説明

採風窓

【課題】風の向きに応じて障子を少なくとも左右のどちらにも片開きでき、さらには平行に突き出し可能な採風窓の提供を目的とする。
【解決手段】駆体開口部に取り付けた枠体と、当該枠体の室外側に片開き及び突き出し可能に設けた障子を備え、枠体は上下略平行配置した上枠及び下枠と、当該上枠と下枠の両端部に位置する左右の縦枠を有し、障子は上下略平行に配置した上框と下框と、当該上框と下框の両端部に位置する左右の縦框を有し、上枠と上框の間又は/及び下枠と下框の間は左右のリンクアームでそれぞれ連結するとともに、リンクアームの一端は回動軸連結し、他端はスライド連結することで障子が左右の一方に片開き及び平行して突き出し可能になっていることを特徴とする

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は採風等を目的に建築物の駆体開口部に設けられる採風窓に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から屋外の新鮮な空気や風等を室内に取り込むための窓構造は片開き窓、突き出し窓等として各種提案されている。
これらの窓は引き違い障子と比較して風を取り込みやすく、採風窓として好まれている。
【0003】
特許文献1は障子の一方の片側を開口部枠体に蝶番連結し、他方の開閉操作手段として枠体の内部を貫通するよう設けた連動部材を室内側で突出させるための回動可能な把手を有する構造を開示するが、障子の予め決められた片方を開くものであり、風向きの変化に対応できない。
特許文献2は扉の上下端面から突没する支軸を扉の左右に設けることで扉を左右のどちらにも片開きできる窓構造を開示するが、扉を片方の支軸で支えるものであるために平行に突き出しできるものではない。
特許文献3はXアームを用いた平行突き出し窓を開示するが、障子を左右に片開きできるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−75420号公報
【特許文献2】特開昭56−67079号公報
【特許文献3】特開2002−227512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は風の向きに応じて障子を少なくとも左右のどちらにも片開きでき、さらには平行に突き出し可能な採風窓の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る採風窓は、駆体開口部に取り付けた枠体と、当該枠体の室外側に片開き及び突き出し可能に設けた障子を備え、枠体は上下略平行配置した上枠及び下枠と、当該上枠と下枠の両端部に位置する左右の縦枠を有し、障子は上下略平行に配置した上框と下框と、当該上框と下框の両端部に位置する左右の縦框を有し、上枠と上框の間又は/及び下枠と下框の間は左右のリンクアームでそれぞれ連結するとともに、リンクアームの一端は回動軸連結し、他端はスライド連結することで障子が左右の一方に片開き及び平行して突き出し可能になっていることを特徴とする。
このように障子の上部の左右2ヶ所及び下部の左右の2ヶ所のうち、どちらか一方又はその両方を枠体側とリンクアームにて連結したので左右のリンクアームのうち、どちらか一方を室外側に向けて回動することで左右のうち、どちらの方向にも障子を片開きすることができるのみならず、左右両方のリンクアームを室外側に向けて回動すれば、障子が室外側に向けて平行に突き出した窓になる。
ここで相対的に小さい障子や高さの低い障子にあっては障子の上部のみに設けた左右2ヶ所のリンクアーム、又は、障子の下部のみに設けた左右2ヶ所のリンクアームにて障子を支持することが可能であるが、上下の4ヶ所のリンクアームで障子を支えると、この障子の開閉安定性に優れる。
また、リンクアームの一方が回動連結され、他方がスライド連結されているものであれば枠体と障子とのどちら側が回動連結になっていてもよい。
なお、スライド連結部のスライド方向は左右対向配置されているのが好ましく、スライド構造はリンクアームの他端がスライド移動するものであれば、ガイド部に沿ったレール構造でもガイド溝とこのガイド溝に沿って移動するピン構造であってもよく、その構造に限定はない。
ここで、リンクアームの他端をスライド移動させるスライド連結部は、リンクアームの他端がスライドしないようにロックしたり、スライド量を規制することができるようにスライド量を可変可能に規制したスライド規制手段を有してもよい。
なお、本明細書では窓の外側から見て左右方向を表示する。
【0007】
