接合方法及び接合体
【課題】大面積の接合に有利で、且つ、製造コストの増加を抑制できる接合方法及び接合体を提供する。
【解決手段】第1部材における金属からなる第1接合部と、第2部材における金属からなる第2接合部との間に、金属ナノ粒子を有機溶媒中に分散してなる金属ペーストを介在させ、該金属ペーストを少なくとも加熱して金属ナノ粒子を焼結し、内部に空孔を有する接合部材として第1接合部と第2接合部を接合する接合方法であって、金属ペーストの構成条件及び金属ナノ粒子の焼結条件の少なくとも1つを調整することで、第1接合部と第2接合部との間に、空孔の占める割合である空孔率が互いに異なる複数種類の接合層を、隣接する接合層で空孔率が互いに異なるように積層形成して接合部材とする。
【解決手段】第1部材における金属からなる第1接合部と、第2部材における金属からなる第2接合部との間に、金属ナノ粒子を有機溶媒中に分散してなる金属ペーストを介在させ、該金属ペーストを少なくとも加熱して金属ナノ粒子を焼結し、内部に空孔を有する接合部材として第1接合部と第2接合部を接合する接合方法であって、金属ペーストの構成条件及び金属ナノ粒子の焼結条件の少なくとも1つを調整することで、第1接合部と第2接合部との間に、空孔の占める割合である空孔率が互いに異なる複数種類の接合層を、隣接する接合層で空孔率が互いに異なるように積層形成して接合部材とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの部材を接合する接合方法及び接合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示されるように、金属ナノ粒子を主とする接合材料を用いて2つの部材を接合する方法やその接合体が知られている。この接合方法においては、平均直径100nm以下の金属微粒子の周囲を有機保護膜で被覆してなる金属ナノ粒子を接合材料の主成分とし、2つの部材の接合部間に接合材料を介在させた状態で、加熱・焼成して接合する。
【0003】
しかしながら、この接合方法では、2つの部材を大面積で接合する場合、金属ナノ粒子の有機保護膜やペースト化するための有機溶媒を揮発させることが接合面の中央付近では難しく、その結果、炭化物が接合層に残存し、接合部の強度劣化や電気的特性、熱的特性の劣化を招くという問題がある。すなわち、従来のはんだやろう付けに比べ、大面積の接合には不向きであった。
【0004】
これに対し、例えば特許文献2、3には、金属ナノ粒子を主とする接合材料を用いながらも、大面積の接合に有利な接合方法が提案されている。特許文献2においては、部材の接合部の表面に、接合部の端部まで至る凹部を設けている。そして、接合材料が入り込んだ凹部、又は、空洞とされた凹部を有機成分の揮発経路とすることで、接合材料中の有機成分を揮発させやすくし、炭化物の残存を低減するようにしている。また、特許文献3においては、接合する2つの部材間に多孔質金属層を介在させ、多孔質金属層と部材の接合部との間に接合材料を配置することで、多孔質金属層を通して接合材料中の有機成分を揮発させやすくし、炭化物の残存を低減するようにしている。
【特許文献1】特開2004−128357号公報
【特許文献2】特開2006−202586号公報
【特許文献3】特開2006−202944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に示される接合方法の場合、凹部を必要としない接合方法に比べ、2つの部材の接合部の少なくとも一方に凹部を形成する工程が新たに必要となるため、製造コストが増加する。
【0006】
また、特許文献3に示される接合方法の場合、2つの部材の接合部間に、接合材料とは別の新たな部材(多孔質金属層)を介在させる必要があるので、製造コストが増加する。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑み、大面積の接合に有利で、且つ、製造コストの増加を抑制できる接合方法及び接合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する為に請求項1に記載の発明は、第1部材における金属からなる第1接合部と、第2部材における金属からなる第2接合部との間に、金属ナノ粒子を有機溶媒中に分散してなる金属ペーストを介在させ、該金属ペーストを少なくとも加熱して金属ナノ粒子を焼結し、内部に空孔を有する接合部材として第1接合部と第2接合部を接合する接合方法であって、金属ペーストの構成条件及び金属ナノ粒子の焼結条件の少なくとも1つを調整することで、第1接合部と第2接合部との間に、空孔の占める割合である空孔率が互いに異なる複数種類の接合層を、隣接する接合層で空孔率が互いに異なるように積層形成して接合部材とすることを特徴とする。
【0009】
このように本発明においては、金属ペースト中の有機成分を揮発させつつ金属ナノ粒子を焼結する際に、金属ペーストの構成条件及び金属ナノ粒子の焼結条件の少なくとも1つを調整することで、空孔率が互いに異なる複数種類の接合層を形成する。また、この接合層を、隣接する接合層で空孔率が互いに異なるように形成することで、内部に空孔を有し、第1接合部と第2接合部を接合する接合部材とする。したがって、互いに隣接する2つの接合層において、空孔率が小さく、有機成分が揮発しにくい接合層を形成するに際に、隣接する空孔率の大きい接合層(の空孔)を、有機成分の揮発経路として利用することができる。すなわち、大面積の接合であっても、各接合層において有機成分の残存が生じにくく、接合部の強度劣化や電気的特性、熱的特性の劣化を抑制することができる。なお、空孔率とは、接合層における空孔の占める割合であり、具体的には接合層の断面において空孔の占める割合を複数断面で平均した値である。
【0010】
また、本発明では、従来からある接合工程(金属ペーストの配置と加熱による金属ナノ粒子の焼結)を工夫することで、有機成分の残存を生じにくくする。したがって、大面積の接合に有利でありながら、従来のように、接合工程とは別に凹部を形成する工程を新たに必要とする場合や、接合部材とは別の新たな部材(多孔質金属層)を介在させる場合に比べて、製造コストの増加を抑制することができる。
【0011】
なお、有機成分の揮発経路として利用することができる空孔率の大きい接合層だけで接合部材を構成しても、有機成分の残存を生じにくくすることができる。しかしながら、このような構成とすると、接合部材全体での空孔率が大きくなり、例えば電気的、熱的特性が劣化することとなる。これに対し、本発明によれば、空孔率が互いに異なる複数種類の接合層によって接合部材を構成するので、有機成分の残存を生じにくくしつつ、電気的特性、熱的特性の劣化を抑制することができる。
【0012】
請求項2に記載のように、金属ペーストの配置及び金属ナノ粒子の焼結を、金属ペーストの構成条件及び金属ナノ粒子の焼結条件の少なくとも1つを変えて複数回実行し、第1部材と第2部材の積層方向において、焼結回数に応じて接合層を多層に形成しても良い。
【0013】
このように、金属ペーストの構成条件及び金属ナノ粒子の焼結条件の少なくとも1つを変えながら金属ペーストの配置及び金属ナノ粒子の焼結を複数回実行することにより、第1部材と第2部材の積層方向に接合層が多層に積層された接合部材を形成することもできる。また、積層方向の厚さが同じであれば、接合層1層辺りの厚さが薄くなるので、有機成分を揮発しやすくし、有機成分の残存をより生じにくくすることができる。
【0014】
例えば請求項3に記載のように、第1接合部及び第2接合部の少なくとも一方に隣接して接合層を形成し、形成された接合層に隣接して、接合層よりも空孔率の小さい接合層を積層形成しても良い。
【0015】
このように、先に空孔率の大きい接合層を形成し、形成した接合層上に該接合層よりも空孔率の小さい接合層を形成する場合、空孔率の大きい接合層の形成においては、自身の空孔を利用して、有機成分を揮発させることができる。また、焼結時に加圧しない場合には、接合部との接触面を除く外周面から有機成分を揮発させることができる。空孔率の小さい接合層を形成する際には、少なくとも、自身の空孔とともに、先に形成した空孔率の大きい接合層(の空孔)を有機成分の揮発経路として利用することができる。また、焼結時に加圧せず、且つ、接合部と接触しない場合には、空孔率の大きい接合層との接触面を除く外周面から有機成分を揮発させることもできる。したがって、各接合層において有機成分の残存を生じにくくすることができる。
【0016】
また、請求項4に記載のように、第1接合部及び第2接合部の少なくとも一方に隣接して接合層を形成し、形成された接合層に隣接して、接合層よりも空孔率の大きい接合層を積層形成しても良い。
【0017】
このように、先に空孔率の小さい接合層を形成し、形成した接合層上に該接合層よりも空孔率の大きい接合層を形成する場合、空孔率の小さい接合層の形成で有機成分が残存しても、空孔率の大きい接合層を形成する際に、空孔率の大きい接合層(の空孔)を有機成分の揮発経路として利用することができる。なお、焼結時に加圧しない場合には、接合部との接触面を除く外周面から有機成分を揮発させることができる。空孔率の大きい接合層を形成する際には、少なくとも自身の空孔を有機成分の揮発経路として利用することができる。特に焼結時に加圧せず、且つ、接合部と接触しない場合には、空孔率の小さい接合層との接触面を除く外周面から有機成分を揮発させることもできる。したがって、各接合層において有機成分の残存を生じにくくすることができる。
【0018】
請求項2〜4いずれか1項に記載の発明においては、請求項5に記載のように、積層方向に垂直な方向において、空孔率の最も大きい接合層が、接合部材における第1接合部及び第2接合部との接触面を除く外周面の一部となるように、複数種類の接合層を形成(並設)し、積層方向において、並設された複数種類の接合層に隣接して、複数種類の接合層とは空孔率の異なるベタ状の接合層を形成しても良い。
【0019】
このように、積層方向において多層構造の接合部材を構成する少なくとも1層を、積層方向に垂直な方向において、複数種類の接合層が並設(積層)された並設層としても良い。この並設層を形成する際、空孔率の最も大きい接合層が、接合部材における第1接合部及び第2接合部との接触面を除く外周面の一部となるようにすると、空孔率の最も大きい接合層(の空孔)を有機成分の揮発経路として利用することができる。
【0020】
また、並設層を形成後、並設層に隣接して、積層方向にベタ状の接合層を形成するので、並設層の形成が、最後の接合層を形成する工程(第1接合部と第2接合部を接合する工程)とならない。したがって、並設層を構成する接合層ごとに形成しても、第1接合部と第2接合部との間の接合強度を確保することができる。
【0021】
また、請求項1〜4いずれか1項に記載の発明においては、請求項6に記載のように、金属ペーストの構成条件及び金属ナノ粒子の焼結条件の少なくとも1つを部分的に変えることにより、第1部材と第2部材の積層方向に垂直な方向において、空孔率の最も大きい接合層が、接合部材における第1接合部及び第2接合部との接触面を除く外周面の一部となるように、複数種類の接合層を同時に形成(並設)しても良い。
【0022】
このように、金属ペーストの構成条件及び金属ナノ粒子の焼結条件の少なくとも1つを部分的に変えることで、並設層を構成する複数種類の接合層を同時に形成することもできる。したがって、並設層の形成を、最後の接合層を形成する工程(第1接合部と第2接合部を接合する工程)としても、第1接合部と第2接合部との間の接合強度を確保することができる。
【0023】
請求項1〜6いずれか1項に記載の発明においては、請求項7に記載のように、金属ナノ粒子の焼結条件として、金属ペーストの加熱温度及び加熱時間の少なくとも一方を含んでも良い。加熱温度が高いと金属ナノ粒子がしっかりと焼結されて空孔率が小さくなり、加熱温度が低いと一部の金属ナノ粒子が粒子状のまま残り、空孔率が大きくなる。また、加熱時間が長いと金属ナノ粒子がしっかりと焼結されて空孔率が小さくなり、加熱時間が短いと一部の金属ナノ粒子が粒子状のまま残り、空孔率が大きくなる。
【0024】
また、請求項8に記載のように、金属ナノ粒子の焼結条件として、外部から金属ペーストに印加する圧力を含んでも良い。印加圧力が高いと金属ペースト中の金属ナノ粒子の密度が高まって空孔率が小さくなり、印加圧力が低いと金属ペースト中の金属ナノ粒子の密度が低くなって空孔率が大きくなる。
【0025】
また、請求項9に記載のように、金属ナノ粒子の焼結条件として、外部から金属ペーストに印加する超音波振動のエネルギーの大きさを含んでも良い。超音波振動を加えることで、金属ペースト中の金属ナノ粒子が均等に詰まった密な状態となる。すなわち、印加する超音波振動のエネルギーを大きくすると、金属ペースト中の金属ナノ粒子の密度が高まって空孔率が小さくなり、印加する超音波振動のエネルギーを小さくすること、金属ペースト中の金属ナノ粒子の密度が低くなって空孔率が大きくなる。
【0026】
請求項10に記載のように、金属ペーストの構成条件として、金属ナノ粒子の平均粒径を含んでも良い。金属ナノ粒子には、粒子径が小さいほど焼結温度が低くなり、粒子径が大きいほど焼結温度が高くなるという性質がある。また、金属ナノ粒子の粒子径にはばらつきがあるため、このばらつきにより粒子径の大きい一部の粒子が焼結されずに残ると、その結果空孔が大きくなる。したがって、平均粒径が大きいと、焼結されずに残る粒子径が大きいので空孔率が大きくなり、平均粒径が小さいと、焼結されずに残る粒子径が小さいので空孔率が小さくなる。また、異なる平均粒径の接合層を同時に同じ焼結条件で形成する場合には、平均粒径の大きいものの方が、焼結されずに残る金属ナノ粒子の比率が大きいので、これによっても空孔率を大きくすることができる。
【0027】
請求項11に記載のように、金属ペーストの構成条件として、金属ナノ粒子と有機溶媒との混合比を含んでも良い。金属ペースト中の金属ナノ粒子の比率を高めると、金属ナノ粒子の密度が高まって空孔率が小さくなり、金属ナノ粒子の比率を低くすると、金属ナノ粒子の密度が低くなって空孔率が大きくなる。
【0028】
請求項12に記載のように、金属ペーストの構成条件として、金属ナノ粒子よりも大きい金属部材の混入量を含んでも良い。このような金属部材の混入量が多いほど、接合層中において、金属ナノ粒子の焼結体が配置されない部分が増え、空孔も増える(空孔率が大きくなる)こととなる。また、金属部材の混入量が少ないほど、接合層中において、金属ナノ粒子の焼結体が配置されない部分が減り、空孔も減少する(空孔率が小さくなる)こととなる。
【0029】
請求項13に記載の発明は、その作用効果が請求項1に記載の発明の作用効果と同様であるので、その記載を省略する。
【0030】
請求項14に記載の発明は、その作用効果が請求項2に記載の発明の作用効果と同様であるので、その記載を省略する。
【0031】
請求項15に記載の発明は、その作用効果がそれぞれ請求項3又は請求項4に記載の発明の作用効果と同様であるので、その記載を省略する。
【0032】
請求項16に記載のように、接合部材を、接合層が、第1接合部と第2接合部の一方から他方に向けて、空孔率が小さい順、又は、空孔率が大きい順に多層に積層されてなる構成としても良い。これによれば、各接合層間での空孔率の差に基づいて生じる応力を低減
することができる。
【0033】
請求項17に記載のように、接合部材を、第1接合部に隣接する接合層と、第2接合部に隣接する接合層との間に、2つの接合層よりも空孔率の大きい接合層が介在された3層構造としても良い。これによれば、接合部材と接合部との接触面積が大きくなり、接合強度を向上することができる。
