説明

接合方法、接合装置、および被接合部材

【課題】接合面の全体を均一に接合でき、安定した接合強度を得ることを可能にする接合方法、接合装置、および被接合部材を提供する。
【解決手段】互いに接合される一対の被接合部材10,20の接合面10a,20aを対向させ、一対の被接合部材を相対的に摺動させつつ、一対の被接合部材の一方から他方へ電流を流して抵抗加熱する。さらに、一方の被接合部材に設けられた空間部11の内壁面13を補強部材100によって支持させながら接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗加熱および加振摩擦を用いた接合方法、接合装置、および当該接合方法に適用される被接合部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、導電性の金属材料同士を互いに接合する方法として、抵抗溶接が使用されている。抵抗溶接は、導電性金属材料同士を接触させた状態で電極により挟み込み、電極間に加圧力を付与した状態で電極から電流を与えることで、接合面の接触抵抗により生じる抵抗加熱により、導電性金属材料同士を溶融接合する方法である。例えば特許文献1には、接合する対の導電性金属材料を接触させた状態で加振し、表面の絶縁被覆を剥がした後に加振を停止させ、抵抗加熱により溶融接合する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11―138275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1に記載の方法では、導電材料に加圧力を作用させ、高面圧下で加振を行うため、導電材料の形状は、加圧部位から接合面への加圧力の伝達、および接合面を介した加振力の伝達を良好に行い得る形状に限定されてしまう。例えば、導電材料に空間部や片持ち部分のような形状が形成されているような場合、接合面の全体に均一に加圧力および加振力を伝達することが難しく、安定した接合強度を得ることができない。これにより、接合対象となる導電材料の形状が限定され、ひいては導電材料が適用される製品形状の選択の余地が狭められるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、導電性を備えた接合部材の接合技術に関し、接合面の全体を均一に接合でき、安定した接合強度を得ることを可能にする接合方法、接合装置、および被接合部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る接合方法は、導電性を備えた一対の被接合部材を接合するための接合方法である。当該接合方法は、互いに接合される前記被接合部材の接合面を対向させ、一対の前記被接合部材を相対的に摺動させつつ、一対の前記被接合部材の一方から他方へ電流を流して抵抗加熱することによって、前記接合面同士を接合する接合工程を有している。そして、前記接合工程において、一対の前記被接合部材のうちの少なくとも一方に設けられた空間部の内壁面を補強部材によって支持させながら接合している。
【0007】
また、本発明に係る接合方法は、導電性を備えた一対の被接合部材を接合するための接合方法である。当該接合方法は、互いに接合される前記被接合部材の接合面を対向させ、一対の前記被接合部材を相対的に摺動させつつ、一対の前記被接合部材の一方から他方へ電流を流して抵抗加熱することによって、前記接合面同士を接合する接合工程を有している。そして、前記接合工程において、一対の前記被接合部材のうちの少なくとも一方に設けられた片持ち部を補強部材によって支持させながら接合している。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被接合部材の一部を補強部材によって支持させることにより、被接合部材の剛性を高めた状態で接合を行うことができる。このため、被接合部材に空間部や片持ち部が設けられている場合においても、接合面の全体に均一に加圧力を伝達することができる。そして、被接合部材の剛性を高めた状態で摺動を行うため、被接合部材にたわみが生じることを防止でき、被接合部材全体に加振力を行き渡らせることができる。その結果、接合面の全体を均一に接合でき、安定した接合強度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態1に係る接合装置の一例を説明するための概略図である。
【図2】実施形態1に係る接合方法を説明するためのフローチャートである。
【図3】実施形態1に係る接合方法を説明するための図であって、図3(A)は、上下方向に重ねて配置される一対の被接合部材を上方側から示す平面図、図3(B)は、図3(A)の3B−3B線に沿う断面図である。
【図4】実施形態1の変形例1に係る接合方法を説明するための図であって、図4(A)は、上下方向に重ねて配置される一対の被接合部材を上方側から示す平面図、図4(B)は、図4(A)の4B−4B線に沿う断面図である。
【図5】実施形態1の変形例2に係る接合方法を説明するための図であって、図5(A)は、上下方向に重ねて配置される一対の被接合部材を上方側から示す平面図、図5(B)は、図5(A)の5B−5B線に沿う断面図である。
【図6】実施形態1の変形例3に係る接合方法を説明するための図であって、図6(A)は、上下方向に重ねて配置される一対の被接合部材を上方側から示す平面図、図6(B)は、図6(A)の6B−6B線に沿う断面図である。
【図7】実施形態2に係る接合方法を説明するための図であって、図7(A)は、上下方向に重ねて配置される一対の被接合部材を上方側から示す平面図、図7(B)は、図7(A)の7B−7B線に沿う断面図である。
【図8】実施形態2の変形例1に係る接合方法を説明するための図であって、図8(A)は、上下方向に重ねて配置される一対の被接合部材を上方側から示す平面図、図8(B)は、図8(A)の8B−8B線に沿う断面図である。
