接合型太陽電池
【課題】太陽光の吸収層を傾斜組成構造とすることにより光電変換効率を大幅に改善できる接合型太陽電池を提供すること。
【解決手段】GaAs基板22上に形成されたバッファ層23上に、InAs0.4P0.6からInPに徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造を有するInAszP1-zセル層24が積層され、その上にトンネル接合層を介してInPからIn0.52Ga0.48Pに徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造を有するInyGa1-yPセル層27が積層され、その上にトンネル接合層を介してIn0.8Al0.2PからIn0.56Al0.44Pに徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造を有するInxAl1-xPセル層30が積層され、この化合物半導体混晶が、光の入射方向からバンドギャップが徐々に小さくなるような傾斜組成構造を有している。
【解決手段】GaAs基板22上に形成されたバッファ層23上に、InAs0.4P0.6からInPに徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造を有するInAszP1-zセル層24が積層され、その上にトンネル接合層を介してInPからIn0.52Ga0.48Pに徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造を有するInyGa1-yPセル層27が積層され、その上にトンネル接合層を介してIn0.8Al0.2PからIn0.56Al0.44Pに徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造を有するInxAl1-xPセル層30が積層され、この化合物半導体混晶が、光の入射方向からバンドギャップが徐々に小さくなるような傾斜組成構造を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合型太陽電池に関し、より詳細には、光電変換に寄与する吸収層が傾斜組成構造を有する接合型太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池(Solar cell)は、光起電力効果を利用し、光エネルギーを直接電力に変換する電力機器で、太陽電池の内部に入射した太陽光のエネルギーが、電子によって直接的に吸収され、予め設けられた電界に導かれ、電力として太陽電池の外部へ出力するものである。現在の一般的な太陽電池は、p型とn型の半導体を接合した構造、すなわち、pn接合型ダイオード(フォトダイオード)の構造を有している。
【0003】
このような構造を有する太陽電池は、クリーンエネルギー源として注目されているが、既存の商用電源と比べて発電コストが高いことが実用化の大きな障害となっている。太陽電池の発電コストを低くするためには、発電効率を高くすることが重要な要素であり、これを実現するため接合型太陽電池の開発が行われている。
【0004】
この接合型太陽電池は、吸収波長域の異なるセル層を複数接合させた構造をしている。具体的には、太陽光の入射側(上部)にバンドギャップの大きな半導体材料より成るセル層と、その下部にバンドギャップの小さな半導体材料より成るセル層を配置している。上部のセル層では、太陽光スペクトルの短波長域の光が吸収され、その光が光電変換され、下部のセル層では、上部のセル層で吸収されず透過した残りの長波長域の太陽光スペクトルを利用して光電変換するように構成され、太陽光のスペクトルを分割利用することにより、有効に太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換できる。
【0005】
例えば、特許文献1には、GaAsセル層とGaxIn1-xNyAs1-y(0<x<1,0<y<1))セル層の2接合型太陽電池やInGaPセル層とGaAsセル層とGaxIn1-xNyAs1-y(0<x<1,0<y<1))セル層を、第1及び第2のトンネル接合層を用いて接続した3接合型太陽電池が開示されている。また、特許文献2には、GaAsとInGaPの2接合型太陽電池が開示されている。また、非特許文献1には、InGaPセル層とInGaAsセル層とGeセル層を、第1及び第2のトンネル接合層を用いて接続した3接合型太陽電池が示されている。
【0006】
図1は、従来のこの種の接合型太陽電池を説明するための構成図で、InGaP/InGaAs/Ge構造を有する3接合型太陽電池である。裏面電極が形成されたGeセル層(下部セル層)11にバッファ層12が形成されている。このGeセル層11は、p型のGe基板にn型のドーパントを、イオン打ち込みを行なうか熱拡散するなどの方法によってpn接合を形成し、太陽電池として機能させることが一般的である。その上に第2のトンネルダイオード層13を介してGaInAsセル層(中間セル層)14が積層され、その上に第1のトンネルダイオード層15を介してGaInPセル層(上部セル層)16が積層されている。
【0007】
これらの積層膜の形成には、化学気相成長法(MOCVD法)や分子線エピタキシー法(MBE法)などが用いられるのが一般的であり、成長中にドーパントを切り替えるなどの方法によってpn接合を形成し、太陽電池の機能を持たせることが行われる。その上に反射防止膜と表面電極が形成されて3接合型太陽電池が構成されている。
【0008】
図2は、地上表面に照射されている標準的太陽光(エアマス1.5G)のスペクトルにおいて、図1に示した3接合型太陽電池の構造のそれぞれの太陽電池セル層が吸収する波長領域を示した図である。太陽光の波長成分のうち、波長の短い領域の成分で上部セル層(InGaP)16の半導体のバンドギャップよりも大きなエネルギーを持つ光は、上部セル層(InGaP)16において吸収され、矢印aで示されている。上部セル層(InGaP)16を透過した太陽光のうち、中間セル層(InGaAs)の半導体のバンドギャップよりも大きなエネルギーを持つ光は、矢印bで示すように中間セル層(InGaAs)14で吸収される。中間セル層(InGaAs)14を透過した太陽光のうち、下部セル層(Ge)の半導体のバンドギャップよりも大きなエネルギーを持つ光は、矢印cで示すように下部セル層(Ge)に吸収される。
【0009】
このように接合型太陽電池の各セル層で吸収される太陽光は、各セルを形成する半導体のバンドギャップに依存するが、そのときに吸収したフォトンが1対の電子−正孔対を発生させることを考慮すると、各セル層で発生する電流量は半導体のバンドギャップと相関していると捉えられる。
【0010】
一方、各セル層における太陽電池の起電力は、pn接合における拡散電位に依存するが、これも半導体のバンドギャップに強く依存する。すなわち、接合型太陽電池の各セルにおける発生電流量および起電力は、いずれも各セルのバンドギャップの大きさに依存した値になる。
【0011】
また、デバイスに使用される半導体の一部に傾斜組成構造を持たせて機能を高めるという試みがある。発光デバイスを構成する半導体層を傾斜組成構造にすることは、例えば、特許文献3に開示されている。この特許文献3に記載の発光デバイスは、活性領域の量子井戸にキャリアを供給するリザーバ層に傾斜組成構造を用い、活性層に効率的にキャリアを供給できるようにしたものである。この傾斜組成は、発光デバイスの1つ又は複数の層内の組成及び/又はドーパント濃度の変化を達成する任意の構造を意味している。
【0012】
このように、上述した特許文献3に記載の発光デバイスなどに傾斜組成構造が利用されているが、このように光源として利用するものは傾斜構造によるバンドの傾きを利用して発生したキャリアを効率的に活性層に集めることを目的としているのに対して、本発明は入射した種々の波長成分の光から取り出せるエネルギーを最大限利用しようとするものであり、素子構造も原理も異にするものであって、発光デバイスにおける傾斜組成構造を直ちに太陽電池のセル層の傾斜組成構造に適用されるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平11−214726号公報
【特許文献2】特開平11−121774号公報
【特許文献3】特開2005−012216号公報
【特許文献4】特開2004−111687号公報
【非特許文献1】“InGaP/GaAs−based Multijunction Solar Cells”Progress in Photovoltaics:Research and Applications vol.13(2005)495
