筒62を外筒61内へスライド、またはスライドしさらに回動して挿入すると、内筒62の外周は、すべて外筒61に覆われるため、内筒62を外筒61から抜き取る方向への操作を禁止できる。これにより、いったん閉塞した通路が再び開放されることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明の採血器具1の概略図、図2から図18は、流路切替手段Vの一例とその使用例を示す概略図である。
[採血器具1]
本発明の採血器具1は、図1に例示するように、供血者より血液を採取する採血針8と、採取された血液を収納する採血バッグ4と、一方端が前記採血バッグ4に他方端が前記採血針8にそれぞれ連通し、前記採取された血液を前記採血バッグ4へ導入する採血チューブT1(第1採血チューブT1.1と第2採血チューブT1.2とを含む)と、当該採血チューブT1から分岐し、前記採取された血液の初流を除去する初流血液チューブT2とを有する。
採血器具1は、前記採血チューブT1の途中に、当該採血チューブT1と前記初流血液チューブT2の流路切替手段Vを配置し、当該流路切替手段Vに、初流血液チューブT2の端部を接続している。
【0017】
さらに詳述すれば、採血器具1は、例えば図1に示すように、採血バッグ4、採血初流除去セット2、血液フィルタ3、第1子バッグ5、第2子バッグ6及び赤血球保存液入バッグ7から構成される。
採血バッグ4の上流には、採血チューブT1を接続している。採血チューブT1には、先端(上流)からその途中にわたって、採血針8、流路切替手段Vを接続・配置している。流路切替手段Vには、初流血液導入チューブT2を介して採血初流除去セット2を接続している。
さらに採血バッグ4の下流には、連結チューブT3を介して血液フィルタ3及び第1子バッグ5を接続している。さらに第1子バッグ5は、連結チューブT4、接続管13、連結チューブT5、T6を介して、第2子バッグ6、赤血球保存液入バッグ7を接続している。
採血バッグ4及び赤血球保存液入りバッグ7には、採血時または輸血保存時における血液の凝固の防止または保存のために、例えばACD液、CPD液、MAP液のような抗凝固剤または赤血球保存液を収納している。
採血初流除去バッグB及び採血バッグ4のバッグ類を構成する材料として、例えばポリ塩化ビニル、ポリオレフィン等の可撓性合成樹脂が用いられる。
【0018】
さらに、図1を参照にして詳述する。
採血器具1は、供血者より血液を採取する採血針8と、前記採取された血液を収納する採血バッグ4と、前記採取された血液を前記採血バッグ4へ導入する第1採血チューブT1.1及び第2採血チューブT1.2と、前記採取された血液の初流を除去する初流血液チューブT2と、採血初流除去バッグBとを有する。
前記第1採血チューブT1.1、第2採血チューブT1.2及び前記初流血液チューブT2は、前記採血針8からみて、前記採血針8に近い側の第1端部と前記採血針8に遠い側の第2端部とを有する。
前記第1採血チューブT1.1は、第1端部を前記採血針8に接続し、前記第2採血チューブT1.2は、第2端部を前記採血バッグ4に接続している。
前記第1採血チューブT1.1と前記第2採血チューブT1.2との間に流路切替手段Vを配置し、当該流路切替手段Vに前記初流血液チューブT2の第1端部を接続している。
当該初流血液チューブT2の第2端部は、採血初流除去バッグBに接続している。
【0019】
[流路切替手段V]
本発明に使用する「流路切替手段V」は、初流血液を、採血針8から第1採血チューブT1.1、流路切替手段Vを経て、初流血液チューブT2へ流す時は、採血バッグ4側の第2採血チューブT1.2の流路を遮断する。また初流血液採取後の血液を、採血針8から第1採血チューブT1.1、流路切替手段Vを経て、第2採血チューブT1.2を経て採血バッグ4へ採取する時は、初流血液チューブT2の流路を遮断する。
【0020】
本発明に使用する流路切替手段Vの一例として、例えば図2から図18に例示するスライド式流路切替手段(60、60A、60B、60C、60D、60E、60F)が挙げられる。
スライド式流路切替手段(60、60A、60B、60C、60D、60E、60F)は、7つの実施形態を含む。すなわち、
実施形態1として、図2〜6のスライド式流路切替手段60、
実施形態2として、図7〜8のスライド式流路切替手段60A、
実施形態3として、図9〜10のスライド式流路切替手段60B、
実施形態4として、図11〜12のスライド式流路切替手段60C、
実施形態5として、図13〜14(スライド式流路切替手段60D、
実施形態6として、図15〜16(スライド式流路切替手段60E、
実施形態7として、図17〜18(スライド式流路切替手段60Fである。
【0021】
以上の7つの実施形態のスライド式流路切替手段(60、60A、60B、60C、60D、60E、60F)は、外筒61と内筒62とを有する。
前記外筒61と前記内筒62は、長手方向と当該長手方向と略垂直に交わる側部方向とを有する。側部方向は、外周方向という場合もある。
前記長手方向は、第1長手方向と、第2長手方向とを有する。例えば図2の例を挙げれば、第1長手方向は、上部(方向)を意味する。第1長手方向は、上部(方向)という場合もある。第2長手方向は、下部(方向)を意味する。第2長手方向は、下部(方向)という場合もある。
前記側部方向は、以下、本発明の説明の便宜上、第1側部方向、第2側部方向、第3側部方向、及び第4側部方向等の具体的な方向も指定して説明する。
例えば図2の縦断面図と図5、図6の各斜視図の例を挙げれば、第1側部方向は、図面の右側方向を意味する。第2側部方向は、図面の左側方向を意味する。第3側部方向は、図面の正面方向を意味する。第4側部方向は、図面の背面方向を意味する。
以上の7つの実施形態のスライド式流路切替手段(60、60A、60B、60C、60D、60E、60F)は、第1グループ形態のスライド式流路切替手段と第2グループ形態のスライド式流路切替手段に分類できる。
【0022】
[第1グループ形態のスライド式流路切替手段(60、60D、60E)]
第1グループ形態のスライド式流路切替手段は、実施形態1:図2〜6のスライド式流路切替手段60、実施形態5:図13〜14のスライド式流路切替手段60D、実施形態6:
図15〜16のスライド式流路切替手段60Eである。
スライド式流路切替手段(60、60D、60E)においては、
前記外筒61は、側部方向に三つの分岐管(63、64、65)を有し、当該三つの分岐管(63、64、65)は、それぞれ開口部(63a、64a、65a)により、当該外筒(61)の内部と連通する。
【0023】
前記内筒62は、第1長手方向から第2長手方向に沿って、側部方向に少なくとも三つのパッキングを装着している。
前記内筒62は、第1長手方向から第2長手方向に順番にみて、第二番目のパッキングと第三番目のパッキングとの間に、液体流路62aを形成[図2〜6参照]している。
または第一番目のパッキングと第二番目のパッキングとの間に、液体流路62aを形成[13〜14、15〜16参照]している。
前記内筒62を前記外筒61内に、第1長手方向にスライドできるように装着[図13〜14参照]するか、または
第1長手方向にスライドし、さらに側部方向に回動できるように装着[図2〜6、図15〜16参照]している。
