説明

接合方法

【課題】回転ツールの軌道を妨げることなく強固に金属部材を固定することで、高精度に金属部材同士の摩擦攪拌接合を行うことを可能とした、接合方法を提供する。
【解決手段】金属部材10同士を摩擦攪拌接合により接合する方法であって、接合される金属部材10同士の突合面を突き合わせた状態で、金属部材10,10を支持台20に載置し、少なくとも一方の金属部材10に形成された挿通孔にボルト30を挿通するとともに、このボルト30を利用して金属部材10を支持台20に押え付けた後、金属部材10同士を摩擦攪拌接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦攪拌を利用した金属部材の接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部材同士を接合する方法として、摩擦攪拌接合(FSW=Friction Stir Welding)が知られている。摩擦攪拌接合は、回転ツールを回転させつつ金属部材同士の突合部に沿って移動させ、回転ツールと金属部材との摩擦熱により突合部の金属を塑性流動させることで、金属部材同士を固相接合させるものである。なお、回転ツールは、円柱状を呈するショルダ部の下端面に攪拌ピン(プローブ)を突設してなるものが一般的である。
【0003】
摩擦攪拌接合は、回転ツールの移動とともに生じる金属部材のずれなどが原因による、接合欠陥が生じることがないように、金属部材同士を突き合わせた状態で強固に固定する必要がある。
【0004】
従来、摩擦攪拌接合における金属部材の固定は、突合部をつき合わせた状態で支持台に配置された金属部材を、クランプ等の治具を利用して、両端部を支持台に締着することより行っていた。
【0005】
ところが、このような固定方法では、金属板の表面に曲がりが生じる場合があった。
そのため、曲がりを矯正することを目的として、多数のクランプを所定の間隔で配置して、金属板を支持台に締着する場合がある。
【0006】
また、特許文献1には、摩擦攪拌接合における金属部材の固定方法として、支持台の一側方に配置された固定爪と、他側方から突設された水平軸に摺動可能に装着された万力と、を利用する固定方法が開示されている。
【特許文献1】特開2001−205453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1に記載の固定方法では、金属部材同士の突合部から離れた金属部材の側方に設置された万力を介して押さえつけるため、突合部の近傍で固定することができない。そのため、摩擦攪拌接合時に、回転ツールの移動により、突合部にズレが生じる虞があった。
【0008】
したがって、金属部材の側方から延設されたアームを備えた治具を利用して突合部近傍にて押え付ける必要があるが、アームを介した固定は、十分な押え付け力を得られない虞があった。また、アームを利用して上方から金属部材を固定すると、アームが接合部を跨ぎ、回転ツールの移動を妨げる場合があった。
【0009】
このような観点から、本発明は、金属部材同士の突合部において摩擦攪拌を行うことで金属部材同士を接合する方法であって、回転ツールの軌道を妨げることなく突合部の近傍で強固に金属部材を固定することで、高精度に金属部材同士の摩擦攪拌接合を行うことが可能な接合方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような課題を解決する本発明に係る接合方法は、複数の金属部材を摩擦攪拌接合により接合する方法であって、接合される前記金属部材同士の突合面を突き合わせた状態で、前記金属部材を支持台に載置し、少なくとも一方の前記金属部材に形成された挿通孔にボルトを挿通するとともに、当該ボルトを利用して該金属部材を前記支持台に押え付けた後、前記金属部材同士を摩擦攪拌接合することを特徴としている。
【0011】
かかる接合方法によれば、摩擦攪拌接合における接合ライン(金属部材同士の突合部)を横断するアームを介することなく、突合部の近傍において金属部材を固定することが可能なため、回転ツールの軌道が妨げられることがなく、また、回転ツールの移動により金属部材が動くことがない。そのため、高品質な接合を簡易に行うことが可能となる。
【0012】
また、前記接合方法において、前記ボルトは、前記金属部材の上方に配設された押え板を介して該金属部材を押え付けることを特徴としている。
【0013】
かかる接合方法によれば、金属部材を、ボルトを介して固定する際に、押え板を介在させるため、ボルトの締め付け力を分散させて、金属部材への負担を軽減させることが可能となる。そのため、ボルトの締め付け力により金属部材に破損が生じることを防止する。
【0014】
また、前記押え板の前記金属部材側の表面に、保護材が配置されていてもよく、前記保護材が、樹脂部材であってもよい。これにより、上板により金属部材を押え付ける際に、金属部材に破損が生じることを防止する。
【0015】