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述した特許文献1に示すような接合型太陽電池においても、高い光電変換効率を得るためには、光をいかに損失を少なくして下部セル層に到達させるかが重要である。接合型太陽電池における損失のうち、素子表面などでの光学的反射や種々の抵抗による損失を除けば、1)表面や界面における非発光再結合による損失、2)各太陽電池セル間の電流不整合による損失、3)吸収層のバンドギャップと吸収するフォトンのエネルギー差による損失、が大きなものであり、これらの損失をなくして、接合型太陽電池で高効率を達成することが求められている。
【0015】
このうち、1)の非発光再結合については、半導体の表面準位や界面での欠陥準位などに依存し、ワイドギャップの半導体層を挿入するなどの方法によって改善が図られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0016】
また、2)の太陽電池セル間の電流不整合の問題は、接合型太陽電池が異なるセルの直列接続によって構成されていることに由来する。
【0017】
図3は、エアマス1.5Gの太陽光のスペクトルをエネルギーで表し、各エネルギーに対する単位面積当たりのフォトンの照射個数を高エネルギー側から積算し、エネルギーに対してプロットしたグラフを示す図である。図3において、図中の矢印で示した高さは、各々のセル層が太陽光のフォトンを吸収したときに発生する電子−正孔対の数に対応し、発生電流量に相関している。したがって、各半導体が各々のバンドギャップよりも短い波長の光を全て吸収して光電変換し、バンドギャップに相当する起電力を発生したとすると、図中で各半導体のバンドギャップに対応するグラフ上の点とゼロ点とを対角線とする領域が当該半導体で発電できる電力量を示す。
【0018】
すなわち、図1に示した接合型太陽電池の構造の上部セル層(InGaP)16で吸収される太陽光により発電できる電力量は領域Aで、中間セル層(InGaAs)14で吸収される太陽光により発電できる電力量は領域Bで、下部セル層(Ge)11で吸収される太陽光により発電できる電力量は領域Cで表される。
【0019】
ただし、セル間が直列接続されているため、各領域のy軸の高さに対応した発生電流量のうち、最も小さいものがボトルネックとなって全体の発生電流量を制限し、余剰な電子−正孔対は再結合して損失となる。これがセル間の電流不整合による損失であり、これを低減するため、各太陽電池セルが発生する電流量が相互に一致するように半導体のバンドギャップを適宜選択することが行われる(例えば、特許文献4参照)。
【0020】
また、3)については、各太陽電池セルに使われる半導体がそれぞれどの波長の光を吸収するかに依存する。
【0021】
図4は、従来の接合型太陽電池の発電効率を説明するための接合モデル図で、波長の異なる太陽光に対して上部セル層と下部セル層とで、図中符号Fで示すように、フォノン散乱などにより熱として失われる部分が存在する。
【0022】
図3に示した各セルでの発電能力のうち、図中記号A0,B0,C0は、光を吸収するがフォトンの放出などによりエネルギーとしてロスしている部分を示している。このように、従来の接合型太陽電池では、ロス部分A0,B0,C0が存在し、この損失を少なくすることが、より光電変換効率を向上させることになる。
【0023】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、太陽光の吸収層に傾斜組成構造を備えることにより光電変換効率を大幅に改善するようにした接合型太陽電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、バンドギャップの異なる複数の半導体pn接合を直列接続する接合型太陽電池において、少なくとも1つの構成要素である半導体層が化合物半導体混晶で形成されており、該化合物半導体混晶が、光の入射方向から前記バンドギャップが徐々に小さくなるような傾斜組成構造を有していることを特徴とする。
【0025】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、少なくとも1組の前記半導体pn接合のうち、n層内のドナーのドーピング濃度が、n層側からp層側に向かって徐々に低くなっていることを特徴とする。
【0026】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、少なくとも1組の前記半導体pn接合のうち、p層内のアクセプタのドーピング濃度が、n層側からp層側に向かって徐々に高くなっていることを特徴とする。
【0027】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1,2又は3に記載の発明において、少なくとも1組の前記半導体pn接合が、短絡状態において、p型半導体からn型半導体に向かって伝導体の下端が単調に下がり、かつp型半導体からn型半導体に向かって価電子体の上端が単調に下がっているようなバンド構造を有することを特徴とする。
【0028】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記化合物半導体混晶が、化合物半導体又は単結晶半導体からなる下部セル層と、化合物半導体からなる少なくとも1つ以上の中間セル層と、化合物半導体からなる上部セル層とを順次積層したものであり、少なくとも1つ以上の化合物半導体層が傾斜組成構造を有することを特徴とする。(図5,8,9、実施例1乃至3に対応)
【0029】
また、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記下部セル層が、光の入射する方向に沿ってInPからInAsZP1-Z(0<z<1)に徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造であり、前記中間セル層が、光の入射する方向に沿ってInyGa1-yP(0.67<y<1)からInPに徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造であり、前記上部セル層が、光の入射する方向に沿ってInwAl1-wPからInxAl1-xP(0.56<x、w≦1 ただしx>w)に徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造であることを特徴とする。(図5、実施例1に対応)
【0030】
また、請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記中間セル層のうちの1つが、光の入射する方向に沿ってGaAsからInzGa1-zAs(0<z<1)に徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造と、光の入射する方向に沿ってGaAsyP1-y(0.55≦y<1)からGaAsに徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造との接合を含み、前記上部セル層が、光の入射する方向に沿ってInwAl1-wPからInxAl1-xP(0.56<x、w≦1 ただしx>w)に徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造であることを特徴とする。(図8、実施例2に対応)
【0031】
また、請求項8に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記下部セル層が、Geによるpn接合によって形成された構造であり、前記中間セル層が、光の入射する方向に沿ってInzGa1-zAsからInyGa1-yAs(0≦y、z<1 ただしz<y)に徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造であり、前記上部セル層が、光の入射する方向に沿ってInxGa1-xPからInwGa1-wP(0.33<x、w≦1 ただしx<w)に徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造であることを特徴とする。(図9、実施例3に対応)
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、バンドギャップの異なる複数の半導体pn接合を直列接続する接合型太陽電池において、少なくとも1つの構成要素である半導体層が化合物半導体混晶で形成されており、この化合物半導体混晶が、光の入射方向からバンドギャップが徐々に小さくなるような傾斜組成構造を有しているので、光電変換効率を大幅に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】従来の接合型太陽電池を説明するための構成図である。