【図9】実施形態3に係る接合方法を説明するための図であって、図9(A)は、上下方向に重ねて配置される一対の被接合部材を上方側から示す平面図、図9(B)は、図9(A)の9B−9B線に沿う断面図である。
【図10】実施形態4に係る接合方法を説明するための図であって、図10(A)は、上下方向に重ねて配置される一対の被接合部材を上方側から示す平面図、図10(B)は、図10(A)に示す一対の被接合部材を簡略化して示す斜視図である。
【図11】実施形態5に係る接合方法を説明するための図であって、図11(A)は、上下方向に重ねて配置される一対の被接合部材を上方側から示す平面図、図11(B)は、図11(A)の11B−11B線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0011】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る接合方法に適用される接合装置の一例を説明するための概略図である。
【0012】
実施形態1に係る接合装置40は、導電性を備えた一対の被接合部材10,20を接合するための接合装置である。接合装置40は、概説すれば、一対の被接合部材10,20に電流を供給する電流供給装置(電流供給手段)50と、一対の被接合部材10,20を保持する保持装置60と、一対の被接合部材10,20を、当該被接合部材10,20の互いに接合される接合面10a,20aを対向させて相対的に摺動させる摺動装置(摺動手段)70と、一対の被接合部材10,20のうちの一方の被接合部材10に設けられた空間部11の内壁面13を支持する補強部材100と、被接合部材10,20同士を相対的に押し付ける加圧装置80と、制御装置(制御手段)90とを有する。制御装置90は、電流供給装置50、摺動装置70、および加圧装置80のそれぞれの動作を制御することによって、抵抗加熱および摩擦熱(塑性流動)を利用した被接合部材10,20同士の接合を実現する。以下、詳述する。
【0013】
図1に示すように、接合されるワークは、上方に位置する被接合部材10と、下方に位置する被接合部材20と、被接合部材10,20の間に配置される被接合部材である中間部材30とからなる。接合面10a,20aの延長方向は、水平方向Hとなっている。
【0014】
図3に示すように、被接合部材10は、被接合部材10,20が適用される製品形状に応じて予め形成された空間部11を有している。空間部11は、内壁面13によって区画形成されており、接合面10aと加圧装置80によって加圧される加圧面10bとの間に設けられている。なお、図3中において中間部材30の図示は省略している。
本実施形態においては、被接合部材10,20は、アルミニウム(Al)が適用される。アルミニウムは、圧延材(例えば、A5052)や鋳造材(例えば、ADC12)を利用することが可能である。被接合部材10,20は、導電材料であれば特に限定されず、鉄(Fe)やマグネシュウム(Mg)を適用することも可能である。また、Al−Alの同材同士の接合、Al−FeやAl−Mgの異材接合に適用することも可能である。Al−FeやAl−Mgの異材接合体を得ることができるため、シリンダーヘッド等の自動車用部品として適用することが容易である。
【0015】
補強部材100は、被接合部材10に予め一体的に形成されたリブ110によって構成されている。補強部材100は、空間部11の形成に伴う被接合部材10の剛性の低下を抑制するために設けている。被接合部材10の厚み方向におけるリブ110の両端部は、空間部11の内壁面13に当接させて配置している。このようにリブ110を配置することにより、加圧装置80が被接合部材10を加圧する加圧方向(図3中において矢印Pで示す)に沿って空間部11の内壁面13に支持力を作用させることを可能にしている。
【0016】
リブ110は、摺動装置70が被接合部材10,20を摺動する摺動方向(図中矢印Hで示す)に伸びた形状を有している。このため、平面視において、リブ110の長手方向は摺動方向と略平行な方向に伸びて配置されている。被接合部材10を摺動する際に、摺動方向に沿って生じる加振力を、リブ110を介して被接合部材10全体へ良好に伝達させることを可能にしている。
【0017】
中間部材30は、被接合部材10,20と共晶反応する共晶反応材料からなる。被接合部材10,20がアルミニウムの場合、アルミニウムと低温共晶を形成する共晶反応材料は、亜鉛(Zn)、ケイ素(Si)、銅(Cu)、錫(Sn)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)等を適用することが可能である。
【0018】
共晶反応材料は、液相を形成し、被接合部材10,20同士および共晶反応材料と被接合部材10,20との間における相互拡散を促進するため、良好な接合強度を確保することが可能であり、かつ、形成される液相によって間隙が埋められるため、広い面積や曲面の接合においても良好な水密性を達成することが容易である。したがって、高度な水密性が要求される部位や、2次元的な曲面や大面積部位に、特に有効である。共晶反応材料の厚みは、例えば、10〜100μmであるが、特にこれに限定されず、また、厚さを部位に応じ適宜変化させることも可能である。
【0019】
中間部材30は、共晶反応によって低融点で液層化し、酸素を遮断して再酸化を抑制する役割を果たす。このため、真空雰囲気および長時間の作業が必要であった真空ろう付けと比較して、大気中における短時間、低入熱での接合が可能となっている。中間部材30の利用は、量産化が容易となる点でも好ましくなっている。
【0020】
