説明

接合部品の位置検出が容易な樹脂複合体、及び樹脂複合体における接合部品の位置検出方法

【課題】接合部品の位置検出が容易な樹脂複合体、及び樹脂複合体における接合部品の位置検出方法を提供すること。
【解決手段】合成樹脂よりなる本体部品2と、本体部品2の裏側面21に溶着された同材質の合成樹脂よりなる接合部品3とを有する。接合部品3には、接合された面とは反対側の裏側面31に、本体部品2における本体基準点上に位置するべき部品基準点33に関して規則的に配設された検査用段差部32が設けられている。本体部品2の表側面23から接合部品3の位置検出を行うに当たっては、超音波を先端から発する超音波探触子を用い、本体部品2の表側面23上に超音波探触子を当接させ、本体基準点上またはその近傍の検査基準点に関して規則的に上記超音波探触子を移動させ、超音波探触子の移動軌跡と検査用段差部32とが交わる交点位置を複数検出し、交点位置を基にして幾何学的に部品基準点33の存在位置を特定できるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合部品の位置検出が容易な樹脂複合体、及び樹脂複合体における接合部品の位置検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂よりなる本体部品の裏側面に溶着により取付けられた接合部品の溶着状態(位置)を本体部品の表面側から確認する必要がある場合(例えば、中空容器の内面に接合部品を溶着させた場合に外側から確認する場合等)には、上記本体部品が樹脂部品が透明であれば透視して行うことも可能であるが、有色の不透明なものであれば、直接的に位置観察を行うことは不可能である。そのため、超音波等の物質を透過する性質を利用した方法、例えば、超音波探触法等の適用を試みる必要がある。
超音波探触法を利用すれば、部品表面または溶着界面において部品の内部を通過した音波が反射してくる時間を測定して種々の解析を行うことができる。(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平3−26909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記本体部品の裏側面に溶着した接合部品の位置を特定するために、超音波探触法をどのようにして適用させるかについては、いまだ十分な検討がなされていなかった。特に、上記本体部品と上記接合部品とが同じ音速値(超音波が内部を通過する速度)をもつ同じ材質からなる場合には、相溶性によって溶着界面自体が明確でない。そのため、溶着界面において超音波の反射が起こらず、溶着界面の位置確認は困難である。それ故、溶着界面を確認することなく接合部品の接合位置を確認できる手法の開発が必要である。
【0005】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、本体部品に裏側面に溶着された接合部品の位置検出が表側面から容易にできる樹脂複合体、及び樹脂複合体における接合部品の位置検出方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、合成樹脂よりなる本体部品と、該本体部品の裏側面に溶着された同材質の合成樹脂よりなる接合部品とを有する樹脂複合体であって、
上記接合部品には、接合された面とは反対側の裏側面に、上記本体部品における本体基準点上に位置するべき部品基準点に関して規則的に配設された検査用段差部が設けられており、
上記本体部品の表側面から上記接合部品の位置検出を行うに当たっては、超音波を先端から発する超音波探触子を用い、上記本体部品の表側面上に上記超音波探触子を当接させ、上記本体基準点上またはその近傍の検査基準点に関して規則的に上記超音波探触子を移動させ、該超音波探触子の移動軌跡と上記検査用段差部とが交わる交点位置を複数検出し、該複数の交点位置を基にして幾何学的に上記部品基準点の存在位置を特定できるように構成されていることを特徴とする接合部品の位置検出が容易な樹脂複合体にある(請求項1)。
【0007】
本発明の樹脂複合体は、上記接合部品に特定の上記検査用段部を設け、かつ、位置検出時に超音波探触子を規則的に移動させることにより、従来の超音波探触法では困難であった同材質の合成樹脂よりなる上記本体部品と上記接合部品との溶着状態(位置)を特定することができるものである。