【図2】エアマス1.5Gの太陽光スペクトルにおいて、図1に示した3接合型太陽電池の構造のそれぞれの太陽電池セル層が吸収する波長領域を示した図である。
【図3】エアマス1.5Gの太陽光のスペクトルをエネルギーで表し、各エネルギーに対する単位面積当たりのフォトンの照射個数を高エネルギー側から積算し、エネルギーに対してプロットしたグラフに対して、従来の接合型太陽電池構造における吸収エネルギーとフォトン数の関係を示す図である。
【図4】従来の接合型太陽電池の発電効率を説明するための接合モデル図である。
【図5】本発明の接合型太陽電池の実施例1を説明するための構成図である。
【図6】エアマス1.5Gの太陽光のスペクトルをエネルギーで表し、各エネルギーに対する単位面積当たりのフォトンの照射個数を高エネルギー側から積算し、エネルギーに対してプロットしたグラフに対して、図5に示した接合型太陽電池の構造における吸収エネルギーとフォトン数の関係を示す図である。
【図7】図5に示した接合型太陽電池の構造において、各太陽電池セルを光の入射方向にn型半導体がくるように配置したときのバンド構造の概念図である。
【図8】本発明の接合型太陽電池の実施例2を説明するための構成図である。
【図9】エアマス1.5Gの太陽光のスペクトルをエネルギーで表し、各エネルギーに対する単位面積当たりのフォトンの照射個数を高エネルギー側から積算し、エネルギーに対してプロットしたグラフに対して、図8に示した接合型太陽電池の構造における吸収エネルギーとフォトン数の関係を示す図である。
【図10】本発明の接合型太陽電池の実施例3を説明するための構成図である。
【図11】エアマス1.5Gの太陽光のスペクトルをエネルギーで表し、各エネルギーに対する単位面積当たりのフォトンの照射個数を高エネルギー側から積算し、エネルギーに対してプロットしたグラフに対して、図10に示した接合型太陽電池の構造における吸収エネルギーとフォトン数の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明の各実施例について説明する。
【実施例1】
【0035】
図5は、本発明の接合型太陽電池の実施例1を説明するための構成図で、上層からInxAl1-xP/InyGa1-yP/InAszP1-z構造を有しており、バンドギャップの異なる複数の半導体pn接合を直列接続する3接合型太陽電池である。
【0036】
この接合型太陽電池は、裏面電極21が形成されたGaAs基板22上にバッファ層23を形成した後、InAs0.4P0.6からInPに徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造を有するInAszP1-zセル層(下部セル層)24が積層されている。
【0037】
また、その上に第2のトンネル接合層25,26を介してInPからIn0.52Ga0.48Pに徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造を有するInyGa1-yPセル層(中間セル層)27が積層されている。
【0038】
第2のトンネル接合層25,26は、必ずしも不可欠のものではないが、セル間を低抵抗で接合し、接合付近で発生したキャリアの逆方向へのオーバーフローを低減する意味などから設けた方が好ましい。この場合、トンネル接合層25は、接触する下部セル層の組成であるn型InPに対して価電子帯のオフセットが十分に大きく格子定数も近いものが望ましく、高濃度にn型ドーピングしたInAlAsなどが用いられる。同様にトンネル接合層26は、p型InPに対して伝導帯のオフセットが十分に大きいことが望まれることから、高濃度にp型ドーピングしたInAlAsなどが用いられる。
【0039】
さらに、その上に第1のトンネル接合層28,29を介してIn0.8Al0.2PからIn0.56Al0.44Pに徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造を有するInxAl1-xP(上部セル層)30が積層され、最後に反射防止層31と表面電極32が形成されて表面電極32側から光が入射するように設計された3接合型太陽電池が構成されている。
【0040】
トンネル接合層28は、上述した理由と同様の理由から高濃度にn型ドーピングしたInGaPなどが用いられ、トンネル接合層29は、高濃度にp型ドーピングしたAlGaAsなどが用いられる。
【0041】
つまり、本発明においては、少なくとも1つの構成要素である半導体層が化合物半導体混晶で形成されており、この化合物半導体混晶が、光の入射方向から前記バンドギャップが徐々に小さくなるような傾斜組成構造を有している。
【0042】
図6は、図5に示した接合型太陽電池の構造における吸収エネルギーとフォトン数の関係を示す図である。上部セル層(InxAl1-xP)30で吸収される太陽光による電力量は領域Aで、中間セル層(InyGa1-yP)27で吸収される太陽光による電力量は領域Bで、下部セル層(InAszP1-z)24で吸収される太陽光による電力量は領域Cで表される。
【0043】
これらの各セル層24,27,30は、傾斜組成構造を有しているため、pn接合における拡散電位が傾斜組成構造を持たないときに比べて広げることができる。これにより各セルの起電力を大きく取ることができる。これは図3において記号A0,B0,C0で示したような、吸収した光のエネルギーをフォノン散乱などにより熱としてロスしている部分を少なくし、図6で示すように太陽光のスペクトルを効率良く光電変換することに対応している。このように、従来の接合型太陽電池で生じていた吸収層のバンドギャップと吸収するフォトンのエネルギー差による損失が少なくなっているので、光電変換効率を大幅に改善することができる。
【0044】
このような傾斜組成構造を有する接合型太陽電池に太陽光を照射させて発電させる場合、発生した電子−正孔対について、電子は負極側に、正孔は正極側に流れやすいようなバンド構造を持つことも重要である。これには太陽電池を構成しているpn接合において、素子を短絡した熱平衡状態で、p型半導体側からn型半導体側に向かって伝導帯の下端が単調に下がる方向であり、かつp型半導体からn型半導体に向かって価電子帯の上端が単調に下がる方向であることが望ましい。
【0045】
このようなバンドの傾斜を持たせるためには、半導体の組成の選択のみならず、ドーピング濃度を制御することが重要である。具体的には、少なくとも1組の太陽電池セルを構成する半導体pn接合のうち、n層内のドナーのドーピング濃度が、n型半導体側から徐々に低くなっていること、及び/又は少なくとも1組の太陽電池を構成する半導体pn接合のうち、p層内のアクセプタのドーピング濃度が、n型半導体側から徐々に高くなっている構造を持つことが望ましい。
【0046】
図7は、図5に示した接合型太陽電池の構造において、各太陽電池セルを光の入射方向にn型半導体がくるように配置したときのバンド構造の概念図である。各セルにおいては、成長中の組成制御によって光の入射方向から、すなわち、図7の左側から右側に向かって徐々にバンドギャップが小さくなるような構造をとっている。
【0047】
また、上述したようなバンドギャップの傾斜構造においても、電子や正孔が、それぞれ負極側や正極側に流れやすいような構造をとるために、n層内のドナー濃度がn層側からp層側に向かって徐々に低くなるように、p層内のアクセプタ濃度がn層側からp層側に向かって徐々に高くなるような構造をとっている。
【0048】
これにより、各々のセル内でp型半導体からn型半導体に向かって伝導帯の下端が単調に下がり、かつp型半導体からn型半導体に向かって価電子帯の上端が単調に下がる構造が実現されている。このような構造をとることによって、更に高効率の接合型太陽電池を得ることができる。
【実施例2】
【0049】
図8は、本発明の接合型太陽電池の実施例2を説明するための構成図で、上層からInxAl1-xP/GaAsyP1-y/InzGa1-zAs/Ge構造を有しており、バンドギャップの異なる複数の半導体pn接合を直列接続する4接合型太陽電池である。
【0050】
この接合型太陽電池は、裏面電極41が形成されたp−Ge基板42に不純物拡散などの方法によってpn接合を形成したn−Ge層(下部セル層)43を介してバッファ層44及び第3のトンネル接合層45,46を形成した後、In0.26Ga0.74AsからGaAsに徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造を有するInzGa1-zAsセル層(第2の中間セル層)47が積層されている。