前記内筒62と前記外筒61を、前記のようにスライド、またはスライドし、さらに回動することにより、前記内筒62の液体流路62aと、前記採血針8側の第1採血チューブT1.1、前記採血バッグ4側の第2採血チューブT1.2及び前記初流血液チューブT2の液体流路の開閉を調整できる。
【0024】
[第2グループ形態のスライド式流路切替手段(60A、60B、60C、60F)]
第2グループのスライド式流路切替手段(60A、60B、60C、60F)は、
実施形態2:図7〜8のスライド式流路切替手段60A、実施形態3:図9〜10のスライド式流路切替手段60B、実施形態4:図11〜12のスライド式流路切替手段60C、
実施形態7:図17〜18のスライド式流路切替手段60Fである。
第2発明グループのスライド式流路切替手段(60A、60B、60C、60F)においては、前記外筒61は、側部方向に二つの分岐管(63、65)を有し、当該二つの分岐管(63、65)は、それぞれ開口部(63a、65a)により、当該外筒(61)の内部と連通している。
前記内筒62は、第1長手方向から第2長手方向に沿って、側部方向に、少なくとも三つのパッキングを装着している。
前記内筒62は、当該内筒62内部の長手方向に沿って、液体流路62cを形成している。
前記内筒62は、第1長手方向または第2長手方向に分岐管64を形成している。
【0025】
前記内筒62は、前記外筒61内に、第1長手方向にスライドできるように装着[図9〜13参照]するか、または
第1長手方向にスライドし、さらに側部方向に回動できるように装着[図7〜8、図17〜18参照]している。
前記内筒62と前記外筒61を、前記のようにスライド、またはスライドし、さらに回動することにより、前記内筒62の液体流路62cと、前記採血針8側の第1採血チューブT1.1、前記採血バッグ4側の第2採血チューブT1.2及び前記初流血液チューブT2との液体流路の開閉を調整できる。
【0026】
第1グループ形態のスライド式流路切替手段(60、60D、60E)の前記外筒61の三つの分岐管(63、64、65)は、それぞれ、
第一分岐管63、第二分岐管64及び第三分岐管65である。
前記第一分岐管63に、前記第2採血チューブT1.2の第1端部を接続し、
前記第二分岐管64に、前記第1採血チューブT1.1の第2端部を接続し、
前記第三分岐管65に、前記初流血液チューブT2の第1端部を接続している。
第2グループ形態のスライド式流路切替手段(60A、60B、60C、60F)の前記外筒(61)の二つの分岐管(63、65)は、第一分岐管63及び第三分岐管65である。
前記内筒62の分岐管64は、第二分岐管63である。
前記第一分岐管63に、前記第2採血チューブT1.2の第1端部を接続し、
前記第二分岐管64に、前記第1採血チューブT1.1の第2端部を接続し、
前記第三分岐管65に、前記初流血液チューブT2の第1端部を接続している。
【0027】
[実施形態1:スライド式流路切替手段]
本発明に使用する流路切替手段Vの一例として、例えば図2から図6に例示するスライド式流路切替手段60が挙げられる。
図2から図6は、実施形態1のスライド式流路切替手段60の概略とその使用例の一例を示す。
[外筒61]
外筒61は、図2、5に例示するように、上部(第1長手方向)と下部(第2長手方向)が開放され、略下部(第2長手方向)に係合部(溝)61bを形成している。
外筒61の側部方向(第1側部方向と第2側部方向)には、第一から第三の三つの分岐管63、64、65を、実質的に等間隔(距離ともいう)L1で装着している。
当該各分岐管63、64、65は、それぞれ開口部63a、64a、65aを経て、外筒61の内部空間[内筒62を装着した場合は、内筒62の凹部62a(液体流路ともいう)]と連通している。
分岐管63、64、65の装着位置の略中心は、実質的に各開口部63a、64a、65aの略中心と同じである。このため各開口部63a、64a、65aも実質的に等間隔(距離ともいう)L1で形成している。
また係合部(溝)61bの深さL5は、第一から第3開口部63a、64a、65aの各間隔(距離)L1と実質的に同じとなるよう形成している。
【0028】
[内筒62]
図2、5、6に例示するように、内筒62の略下部(第2長手方向)で、かつ側部方向に、係合部(凸部)62bを形成している。
内筒62は、略中央部から上部(第1長手方向)の間に凹部62aを形成している。
凹部62aは、外筒61内に装着すると、図2に例示するように当該凹部62aが液体流路として機能する。
凹部62aの上部(第1長手方向)には、二つの第一パッキング66と第二パッキング67を装着している。これらの間隔(距離ともいう)L2は、前記外筒61の各開口部63a、64a、65a間の間隔(距離ともいう)L1と実質的に同じに形成している。
さらに凹部62aの下部(第2長手方向)には、三つの第三パッキング68、第四パッキング69及び第五パッキング70を装着している。
【0029】
これらの間隔(距離L2)は、前記外筒61の各開口部63a、64a、65a間の間隔(距離L1)と実質的に同じに形成している。
また係合部(凸部)62bの幅W1は、外筒61の係合部(溝)61bの幅W2より若干狭く形成している。
また第二パッキング67と第三パッキング68の間隔(距離ともいう)L3は、前記外筒61の各開口部63a、64a、65a間の間隔(距離L1)より実質的に約二倍の間隔(距離)で形成している。
図2から図6の例示では、内筒62の係合部62bは凸部にしているが、溝にしてもよい。この場合、外筒61の係合部61b(溝)は、凸部に形成する。
なお内筒62の上部(第1長手方向)と下部(第2長手方向)は、閉塞していてもよいし、開放していてもよい。
【0030】
図2は、内筒62を外筒61内に挿入した初期状態(第一の状態)を示す。
第一開口部63aは第一パッキング66と第二パッキング67との間にある。
第二開口部64a及び第三開口部65aは第二パッキング67と第三パッキング68との間にある。
このとき、外筒61下端(第2長手方向端部)から係合部(凸部)62b上端(第1長手方向端部)の間隔(距離ともいう)L4は第一から第三開口部63a、64a、65aの間隔(距離ともいう)L1と実質的に同じである。
第一分岐管63の流路は、第一パッキング66と第二パッキング67により、第二分岐管64と第三分岐管65の流路から隔絶されているため閉塞状態である。
第二分岐管64と第三分岐管65の流路は、第二パッキング67と第三パッキング68との間に形成されている流路62aによって連通している。
【0031】
図3は、図2の第一の状態から内筒62を上方向(第1長手方向)にスライドさせ、内筒62の係合部62bの上端(第1長手方向端部)を、外筒61の下端(第2長手方向端部)に接触するまで挿入した状態(第二の状態)を示す。
このとき第一開口部63a及び第二開口部64aは第二パッキング67と第三パッキング68との間にある。第三開口部65aは第三パッキング68と第四パッキング69との間にある。
第一分岐管63と第二分岐管64の流路は、第二パッキング67と第三パッキング68との間に形成されている液体通路62aによって連通している。
第三分岐管65の流路は第三パッキング68と第四パッキング69により、第一分岐管63と第二分岐管64の流路から隔絶されているため閉塞状態である。
【0032】
図4は、図3の第二の状態から内筒62を、第1側部方向に回動させ係合部(凸部)62bを係合部(溝)61bに係合させて、係合部(溝)61bの上端(第1長手方向端部)に係合部(凸部)62bの上端(第1長手方向端部)が接触するまで挿入した状態(第三の状態)を示す。