【0034】
請求項18に記載の発明は、その作用効果が請求項5又は請求項6に記載の発明の作用効果と同様であるので、その記載を省略する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る接合体の概略構成を示す断面図である。図1に示すように、接合体100は、2つの部材110、120を、接合部材130を用いて接合してなるものである。2つの部材110、120としては、金属からなる接合部材130との接合部111、121をそれぞれ有するものであれば採用することができる。
【0036】
本実施形態においては、第1部材110として、金属製の基板(例えばCu基板)を採用しており、基板表面の一部が、接合部材130との接合部111(特許請求の範囲に記載の第1接合部に相当)となっている。また、第2部材120として、シリコン基板を用いて構成された半導体素子を採用しており、スパッタ、蒸着、メッキ等によって基板表面の一部に形成された導体膜が、接合部材130との接合部121(特許請求の範囲に記載の第2接合部に相当)となっている。なお、第1部材110及び第2部材120は、ともに平面矩形状とされ、第1部材110の平面内に第2部材120の平面が内包されるように、第1部材110と第2部材120が積層されている。また、平面矩形状の第2部材120の一面全面が接合部121となっている。
【0037】
接合部材130は、内部に空孔を有する金属ナノ粒子の焼結体であり、後述するように、金属ナノ粒子を有機溶媒中に分散してなる金属ペーストを少なくとも加熱することで形成されたものである。この接合部材130は、第1部材110の接合部111及び第2部材120の接合部121とそれぞれ接合されており、第1部材110と第2部材120を機械的に接続するとともに電気的、熱的にも接続している。本実施形態においては、接合部材130が、第1部材110と第2部材120の積層方向(以下、単に積層方向と示す)において、空孔率が異なる2種類の接合層131、132を、第1部材110側から接合層131、接合層132の順に積層してなる2層構造となっている。なお、接合部材130(各接合層131、132)も平面矩形状となっており、接合部121とほぼ一致している。
【0038】
詳しくは、接合部材130を構成する2種類の接合層131、132は、厚さのほぼ等しいAgナノ粒子の焼結体として構成されている。そして、第1部材110の接合部111と隣接する接合層131(以下、第1接合層131と示す)のほうが、第2部材120の接合部121と隣接する接合層132(以下、第2接合層132と示す)よりも、空孔率が大きくなっている。なお、空孔率とは、各接合層131、132における空孔の占める割合であり、具体的には接合層131、132の任意断面において空孔の占める割合を、複数断面で平均した値である。
【0039】
次に、上述した接合体100を構成する方法、すなわち、第1部材110と第2部材120との接合方法について説明する。図2は、図1に示す接合体の形成方法(接合方法)の一例を示す工程別の断面図であり、(a)は第1接合層の形成時、(b)は第1接合層の形成後、(c)は第2接合層の形成時、(d)は第2接合層の形成後を示している。
【0040】
本実施形態においては、金属ペーストの構成条件及び金属ナノ粒子の焼結条件を制御することで、各接合層131、132の空孔率が異なるようにする。空孔率を制御可能な金属ペーストの構成条件としては、例えば金属ナノ粒子の平均粒径がある。金属ナノ粒子には、粒子径が小さいほど焼結温度が低くなり、粒子径が大きいほど焼結温度が高くなるという性質がある。また、金属ナノ粒子の粒子径にはばらつきがあるため、ばらつきの範囲内で粒子径の大きい一部の粒子が焼結されずに残ると、その結果空孔が大きくなる。したがって、平均粒径が大きいと、焼結されずに残る粒子径が大きいので空孔率が大きくなり、平均粒径が小さいと、焼結されずに残る粒子径が小さいので空孔率が小さくなる。また、異なる平均粒径の接合層を同時に同じ焼結条件で形成する場合には、平均粒径の大きいものの方が、焼結されずに残る金属ナノ粒子の比率が大きいので、これによっても空孔率を大きくすることができる。
【0041】
また、金属ナノ粒子の平均粒径以外にも、金属ナノ粒子と有機溶媒との混合比や金属ナノ粒子よりも大きい金属部材の混入量がある。金属ペースト中の金属ナノ粒子の比率(有機溶媒に対する)を高めると、金属ナノ粒子の密度が高まって空孔率が小さくなり、金属ナノ粒子の比率を低くすると、金属ナノ粒子の密度が低くなって空孔率が大きくなる。また、金属ペースト(有機溶媒)中に、金属ナノ粒子とは別に、焼結条件で揮発しない金属ナノ粒子よりも大きい金属部材(例えば、鱗片形状や繊維形状の金属部材)を混入させると、この金属部材がスペーサとして機能する。したがって、混入量が多いほど、接合層中において、金属ナノ粒子の焼結体が配置されない部分が増え、空孔も増える(空孔率が大きくなる)こととなる。また、金属部材の混入量が少ないほど、接合層中において、金属ナノ粒子の焼結体が配置されない部分が減り、空孔も減少する(空孔率が小さくなる)こととなる。
【0042】
空孔率を制御可能な金属ナノ粒子の焼結条件としては、例えば金属ペーストの加熱温度及び加熱時間の少なくとも一方がある。加熱温度が高いと金属ナノ粒子がしっかりと焼結されて空孔率が小さくなり、加熱温度が低いと一部の金属ナノ粒子が粒子状のまま残り、空孔率が大きくなる。また、加熱時間が長いと金属ナノ粒子がしっかりと焼結されて空孔率が小さくなり、加熱時間が短いと一部の金属ナノ粒子が粒子状のまま残り、空孔率が大きくなる。
【0043】
また、金属ペーストの加熱温度及び加熱時間の少なくとも一方以外にも、外部から金属ペーストに印加する圧力、外部から金属ペーストに印加する超音波振動のエネルギーの大きさがある。印加圧力が高いと金属ペースト中の金属ナノ粒子の密度が高まって空孔率が小さくなり、印加圧力が低いと金属ペースト中の金属ナノ粒子の密度が低くなって空孔率が大きくなる。また、超音波振動を加えることで、金属ペースト中の金属ナノ粒子が均等に詰まった密な状態となる。すなわち、印加する超音波振動のエネルギーを大きくすると、金属ペースト中の金属ナノ粒子の密度が高まって空孔率が小さくなり、印加する超音波振動のエネルギーを小さくすること、金属ペースト中の金属ナノ粒子の密度が低くなって空孔率が大きくなる。
【0044】
このように、本実施形態においては、金属ペーストを構成する金属ナノ粒子の平均粒径、金属ナノ粒子と有機溶媒の混合比、他部材の混入量、金属ペーストの加熱温度、加熱時間、印加圧力、振動エネルギーの少なくとも1つを調整することで、各接合層131、132の空孔率に差をつけるようにする。
【0045】
具体的には、先ず、第1部材110としての基板(Cu基板)、第2部材120としての半導体素子、及び接合部材130(各接合層131、132)を形成するための金属ペースト(本実施形態においては、Agペースト)を準備する。ここで、金属ペーストとは、周囲が有機保護膜でコーティングされたナノレベル(例えば粒径が100nm以下)の金属粒子(金属ナノ粒子)を、有機溶媒中に分散させたペースト状のものである。この金属ペーストを少なくとも加熱すると、所定温度で有機保護膜や有機溶媒などの有機成分が分解されて揮発し、これにより金属ナノ粒子表面が露出されて金属ナノ粒子が互いに焼結する。金属ナノ粒子の場合、この焼結を比較的に低温で実施することができる。このように、有機成分を揮発させることで、金属ナノ粒子を焼結させ、ひいては接着剤として機能させることができる。
【0046】
次に、準備した金属ペーストを第1部材110の接合部111上に塗布し、金属ペースト層133を形成する。金属ペーストの塗布には、スクリーン印刷、ディスペンサ、インクジェット等による塗布を採用することができる。本実施形態においては、スクリーン印刷法を採用して、厚さがほぼ一定の金属ペースト層133を形成する。そして、接合部111上に積層された金属ペースト層133を少なくとも加熱し、金属ペースト中の有機成分を揮発させつつ金属ナノ粒子同士を焼結させて、図2(b)に示すように、金属ナノ粒子の焼結体であり、内部に空孔を有する第1接合層131を形成する。この時点で、接合部材130を構成する第1接合層131と、第1部材110の接合部111とが接合状態となる。第1接合層131に形成においては、加熱後の状態で有機成分が残存せず、第2接合層132よりも空孔率が大きくなるように、金属ペーストの構成条件及び金属ナノ粒子の焼結条件を調整する。
【0047】
詳しくは、図2(a)に矢印で示すように、金属ペースト層133を、接合部111との接触面の裏面側から第1部材110側に向けて加圧しつつ加熱する。この加熱により、金属ペースト層133において、有機成分の飛びやすい外表面から焼結が始まる。金属ペースト層133の内部の有機成分は、先に焼結された外表面側の部位の空孔を介して揮発される。本実施形態においては、図2(a)に白抜き矢印で示すように、金属ペースト層133の外表面のうち、接合部111との接触面及び加圧しつつ加熱する冶具が当接される面を除く面(端面)から有機成分が揮発される。この有機成分の揮発に際し、第1接合層131は空孔率が大きいので、自身の空孔を介して有機成分を効率よく揮発させることができる。また、接合部材130を2層構造としており、第1接合層131に対応する金属ペースト層133の厚さが1層構造に比べて薄いので、有機成分を揮発させやすい。したがって、図2(b)に示す第1接合層131においては、有機成分の残存が抑制される。
【0048】
第1接合層131の形成後、第2接合層132を形成するための金属ペーストを第1接合層131上(第1接合層131における接合部111との接触面の裏面上)に塗布して、金属ペースト層134を形成する。金属ペースト層134は金属ペースト層133と同様の手法によって形成する。そして、図2(c)に示すように、金属ペースト層134上(金属ペースト層134における第1接合層131との接触面の裏面上)に、接合部121が当接するように第2部材120を積層配置し、この積層体を少なくとも加熱する。これにより、金属ペースト中の有機成分を揮発させつつ金属ナノ粒子同士を焼結させて、図2(d)に示すように、金属ナノ粒子の焼結体であり、内部に空孔を有する第2接合層132が形成される。この時点で、接合部材130を構成する第2接合層132と第1接合層131が接合され、第2接合層132と第2部材120の接合部121が接合される。すなわち、接合体100が完成する。第2接合層132に形成においては、第1接合層131よりも空孔率が小さくなるように、金属ペーストの構成条件及び金属ナノ粒子の焼結条件を調整する。
【0049】
詳しくは、図2(c)に矢印で示すように、第2部材120側から第1部材110側に向けて加圧しつつ加熱する。この加熱により、金属ペースト層134において、有機成分の飛びやすい外表面から焼結が始まる。金属ペースト層134の内部の有機成分は、先に焼結された外表面側の部位の空孔を介して、金属ペースト層134の外表面のうち、第1接合層131との接触面及び第2部材120の接合部121との接触面を除く面(端面)から揮発される。この揮発に際し、第2接合層132は空孔率が第1接合層131よりも小さいので、自身の空孔を介して有機成分を揮発させる能力は、第1接合層131よりも劣っている。しかしながら、接合部材130を2層構造としており、第2接合層132に対応する金属ペースト層134の厚さが1層構造に比べて薄いので、この点で有機成分を揮発させやすくなっている。また、金属ペースト層134において先に焼結された外表面側の部位の空孔と、金属ペースト層134に隣接する空孔率の大きい第1接合層131の空孔を介して、第1接合層131の端面からも有機成分を揮発させることができる。このように、本実施形態においては、先に形成した空孔率の大きい第1接合層131を有機成分の揮発経路として利用するので、第1接合層131よりも空孔率の小さい第2接合層132を、内部に有機成分を残存させずに形成することができる。
【0050】
なお、本実施形態においては、金属ナノ粒子(Agナノ粒子)の平均粒径を10nm以下、金属ペースト中に含まれる有機溶媒の含有率を10wt%以下、焼結時の温度を280℃以上、加熱時間(最高温度保持時間)を100秒以上、印加圧力を2.5MPa以上、印加する超音波振動のエネルギーを16kHz以上とすることで、第1接合層131よりも空孔率の小さい第2接合層132を形成している。また、第2接合層132の形成条件に対し、少なくとも1つの条件を満たさないようにする(例えば金属ナノ粒子の平均粒径を10nmよりも大きくする)ことで、第2接合層132よりも空孔率の大きい第1接合層131を形成している。
【0051】
このように本実施形態によれば、先に空孔率の大きい第1接合層131を形成した後に、第1接合層131上に該接合層131よりも空孔率の小さい第2接合層132を形成することで、接合体100を得るようにしている。第1接合層131の形成においては、自身の空孔を利用して、有機成分を揮発させることができる。また、空孔率の小さい第2接合層132を形成する際には、少なくとも、自身の空孔とともに、先に形成した第1接合層131(の空孔)を有機成分の揮発経路として利用することができる。したがって、各接合層131、132において有機成分の残存を生じにくくすることができる。すなわち、大面積の接合であっても、各接合層131、132において有機成分の残存が生じにくく、接合部の強度劣化や電気的特性、熱的特性の劣化を抑制することができる。
【0052】
また、金属ペーストの構成条件及び金属ナノ粒子の焼結条件の少なくとも1つを変えながら金属ペーストの配置及び金属ナノ粒子の焼結を2回実行することにより、第1部材110と第2部材120の積層方向に接合層131、132が積層された接合部材130を形成するようにしている。したがって、積層方向において接合部材130の厚さが同じであれば、接合層1層辺りの厚さが薄くすることができるので、これによっても有機成分を揮発しやすくし、有機成分の残存をより生じにくくすることができる。
【0053】
また、金属ペーストの構成条件及び金属ナノ粒子の焼結条件の少なくとも1つを調整することで、各接合層131、132において空孔率に差をつけるようにしている。すなわち、従来からある接合工程(金属ペーストの配置と加熱による金属ナノ粒子の焼結)を工夫することで、有機成分の残存を生じにくくしている。したがって、大面積の接合に有利でありながら、従来のように、接合工程とは別に凹部を形成する工程を新たに必要とする場合や、接合部材130とは別の新たな部材(多孔質金属層)を介在させる場合に比べて、製造コストの増加を抑制することができる。
【0054】
また、空孔率が互いに異なる2つの接合層131、132によって接合部材130を構成するので、2つの接合層131、132の一方のみによって接合部材130を構成する場合に比べて、有機成分の残存を生じにくくしつつ、電気的特性、熱的特性の劣化を抑制することができる。
【0055】
なお、本実施形態においては、第1接合層131を、第1部材110である基板の接合部111上に形成する例を示した。しかしながら、第1接合層131を、第2部材120の接合部121上に形成し、形成された第1接合層131上に、金属ペースト層134(第2接合層132)、第1部材110の順に積層配置しても良い。
【0056】