【0051】
また、その上に第2のトンネル接合層48,49を介してGaAsからGaAs0.59P0.41に徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造を有するGaAsyP1-yセル層(第1の中間セル層)50が積層されている。
【0052】
さらに、その上に第1のトンネル接合層51,52を介してIn0.78Al0.22PからIn0.56Al0.44Pに徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造を有するInxAl1-xP(上部セル層)53が積層され、最後に反射防止層54と表面電極55が形成されて表面電極55側から光が入射するように設計された4接合型太陽電池が構成されている。
【0053】
図9は、図8に示した接合型太陽電池の構造における吸収エネルギーとフォトン数の関係を示す図である。上部セル層(InxAl1-xP)53で吸収される太陽光による電力量は領域Aで、第1の中間セル層(GaAsyP1-y)50で吸収される太陽光による電力量は領域Bで、第2の中間セル層(InzGa1-zAs)47で吸収される太陽光による電力量は領域Cで、下部セル層(Ge)43で吸収される太陽光による電力量は領域Dで表される。
【0054】
この場合も実施例1と同様に、従来の接合型太陽電池で生じていた吸収層のバンドギャップと吸収するフォトンのエネルギー差による損失が少なくなっているので、光電変換効率を大幅に改善することができる。
【0055】
また、各層のドーピング濃度を制御するなどの方法によって、各々のセル内でp型半導体からn型半導体に向かって伝導帯の下端が単調に下がり、かつp型半導体からn型半導体に向かって価電子帯の上端が単調に下がる構造とることが好ましいのは実施例1と同様であり、このような構造をとることによって、更に高効率の接合型太陽電池を得ることができる。
【実施例3】
【0056】
図10は、本発明の接合型太陽電池の実施例3を説明するための構成図で、上層からInxGa1-xP/InyGa1-yAs/Ge構造を有しており、バンドギャップの異なる複数の半導体pn接合を直列接続する3接合型太陽電池である。
【0057】
この接合型太陽電池は、裏面電極61が形成されたp−Ge基板62に不純物拡散などの方法によってpn接合を形成したn−Ge層(下部セル層)63を介してバッファ層64及び第2のトンネル接合層65,66を形成した後、In0.11Ga0.89AsからGaAsに徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造を有するInxGa1-xAsセル層(中間セル層)67が積層されている。
【0058】
また、その上に第1のトンネル接合層68,69を介してIn0.55Ga0.45PからIn0.33Ga0.67Pに徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造を有するInxGa1-xP(上部セル層)70が積層され、最後に反射防止層71と表面電極72が形成されて表面電極72側から光が入射するように設計された3接合型太陽電池が構成されている。
【0059】
図11は、図10に示した接合型太陽電池の構造における吸収エネルギーとフォトン数の関係を示す図である。上部セル層(InxGa1-xP)70で吸収される太陽光による電力量は領域Aで、中間セル層(InzGa1-zAs)67で吸収される太陽光による電力量は領域Bで、下部セル層(Ge)63で吸収される太陽光による電力量は領域Cで表される。
【0060】
この場合も実施例1と同様に、従来の接合型太陽電池で生じていた吸収層のバンドギャップと吸収するフォトンのエネルギー差による損失が少なくなっているので、光電変換効率を従来よりも改善することができる。
【0061】
また、各層のドーピング濃度を制御するなどの方法によって、各々のセル内でp型半導体からn型半導体に向かって伝導帯の下端が単調に下がり、かつp型半導体からn型半導体に向かって価電子帯の上端が単調に下がる構造とることが好ましいのは実施例1と同様であり、このような構造をとることによって、更に高効率の接合型太陽電池を得ることができる。
【符号の説明】
【0062】
11 Geセル層(下部セル層)
12 バッファ層
13 第2のトンネルダイオード
14 GaInAsセル層(中間セル層)
15 第1のトンネルダイオード
16 InGaPセル層(上部セル層)
21,41,61 裏面電極
22 基板
23,44,64 バッファ層
24 傾斜組成構造を有するInAszP1-zセル層(下部セル層)
25,26 第2のトンネル接合層
27 傾斜組成構造を有するInyGa1-yPセル層(中間セル層)
28,29 第1のトンネル接合層
30,53 傾斜組成構造を有するInxAl1-xP(上部セル層)
31,54,71 反射防止層
32,55,72 表面電極
42,62 p−Ge基板
43,63 n−Ge層(下部セル層)
45,46 第3のトンネル接合層
47 傾斜組成構造を有するInzGa1-zAsセル層(第2の中間セル層)
48,49 第2のトンネル接合層
50 傾斜組成構造を有するGaAsyP1-yセル層(第1の中間セル層)
51,52 第1のトンネル接合層
65,66 第2のトンネル接合層
67 傾斜組成構造を有するInxGa1-xAsセル層(中間セル層)
68,69 第1のトンネル接合層
70 傾斜組成構造を有するInxGa1-xP(上部セル層)
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合型太陽電池に関し、より詳細には、光電変換に寄与する吸収層が傾斜組成構造を有する接合型太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池(Solar cell)は、光起電力効果を利用し、光エネルギーを直接電力に変換する電力機器で、太陽電池の内部に入射した太陽光のエネルギーが、電子によって直接的に吸収され、予め設けられた電界に導かれ、電力として太陽電池の外部へ出力するものである。現在の一般的な太陽電池は、p型とn型の半導体を接合した構造、すなわち、pn接合型ダイオード(フォトダイオード)の構造を有している。
【0003】
このような構造を有する太陽電池は、クリーンエネルギー源として注目されているが、既存の商用電源と比べて発電コストが高いことが実用化の大きな障害となっている。太陽電池の発電コストを低くするためには、発電効率を高くすることが重要な要素であり、これを実現するため接合型太陽電池の開発が行われている。
【0004】
この接合型太陽電池は、吸収波長域の異なるセル層を複数接合させた構造をしている。具体的には、太陽光の入射側(上部)にバンドギャップの大きな半導体材料より成るセル層と、その下部にバンドギャップの小さな半導体材料より成るセル層を配置している。上部のセル層では、太陽光スペクトルの短波長域の光が吸収され、その光が光電変換され、下部のセル層では、上部のセル層で吸収されず透過した残りの長波長域の太陽光スペクトルを利用して光電変換するように構成され、太陽光のスペクトルを分割利用することにより、有効に太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換できる。
【0005】
例えば、特許文献1には、GaAsセル層とGaxIn1-xNyAs1-y(0<x<1,0<y<1))セル層の2接合型太陽電池やInGaPセル層とGaAsセル層とGaxIn1-xNyAs1-y(0<x<1,0<y<1))セル層を、第1及び第2のトンネル接合層を用いて接続した3接合型太陽電池が開示されている。また、特許文献2には、GaAsとInGaPの2接合型太陽電池が開示されている。また、非特許文献1には、InGaPセル層とInGaAsセル層とGeセル層を、第1及び第2のトンネル接合層を用いて接続した3接合型太陽電池が示されている。
【0006】
図1は、従来のこの種の接合型太陽電池を説明するための構成図で、InGaP/InGaAs/Ge構造を有する3接合型太陽電池である。裏面電極が形成されたGeセル層(下部セル層)11にバッファ層12が形成されている。このGeセル層11は、p型のGe基板にn型のドーパントを、イオン打ち込みを行なうか熱拡散するなどの方法によってpn接合を形成し、太陽電池として機能させることが一般的である。その上に第2のトンネルダイオード層13を介してGaInAsセル層(中間セル層)14が積層され、その上に第1のトンネルダイオード層15を介してGaInPセル層(上部セル層)16が積層されている。