このとき外筒61の下端(第2長手方向端部)から係合部(溝)61bの上端(第1長手方向端部)までの長さ[(係合部(溝)61bの深さ]L5は第一から第3開口部63a、64a、65aの間隔(距離ともいう)L1と実質的に同じである。
第一開口部63aは、第二パッキング67と第三パッキング68との間にある。
第二開口部64aは、第三パッキング68と第四パッキング69との間にある。
第三開口部65aは、第四パッキング69と第五パッキング70との間にある。
このとき第一分岐管63と第二分岐管64の流路は、第三パッキング68により隔絶され、第二分岐管64と第三分岐管65の流路は、第四パッキング69により隔絶されているため連通せず、それぞれが閉塞した状態である。
【0033】
例えば、第二分岐管64の流路から第一分岐管63の流路または第三分岐管65の流路へ液体が流れることを切り替えるとすると、図2では、第二分岐管64の流路から第三分岐管65の流路へ流れ、図3では、第二分岐管64の流路から第一分岐管63の流路へ流れる。図4ではすべての流路が閉塞する。
図4で内筒62を外筒61へ挿入すると内筒62がすべて外筒61に覆われるため内筒62を抜き取る方向への操作を禁止できる。これにより、いったん閉塞した通路が再び解放されることを防止することができる。
【0034】
[採血器具1の使用例]
流路切替手段Vとして、スライド式流路切替手段60を使用した場合の一例について説明する。図2から図4に例示するように、第一分岐管63は、第2採血チューブT1.2を介して、採血バッグ4に接続している。
第二分岐管64は、第1採血チューブT1.1を介して、採血針8に接続している。
第三分岐管65は、初流血液チューブT2を介して、採血初流除去バッグBに接続している。
【0035】
(1)初流血液の採血:
流路切替手段V(スライド式流路切替手段60)の流路を、図2に例示するように、初期状態(第一の状態)に調整する。
第二分岐管64と第三分岐管65の流路を、第二パッキング67と第三パッキング68との間に形成されている流路62aによって連通した状態にする。
他方、第一分岐管63の流路を第一パッキング66と第二パッキング67により第二分岐管64と第三分岐管65の流路から隔絶し、閉塞状態にする。
すなわち、採血針8側の第1採血チューブT1.1と初流血液チューブT2は、スライド式流路切替手段60の第二分岐管64、第二開口部64a、流路62a、第三開口部65a、第三分岐管65を経て、連通させた状態にする。
他方、第一分岐管63の流路を、第二分岐管64と第三分岐管65の流路と遮断した状態にする。
供血者に採血針8を穿刺して、初流血液を採血針8、第1採血チューブT1.1、スライド式流路切替手段60の第二分岐管64、第二開口部64a、流路62a、第三開口部65a、第三分岐管65、初流血液チューブT2を経て、採血初流除去バッグBに採取する。
【0036】
(2)採血バッグ4への血液の採取:
初流血液の採取が規定量に達した時点で、内筒62を上方向(第1長手方向)にスライドさせ、流路切替手段V(スライド式流路切替手段60)の流路を、図3に例示するように第二の状態に調整する。
第一分岐管63と第二分岐管64の流路を、第二パッキング67と第三パッキング68との間に形成されている液体通路62aによって連通させた状態にする。
他方、第三分岐管65の流路を、第三パッキング68と第四パッキング9により、第一分岐管63と第二分岐管64の流路から隔絶して、閉塞状態にする。
すなわち採血針8側の第1採血チューブT1.1と、採血バッグ4側の第2採血チューブT1.2は、スライド式流路切替手段60の第二分岐管64、第二開口部64a、流路62a、第一開口部63a、第1分岐管63を経て、連通させた状態にする。
他方、第三分岐管65の流路を、第一分岐管63と第二分岐管64の流路と遮断した状態にする。
初流血液採取後の血液を、採血針8から第1採血チューブT1.1、スライド式流路切替手段60の第二分岐管64、第二開口部64a、流路62a、第一開口部63a、第一分岐管63、第2採血チューブT1.2を経て、採血バッグ4に採取する。
【0037】
(3)最後に、図4の第三の状態ように、内筒62を、第1側部方向に回動させ係合部(凸部)62bを係合部(溝)61bに係合させて、係合部(溝)61bの上端(第1長手方向端部)に係合部(凸部)62bの上端(第1長手方向端部)が接触するまで挿入する。
(第1長手方向にスライドさせる。)
第一分岐管63と第二分岐管64の流路を、第三パッキング68により隔絶し、第二分岐管64と第三分岐管65の流路を、第四パッキング69により隔絶し、閉塞状態にする。
すなわち、採血針8側の第1採血チューブT1.1と採血バッグ4側の第2採血チューブT1.2、初流血液チューブT2、流路切替手段V(スライド式流路切替手段60)の第一分岐管63、第二分岐管64、第三分岐管65の各流路を全て閉塞する。
採血初流除去バッグBのバッグ本体21の血液溜内に貯留した血液を、バッグ本体21の初流血液の出口24に接続している真空採血管ホルダ22から真空採血管へと採取する。
【0038】
[その他のスライド式流路切替手段]
図2から図5に例示した実施形態1のスライド式流路切替手段60の代わりに、例えば、
(1)実施形態2:図7(A)、(B)、(C)から図8(A)、(B)、(C)、
(2)実施形態3:図9(A)、(B)、(C)から図10(A)、(B)、(C)
(3)実施形態4:図11(A)、(B)から図12(A)、(B)
(4)実施形態5:図13(A)、(B)から図14(A)、(B)
(5)実施形態6:図15(A)、(B)、(C)から図16(A)、(B)、(C)
(6)実施形態7:図17(A)、(B)、(C)から図18(A)、(B)、(C)
に例示したスライド式流路切替手段(60A、60B、60C、60D、60E)も使用できる。
図7、9、11、13、17は断面図、図8、図10、図12、図14、図16、図18は外観斜視図である。
【0039】
[実施形態2:スライド式流路切替手段60A]
以下、スライド式流路切替手段60Aの説明で、使用する符号の複雑化を回避するために、スライド式流路切替手段60と実質的に同じ機能を有する部分は、図2から図6に例示したスライド式流路切替手段60と同じ符号を使用する。
図7(図8)のスライド式流路切替手段60Aは、外筒61と内筒62とから構成され、内筒62は外筒61内を第1長手方向にスライドし、さらに側部方向に回動できるように装着している。
[外筒61]
外筒61は、図7から図8に例示するように、上部(第1長手方向)[上端部(第1長手方向端部)]は、上部空間Sの空気抜用(圧逃用)の孔71を形成している。当該孔71以外は実質的に閉塞し、下部(第2長手方向)は開放している。
略下部(第2長手方向)でかつ、側部方向に係合部(溝)61bを形成している。
外筒61の側部方向(第1側部方向)には、第一と第三の二つの分岐管63、65を間隔(距離ともいう)L1で装着し、当該各分岐管63、65は、それぞれ開口部63a、65aを経て、外筒61の内部空間[内筒62を装着した場合は、内筒62の通路62d]と連通している。
分岐管63、65の装着位置の略中心は、実質的に各開口部63a、65aの略中心と同じである。このため各開口部63a、65aも実質的に同じ間隔(距離ともいう)L1で形成している。