また、本実施形態においては、第1接合層131の形成時において、金属ペースト層133に冶具が当接されて、加圧・加熱される例を示した。しかしながら、金属ペースト層133の接合部111との接触面の裏面に、加圧や加熱の冶具を接触させない場合には、金属ペースト層133における接合部111との接触面を除く面、すなわち金属ペースト層133におけるより広い外表面から、有機成分を揮発させることができる。
【0057】
また、本実施形態においては、第1接合層131と第2接合層132の厚さがほぼ等しい例を示した。しかしながら、互いに異なる厚さとしても良い。例えば、接合部材130の厚さを変えずに、第1接合層131よりも第2接合層132を厚くする(第2接合層132の占める比率を大きくする)ことで、電気的、熱的な特性を向上するようにしても良い。
【0058】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態に係る接合体の概略構成を示す断面図である。図4は、図3に示す接合体の形成方法(接合方法)の一例を示す工程別の断面図であり、(a)は第2接合層の形成時、(b)は第2接合層の形成後、(c)は第1接合層の形成時、(d)は第1接合層の形成後を示している。なお、上述した構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付与するものとする。
【0059】
本実施形態においては、第1部材110と第2部材120の積層方向に、2つの接合層131、132を積層して接合部材130とする構成において、先に空孔率の小さい第2接合層132を形成し、その後に第2接合層132よりも空孔率の大きい第1接合層131を形成する点を特徴とする。これにより、図3に示すように、第2接合層132が第1部材110に隣接形成され、第1接合層131が第2部材120に隣接形成された接合体100となっている。それ以外の点は、第1実施形態と同様である。
【0060】
第1実施形態同様、先ず、第1部材110としての基板(Cu基板)、第2部材120としての半導体素子、及び接合部材130(各接合層131、132)を形成するための金属ペースト(本実施形態においては、Agペースト)を準備する。次に、準備した金属ペーストを第1部材110の接合部111上に塗布し、第2接合層132を形成すべく金属ペースト層134を形成する。そして、接合部111上に積層された金属ペースト層134を少なくとも加熱し、金属ペースト中の有機成分を揮発させつつ金属ナノ粒子同士を焼結させて、図4(b)に示すように、金属ナノ粒子の焼結体であり、内部に空孔を有する第2接合層132を形成する。この時点で、接合部材130を構成する第2接合層132と第1部材110の接合部111が接合される。この第2接合層132に形成においては、第1実施形態同様、第1接合層131よりも空孔率が大きくなるように、金属ペーストの構成条件及び金属ナノ粒子の焼結条件を調整する。
【0061】
詳しくは、図4(a)に矢印で示すように、金属ペースト層134を、接合部111との接触面の裏面側から第1部材110側に向けて加圧しつつ加熱する。この加熱により、金属ペースト層134において、有機成分の飛びやすい外表面から焼結が始まる。金属ペースト層134の内部の有機成分は、先に焼結された外表面側の部位の空孔を介して揮発される。本実施形態においては、図4(a)に白抜き矢印で示すように、金属ペースト層134の外表面のうち、接合部111との接触面及び加圧しつつ加熱する冶具が当接される面を除く面(端面)から有機成分が揮発される。この有機成分の揮発に際しては、接合部材130を2層構造としており、第2接合層132に対応する金属ペースト層134の厚さが1層構造に比べて薄いので、この点で有機成分を揮発させやすくなっている。しかしながら、第2接合層132は空孔率が第1接合層131よりも小さいので、自身の空孔を介して有機成分を揮発させる能力は、第1接合層131よりも劣っている。すなわち、第2接合層132の内部に有機成分が残存することも考えられる。特に本実施形態に示すように、金属ペースト層134を加圧しつつ加熱する場合には、金属ペースト層134の外表面のうち、有機成分の揮発に寄与する露出部位が端面に限られるため、第2接合層132の内部に有機成分がより残存しやすい。
【0062】
第2接合層132の形成後、第1接合層131を形成するための金属ペーストを第2接合層132上(第2接合層132における接合部111との接触面の裏面上)に塗布して、金属ペースト層133を形成する。そして、図4(c)に示すように、金属ペースト層133上(金属ペースト層133における第2接合層132との接触面の裏面上)に、接合部121が当接するように第2部材120を積層配置し、この積層体を少なくとも加熱する。これにより、金属ペースト中の有機成分を揮発させつつ金属ナノ粒子同士を焼結させて、図4(d)に示すように、金属ナノ粒子の焼結体であり、内部に空孔を有する第1接合層131を形成する。この時点で、接合部材130を構成する第1接合層131と第2接合層132が接合され、第1接合層131と第2部材120の接合部121が接合される。すなわち、接合体100が完成する。第1接合層131に形成においては、加熱後の状態で有機成分が残存せず、第2接合層132よりも空孔率が大きくなるように、金属ペーストの構成条件及び金属ナノ粒子の焼結条件を調整する。
【0063】
詳しくは、図4(c)に矢印で示すように、第2部材120側から第1部材110側に向けて加圧しつつ加熱する。この加熱において、金属ペースト層133は、有機成分の飛びやすい外表面から焼結が始まる。金属ペースト層133の内部の有機成分は、先に焼結された外表面側の部位の空孔を介して揮発される。本実施形態においては、図4(c)に白抜き矢印で示すように、金属ペースト層133の外表面のうち、第2接合層132との接触面及び接合部121との接触面を除く面(端面)から有機成分が揮発される。この有機成分の揮発に際し、第1接合層131は空孔率が大きいので、自身の空孔を介して有機成分を効率よく揮発させることができる。また、接合部材130を2層構造としており、第1接合層131に対応する金属ペースト層133の厚さが1層構造に比べて薄いので、有機成分を揮発させやすい。したがって、図4(d)に示す第1接合層131においては、有機成分の残存が抑制される。
【0064】
また、上述したように、第2接合層132の内部に有機成分が残存していたとしても、第1接合層131の形成時において、第2接合層132の内部に残存する有機成分を、隣接する空孔率の大きい第1接合層131の空孔を介して、第1接合層131の端面から揮発させることができる。このように、本実施形態においては、後から形成する空孔率の大きい第1接合層131を有機成分の揮発経路として利用するので、第1接合層131よりも空孔率の小さい第2接合層132を、内部に有機成分を残存させずに形成することができる。
【0065】
また、本実施形態においては、第1部材110がCu基板、第2部材120が半導体素子、接合部材130が金属であり、接合部材130と第2部材120との間の方が、接合部材130と第1部材110との間よりも線膨張係数の差が大きくなっている。これに対し、図3に示すように、空孔率の大きい第1接合層131を第2部材120側に設けると、空孔率の小さい第2接合層132を第2部材120側に設ける構成よりも、線膨張係数差に基づく応力を緩和することができる。すなわち、接続信頼性を向上することができる。
【0066】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態に係る接合体の概略構成を示す断面図である。なお、上述した構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付与するものとする。
【0067】
上述した実施形態においては、接合部材130が、積層方向に2層構造とされる例を示した。しかしながら、接合部材130は、積層方向において2層構造に限定されるものではない。3層以上としても良い。3層以上の接合部材130においても、隣接する接合層の空孔率を異なるものとすればよい。積層方向に隣接する2層において、空孔率の大きい接合層を、該接合層よりも空孔率の小さい接合層を形成する際に有機成分の揮発経路として利用することで、各接合層において有機成分の残存が生じにくく、接合部の強度劣化や電気的特性、熱的特性の劣化を抑制することができる。
【0068】
一例として図5に示す接合部材130は、空孔率の小さい第2接合層132によって、第2接合層132よりも空孔率の大きい第1接合層131が挟まれた3層構造となっている。そして、各層の厚さがほぼ等しくなっている。このように、第2接合層132の厚さの和を第1接合層131の厚さよりも厚くすると、接合部材130の電気的特性及び熱的特性を向上することができる。また、各接合部111、121と隣接する接合層を、ともに空孔率の小さい第2接合層132としているので、空孔率の大きい第1接合層131と比べて、接合部111、121との接触面積が大きく、これにより機械的な接続信頼性も向上することができる。また、接合部材130の厚さが同じであれば、層数を増すほど、1層当たりの厚さを薄くすることができるので、焼結時に有機成分を揮発させやすくすることができる。
【0069】
なお、このような構成の接合体100は、上述した実施形態に示した方法によって形成することができる。例えば、第1部材110の接合部111上に、第2接合層132(下層)、第1接合層131(中層)、第2接合層132(上層)の順で形成しても良い。この場合、焼結によって第2接合層132(上層)となる金属ペースト層134上に第2部材120を積層配置し、少なくとも加熱することで、接合体100を得ることができる。また、第2部材120の接合部121上に、第2接合層132、第1接合層131、第2接合層132の順で形成しても良い。
【0070】
さらには、第1部材110の接合部111上及び第2部材120の接合部121上に、第2接合層132をそれぞれ形成しても良い。この場合、いずれか一方の第2接合層132上に、焼結によって第1接合層131となる金属ペースト層133を形成し、他方の第2接合層132を含む部材を金属ペースト層133上に積層配置する。そして積層体を少なくとも加熱することで、接合体100を得ることができる。
【0071】
なお、本実施形態においては、3層構造の例を示したが、4層以上の多層構造としても良い。その場合も、空孔率の小さい接合層を接合部111、121と隣接する接合層とすれば、機械的な接続信頼性を向上することができる。
【0072】
また、積層方向に3層以上の接合層が積層された接合体100として、例えば図6に示すように、第1部材110(接合部111)から第2部材120(接合部121)に向けて、空孔率が小さい順に接合層132、135、131が積層された構成としても良い。なお、接合層135は、第1接合層131の空孔率と第2接合層132の空孔率との間の空孔率を有する第3接合層である。すなわち、接合部材130は、第1部材110側から第2部材120に向けて空孔率が徐々に大きくなるように構成されている。このような構成とすると、各接合層間での空孔率の差に基づいて生じる応力を低減することができる。図6は、変形例を示す断面図である。なお、第1部材110(接合部111)から第2部材120(接合部121)に向けて、空孔率が大きい順に接合層が積層された構成(第1部材110側から、第1接合層131、第3接合層135、第2接合層132の順)としても、同様の効果を期待することができる。また、層数も3層に限定されるものではなく、4層以上においても、同様の効果を期待することができる。
【0073】
(第4実施形態)
図7は、第4実施形態に係る接合体の概略構成を示す図であり、(a)は断面図、(b)は接合部材の平面図である。図8は、図7に示す接合体の形成方法(接合方法)の一例を示す工程別の断面図であり、(a)は加熱時、(b)は加熱後を示している。なお、上述した構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付与するものとする。
【0074】
上述した各実施形態においては、第1部材110と第2部材120の積層方向において、空孔率の異なる接合層が積層されて、接合部材130が多層構造とされる例を示した。これに対し、本実施形態においては、第1部材110と第2部材120の積層方向に垂直な方向において、空孔率の異なる接合層が積層されて、積層方向に垂直な方向において接合部材130が多層構造とされる点を特徴とする。
【0075】
接合部材130は、図7(a)に示すように、第1部材110と第2部材120の積層方向において1層構造となっており、図7(a)、(b)に示すように、積層方向に垂直な一方向において、空孔率の大きい第1接合層131と、第1接合層131よりも空孔率の小さい第2接合層132とが積層(並設)されて多層構造となっている。詳しくは、積層方向における同一層において、第1接合層131と第2接合層132とが交互に配置されたストライプパターンとなっている。本実施形態においては、図7(a)、(b)に示すように、4層の第1接合層131と5層の第2接合層132が交互に積層されている。また、9層の各接合層131、132の大きさ(厚さ、並設方向の幅、並設方向に垂直な方向の長さ)がほぼ同一となっており、各層の一部が、接合部材130における接合部111、121との接触面を除く外周面の一部となっている。
【0076】
このような構成の接合体100は、例えば以下の手順で形成することができる。先ず、上述した実施形態同様、第1部材110、第2部材120、及び金属ペーストを準備する。そして、準備した金属ペーストを例えば第1部材110の接合部111上に部分的(選択的)に塗布し、金属ペースト層133を形成する。また、金属ペースト層133を構成する金属ペーストとは構成条件の異なる金属ペースト(例えば有機溶媒に対する金属ナノ粒子の比が大きい金属ペースト)を準備し、この金属ペーストを、金属ペースト層133の形成されない接合部111上に部分的に塗布する。そして、金属ペースト層133とほぼ同じ厚さの金属ペースト層134を形成する。これら金属ペーストの塗布には、スクリーン印刷、ディスペンサ、インクジェット等による塗布を採用することができる。本実施形態においては、ディスペンサを用いて、接合部111上に、ストライプパターンの金属ペースト層133、134を形成する。
【0077】
次に、金属ペースト層133、134上(金属ペースト層133、134における接合部111との接触面の裏面上)に、接合部121が当接するように第2部材120を積層配置し、この積層体を少なくとも加熱する。詳しくは、図8(a)に矢印で示すように、第2部材120側から第1部材110側に向けて加圧しつつ加熱する。この加熱により、各金属ペースト層133、134において、有機成分の飛びやすい外表面から焼結が始まり、内部の有機成分は、先に焼結された外表面側の部位の空孔を介して揮発される。本実施形態においては、金属ペースト層133、134の外表面のうち、接合部111との接触面及び加圧しつつ加熱する冶具が当接される面を除く面(端面)から有機成分がそれぞれ揮発される。
【0078】
