説明

接合構造体

【課題】非金属性部材を熱可塑性樹脂組成物を介して金属性部材に接合させるようにした接合構造体の提供。
【解決手段】アルミニウム合金等の金属性部材2をアンモニア、ヒドラジン及び/又は水溶液アミン化合物に浸漬して、表面に微細凹凸を形成する。その表面に対してPPS又はPBTを主成分とする熱可塑性樹脂組成物をゲート10から射出成形することで、熱可塑性樹脂成型物4が強固に接合される。また、その熱可塑性樹脂成型物4によって永久磁石等の非金属性部材3が金属性部材2に固定され、接合構造体1が得られる。その熱可塑性樹脂組成物の硬化過程において、樹脂の熱収縮により非金属性部材3は金属性部材2に押圧され、より強固に接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、家電機器、自動車部品、カメラ機器,その他構造部品等に使用される接合構造体に関する。更に詳しくは、金属性部材と非接合性の部材とが一体化された接合構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
金属と樹脂を一体化する技術は、自動車、家電製品、電子機器、その他産業部品等に適用されていて、多くの接合技術が開発されている。この多くは樹脂を接着剤により金属に直接接着させる方法である。しかしながら、接着剤は経時により接着強度が低下し、表面の状態等によって接着力が著しく異なり、接着性が不安定であるという問題がある。一方、接着剤を使用せず、熱可塑性樹脂を金属表面に射出成形することにより両者を接合させることも可能である。しかしながら、金属と熱可塑性樹脂では線膨張率等の物性で大きな差があり、充分な接合強度で金属と熱可塑性樹脂を一体化することは一般的には困難である。
【0003】
一方で、ガラス、永久磁石等の磁性体、タイル、セラミックス、石材、又は木材等の非金属性部材の表面に対して熱可塑性樹脂を射出成形したとしても、両者は強固に接合しない。故に、このような熱可塑性樹脂と強固に接合しない非金属性部材と、金属性部材とを一体化しようとした場合、単に両部材の間に熱可塑性樹脂を射出成形したとしても、両部材は、その熱可塑性樹脂を介して強固に接合しない。従って、両部材を接合するためには、両部材に共通するボルト孔を設け、そのボルト孔にボルトを貫通させて締めることにより一体化させる方法が採られる(例えば特許文献1)。
【0004】
また、このようなボルト機構を設けずに、両部材を熱可塑性樹脂を介して接合する手法も開発されてきた。このような熱可塑性樹脂と強固に接合しない非金属性部材と、金属性部材とを一体化しようとした場合、図1のような構造を採用するのが一般的である。即ち、金属性部材2に貫通孔2bを設け、この貫通孔2bを貫通するように、樹脂4を板状の金属性部材2の両面に射出成形する。射出成形された樹脂4は貫通孔2bを塞ぎ、貫通孔2bの径よりも大きな径の蓋をした形態となる。それ故、樹脂4が硬化した後は、金属性部材2から引き抜くことが困難である。また、同図に示すように、樹脂4が、金属性部材2と接した非金属性部材3の両端を覆うようにすることで、樹脂4が金属性部材2及び非金属性部材3を挟み込むような態様となる。即ち、樹脂4を介して金属性部材2と非金属性部材3が間接的に接合され、接合構造体1が構成される。
【0005】
【特許文献1】特開2005−299871号公報
【特許文献2】特開2007−301972号公報(マグネシウム合金)
【特許文献3】WO―2004/041532号公報(アルミニウム合金)
【特許文献4】特許第3954379号公報(アルミニウム合金)
【特許文献5】特表2003−530808号公報
