説明

接合体及びその製造方法

【課題】気孔径が大きく、気孔率が高い大型の多孔体を用いた場合であっても、多孔体の機能を確保しつつ十分な気密性を有する接合体を提供する。
【解決手段】SiC多孔体と、該SiC多孔体に金属シリコンが浸透した浸透層と、該浸透層に接したシリコン合金からなる接合層とを含む接合体であって、前記シリコン合金のアルミニウム含有量は1〜20wt%であることを特徴とする接合体。前記浸透層の金属シリコンは、前記シリコン合金のアルミニウム含有量以下のアルミニウムを含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の排気ガス処理装置に使用されるハニカムや腐食下で使用される触媒担体やフィルターおよび半導体製造装置をはじめとする多孔体を使用する各産業分野に関わる。
【背景技術】
【0002】
SiCは耐熱性、耐食性に優れており、半導体製造装置部材や自動車部品として用いられている。SiCは焼結温度が高く、雰囲気も不活性ガス下で行うことから、大きさに制限があり、複雑形状品を作製することが困難であった。このような問題を解決するために、接合技術が種々提案されてきた。接合で特に問題となるのは接合材との熱膨張差による残留応力である。残留応力が大きい場合、接合後に残留ひずみが発生し、接合部の強度が低下するという問題が発生する。これまでそれを解決するためにSiCと熱膨張係数が近い金属シリコンが接合材として用いられてきた。金属シリコンは粉末や薄板など形状も多様で、容易に手に入る材料であり、SiC表面上に残留するカーボンと反応してSiCを形成するというメカニズムで接合するため、更に熱膨張差が緩和されやすい点でSiCの接合に適している。
【0003】
近年、半導体製造装置部材および自動車部品としてSiCの用途は更なる広がりをみせ、SiCの緻密な焼結体とともに多孔体の要求も高まっている。SiCの多孔体は耐熱性、耐食性に優れているため、触媒担体やフィルターとして用いられている。その使用範囲は幅広く、様々な形状のSiC多孔体が要求されている。
【0004】
しかし、SiC多孔体も緻密体同様に製造できる形状に限界があり、所望の形状を作製するためにはSiC多孔体同士の接合やSiCの緻密体との接合が必要不可欠である。
【0005】
このようなSiC多孔体に関する接合技術が種々提案されている。例えば、特許文献1には、含珪素セラミックからなる多孔質体の開放気孔中に、金属シリコンを含浸した複数のセラミック・金属複合体製の2つの基材からなるセラミック部材が開示されている。この基材同士は、金属シリコンからなる接合層を介して接合されている。
【特許文献1】特開2002−11653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように金属シリコンは、SiCとの熱膨張差が小さいだけでなく、SiC表面にある残留カーボンと反応するため、濡れ性が良く、接合材として良好にその特性を発揮する。しかし、SiCの多孔体の場合、その内部にも残留カーボンが多く存在するため、接合材の金属シリコンが接合面のみに留まらず、多孔体内部にまで過剰に浸透してしまい、気孔部分が埋まってしまうことがあった。そのため、フィルターとして使用する際など十分な連通部を確保できず、安定した流量を確保するのが困難であった。特にSiC多孔体の気孔径が大きい場合、接合材である金属シリコンの浸透が容易に進むため、気孔部分が金属シリコンで埋まり、逆に接合部の金属シリコンの量が不十分となり接合強度や接合部での気密性が得られない場合があった。したがって、流量を多く流すために気孔径が大きいものや気孔率が高い多孔体を金属シリコンで接合することは不可能であった。
【0007】
また、特に大型のSiC多孔体を接合する場合、熱容量が大きいため、小型品と比較すると高温での保持時間が長くなる。そのため、接合材として金属シリコンを使用した場合、金属シリコンが揮発して多孔体に過剰に侵入するという問題があった。
【0008】
さらに、多孔体同士を接合した接合体からなる半導体製造装置部材のなかには、接合層により隔離された両側を異なる雰囲気としたり、接合層を挟んで給気と排気を行ったりするものがあり、接合部の気密性が非常に重要視されている。したがって、接合強度だけでなく気密性への要求も厳しく、これを高めることが課題となっていた。