また、前記接合方法において、前記金属部材同士の突合部の下面に、接合ライン支持部材が配設されていれば、回転ツールの軌道を、金属部材を挟んで回転ツールと反対側の面から支持するため、突合面がずれることなく、高品質な接合を、簡易かつ安価に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の金属部材の接合方法によれば、回転ツールの軌道を妨げることなく突合部の近傍において強固に金属部材を固定するため、高品質な金属部材同士の摩擦攪拌接合を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本実施形態では、図1に示すように、3つの金属部材10(第一金属部材11、第二金属部材12、第三金属部材13)を摩擦攪拌接合により接合する場合について説明する。なお、説明における各方向は、図1に示す方向に統一するものとする。
【0018】
各金属部材10の形状寸法は限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。本実施形態では、断面矩形の中空押出形材からなる第一金属部材11と、外形断面略T字の中空押出形材からなる第二金属部材12および第三金属部材13を使用する。そして、本実施形態では、第一金属部材11の左右に、断面略T字の第二金属部材12および第三金属部材13を接合する場合について説明する。
【0019】
なお、金属部材10を構成する材料は限定されるものではなく、適宜公知の材料から選定して使用すればよいが、本実施形態では、アルミニウム合金製の金属部材10を使用する。
【0020】
また、図1および図2に示すように、各金属部材10同士の突合部Jに対応する個所には、上下に突出する凸部11b,12b,13bがそれぞれ形成されている。凸部11b,12b,13bの断面形状は限定されるものではないが、摩擦攪拌接合により接合されることで、完成部材として必要な強度を発現することが可能な高さと厚みを有している。
なお、各凸部11b,12b,13bは、凸部11bと凸部12bおよび凸部11bと凸部13bを付き合わせた際の幅寸法が、回転ツールAのショルダ径(ショルダ部A1の外径)よりも大きくなるようになっている(図5(a)および(b)参照)。
【0021】
第一金属部材11の突合面11a,11aは、図2に示すように、平面を呈している。一方、第二金属部材12と第三金属部材13の突合面12a,13aは、第一金属部材11の突合面11aと突き合せたときに隙間が形成されるように、中間部分に予め凹みが形成されている。このように、第二金属部材12と第三金属部材13の突合面12a,13aの中間部分に凹みが形成されていることで、突合面12a,13aの上下(凸部12b,13bも含む)が第一金属部材11の突合面11a,11aに密着する。平面からなる突合面同士を突き合わせると、突合面の不陸により密着せずに、高品質な摩擦攪拌接合ができない場合があるが、本実施形態に係る金属部材10は、互いの突合部Jに隙間が形成されていることで、この隙間が突合面の不陸を吸収し、隙間の上方の摩擦攪拌接合を行う接合部分に関しては金属部材10同士が隙間なく密着し、高品質に摩擦攪拌接合を行うことを可能としている。
【0022】
なお、本実施形態では、第二金属部材12と第三金属部材13の突合面12a,13aに凹みを形成するものとしたが、第一金属部材11の突合面11aに凹みを形成してもよい。また、金属部材10同士の突合面11a,12a,13aの形状は前記の形状に限定されないことはいうまでもない。また、各金属部材10の突合面11a,12a,13aの厚さ寸法も限定されるものではないが、本実施形態では、全て同一である。また、突合面12a,13aに形成された凹みの深さ(隙間の幅)は、限定されるものではなく適宜設定すればよい。なお、図面上(図1、図2および図5)では、突合面12a,13aに形成された凹みの深さが大きく表示されているが、凹みの深さはわずかな隙間が形成される程度であればよい。
【0023】
本実施形態に係る接合方法は、金属部材10同士を突き合せる突合工程と、これらの金属部材10,10,10を支持台20に拘束する拘束工程と、金属部材10同士の突合部Jに対して連続して熱加工を施す接合工程と、を含んでいる。
【0024】
突合工程では、図1に示すように、接合される金属部材10同士の突合面11a,12a,13aを突き合わせた状態で、これらの金属部材10,10,10を支持台20に載置する。具体的には、左右の第二金属部材12および第三金属部材13の間に、中央の第一金属部材11を配置して、互いの突合面11a,12a,13aを突き合せた状態で支持台20に載置する。
【0025】
なお、支持台20は、図1および図2に示すように、中央に間隔を有した状態で、左右に配置された台座22,23と、台座22,23の間隔において、左右の台座22,23に挟持された支持板24と、これらの台座22,23、支持板24を下方から支持する支持台本体21により構成されている。
【0026】
台座22,23は、摩擦攪拌接合を行う金属部材10(突合部J)の高さ位置を調整するために支持台本体21の上面に配置される部材であって、少なくとも一方が支持台本体21の上面に固定位置を左右方向に変更可能に構成されている。台座22,23は、支持板24の幅寸法に応じて、互いの間隔の幅寸法を変更することで支持板24を挟持した状態で、支持台本体21に固定されている。なお、台座22,23の支持台本体21への固定方法は、限定されるものではなく、適宜公知の手段により行うものとする。