【0008】
本発明の樹脂複合体は、上記本体部品及び上記接合部品が同材質の合成樹脂よりなる。同一材質であれば同音速値を有するだけでなく、互いに相溶して溶着界面位置が定まらないため、単純に超音波探触法を適用しただけでは接合部品の位置検出を正確に行うことは困難である。
【0009】
一方、上記超音波探触子は、単一材料からなる部品に設けられた段差部に位置するとき、同時に二つの波形が現れる特徴的な波形を有する反射波を検出することができる。そのため、本体部品と接合部品の界面が確認できなくても、接合部品の表面に特定の段差を設けておけば、本体部品及び接合部品を通過させた超音波によって接合部品の段差が存在する位置を正確に検出することができる。
【0010】
本発明では、この超音波の特性を利用するために、上記検査用段差部を上記部品基準点に関して規則的に予め設けておく。これにより、上記超音波探触子を本体部品の表側面上において規則的に移動させることによって、上記超音波探触子の移動軌跡と上記検査用段差部とが交わる交点位置を検出することができる。複数検出した交点位置を基にすれば、幾何学的に上記部品基準点の存在位置を特定でき、当該部品基準点と上記検査基準点との位置関係も明らかとなる。そして、検査基準点と本体基準点との位置関係から上記接合部品の位置を特定することができる。なお、検査基準点と本体基準点とは一致させておくことが望ましいが、互いの位置関係が明確であれば別の位置に設定してもよい。
【0011】
また、本発明では、上記本体部品の表側面側から上記超音波探触子を当接させることで、上記接合部品の位置検出を行うことができる。そのため、上記本体部品が中空の容器であり、その内部に上記接合部品が溶着された場合であっても、容易にその位置検出を行うことが可能である。
【0012】
このように、本発明によれば、接合部品の位置検出が容易な樹脂複合体を提供することができる。
【0013】
第2の発明は、合成樹脂よりなる本体部品と、該本体部品の裏側面に溶着された同材質の合成樹脂よりなる接合部品とを有する樹脂複合体における、上記接合部品の位置検出を上記本体部品の表側面から行う位置検査方法であって、
上記接合部品には、接合された面とは反対側の裏側面に、上記本体部品における本体基準点上に位置するべき部品基準点に関して規則的に配設された検査用段差部を予め設けておき、
超音波を先端から発する超音波探触子を用い、上記本体部品の表側面上に上記超音波探触子を当接させ、上記本体基準点上またはその近傍の検査基準点に関して規則的に上記超音波探触子を移動させ、該超音波探触子の移動軌跡と上記検査用段差部とが交わる交点位置を複数検出し、該複数の交点位置を基にして幾何学的に上記部品基準点の存在位置を特定することを特徴とする樹脂複合体における接合部品の位置検出方法にある(請求項5)。
【0014】
本発明の位置検出方法は、第1の発明の樹脂複合体と同様の構成を有する樹脂複合体における接合部品の位置検出方法である。
つまり、本発明の方法によれば、上記接合部品に特定の上記検査用段部が設けられていること、及び、超音波探触子を規則的に移動させることにより、上述したように、同材質の合成樹脂よりなる上記本体部品と上記接合部品との溶着状態(位置)を特定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
第1、第2の発明の樹脂複合体を構成する合成樹脂としては、溶着可能な樹脂あればよく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等を用いることができる。そして、上記本体部品及び上記接合部品はポリエチレンよりなることが好ましい(請求項4、8)。ポリエチレンは、溶着性に優れ、多様な用途に適用できるので、本発明の適用が非常に有効である。
【0016】
また、上記接合部品には、上述したごとく部品基準点に対して規則的に配設された検査用段差部を設けるが、この検査用段差部は、後述する具体例の他にも、上記部品基準点に対して規則的に配設されたものであれば様々な形態が考えられうる。
なお、上記本体基準点、部品基準点及びこれに関する検査用段差を一組だけでなく複数組設けることもできる。複数組設けた場合には、上記接合部品の複数の部品基準点の位置を特定することができる。これらは接合部品の形状や必要特性に応じて選択すればよい。