また係合部(溝)61bの深さL5は、第一と第三開口部63a、65aの間隔(距離)L1と実質的に同じとなるよう形成している。
【0040】
[内筒62]
内筒62の略下部(第2長手方向)で、かつ側部方向に、係合部(凸部)62bを形成している。
内筒62内部には、下部(第2長手方向)から略上部(第1長手方向)の間に流路62cを形成している。内筒62は、外筒61内に装着すると、略上部(第1長手方向)の開口部62dを経て、外筒61の第一開口部63aまたは第三開口部65aと連通する。
内筒62の下部(第2長手方向)には、第二分岐管64を形成している。第二分岐管64は、第二開口部64aを経て内筒62の流路62cと連通する。
開口部62dの上部(第1長手方向)には、二つの第一パッキング66と第二パッキング67を装着している。
これらの間隔(距離ともいう)L2は、前記外筒61の各開口部63a、65a間の間隔(距離ともいう)L1と実質的に同じに形成している。
さらに開口部62dの下部(第2長手方向)には、三つの第三パッキング68、第四パッキング69及び第五パッキング70を装着している。
これらの間隔(距離L2)は、前記外筒61の各開口部63a、65a間の間隔(距離L1)と実質的に同じに形成している。
また係合部(凸部)62bの幅W1は、外筒61の係合部(溝)61bの幅W2より若干狭く形成されている。
図7(8)の例示では、内筒62の係合部62bは凸部にしているが、溝にしてもよい。この場合、外筒61の係合部61b(溝)は、凸部に形成する。なお内筒62の上部(第1長手方向)は閉塞している。
【0041】
図7(図8)(A)は、内筒62を外筒61内に挿入した初期状態(第一の状態)を示す。
第一開口部63aは第一パッキング66と第二パッキング67との間にある。第三開口部65aは第二パッキング67と第三パッキング68との間にある。
第二分岐管64と第三分岐管65の流路は、第二開口部64a、流路62c、開口部62d、第三開口部65aを経て、連通している。
第一分岐管63の流路は、第一パッキング66と第二パッキング67により、第二分岐管64と第三分岐管65の流路から隔絶されているため閉塞状態である。
このとき、外筒61下端(第2長手方向端部)から係合部(凸部)62b上端(第1長手方向端部)の間隔(距離ともいう)L4は第一開口部63aと第三開口部の間隔(距離ともいう)L1と実質的に同じである。
【0042】
図7(図8)(B)は、(A)の状態(第一の状態)から内筒62を上方向(第1長手方向)にスライドさせ、内筒62の係合部62bの上端(第1長手方向端部)を外筒61の下端(第2長手方向端部)に接触するまで挿入した状態(第二の状態)を示す。
第一開口部63aは第二パッキング67と第三パッキング68との間にある。第三開口部65aは第三パッキング68と第四パッキング69との間にある。
第一分岐管63と第二分岐管64の流路は、第一開口部63a、開口部62d、流路62c、第二開口部64aを経て、連通している。
第三分岐管65の流路は第三パッキング68と第四パッキング69により、第一分岐管63と第二分岐管64の流路から隔絶されているため閉塞状態である。
【0043】
図7(図8)(C)は、(B)の状態から内筒62を、第1側部方向に、回動させ係合部(凸部)62bを係合部(溝)61bに係合させて、係合部(溝)61bの上端(第1長手方向端部)に係合部(凸部)62bの上端(第1長手方向端部)が接触するまで挿入した状態(第三の状態)を示す。
このとき外筒61の下端(第2長手方向端部)から係合部(溝)61bの上端(第1長手方向端部)までの長さ(係合部(溝)61bの深さ)L5は第一開口部63aと第三開口部65aの間隔(距離ともいう)L1と実質的に同じである。
第一開口部63aは第三パッキング68と第四パッキング69との間にある。第三開口部65aは第四パッキング69と第五パッキング70との間にある。
このとき第一分岐管63と第二分岐管64の流路は、第三パッキング68により隔絶され、第二分岐管64と第三分岐管65の流路は、第三パッキング68と第四パッキング69により隔絶されているため連通せず、それぞれが閉塞した状態である。
【0044】
例えば、第二分岐管64の流路から第一分岐管63の流路または第三分岐管65の流路へ液体が流れることを切り替えるとすると、(A)では、第二分岐管64の流路から第三分岐管65の流路へ流れ、(B)では、第二分岐管64の流路から第一分岐管63の流路へ流れる。(C)ではすべての流路が閉塞する。
(C)で内筒62を外筒61へ挿入すると内筒62がすべて外筒61に覆われるため内筒62を抜き取る方向への操作を禁止できる。これにより、いったん閉塞した通路が再び解放されることを防止することができる。
【0045】
[実施形態3:スライド式流路切替手段60B]
以下、スライド式流路切替手段60Bの説明で、使用する符号の複雑化を回避するために、スライド式流路切替手段60、60Aと実質的に同じ機能を有する部分は、スライド式流路切替手段60、60Aと同じ符号を使用する。
図9(図10)のスライド式流路切替手段60Bは、外筒61と内筒62とから構成され、内筒62は外筒61内に第1長手方向にスライドし、さらに側部方向に回動できるように装着している。
図7(図8)のスライド式流路切替手段60Aは、内筒62の下部[第2長手方向(内筒62を第1長手方向に押す側)]に第1採血チューブT1.1を接続する構造となっている。このため、内筒62を第1長手方向に押す(スライドさせる)ときに、第1採血チューブT1.1が障害になる。
これに対して、図9(図10)のスライド式流路切替手段60Bは、内筒62の上部(第1長手方向)に第1採血チューブT1.1を接続する構造とし、下部[第2長手方向(内筒62を第1長手方向に押す側)]に第1採血チューブT1.1を接続しないので、操作性が向上する。
【0046】
[外筒61]
外筒61は、図9から図10に例示するように、上部(第1長手方向)と下部(第2長手方向)は開放している。略下部(第2長手方向)でかつ、側部方向に係合部(溝)61bを形成している。
外筒61の側部方向(第1側部方向)には、第一と第三の二つの分岐管63、65を間隔(距離ともいう)L1で装着し、当該各分岐管63、65は、それぞれ開口部63a、65aを経て、外筒61の内部空間[内筒2を装着した場合は、内筒2の通路62d]と連通している。
分岐管63、65の装着位置の略中心は、実質的に各開口部63a、65aの略中心と同じである。このため各開口部63a、65aも実質的に同じ間隔(距離ともいう)L1で形成している。
また係合部(溝)61bの深さL5は、第一と第三開口部63a、65aの間隔(距離)L1と実質的に同じとなるよう形成している。
【0047】
[内筒62]
内筒62の略下部(第2長手方向)で、かつ側部方向には、係合部(凸部)62bを形成している。
内筒62内部には、上部(第1長手方向)から略中央部との間に流路62cを形成している。内筒62を外筒61内に装着すると、流路62c下部(第2長手方向)の開口部62dを経て、外筒61の第一開口部63aまたは第三開口部65aと連通する。
内筒62の上部(第1長手方向)には、第二分岐管64を形成している。第二分岐管64は、第二開口部64aを経て流路62cと連通する。
開口部62dの上部(第1長手方向)には、二つの第一パッキング66と第二パッキング67を装着している。これらの間隔(距離ともいう)L2は、前記外筒1の各開口部63a、65a間の間隔(距離ともいう)L1と実質的に同じに形成している。