障子の開いた状態と閉じた状態を切り換え、さらにその状態を維持できれば各種構造を採用できるが、前記左縦枠と左縦框及び右縦枠と右縦框はそれぞれ突き出し開閉操作する操作部を有し、当該操作部は、前記縦枠に設けた室外側に向けて突没する操作杆と、縦框とが、一方に設けた連結ピンと他方に設けた連結孔を介して当該連結部にクリアランスを有するように連結してあるのが好ましい。
ここで、連結ピンと連結孔との組み合せになっていれば障子と枠体とのどちらに連結ピンを設けてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る採風窓は、障子上部の左右をそれぞれリンクアームで支持し、又は障子下部の左右をそれぞれリンクアームで支持し、もしくは障子の上部と下部との両方を左右のリンクアームでそれぞれ支持した構造を採用し、リンクアームの一端を回動軸で枢着し他端をスライド自在に連結したので、リンクアームを全て室内側に向けて回動させることで障子が枠体の開口部を閉じた状態に維持され、左側のリンクアームを室外側に回動すれば左側片開き窓になり、逆に左側のリンクアームを室内側に保持し、右側のリンクアームを室外側に回動すれば右側片開き窓になる。
また、左右のリンクアームを室外側に向けて回動すれば、障子が平行に室外側に突き出した突き出し窓になる。
ここで、スライド連結部に可変可能に規制したスライド規制手段を設けると、片開きの開き量を大きくしつつ、突き出し量を小さくすることもできる。
さらには、障子の上部及び下部の左右にそれぞれリンクアームで連結すると障子の上部の左右2つのリンクアームのみを室外側に回動すれば、障子の上部側が室外側に突き出した上側片開き窓になり、その逆に下側片開き窓にすることもできる。
【0009】
これにより、風向きに応じて窓の開き方を選択することができるため、季節や時間で変化する風の取り込みに対応できる。
特に新築の場合に片開き窓では左右のどちらの方向に開くか判断が付かない場合があり、本発明ではそのような心配も不要である。
本発明に係る窓は窓ガラスをすりガラス等にすることで浴室の換気にも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る採風窓の横断面図を示し、(a)は窓の全閉状態、(b)は室外側から見て障子の左片開き状態、(c)は障子を平行に突き出した状態をそれぞれ示す。
【図2】室外側から見た障子(窓)の片開き状態を示す。
【図3】室外側から見た障子の平行突き出し状態を示す。
【図4】室内側から見た障子の片開き状態を示す。
【図5】室内側から見た障子の平行突き出し状態を示す。
【図6】障子の側部に設けた開閉操作部を示す。
【図7】障子の上部又は下部の片開き状態を示す。
【図8】スライド連結部を枠体側に設けた実施例を示す。(a)は障子の全閉状態、(b)はカム操作により片方のスライダーをロックした状態、(c)はスライダーがロックされていない方のスライダー移動を許容し、障子を片開きにした状態、(d)はさらに大きく片開きにした状態をそれぞれ示す。
【図9】スライダーの動きを示した部分拡大図を示し、(a)は障子の全閉状態、(b)は障子を片開きする状態を示す。
【図10】リンク機構の動きを説明するための模式図を示す。(a)は左右のカムが中立の状態、(b)は図10で右側のスライダーをロックした状態、(c)は障子を片開きした状態を示す。
【図11】左側のスライダーをロックし、障子の右側を片開きした状態を示す。
【図12】左右のスライダーのスライド量を規制することで障子の突き出し量を調整した例を示す。
【図13】リンク機構の動きを説明するための模式図を示す。(a)は障子が閉じた状態、(b)は障子を突き出した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る採風窓の構造例を以下図面に基づいて説明するが、これに限定されるものではない。
【0012】
図1〜図5に示すように建築物の駆体1の開口部の周縁部に枠体10が嵌め込まれ、枠体の開口部を開閉可能に障子20が設けられている。
図2に示すように枠体10は上枠13、下枠14及びその左右に位置する室外側から見て左縦枠11と右縦枠12からなる正面視略長方形の枠状になっている。
障子20は上框23、下框24及びその左右の左縦框21及び右縦框22とからなる正面視略長方形の枠状になっていて、その枠内に図示を省略したが、ガラス等のパネル体が水密に嵌め込まれている。
【0013】
下枠14の内側面(上面)と下框24の外側面(下面)との間であって、障子の左右を2つのリンクアーム31,32にて連結してある。