【0007】
これらの積層膜の形成には、化学気相成長法(MOCVD法)や分子線エピタキシー法(MBE法)などが用いられるのが一般的であり、成長中にドーパントを切り替えるなどの方法によってpn接合を形成し、太陽電池の機能を持たせることが行われる。その上に反射防止膜と表面電極が形成されて3接合型太陽電池が構成されている。
【0008】
図2は、地上表面に照射されている標準的太陽光(エアマス1.5G)のスペクトルにおいて、図1に示した3接合型太陽電池の構造のそれぞれの太陽電池セル層が吸収する波長領域を示した図である。太陽光の波長成分のうち、波長の短い領域の成分で上部セル層(InGaP)16の半導体のバンドギャップよりも大きなエネルギーを持つ光は、上部セル層(InGaP)16において吸収され、矢印aで示されている。上部セル層(InGaP)16を透過した太陽光のうち、中間セル層(InGaAs)の半導体のバンドギャップよりも大きなエネルギーを持つ光は、矢印bで示すように中間セル層(InGaAs)14で吸収される。中間セル層(InGaAs)14を透過した太陽光のうち、下部セル層(Ge)の半導体のバンドギャップよりも大きなエネルギーを持つ光は、矢印cで示すように下部セル層(Ge)に吸収される。
【0009】
このように接合型太陽電池の各セル層で吸収される太陽光は、各セルを形成する半導体のバンドギャップに依存するが、そのときに吸収したフォトンが1対の電子−正孔対を発生させることを考慮すると、各セル層で発生する電流量は半導体のバンドギャップと相関していると捉えられる。
【0010】
一方、各セル層における太陽電池の起電力は、pn接合における拡散電位に依存するが、これも半導体のバンドギャップに強く依存する。すなわち、接合型太陽電池の各セルにおける発生電流量および起電力は、いずれも各セルのバンドギャップの大きさに依存した値になる。
【0011】
また、デバイスに使用される半導体の一部に傾斜組成構造を持たせて機能を高めるという試みがある。発光デバイスを構成する半導体層を傾斜組成構造にすることは、例えば、特許文献3に開示されている。この特許文献3に記載の発光デバイスは、活性領域の量子井戸にキャリアを供給するリザーバ層に傾斜組成構造を用い、活性層に効率的にキャリアを供給できるようにしたものである。この傾斜組成は、発光デバイスの1つ又は複数の層内の組成及び/又はドーパント濃度の変化を達成する任意の構造を意味している。
【0012】
このように、上述した特許文献3に記載の発光デバイスなどに傾斜組成構造が利用されているが、このように光源として利用するものは傾斜構造によるバンドの傾きを利用して発生したキャリアを効率的に活性層に集めることを目的としているのに対して、本発明は入射した種々の波長成分の光から取り出せるエネルギーを最大限利用しようとするものであり、素子構造も原理も異にするものであって、発光デバイスにおける傾斜組成構造を直ちに太陽電池のセル層の傾斜組成構造に適用されるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平11−214726号公報
【特許文献2】特開平11−121774号公報
【特許文献3】特開2005−012216号公報
【特許文献4】特開2004−111687号公報
【非特許文献1】“InGaP/GaAs−based Multijunction Solar Cells”Progress in Photovoltaics:Research and Applications vol.13(2005)495
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述した特許文献1に示すような接合型太陽電池においても、高い光電変換効率を得るためには、光をいかに損失を少なくして下部セル層に到達させるかが重要である。接合型太陽電池における損失のうち、素子表面などでの光学的反射や種々の抵抗による損失を除けば、1)表面や界面における非発光再結合による損失、2)各太陽電池セル間の電流不整合による損失、3)吸収層のバンドギャップと吸収するフォトンのエネルギー差による損失、が大きなものであり、これらの損失をなくして、接合型太陽電池で高効率を達成することが求められている。
【0015】
このうち、1)の非発光再結合については、半導体の表面準位や界面での欠陥準位などに依存し、ワイドギャップの半導体層を挿入するなどの方法によって改善が図られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0016】
また、2)の太陽電池セル間の電流不整合の問題は、接合型太陽電池が異なるセルの直列接続によって構成されていることに由来する。
【0017】
図3は、エアマス1.5Gの太陽光のスペクトルをエネルギーで表し、各エネルギーに対する単位面積当たりのフォトンの照射個数を高エネルギー側から積算し、エネルギーに対してプロットしたグラフを示す図である。図3において、図中の矢印で示した高さは、各々のセル層が太陽光のフォトンを吸収したときに発生する電子−正孔対の数に対応し、発生電流量に相関している。したがって、各半導体が各々のバンドギャップよりも短い波長の光を全て吸収して光電変換し、バンドギャップに相当する起電力を発生したとすると、図中で各半導体のバンドギャップに対応するグラフ上の点とゼロ点とを対角線とする領域が当該半導体で発電できる電力量を示す。
【0018】
すなわち、図1に示した接合型太陽電池の構造の上部セル層(InGaP)16で吸収される太陽光により発電できる電力量は領域Aで、中間セル層(InGaAs)14で吸収される太陽光により発電できる電力量は領域Bで、下部セル層(Ge)11で吸収される太陽光により発電できる電力量は領域Cで表される。
【0019】
ただし、セル間が直列接続されているため、各領域のy軸の高さに対応した発生電流量のうち、最も小さいものがボトルネックとなって全体の発生電流量を制限し、余剰な電子−正孔対は再結合して損失となる。これがセル間の電流不整合による損失であり、これを低減するため、各太陽電池セルが発生する電流量が相互に一致するように半導体のバンドギャップを適宜選択することが行われる(例えば、特許文献4参照)。
【0020】
また、3)については、各太陽電池セルに使われる半導体がそれぞれどの波長の光を吸収するかに依存する。
【0021】
図4は、従来の接合型太陽電池の発電効率を説明するための接合モデル図で、波長の異なる太陽光に対して上部セル層と下部セル層とで、図中符号Fで示すように、フォノン散乱などにより熱として失われる部分が存在する。
【0022】
図3に示した各セルでの発電能力のうち、図中記号A0,B0,C0は、光を吸収するがフォトンの放出などによりエネルギーとしてロスしている部分を示している。このように、従来の接合型太陽電池では、ロス部分A0,B0,C0が存在し、この損失を少なくすることが、より光電変換効率を向上させることになる。
【0023】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、太陽光の吸収層に傾斜組成構造を備えることにより光電変換効率を大幅に改善するようにした接合型太陽電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、バンドギャップの異なる複数の半導体pn接合を直列接続する接合型太陽電池において、少なくとも1つの構成要素である半導体層が化合物半導体混晶で形成されており、該化合物半導体混晶が、光の入射方向から前記バンドギャップが徐々に小さくなるような傾斜組成構造を有していることを特徴とする。
【0025】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、少なくとも1組の前記半導体pn接合のうち、n層内のドナーのドーピング濃度が、n層側からp層側に向かって徐々に低くなっていることを特徴とする。
【0026】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、少なくとも1組の前記半導体pn接合のうち、p層内のアクセプタのドーピング濃度が、n層側からp層側に向かって徐々に高くなっていることを特徴とする。
【0027】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1,2又は3に記載の発明において、少なくとも1組の前記半導体pn接合が、短絡状態において、p型半導体からn型半導体に向かって伝導体の下端が単調に下がり、かつp型半導体からn型半導体に向かって価電子体の上端が単調に下がっているようなバンド構造を有することを特徴とする。