【0017】
また、上記超音波探触子の走査方向は、上記検査用段差部、及び幾何学的な特定方法との兼ね合いで、上記部品基準点を特定できるように規則性を有していれば、様々な移動方向を選択できる。
【0018】
上記樹脂複合体の検査用段差部は、上述したように、上記部品基準点に対して規則的に配設されるものであるが、上記検査用段差部は、上記部品基準点を中心とした真円上に配置され、該検査用段差部を境にしてその内側と外側とで厚み方向の突出高さに差異を設けてあり、上記本体部品の表面側から上記接合部品の位置検出を行うに当たっては、上記超音波探触子を上記本体部品の表側面上において、上記検査基準点において交差する2本の直線検査線上を通るように上記超音波探触子を走査させ、上記検査用段差部と上記直線検査線が交わる4つの交点位置を特定し、任意の2点の中点を通る垂線を2本引き、当該垂線の交点が上記部品基準点の存在位置であることを特定できるように構成されていることが好ましい(請求項2、6)。
【0019】
すなわち、上記検査用段差部は、上記部品基準点を中心とした真円上に配置され、該検査用段差部を境にしてその内側と外側とで厚み方向の突出高さに差異を設けてある。このように上記検査用段差部は単純な形状であるため、その形成が容易である。また、上記交点位置の検出も、上記超音波探触子を、上記検査基準点において交差する2本の直線検査線上を通るように走査させるという簡便な方法で行うことができる。そして上記のごとく、部品基準点を特定するための幾何学的手法も簡単である。
また、上記突出高さの差異は、1.0〜5.0mmであることが好ましい。
【0020】
また、上記樹脂複合体は、上記検査用段差部は、上記部品基準点上において交差する2本の直線を通ると共に上記表側面に対して垂直な2つの平面上に配置され、2つの平面に挟まれた隣接する領域の厚み方向の突出高さに差異を設けてあり、上記本体部品の表面側から上記接合部品の位置検出を行うに当たっては、上記超音波探触子を上記本体部品の表側面上において、上記検査基準点を中心とした真円上を通るように上記超音波探触子を走査させ、上記検査用段差部と上記真円が交わる4つの交点位置を特定し、上記真円上において1つ飛ばして隣接する2つの交点同士を結んだ直線を2本引き、当該直線の交点が上記部品基準点の存在位置であることを特定できるように構成されていてもよい(請求項3、7)。
【0021】
この場合には、上記検査用段差部が、上述のような特定の形態で設けられているため、上記超音波探触子の移動を、真円上を通るように走査させるという簡単な移動にすることができ、上記交点位置の検出も簡便な方法で行うことができる。また、部品基準点を特定するための幾何学的手法も上記のごとく簡単である。
さらに、上記検査用段差部の突出高さの差異を、4つの領域においてすべて異なる値に設定すれば、必要に応じてその値を検出することにより、上記接合部品の部品基準点に関する回転方向の位置検出も可能となる。
【実施例】
【0022】
(実施例1)
本例は、本発明の実施例にかかる樹脂複合体について、図1〜図8を用いて説明する。
図1に示すように、本例の樹脂複合体1は、合成樹脂よりなる本体部品2と、該本体部品2の裏側面21に溶着された同材質の合成樹脂よりなる接合部品3とを有する。
【0023】
また、図1及び図2より知られるように、上記接合部品3には、接合された面とは反対側の裏側面31に、上記本体部品2における本体基準点22上に位置するべき部品基準点33に関して規則的に配設された検査用段差部32が設けられている。
そして、上記本体部品2の表側面23から上記接合部品3の位置検出を行うに当たっては、図2及び図3に示すように、超音波41を先端から発する超音波探触子4を用い、上記本体部品2の表側面23上に上記超音波探触子4を当接させ、上記本体基準点22上またはその近傍の検査基準点42に関して規則的に上記超音波探触子4を移動させ、該超音波探触子4の移動軌跡43と上記検査用段差部32とが交わる交点位置44を複数検出し、該複数の交点位置44を基にして幾何学的に上記部品基準点33の存在位置を特定できるように構成されている。
【0024】
より具体的には、上記樹脂複合体1における接合部品3の上記検査用段差部32は、上記部品基準点33を中心とした真円上に配置され、該検査用段差部33を境にしてその内側と外側とで厚み方向の突出高さに差異を設けてある。