【0027】
支持板24は、摩擦攪拌接合を行う金属部材10(突合部J)の高さ位置を調整するために支持台本体21の上面に配置される部材である。図1および図2に示すように、支持板24は、金属製の板材であって、支持台本体21の上面に載置されるとともに左右の台座22,23に挟持された状態で、支持台本体21に移動不能に固定されている。なお、支持板24の支持台本体21への固定方法は限定されるものではなく、適宜公知の方法により行えばよい。
【0028】
図2および図3に示すように、支持板24の上面の両端には、支持台20に載置された金属部材11,12,13同士の突合部Jを、下面から支持するための接合ライン支持部材25,25が配設されている。また、支持板24の上面の中央には、第一金属部材11を支持するための支持部材26が配設されている。
【0029】
支持板24には、接合ライン支持部材25,25および支持部材26の対応する個所に、所定のピッチにより、ボルト25a,26aを挿通するための挿通孔が形成されている。また、支持板24には、接合ライン支持部材25,25と支持部材26との間に、後記するボルト30を螺合するためのネジ孔24a,24a,…が所定の間隔により形成されている。
【0030】
接合ライン支持部材25は、図2に示すように、金属部材10を支持台20に載置した状態で、突合部Jの下面に当接するように構成されており、摩擦攪拌接合時に、回転ツールの反対側から突合部Jを支持する部材である。接合ライン支持部材25は、摩擦攪拌接合時の圧力に対する十分な耐力を有しているとともに、この圧力により移動することがないように、支持板24に固定されている。
【0031】
接合ライン支持部材25の支持板24への固定は、図3(b)に示すように、支持板24を挿通するボルト25aにより螺合されることで行われている。なお、接合ライン支持部材25の支持板24への固定方法は限定されないことはいうまでもない。
また、本実施形態では、金属部材11,12,13の形状等に応じて、形状が変更可能となるように、支持板24と接合ライン支持部材25とを別部材により構成するものとしたが、支持板24と接合ライン支持部材25とが予め一体に形成されていてもよい。
【0032】
支持部材26は、第一金属部材11を補助的に支持する部材であって、必要に応じて配置すればよい。本実施形態では、金属部材10を支持台20に載置した際に、第一金属部材11と支持部材26との間に、わずかな隙間が形成されるように構成されている。つまり、第一金属部材11と支持部材26とが常時当接していると、第一金属部材11または支持部材26の当接面が不陸であった場合等に、金属部材10同士の突合部Jにずれが生じる虞があるため、このような誤差を回避するように構成されている。なお、支持部材26は、摩擦攪拌接合時やボルト30による締め付け時に、第一金属部材11にたわみが生じた場合等に下方から支持する役目を果たす。
【0033】
図3(b)に示すように、支持部材26の支持板24への固定も接合ライン支持部材25と同様に、支持板24を挿通するボルト26aにより螺合されることで行われている。
なお、ボルト25aおよびボルト26aの配置ピッチは限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
【0034】
拘束工程では、図1および図2に示すように、金属部材10,10,10をボルト30、治具40、万力50等を介して、支持台20に移動不能に拘束する。
【0035】
第一金属部材11は、図2に示すように、第一金属部材11に形成された挿通孔にボルト30を挿通するとともに、このボルト30の先端を支持板24のネジ孔24aに螺着することにより、第一金属部材11を支持台20に上から押え付けられている。
なお、第一金属部材11を押え付けるピッチは限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
【0036】
この時、ボルト30の頭部30aと、第一金属部材11との間には、押え板31が介在されており、ボルト30による押え付け力を押え板31により分散させることで、第一金属部材11を面的に押え付けるように構成されている。
【0037】
本実施形態では、ボルト30を挿通するための挿通孔として、金属部材11,12,13を接合することにより完成された完成部材の使用目的に応じて予め形成された挿通孔を利用するものとする。なお、第一金属部材11への挿通孔の形成は、支持台20への載置前に形成していても、載置後に形成してもよい。また、挿通孔は、完成部材の使用に妨げとならず、また、完成部材に必要な強度を維持することが可能であれば、接合時にのみ使用されるものであってもよい。
【0038】
押え板31は、図4(a)および(b)に示すように、金属製の板材であって、ボルト30を挿通するための挿通孔31aが2箇所に形成されている。また、押え板31の下面(第一金属部材11側の表面)には、保護材32が配置されており、押え板31が直接第一金属部材11と接することにより、第一金属部材11に破損(キズ等)が生じることがないように構成されている。なお、押え板31に形成される、挿通孔31aの数は限定されるものではなく、適宜設定すればよい。