さらに開口部62dの下部(第2長手方向)には、三つの第三パッキング68、第四パッキング69及び第五パッキング70を装着している。
これらの間隔(距離L2)は、前記外筒61の各開口部63a、65a間の間隔(距離L1)と実質的に同じに形成している。
また係合部(凸部)62bの幅W1は、外筒61の係合部(溝)61bの幅W2より若干狭く形成している。
図9から10の例示では、内筒62の係合部62bは、凸部にしているが、溝にしてもよい。この場合、外筒61の係合部61b(溝)は、凸部に形成する。なお内筒62の下部(第2長手方向)は閉塞されている。
【0048】
図9(図10)(A)は、内筒62を外筒61内に挿入した初期状態(第一の状態)を示す。
第一開口部63aは第一パッキング66と第二パッキング67との間にある。
第三開口部65aは第二パッキング67と第三パッキング68との間にある。
第二分岐管64と第三分岐管65の流路は、第二開口部64a、流路62c、開口部62d、第三開口部65aを経て、連通している。
第一分岐管63の流路は、第一パッキング66と第二パッキング67により、第二分岐管64と第三分岐管65の流路から隔絶されているため閉塞状態である。
このとき、外筒61下端(第2長手方向)から係合部(凸部)62b上端(第1長手方向)の間隔(距離ともいう)L4は第一開口部63aと第三65aの間隔(距離ともいう)L1と実質的に同じである。
【0049】
図9(図10)(B)は、(A)の状態(第一の状態)から内筒62を上方向(第1長手方向)にスライドさせ、内筒62の係合部62bの上端(第1長手方向端部))を外筒61の下端(第2長手方向端部)に接触するまで挿入した状態(第二の状態)を示す。
第一開口部63aは第二パッキング67と第三パッキング68との間にある。第三開口部65aは第三パッキング68と第四パッキング69との間にある。
第一分岐管63と第二分岐管64の流路は、第一開口部63a、開口部62d、流路62c、第二開口部64aを経て、連通している。
第三分岐管65の流路は、第三パッキング68により、第一分岐管63と第二分岐管64の流路から隔絶されているため閉塞状態である。
【0050】
図9(図10)(C)は、(B)の状態(第二の状態)から内筒62を第1側部方向に回動させ、係合部(凸部)62bを係合部(溝)61bに係合させて、係合部(溝)61bの上端(第1長手方向端部)に係合部(凸部)62bの上端(第1長手方向端部)が接触するまで挿入した状態(第三の状態)を示す。
このとき外筒61の下端(第2長手方向端部)から係合部(溝)61bの上端(第1長手方向端部)までの長さ(係合部(溝)61bの深さ)L5は第一開口部63aと第三開口部65aの間隔(距離ともいう)L1と実質的に同じである。
第一開口部63aは第三パッキング68と第四パッキング69との間にある。第三開口部65aは第四パッキング69と第五パッキング70との間にある。
このとき第一分岐管63と第二分岐管64の流路は、第三パッキング68に隔絶され、第二分岐管64と第三分岐管65の流路は、第三パッキング68と第四パッキング69により隔絶されているため連通せず、それぞれが閉塞した状態である。
【0051】
例えば、第二分岐管64の流路から第一分岐管63の流路または第三分岐管65の流路へ液体が流れることを切り替えるとすると、(A)では、第二分岐管64の流路から第三分岐管65の流路へ流れ、(B)では、第二分岐管64の流路から第一分岐管63の流路へ流れる。(C)ではすべての流路が閉塞する。
(C)で内筒62を外筒61へ挿入すると内筒62がすべて外筒61に覆われるため内筒62を抜き取る方向への操作を禁止できる。これにより、いったん閉塞した通路が再び解放されることを防止することができる。
【0052】
[実施形態4:スライド式流路切替手段60C]
以下、スライド式流路切替手段60Cの説明で、使用する符号の複雑化を回避するために、スライド式流路切替手段60、60A、60Bと実質的に同じ機能を有する部分は、スライド式流路切替手段60、60A等と同じ符号を使用する。
図11(図12)のスライド式流路切替手段60Cは、スライド式流路切替手段60、60A、60Bの第一パッキング66と第五パッキング70を省略したものである。
スライド式流路切替手段60Cは、外筒61と内筒62とから構成され、内筒62は外筒61内に、第1長手方向にスライドできるように装着している。
[外筒61]
外筒61は、図11から図12に例示するように、上部(第1長手方向)は閉塞し、下部(第2長手方向)は開放している。
外筒61の側部方向(第1側部方向)には、第一と第三の二つの分岐管63、65を実質的に間隔(距離ともいう)L1で装着し、当該各分岐管63、65は、それぞれ開口部63a、65aを経て、外筒61の内部空間[内筒2を装着した場合は、内筒2の通路62c]と連通している。
分岐管63、65の装着位置の略中心は、実質的に各開口部63a、65aの略中心と同じである。このため各開口部63a、65aも実質的に同じ間隔(距離ともいう)L1で形成している。
【0053】
[内筒62]
内筒62内部には、下部(第2長手方向)から略上部(第1長手方向)の間に流路62cを形成している。内筒62は、外筒61内に装着すると、略上部(第1長手方向)の開口部62dを経て、外筒61の第一開口部63aまたは第三開口部65aと連通する。
内筒62の下部(第2長手方向)には、第二分岐管64を形成し、第二開口部64aを経て流路62cと連通する。
開口部62dの上部には、第二パッキング67を装着している。さらに開口部62dの下部には、第三パッキング68、第四パッキング69を装着している。
これらの間隔(距離L2)は、前記外筒61の各開口部63a、65a間の間隔(距離L1)と実質的に同じに形成している。なお内筒62の上部(第1長手方向)は閉塞されている。
【0054】
図11(図12)(A)は、内筒62を外筒61内に挿入した初期状態(第一の状態)を示す。
第一開口部63aは第二パッキング67の上部(第1長手方向)にある。
第三開口部65aは第三パッキング68と第四パッキング69との間にある。
第二分岐管64と第三分岐管65の流路は、第二開口部64a、流路62c、開口部62d、第三開口部65aを経て、連通している。
第一分岐管63の流路は、第二パッキング67により、第二分岐管64と第三分岐管65の流路から隔絶されているため閉塞状態である。
【0055】
図11(図12)(B)は、(A)の状態(第一の状態)から内筒62を上方向(第1長手方向)にスライドさせ、内筒62の上端(第1長手方向端部)が外筒61の上端(第1長手方向端部)に接触するまで挿入した状態を示す。
第一開口部63aは第二パッキング67と第三パッキング68との間にある。第三開口部65aは第三パッキング68と第四パッキング69との間にある。
第一分岐管63と第二分岐管64の流路は、第一開口部63a、開口部62d、流路62c、第二開口部64aを経て、連通している。
第三分岐管65の流路は第三パッキング68により、第一分岐管63と第二分岐管64の流路から隔絶されているため閉塞状態である。
【0056】
例えば、第二分岐管64の流路から第一分岐管63の流路または第三分岐管65の流路へ液体が流れることを切り替えるとすると、(A)では、第二分岐管64の流路から第三分岐管65の流路へ流れ、(B)では、第二分岐管64の流路から第一分岐管63の流路へ流れる。