中間部材30は、共晶反応材料以外の液相を形成する導電材料から構成することも可能である。この場合は、中間部材の選択の自由度が大きく(材料の選択範囲が広い)、また、中間部材30によって液相が形成され、被接合部材10,20同士および中間部材30と被接合部材10,20との間における相互拡散が促進されるため、良好な接合強度が確保される。そして、形成される液相によって間隙が埋められるため、広い面積や曲面の接合においても良好な水密性を達成することが容易である。共晶反応材料以外の液相を形成する導電材料としては、共晶反応材料に比較して安価で一般的なろう材や低温はんだが挙げられる。
【0021】
中間部材30は、別体からなる形態に限定されず、被接合部材10,20の一方と一体化された被覆層から構成することも可能である。この場合、中間部材30を局所的に配置することが可能である。被覆は、めっき、クラッド材、塗布等により形成することが可能である。また、中間部材30は、かならずしも設けられなくてもよい。
【0022】
第1および第2電極42,44は、抵抗加熱によって被接合部材10,20および中間部材30(中間部材30が介在している被接合部材10,20の接合面10a,20a)を昇温し軟化させるための加熱手段であり、第1電極42は、上方に位置する被接合部材10に電気的に接続され、第2電極44は、下方に位置する被接合部材20に電気的に接続される。第1および第2電極42,44は、被接合部材10,20に直接接触する形態に限定されず、例えば、導電性を有する他の部材を介して間接的に接触させることも可能である。第1および第2電極42,44は、それぞれ複数の電極によって構成することも可能である。
【0023】
電流供給装置50は、直流電流または交流電流を、第1電極42から、被接合部材10、中間部材30および被接合部材20を経由して第2電極44に流すための電流供給手段であり、例えば、電流値および電圧値が調整自在に構成されている。
【0024】
保持装置60は、上方に位置する可動保持部62と下方に位置する固定保持部64とを有する。可動保持部62は、被接合部材10を水平方向Hに往復動自在に保持するために使用される。固定保持部64は、被接合部材20の水平方向Hへの移動を規制し、被接合部材10に対し被接合部材20を相対的に静止した状態で維持するために使用される。
【0025】
摺動装置70は、被接合部材10を被接合部材20に対して相対的に摺動させ、中間部材30が介在している被接合部材10,20の接合面10a,20aに摩擦熱(塑性流動)を発生させるために使用される加振手段からなる。加振手段は、可動保持部62に保持された被接合部材10を、接合面10a,20aの延長方向に対して平行である水平方向Hに振動(加振)させるシャフト72と、シャフト72の駆動源であるモータ74とを有する。加振手段は、加振周波数、加振振幅および加振力等を任意に制御可能となっている。例えば、加振振幅は100〜1000μmの範囲、加振周波数は10〜100Hzの範囲で調整可能に構成されている。加振機構は、特に限定されず、例えば、超音波振動、電磁式振動、油圧式加振、カム式振動を適用することが可能である。
【0026】
加振方向は、接合面10a,20aの延長方向に沿う1方向への往復運動であるため、接合面10a,20aの形状の自由度が向上することとなる。すなわち、1方向にさえ変位可能であれば加振できるため、接合面10a,20aの形状が平面である必要はなく、例えば、一方向に延びる溝に凸部が嵌合する形態とすることも可能である。
【0027】
また、摺動装置70は、振動(加振機構)を利用する形態に限定されず、回転運動や、自転せずに円軌道を描くように振れ回る公転運動を適宜適用することも可能である。なお、公転運動の場合、振動と異なり、接合面10a,20a同士の相対的な運動が停止しないことから、動摩擦係数のみが作用して摩擦係数が安定し、接合面10a,20aを均一に磨耗させることが可能である。
【0028】
加圧装置80は、上方に位置する加圧部82と下方に位置する支持構造体84とを有する。加圧部82は、第1電極42に連結され、かつ、上下方向(接合面10a,20aと直交する方向)Lに進退動可能となっている。加圧部82は、第1電極42を介して被接合部材10に加圧力を付与可能であり、被接合部材20に対する被接合部材10の押し付け面圧を調整するため面圧調整手段である。加圧部82は、例えば、油圧シリンダが組み込まれており、加圧力を調整自在に構成されている。加圧力は、例えば、2〜10MPaである。支持構造体84は、被接合部材10、中間部材30および被接合部材20を介して加圧装置80の加圧力が伝達される第2電極44を支持するために使用される。
【0029】
加圧部82による加圧力は、第1電極42を介することなく、被接合部材10に直接付与する形態を適用することも可能である。加圧部82と支持構造体84とを逆に配置することも可能である。この場合、下方に配置される加圧部82によって第2電極44が押圧され、上方に配置される支持構造体84よって第1電極42が支持されることになる。また、支持構造体84の代わりに、第2の加圧部を設けることによって、面圧調整の自由度を向上さることも可能である。
【0030】
制御装置90は、演算部、記憶部、入力部および出力部を有するコンピュータからなる制御手段であり、加圧装置80、摺動装置70、および電流供給装置50を統括的に制御するために使用される。制御装置90の各機能は、記憶装置に格納されているプログラムを演算部が実行することにより発揮される。
【0031】
プログラムは、例えば、加圧装置80の加圧力を調整した状態で、摺動装置70によって被接合部材10を水平方向Hに振動させることによって、中間部材30が介在している被接合部材10,20の接合面10a,20aを摺動させつつ、電流供給装置50から供給される電流を、第1電極42から、被接合部材10、中間部材30および被接合部材20を経由して、第2電極44へ流して抵抗加熱することによって、中間部材30を介在させて被接合部材10,20を接合するための手順を、制御装置90に実行させるためものである。