この有機成分の揮発に際し、金属ペースト層133においては、焼結によって形成する第1接合層131の空孔率が大きいので、自身の空孔を介して有機成分を効率よく揮発させることができる。これに対し、金属ペースト層134においては、焼結によって形成する第2接合層132の空孔率が第1接合層131よりも小さいため、自身の空孔を介して有機成分を揮発させる能力は第1接合層131よりも劣っている。しかしながら、金属ペースト層134に隣接する空孔率の大きい第1接合層131の空孔(金属ペースト層133のうち、先に焼結された部分)を介して、第1接合層131(金属ペースト層133)の端面からも有機成分を揮発させることができる。したがって、本実施形態によれば、有機成分の残存を抑制しつつ、第1接合層131と第2接合層132を同時に形成することができる。この時点で、接合部材130を構成する第1接合層131と第2接合層132が接合されるとともに、第1接合層131及び第2接合層132と各接合部111、121が接合される。すなわち、接合体100が完成する。
【0079】
このように、本実施形態によれば、積層方向における同一層において、金属ペーストの構成条件の少なくとも1つを部分的に変えることで、空孔率の異なる接合層131、132を、隣接する層で空孔率が異なるように、同時に形成することができる。したがって、第1接合層131(の空孔)を有機成分の揮発経路として利用することができるので、大面積の接合であっても、各接合層131、132において有機成分の残存が生じにくく、接合部の強度劣化や電気的特性、熱的特性の劣化を抑制することができる。
【0080】
また、本実施形態に示したように、接合部材130を、積層方向において1層構造とする場合には、積層方向に多層とする場合よりも、接合部材130の厚さを薄くすることが可能であり、薄くした場合には電気的特性、熱的特性をより向上することもできる。
【0081】
また、並設される接合層131、132を同時に形成する。すなわち、接合層131、132が同時に接着剤としての機能を発揮することができる。したがって、接合層131、132を同時に形成する際の加熱を、接合体100を形成する際の最後の工程としても、各接合層131、132を介して、第1部材110と第2部材120とを、機械的、電気的、熱的に接続することができる。
【0082】
なお、本実施形態においては、積層方向における同一層において、金属ナノ粒子と有機溶媒の混合比を部分的に変えることで、各接合層131、132の空孔率に差をつける例を示した。しかしながら、各接合層131、132の空孔率に差をつける条件は上記例に限定されるものではない。第1実施形態に示した金属ペーストの構成条件及び金属ナノ粒子の焼結条件の少なくとも1つを部分的に変えることで、積層方向における同一層に、空孔率の異なる接合層131、132を多層に積層(並設)することができる。例えば、各接合層131、132ごとに平均粒径の異なる金属ナノ粒子を用いても良い。また、加熱温度を、同一層において部分的に異なる温度としても良い。また、同一層において印加圧力に差をつけても良い。また同一層において一部分(第2接合層132を形成する部分)に超音波振動を印加しても良い。
【0083】
また、本実施形態においては、積層方向における同一層において、第1接合層131と第2接合層132とが交互に配置されてストライプパターンとなっている例を示した。しかしながら、同一層における接合層の積層構造(並設構造)は上記例に限定されるものではない。同一層に第1接合層131と第2接合層132とが積層されて接合部材130が構成される場合、例えば図9に示すように、空孔率の大きい第1接合層131が格子状に形成され、格子間の矩形領域に第2接合層132が形成された構成としても良い。このような構造の場合、一部の第2接合層132は、その外表面が外部に露出されない。しかしながら、第1接合層131は、その外表面の一部が外部に露出されている。すなわち、焼結後の状態で、接合部材130における接合部111、121との接触面を除く外周面の一部となる。したがって、第1接合層131を有機成分の揮発経路として利用することができるので、第2接合層132における有機成分の残存を抑制することができる。また、図10に示すように、接合部材130の平面中心から放射状に第1接合層131を形成し、残りの部分を第2接合層132としても良い。この場合も、第1接合層131を有機成分の揮発経路として利用することができるので、第2接合層132における有機成分の残存を抑制することができる。すなわち、空孔率の小さい第2接合層132に有機成分が残存しないように、効率的に(分散して)第1接合層131を設けた構成とすれば良い。図9、図10は、ともに変形例を示す平面図である。
【0084】
また、本実施形態においては、接合部材130が、積層方向に1層構造である例を示した。しかしながら、積層方向において多層構造とされても良い。上述したように、積層方向の同一層を構成する各接合層を同時に形成する場合には、接合体100を形成する際の最後の工程とすることもできるので、積層方向においてどの層の形成にも適用することができる。
【0085】
また、本実施形態においては、積層方向において同一の層を構成する第1接合層131と第2接合層132を同時に形成する例を示した。しかしながら、この並設層に対して積層方向にベタ状の接合層が隣接配置される場合には、異なるタイミングで形成することも可能である。例えば図11においては、接合部材130が積層方向において2層構造とされ第1部材110側の層が、空孔率の大きい第1接合層131と第1接合層131よりも空孔率の小さい第2接合層132が積層された構造となっている。また、第2部材120側の層が、第1接合層131と第2接合層132との間の空孔率を有する第3接合層135によって構成されている。このような接合部材130を形成する場合、例えば第1部材110の接合部111上に、金属ペースト層133を部分的に形成した後、少なくとも加熱して第1接合層131を形成する。この時点で、第1接合層131と接合部111が接合される。次に、接合部111上の第1接合層131を除く部分に金属ペースト層134を選択的に形成した後、少なくとも加熱して第2接合層132を形成する。この時点で、第2接合層132と接合部111が接合され、第2接合層132と第1接合層131が接合される。そして、第1接合層131及び第2接合層132上に、第3接合層135に対応する金属ペースト層を形成し、この金属ペースト層上に第2部材120を積層した状態で少なくとも加熱して第3接合層135を形成する。この時点で、接合部材130を構成する第3接合層135と、第1接合層131及び第2接合層132が接合され、第3接合層135と第2部材120の接合部121が接合される。すなわち、接合体100が完成する。なお、各接合層131、132、135の形成においては、金属ペーストの構成条件及び金属ナノ粒子の焼結条件を調整することで、空孔率に差をもたせている。このように、並設層に対して積層方向にベタ状の接合層が隣接配置される場合には、並設層を構成する各接合層を異なるタイミングで形成することも可能である。図11は、変形例を示す断面図である。
【0086】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0087】
本実施形態においては、第1部材110がCu基板であり、第2部材120が半導体素子である例を示した。しかしながら、各部材110、120は上記例に限定されるものではない。例えば図12に示すように、第1部材110として、絶縁基板112(例えば窒化アルミニウムや窒化珪素等のセラミックス)の表面に、例えばアルミニウム、銅、金などを蒸着、スパッタ、メッキして金属膜を形成し、この金属膜の少なくとも一部を接合部111としたものを採用しても良い。これにより、接合体100において、第2部材120の絶縁性を確保することもできる。図12は、その他変形例を示す断面図である。
【0088】
上述した実施形態において、第1部材110と第2部材120の積層方向に接合部材130が多層構造の場合、1層ごとに金属ペースト層の形成と焼結を実施する例を示した。しかしながら、例えば第1部材110の接合部111上に、金属ペースト層133を形成後、焼結しない程度の低温で金属ペースト層133を加熱し、金属ペースト層133の皮膜強度を積層可能な程度としておく。そして、皮膜強度の確保された金属ペースト層133上に金属ペースト層134を積層形成し、さらに金属ペースト層134上に第2部材120を積層した状態で、焼結すべく少なくとも加熱を実施する。これにより、金属ペースト層133、134をほぼ同時に焼結(同じ加熱タイミングで焼結)して、第1接合層131と第2接合層132を形成することもできる。このように、積層方向に接合部材130が多層であっても、各接合層を同時に(同じ加熱タイミングで)形成することも可能である。ただし、それぞれの接合層を形成する金属ペースト層から同時に有機成分を揮発させることとなるので、上述したように、1層ごとに金属ペースト層の形成と焼結を実施するほうが、有機成分の残存を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の第1実施形態に係る接合体の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1に示す接合体の形成方法(接合方法)の一例を示す工程別の断面図であり、(a)は第1接合層の形成時、(b)は第1接合層の形成後、(c)は第2接合層の形成時、(d)は第2接合層の形成後を示している。
【図3】第2実施形態に係る接合体の概略構成を示す断面図である。
【図4】図3に示す接合体の形成方法(接合方法)の一例を示す工程別の断面図であり、(a)は第2接合層の形成時、(b)は第2接合層の形成後、(c)は第1接合層の形成時、(d)は第1接合層の形成後を示している。
【図5】第3実施形態に係る接合体の概略構成を示す断面図である。
【図6】変形例を示す断面図である。
【図7】第4実施形態に係る接合体の概略構成を示す図であり、(a)は断面図、(b)は接合部材の平面図である。
【図8】図7に示す接合体の形成方法(接合方法)の一例を示す工程別の断面図であり、(a)は加熱時、(b)は加熱後を示している。
【図9】変形例を示す平面図である。
【図10】変形例を示す平面図である。
【図11】変形例を示す断面図である。
【図12】その他変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0090】
10・・・加圧冶具
100・・・接合体
110・・・第1部材
111・・・接合部(第1接合部)
120・・・第2部材
121・・・接合部(第2接合部)
130・・・接合部材
131・・・第1接合層
132・・・第2接合層
135・・・第3接合層
134、134・・・金属ペースト層
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの部材を接合する接合方法及び接合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示されるように、金属ナノ粒子を主とする接合材料を用いて2つの部材を接合する方法やその接合体が知られている。この接合方法においては、平均直径100nm以下の金属微粒子の周囲を有機保護膜で被覆してなる金属ナノ粒子を接合材料の主成分とし、2つの部材の接合部間に接合材料を介在させた状態で、加熱・焼成して接合する。
【0003】
しかしながら、この接合方法では、2つの部材を大面積で接合する場合、金属ナノ粒子の有機保護膜やペースト化するための有機溶媒を揮発させることが接合面の中央付近では難しく、その結果、炭化物が接合層に残存し、接合部の強度劣化や電気的特性、熱的特性の劣化を招くという問題がある。すなわち、従来のはんだやろう付けに比べ、大面積の接合には不向きであった。
【0004】
これに対し、例えば特許文献2、3には、金属ナノ粒子を主とする接合材料を用いながらも、大面積の接合に有利な接合方法が提案されている。特許文献2においては、部材の接合部の表面に、接合部の端部まで至る凹部を設けている。そして、接合材料が入り込んだ凹部、又は、空洞とされた凹部を有機成分の揮発経路とすることで、接合材料中の有機成分を揮発させやすくし、炭化物の残存を低減するようにしている。また、特許文献3においては、接合する2つの部材間に多孔質金属層を介在させ、多孔質金属層と部材の接合部との間に接合材料を配置することで、多孔質金属層を通して接合材料中の有機成分を揮発させやすくし、炭化物の残存を低減するようにしている。
【特許文献1】特開2004−128357号公報
【特許文献2】特開2006−202586号公報
【特許文献3】特開2006−202944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に示される接合方法の場合、凹部を必要としない接合方法に比べ、2つの部材の接合部の少なくとも一方に凹部を形成する工程が新たに必要となるため、製造コストが増加する。
【0006】
また、特許文献3に示される接合方法の場合、2つの部材の接合部間に、接合材料とは別の新たな部材(多孔質金属層)を介在させる必要があるので、製造コストが増加する。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑み、大面積の接合に有利で、且つ、製造コストの増加を抑制できる接合方法及び接合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する為に請求項1に記載の発明は、第1部材における金属からなる第1接合部と、第2部材における金属からなる第2接合部との間に、金属ナノ粒子を有機溶媒中に分散してなる金属ペーストを介在させ、該金属ペーストを少なくとも加熱して金属ナノ粒子を焼結し、内部に空孔を有する接合部材として第1接合部と第2接合部を接合する接合方法であって、金属ペーストの構成条件及び金属ナノ粒子の焼結条件の少なくとも1つを調整することで、第1接合部と第2接合部との間に、空孔の占める割合である空孔率が互いに異なる複数種類の接合層を、隣接する接合層で空孔率が互いに異なるように積層形成して接合部材とすることを特徴とする。
【0009】
このように本発明においては、金属ペースト中の有機成分を揮発させつつ金属ナノ粒子を焼結する際に、金属ペーストの構成条件及び金属ナノ粒子の焼結条件の少なくとも1つを調整することで、空孔率が互いに異なる複数種類の接合層を形成する。また、この接合層を、隣接する接合層で空孔率が互いに異なるように形成することで、内部に空孔を有し、第1接合部と第2接合部を接合する接合部材とする。したがって、互いに隣接する2つの接合層において、空孔率が小さく、有機成分が揮発しにくい接合層を形成するに際に、隣接する空孔率の大きい接合層(の空孔)を、有機成分の揮発経路として利用することができる。すなわち、大面積の接合であっても、各接合層において有機成分の残存が生じにくく、接合部の強度劣化や電気的特性、熱的特性の劣化を抑制することができる。なお、空孔率とは、接合層における空孔の占める割合であり、具体的には接合層の断面において空孔の占める割合を複数断面で平均した値である。
【0010】
また、本発明では、従来からある接合工程(金属ペーストの配置と加熱による金属ナノ粒子の焼結)を工夫することで、有機成分の残存を生じにくくする。したがって、大面積の接合に有利でありながら、従来のように、接合工程とは別に凹部を形成する工程を新たに必要とする場合や、接合部材とは別の新たな部材(多孔質金属層)を介在させる場合に比べて、製造コストの増加を抑制することができる。
【0011】
なお、有機成分の揮発経路として利用することができる空孔率の大きい接合層だけで接合部材を構成しても、有機成分の残存を生じにくくすることができる。しかしながら、このような構成とすると、接合部材全体での空孔率が大きくなり、例えば電気的、熱的特性が劣化することとなる。これに対し、本発明によれば、空孔率が互いに異なる複数種類の接合層によって接合部材を構成するので、有機成分の残存を生じにくくしつつ、電気的特性、熱的特性の劣化を抑制することができる。