また、上記樹脂複合体1を構成する本体部品2及び接合部品3の材質は、いずれも同じポリエチレンよりなる。
また、上記検査用段差部33の内側の厚み方向の突出高さと外側の厚み方向の突出高さの差異、つまり段差の寸法Lは5mmである。
【0025】
そして、上記本体部品2の表面側24から上記接合部品3の位置検出を行うに当たっては、図5に示す超音波探触装置5を用いて行う。超音波探触装置5は、超音波探触子4と、超音波探触子4を走査させるための走査用ロボット51と、超音波探触子4に接続されたパルサレシーバ52と、該パルサレシーバ52に接続され、データ処理を行うパソコン53により構成されている。
【0026】
ここで、図6及び図7には、超音波探触子4の移動の経過と超音波の反射波の発生状体との関係を示す。図7(a)〜(c)は、横軸に時間を、縦軸に反射の強さを取ったものである。そして、図7(a)には、超音波探触子が図6(a)の位置にある場合の反射波を示し、図7(b)には、超音波探触子が図6(b)の位置にある場合の反射波を示し、図7(c)には、超音波探触子が図6(c)の位置にある場合の反射波を示す。
【0027】
接合部品3の検査用段差部32が設けられていない部分の裏側面31aからの反射波と、接合部品の検査用段差部の裏側面31bからの反射波は、段差により、反射波が帰ってくる時間が異なるため、反射波の現れる場所が変わる。
そして、図7(a)〜(c)において、範囲Aに注目すると、図7(a)の範囲Aでは、接合部品3の検査用段差部32が設けられていない部分の裏側面31aからの反射波aが確認できる。図7(b)の範囲Aでは、接合部品3の検査用段差部32が設けられていない部分の裏側面31aからの反射波a、及び接合部品3の検査用段差部32の裏側面31bからの反射波bの両方が現れた特徴的な反射波が確認できる。図7(c)の範囲Aでは、接合部品3の検査用段差部32の裏側面31bからの反射波bが確認できる。
【0028】
つまり、本例では、上記超音波探触子4を走査させ、上記図7(b)と同様の反射波が確認された位置が上記検査用段差部32と上記直線検査線43が交わる交点位置44であることを認識することができる。
本例では、この原理を利用して、図3に示すように、上記超音波探触子4を上記本体部品2の表側面23上において、上記検査基準点42において交差する2本の直線検査線43a、43b上を通るように上記超音波探触子4を走査させることにより、上記検査用段差部32と上記直線検査線43が交わる4つの交点位置44a〜44dを特定することができる。
次に、任意の2点の中点を通る垂線45a、45bを2本引く。そして、当該垂線45a、45bの交点46が上記部品基準点33の存在位置であると認識することができる。
【0029】
なお、図3の例は、実際に接合された接合部品3の上記部品基準点33の位置と上記本体基準点22とが一致しているものに対して位置検出を行った場合の例であって、上記方法によって検出した結果が正しいことが示されている。
【0030】
これに対し、図4には、実際に接合された接合部品3の上記部品基準点33の位置と上記本体基準点22とがずれている場合の例を示す。
この場合にも、上述した手順と全く同じ手順で位置検出を行う。つまり、図4に示すように、検査用段差部32と上記直線検査線43a、43bが交わる4つの交点位置44a〜44dを特定し、任意の2点の中点を通る垂線45a、45bを2本引き、当該垂線45a、45bの交点46が上記部品基準点の存在位置であることを特定することができる。そして、この部品基準点33が検査基準点42(本体基準点22)からどの方向にどれくらいずれているかは容易に認識できる。
【0031】
このように、本例の樹脂複合体1は、上記接合部品3に特定の上記検査用段部32を予め設けておき、かつ、位置検出時に超音波探触子4を規則的に移動させることにより、従来の超音波探触法では困難であった同材質の合成樹脂よりなる上記本体部品2と上記接合部品3との溶着位置を容易に特定することができる。
【0032】
また、本例の樹脂複合体1は板状の本体部品2に接合部品3を溶着したものであるが、上記本体部品の表側面上に上記超音波探触子4を当接させ、上記本体部品の表側面から上記接合部品の位置検出を行ため、上記本体部品が中空の容器であり、その内部に接合部品が溶着された場合であっても、接合部品の位置検出を行うことが可能である。