【0028】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記化合物半導体混晶が、化合物半導体又は単結晶半導体からなる下部セル層と、化合物半導体からなる少なくとも1つ以上の中間セル層と、化合物半導体からなる上部セル層とを順次積層したものであり、少なくとも1つ以上の化合物半導体層が傾斜組成構造を有することを特徴とする。(図5,8,9、実施例1乃至3に対応)
【0029】
また、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記下部セル層が、光の入射する方向に沿ってInPからInAsZP1-Z(0<z<1)に徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造であり、前記中間セル層が、光の入射する方向に沿ってInyGa1-yP(0.67<y<1)からInPに徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造であり、前記上部セル層が、光の入射する方向に沿ってInwAl1-wPからInxAl1-xP(0.56<x、w≦1 ただしx>w)に徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造であることを特徴とする。(図5、実施例1に対応)
【0030】
また、請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記中間セル層のうちの1つが、光の入射する方向に沿ってGaAsからInzGa1-zAs(0<z<1)に徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造と、光の入射する方向に沿ってGaAsyP1-y(0.55≦y<1)からGaAsに徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造との接合を含み、前記上部セル層が、光の入射する方向に沿ってInwAl1-wPからInxAl1-xP(0.56<x、w≦1 ただしx>w)に徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造であることを特徴とする。(図8、実施例2に対応)
【0031】
また、請求項8に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記下部セル層が、Geによるpn接合によって形成された構造であり、前記中間セル層が、光の入射する方向に沿ってInzGa1-zAsからInyGa1-yAs(0≦y、z<1 ただしz<y)に徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造であり、前記上部セル層が、光の入射する方向に沿ってInxGa1-xPからInwGa1-wP(0.33<x、w≦1 ただしx<w)に徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造であることを特徴とする。(図9、実施例3に対応)
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、バンドギャップの異なる複数の半導体pn接合を直列接続する接合型太陽電池において、少なくとも1つの構成要素である半導体層が化合物半導体混晶で形成されており、この化合物半導体混晶が、光の入射方向からバンドギャップが徐々に小さくなるような傾斜組成構造を有しているので、光電変換効率を大幅に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】従来の接合型太陽電池を説明するための構成図である。
【図2】エアマス1.5Gの太陽光スペクトルにおいて、図1に示した3接合型太陽電池の構造のそれぞれの太陽電池セル層が吸収する波長領域を示した図である。
【図3】エアマス1.5Gの太陽光のスペクトルをエネルギーで表し、各エネルギーに対する単位面積当たりのフォトンの照射個数を高エネルギー側から積算し、エネルギーに対してプロットしたグラフに対して、従来の接合型太陽電池構造における吸収エネルギーとフォトン数の関係を示す図である。
【図4】従来の接合型太陽電池の発電効率を説明するための接合モデル図である。
【図5】本発明の接合型太陽電池の実施例1を説明するための構成図である。
【図6】エアマス1.5Gの太陽光のスペクトルをエネルギーで表し、各エネルギーに対する単位面積当たりのフォトンの照射個数を高エネルギー側から積算し、エネルギーに対してプロットしたグラフに対して、図5に示した接合型太陽電池の構造における吸収エネルギーとフォトン数の関係を示す図である。
【図7】図5に示した接合型太陽電池の構造において、各太陽電池セルを光の入射方向にn型半導体がくるように配置したときのバンド構造の概念図である。
【図8】本発明の接合型太陽電池の実施例2を説明するための構成図である。
【図9】エアマス1.5Gの太陽光のスペクトルをエネルギーで表し、各エネルギーに対する単位面積当たりのフォトンの照射個数を高エネルギー側から積算し、エネルギーに対してプロットしたグラフに対して、図8に示した接合型太陽電池の構造における吸収エネルギーとフォトン数の関係を示す図である。
【図10】本発明の接合型太陽電池の実施例3を説明するための構成図である。
【図11】エアマス1.5Gの太陽光のスペクトルをエネルギーで表し、各エネルギーに対する単位面積当たりのフォトンの照射個数を高エネルギー側から積算し、エネルギーに対してプロットしたグラフに対して、図10に示した接合型太陽電池の構造における吸収エネルギーとフォトン数の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明の各実施例について説明する。
【実施例1】
【0035】
図5は、本発明の接合型太陽電池の実施例1を説明するための構成図で、上層からInxAl1-xP/InyGa1-yP/InAszP1-z構造を有しており、バンドギャップの異なる複数の半導体pn接合を直列接続する3接合型太陽電池である。
【0036】
この接合型太陽電池は、裏面電極21が形成されたGaAs基板22上にバッファ層23を形成した後、InAs0.4P0.6からInPに徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造を有するInAszP1-zセル層(下部セル層)24が積層されている。
【0037】
また、その上に第2のトンネル接合層25,26を介してInPからIn0.52Ga0.48Pに徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造を有するInyGa1-yPセル層(中間セル層)27が積層されている。
【0038】
第2のトンネル接合層25,26は、必ずしも不可欠のものではないが、セル間を低抵抗で接合し、接合付近で発生したキャリアの逆方向へのオーバーフローを低減する意味などから設けた方が好ましい。この場合、トンネル接合層25は、接触する下部セル層の組成であるn型InPに対して価電子帯のオフセットが十分に大きく格子定数も近いものが望ましく、高濃度にn型ドーピングしたInAlAsなどが用いられる。同様にトンネル接合層26は、p型InPに対して伝導帯のオフセットが十分に大きいことが望まれることから、高濃度にp型ドーピングしたInAlAsなどが用いられる。
【0039】
さらに、その上に第1のトンネル接合層28,29を介してIn0.8Al0.2PからIn0.56Al0.44Pに徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造を有するInxAl1-xP(上部セル層)30が積層され、最後に反射防止層31と表面電極32が形成されて表面電極32側から光が入射するように設計された3接合型太陽電池が構成されている。
【0040】
トンネル接合層28は、上述した理由と同様の理由から高濃度にn型ドーピングしたInGaPなどが用いられ、トンネル接合層29は、高濃度にp型ドーピングしたAlGaAsなどが用いられる。
【0041】
つまり、本発明においては、少なくとも1つの構成要素である半導体層が化合物半導体混晶で形成されており、この化合物半導体混晶が、光の入射方向から前記バンドギャップが徐々に小さくなるような傾斜組成構造を有している。
【0042】
図6は、図5に示した接合型太陽電池の構造における吸収エネルギーとフォトン数の関係を示す図である。上部セル層(InxAl1-xP)30で吸収される太陽光による電力量は領域Aで、中間セル層(InyGa1-yP)27で吸収される太陽光による電力量は領域Bで、下部セル層(InAszP1-z)24で吸収される太陽光による電力量は領域Cで表される。