【0012】
請求項2に記載のように、金属ペーストの配置及び金属ナノ粒子の焼結を、金属ペーストの構成条件及び金属ナノ粒子の焼結条件の少なくとも1つを変えて複数回実行し、第1部材と第2部材の積層方向において、焼結回数に応じて接合層を多層に形成しても良い。
【0013】
このように、金属ペーストの構成条件及び金属ナノ粒子の焼結条件の少なくとも1つを変えながら金属ペーストの配置及び金属ナノ粒子の焼結を複数回実行することにより、第1部材と第2部材の積層方向に接合層が多層に積層された接合部材を形成することもできる。また、積層方向の厚さが同じであれば、接合層1層辺りの厚さが薄くなるので、有機成分を揮発しやすくし、有機成分の残存をより生じにくくすることができる。
【0014】
例えば請求項3に記載のように、第1接合部及び第2接合部の少なくとも一方に隣接して接合層を形成し、形成された接合層に隣接して、接合層よりも空孔率の小さい接合層を積層形成しても良い。
【0015】
このように、先に空孔率の大きい接合層を形成し、形成した接合層上に該接合層よりも空孔率の小さい接合層を形成する場合、空孔率の大きい接合層の形成においては、自身の空孔を利用して、有機成分を揮発させることができる。また、焼結時に加圧しない場合には、接合部との接触面を除く外周面から有機成分を揮発させることができる。空孔率の小さい接合層を形成する際には、少なくとも、自身の空孔とともに、先に形成した空孔率の大きい接合層(の空孔)を有機成分の揮発経路として利用することができる。また、焼結時に加圧せず、且つ、接合部と接触しない場合には、空孔率の大きい接合層との接触面を除く外周面から有機成分を揮発させることもできる。したがって、各接合層において有機成分の残存を生じにくくすることができる。
【0016】
また、請求項4に記載のように、第1接合部及び第2接合部の少なくとも一方に隣接して接合層を形成し、形成された接合層に隣接して、接合層よりも空孔率の大きい接合層を積層形成しても良い。
【0017】
このように、先に空孔率の小さい接合層を形成し、形成した接合層上に該接合層よりも空孔率の大きい接合層を形成する場合、空孔率の小さい接合層の形成で有機成分が残存しても、空孔率の大きい接合層を形成する際に、空孔率の大きい接合層(の空孔)を有機成分の揮発経路として利用することができる。なお、焼結時に加圧しない場合には、接合部との接触面を除く外周面から有機成分を揮発させることができる。空孔率の大きい接合層を形成する際には、少なくとも自身の空孔を有機成分の揮発経路として利用することができる。特に焼結時に加圧せず、且つ、接合部と接触しない場合には、空孔率の小さい接合層との接触面を除く外周面から有機成分を揮発させることもできる。したがって、各接合層において有機成分の残存を生じにくくすることができる。
【0018】
請求項2〜4いずれか1項に記載の発明においては、請求項5に記載のように、積層方向に垂直な方向において、空孔率の最も大きい接合層が、接合部材における第1接合部及び第2接合部との接触面を除く外周面の一部となるように、複数種類の接合層を形成(並設)し、積層方向において、並設された複数種類の接合層に隣接して、複数種類の接合層とは空孔率の異なるベタ状の接合層を形成しても良い。
【0019】
このように、積層方向において多層構造の接合部材を構成する少なくとも1層を、積層方向に垂直な方向において、複数種類の接合層が並設(積層)された並設層としても良い。この並設層を形成する際、空孔率の最も大きい接合層が、接合部材における第1接合部及び第2接合部との接触面を除く外周面の一部となるようにすると、空孔率の最も大きい接合層(の空孔)を有機成分の揮発経路として利用することができる。
【0020】
また、並設層を形成後、並設層に隣接して、積層方向にベタ状の接合層を形成するので、並設層の形成が、最後の接合層を形成する工程(第1接合部と第2接合部を接合する工程)とならない。したがって、並設層を構成する接合層ごとに形成しても、第1接合部と第2接合部との間の接合強度を確保することができる。
【0021】
また、請求項1〜4いずれか1項に記載の発明においては、請求項6に記載のように、金属ペーストの構成条件及び金属ナノ粒子の焼結条件の少なくとも1つを部分的に変えることにより、第1部材と第2部材の積層方向に垂直な方向において、空孔率の最も大きい接合層が、接合部材における第1接合部及び第2接合部との接触面を除く外周面の一部となるように、複数種類の接合層を同時に形成(並設)しても良い。
【0022】
このように、金属ペーストの構成条件及び金属ナノ粒子の焼結条件の少なくとも1つを部分的に変えることで、並設層を構成する複数種類の接合層を同時に形成することもできる。したがって、並設層の形成を、最後の接合層を形成する工程(第1接合部と第2接合部を接合する工程)としても、第1接合部と第2接合部との間の接合強度を確保することができる。
【0023】
請求項1〜6いずれか1項に記載の発明においては、請求項7に記載のように、金属ナノ粒子の焼結条件として、金属ペーストの加熱温度及び加熱時間の少なくとも一方を含んでも良い。加熱温度が高いと金属ナノ粒子がしっかりと焼結されて空孔率が小さくなり、加熱温度が低いと一部の金属ナノ粒子が粒子状のまま残り、空孔率が大きくなる。また、加熱時間が長いと金属ナノ粒子がしっかりと焼結されて空孔率が小さくなり、加熱時間が短いと一部の金属ナノ粒子が粒子状のまま残り、空孔率が大きくなる。
【0024】
また、請求項8に記載のように、金属ナノ粒子の焼結条件として、外部から金属ペーストに印加する圧力を含んでも良い。印加圧力が高いと金属ペースト中の金属ナノ粒子の密度が高まって空孔率が小さくなり、印加圧力が低いと金属ペースト中の金属ナノ粒子の密度が低くなって空孔率が大きくなる。
【0025】
また、請求項9に記載のように、金属ナノ粒子の焼結条件として、外部から金属ペーストに印加する超音波振動のエネルギーの大きさを含んでも良い。超音波振動を加えることで、金属ペースト中の金属ナノ粒子が均等に詰まった密な状態となる。すなわち、印加する超音波振動のエネルギーを大きくすると、金属ペースト中の金属ナノ粒子の密度が高まって空孔率が小さくなり、印加する超音波振動のエネルギーを小さくすること、金属ペースト中の金属ナノ粒子の密度が低くなって空孔率が大きくなる。
【0026】
請求項10に記載のように、金属ペーストの構成条件として、金属ナノ粒子の平均粒径を含んでも良い。金属ナノ粒子には、粒子径が小さいほど焼結温度が低くなり、粒子径が大きいほど焼結温度が高くなるという性質がある。また、金属ナノ粒子の粒子径にはばらつきがあるため、このばらつきにより粒子径の大きい一部の粒子が焼結されずに残ると、その結果空孔が大きくなる。したがって、平均粒径が大きいと、焼結されずに残る粒子径が大きいので空孔率が大きくなり、平均粒径が小さいと、焼結されずに残る粒子径が小さいので空孔率が小さくなる。また、異なる平均粒径の接合層を同時に同じ焼結条件で形成する場合には、平均粒径の大きいものの方が、焼結されずに残る金属ナノ粒子の比率が大きいので、これによっても空孔率を大きくすることができる。
【0027】
請求項11に記載のように、金属ペーストの構成条件として、金属ナノ粒子と有機溶媒との混合比を含んでも良い。金属ペースト中の金属ナノ粒子の比率を高めると、金属ナノ粒子の密度が高まって空孔率が小さくなり、金属ナノ粒子の比率を低くすると、金属ナノ粒子の密度が低くなって空孔率が大きくなる。
【0028】
請求項12に記載のように、金属ペーストの構成条件として、金属ナノ粒子よりも大きい金属部材の混入量を含んでも良い。このような金属部材の混入量が多いほど、接合層中において、金属ナノ粒子の焼結体が配置されない部分が増え、空孔も増える(空孔率が大きくなる)こととなる。また、金属部材の混入量が少ないほど、接合層中において、金属ナノ粒子の焼結体が配置されない部分が減り、空孔も減少する(空孔率が小さくなる)こととなる。
【0029】
請求項13に記載の発明は、その作用効果が請求項1に記載の発明の作用効果と同様であるので、その記載を省略する。
【0030】
請求項14に記載の発明は、その作用効果が請求項2に記載の発明の作用効果と同様であるので、その記載を省略する。
【0031】
請求項15に記載の発明は、その作用効果がそれぞれ請求項3又は請求項4に記載の発明の作用効果と同様であるので、その記載を省略する。
【0032】
請求項16に記載のように、接合部材を、接合層が、第1接合部と第2接合部の一方から他方に向けて、空孔率が小さい順、又は、空孔率が大きい順に多層に積層されてなる構成としても良い。これによれば、各接合層間での空孔率の差に基づいて生じる応力を低減
することができる。
【0033】
請求項17に記載のように、接合部材を、第1接合部に隣接する接合層と、第2接合部に隣接する接合層との間に、2つの接合層よりも空孔率の大きい接合層が介在された3層構造としても良い。これによれば、接合部材と接合部との接触面積が大きくなり、接合強度を向上することができる。
【0034】
請求項18に記載の発明は、その作用効果が請求項5又は請求項6に記載の発明の作用効果と同様であるので、その記載を省略する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る接合体の概略構成を示す断面図である。図1に示すように、接合体100は、2つの部材110、120を、接合部材130を用いて接合してなるものである。2つの部材110、120としては、金属からなる接合部材130との接合部111、121をそれぞれ有するものであれば採用することができる。
【0036】
本実施形態においては、第1部材110として、金属製の基板(例えばCu基板)を採用しており、基板表面の一部が、接合部材130との接合部111(特許請求の範囲に記載の第1接合部に相当)となっている。また、第2部材120として、シリコン基板を用いて構成された半導体素子を採用しており、スパッタ、蒸着、メッキ等によって基板表面の一部に形成された導体膜が、接合部材130との接合部121(特許請求の範囲に記載の第2接合部に相当)となっている。なお、第1部材110及び第2部材120は、ともに平面矩形状とされ、第1部材110の平面内に第2部材120の平面が内包されるように、第1部材110と第2部材120が積層されている。また、平面矩形状の第2部材120の一面全面が接合部121となっている。
【0037】
接合部材130は、内部に空孔を有する金属ナノ粒子の焼結体であり、後述するように、金属ナノ粒子を有機溶媒中に分散してなる金属ペーストを少なくとも加熱することで形成されたものである。この接合部材130は、第1部材110の接合部111及び第2部材120の接合部121とそれぞれ接合されており、第1部材110と第2部材120を機械的に接続するとともに電気的、熱的にも接続している。本実施形態においては、接合部材130が、第1部材110と第2部材120の積層方向(以下、単に積層方向と示す)において、空孔率が異なる2種類の接合層131、132を、第1部材110側から接合層131、接合層132の順に積層してなる2層構造となっている。なお、接合部材130(各接合層131、132)も平面矩形状となっており、接合部121とほぼ一致している。
【0038】
詳しくは、接合部材130を構成する2種類の接合層131、132は、厚さのほぼ等しいAgナノ粒子の焼結体として構成されている。そして、第1部材110の接合部111と隣接する接合層131(以下、第1接合層131と示す)のほうが、第2部材120の接合部121と隣接する接合層132(以下、第2接合層132と示す)よりも、空孔率が大きくなっている。なお、空孔率とは、各接合層131、132における空孔の占める割合であり、具体的には接合層131、132の任意断面において空孔の占める割合を、複数断面で平均した値である。
【0039】
次に、上述した接合体100を構成する方法、すなわち、第1部材110と第2部材120との接合方法について説明する。図2は、図1に示す接合体の形成方法(接合方法)の一例を示す工程別の断面図であり、(a)は第1接合層の形成時、(b)は第1接合層の形成後、(c)は第2接合層の形成時、(d)は第2接合層の形成後を示している。
【0040】
本実施形態においては、金属ペーストの構成条件及び金属ナノ粒子の焼結条件を制御することで、各接合層131、132の空孔率が異なるようにする。空孔率を制御可能な金属ペーストの構成条件としては、例えば金属ナノ粒子の平均粒径がある。金属ナノ粒子には、粒子径が小さいほど焼結温度が低くなり、粒子径が大きいほど焼結温度が高くなるという性質がある。また、金属ナノ粒子の粒子径にはばらつきがあるため、ばらつきの範囲内で粒子径の大きい一部の粒子が焼結されずに残ると、その結果空孔が大きくなる。したがって、平均粒径が大きいと、焼結されずに残る粒子径が大きいので空孔率が大きくなり、平均粒径が小さいと、焼結されずに残る粒子径が小さいので空孔率が小さくなる。また、異なる平均粒径の接合層を同時に同じ焼結条件で形成する場合には、平均粒径の大きいものの方が、焼結されずに残る金属ナノ粒子の比率が大きいので、これによっても空孔率を大きくすることができる。
【0041】
また、金属ナノ粒子の平均粒径以外にも、金属ナノ粒子と有機溶媒との混合比や金属ナノ粒子よりも大きい金属部材の混入量がある。金属ペースト中の金属ナノ粒子の比率(有機溶媒に対する)を高めると、金属ナノ粒子の密度が高まって空孔率が小さくなり、金属ナノ粒子の比率を低くすると、金属ナノ粒子の密度が低くなって空孔率が大きくなる。また、金属ペースト(有機溶媒)中に、金属ナノ粒子とは別に、焼結条件で揮発しない金属ナノ粒子よりも大きい金属部材(例えば、鱗片形状や繊維形状の金属部材)を混入させると、この金属部材がスペーサとして機能する。したがって、混入量が多いほど、接合層中において、金属ナノ粒子の焼結体が配置されない部分が増え、空孔も増える(空孔率が大きくなる)こととなる。また、金属部材の混入量が少ないほど、接合層中において、金属ナノ粒子の焼結体が配置されない部分が減り、空孔も減少する(空孔率が小さくなる)こととなる。
【0042】
空孔率を制御可能な金属ナノ粒子の焼結条件としては、例えば金属ペーストの加熱温度及び加熱時間の少なくとも一方がある。加熱温度が高いと金属ナノ粒子がしっかりと焼結されて空孔率が小さくなり、加熱温度が低いと一部の金属ナノ粒子が粒子状のまま残り、空孔率が大きくなる。また、加熱時間が長いと金属ナノ粒子がしっかりと焼結されて空孔率が小さくなり、加熱時間が短いと一部の金属ナノ粒子が粒子状のまま残り、空孔率が大きくなる。
【0043】
また、金属ペーストの加熱温度及び加熱時間の少なくとも一方以外にも、外部から金属ペーストに印加する圧力、外部から金属ペーストに印加する超音波振動のエネルギーの大きさがある。印加圧力が高いと金属ペースト中の金属ナノ粒子の密度が高まって空孔率が小さくなり、印加圧力が低いと金属ペースト中の金属ナノ粒子の密度が低くなって空孔率が大きくなる。また、超音波振動を加えることで、金属ペースト中の金属ナノ粒子が均等に詰まった密な状態となる。すなわち、印加する超音波振動のエネルギーを大きくすると、金属ペースト中の金属ナノ粒子の密度が高まって空孔率が小さくなり、印加する超音波振動のエネルギーを小さくすること、金属ペースト中の金属ナノ粒子の密度が低くなって空孔率が大きくなる。
【0044】