【特許文献6】特開2002−27721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1に示した構造を採用する場合、射出された樹脂4は金属性部材2の裏面側(非金属性部材3の反対側)にもはみ出て射出されているので、樹脂4が金属性部材2から剥離して離脱するおそれこそ少ないが、金属性部材2に貫通孔2bを形成する工程が必要であり、製造工程の低コスト化、簡素化を阻害することになる。さらに金属性部材2の裏面側には樹脂4の突起部4aが生じるため、この裏面側に他の部材を取り付ける必要がある場合には、この樹脂の突起部が干渉してしまうことになり、接合構造体1の使用態様に制限が生じる。さらに、意匠面を考慮しても、裏面を滑らかにすることができないという制限が課されることになる。また、両部材をボルトやリベット等により一体化させる場合であっても、同様の問題が生じる。そして、この方法は機械加工を伴うため工数を要し、かつボルトの緩み等のおそれもあり不安定で確実性に乏しい。しかも部材が電子部品等小さいものであれば、加工、組立が困難である。
【0007】
本発明は、このような技術背景のもとになされ、従来の問題点を解決するために想起されたもので、下記の目的を達成する。本発明の目的は、金属性部材と非金属性部材とを簡易な方法で強固に接合し、これにより得られる接合構造体が他の部材に干渉することを防止し、意匠面でも好ましいものとすることにある。さらに、その接合構造体の製造工程の簡素化、低コスト化に寄与することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記目的を達成するために次の手段をとる。
本発明1に係る接合構造体は、金属性部材と、熱可塑性樹脂組成物と強固に接合しない非金属性部材との接合構造体であって、前記金属性部材の表面にエッチング処理による微細凹凸を形成し、その金属性部材の一部表面にのみ熱可塑性樹脂組成物が射出されるように、かつその熱可塑性樹脂成型物が前記非金属性部材に接して、前記非金属性部材を前記金属性部材に固定するように金型を設置して射出成形を行うことによって得られ、前記微細凹凸に前記熱可塑性樹脂成型物が侵入していることにより前記金属性部材とその熱可塑性樹脂成型物が強固に接合していることを特徴とする。
【0009】
本発明2に係る接合構造体は、本発明1に記載した接合構造体であって、前記射出成形を行うときに、前記金属性部材側の温度を前記非金属性部材側よりも低温とすることによって、その金属性部材に近い領域から順次、前記熱可塑性樹脂組成物の熱収縮作用を促進させ、その熱可塑性樹脂成型物が前記非金属性部材を前記金属性部材側に押す圧力を生じさせ、その圧力によって前記非金属性部材と前記金属性部材が強固に接合されていることを特徴とする。
【0010】
本発明3に係る接合構造体は、本発明2に記載した接合構造体であって、前記非金属性部材は、表面全体が前記熱可塑性樹脂成型物によって覆われることにより前記金属性部材に固定されていることを特徴とする。
【0011】
本発明4に係る接合構造体は、本発明1に記載した接合構造体であって、前記金属性部材はアルミニウム合金であり、前記エッチング処理は、そのアルミニウム合金をアンモニア、ヒドラジン及び水溶性アミン化合物から選択される1種以上の水溶液に浸漬する処理であり、前記熱可塑性樹脂組成物には、繊維フィラー及び/又は粉末型フィラーが加えられており、前記アルミニウム合金と前記熱可塑性樹脂組成物の線膨張率を近づけていることを特徴とする。
【0012】
本発明5に係る接合構造体は、本発明1に記載した接合構造体であって、前記非金属性部材は、ガラス、永久磁石等の磁性体、タイル、セラミックス、石材、及び木材から選択される1種以上であることを特徴とする。
【0013】
本発明6に係る接合構造体は、本発明1に記載した接合構造体であって、前記熱可塑性樹脂組成物は、ポニフェニレンスフィド及びポリブチレンテレフタレートから選択される1種を主成分とする樹脂であることを特徴とする。
【0014】
以下、本発明の接合構造体を構成する金属性部材、熱可塑性樹脂組成物、及び非金属性部材に関して説明する。
【0015】
[金属性部材]