【0043】
これらの各セル層24,27,30は、傾斜組成構造を有しているため、pn接合における拡散電位が傾斜組成構造を持たないときに比べて広げることができる。これにより各セルの起電力を大きく取ることができる。これは図3において記号A0,B0,C0で示したような、吸収した光のエネルギーをフォノン散乱などにより熱としてロスしている部分を少なくし、図6で示すように太陽光のスペクトルを効率良く光電変換することに対応している。このように、従来の接合型太陽電池で生じていた吸収層のバンドギャップと吸収するフォトンのエネルギー差による損失が少なくなっているので、光電変換効率を大幅に改善することができる。
【0044】
このような傾斜組成構造を有する接合型太陽電池に太陽光を照射させて発電させる場合、発生した電子−正孔対について、電子は負極側に、正孔は正極側に流れやすいようなバンド構造を持つことも重要である。これには太陽電池を構成しているpn接合において、素子を短絡した熱平衡状態で、p型半導体側からn型半導体側に向かって伝導帯の下端が単調に下がる方向であり、かつp型半導体からn型半導体に向かって価電子帯の上端が単調に下がる方向であることが望ましい。
【0045】
このようなバンドの傾斜を持たせるためには、半導体の組成の選択のみならず、ドーピング濃度を制御することが重要である。具体的には、少なくとも1組の太陽電池セルを構成する半導体pn接合のうち、n層内のドナーのドーピング濃度が、n型半導体側から徐々に低くなっていること、及び/又は少なくとも1組の太陽電池を構成する半導体pn接合のうち、p層内のアクセプタのドーピング濃度が、n型半導体側から徐々に高くなっている構造を持つことが望ましい。
【0046】
図7は、図5に示した接合型太陽電池の構造において、各太陽電池セルを光の入射方向にn型半導体がくるように配置したときのバンド構造の概念図である。各セルにおいては、成長中の組成制御によって光の入射方向から、すなわち、図7の左側から右側に向かって徐々にバンドギャップが小さくなるような構造をとっている。
【0047】
また、上述したようなバンドギャップの傾斜構造においても、電子や正孔が、それぞれ負極側や正極側に流れやすいような構造をとるために、n層内のドナー濃度がn層側からp層側に向かって徐々に低くなるように、p層内のアクセプタ濃度がn層側からp層側に向かって徐々に高くなるような構造をとっている。
【0048】
これにより、各々のセル内でp型半導体からn型半導体に向かって伝導帯の下端が単調に下がり、かつp型半導体からn型半導体に向かって価電子帯の上端が単調に下がる構造が実現されている。このような構造をとることによって、更に高効率の接合型太陽電池を得ることができる。
【実施例2】
【0049】
図8は、本発明の接合型太陽電池の実施例2を説明するための構成図で、上層からInxAl1-xP/GaAsyP1-y/InzGa1-zAs/Ge構造を有しており、バンドギャップの異なる複数の半導体pn接合を直列接続する4接合型太陽電池である。
【0050】
この接合型太陽電池は、裏面電極41が形成されたp−Ge基板42に不純物拡散などの方法によってpn接合を形成したn−Ge層(下部セル層)43を介してバッファ層44及び第3のトンネル接合層45,46を形成した後、In0.26Ga0.74AsからGaAsに徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造を有するInzGa1-zAsセル層(第2の中間セル層)47が積層されている。
【0051】
また、その上に第2のトンネル接合層48,49を介してGaAsからGaAs0.59P0.41に徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造を有するGaAsyP1-yセル層(第1の中間セル層)50が積層されている。
【0052】
さらに、その上に第1のトンネル接合層51,52を介してIn0.78Al0.22PからIn0.56Al0.44Pに徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造を有するInxAl1-xP(上部セル層)53が積層され、最後に反射防止層54と表面電極55が形成されて表面電極55側から光が入射するように設計された4接合型太陽電池が構成されている。
【0053】
図9は、図8に示した接合型太陽電池の構造における吸収エネルギーとフォトン数の関係を示す図である。上部セル層(InxAl1-xP)53で吸収される太陽光による電力量は領域Aで、第1の中間セル層(GaAsyP1-y)50で吸収される太陽光による電力量は領域Bで、第2の中間セル層(InzGa1-zAs)47で吸収される太陽光による電力量は領域Cで、下部セル層(Ge)43で吸収される太陽光による電力量は領域Dで表される。
【0054】
この場合も実施例1と同様に、従来の接合型太陽電池で生じていた吸収層のバンドギャップと吸収するフォトンのエネルギー差による損失が少なくなっているので、光電変換効率を大幅に改善することができる。
【0055】
また、各層のドーピング濃度を制御するなどの方法によって、各々のセル内でp型半導体からn型半導体に向かって伝導帯の下端が単調に下がり、かつp型半導体からn型半導体に向かって価電子帯の上端が単調に下がる構造とることが好ましいのは実施例1と同様であり、このような構造をとることによって、更に高効率の接合型太陽電池を得ることができる。
【実施例3】
【0056】
図10は、本発明の接合型太陽電池の実施例3を説明するための構成図で、上層からInxGa1-xP/InyGa1-yAs/Ge構造を有しており、バンドギャップの異なる複数の半導体pn接合を直列接続する3接合型太陽電池である。
【0057】
この接合型太陽電池は、裏面電極61が形成されたp−Ge基板62に不純物拡散などの方法によってpn接合を形成したn−Ge層(下部セル層)63を介してバッファ層64及び第2のトンネル接合層65,66を形成した後、In0.11Ga0.89AsからGaAsに徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造を有するInxGa1-xAsセル層(中間セル層)67が積層されている。
【0058】
また、その上に第1のトンネル接合層68,69を介してIn0.55Ga0.45PからIn0.33Ga0.67Pに徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造を有するInxGa1-xP(上部セル層)70が積層され、最後に反射防止層71と表面電極72が形成されて表面電極72側から光が入射するように設計された3接合型太陽電池が構成されている。
【0059】
図11は、図10に示した接合型太陽電池の構造における吸収エネルギーとフォトン数の関係を示す図である。上部セル層(InxGa1-xP)70で吸収される太陽光による電力量は領域Aで、中間セル層(InzGa1-zAs)67で吸収される太陽光による電力量は領域Bで、下部セル層(Ge)63で吸収される太陽光による電力量は領域Cで表される。
【0060】
この場合も実施例1と同様に、従来の接合型太陽電池で生じていた吸収層のバンドギャップと吸収するフォトンのエネルギー差による損失が少なくなっているので、光電変換効率を従来よりも改善することができる。
【0061】
また、各層のドーピング濃度を制御するなどの方法によって、各々のセル内でp型半導体からn型半導体に向かって伝導帯の下端が単調に下がり、かつp型半導体からn型半導体に向かって価電子帯の上端が単調に下がる構造とることが好ましいのは実施例1と同様であり、このような構造をとることによって、更に高効率の接合型太陽電池を得ることができる。
【符号の説明】
【0062】
11 Geセル層(下部セル層)
12 バッファ層
13 第2のトンネルダイオード
14 GaInAsセル層(中間セル層)
15 第1のトンネルダイオード
16 InGaPセル層(上部セル層)
21,41,61 裏面電極
22 基板
23,44,64 バッファ層
24 傾斜組成構造を有するInAszP1-zセル層(下部セル層)
25,26 第2のトンネル接合層
27 傾斜組成構造を有するInyGa1-yPセル層(中間セル層)
28,29 第1のトンネル接合層
30,53 傾斜組成構造を有するInxAl1-xP(上部セル層)
31,54,71 反射防止層
32,55,72 表面電極
42,62 p−Ge基板
43,63 n−Ge層(下部セル層)