【0039】
本実施形態では、保護材32として、樹脂部材により構成されたものを、押え板31に3個固定するものとする。なお、保護材32の個数は限定されるものではなく、適宜設定すればよい。また、保護材32を押え板31の下面全体に配置してもよい。また、本実施形態では、保護材32の押え板31への固定をネジ等の留具32aを介して行うものとするが、例えば、接着剤を介して接着してもよく、その固定方法は限定されるものではない。
【0040】
第二金属部材12および第三金属部材13は、図1および図2に示すように、アーム41を備えた治具40により、突合部Jの近傍であって、押え板31と同ピッチで、支持台20に押え付けられている。
【0041】
本実施形態に係る治具40は、図2に示すように、アーム41と固定ボルト42と補助部材43とにより構成されている。アーム41は、金属製の板材により構成されており、固定ボルト42の押え付け力により変形することない強度を有している。アーム41は、断面略T字の第二金属部材12または第三金属部材13の突出部分を跨いで、補助部材43の上面を先端により押さえつけることが可能な長さを有している。また、アーム41の後端には、固定ボルト42を挿通する挿通孔が形成されている。
【0042】
固定ボルト42は、アーム41の挿通孔を挿通した状態で、先端が台座22,23に螺着されることでアーム41を下方に押え付ける。そして、この固定ボルト42の押え付け力は、アーム41を介して第二金属部材12または第三金属部材13に伝達される。
【0043】
補助部材43は、第二金属部材12または第三金属部材13の上面であって、アーム41の先端に対応する個所に配設されている。補助部材43の形状は、第二金属部材12または第三金属部材13の形状に応じて形成されている。また、補助部材43は、樹脂部材により構成されることで、第二金属部材12または第三金属部材13に破損(キズ等)が生じることがないように構成されている。
【0044】
図2に示すように、金属部材10は、左右から突合面が離間することがないように、万力50により横方向に押し付けられている。なお、金属部材11,12,13の横方向への押え付け方法は、これに限定されるものではない。
【0045】
金属部材10の横方向の押え付けは、左側の台座22に固定された万力50と、右側の台座23に固定された受部材51により、把持することにより行う。なお、万力50と第二金属部材12および受部材51と第三金属部材13の間には、それぞれ補助板52,52が介在されており、万力50による押え付け力を分散させて、突合部J,Jの全面が、密着するように構成されている。
【0046】
なお、本実施形態では、万力50および受部材51を、ボルトにより螺合することにより台座22,23にそれぞれ固定しているが、万力50および受部材51の固定方法は限定されるものではなく、適宜公知の手段により行えばよい。
【0047】
以上のようにすることで、金属部材10,10,10は、上下方向および左右方向において、移動不能に支持台20に拘束される。
【0048】
接合工程では、突合部Jに対して連続して摩擦攪拌を行う。具体的には、図5(a)に示すように、回転させた回転ツールAの攪拌ピンA2を、凸部11b,13b(12b)の上から凸部11b,13b(12b)の上面に設けた開始位置Sに挿入(圧入)するとともに、挿入した攪拌ピンA2を途中で離脱させることなく突合部Jを含むように設定した摩擦攪拌のルートに沿って相対移動させることで連続して摩擦攪拌を行ったうえで、終了位置で攪拌ピンA2を上方に離脱させればよい。
回転ツールAを回転させつつ突合部Jに沿って移動させると、図5(b)に示すように、回転ツールAと金属との摩擦熱により突合部Jの金属が塑性流動化し、突合部Jが固相接合される。本実施形態では、突合面11a,13a(12a)同士の間に形成された隙間の上方において、接合後も各金属部材10の凸部11b,12b,13bが残るように摩擦攪拌接合がなされる。
【0049】
回転ツールAの形態等に特に制限はないが、本実施形態では、図5(a)に示すものを使用している。図5(a)に示す回転ツールAは、工具鋼など接合対象よりも硬質の金属材料からなり、円柱状を呈するショルダ部A1と、このショルダ部A1の下端面A11に突設された攪拌ピン(プローブ)A2とを備えて構成されている。ショルダ部A1の下端面A11は、塑性流動化した金属を押えて周囲への飛散を防止する役割を担う部位であり、本実施形態では、凹面状に成形されている。攪拌ピンA2は、ショルダ部A1の下端面A11の中央から垂下しており、本実施形態では、先細りの円錐台状に成形されている。また、攪拌ピンA2の周面には、螺旋状に刻設された攪拌翼が形成されている。
【0050】
回転ツールAの移動速度(送り速度)は、攪拌ピンA2の寸法・形状、摩擦攪拌される金属部材10等の材質や肉厚等に応じて設定される。回転ツールAを移動させると、その攪拌ピンA2の周囲にある金属が順次塑性流動化するとともに、攪拌ピンA2から離れた位置では、塑性流動化していた金属が再び硬化する。
【0051】