本発明で対象とする金属性部材は、主にアルミニウム合金、マグネシウム合金、チタン合金、銅合金等の軽合金と、鋼材、ステンレス鋼である。これら金属性部材の表面に何らの処理も施さない状態で熱可塑性樹脂組成物を射出成形したとしても充分な接合力を得られない場合が多い。特に、高信頼性が要求される場合には不十分である。従って本発明においては、金属性部材の表面にエッチング処理を施し、これにより接合力を高めている。本発明者らは、金属合金と樹脂とを強い接合力で一体化すべくエッチング手法を開発しており、これらの技術は一部開示されている。(特許文献2〜4)。
【0016】
[アルミニウム合金の例]
その概要をアルミニウム合金を例に説明する。アルミニウム合金として規格化されたものが使用されるが、製品化するために素材から種々の加工が施される。その加工された形状物の表面は、油脂類や微細な塵が付着している。特に、機械加工された表面には、機械加工時に用いられるクーラント液、切粉等が付いており、これらを洗浄することが好ましい。具体的には研磨等で取り除くか、あるいはアルミ脱脂剤で洗浄する。
【0017】
[化学エッチング]
次に、アルミニウム合金の表面に化学エッチング処理を施す。これは、本発明における必須の処理ではないものの、これを行うことでアルミニウム合金形状物と熱可塑性樹脂組成物との接合がより効果的なものとなる。具体的には、アルミニウム合金を塩基性水溶液(pH>7)に浸漬し、その後に水洗する。塩基性水溶液に用いる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ソーダ灰、又はアンモニア等である。この処理を行うことでアルミニウム合金表面は、水素を放ちつつアルミン酸イオンになって溶解し、アルミニウム合金表面は削られて、エッチングが行われ新しい面になる。
【0018】
[化成処理]
次に、化学エッチングを施したアルミニウム合金表面に化成処理を施す。これは、本発明における必須の処理である。具体的には、アルミニウム合金をアンモニア、ヒドラジン及び/又は水溶性アミン化合物の水溶液に浸漬する。この処理を行うことで、アルミニウム合金表面を微妙に浸して微細凹凸を形成し、窒素含有化合物を吸着させるのである。3〜10%のヒドラジン一水和物水溶液を40℃〜70℃とし、これにアルミニウム合金を数分浸漬した後、水洗する方法が好ましい。臭気が無く、扱いも容易だからである。
【0019】
[熱可塑性樹脂]
次に、このように化成処理のなされたアルミニウム合金表面に対して、結晶性の熱可塑性樹脂組成物を射出成形させる。その熱可塑性樹脂組成物は、ポニフェニレンスフィド(以下、「PPS」という。)又は、ポリブチレンテレフタレート(以下、「PBT」という。)を主成分とするものを用いる。また、フィラーを含有させることは、機械的特性を改善し、アルミニウム合金形状物と熱可塑性樹脂組成物との線膨張率を一致させるという観点から非常に重要である。繊維フィラーとしては、ガラス繊維、炭素繊維、及びアラミド繊維から選択される1種以上を用いると良く、粉末型フィラーとしては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、タルク、ガラス、及び粘土から選択される1種以上を用いると良い。
【0020】
このPPSやPBTについては、前述の特許文献に記載されて公知であり、詳細な説明は省略する。コネクタの例によると、PPSについては次のような特徴がある。結晶化に要する時間が例えば熱硬化性エポキシ樹脂の1/2以下であるといわれており、射出成形金型に残る成形バリの除去が不要で生産性がよい。また、エポキシ樹脂と比較すると、温度60〜80度の湿度90%の環境下において、寸法の経時変化が小さいとされている。従って、PPSは構造体に適用しても、その寸法精度は長期的に安定したものとなる。
【0021】
[非金属性部材]