【0033】
次に、図8には、上記接合部品3とは異なる形態を有する接合部品の例として、部品基準点332を中心とした真円上に配置された検査用段差部322を有し、該検査用段差部322を境にしてその内側と外側とで厚み方向の突出高さに差異を設けてある接合部品302を示す。この場合の検査用段差部322は、これを境にしてその内側の方が突出高さが低く、外側の方の突出高さが高くなるように、リング状の突出部を設けることによって形成してある。この場合にも、上記と同様の効果が得られる。
【0034】
(実施例2)
本例は、上記実施例1と異なる形状の接合部品6を用いる場合の例である。これを図9〜図13を用いて説明する。
具体的には、図9に示すように、本例の樹脂複合体102は、合成樹脂よりなる本体部品2と、該本体部品2の裏側面21に溶着された同材質の合成樹脂よりなる接合部品6とを有する。接合部品6における検査用段差部610a〜dは、上記部品基準点62上において交差する2本の直線61(a)(b)を通ると共に上記表側面(接合部品6においては接合する面)に対して垂直な2つの平面上に配置され、2つの平面に挟まれた隣接する領域(63、64、65、66)の厚み方向の突出高さに差異を設けてある。
【0035】
上記直線61(a)(b)を含む上記平面に挟まれた隣接する領域(63、64、65、66)は、領域63の厚み方向の突出高さを基準として0mmとすると、領域64及び領域66の厚み方向の突出高さは1mm高くしてあり、領域65の厚み方向の突出高さは2mm高くしてある。
【0036】
このような検査用段差部610a〜dを設けていることにより、本例では、超音波探触子4が領域63と領域64に挟まれた検査用段差部610a〜dの位置にある場合には、領域63の裏側面からの反射波、及び、領域64の裏側面からの反射波の両方が現れた特徴的な反射波が検出され、超音波探触子4が領域64と領域65に挟まれた検査用段差部610a〜dの位置にある場合には、領域64の裏側面からの反射波、及び、領域65の裏側面からの反射波の両方が現れた特徴的な反射波が検出され、超音波探触子4が領域65と領域66に挟まれた検査用段差部610a〜dの位置にある場合には、領域65の裏側面からの反射波、及び、領域66の裏側面からの反射波の両方が現れた特徴的な反射波が検出され、超音波探触子4が領域63と領域66に挟まれた検査用段差部610a〜dの位置にある場合には、領域63の裏側面からの反射波、及び、領域66の裏側面からの反射波の両方が現れた特徴的な反射波が検出される。
このことを利用することによって、超音波探触子4の走査軌跡と検査用段差610a〜dとの交点位置を検出することができる。
【0037】
本例では、上記本体部品2の表面側23から上記接合部品6の位置検出を行うに当たっては、実施例1で用いた超音波探触装置5を用い、図10及び図11に示すように、上記超音波探触子4を上記本体部品2の表側面23上において、上記検査基準点42を中心とした真円7上を通るように上記超音波探触子4を走査させ、上記検査用段差部610a〜dと上記真円7が交わる4つの交点位置71a〜dを特定する。次に、上記真円7上において1つ飛ばして隣接する2つの交点同士を結んだ直線72a、72bを2本引く。そして、当該直線72a、72bの交点73が上記部品基準点62の存在位置であることが特定できる。
【0038】
上記図11の例は、実際に接合された接合部品6の上記部品基準点62の位置と上記本体基準点22とが一致しているものに対して位置検出を行った場合の例であって、上記方法によって検出した結果が正しいことが示されている。
これに対し、図12には、実際に接合された接合部品6の上記部品基準点62の位置と上記本体基準点22とがずれている場合の例を示す。
この場合にも、上記と同様に超音波探触子4を走査させる。これにより、図12に示すように、上記検査用段差部610a〜dと上記真円7が交わる4つの交点位置71a〜dを特定することができ、上記真円7上において1つ飛ばして隣接する2つの交点同士を結んだ直線72a、72bを2本引くことにより、当該直線72a、72bの交点73が上記部品基準点62の存在位置であることを特定することができる。そして、この場合には、部品基準点62が所定量本体部品2の本体基準点22からずれていることが容易に確認できる。
【0039】