【0032】
次に、実施形態1に係る接合方法を、図2に示すフローチャートおよび図3に基づいて説明する。
【0033】
本接合方法は、概説すれば、被接合部材10,20の接合面10a,20aを対向させ、被接合部材10,20を相対的に摺動させつつ、第1および第2電極42,44を経由して被接合部材10から被接合部材20へ電流を流して抵抗加熱することによって、接合面10a,20a同士を接合する接合工程S12を有する。そして、接合工程S12においては、被接合部材10に設けられた空間部11の内壁面13をリブ110によって支持させながら接合をする。さらに、接合工程S12の後、リブ110を被接合部材10から除去する工程S14を行う。
【0034】
初めに、互いに接合する被接合部材10,20の間に中間部材30を挟み、第1および第2電極42,44の間に被接合部材10,20を保持する。被接合部材20は固定保持部64に固定され、被接合部材10は可動保持部62に振動可能に保持される。
【0035】
続いて、加圧装置80によって、被接合部材10,20同士を予め設定された加圧力で加圧する。加圧装置80による加圧力は、制御装置90で調節され、例えば2〜10MPa程度が好ましいが、これに限定されない。
【0036】
次に、制御装置90により摺動装置70を駆動させて、被接合部材10を、接合面10a,20aに沿う方向へ摺動する(予備摺動工程(予備加振工程)S11)。加振周波数および加振振幅は、特に限定されないが、一例として、加振振幅は100〜1000μm程度が好ましく、加振周波数は10〜100Hz程度が好ましい。
【0037】
上記のように加圧しながら摺動する予備摺動工程S11が行われると、接合面10a,20aが摺動するとともに摩擦熱が発生して材料が軟化され、接合面10a,20aが磨耗しつつ塑性流動し、接合面10a,20aの間の面圧がある程度均一化される。更に、予備摺動工程S11は、アルミニウムの表面の酸化皮膜を除去して皮膜厚さの違いによる接触抵抗のばらつきを低減させ、後の工程で抵抗加熱した際の発熱量のばらつきを抑える効果を発揮する。したがって、接合する前に、アルミニウムである被接合部材10,20の表面を脱脂し、更にワイヤブラシによりブラッシングして表面の酸化膜を除去する等の処置が不要となり、作業性が向上する。
【0038】
予備摺動工程S11の後には、接合工程S12を行う。接合工程S12では、摺動装置70による摺動を維持しつつ、電流供給装置50により第1および第2電極42,44へ電流を供給する。接合面10a,20aにおける接触抵抗値は、高面圧部において相対的に低くなるため、接合面10a,20aの高面圧部に電流が集中する。したがって、接合面10a,20aの高面圧部において抵抗加熱が大きく作用して加熱され、接合面10a,20aの酸化膜が強制的に剥離されるとともに、抵抗加熱により加熱された高面圧部に加圧および加振も作用して摩耗、塑性流動および材料拡散が発生し、高面圧部の面圧の低下が引き起こされる。これにより、時々刻々と電流の集中箇所が変化し、電流の流れが分散して接合面10a,20aが均一に加熱され、接合面10a,20aの全体を均一に接合することができる。更に、加振および電流による抵抗加熱を併用して接合するため、接合面10a,20aに高い加圧力を付与せずとも、電流集中箇所が変化して均一な加熱が可能となり、接合面10a,20aが大面積の場合や複雑な形状の場合であっても接合することができ、かつ均一な面接合が可能である。また、接合面10a,20aの表層のみを溶融して接合するため、加熱時間を短縮でき、更に、材料内に気体を含有している鋳造品であっても、加熱により材料内の気体が膨張、噴出し難く、良好な接合を実現できる。
【0039】
なお、接合工程S12において、中間部材30は、共晶反応により低融点で液相化し、被接合部材10,20同士、または中間部材30の被接合部材10,20への相互拡散を促進させる。さらに、中間部材30は、酸素を遮断して接合面10a,20aの再酸化を抑制する役割を果たすため、大気中における短時間、低入熱での接合が可能となり、量産化が容易となる。
【0040】
接合工程S12において、被接合部材10の空間部11に配置されたリブ110は、空間部11の内壁面13を支持することによって、空間部11の形成に伴う被接合部材10の剛性の低下を補う。このため、被接合部材10の加圧面10bに付与された加圧力を接合面10aへ良好に伝達させることが可能になる。さらに、被接合部材10にたわみが生じることを防止でき、被接合部材10全体に加振力を行き渡らせることができる。
【0041】
接合工程S12を終了する際には、摺動装置70を停止させるが、被接合部材10,20を望ましい相対的位置で接合するために、最終的に摺動装置70によって被接合部材10,20を望ましい位置に位置決めする。この際には、加圧装置80の加圧力が大きいと位置決め精度が低下するため、摺動装置70を停止させる前に、加圧装置80による加圧力を低下させてもよい。これにより、被接合部材10,20が望ましい相対的位置となった状態で摺動装置70を停止させることが可能になる。なお、被接合部材10,20を位置決めするための他の構成を別途設けてもよい。
【0042】
接合工程S12の後には、冷却工程S13を行う。冷却工程S13では、制御装置90が、摺動装置70および電流供給装置50を停止させ、加圧装置80による加圧力を上昇させる。そして、予め設定した時間が経過した際に、冷却が終了したと判断し、加圧装置80による加圧を終了させる。または、被接合部材10,20の温度を計測する温度計(不図示)から制御装置90へ入力される信号が所定値以下となった後、冷却が終了したと判断し、加圧装置80による加圧を終了させることもできる。この後、第1および第2電極42,44を後退させて、接合された被接合部材10,20が装置から取り外される。これにより、被接合部材10,20の接合が完了する。