【0057】
[実施形態5:スライド式流路切替手段60D]
以下、スライド式流路切替手段60Dの説明で、使用する符号の複雑化を回避するために、スライド式流路切替手段60、60A、60B、60Cと実質的に同じ機能を有する部分は、スライド式流路切替手段60、60A、60B、60Cと同じ符号を使用する。
図13(図14)のスライド式流路切替手段60Dは、スライド式流路切替手段60、60A、60Bの第一パッキング66、第五パッキング70を省略したものである。スライド式流路切替手段60Dは、外筒61と内筒62とから構成され、内筒62は外筒61内で第1長手方向にスライドできるように装着している。
【0058】
[外筒61]
外筒61は、図13、14に例示するように、上部(第1長手方向)が閉塞され下部(第2長手方向)は開放されている。
外筒61の側部方向(第1側部方向と第2側部方向)には、第一から第三の三つの分岐管63、64、65が実質的に等間隔(距離ともいう)L1で装着され、当該各分岐管63、64、65は、それぞれ開口部63a、64a、65aを経て、外筒61の内部空間[内筒62を装着した場合は、内筒62の凹部62a(流路)]と連通している。
分岐管63、64、65の装着位置の略中心は、実質的に各開口部63a、64a、65aの略中央と同じである。このため各開口部63a、64a、65aも実質的に等間隔(距離ともいう)L1で形成している。
【0059】
[内筒62]
内筒62の略中央部から上部(第1長手方向)の間に凹部62aを形成している。
内筒62は、外筒61内に装着すると、当該凹部62aが液体流路として機能する。
凹部62aの上部(第1長手方向)には、第二パッキング67を装着している。さらに凹部62aの下部(第2長手方向)には、第三パッキング68、第四パッキング69を装着している。
これらの間隔(距離L2)は、前記外筒61の各開口部63a、64a、65a間の間隔(距離L1)と実質的に同じに形成している。
なお内筒62の上部(第1長手方向)は閉塞したほうが好ましく、下部(第2長手方向)は閉塞していてもよいし開放していてもよい。
【0060】
図13(14)(A)は、内筒62を外筒61内に挿入した初期状態(第一の状態)を示す。
第一開口部63aは第二パッキング67の上部(第1長手方向)にある。
第二開口部64a及び第三開口部65aは第二パッキング67と第三パッキング68との間にある。
第一分岐管63の流路は、第一パッキング66と第二パッキング67により、第二分岐管64と第三分岐管65の流路から隔絶されているため閉塞状態である。
第二分岐管64と第三分岐管65の流路は、第二パッキング67と第三パッキング68との間に形成されている流路62aによって連通している。
【0061】
図13(14)(B)は、(A)の状態(第一の状態)から内筒62を上方向(第1長手方向)にスライドさせ、内筒62の上端(第1長手方向端部)が外筒61の上端(第1長手方向端部)に接触するまで挿入した状態(第二の状態)を示す。
第一開口部63a及び第二開口部64aは第二パッキング67と第三パッキング68との間にある。
第三開口部65aは第三パッキング68と第四パッキング69の間にある。
第一分岐管63と第二分岐管64の流路は、第二パッキング67と第三パッキング68との間に形成されている液体通路62aによって連通している。
第三分岐管65の流路は第三パッキング68により、第一分岐管63と第二分岐管64の流路から隔絶されているため閉塞状態である。
例えば、第二分岐管64の流路から第一分岐管63の流路または第三分岐管65の流路へ液体が流れることを切り替えるとすると、図13(14)(A)では、第二分岐管64の流路から第三分岐管65の流路へ流れ、図13(14)(B)では、第二分岐管64の流路から第一分岐管63の流路へ流れる。
【0062】
[実施形態6:スライド式流路切替手段60E]
図15(16)スライド式流路切替手段60Eは、図2から図6のスライド式流路切替手段60の第一パッキング66を省略したものである。
図15(16)(A)は、図2、図15(16)(B)は、図3、図14(15)(C)は、図4の状態に対応する。
スライド式流路切替手段60Eのスライド式流路切替手段60と異なる点は、以下のとおりである。
スライド式流路切替手段60Eは、外筒61の上部(第1長手方向)を閉塞しているため、この状態から第一分岐管63、第二分岐管64及び第三分岐管65の全ての流路が「閉塞状態」になるまで押し込もうとすると、外筒61上部(第1長手方向)の空間Sが圧縮されて陽圧になり内筒62が押し戻されてしまう。そこで、上部(第1長手方向)の空間が圧縮され圧縮されて陽圧にならないように外筒61上部(第1長手方向)に「逃げ空間SN」を設けている。
これら以外の構造、操作方法は、スライド式流路切替手段60と実質的に同じであるから、詳細な説明は省略する。
【0063】
[実施形態7:スライド式流路切替手段60F]
図17(18)スライド式流路切替手段60Fは、図7(8)のスライド式流路切替手段60Aの第一パッキング66を省略したものである。
図17(18)(A)は、図7(8)の状態に対応する。
スライド式流路切替手段60Fのスライド式流路切替手段60Aと異なる点は、スライド式流路切替手段60Eと同様の理由により、外筒61上側部(第1長手方向、第1長手方向で第1側部方向)に「逃げ空間SN」を設けた点である。
これら以外の構造、操作方法は、スライド式流路切替手段60Aと実質的に同じであるから、詳細な説明は省略する。
【0064】
スライド式流路切替手段60A、60B、60E、60Fは、スライド式流路切替手段60にかえて、図1の採血器具1に使用する場合、前記段落[0034]〜[0037]で説明したように、スライド式流路切替手段60と実質的に同じ様に使用できるので、詳細な説明は省略する。
スライド式流路切替手段60C、60Dは、スライド式流路切替手段60、60A、60B、60E、60Fと比較して、第一分岐管63、第二分岐管64、第三分岐管65の全ての流路を同時に閉塞できないので、図1の採血器具1に使用する場合、採血針8側または採血バッグ側4のどちらか一方のチューブT1の途中にクランプ等の流路閉塞手段を配置する。
【0065】
スライド式流路切替手段60、60A、60B、60C、60D、60E、60Fにおいて、各パッキング66、67、68、69、70は、液密性を維持できるものであれば何でも良く、外筒61と内筒62とは、別部品として、外筒61と内筒62の間に配置しても良いし、内筒62に当初から一体成形しても良い。
スライド式流路切替手段(60、60A、60B、60C、60D、60E、60F)は、採血器具以外の医療分野、その他の一般産業分野にも利用できる。
第一グループ形態の実施形態1、5、6のスライド式流路切替手段(60、60D、60E)は、
前記第一分岐管63に、第2採血チューブT1.2にかえて、第一チューブを接続し、
前記第二分岐管64に、第1採血チューブT1.1にかえて、第二チューブを接続し、
前記第三分岐管65に、初流血液導入チューブT2にかえて、第三チューブを接続し、
前記内筒62と前記外筒61を、スライドないし回動することにより、
前記内筒62の液体流路62aと、前記第一チューブ、前記第二チューブ及び前記第三チューブの液体流路の開閉を調整できる。
【0066】