以上説明した接合方法によれば、金属部材10が、金属部材10同士の接合部の近傍において、それぞれボルト30や治具40を介して固定されているため、摩擦攪拌接合時の回転ツールAの移動により、突合部Jにズレが生じることが無く、高精度に接合を行うことができる。
【0052】
また、各金属部材10の支持台20への固定は、回転ツールAの摩擦攪拌接合時の軌道を妨げることなく行われているため、好適である。
【0053】
また、第一金属部材11の固定について、押え板31を介在させた状態で行うため、ボルト30の締め付け力を押え板31により分散させて面的に押え付けるため、第一金属部材11への負担を軽減させることが可能となる。そのため、ボルト30の締め付け力により第一金属部材11に破損が生じることを防止する。
【0054】
また、押え板31の表面には樹脂部材からなる保護材32が配置されているため、押え板31により第一金属部材11を押え付ける際に、第一金属部材11に破損が生じることを防止する。
【0055】
また、金属部材10同士の突合部Jの下面には、接合ライン支持部材25が配設されているため、金属部材10を挟んで回転ツールAと反対側の面から回転ツールAの軌道を支持することで、突合面Jが摩擦攪拌接合時にずれることを防止する。したがって、高品質な接合を、簡易かつ安価に行うことが可能となる。
【0056】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明したが、本発明は前記の各実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、3つの金属部材を接合する場合について説明したが、本発明の接合方法において接合される金属部材の数量は限定されるものではない。
【0057】
また、前記実施形態では、中央の金属部材についてボルトにより固定を行い、左右両脇の金属部材については、アームを備えた治具を介して固定するものとしたが、例えば、全ての金属部材について、金属部材に形成された挿通孔を利用してボルトを介して固定するなど、各金属部材の固定方法は前記実施形態の方法に限定されるものではない。
【0058】
また、第二金属部材および第三金属部材の固定について、アームを備えた治具を使用せずに、クランプなどにより固定してもよい。
【0059】
また、押え板は、必要に応じて配置すればよく、省略することも可能である。同様に、保護材の省略も可能である。
【0060】
また、接合する金属部材の下面に凹凸がなく、下面が平面をなす場合には、接合ライン支持部材を要することなく、直接支持台にて突合部を支持してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の好適な実施形態の接合方法に係る金属部材の固定状況を示す斜視図である。
【図2】図1に示す金属部材の固定状況の正面図である。
【図3】支持台の一部分を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図4】押え板を示す図であって、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図5】(a)および(b)は、接合工程を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0062】
10 金属部材
11 第一金属部材
12 第二金属部材
13 第三金属部材
20 支持台
25 接合ライン支持部材
30 ボルト
31 押え板
40 治具
J 突合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金属部材を摩擦攪拌接合により接合する方法であって、
接合される前記金属部材同士の突合面を突き合わせた状態で、前記金属部材を支持台に載置し、少なくとも一方の前記金属部材に形成された挿通孔にボルトを挿通するとともに、当該ボルトを利用して該金属部材を前記支持台に押え付けた後、前記金属部材同士を摩擦攪拌接合することを特徴とする、
接合方法。
【請求項2】
前記ボルトは、前記金属部材の上方に配設された押え板を介して該金属部材を押え付けることを特徴とする、
請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
前記押え板の前記金属部材側の表面に、保護材が配置されていることを特徴とする、
請求項2に記載の接合方法。
【請求項4】
前記金属部材同士の突合部の下面に、接合ライン支持部材が配設されていることを特徴とする、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の接合方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−302422(P2008−302422A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154343(P2007−154343)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(502444733)日軽金アクト株式会社 (107)
【Fターム(参考)】