上枠13の内側面(下面)と上框23の外側面(上面)との間であって、障子の左右を2つのリンクアーム33,34にて連結してある。
4つのリンクアーム31〜34はそれぞれ共通の符号a〜fを対応するように付してあり、図1に下側のリンクアーム31,32の構造を示し、これに基づいて以下説明する。
図1にて左側のリンクアーム31は一端31aを下枠14に回動自在な回動軸にて枢着(回動連結)し、他端はピン31b形状になっていて下框24に取り付けたブラケット31cに設けた長孔形状のスライド溝31dに沿って左右方向にスライドする例(スライド連結)になっている。
右側のリンクアーム32は上記リンクアーム31と対向するように配置してあり、リンクアーム32の一端32aは下枠14の内側上面に回動軸で枢着し、他端に設けたピン32bは下框24の外側下面に取り付けたブラケット32cの長孔形状のスライド溝31dにスライド連結してある。
障子の上部側のリンクアーム33,34も同様の構造になっているので説明を省略する。
なお、本実施例では障子の上部と下部とにそれぞれ左右一対、対向配置したリンクアームの例を示したが後述するように左右の縦框の側部を操作部で連結したり、他の手段にて障子の開閉状態を支持できれば障子の上部又は下部の片方のみ左右のリンクアームで支持してもよい。
【0014】
障子20の左右の縦框21,22はそれぞれ枠体の左右の縦枠11,12と操作部41,42にて連結されている。
左右の操作部41,42は対向配置され、その構造は一致するので図6に基づいて操作部41を代表に説明する。
操作部41の本体部41aを縦枠11の枠内の内側面に取り付けてあり、操作杆41bが本体部41aの貫通孔に沿って室外側に突没するようになっていて、操作杆41bの室外側端部が連結アーム41dと回動自在な回動連結部41cにて連結されている。
連結アーム41dの室外側端部は連結孔41eになっていて、障子側に固定した略T字形状の固定プレートの室内側に設けたピン形状の連結ピン41gが上記連結孔41e内に納まるように連結されている。
この連結孔41eは連結ピン41gの外径よりも所定のクリアランスを有し、アソビがあるように大きい内径になっている。
これにより、操作杆41bを室外側に突き出すと、固定プレート41fを介して障子の縦框が室外側に回動又は突き出され、操作杆41bを室内側に向けて引っ張り、回動連結部を回動中心にして上下方向に折り曲げると閉じた状態がロックされる。
【0015】
次に障子20の開閉操作について説明する。
図1(a)に示した状態はリンクアーム31〜34が障子20の上框23、下框24と平行になるように室内側に回動した状態にあり、障子が全閉状態にある。
この状態から操作部41又は42を操作し、左のリンクアーム31,33又は右のリンクアーム32,34の一方を室外側に向けて回動すると、例えば図1(b)に左側のリンクアーム31,33を回動した状態を示すように片開き状態になる。
図2にその状態の室外側から見た状態を示し、図4に室内側から見た状態を示す。
操作部41の連結孔41eと連結ピン41gの間に所定のアソビがあることから、図2(b)に示すように連結アーム41dとのねじれを許容する。
【0016】
また、図1(c)に示すように左右のリンクアーム31〜34の全てを室外側に向けて回動すると、障子20が平行に室外側に突き出した状態になる。
このときの外観図を図3に内観図を図5にそれぞれ示す。
【0017】
図7に示すように障子20の縦框21,22の上下二段にそれぞれ操作部41〜44を設けると、図7(a)に示すように障子20の上側片開き、また逆に図7(b)に示すように下側片開き状態にすることも可能である。
【0018】
図8〜図13はリンクアームのスライド連結部を枠体側に設けるとともに左右のリンクアームのうち、片方のスライドをロックしたり、左右のリンクアームのスライド量を規制したスライド規制手段を設けた例を示す。
枠体の左右の一対のカム51,52を対向配置し、回動軸51a,52aにて回動自在に設け、左右のカムを同期リンク50aで連結し、この同期リンクの中央部に取り付けたカム操作部50にて左右に回動可能にした。
左右のカム51,52を同期して回動できるように左右のカム51,52に対向して略く字形状のスライド部51b,52bを形成し、この左右の対向配置したスライド部51b,52bに同期リンク50aの両端部をスライド可能に連結してある。
【0019】
枠体と障子とは、左右の対向配置したリンクアーム131,132にてリンク連結し、障子側は回動軸131a,132aにて回動可能に軸着した。