接合される対象物である非金属性部材は、金属体に直接接合できず、熱可塑性樹脂組成物と強固に接合しない部材である。非金属性部材は、ガラス、永久磁石等の磁性体、タイル、セラミックス、石材、木材等である。即ち、割れやすく加工の困難なものであり、又、射出成形の対象とするのに適さない部材である。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、金属性部材の表面に化成処理によって微細凹凸を形成している。そしてこの微細凹凸に熱可塑性樹脂組成物が侵入し、硬化することによって、熱可塑性樹脂成型品と金属性部材が強固に接合される。結果として、その熱可塑性樹脂成型品に保持される非金属性部材と前記金属性部材とが強固に接合されるのである。即ち、金属性部材の一部表面にのみ熱可塑性樹脂を射出成形することによって十分な接合力が得られるので、図1に示したように熱可塑性樹脂組成物が金属性部材を貫通するような構成を採る必要は無い。また、金属性部材、非金属性部材に機械的な加工を施す必要がなく、簡易な方法で強固に接合できるので、製造工程の簡素化、低コスト化に寄与する。また、図1に示したように金属性部材の裏面側に熱可塑性樹脂成型物が突出することもないので、他の部材への干渉を防止し、その接合構造体を汎用性のあるものとすることができる。さらに、意匠面でも好ましいものとすることができる。
【0023】
また、射出接合の際に、金属性部材側の温度を非金属性部材側よりも低温とすることによって、その金属性部材に近い領域から順次、熱可塑性樹脂組成物の熱収縮作用を促進させている。これにより、その熱可塑性樹脂成型物が非金属性部材を金属性部材側に押す圧力を生じさせ、その圧力によって非金属性部材と金属性部材が強固に接合される。
さらにこのとき、非金属性部材の表面全体を熱可塑性樹脂成型物によって覆われる構成とすることにより、非金属性部材全体を金属性部材側に抑えるよう圧力が加わることになるので、より強固に接合された接合構造体とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。本発明の対象となる金属体は軽合金等であるが、この合金に限定されることはない。図2は、金属性部材2に対して熱可塑性樹脂を射出成形し、非金属性部材3と接合させるための射出成型用金型の構造を示している。金属性部材2は例えばアルミニウム合金板であり、その表面2aは前述した化成処理等が施され、微細な凹凸面となっている。
【0025】
一方、金型20aのキャビティ内には予め非金属性部材3が設置されており、この金型20aに設けられたゲート10aからキャビティ内に熱可塑性樹脂組成物が射出される(その際の熱可塑性樹脂組成物の流れを図2中のAで示す)。このようにして金型内部に射出された熱可塑性樹脂組成物は、表面2aの微細凹凸に侵入した状態で結晶化し、硬化する。表面2aは前述した化成処理を施すことによって、図2に示すように、アンダーカット形状、即ち凹部底面側の径が凹部入口よりも大きな形状となっている。従って、アンカー効果によって、微細凹凸に侵入している熱可塑性樹脂成型物は微細凹凸から容易に引き抜くことができないようになっている。
【0026】
ここで金型20bには冷却管21が設けられ、その内部を冷却水が流れている。よって、金属性部材2側の温度は、非金属性部材3がの温度よりも低温に保たれている。これによって、熱可塑性樹脂の熱収縮は、金属性部材3の表面2aに近い領域から先に始まり、徐々に金型20aのゲート10a方向に進行する。従って、非金属性部材3と金属性部材2の間の熱可塑性樹脂組成物は、徐々に金属性部材2側に寄せられながら熱収縮し、硬化が進行する。
【0027】
この硬化過程の熱収縮で、非金属性部材3を係止する保持部分の熱可塑性樹脂組成物の硬化とともに図2の矢印Bで示す方向に押し付け力が発生する。この結果、熱可塑性樹脂組成物が硬化すると、その熱可塑性樹脂成型物は金属性部材2の表面2aに強固に接合すとともに、非金属性部材3をも強固に金属性部材2に押し付けて接合させることになる。