【0043】
接合装置10から被接合部材10,20を取り外した後、被接合部材10からリブ110を除去する工程S14を行う。リブ110を除去する方法は、例えば、研磨加工や切削加工等の従来公知の金属加工方法を利用する。リブ110を除去することによって、製品の設計形状に応じた所定の形状の導電性部材を取得することが可能になる。
【0044】
なお、予備摺動工程S11は、かならずしも設けられなくてもよい。また、予備摺動工程S11の替わり若しくは予備摺動工程S11の前に、摺動装置70により摺動するのではなしに、電流供給装置50により第1および第2電極42,44へ電流を供給することで、接合面10a,20aを抵抗加熱により軟化させてもよい。
【0045】
また、接合工程S12においては、所定時間、抵抗加熱により被接合部材10,20の温度を上昇させた後に、抵抗加熱による発熱量を減少させ、更に摺動による発熱量を増加させてもよい。抵抗加熱による発熱量を減少させ、更に摺動による発熱量を増加させる方法としては、加圧装置80による加圧力を増加させるだけで実現できる。加圧装置80による加圧力が増加すると、接合面10a,20aにおける面圧が高くなることで接触抵抗が減少し、抵抗加熱による発熱量が減少する。さらに、接合面10a,20aにおける面圧が高くなることで接合面10a,20aにおける摩擦力が増大し、摺動による発熱量が増加する。このように、抵抗加熱による発熱量を減少させ、かつ摺動による発熱量を増加させることで、接触抵抗により材料を高温にして軟化を促進する過程から、軟化された材料を摺動によって掻き混ぜるようにして一体化を促進する過程へ移行する。なお、抵抗加熱による発熱量を減少させ、かつ摺動による発熱量を増加させる方法としては、かならずしも加圧装置80の加圧力を増加させる方法に限定されず、例えば電流供給装置50や摺動装置70を制御することでも実現でき、または加圧装置80に他の装置を組み合わせて実現することもできる。
【0046】
また、予備摺動工程S11の前において、脱脂や、ワイヤブラシによるブラッシングによってアルミニウム酸化皮膜を除去する等の前処理を実施することも可能である。また、冷却工程S13は、かならずしも設けられなくてもよい。
【0047】
上記した接合方法によって接合された被接合部材10,20の接合界面には、被接合部材10,20の材料が拡散することで接合される拡散接合面、被接合部材10,20の材料が塑性流動することで接合される塑性流動接合面、および中間部材30を介在して接合される中間層介在接合面が混在して形成される。
【0048】
また、接合工程S12において、被接合部材10の空間部11の内壁面13をリブ110によって支持させることにより、被接合部材10の剛性を高めた状態で接合を行うことができる。このため、被接合部材10に空間部11が設けられている場合においても、被接合部材10の加圧面10bに付与された加圧力を接合面10aへ良好に伝達させることができ、接合面10aの面圧の均一化を図ることができる。そして、被接合部材10の剛性を高めた状態で摺動を行うため、被接合部材10にたわみが生じることを防止でき、被接合部材10全体に加振力を行き渡らせることができる。その結果、接合面10a,20aの全体を均一に接合でき、安定した接合強度を得ることができる。
【0049】
また、被接合部材10に予め一体的に形成されたリブ110によって補強部材を構成しているため、接合工程を行う前に補強部材を空間部11内に設置する作業を行う必要がなく、補強部材の設置に伴う作業工数の増加を抑制することができる。リブ110を除去する工程を行うことにより、リブ110の設置に伴う被接合部材10の重量の増加や大型化が招かれることを防止することもできる。
【0050】
また、リブ110を、被接合部材10,20を摺動する摺動方向に伸びた形状に形成しているため、被接合部材10を摺動する際に、摺動方向に沿って生じる加振力を、リブ110を介して被接合部材10全体へ良好に伝達させることができる。
【0051】
次に、実施形態1に係る変形例1〜3を順次説明する。
【0052】
図4には、実施形態1に係る変形例1を説明するための被接合部材の平面図、および断面図がそれぞれ示される。
【0053】
変形例1においては、被接合部材10の空間部11は、空間部11の内部と被接合部材10の外部とに連なる開口部14を有している。補強部材100は、被接合部材10の厚み方向における両端部がそれぞれ空間部11の内壁面13に当接させて配置されている。
【0054】
また、本変形例にあっては、補強部材100が形成する電流経路の電気抵抗値は、被接合部材10が空間部11の周囲に形成する電流経路の電気抵抗値よりも小さく形成している。図示例にあっては、被接合部材10本体と同一の材料で構成される補強部材100の断面積を、被接合部材10において電流経路が形成される部位のうち、最小の断面積を有する部位15の断面積よりも大きくすることによって、補強部材100の電気抵抗値を相対的に小さくしている。被接合部材10からの発熱量が大きくなると、抵抗加熱による加熱量および摩擦熱による加熱量の調整が難しくなり、接合面10a,20aの全体を均一に接合させることが困難になる。また、抵抗加熱による被接合部材10の軟化が過剰なものとなる虞もある。そこで、補強部材100が形成する電流経路の電気抵抗値を小さくし、被接合部材10に流した電流を主に補強部材100を通らせて被接合部材20側へ流れるようにしている。これにより、被接合部材10内に電流が過度に流れることを防止して、被接合部材10からの発熱を抑制させている。
【0055】
本変形例に示されるような断面形状の空間部11を有する被接合部材10の接合においても、空間部11に設置された補強部材100によって被接合部材10の剛性を高めた状態で接合を行うことが可能になる。このため、被接合部材10に空間部11が設けられている場合においても、接合面10aの面圧の均一化を図ることができ、安定した接合強度を得ることができる。