このように、本実施形態においては、金属ペーストを構成する金属ナノ粒子の平均粒径、金属ナノ粒子と有機溶媒の混合比、他部材の混入量、金属ペーストの加熱温度、加熱時間、印加圧力、振動エネルギーの少なくとも1つを調整することで、各接合層131、132の空孔率に差をつけるようにする。
【0045】
具体的には、先ず、第1部材110としての基板(Cu基板)、第2部材120としての半導体素子、及び接合部材130(各接合層131、132)を形成するための金属ペースト(本実施形態においては、Agペースト)を準備する。ここで、金属ペーストとは、周囲が有機保護膜でコーティングされたナノレベル(例えば粒径が100nm以下)の金属粒子(金属ナノ粒子)を、有機溶媒中に分散させたペースト状のものである。この金属ペーストを少なくとも加熱すると、所定温度で有機保護膜や有機溶媒などの有機成分が分解されて揮発し、これにより金属ナノ粒子表面が露出されて金属ナノ粒子が互いに焼結する。金属ナノ粒子の場合、この焼結を比較的に低温で実施することができる。このように、有機成分を揮発させることで、金属ナノ粒子を焼結させ、ひいては接着剤として機能させることができる。
【0046】
次に、準備した金属ペーストを第1部材110の接合部111上に塗布し、金属ペースト層133を形成する。金属ペーストの塗布には、スクリーン印刷、ディスペンサ、インクジェット等による塗布を採用することができる。本実施形態においては、スクリーン印刷法を採用して、厚さがほぼ一定の金属ペースト層133を形成する。そして、接合部111上に積層された金属ペースト層133を少なくとも加熱し、金属ペースト中の有機成分を揮発させつつ金属ナノ粒子同士を焼結させて、図2(b)に示すように、金属ナノ粒子の焼結体であり、内部に空孔を有する第1接合層131を形成する。この時点で、接合部材130を構成する第1接合層131と、第1部材110の接合部111とが接合状態となる。第1接合層131に形成においては、加熱後の状態で有機成分が残存せず、第2接合層132よりも空孔率が大きくなるように、金属ペーストの構成条件及び金属ナノ粒子の焼結条件を調整する。
【0047】
詳しくは、図2(a)に矢印で示すように、金属ペースト層133を、接合部111との接触面の裏面側から第1部材110側に向けて加圧しつつ加熱する。この加熱により、金属ペースト層133において、有機成分の飛びやすい外表面から焼結が始まる。金属ペースト層133の内部の有機成分は、先に焼結された外表面側の部位の空孔を介して揮発される。本実施形態においては、図2(a)に白抜き矢印で示すように、金属ペースト層133の外表面のうち、接合部111との接触面及び加圧しつつ加熱する冶具が当接される面を除く面(端面)から有機成分が揮発される。この有機成分の揮発に際し、第1接合層131は空孔率が大きいので、自身の空孔を介して有機成分を効率よく揮発させることができる。また、接合部材130を2層構造としており、第1接合層131に対応する金属ペースト層133の厚さが1層構造に比べて薄いので、有機成分を揮発させやすい。したがって、図2(b)に示す第1接合層131においては、有機成分の残存が抑制される。
【0048】
第1接合層131の形成後、第2接合層132を形成するための金属ペーストを第1接合層131上(第1接合層131における接合部111との接触面の裏面上)に塗布して、金属ペースト層134を形成する。金属ペースト層134は金属ペースト層133と同様の手法によって形成する。そして、図2(c)に示すように、金属ペースト層134上(金属ペースト層134における第1接合層131との接触面の裏面上)に、接合部121が当接するように第2部材120を積層配置し、この積層体を少なくとも加熱する。これにより、金属ペースト中の有機成分を揮発させつつ金属ナノ粒子同士を焼結させて、図2(d)に示すように、金属ナノ粒子の焼結体であり、内部に空孔を有する第2接合層132が形成される。この時点で、接合部材130を構成する第2接合層132と第1接合層131が接合され、第2接合層132と第2部材120の接合部121が接合される。すなわち、接合体100が完成する。第2接合層132に形成においては、第1接合層131よりも空孔率が小さくなるように、金属ペーストの構成条件及び金属ナノ粒子の焼結条件を調整する。
【0049】
詳しくは、図2(c)に矢印で示すように、第2部材120側から第1部材110側に向けて加圧しつつ加熱する。この加熱により、金属ペースト層134において、有機成分の飛びやすい外表面から焼結が始まる。金属ペースト層134の内部の有機成分は、先に焼結された外表面側の部位の空孔を介して、金属ペースト層134の外表面のうち、第1接合層131との接触面及び第2部材120の接合部121との接触面を除く面(端面)から揮発される。この揮発に際し、第2接合層132は空孔率が第1接合層131よりも小さいので、自身の空孔を介して有機成分を揮発させる能力は、第1接合層131よりも劣っている。しかしながら、接合部材130を2層構造としており、第2接合層132に対応する金属ペースト層134の厚さが1層構造に比べて薄いので、この点で有機成分を揮発させやすくなっている。また、金属ペースト層134において先に焼結された外表面側の部位の空孔と、金属ペースト層134に隣接する空孔率の大きい第1接合層131の空孔を介して、第1接合層131の端面からも有機成分を揮発させることができる。このように、本実施形態においては、先に形成した空孔率の大きい第1接合層131を有機成分の揮発経路として利用するので、第1接合層131よりも空孔率の小さい第2接合層132を、内部に有機成分を残存させずに形成することができる。
【0050】
なお、本実施形態においては、金属ナノ粒子(Agナノ粒子)の平均粒径を10nm以下、金属ペースト中に含まれる有機溶媒の含有率を10wt%以下、焼結時の温度を280℃以上、加熱時間(最高温度保持時間)を100秒以上、印加圧力を2.5MPa以上、印加する超音波振動のエネルギーを16kHz以上とすることで、第1接合層131よりも空孔率の小さい第2接合層132を形成している。また、第2接合層132の形成条件に対し、少なくとも1つの条件を満たさないようにする(例えば金属ナノ粒子の平均粒径を10nmよりも大きくする)ことで、第2接合層132よりも空孔率の大きい第1接合層131を形成している。
【0051】
このように本実施形態によれば、先に空孔率の大きい第1接合層131を形成した後に、第1接合層131上に該接合層131よりも空孔率の小さい第2接合層132を形成することで、接合体100を得るようにしている。第1接合層131の形成においては、自身の空孔を利用して、有機成分を揮発させることができる。また、空孔率の小さい第2接合層132を形成する際には、少なくとも、自身の空孔とともに、先に形成した第1接合層131(の空孔)を有機成分の揮発経路として利用することができる。したがって、各接合層131、132において有機成分の残存を生じにくくすることができる。すなわち、大面積の接合であっても、各接合層131、132において有機成分の残存が生じにくく、接合部の強度劣化や電気的特性、熱的特性の劣化を抑制することができる。
【0052】
また、金属ペーストの構成条件及び金属ナノ粒子の焼結条件の少なくとも1つを変えながら金属ペーストの配置及び金属ナノ粒子の焼結を2回実行することにより、第1部材110と第2部材120の積層方向に接合層131、132が積層された接合部材130を形成するようにしている。したがって、積層方向において接合部材130の厚さが同じであれば、接合層1層辺りの厚さが薄くすることができるので、これによっても有機成分を揮発しやすくし、有機成分の残存をより生じにくくすることができる。
【0053】
また、金属ペーストの構成条件及び金属ナノ粒子の焼結条件の少なくとも1つを調整することで、各接合層131、132において空孔率に差をつけるようにしている。すなわち、従来からある接合工程(金属ペーストの配置と加熱による金属ナノ粒子の焼結)を工夫することで、有機成分の残存を生じにくくしている。したがって、大面積の接合に有利でありながら、従来のように、接合工程とは別に凹部を形成する工程を新たに必要とする場合や、接合部材130とは別の新たな部材(多孔質金属層)を介在させる場合に比べて、製造コストの増加を抑制することができる。
【0054】
また、空孔率が互いに異なる2つの接合層131、132によって接合部材130を構成するので、2つの接合層131、132の一方のみによって接合部材130を構成する場合に比べて、有機成分の残存を生じにくくしつつ、電気的特性、熱的特性の劣化を抑制することができる。
【0055】
なお、本実施形態においては、第1接合層131を、第1部材110である基板の接合部111上に形成する例を示した。しかしながら、第1接合層131を、第2部材120の接合部121上に形成し、形成された第1接合層131上に、金属ペースト層134(第2接合層132)、第1部材110の順に積層配置しても良い。
【0056】
また、本実施形態においては、第1接合層131の形成時において、金属ペースト層133に冶具が当接されて、加圧・加熱される例を示した。しかしながら、金属ペースト層133の接合部111との接触面の裏面に、加圧や加熱の冶具を接触させない場合には、金属ペースト層133における接合部111との接触面を除く面、すなわち金属ペースト層133におけるより広い外表面から、有機成分を揮発させることができる。
【0057】
また、本実施形態においては、第1接合層131と第2接合層132の厚さがほぼ等しい例を示した。しかしながら、互いに異なる厚さとしても良い。例えば、接合部材130の厚さを変えずに、第1接合層131よりも第2接合層132を厚くする(第2接合層132の占める比率を大きくする)ことで、電気的、熱的な特性を向上するようにしても良い。
【0058】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態に係る接合体の概略構成を示す断面図である。図4は、図3に示す接合体の形成方法(接合方法)の一例を示す工程別の断面図であり、(a)は第2接合層の形成時、(b)は第2接合層の形成後、(c)は第1接合層の形成時、(d)は第1接合層の形成後を示している。なお、上述した構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付与するものとする。
【0059】
本実施形態においては、第1部材110と第2部材120の積層方向に、2つの接合層131、132を積層して接合部材130とする構成において、先に空孔率の小さい第2接合層132を形成し、その後に第2接合層132よりも空孔率の大きい第1接合層131を形成する点を特徴とする。これにより、図3に示すように、第2接合層132が第1部材110に隣接形成され、第1接合層131が第2部材120に隣接形成された接合体100となっている。それ以外の点は、第1実施形態と同様である。
【0060】
第1実施形態同様、先ず、第1部材110としての基板(Cu基板)、第2部材120としての半導体素子、及び接合部材130(各接合層131、132)を形成するための金属ペースト(本実施形態においては、Agペースト)を準備する。次に、準備した金属ペーストを第1部材110の接合部111上に塗布し、第2接合層132を形成すべく金属ペースト層134を形成する。そして、接合部111上に積層された金属ペースト層134を少なくとも加熱し、金属ペースト中の有機成分を揮発させつつ金属ナノ粒子同士を焼結させて、図4(b)に示すように、金属ナノ粒子の焼結体であり、内部に空孔を有する第2接合層132を形成する。この時点で、接合部材130を構成する第2接合層132と第1部材110の接合部111が接合される。この第2接合層132に形成においては、第1実施形態同様、第1接合層131よりも空孔率が大きくなるように、金属ペーストの構成条件及び金属ナノ粒子の焼結条件を調整する。
【0061】
詳しくは、図4(a)に矢印で示すように、金属ペースト層134を、接合部111との接触面の裏面側から第1部材110側に向けて加圧しつつ加熱する。この加熱により、金属ペースト層134において、有機成分の飛びやすい外表面から焼結が始まる。金属ペースト層134の内部の有機成分は、先に焼結された外表面側の部位の空孔を介して揮発される。本実施形態においては、図4(a)に白抜き矢印で示すように、金属ペースト層134の外表面のうち、接合部111との接触面及び加圧しつつ加熱する冶具が当接される面を除く面(端面)から有機成分が揮発される。この有機成分の揮発に際しては、接合部材130を2層構造としており、第2接合層132に対応する金属ペースト層134の厚さが1層構造に比べて薄いので、この点で有機成分を揮発させやすくなっている。しかしながら、第2接合層132は空孔率が第1接合層131よりも小さいので、自身の空孔を介して有機成分を揮発させる能力は、第1接合層131よりも劣っている。すなわち、第2接合層132の内部に有機成分が残存することも考えられる。特に本実施形態に示すように、金属ペースト層134を加圧しつつ加熱する場合には、金属ペースト層134の外表面のうち、有機成分の揮発に寄与する露出部位が端面に限られるため、第2接合層132の内部に有機成分がより残存しやすい。
【0062】
第2接合層132の形成後、第1接合層131を形成するための金属ペーストを第2接合層132上(第2接合層132における接合部111との接触面の裏面上)に塗布して、金属ペースト層133を形成する。そして、図4(c)に示すように、金属ペースト層133上(金属ペースト層133における第2接合層132との接触面の裏面上)に、接合部121が当接するように第2部材120を積層配置し、この積層体を少なくとも加熱する。これにより、金属ペースト中の有機成分を揮発させつつ金属ナノ粒子同士を焼結させて、図4(d)に示すように、金属ナノ粒子の焼結体であり、内部に空孔を有する第1接合層131を形成する。この時点で、接合部材130を構成する第1接合層131と第2接合層132が接合され、第1接合層131と第2部材120の接合部121が接合される。すなわち、接合体100が完成する。第1接合層131に形成においては、加熱後の状態で有機成分が残存せず、第2接合層132よりも空孔率が大きくなるように、金属ペーストの構成条件及び金属ナノ粒子の焼結条件を調整する。
【0063】
詳しくは、図4(c)に矢印で示すように、第2部材120側から第1部材110側に向けて加圧しつつ加熱する。この加熱において、金属ペースト層133は、有機成分の飛びやすい外表面から焼結が始まる。金属ペースト層133の内部の有機成分は、先に焼結された外表面側の部位の空孔を介して揮発される。本実施形態においては、図4(c)に白抜き矢印で示すように、金属ペースト層133の外表面のうち、第2接合層132との接触面及び接合部121との接触面を除く面(端面)から有機成分が揮発される。この有機成分の揮発に際し、第1接合層131は空孔率が大きいので、自身の空孔を介して有機成分を効率よく揮発させることができる。また、接合部材130を2層構造としており、第1接合層131に対応する金属ペースト層133の厚さが1層構造に比べて薄いので、有機成分を揮発させやすい。したがって、図4(d)に示す第1接合層131においては、有機成分の残存が抑制される。
【0064】
また、上述したように、第2接合層132の内部に有機成分が残存していたとしても、第1接合層131の形成時において、第2接合層132の内部に残存する有機成分を、隣接する空孔率の大きい第1接合層131の空孔を介して、第1接合層131の端面から揮発させることができる。このように、本実施形態においては、後から形成する空孔率の大きい第1接合層131を有機成分の揮発経路として利用するので、第1接合層131よりも空孔率の小さい第2接合層132を、内部に有機成分を残存させずに形成することができる。