【0009】
本発明では気孔径が大きく、気孔率が高い大型の多孔体を用いた場合であっても、多孔体の機能を確保しつつ十分な気密性を有する接合体およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、これらの問題を解決するため、SiC多孔体にSiCの充填率が高い部分を設け、その部分に金属シリコンを浸透させて、浸透層を形成し、その後浸透層を加工することによりその厚みを制御し、さらに接合材の金属シリコンにアルミニウムを添加して融点を低下させることにより、浸透層の金属シリコンの揮発を低減し、SiC多孔体に金属シリコンが過剰に侵入することを抑制して接合する方法を見出し、本発明をするに至った。
【0011】
すなわち本発明は、SiC多孔体と、該SiC多孔体に金属シリコンが浸透した浸透層と、該浸透層に接したシリコン合金からなる接合層とを含む接合体であって、前記シリコン合金のアルミニウム含有量は1〜20wt%であることを特徴とする接合体、を提供するものである。
【0012】
通常、金属シリコンにアルミニウムを添加して加熱溶融した後に冷却すると、凝固する際に収縮し、これが接合層に、いわゆる引け巣(隙間)、を発生させ、気密性が低下する。それを防止するために本発明では以下の手法を用いた。まず接合時に接合材が溶けると浸透層の金属シリコンと接触する。そこで接合材中のアルミニウムの拡散が起こり、接合材全体のアルミニウムの成分割合が接合前と比較して減少する。そのため、接合材の融点を下げるためにアルミニウムを添加しても凝固収縮は小さく抑えられて引け巣を低減することができる。しかも、浸透層の金属シリコンは、接合温度が低いために溶融をすることがなく、多孔体内部への過剰な侵入を抑制することができる。これにより、接合最高温度の保持時間が長い大型品に適用しても、金属シリコンの揮発が抑制され、SiC多孔体への金属シリコンの過剰な侵入を抑えることが出来る。
【0013】
本発明における接合層のシリコン合金のアルミニウム含有量は1〜20wt%とすることが望ましい。シリコン合金に含まれるアルミニウムは、接合材として添加した量よりも減少する。これは、浸透層の金属シリコンに拡散するためである。また、加熱溶融時にアルミニウムが揮発するためである。シリコン合金のアルミニウムの含有量が上記範囲内であれば、適切な接合温度で接合でき、また、接合層の凝固収縮による引け巣の発生を抑えることができる。
【0014】
また、本発明は、前記浸透層の金属シリコンは、前記シリコン合金のアルミニウム含有量以下のアルミニウムを含有することを特徴とする。
【0015】
浸透層の金属シリコンについて、接合層のシリコン合金のアルミニウム含有量以下のアルミニウムを含有する、としたのは、接合材のアルミニウムは浸透層の金属シリコンに拡散していくが、浸透層全部に拡散したとしても接合層のアルミニウム含有量と同等であり、浸透層の接合面近傍の一部に浸透した場合は、接合層のアルミニウム含有量よりも浸透層の金属シリコンのアルミニウム含有量が少ないからである。前述のように、このような構成とすることで、引け巣の発生が抑えられた接合体とすることができる。
【0016】
さらに、本発明は、前記浸透層の厚みが50μm以下であることを特徴とする。
【0017】
通常のSiCの表面には未反応のカーボンや多孔体を作製する際のバインダーが残留している。金属シリコンはカーボンと容易に反応しSiCを形成する。その際の反応エネルギーによって金属シリコンはSiC多孔体の内部に浸透する。SiCと金属シリコンの濡れ性を改良することによりある程度金属シリコンの浸透を抑えることが出来るが、金属シリコンの浸透距離を短く制御することは困難であった。そこで、本発明では、一度金属シリコンを多孔体に浸透させて浸透層を形成し、加工により金属シリコン浸透層の厚みを小さくすることにより、接合体における多孔体の浸透層の厚みを50μm以下にできることを見出したものである。浸透層の厚みが50μm以下であれば、多孔体の大きさや形状に関わらず多孔体の機能を発揮することが容易になり、種々の製品に適用することが可能となる。浸透層の厚みの下限は特に限定されないが、20μm以上であることが好ましい。接合材が少なくとも20μm程度多孔体の内部に浸透することでアンカー効果により強固に接合できる。