【0028】
金型の冷却については、設計される型構造、冷却回路等の冷却能力に応じ、硬化時間等の冷却効果を評価することも行われている。一般的には、金型冷却は均一で効率的な冷却を達成することで高品質の樹脂製品を得るようにしている。しなしながら、本発明の場合は、金属性部材を非金属性部材より相対的に低い温度に保つことにより、金属性部材の表面近傍の樹脂から早く硬化し、樹脂の収縮効果で接合力が大きくなることが期待できる。即ち、金属性部材側の金型のみ冷却するか、又は相対的に非金属性部材側の金型よりも低温とするように温度の傾斜を設けると良い。PPS等は、一般の熱可塑性樹脂組成物に比し、熱収縮率は小さい樹脂であるが、樹脂は熱収縮が必ず伴う以上、前述のように樹脂を射出し硬化するときには押し付け力が発生する。
【0029】
なお、図2の例において、金属性部材2の中央部に貫通孔を設け、これに金型20b側からゲートを連結し、熱可塑性樹脂組成物をその貫通孔に射出するようにしても良い。このような構成を採った場合、金型20aと非金属性部材3により形成されるキャビティに熱可塑性樹脂が射出される。
【0030】
このようにして得られる接合構造体1は、図3に示すような構造となる。熱可塑性樹脂成型物4は金属性部材2と強固に接合され、非金属性部材3は、その熱可塑性樹脂成型物4に保持され、かつ前述した熱収縮により金属性部材2側に押し付けられている。この例では、熱可塑性樹脂成型物4と金属性部材2接触面積が大きく、両者の接合力が強い。
【0031】
ここで、図4に示すように、非金属性部材3の表面全体が熱可塑性樹脂成型物によって覆われるようにした場合、図2の矢印Cで示したような熱収縮による押し付け力がより広範囲に作用し、非金属性部材3が金属性部材2とより強く接合する。
【0032】
このように、非金属性部材を熱可塑性樹脂組成物で封入する具体例として、電動モータのステータを構成する永久磁石を保持するため、この永久磁石の遮断部材となる樹脂体を射出成形するものが知られている(例えば、特許文献5参照)。また、スピンドルモータにも同様な例がある(例えば、特許文献6参照)。これらについても本発明を適用可能である。樹脂と金属が少ない領域でも非常に強力に接合するので、小型のモーターであっても簡易かつ低コストに構成することが可能である。さらにアンカー効果に基づく接合であるため、長期間に渡り接合力が維持できる。
【0033】
接合構造体の他の構成例について説明する。この例では、金属性部材2はアルミニウム合金板であり、非金属性部材3は永久磁石であるとする。図5は、アルミニウム合金板2と永久磁石3を接合した例を示す接合構造体1の断面図である。熱可塑性樹脂成型物4を固定部材として、永久磁石3をアルミニウム合金板2の表面に直接接触させて接合する例である。熱可塑性樹脂成型物4は、アルミニウム合金板2の表面に接合(固着)されている。熱可塑性樹脂成型物4は、永久磁石3の外周及び上面を抱き込むように包んで、固定して把持している。即ち、永久磁石2を直接アルミニウム合金板1に取り付け、その周縁部を熱可塑性樹脂成型物4で抑えて固定している。これにより、永久磁石3は、アルミニウム合金板2の表面に、接着又は固着されてはいないが、直接的に接触して固定配置されている。
【0034】
図6、図7、図8に示した実施の形態の場合は、非金属性部材3に、熱可塑性樹脂成型物4と係合させるための機械加工が施されている。これらの例は、非金属性部材3の外面(金属性部材2と反対側の面)からの熱可塑性樹脂成型物4の突出が許されない場合に適用する構成である。いずれも、非金属性部材3を金属性部材2に直接接触して固定している。
【0035】
図6は、非金属性部材3の内壁部を段差状のアンダーカット形状にして、断面形状で見た場合に非金属性部材3がC形状となるように内部をくり抜いている。この内壁部に熱可塑性樹脂組成物を射出させ、段差内壁及び金属性部材2に接触している熱可塑性樹脂成型物4を介して、非金属性部材3を金属性部材2に固定する構成となっている。