【0065】
また、本実施形態においては、第1部材110がCu基板、第2部材120が半導体素子、接合部材130が金属であり、接合部材130と第2部材120との間の方が、接合部材130と第1部材110との間よりも線膨張係数の差が大きくなっている。これに対し、図3に示すように、空孔率の大きい第1接合層131を第2部材120側に設けると、空孔率の小さい第2接合層132を第2部材120側に設ける構成よりも、線膨張係数差に基づく応力を緩和することができる。すなわち、接続信頼性を向上することができる。
【0066】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態に係る接合体の概略構成を示す断面図である。なお、上述した構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付与するものとする。
【0067】
上述した実施形態においては、接合部材130が、積層方向に2層構造とされる例を示した。しかしながら、接合部材130は、積層方向において2層構造に限定されるものではない。3層以上としても良い。3層以上の接合部材130においても、隣接する接合層の空孔率を異なるものとすればよい。積層方向に隣接する2層において、空孔率の大きい接合層を、該接合層よりも空孔率の小さい接合層を形成する際に有機成分の揮発経路として利用することで、各接合層において有機成分の残存が生じにくく、接合部の強度劣化や電気的特性、熱的特性の劣化を抑制することができる。
【0068】
一例として図5に示す接合部材130は、空孔率の小さい第2接合層132によって、第2接合層132よりも空孔率の大きい第1接合層131が挟まれた3層構造となっている。そして、各層の厚さがほぼ等しくなっている。このように、第2接合層132の厚さの和を第1接合層131の厚さよりも厚くすると、接合部材130の電気的特性及び熱的特性を向上することができる。また、各接合部111、121と隣接する接合層を、ともに空孔率の小さい第2接合層132としているので、空孔率の大きい第1接合層131と比べて、接合部111、121との接触面積が大きく、これにより機械的な接続信頼性も向上することができる。また、接合部材130の厚さが同じであれば、層数を増すほど、1層当たりの厚さを薄くすることができるので、焼結時に有機成分を揮発させやすくすることができる。
【0069】
なお、このような構成の接合体100は、上述した実施形態に示した方法によって形成することができる。例えば、第1部材110の接合部111上に、第2接合層132(下層)、第1接合層131(中層)、第2接合層132(上層)の順で形成しても良い。この場合、焼結によって第2接合層132(上層)となる金属ペースト層134上に第2部材120を積層配置し、少なくとも加熱することで、接合体100を得ることができる。また、第2部材120の接合部121上に、第2接合層132、第1接合層131、第2接合層132の順で形成しても良い。
【0070】
さらには、第1部材110の接合部111上及び第2部材120の接合部121上に、第2接合層132をそれぞれ形成しても良い。この場合、いずれか一方の第2接合層132上に、焼結によって第1接合層131となる金属ペースト層133を形成し、他方の第2接合層132を含む部材を金属ペースト層133上に積層配置する。そして積層体を少なくとも加熱することで、接合体100を得ることができる。
【0071】
なお、本実施形態においては、3層構造の例を示したが、4層以上の多層構造としても良い。その場合も、空孔率の小さい接合層を接合部111、121と隣接する接合層とすれば、機械的な接続信頼性を向上することができる。
【0072】
また、積層方向に3層以上の接合層が積層された接合体100として、例えば図6に示すように、第1部材110(接合部111)から第2部材120(接合部121)に向けて、空孔率が小さい順に接合層132、135、131が積層された構成としても良い。なお、接合層135は、第1接合層131の空孔率と第2接合層132の空孔率との間の空孔率を有する第3接合層である。すなわち、接合部材130は、第1部材110側から第2部材120に向けて空孔率が徐々に大きくなるように構成されている。このような構成とすると、各接合層間での空孔率の差に基づいて生じる応力を低減することができる。図6は、変形例を示す断面図である。なお、第1部材110(接合部111)から第2部材120(接合部121)に向けて、空孔率が大きい順に接合層が積層された構成(第1部材110側から、第1接合層131、第3接合層135、第2接合層132の順)としても、同様の効果を期待することができる。また、層数も3層に限定されるものではなく、4層以上においても、同様の効果を期待することができる。
【0073】
(第4実施形態)
図7は、第4実施形態に係る接合体の概略構成を示す図であり、(a)は断面図、(b)は接合部材の平面図である。図8は、図7に示す接合体の形成方法(接合方法)の一例を示す工程別の断面図であり、(a)は加熱時、(b)は加熱後を示している。なお、上述した構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付与するものとする。
【0074】
上述した各実施形態においては、第1部材110と第2部材120の積層方向において、空孔率の異なる接合層が積層されて、接合部材130が多層構造とされる例を示した。これに対し、本実施形態においては、第1部材110と第2部材120の積層方向に垂直な方向において、空孔率の異なる接合層が積層されて、積層方向に垂直な方向において接合部材130が多層構造とされる点を特徴とする。
【0075】
接合部材130は、図7(a)に示すように、第1部材110と第2部材120の積層方向において1層構造となっており、図7(a)、(b)に示すように、積層方向に垂直な一方向において、空孔率の大きい第1接合層131と、第1接合層131よりも空孔率の小さい第2接合層132とが積層(並設)されて多層構造となっている。詳しくは、積層方向における同一層において、第1接合層131と第2接合層132とが交互に配置されたストライプパターンとなっている。本実施形態においては、図7(a)、(b)に示すように、4層の第1接合層131と5層の第2接合層132が交互に積層されている。また、9層の各接合層131、132の大きさ(厚さ、並設方向の幅、並設方向に垂直な方向の長さ)がほぼ同一となっており、各層の一部が、接合部材130における接合部111、121との接触面を除く外周面の一部となっている。
【0076】
このような構成の接合体100は、例えば以下の手順で形成することができる。先ず、上述した実施形態同様、第1部材110、第2部材120、及び金属ペーストを準備する。そして、準備した金属ペーストを例えば第1部材110の接合部111上に部分的(選択的)に塗布し、金属ペースト層133を形成する。また、金属ペースト層133を構成する金属ペーストとは構成条件の異なる金属ペースト(例えば有機溶媒に対する金属ナノ粒子の比が大きい金属ペースト)を準備し、この金属ペーストを、金属ペースト層133の形成されない接合部111上に部分的に塗布する。そして、金属ペースト層133とほぼ同じ厚さの金属ペースト層134を形成する。これら金属ペーストの塗布には、スクリーン印刷、ディスペンサ、インクジェット等による塗布を採用することができる。本実施形態においては、ディスペンサを用いて、接合部111上に、ストライプパターンの金属ペースト層133、134を形成する。
【0077】
次に、金属ペースト層133、134上(金属ペースト層133、134における接合部111との接触面の裏面上)に、接合部121が当接するように第2部材120を積層配置し、この積層体を少なくとも加熱する。詳しくは、図8(a)に矢印で示すように、第2部材120側から第1部材110側に向けて加圧しつつ加熱する。この加熱により、各金属ペースト層133、134において、有機成分の飛びやすい外表面から焼結が始まり、内部の有機成分は、先に焼結された外表面側の部位の空孔を介して揮発される。本実施形態においては、金属ペースト層133、134の外表面のうち、接合部111との接触面及び加圧しつつ加熱する冶具が当接される面を除く面(端面)から有機成分がそれぞれ揮発される。
【0078】
この有機成分の揮発に際し、金属ペースト層133においては、焼結によって形成する第1接合層131の空孔率が大きいので、自身の空孔を介して有機成分を効率よく揮発させることができる。これに対し、金属ペースト層134においては、焼結によって形成する第2接合層132の空孔率が第1接合層131よりも小さいため、自身の空孔を介して有機成分を揮発させる能力は第1接合層131よりも劣っている。しかしながら、金属ペースト層134に隣接する空孔率の大きい第1接合層131の空孔(金属ペースト層133のうち、先に焼結された部分)を介して、第1接合層131(金属ペースト層133)の端面からも有機成分を揮発させることができる。したがって、本実施形態によれば、有機成分の残存を抑制しつつ、第1接合層131と第2接合層132を同時に形成することができる。この時点で、接合部材130を構成する第1接合層131と第2接合層132が接合されるとともに、第1接合層131及び第2接合層132と各接合部111、121が接合される。すなわち、接合体100が完成する。
【0079】
このように、本実施形態によれば、積層方向における同一層において、金属ペーストの構成条件の少なくとも1つを部分的に変えることで、空孔率の異なる接合層131、132を、隣接する層で空孔率が異なるように、同時に形成することができる。したがって、第1接合層131(の空孔)を有機成分の揮発経路として利用することができるので、大面積の接合であっても、各接合層131、132において有機成分の残存が生じにくく、接合部の強度劣化や電気的特性、熱的特性の劣化を抑制することができる。
【0080】
また、本実施形態に示したように、接合部材130を、積層方向において1層構造とする場合には、積層方向に多層とする場合よりも、接合部材130の厚さを薄くすることが可能であり、薄くした場合には電気的特性、熱的特性をより向上することもできる。
【0081】
また、並設される接合層131、132を同時に形成する。すなわち、接合層131、132が同時に接着剤としての機能を発揮することができる。したがって、接合層131、132を同時に形成する際の加熱を、接合体100を形成する際の最後の工程としても、各接合層131、132を介して、第1部材110と第2部材120とを、機械的、電気的、熱的に接続することができる。
【0082】
なお、本実施形態においては、積層方向における同一層において、金属ナノ粒子と有機溶媒の混合比を部分的に変えることで、各接合層131、132の空孔率に差をつける例を示した。しかしながら、各接合層131、132の空孔率に差をつける条件は上記例に限定されるものではない。第1実施形態に示した金属ペーストの構成条件及び金属ナノ粒子の焼結条件の少なくとも1つを部分的に変えることで、積層方向における同一層に、空孔率の異なる接合層131、132を多層に積層(並設)することができる。例えば、各接合層131、132ごとに平均粒径の異なる金属ナノ粒子を用いても良い。また、加熱温度を、同一層において部分的に異なる温度としても良い。また、同一層において印加圧力に差をつけても良い。また同一層において一部分(第2接合層132を形成する部分)に超音波振動を印加しても良い。
【0083】
また、本実施形態においては、積層方向における同一層において、第1接合層131と第2接合層132とが交互に配置されてストライプパターンとなっている例を示した。しかしながら、同一層における接合層の積層構造(並設構造)は上記例に限定されるものではない。同一層に第1接合層131と第2接合層132とが積層されて接合部材130が構成される場合、例えば図9に示すように、空孔率の大きい第1接合層131が格子状に形成され、格子間の矩形領域に第2接合層132が形成された構成としても良い。このような構造の場合、一部の第2接合層132は、その外表面が外部に露出されない。しかしながら、第1接合層131は、その外表面の一部が外部に露出されている。すなわち、焼結後の状態で、接合部材130における接合部111、121との接触面を除く外周面の一部となる。したがって、第1接合層131を有機成分の揮発経路として利用することができるので、第2接合層132における有機成分の残存を抑制することができる。また、図10に示すように、接合部材130の平面中心から放射状に第1接合層131を形成し、残りの部分を第2接合層132としても良い。この場合も、第1接合層131を有機成分の揮発経路として利用することができるので、第2接合層132における有機成分の残存を抑制することができる。すなわち、空孔率の小さい第2接合層132に有機成分が残存しないように、効率的に(分散して)第1接合層131を設けた構成とすれば良い。図9、図10は、ともに変形例を示す平面図である。
【0084】
また、本実施形態においては、接合部材130が、積層方向に1層構造である例を示した。しかしながら、積層方向において多層構造とされても良い。上述したように、積層方向の同一層を構成する各接合層を同時に形成する場合には、接合体100を形成する際の最後の工程とすることもできるので、積層方向においてどの層の形成にも適用することができる。
【0085】
また、本実施形態においては、積層方向において同一の層を構成する第1接合層131と第2接合層132を同時に形成する例を示した。しかしながら、この並設層に対して積層方向にベタ状の接合層が隣接配置される場合には、異なるタイミングで形成することも可能である。例えば図11においては、接合部材130が積層方向において2層構造とされ第1部材110側の層が、空孔率の大きい第1接合層131と第1接合層131よりも空孔率の小さい第2接合層132が積層された構造となっている。また、第2部材120側の層が、第1接合層131と第2接合層132との間の空孔率を有する第3接合層135によって構成されている。このような接合部材130を形成する場合、例えば第1部材110の接合部111上に、金属ペースト層133を部分的に形成した後、少なくとも加熱して第1接合層131を形成する。この時点で、第1接合層131と接合部111が接合される。次に、接合部111上の第1接合層131を除く部分に金属ペースト層134を選択的に形成した後、少なくとも加熱して第2接合層132を形成する。この時点で、第2接合層132と接合部111が接合され、第2接合層132と第1接合層131が接合される。そして、第1接合層131及び第2接合層132上に、第3接合層135に対応する金属ペースト層を形成し、この金属ペースト層上に第2部材120を積層した状態で少なくとも加熱して第3接合層135を形成する。この時点で、接合部材130を構成する第3接合層135と、第1接合層131及び第2接合層132が接合され、第3接合層135と第2部材120の接合部121が接合される。すなわち、接合体100が完成する。なお、各接合層131、132、135の形成においては、金属ペーストの構成条件及び金属ナノ粒子の焼結条件を調整することで、空孔率に差をもたせている。このように、並設層に対して積層方向にベタ状の接合層が隣接配置される場合には、並設層を構成する各接合層を異なるタイミングで形成することも可能である。図11は、変形例を示す断面図である。