【0056】
また、補強部材100が形成する電流経路の電気抵抗値を、被接合部材10が空間部11の周囲に形成する電流経路の電気抵抗値よりも小さく形成しているため、被接合部材10内に電流が過度に流れることを防止でき、被接合部材10からの発熱を抑制することができる。
【0057】
図5には、実施形態1に係る変形例2を説明するための被接合部材の平面図、および断面図がそれぞれ示される。
【0058】
変形例2においては、被接合部材10の空間部11は、空間部11の内壁面13によって区画形成される閉じられた一つの内部空間を有している。補強部材100は、空間部11の内部空間を埋めるように配置されている。補強部材100の外表面の各部位は、空間部11の内壁面13に当接させている。空間部11の内壁面13と補強部材100との接触面積が増加させられるため、被接合部材10の剛性をより一層高めた状態で接合を行うことが可能になる。したがって、接合面10aの面圧の均一化を向上させることができ、より安定した接合強度を得ることができる。
【0059】
図6には、実施形態1に係る変形例3を説明するための被接合部材の平面図、および断面図がそれぞれ示される。
【0060】
変形例3においては、被接合部材10には、上述した変形例1に示した構造の被接合部材を採用している。一方、補強部材100は、変形例1に示す補強部材100よりも、空間部11の内壁面13との接触面積が増加するように、内壁面13の縦壁16にも当接させて配置している。変形例2と同様に、このような場合も、空間部11の内壁面13と補強部材100との接触面積を増加させることができるため、被接合部材10の剛性をより一層高めた状態で接合を行うことが可能になる。
【0061】
(実施形態2)
図7には、実施形態2に係る接合方法を説明するための被接合部材の平面図、および断面図がそれぞれ示される。なお、実施形態1と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その説明を一部省略する。
【0062】
実施形態2にあっては、補強部材100は、被接合部材10と別体で設けられ空間部11から分離可能な導電性部材によって構成されている。このような点において、被接合部材10に予め一体的に形成されたリブ110を補強部材として用いる実施形態1と相違している。
【0063】
補強部材100は、例えば、鉄や、銅、ステンレス等の公知の金属材料によって構成することができる。但し、被接合部材10に電流を流した際に、被接合部材10と補強部材100とが融着することを防止するために、被接合部材10よりも融点が高い材料を選択することが望ましい。したがって、被接合部材10にアルミニウムを利用する場合には、例えば、鉄や銅などを材料として補強部材100を構成させることが望ましい。
【0064】
補強部材100には、被接合部材10への補強部材100の設置、および被接合部材10からの補強部材100の取り外しを容易に行うことを可能にするためのアーム120を取り付けている。アーム120の材質は、特に限定されないが、例えば、補強部材100と同様の材質で構成することができる。
【0065】
補強部材100は、被接合部材10に電流を供給する電流供給装置50と電気的に接続されている。これにより、補強部材100を、被接合部材10,20へ電流を流すための第1電極42として機能させている。なお、被接合部材10への加圧力の付与は、第1電極42を介することなく、加圧部82を利用して直接行っている。
【0066】
実施形態2においては、補強部材100が被接合部材10と別体で設けられ、かつ分離可能であるため、接合工程に際して、比較的自由に位置決めしながら補強部材100をセットすることができる。したがって、接合対象となる被接合部材10ごとに、剛性を高めることが必要な部位に対応させて補強部材100を設置させることができ、接合面10aの面圧の均一化をより効果的に行うことができる。さらに、異なる被接合部材を接合する場合においても、補強部材100を共用化することができるため、補強部材100の利用に伴うコストアップを抑制することができる。また、補強部材100に導電性部材を用いているため、空間部11内に電流経路を形成させることができる。被接合部材10に流れる電流を分岐させて流すことができるため、被接合部材10に集中して電流が流れることを防止でき、被接合部材10の発熱を抑えることができる。
【0067】
また、補強部材100を電流供給装置50と電気的に接続することにより、第1電極42として機能させているため、補強部材100および第1電極42を別途に設ける場合と比較して、接合装置40を小型化して構成することができる。
【0068】
次に、実施形態2に係る変形例を説明する。
【0069】
図8には、実施形態2に係る変形例を説明するための被接合部材の平面図、および断面図がそれぞれ示される。
【0070】
本変形例に示すように、被接合部材10を第1電極として利用せず、被接合部材10に電流を流すための専用の第1電極42を別途設けた構成とすることも可能である。
【0071】
(実施形態3)
図9には、実施形態3に係る接合方法を説明するための被接合部材の平面図、および断面図がそれぞれ示される。なお、実施形態1および実施形態2と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その説明を一部省略する。
【0072】
実施形態3にあっては、補強部材100は、被接合部材10と別体で設けられ空間部11から分離可能な絶縁性部材によって構成している。補強部材100は、例えば、硬質樹脂材料などによって構成することができる。
【0073】