【0018】
また、SiC多孔体の気孔率は40%以上であることが好ましい。本発明のSiC多孔体は、触媒担体やフィルター等として用いた場合に十分な流量を確保できる気孔率を有しており、上述のように浸透層の厚みを小さくすることで、多孔体の機能を発揮できるような接合体を得ることができる。
【0019】
金属シリコンが浸透した浸透層のSiC充填率は、多孔体のSiC充填率(100−多孔体の気孔率(%))よりも大きく、具体的な充填率としては50%以上であることが好ましく、60%以上がより好ましい。浸透層のSiC充填率を高めることで、多孔体内部への過剰な金属シリコンの浸透を防ぐことができ、気孔率が大きく、気孔率が高い多孔体を用いた場合であっても、その機能を損なうことなく接合体を得ることができる。浸透層のSiC充填率の上限は特に限定されないが、現実的には70%まで高めることが可能である。
【0020】
また、本発明では、接合層の厚みが100μm以下の接合体を得ることができる。本発明の接合体では、多孔体内部への過剰な金属シリコンの浸透が抑制されているので、接合層の厚みが小さくても、気密性良く接合することが可能である。したがって、多孔体として機能しない浸透層および接合層の部分が少ない接合体を得ることができる。
【0021】
本発明の接合体は、SiC多孔体の少なくとも一部に金属シリコンを浸透させて、浸透層を形成する工程と、該浸透層を50μm以下の厚みに加工して接合面を形成する工程と、金属シリコンにアルミニウムを5〜30wt%添加した接合材を使用し、金属シリコンの融点以下であって接合材が溶融する温度に加熱することにより、接合材に含まれるアルミニウムを前記浸透層の金属シリコンに拡散させる工程と、を含むことを特徴とする接合体の製造方法、により得られる。
【0022】
上述のように、SiC多孔体について金属シリコンを用いて接合する場合は、金属シリコンが多孔体内部に浸透するため、多孔体としての機能を保持したまま接合体とすることは困難であった。しかしながら、金属シリコンの浸透層を形成し、その浸透層を50μm以下に加工して接合面を形成する方法を採用することにより、浸透距離を制御することができることがわかった。
【0023】
接合材のアルミニウムの添加量は5〜30wt%の範囲が好ましい。添加量が5wt%より少ない場合は、接合材の融点を十分に下げることが出来ず、SiC多孔体の浸透層の金属シリコンの揮発が起こる可能性があり、それによってSiC多孔体の連通部に金属シリコンが侵入してしまう。また、添加量が30wt%より多い場合は、上記機構によるアルミニウムの拡散が起こってもアルミニウムの濃度が十分低下せず、凝固収縮の影響が強く発生し、接合部に発生した引け巣により、気密性や強度に問題が生じる。
【0024】
また、本発明は、SiC多孔体の少なくとも一部にSiC粉末のスラリーを含侵させて含侵部を形成する工程と、該含侵部に金属シリコンを浸透させて、浸透層を形成する工程と、を含む接合体の製造方法を提供する。
【0025】
金属シリコンを浸透させる際、多孔体の接合面に微粉のSiC粉末を含侵させて含侵部を形成し、SiCの充填率を高くする。したがって、当然のことながら、含侵部のSiC充填率は、多孔体のSiC充填率よりも大きくなる。これにより接合材である金属シリコンが過剰に多孔体内部に浸透することを防止する。
含侵部のSiC充填率は、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましい。50%に満たない充填率では金属シリコンの浸透を十分に防ぐことが出来ず、多孔体全体に金属シリコンが浸透してしまうおそれがあるからである。
【0026】
このようにSiC多孔体の接合面におけるSiCの充填率を高めた含侵部を形成し、その箇所に金属シリコンを一度浸透させることにより、金属シリコンの過剰な浸透を防ぐことが出来る。
【0027】
さらに、本発明では、浸透層を50μm以下の厚みに加工して接合面を形成するので、多孔体として機能しない浸透層の部分が少ない接合体を得ることができる。
【発明の効果】
【0028】