【0036】
図7は、図6と同様の構成であるが、非金属性部材3の内壁部の形状を内側が広い楔形状のアンダーカット形状にている。この楔形状の内壁部に熱可塑性樹脂組成物を射出させ、楔形状の内壁及び金属性部材2に接触している熱可塑性樹脂成型物4を介して、非金属性部材3を金属性部材2に固定する構成となっている。図6及び図7の場合のゲート10の位置は、金属性部材2側に限定される。この場合、同図に示すように、金属性部材2の中央部に貫通孔を設け、これを介して非金属性部材3の内壁部に射出成形を行う。
【0037】
図8は、非金属性部材3の側壁に溝部を設け、この溝部と金属性部材2を連結するように熱可塑性樹脂組成物を射出させ、この溝部に熱可塑性樹脂成型物4が係合するように構成した例である。
【0038】
図9、図10は、非金属性部材3の中間部に加工を施すことが可能な場合に適用できる構成である。図9は、非金属性部材3の中間部に、複数の円筒の孔である貫通孔を設け、この貫通孔に熱可塑性樹脂組成物を射出して、その熱可塑性樹脂成型物4を金属性部材2に接合させることにより、非金属性部材3を金属性部材2に固定する構成である。貫通孔に射出された熱可塑性樹脂組成物は、熱収縮により、貫通孔の端部のざぐり部分3aを押圧して、非金属性部材3を金属性部材2に押圧して接合する。熱可塑性樹脂成型物4と金属性部材2との接触部は、前述した原理で強固に接合されている。
【0039】
図10は、図9の変形例であり、貫通孔の金属性部材2側の端部の内径を大きくし、熱可塑性樹脂成型物4の金属性部材2との接触面積を多くした構成である。この例では、図9の場合に比し、接合力は強固になる。この図9、図10に示した例は、非金属性部材3の周囲に、樹脂をはみ出して接合する構成でないので、非金属性部材3の原型(外部輪郭)を維持して接合できるという特徴がある。
【0040】
図11は、非金属性部材3の周縁部を傾斜面としている。即ち金属性部材2の表面に対して、非金属性部材3の周縁部を鋭角な傾斜面に形成し、この周縁部に熱可塑性樹脂組成物を射出させる。傾斜面に接している熱可塑性樹脂組成物の熱収縮によって、非金属性部材3が金属性部材2方向に押圧されて固定される。
【0041】
図12は、図10、図11の変形例であり、図10と図11の特徴を併せ持つ構成である。図9、図10、図12の各例は、非金属性部材3が広い面積を有する場合に有効であり、非金属性部材3の中間部が浮き上がるのを防止する効果もある。
【0042】
以上、種々の構造例について説明したが、いずれの例も板状の金属性部材の片側表面の一部領域のみで熱可塑性樹脂成型物と強固に接合する。本発明によって、金型内で非金属性部材を位置決めセットした後に樹脂の射出成形を行うだけで容易に強固な接合構造体を得ることが出来る。即ち金属性部材及び非金属性部材に煩雑な機械的加工を施す必要は無く、製造工程の簡素化、低コスト化に寄与する。本発明は、本実施の形態に限定されないことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、従来技術における金属性部材への射出成形による非金属性部材の保持形態を示す断面図である。
【図2】図2は、熱可塑性樹脂組成物の熱収縮状況を示す金型構成の断面図である。
【図3】図3は、図2の金型構成によって得られる接合構造体の断面図である。
【図4】図4は、非金属性部材の表面全体を熱可塑性樹脂組成物で覆うようにした接合構造体の断面図である。
【図5】図5は、熱可塑性樹脂成型物を固定部材として、永久磁石をアルミニウム合金板の表面に直接接触させて接合させた接合構造体の断面図である。
【図6】図6は、非金属性部材に段差のある内壁部を設け、この範囲に樹脂を射出成形して得られる接合構造体の断面図である。
【図7】図7は、非金属性部材に楔形状の内壁部を設け、この範囲に樹脂を射出成形して得られる接合構造体の断面図である。