第二グループ形態の実施形態2、3、4、7のスライド式流路切替手段(60A、60B、60C、60F)も
前記第一分岐管63に、第2採血チューブT1.2にかえて、第一チューブを接続し、
前記第二分岐管64に、第1採血チューブT1.1にかえて、第二チューブを接続し、
前記第三分岐管65に、初流血液導入チューブT2にかえて、第三チューブを接続し、
前記内筒62と前記外筒61を、スライドないし回動することにより、
前記内筒62の液体流路62cと、前記第一チューブ、前記第二チューブ及び前記第三チューブの液体流路の開閉を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の採血器具の概略図
【図2】スライド式流路切替手段の一例を示す縦断面図
【図3】スライド式流路切替手段の一例を示す縦断面図
【図4】スライド式流路切替手段の一例を示す縦断面図
【図5】内筒を装着した外筒の斜視図
【図6】内筒の斜視図
【図7】スライド式流路切替手段の一例を示す縦断面図
【図8】スライド式流路切替手段の一例を示す外観斜視図
【図9】スライド式流路切替手段の一例を示す縦断面図
【図10】スライド式流路切替手段の一例を示す外観斜視図
【図11】スライド式流路切替手段の一例を示す縦断面図
【図12】スライド式流路切替手段の一例を示す外観斜視図
【図13】スライド式流路切替手段の一例を示す縦断面図
【図14】スライド式流路切替手段の一例を示す外観斜視図
【図15】スライド式流路切替手段の一例を示す縦断面図
【図16】スライド式流路切替手段の一例を示す外観斜視図
【図17】スライド式流路切替手段の一例を示す縦断面図
【図18】スライド式流路切替手段の一例を示す外観斜視図
【符号の説明】
【0068】
1 採血器具
2 採血初流除去セット
B 採血初流除去バッグ
3 血液フィルタ
4 採血バッグ
5 第1子バッグ
6 第2子バッグ
7 赤血球保存液入バッグ
8 採血針
10 針カバー13 接続管
21 バッグ本体
22 真空採血管ホルダ
23 (初流血液の)入口
24 (初流血液の)出口
25 (初流血液の)採取針
V 流路切替手段
T1 採血チューブ
T1.1 第1採血チューブ(第二接続チューブ)
T1.2 第2採血チューブ(第一接続チューブ)
T2 初流血液導入チューブ(第三接続チューブ)
T3、T4、T5、T6 連結チューブ
60、60A、60B、60C、60D、60E、60F スライド式流路切替手段
61 外筒
61b 係合部(溝)
62 内筒
62a 凹部[(液体)流路]
62b 係合部(凸部)
62c 流路
62d 開口部
63 第一分岐管
64 第二分岐管
65 第三分岐管
63a 第一開口部
64a 第二開口部
65a 第三開口部
66 第一パッキング
67 第二パッキング
68 第三パッキング
69 第四パッキング
70 第五パッキング
71 孔
L1 第一開口部と第二開口部、第二開口部と第三開口部間の間隔(距離)
第一分岐管と第二分岐管、第二分岐管と第三分岐管の間隔(距離)
L2 第一パッキングと第二パッキング、第三パッキングと第四パッキング、第四パッキングと第五パッキングの間隔(距離)
L3 第二パッキングと第三パッキングの間隔(距離)
L4 外筒1下端から係合部(凸部)2bの上端の間隔(距離)
L5 外筒1の係合部(溝)1bの深さ
W1 係合部(凸部)2bの幅
W2 係合部(溝)1b
S 空間
SN 逃げ空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供血者より血液を採取する採血針(8)と、
前記採取された血液を収納する採血バッグ(4)と、
前記採取された血液を前記採血バッグ(4)へ導入する第1採血チューブ(T1.1)及び第2採血チューブ(T1.2)と、
前記採取された血液の初流を除去する初流血液チューブ(T2)と、
採血初流除去バッグ(B)とを有し、
前記第1採血チューブ(T1.1)、第2採血チューブ(T1.2)及び前記初流血液チューブ(T2)は、前記採血針(8)からみて、前記採血針(8)に近い側の第1端部と前記採血針(8)に遠い側の第2端部とを有し、
前記第1採血チューブ(T1.1)は、第1端部を前記採血針(8)に接続し、
前記第2採血チューブ(T1.2)は、第2端部を前記採血バッグ(4)に接続し、
前記第1採血チューブ(T1.1)と前記第2採血チューブ(T1.2)との間に流路切替手段(V)を配置し、当該流路切替手段(V)に前記初流血液チューブ(T2)の第1端部を接続し、
当該初流血液チューブ(T2)の第2端部は、採血初流除去バッグ(B)に接続し、
前記流路切替手段(V)は、スライド式流路切替手段(60、60A、60B、60C、60D、60E、60F)であり、
当該スライド式流路切替手段(60、60A、60B、60C、60D、60E、60F)は、外筒(61)と内筒(62)とを有し、
前記外筒(61)と前記内筒(62)は、長手方向と当該長手方向と略垂直に交わる側部方向を有し、
前記長手方向は、上部方向である第1長手方向と、下部方向である第2長手方向とを有し、
前記スライド式流路切替手段(60、60D、60E)において、
前記外筒(61)は、側部方向に三つの分岐管(63、64、65)を有し、当該三つの分岐管(63、64、65)は、それぞれ開口部(63a、64a、65a)により、当該外筒(61)の内部と連通し、
前記内筒(62)は、第1長手方向から第2長手方向に沿って、側部方向に、
少なくとも三つのパッキングを装着し、
前記内筒(62)は、第1長手方向から第2長手方向にみて、
第二番目のパッキングと第三番目のパッキングとの間に、液体流路(62a)を形成するか、または 第一番目のパッキングと第二番目のパッキングとの間に、液体流路(62a)を形成し、
前記内筒(62)を前記外筒(61)内に、第1長手方向に、スライドできるように装着するか、または第1長手方向に、スライドし、さらに側部方向に回動できるように装着し、
前記内筒(62)と前記外筒(61)を、前記のようにスライド、またはスライドし、さらに回動することにより、
前記内筒(62)の液体流路(62a)と、前記採血針(8)側の第1採血チューブ(T1.1)、前記採血バッグ(4)側の第2採血チューブ(T1.2)及び前記初流血液チューブ(T2)との液体流路の開閉を調整できるようにしたことを特徴とする採血器具(1)。
【請求項2】
前記請求項1に記載の前記スライド式流路切替手段(60、60D、60E)に代えて、
スライド式流路切替手段(60A、60B、60C、60F)を装着し、
前記外筒(61)は、側部方向に二つの分岐管(63、65)を有し、当該二つの分岐管(63、65)は、それぞれ開口部(63a、65a)により、当該外筒(61)の内部と連通し、
前記内筒(62)は、第1長手方向から第2長手方向に沿って、側部方向に、少なくとも三つのパッキングを装着し、
前記内筒(62)は、当該内筒(62)内部の長手方向に沿って、液体流路(62c)を形成し、
前記内筒(62)は、第1長手方向または第2長手方向に分岐管(64)を形成し、
前記内筒(62)を前記外筒(61)内に、第1長手方向にスライドできるように装着するか、または第1長手方向にスライドし、さらに側部方向に回動できるように装着し、