本実施形態によれば、補強部材100が電流経路を形成しないため、電流は被接合部材10本体を通って流れることになる。被接合部材10と補強部材100とを別体で設ける場合において、被接合部材10と補強部材100との接触部位に電流が流れることが防止されるため、接触部位が過度に発熱することを防止することが可能になる。
【0074】
(実施形態4)
図10には、実施形態4に係る接合方法を説明するための被接合部材の平面図、および概略斜視図がそれぞれ示される。実施形態1〜3と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その説明を一部省略する。
【0075】
実施形態4においては、被接合部材10の空間部11は、被接合部材20の接合面20aに臨む開口部14を有している。補強部材100は、被接合部材10の厚み方向における一端が空間部11の内壁面13に当接させられ、他端が被接合部材20の接合面20aに当接させて配置されている。図示されるように、被接合部材10の縦壁16の肉厚が比較的薄く形成されているような場合には、被接合部材10全体に加振力を行き渡らせることが困難となるが、縦壁16に隣接させて補強部材100を配置することによって、加振力を良好に伝達させることが可能になる。したがって、図示されるような形状の空間部11を有する被接合部材10の接合においても、接合面10aの面圧の均一化を図ることができ、安定した接合強度を得ることができる。
【0076】
なお、本実施形態において、補強部材100は被接合部材10に一体的に形成したリブによって構成することも可能であるし、被接合部材10と別体で設けられた導電性部材や絶縁性部材によって構成することも可能である。なお、補強部材100をリブや導電性部材によって構成する場合には、被接合部材10の縦壁16に当接されたリブまたは導電性部材によって被接合部材10の電気抵抗値を調整することが可能になる。例えば、補強部材100としての導電性部材またはリブの断面積と被接合部材10の縦壁16の断面積の合計の断面積を大きくすることにより、縦壁16近傍に形成される電流経路の電気抵抗値をより小さく設定することができる。
【0077】
(実施形態5)
図11には、実施形態5に係る接合方法を説明するための被接合部材の平面図、および概略斜視図がそれぞれ示される。実施形態1〜4と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その説明を一部省略する。
【0078】
図11に示すように、被接合部材10は略L字形の断面部分を有している。被接合部材10は、L字の一方の端部を被接合部材20に当接させることによって、片持ち状態で配置させている。被接合部材10のうち、加圧面10bを形成する部位が片持ち部17を構成している。
【0079】
補強部材100は、被接合部材10に予め一体的に形成されたリブ110によって構成されている。被接合部材10の片持ち部17をリブ110によって支持させることにより、被接合部材10の剛性を向上させている。被接合部材10の厚み方向におけるリブ110の一方の端部は、片持ち部17に当接させて配置し、他方の端部は、縦壁16に当接させて配置している。このようにリブ110を配置することにより、加圧装置80が被接合部材10を加圧する加圧方向に対して片持ち部17に支持力を作用させることを可能にしている。なお、リブ110は、接合工程を行った後、被接合部材10から除去される。
【0080】
本実施形態にあっては、接合工程において、被接合部材10の片持ち部17をリブ110によって支持させることにより、被接合部材10の剛性を高めた状態で接合を行うことができる。このため、被接合部材10に片持ち部17が設けられている場合においても、被接合部材10の加圧面10bに付与された加圧力を接合面10aへ良好に伝達させることができ、接合面10aの面圧の均一化を図ることができる。そして、被接合部材10の剛性を高めた状態で摺動を行うため、被接合部材10にたわみが生じることを防止でき、被接合部材10全体に加振力を行き渡らせることができる。その結果、接合面10a,20aの全体を均一に接合でき、安定した接合強度を得ることができる。
【0081】
なお、本実施形態において、補強部材を被接合部材と一体的に形成されたリブ110ではなく、被接合部材と別体で設けられた導電性部材や絶縁性部材によって構成することも可能である。また、補強部材を電流供給装置と電気的に接続することにより、第1電極として機能させることも可能である。さらに、補強部材が形成する電流経路の電気抵抗値を、被接合部材本体が形成する電流経路の電気抵抗値よりも小さく形成することにより、被接合部材からの発熱を抑制することも可能である。くわえて、補強部材を、被接合部材を摺動する摺動方向に伸びた形状に形成することにより、被接合部材を摺動する際に、摺動方向に沿って生じる加振力を、補強部材を介して被接合部材全体へ良好に伝達させる効果を発揮させることも可能である。
【0082】
本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲で種々改変することができる。
【0083】
例えば、各実施形態において、中間部材を適宜省略することが可能である。
【0084】
補強部材100の形状および個数等は、実施形態において示したものに特に限定されず、空間部11の内壁面13または片持ち部17を支持することによって、被接合部材10の剛性を高める機能を発揮し得る限りにおいて適宜変更することが可能である。また、空間部11や片持ち部17の形状等も特に限定されるものではなく、被接合部材10が用いられる製品の形状等に合わせて適宜変更することが可能である。例えば、スリット形状や、断面が矩形の形状に形成された空間部11を採用することが可能である。また、各実施形態にあっては、接合対象となる一方の被接合部材10のみに空間部11または片持ち部17が設けられた形態で説明を行ったが、例えば、接合対象となる両方の被接合部材に空間部または片持ち部が設けられた接合においても、本発明の接合方法を適用することが可能である。また、リブからなる補強部材と、導電性材料からなる補強部材および絶縁性部材からなる補強部材とを、併用して被接合部材の接合を行うことも可能である。