【0086】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態になんら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々変形して実施することが可能である。
【0087】
本実施形態においては、第1部材110がCu基板であり、第2部材120が半導体素子である例を示した。しかしながら、各部材110、120は上記例に限定されるものではない。例えば図12に示すように、第1部材110として、絶縁基板112(例えば窒化アルミニウムや窒化珪素等のセラミックス)の表面に、例えばアルミニウム、銅、金などを蒸着、スパッタ、メッキして金属膜を形成し、この金属膜の少なくとも一部を接合部111としたものを採用しても良い。これにより、接合体100において、第2部材120の絶縁性を確保することもできる。図12は、その他変形例を示す断面図である。
【0088】
上述した実施形態において、第1部材110と第2部材120の積層方向に接合部材130が多層構造の場合、1層ごとに金属ペースト層の形成と焼結を実施する例を示した。しかしながら、例えば第1部材110の接合部111上に、金属ペースト層133を形成後、焼結しない程度の低温で金属ペースト層133を加熱し、金属ペースト層133の皮膜強度を積層可能な程度としておく。そして、皮膜強度の確保された金属ペースト層133上に金属ペースト層134を積層形成し、さらに金属ペースト層134上に第2部材120を積層した状態で、焼結すべく少なくとも加熱を実施する。これにより、金属ペースト層133、134をほぼ同時に焼結(同じ加熱タイミングで焼結)して、第1接合層131と第2接合層132を形成することもできる。このように、積層方向に接合部材130が多層であっても、各接合層を同時に(同じ加熱タイミングで)形成することも可能である。ただし、それぞれの接合層を形成する金属ペースト層から同時に有機成分を揮発させることとなるので、上述したように、1層ごとに金属ペースト層の形成と焼結を実施するほうが、有機成分の残存を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の第1実施形態に係る接合体の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1に示す接合体の形成方法(接合方法)の一例を示す工程別の断面図であり、(a)は第1接合層の形成時、(b)は第1接合層の形成後、(c)は第2接合層の形成時、(d)は第2接合層の形成後を示している。
【図3】第2実施形態に係る接合体の概略構成を示す断面図である。
【図4】図3に示す接合体の形成方法(接合方法)の一例を示す工程別の断面図であり、(a)は第2接合層の形成時、(b)は第2接合層の形成後、(c)は第1接合層の形成時、(d)は第1接合層の形成後を示している。
【図5】第3実施形態に係る接合体の概略構成を示す断面図である。
【図6】変形例を示す断面図である。
【図7】第4実施形態に係る接合体の概略構成を示す図であり、(a)は断面図、(b)は接合部材の平面図である。
【図8】図7に示す接合体の形成方法(接合方法)の一例を示す工程別の断面図であり、(a)は加熱時、(b)は加熱後を示している。
【図9】変形例を示す平面図である。
【図10】変形例を示す平面図である。
【図11】変形例を示す断面図である。
【図12】その他変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0090】
10・・・加圧冶具
100・・・接合体
110・・・第1部材
111・・・接合部(第1接合部)
120・・・第2部材
121・・・接合部(第2接合部)
130・・・接合部材
131・・・第1接合層
132・・・第2接合層
135・・・第3接合層
134、134・・・金属ペースト層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材における金属からなる第1接合部と、第2部材における金属からなる第2接合部との間に、金属ナノ粒子を有機溶媒中に分散してなる金属ペーストを介在させ、
前記金属ペーストを少なくとも加熱して前記金属ナノ粒子を焼結し、内部に空孔を有する接合部材として前記第1接合部と前記第2接合部を接合する接合方法であって、
前記金属ペーストの構成条件及び前記金属ナノ粒子の焼結条件の少なくとも1つを調整することで、前記第1接合部と前記第2接合部との間に、前記空孔の占める割合である空孔率が互いに異なる複数種類の接合層を、隣接する前記接合層で空孔率が互いに異なるように積層形成して前記接合部材とすることを特徴とする接合方法。
【請求項2】
前記金属ペーストの配置及び前記金属ナノ粒子の焼結を、前記金属ペーストの構成条件及び前記金属ナノ粒子の焼結条件の少なくとも1つを変えて複数回実行し、
前記第1部材と前記第2部材の積層方向において、前記焼結回数に応じて、前記接合層を多層に形成することを特徴とする請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
前記第1接合部及び前記第2接合部の少なくとも一方に隣接して前記接合層を形成し、
形成された前記接合層に隣接して、前記接合層よりも空孔率の小さい接合層を積層形成することを特徴とする請求項2に記載の接合方法。
【請求項4】
前記第1接合部及び前記第2接合部の少なくとも一方に隣接して前記接合層を形成し、
形成された前記接合層に隣接して、前記接合層よりも空孔率の大きい接合層を積層形成することを特徴とする請求項2に記載の接合方法。
【請求項5】
前記積層方向に垂直な方向において、空孔率の最も大きい接合層が、前記接合部材における第1接合部及び第2接合部との接触面を除く外周面の一部となるように、複数種類の前記接合層を形成し、
前記積層方向において、並設された複数種類の前記接合層に隣接して、複数種類の前記接合層とは空孔率の異なるベタ状の接合層を形成することを特徴とする請求項2〜4いずれか1項に記載の接合方法。
【請求項6】
前記金属ペーストの構成条件及び前記金属ナノ粒子の焼結条件の少なくとも1つを部分的に変えることにより、前記第1部材と前記第2部材の積層方向に垂直な方向において、空孔率の最も大きい接合層が、前記接合部材における第1接合部及び第2接合部との接触面を除く外周面の一部となるように、複数種類の前記接合層を同時に形成することを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の接合方法。
【請求項7】
前記金属ナノ粒子の焼結条件として、前記金属ペーストの加熱温度及び加熱時間の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載の接合方法。
【請求項8】
前記金属ナノ粒子の焼結条件として、外部から前記金属ペーストに印加する圧力を含むことを特徴とする請求項1〜7いずれか1項に記載の接合方法。
【請求項9】
前記金属ナノ粒子の焼結条件として、外部から前記金属ペーストに印加する超音波振動のエネルギーの大きさを含むことを特徴とする請求項1〜8いずれか1項に記載の接合方法。
【請求項10】
前記金属ペーストの構成条件として、前記金属ナノ粒子の平均粒径を含むことを特徴とする請求項1〜9いずれか1項に記載の接合方法。
【請求項11】
前記金属ペーストの構成条件として、前記金属ナノ粒子と前記有機溶媒との混合比を含むことを特徴とする請求項1〜10いずれか1項に記載の接合方法。
【請求項12】
前記金属ペーストの構成条件として、前記金属ナノ粒子よりも大きい金属部材の混入量を含むことを特徴とする請求項1〜11いずれか1項に記載の接合方法。
【請求項13】
第1部材における金属からなる第1接合部と、
第2部材における金属からなる第2接合部とが、
金属ナノ粒子の焼結体であり、内部に空孔を有する接合部材を介して接合された接合体であって、
前記接合部材は、前記空孔の占める割合である空孔率が異なる複数種類の接合層を、隣接する前記接合層で空孔率が互いに異なるよう多層に配置して構成されていることを特徴とする接合体。
【請求項14】
前記接合部材において、前記接合層が、少なくとも前記第1部材と前記第2部材の積層方向に多層に積層されていることを特徴とする請求項13に記載の接合体。
【請求項15】
前記接合部材は、前記第1接合部及び前記第2接合部の一方に隣接する接合層と、前記第1接合部及び前記第2接合部の他方及び前記接合層に隣接する前記接合層よりも空孔率の大きい接合層の2層構造とされていることを特徴とする請求項14に記載の接合体。
【請求項16】
前記接合部材は、前記接合層が、前記第1接合部と前記第2接合部の一方から他方に向けて、空孔率が小さい順、又は、空孔率が大きい順に多層に積層されて構成されていることを特徴とする請求項14又は請求項15に記載の接合体。
【請求項17】
前記接合部材は、前記第1接合部に隣接する接合層と、前記第2接合部に隣接する接合層との間に、2つの前記接合層よりも空孔率の大きい接合層が介在された3層構造とされていることを特徴とする請求項14に記載の接合体。
【請求項18】
前記接合部材において、前記接合層が、前記第1部材と前記第2部材の積層方向に垂直な方向に並設され、
並設された前記接合層のうち、空孔率の最も大きい接合層が、前記接合部材における第1接合部及び第2接合部との接触面を除く外周面の一部とされていることを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の接合体。
【請求項1】
第1部材における金属からなる第1接合部と、第2部材における金属からなる第2接合部との間に、金属ナノ粒子を有機溶媒中に分散してなる金属ペーストを介在させ、
前記金属ペーストを少なくとも加熱して前記金属ナノ粒子を焼結し、内部に空孔を有する接合部材として前記第1接合部と前記第2接合部を接合する接合方法であって、
前記金属ペーストの構成条件及び前記金属ナノ粒子の焼結条件の少なくとも1つを調整することで、前記第1接合部と前記第2接合部との間に、前記空孔の占める割合である空孔率が互いに異なる複数種類の接合層を、隣接する前記接合層で空孔率が互いに異なるように積層形成して前記接合部材とすることを特徴とする接合方法。
【請求項2】
前記金属ペーストの配置及び前記金属ナノ粒子の焼結を、前記金属ペーストの構成条件及び前記金属ナノ粒子の焼結条件の少なくとも1つを変えて複数回実行し、
前記第1部材と前記第2部材の積層方向において、前記焼結回数に応じて、前記接合層を多層に形成することを特徴とする請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
前記第1接合部及び前記第2接合部の少なくとも一方に隣接して前記接合層を形成し、
形成された前記接合層に隣接して、前記接合層よりも空孔率の小さい接合層を積層形成することを特徴とする請求項2に記載の接合方法。
【請求項4】
前記第1接合部及び前記第2接合部の少なくとも一方に隣接して前記接合層を形成し、
形成された前記接合層に隣接して、前記接合層よりも空孔率の大きい接合層を積層形成することを特徴とする請求項2に記載の接合方法。
【請求項5】
前記積層方向に垂直な方向において、空孔率の最も大きい接合層が、前記接合部材における第1接合部及び第2接合部との接触面を除く外周面の一部となるように、複数種類の前記接合層を形成し、
前記積層方向において、並設された複数種類の前記接合層に隣接して、複数種類の前記接合層とは空孔率の異なるベタ状の接合層を形成することを特徴とする請求項2〜4いずれか1項に記載の接合方法。
【請求項6】
前記金属ペーストの構成条件及び前記金属ナノ粒子の焼結条件の少なくとも1つを部分的に変えることにより、前記第1部材と前記第2部材の積層方向に垂直な方向において、空孔率の最も大きい接合層が、前記接合部材における第1接合部及び第2接合部との接触面を除く外周面の一部となるように、複数種類の前記接合層を同時に形成することを特徴とする請求項1〜4いずれか1項に記載の接合方法。
【請求項7】
前記金属ナノ粒子の焼結条件として、前記金属ペーストの加熱温度及び加熱時間の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載の接合方法。
【請求項8】
前記金属ナノ粒子の焼結条件として、外部から前記金属ペーストに印加する圧力を含むことを特徴とする請求項1〜7いずれか1項に記載の接合方法。
【請求項9】
前記金属ナノ粒子の焼結条件として、外部から前記金属ペーストに印加する超音波振動のエネルギーの大きさを含むことを特徴とする請求項1〜8いずれか1項に記載の接合方法。
【請求項10】
前記金属ペーストの構成条件として、前記金属ナノ粒子の平均粒径を含むことを特徴とする請求項1〜9いずれか1項に記載の接合方法。
【請求項11】
前記金属ペーストの構成条件として、前記金属ナノ粒子と前記有機溶媒との混合比を含むことを特徴とする請求項1〜10いずれか1項に記載の接合方法。
【請求項12】
前記金属ペーストの構成条件として、前記金属ナノ粒子よりも大きい金属部材の混入量を含むことを特徴とする請求項1〜11いずれか1項に記載の接合方法。
【請求項13】
第1部材における金属からなる第1接合部と、
第2部材における金属からなる第2接合部とが、
金属ナノ粒子の焼結体であり、内部に空孔を有する接合部材を介して接合された接合体であって、
前記接合部材は、前記空孔の占める割合である空孔率が異なる複数種類の接合層を、隣接する前記接合層で空孔率が互いに異なるよう多層に配置して構成されていることを特徴とする接合体。
【請求項14】
前記接合部材において、前記接合層が、少なくとも前記第1部材と前記第2部材の積層方向に多層に積層されていることを特徴とする請求項13に記載の接合体。
【請求項15】
前記接合部材は、前記第1接合部及び前記第2接合部の一方に隣接する接合層と、前記第1接合部及び前記第2接合部の他方及び前記接合層に隣接する前記接合層よりも空孔率の大きい接合層の2層構造とされていることを特徴とする請求項14に記載の接合体。
【請求項16】
前記接合部材は、前記接合層が、前記第1接合部と前記第2接合部の一方から他方に向けて、空孔率が小さい順、又は、空孔率が大きい順に多層に積層されて構成されていることを特徴とする請求項14又は請求項15に記載の接合体。
【請求項17】
前記接合部材は、前記第1接合部に隣接する接合層と、前記第2接合部に隣接する接合層との間に、2つの前記接合層よりも空孔率の大きい接合層が介在された3層構造とされていることを特徴とする請求項14に記載の接合体。
【請求項18】
前記接合部材において、前記接合層が、前記第1部材と前記第2部材の積層方向に垂直な方向に並設され、
並設された前記接合層のうち、空孔率の最も大きい接合層が、前記接合部材における第1接合部及び第2接合部との接触面を除く外周面の一部とされていることを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の接合体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−311371(P2008−311371A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156818(P2007−156818)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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