前記内筒(62)と前記外筒(61)を、前記のようにスライド、またはスライドし、さらに回動することにより、前記内筒(62)の液体流路(62c)と、前記採血針(8)側の第1採血チューブ(T1.1)、前記採血バッグ(4)側の第2採血チューブ(T1.2)及び前記初流血液チューブ(T2)との液体流路の開閉を調整できるように形成したことを特徴とする採血器具(1)。
【請求項3】
前記外筒(61)の三つの分岐管(63、64、65)は、それぞれ
第一分岐管(63)、第二分岐管(64)及び第三分岐管(65)であり、
前記第一分岐管(63)に、前記第2採血チューブ(T1.2)の第1端部を接続し
前記第二分岐管(64)に、前記第1採血チューブ(T1.1)の第2端部を接続し
前記第三分岐管(65)に、前記初流血液チューブ(T2)の第1端部を接続したことを特徴とする請求項1に記載の採血器具(1)。
【請求項4】
前記外筒(61)の二つの分岐管(63、65)は、第一分岐管(63)及び第三分岐管(65)であり、
前記内筒(62)の分岐管(64)は、第二分岐管(63)であり、
前記第一分岐管(63)に、前記第2採血チューブ(T1.2)の第1端部を接続し
前記第二分岐管(64)に、前記第1採血チューブ(T1.1)の第2端部を接続し
前記第三分岐管(65)に、前記初流血液チューブ(T2)の第1端部を接続したことを特徴とする請求項2に記載の採血器具(1)。
【請求項5】
前記請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の前記スライド式流路切替手段(60、60A、60B、60E、60F)において、
前記外筒(61)の第2長手方向でかつ、側部方向に係合部(61b)を形成し、
前記内筒(62)の第2長手方向でかつ、側部方向に係合部(62b)を形成し、
前記内筒(62)を側部方向に回動したときに、
前記外筒(61)の係合部(61b)と、前記内筒(62)の係合部(62b)を係合できるように形成したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の採血器具(1)。
【請求項6】
スライド式流路切替手段(60、60D、60E)は、外筒(61)と内筒(62)とを有し、前記外筒(61)と前記内筒(62)は、長手方向と当該長手方向と略垂直に交わる側部方向を有し、
前記長手方向は、上部方向である第1長手方向と、下部方向である第2長手方向とを有し、前記外筒(61)は、側部方向に三つの分岐管(63、64、65)を有し、当該三つの分岐管(63、64、65)は、それぞれ開口部(63a、64a、65a)により、当該外筒(61)の内部と連通し、
前記内筒(62)は、第1長手方向から第2長手方向に沿って、側部方向に、
少なくとも三つのパッキングを装着し、
前記内筒(62)は、第1長手方向から第2長手方向にみて、
第二番目のパッキングと第三番目のパッキングとの間に、液体流路(62a)を形成するか、または
第一番目のパッキングと第二番目のパッキングとの間に、液体流路(62a)を形成し、
前記内筒(62)を前記外筒(61)内に、第1長手方向にスライドできるように装着するか、または第1長手方向にスライドし、さらに側部方向に回動できるように装着し、
前記外筒(61)の三つの分岐管(63、64、65)は、それぞれ
第一分岐管(63)、第二分岐管(64)及び第三分岐管(65)であり、
前記第一分岐管(63)に、第一チューブを接続し、
前記第二分岐管(64)に、第二チューブを接続し、
前記第三分岐管(65)に、第三チューブを接続し、
前記内筒(62)と前記外筒(61)を、前記内筒(62)と前記外筒(61)を、前記のようにスライド、またはスライドし、さらに回動することにより、
前記内筒(62)の液体流路(62a)と、前記第一チューブ、前記第二チューブ及び前記第三チューブの液体流路の開閉を調整できるようにしたことを特徴とするスライド式流路切替手段(60、60D、60E)。
【請求項7】
スライド式流路切替手段(60A、60B、60C、60F)は、外筒(61)と内筒(62)とを有し、前記外筒(61)と前記内筒(62)は、長手方向と当該長手方向と略垂直に交わる側部方向を有し、前記長手方向は、上部方向である第1長手方向と、下部方向である第2長手方向とを有し、
前記外筒(61)は、側部方向に二つの分岐管(63、65)を有し、当該二つの分岐管(63、65)は、それぞれ開口部(63a、65a)により、当該外筒(61)の内部と連通し、
前記内筒(62)は、第1長手方向から第2長手方向に沿って、側部方向に、
少なくとも三つのパッキングを装着し、
前記内筒(62)は、当該内筒(62)内部の長手方向に沿って、液体流路(62c)を形成し、
前記内筒(62)は、第1長手方向または第2長手方向に分岐管(64)を形成し、
前記内筒(62)を前記外筒(61)内に、第1長手方向にスライドできるように装着するか、または 第1長手方向にスライドし、さらに側部方向に回動できるように装着し、
前記外筒(61)の二つの分岐管(63、65)は、第一分岐管(63)及び第三分岐管(65)であり、
前記内筒(62)の分岐管(64)は、第二分岐管(63)であり、
前記第一分岐管(63)に、第一チューブを接続し、
前記第二分岐管(64)に、第二チューブを接続し、
前記第三分岐管(65)に、第三チューブを接続し、
前記内筒(62)と前記外筒(61)を、前記のようにスライド、またはスライドし、さらに回動することにより、前記内筒(62)の液体流路(62c)と、前記第一チューブ、前記第二チューブ及び前記第三チューブの液体流路の開閉を調整できるようにしたことを特徴とするスライド式流路切替手段(60A、60B、60C、60F)。
【請求項8】
前記請求項6または請求項7に記載の前記スライド式流路切替手段(60、60A、60B、60E、60F)において、
前記外筒(61)の第2長手方向でかつ、側部方向に係合部(61b)を形成し、
前記内筒(62)の第2長手方向でかつ、側部方向に係合部(62b)を形成し、
前記内筒(62)を側部方向に回動したときに、
前記外筒(61)の係合部(61b)と、前記内筒(62)の係合部(62b)を係合できるように形成したことを特徴とする請求項6または請求項7に記載のスライド式流路切替手段(60、60A、60B、60E、60F)。


【図12】
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【図14】
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【図16】
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【図18】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図15】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−30110(P2012−30110A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235606(P2011−235606)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【分割の表示】特願2006−342892(P2006−342892)の分割
【原出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000200035)川澄化学工業株式会社 (103)
【Fターム(参考)】