45,46 第3のトンネル接合層
47 傾斜組成構造を有するInzGa1-zAsセル層(第2の中間セル層)
48,49 第2のトンネル接合層
50 傾斜組成構造を有するGaAsyP1-yセル層(第1の中間セル層)
51,52 第1のトンネル接合層
65,66 第2のトンネル接合層
67 傾斜組成構造を有するInxGa1-xAsセル層(中間セル層)
68,69 第1のトンネル接合層
70 傾斜組成構造を有するInxGa1-xP(上部セル層)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンドギャップの異なる複数の半導体pn接合を直列接続する接合型太陽電池において、
少なくとも1つの構成要素である半導体層が化合物半導体混晶で形成されており、該化合物半導体混晶が、光の入射方向から前記バンドギャップが徐々に小さくなるような傾斜組成構造を有していることを特徴とする接合型太陽電池。
【請求項2】
少なくとも1組の前記半導体pn接合のうち、n層内のドナーのドーピング濃度が、n層側からp層側に向かって徐々に低くなっていることを特徴とする請求項1に記載の接合型太陽電池。
【請求項3】
少なくとも1組の前記半導体pn接合のうち、p層内のアクセプタのドーピング濃度が、n層側からp層側に向かって徐々に高くなっていることを特徴とする請求項1に記載の接合型太陽電池。
【請求項4】
少なくとも1組の前記半導体pn接合が、短絡状態において、p型半導体からn型半導体に向かって伝導体の下端が単調に下がり、かつp型半導体からn型半導体に向かって価電子体の上端が単調に下がっているようなバンド構造を有することを特徴とする請求項1,2又は3に記載の接合型太陽電池。
【請求項5】
前記化合物半導体混晶が、化合物半導体又は単結晶半導体からなる下部セル層と、化合物半導体からなる少なくとも1つ以上の中間セル層と、化合物半導体からなる上部セル層とを順次積層したものであり、少なくとも1つ以上の化合物半導体層が傾斜組成構造を有することを特徴とする請求項1に記載の接合型太陽電池。
【請求項6】
前記下部セル層が、光の入射する方向に沿ってInPからInAsZP1-Z(0<z<1)に徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造であり、前記中間セル層が、光の入射する方向に沿ってInyGa1-yP(0.67<y<1)からInPに徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造であり、前記上部セル層が、光の入射する方向に沿ってInwAl1-wPからInxAl1-xP(0.56<x、w≦1 ただしx>w)に徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造であることを特徴とする請求項5に記載の接合型太陽電池。
【請求項7】
前記中間セル層のうちの1つが、光の入射する方向に沿ってGaAsからInzGa1-zAs(0<z<1)に徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造と、光の入射する方向に沿ってGaAsyP1-y(0.55≦y<1)からGaAsに徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造との接合を含み、前記上部セル層が、光の入射する方向に沿ってInwAl1-wPからInxAl1-xP(0.56<x、w≦1 ただしx>w)に徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造であることを特徴とする請求項5に記載の接合型太陽電池。
【請求項8】
前記下部セル層が、Geによるpn接合によって形成された構造であり、前記中間セル層が、光の入射する方向に沿ってInzGa1-zAsからInyGa1-yAs(0≦y、z<1 ただしz<y)に徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造であり、前記上部セル層が、光の入射する方向に沿ってInxGa1-xPからInwGa1-wP(0.33<x、w≦1 ただしx<w)に徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造であることを特徴とする請求項5に記載の接合型太陽電池。
【請求項1】
バンドギャップの異なる複数の半導体pn接合を直列接続する接合型太陽電池において、
少なくとも1つの構成要素である半導体層が化合物半導体混晶で形成されており、該化合物半導体混晶が、光の入射方向から前記バンドギャップが徐々に小さくなるような傾斜組成構造を有していることを特徴とする接合型太陽電池。
【請求項2】
少なくとも1組の前記半導体pn接合のうち、n層内のドナーのドーピング濃度が、n層側からp層側に向かって徐々に低くなっていることを特徴とする請求項1に記載の接合型太陽電池。
【請求項3】
少なくとも1組の前記半導体pn接合のうち、p層内のアクセプタのドーピング濃度が、n層側からp層側に向かって徐々に高くなっていることを特徴とする請求項1に記載の接合型太陽電池。
【請求項4】
少なくとも1組の前記半導体pn接合が、短絡状態において、p型半導体からn型半導体に向かって伝導体の下端が単調に下がり、かつp型半導体からn型半導体に向かって価電子体の上端が単調に下がっているようなバンド構造を有することを特徴とする請求項1,2又は3に記載の接合型太陽電池。
【請求項5】
前記化合物半導体混晶が、化合物半導体又は単結晶半導体からなる下部セル層と、化合物半導体からなる少なくとも1つ以上の中間セル層と、化合物半導体からなる上部セル層とを順次積層したものであり、少なくとも1つ以上の化合物半導体層が傾斜組成構造を有することを特徴とする請求項1に記載の接合型太陽電池。
【請求項6】
前記下部セル層が、光の入射する方向に沿ってInPからInAsZP1-Z(0<z<1)に徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造であり、前記中間セル層が、光の入射する方向に沿ってInyGa1-yP(0.67<y<1)からInPに徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造であり、前記上部セル層が、光の入射する方向に沿ってInwAl1-wPからInxAl1-xP(0.56<x、w≦1 ただしx>w)に徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造であることを特徴とする請求項5に記載の接合型太陽電池。
【請求項7】
前記中間セル層のうちの1つが、光の入射する方向に沿ってGaAsからInzGa1-zAs(0<z<1)に徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造と、光の入射する方向に沿ってGaAsyP1-y(0.55≦y<1)からGaAsに徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造との接合を含み、前記上部セル層が、光の入射する方向に沿ってInwAl1-wPからInxAl1-xP(0.56<x、w≦1 ただしx>w)に徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造であることを特徴とする請求項5に記載の接合型太陽電池。
【請求項8】
前記下部セル層が、Geによるpn接合によって形成された構造であり、前記中間セル層が、光の入射する方向に沿ってInzGa1-zAsからInyGa1-yAs(0≦y、z<1 ただしz<y)に徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造であり、前記上部セル層が、光の入射する方向に沿ってInxGa1-xPからInwGa1-wP(0.33<x、w≦1 ただしx<w)に徐々に組成を変化させながらpn接合を形成した傾斜組成構造であることを特徴とする請求項5に記載の接合型太陽電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−77295(P2011−77295A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227176(P2009−227176)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【Fターム(参考)】
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