【符号の説明】
【0085】
10,20 被接合部材、
10a,20a 接合面、
10b 加圧面、
11 空間部、
13 内壁面、
14 開口部、
17 片持ち部、
30 中間部材、
40 接合装置、
42 第1電極、
44 第2電極、
50 電流供給装置(電流供給手段)、
60 保持装置、
70 摺動装置(摺動手段)、
80 加圧装置、
82 加圧部、
84 支持構造体、
90 制御装置(制御手段)、
100 補強部材、
110 リブ(補強部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を備えた一対の被接合部材を接合するための接合方法であって、
互いに接合される前記被接合部材の接合面を対向させ、一対の前記被接合部材を相対的に摺動させつつ、一対の前記被接合部材の一方から他方へ電流を流して抵抗加熱することによって、前記接合面同士を接合する接合工程を有し、
前記接合工程において、一対の前記被接合部材のうちの少なくとも一方に設けられた空間部の内壁面を補強部材によって支持させながら接合する、接合方法。
【請求項2】
前記補強部材は、前記被接合部材に予め一体的に形成されたリブを有し、
前記接合工程の後、前記リブを前記被接合部材から除去する工程を有する請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
前記補強部材は、前記被接合部材と別体で設けられ前記空間部から分離可能な導電性部材を有する請求項1または請求項2に記載の接合方法。
【請求項4】
前記補強部材が形成する電流経路の電気抵抗値は、前記被接合部材が前記空間部の周囲に形成する電流経路の電気抵抗値よりも小さい請求項1〜3のいずれか1項に記載の接合方法。
【請求項5】
前記被接合部材に電流を供給する電流供給手段と前記補強部材とが電気的に接続されることによって、前記補強部材が電極を構成している請求項1〜4のいずれか1項に記載の接合方法。
【請求項6】
前記補強部材は、前記被接合部材と別体で設けられ前記空間部から分離可能な絶縁性部材を有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の接合方法。
【請求項7】
前記補強部材は、前記被接合部材を摺動させる摺動方向に伸びて形成されている請求項1〜6のいずれか1項に記載の接合方法。
【請求項8】
導電性を備えた一対の被接合部材を接合するための接合方法であって、
互いに接合される前記被接合部材の接合面を対向させ、一対の前記被接合部材を相対的に摺動させつつ、一対の前記被接合部材の一方から他方へ電流を流して抵抗加熱することによって、前記接合面同士を接合する接合工程を有し、
前記接合工程において、一対の前記被接合部材のうちの少なくとも一方に設けられた片持ち部を補強部材によって支持させながら接合する、接合方法。
【請求項9】
導電性を備えた一対の被接合部材を接合するための接合装置であって、
一対の前記被接合部材に電流を供給する電流供給手段と、
一対の前記被接合部材を、当該被接合部材の互いに接合される接合面を対向させて相対的に摺動させる摺動手段と、
一対の前記被接合部材のうちの少なくとも一方に設けられた空間部の内壁面を支持する補強部材と、
一対の前記被接合部材を相対的に摺動させつつ、前記電極に電流を供給して対向する前記接合面の間で抵抗加熱を行うように前記電流供給手段および前記摺動手段を制御する制御手段と、を有する接合装置。
【請求項10】
前記補強部材は、前記被接合部材に予め一体的に形成されたリブを有する請求項9に記載の接合装置。
【請求項11】
前記補強部材は、前記被接合部材と別体で設けられ前記空間部から分離可能な導電性部材を有する請求項9または請求項10に記載の接合装置。
【請求項12】
前記補強部材が形成する電流経路の電気抵抗値は、前記被接合部材が前記空間部の周囲に形成する電流経路の電気抵抗値よりも小さく形成されている請求項9〜11のいずれか1項に記載の接合装置。
【請求項13】
前記電流供給手段と前記補強部材とが電気的に接続されており、前記補強部材が電極を構成している請求項9〜12のいずれか1項に記載の接合装置。
【請求項14】
前記補強部材は、前記被接合部材と別体で設けられ前記空間部から分離可能な絶縁性部材を有する請求項9〜11のいずれか1項に記載の接合装置。
【請求項15】
前記補強部材は、前記被接合部材を摺動させる摺動方向に伸びた形状を有する請求項9〜14のいずれか1項に記載の接合装置。
【請求項16】
導電性を備えた一対の被接合部材を接合するための接合装置であって、
一対の前記被接合部材に電流を供給する電流供給手段と、
一対の前記被接合部材を、当該被接合部材の互いに接合される接合面を対向させて相対的に摺動させる摺動手段と、
一対の前記被接合部材のうちの少なくとも一方に設けられた片持ち部を支持する補強部材と、
一対の前記被接合部材を相対的に摺動させつつ、前記電極に電流を供給して対向する前記接合面の間で抵抗加熱を行うように前記電流供給手段および前記摺動手段を制御する制御手段と、を有する接合装置。
【請求項17】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の接合方法に適用される被接合部材であって、当該被接合部材に設けられた空間部の内壁面または片持ち部を支持する補強部材を有してなる被接合部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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