上述のように、SiC多孔体にSiCの充填率が高い部分を設け、その部分に金属シリコンを浸透させて、浸透層を形成し、その後浸透層を加工して、その厚みを制御し接合することにより、気孔径が大きく、気孔率が高い多孔体を用いた場合であっても、多孔体の機能を十分に確保しつつ接合された接合体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明のSiC多孔体としては、気孔率40%以上のものが好適に用いられる。気孔率が40%以上であれば、触媒担体やフィルター等の多孔体として機能させることができる。気孔率の上限は特に限定されないが、70%以下とすることが望ましい。気孔率が70%よりも大きな多孔体では多孔体自体の強度が著しく低下するため好ましくない。また、SiC多孔質体の気孔径は、10〜100μmが好ましい。このような範囲であれば、触媒担体やフィルター等の多孔体として好適に機能させることができる。
【0030】
SiC多孔体は、公知の製法により作製したものを用いることができる。例えば、SiC粉末に造孔材を加えて成形したものを焼結する方法や、ポリウレタン等の樹脂製の多孔質体に金属シリコンを浸透させて作製する方法により得ることができる。
【0031】
SiC多孔体に含侵させる微粉のSiC粉末は、平均粒径5μm以下のものを用いることが好ましい。このような範囲の粒径のものを用いれば、上述の気孔径のSiC多孔体に適切に含侵させることができる。
【0032】
SiC粉末のスラリーを含侵させる方法としては、含侵部を形成しようとする面に刷毛等で塗布しても良いし、所定深さだけスラリーに浸漬しても良い。含侵部の厚みについては、スラリーの粘性や塗布回数、浸漬深さ等により調整することができる。
【0033】
接合材である金属シリコンとアルミニウムの形態としては、粉末、板、箔等を用いることができる。金属シリコン粉末およびアルミニウム粉末に樹脂バインダーを加えて、シート状に成形したものを用いても良い。
【0034】
接合面の加工は、平面研削やマシニングセンタ等、作製しようとする接合体の形状に応じて種々の方法を採用することができる。
【0035】
金属シリコンの浸透は、真空または不活性ガス下、1410〜1500℃で行うことが好ましい。金属シリコンの融点である1410℃以下では金属シリコンが熔融しないため浸透できない。また、1500℃以上では金属シリコンの揮発が著しいため好ましくない。
【0036】
接合時の加熱は、真空または不活性ガス下、1270〜1390℃で行うことが好ましい。これは、本発明の所定範囲のアルミニウムが添加された接合材を用いて接合する際の好適な温度範囲であり、この温度範囲であれば、多孔体への金属シリコンの過剰な侵入が起きることなく、接合することが可能となる。
【0037】
以下、実施例と比較例を示して、本発明を説明する。
[実施例1〜10、比較例1〜4]
SiCの多孔体として気孔率65%で平均気孔径30μmのものを使用した。これらの形状はΦ200mm×t15mmの円板形状である。またこれらと同形状のSiC緻密体(相対密度98%)と多孔体との接合も行った。なお、気孔率はアルキメデス法により、平均気孔径は、水銀圧入法により求めた。
【0038】
SiC多孔体へのSiC粉末の含侵は、市販のSiC粉末にイソプロピルアルコールを添加したスラリーを作製し、これをSiC多孔体の接合面に塗布することにより行った。使用したSiC粉末の平均粒径は3.4μmである。SiC粉末を塗布した後、100℃で5時間乾燥させた。なお、平均粒径(d50)は、レーザ回折/散乱式粒度分布計(堀場製作所(登録商標)製LA−920)を用いた測定値である。
【0039】
SiC粉末含侵部への金属シリコン(純度99.99%)の浸透は、真空カーボン炉を使用し、Ar中で1450℃-1.5hr(昇温速度100℃/hr)の条件で行った。
【0040】
別途SiC粉末を多孔体内部まで含侵させた50×50×t3の多孔体に金属シリコンを完全に浸透させ、その密度からSiCの充填率を求めたところ、すべて多孔体の充填率が60%以上であったことから、接合体における浸透層のSiC充填率も60%以上ある根拠とした。
【0041】
接合面の加工は、多孔体の金属シリコンの浸透層を#600番の砥石を用いて研削し、浸透層の平均厚さを20〜40μmとした。
【0042】