【図8】図8は、非金属性部材の側壁に溝部を設け、これと金属性部材を連結するように樹脂を射出成形して得られる接合構造体の断面図である。
【図9】図9は、非金属性部材の中間部に貫通孔を設け、これと金属性部材で仕切られる領域に樹脂を射出成形して得られる接合構造体の断面図である。
【図10】図10は、図9で示した接合構造体の変形例であり、非金属性部材の貫通孔の金属性部材側の径を大きくした場合の断面図である。
【図11】図11は、非金属性部材の周縁部を傾斜面とする加工を行い、この傾斜面と金属性部材を連結するように樹脂を射出成形して得られる接合構造体の断面図である。
【図12】図12は、図11で示した構造に加え、非金属性部材の中間部に貫通孔を設け、これと金属性部材で仕切られる領域に樹脂を射出成形して得られる接合構造体の断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1…接合構造体
2…金属性部材
3…非金属性部材
4…熱可塑性樹脂成型物
10…ゲート
20…金型
21…冷却管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属性部材と、熱可塑性樹脂組成物と強固に接合しない非金属性部材との接合構造体であって、
前記金属性部材の表面にエッチング処理による微細凹凸を形成し、
その金属性部材の一部表面にのみ熱可塑性樹脂組成物が射出されるように、かつその熱可塑性樹脂成型物が前記非金属性部材に接して、前記非金属性部材を前記金属性部材に固定するように金型を設置して射出成形を行うことによって得られ、
前記微細凹凸に前記熱可塑性樹脂成型物が侵入していることにより前記金属性部材とその熱可塑性樹脂成型物が強固に接合していることを特徴とする接合構造体。
【請求項2】
請求項1に記載した接合構造体であって、
前記射出成形を行うときに、前記金属性部材側の温度を前記非金属性部材側よりも低温とすることによって、その金属性部材に近い領域から順次、前記熱可塑性樹脂組成物の熱収縮作用を促進させ、その熱可塑性樹脂成型物が前記非金属性部材を前記金属性部材側に押す圧力を生じさせ、
その圧力によって前記非金属性部材と前記金属性部材が強固に接合されていることを特徴とする接合構造体。
【請求項3】
請求項2に記載した接合構造体であって、
前記非金属性部材は、表面全体が前記熱可塑性樹脂成型物によって覆われることにより前記金属性部材に固定されていることを特徴とする接合構造体。
【請求項4】
請求項1に記載した接合構造体であって、
前記金属性部材はアルミニウム合金であり、
前記エッチング処理は、そのアルミニウム合金をアンモニア、ヒドラジン及び水溶性アミン化合物から選択される1種以上の水溶液に浸漬する処理であり、
前記熱可塑性樹脂組成物には、繊維フィラー及び/又は粉末型フィラーが含有されており、前記アルミニウム合金と前記熱可塑性樹脂組成物の線膨張率を近づけていることを特徴とする接合構造体。
【請求項5】
請求項1に記載した接合構造体であって、
前記非金属性部材は、ガラス、磁性体、タイル、セラミックス、石材、及び木材から選択される1種以上であることを特徴とする接合構造体。
【請求項6】
請求項1に記載した接合構造体であって、
前記熱可塑性樹脂組成物は、ポニフェニレンスフィド及びポリブチレンテレフタレートから選択される1種を主成分とする樹脂であることを特徴とする接合構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−30111(P2010−30111A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193660(P2008−193660)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【出願人】(000206141)大成プラス株式会社 (87)
【Fターム(参考)】