リンクアーム131,132の枠体側は、左右方向のガイド部61a,62aに沿ってガイドされながら左右にスライドするスライダー61,62を設け、このスライダー61,62に回動軸131b,132bを介して軸着した。
このスライダー61,62に対して左右のカム51,52にスライダーの移動をロックするロック規制面51c,52cと所定の範囲のみスライドを規制するスライド規制面51d,52d(図12参照)を設定してある。
【0020】
次に障子の開閉操作について説明する。
図8(a)が閉じた状態で(b)〜(d)がリンクアーム131,132の動きによる障子の片開き変化を示す。
なお、図9にスライダー付近の拡大図、図10にリンクアームとスライダーとの関係を示す。
図10で説明すると、障子が閉じた状態で(a)に示すようにカム操作部50を左に操作すると左のカム51はガイド部61aを開放し、右のカム52はロック規制面52cがスライダー62の左側(内側)に当接し、スライダー62の移動をロックする。
このような状態で図8(c)に示すように操作杆41bを押し出すと、連結アーム41dの外側への突出によりスライダー61がガイド部61aに沿って右に移動し、障子が片開きする。
操作杆41bの押し出し量を二段にしてもよいが、図8に示した例は連結アーム41dから障子側の連結ピン41gを外してさらに大きく片開きした例である。
図11は上記とは反対側に障子を片開きした例を示し、操作は上記と逆になるだけなので、詳細な説明は省略する。
この場合には片開きの開き角度はスライダー61,62の最大スライド量にて定まる。
【0021】
図12,13は左右のカム51,52を中立状態にし、左右の操作41b,42bを操作し、障子20を枠体10から平行に突き出す場合を示す。
この状態では、左右のスライダー61,62は左右のカム51,52のスライド規制面51d,52dに当接するまでは移動が許容されるが、それ以上はスライドしないのでこの状態で定まるリンクアーム131,132の回動角度に応じた突き出し量にて障子20が平行に突き出すことになる。
従って、図8〜図11に示すように障子の片開き角度を大きくすることができつつ、突き出し量は小さくできるので、障子の突き出し状態で外から内部が見える範囲を狭くすることができる。
【符号の説明】
【0022】
1 駆体
10 枠体
11 左縦枠
12 右縦枠
13 上枠
14 下枠
20 障子
21 左縦框
22 右縦框
23 上框
24 下框
31 リンクアーム
32 リンクアーム
41 操作部
41a 本体部
41b 操作杆
41c 回動連結部
41d 連結アーム
41e 連結孔
41f 固定プレート
41g 連結ピン
42 操作部
50 カム操作部
51 カム
52 カム
52c ロック規制面
52d スライド規制面
61 スライダー
61a ガイド部
62a ガイド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆体開口部に取り付けた枠体と、当該枠体の室外側に片開き及び突き出し可能に設けた障子を備え、
枠体は上下略平行配置した上枠及び下枠と、当該上枠と下枠の両端部に位置する左右の縦枠を有し、
障子は上下略平行に配置した上框と下框と、当該上框と下框の両端部に位置する左右の縦框を有し、
上枠と上框の間又は/及び下枠と下框の間は左右のリンクアームでそれぞれ連結するとともに、リンクアームの一端は回動軸連結し、他端はスライド連結することで障子が左右の一方に片開き及び平行して突き出し可能になっていることを特徴とする採風窓。
【請求項2】
前記スライド連結したスライド連結部はスライド量を可変可能に規制したスライド規制手段を有することを特徴とする請求項1記載の採風窓。
【請求項3】
前記左縦枠と左縦框及び右縦枠と右縦框はそれぞれ突き出し開閉操作する操作部を有し、
当該操作部は、前記縦枠に設けた室外側に向けて突没する操作杆と、縦框とが、一方に設けた連結ピンと他方に設けた連結孔を介して当該連結部にクリアランスを有するように連結してあることを特徴とする請求項1又は2記載の採風窓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−136926(P2012−136926A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59836(P2011−59836)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000100791)アイシン軽金属株式会社 (137)
【Fターム(参考)】