接合は、金属シリコン粉末(純度99.99%)とアルミニウム粉末(純度99.9%)を表1の添加量で乾式混合し、これを有機バインダーで固めた厚さ300μmのシートを接合材とし、Ar中で表1の条件で接合を行った。接合温度についてはアルミニウムの添加量により融点が変化するため、これを考慮した。ただし、金属シリコンの融点は1414℃であり、接合温度はこれより低い温度で行った。また、接合が良好に行なわれるように荷重をかけた。具体的には、SiCの焼結体を2000gのせた。
【0043】
<評価方法>
接合後の評価は浸透層の厚さをマイクロスコープで観察し、その平均値で評価を行った。なお、浸透層の厚さについては、多孔体同士の場合は、両多孔体の浸透層厚さの平均を用いた。また、引け巣状態の評価は、各接合体について、四半円状に四等分した接合体の切断面を観察し、切断面に現れた接合層の長さ(100mm×4箇所)に対して隙間の長さが10%以下ならば○、20%以下ならば△、20%より大きいものについては×とした。この評価値については事前に行った気体のリークテストにより、接合層に発生した隙間の長さが20%以下であれば接合部からのリークが問題のない程度であることが確認されたことから判定した。また、接合層のアルミニウムの含有量はX線マイクロアナライザー(EPMA)による元素マッピングから検量線を用いて測定した。
【0044】
【表1】

【0045】
実施例1〜10の浸透層の厚さは、すべて50μm以下であった、また、また、引け巣状態についてはアルミニウム添加量が20wt%以下についての評価はすべて○であった。25〜30wt%になると引け巣はやや増加したが、△の基準値である20%以下であった。なお、実施例1〜10の接合層の厚さについて観察したところいずれの接合体も100μm以下であった。
【0046】
アルミニウム含有量の少ない比較例1、2については浸透層の厚さが100μm以上となっており、実施例と比較して金属シリコンが多量に多孔体に侵入していた。引け巣状態の観察により隙間を調べたところ、アルミニウムの添加量が少ないので引け巣の影響は小さいものの、本来接合層にあるべき金属シリコンが多量に多孔体に侵入したため、隙間が多く発生していた。また、アルミニウム含有量の多い比較例3、4については浸透層の厚さは小さかったが、引け巣が20%以上発生し、気密性に問題が生じた。
【0047】
以上より、SiC多孔体に所定厚みの金属シリコンの浸透層を形成し、その後、所定のアルミニウムを含有するシリコン合金からなる接合層を形成して接合することで、気孔径が大きく、気孔率が高い多孔体を用いた場合であっても、多孔体の機能を十分に確保しつつ気密性に優れた接合体が得られることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiC多孔体と、該SiC多孔体に金属シリコンが浸透した浸透層と、該浸透層に接したシリコン合金からなる接合層とを含む接合体であって、前記シリコン合金のアルミニウム含有量は1〜20wt%であることを特徴とする接合体。
【請求項2】
前記浸透層の金属シリコンは、前記シリコン合金のアルミニウム含有量以下のアルミニウムを含有することを特徴とする請求項1記載の接合体。
【請求項3】
前記浸透層の厚みが50μm以下である請求項1、2記載の接合体。
【請求項4】
SiC多孔体の少なくとも一部に金属シリコンを浸透させて、浸透層を形成する工程と、
該浸透層を50μm以下の厚みに加工して接合面を形成する工程と、
金属シリコンにアルミニウムを5〜30wt%添加した接合材を使用し、金属シリコンの融点以下であって接合材が溶融する温度に加熱することにより、接合材に含まれるアルミニウムを前記浸透層の金属シリコンに拡散させる工程と、
を含むことを特徴とする接合体の製造方法。
【請求項5】
SiC多孔体の少なくとも一部にSiC粉末のスラリーを含侵させて含侵部を形成する工程と、
該含侵部に金属シリコンを浸透させて、浸透層を形成する工程と、
を含む請求項4記載の接合体の製造方法。

【公開番号】特開2009−57215(P2009−57215A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−223009(P2007−223009)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】