次に、図13(a)、(b)には、上記接合部品6とは異なる形態を有する接合部品602、603を用いた例を示す。これらの例は、基本的には上記と同様に、部品基準点622、623上において交差する2本の直線691(a)(b)または692(a)(b)を通ると共に上記表側面(接合部品6においては接合する面)に対して垂直な2つの平面上に4つの検査用段差部612a〜d、613a〜dを有するが、上記2つの平面に挟まれた領域の高さを上記の例と異なる状態としたものである。
【0040】
図13(a)の場合は、同図に示すごとく、接合部品602の2本の直線691(a)(b)を通る上記2平面に挟まれた隣接する領域(632、642、652、662)の厚み方向の突出高さは、領域632と領域652が同一であり、領域642と領域662が同一である。
【0041】
図13(b)に示す接合部品603の2本の直線692(a)(b)を通る上記2平面に挟まれた隣接する領域(633、643、653、663)の厚み方向の突出高さは、領域663が一番小さく、次いで領域633、領域643の順に小さく、領域652最も大きい。
これらの場合にも、上記と同様の効果が得られる。
さらに、図13(b)の場合には、4つの領域の高さが異なるので、4箇所の段差部613a〜dの高さがすべて異なっている。そのため、その高さの絶対値を識別することによって、必要に応じて、接合部品603の部品基準点623に関する回転方向の位置を知ることも可能である。
【0042】
なお、本明細書において幾何学的な位置関係を示す表現は、特に説明がなければ、基本的には上記本体部の表側面に平行な面上あるいは、この面に垂直な方向に透視した状態として表現してある。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施例1における、樹脂複合体を示す説明図。
【図2】実施例1における、位置検出方法を示す説明図。
【図3】実施例1における、位置検出方法を示す説明図。
【図4】実施例1における、位置検出方法を示す説明図。
【図5】実施例1における、位置検出に用いる装置を示す説明図。
【図6】実施例1における、位置検出の過程を示す説明図。
【図7】実施例1における、反射波を示す説明図。
【図8】実施例1における、接合部品の別例を示す説明図。
【図9】実施例2における、樹脂複合体を示す説明図。
【図10】実施例2における、位置検出方法を示す説明図。
【図11】実施例2における、位置検出方法を示す説明図。
【図12】実施例2における、位置検出方法を示す説明図。
【図13】実施例2における、接合部品の別例を示す説明図。
【符号の説明】
【0044】
1 樹脂複合体
2 本体部品
21 裏側面
23 表側面
3 接合部品
31 裏側面
32 検査用段差部
33 部品基準点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂よりなる本体部品と、該本体部品の裏側面に溶着された同材質の合成樹脂よりなる接合部品とを有する樹脂複合体であって、
上記接合部品には、接合された面とは反対側の裏側面に、上記本体部品における本体基準点上に位置するべき部品基準点に関して規則的に配設された検査用段差部が設けられており、
上記本体部品の表側面から上記接合部品の位置検出を行うに当たっては、超音波を先端から発する超音波探触子を用い、上記本体部品の表側面上に上記超音波探触子を当接させ、上記本体基準点上またはその近傍の検査基準点に関して規則的に上記超音波探触子を移動させ、該超音波探触子の移動軌跡と上記検査用段差部とが交わる交点位置を複数検出し、該複数の交点位置を基にして幾何学的に上記部品基準点の存在位置を特定できるように構成されていることを特徴とする接合部品の位置検出が容易な樹脂複合体。
【請求項2】
請求項1において、上記検査用段差部は、上記部品基準点を中心とした真円上に配置され、該検査用段差部を境にしてその内側と外側とで厚み方向の突出高さに差異を設けてあり、
上記本体部品の表面側から上記接合部品の位置検出を行うに当たっては、上記超音波探触子を上記本体部品の表側面上において、上記検査基準点において交差する2本の直線検査線上を通るように上記超音波探触子を走査させ、上記検査用段差部と上記直線検査線が交わる4つの交点位置を特定し、任意の2点の中点を通る垂線を2本引き、当該垂線の交点が上記部品基準点の存在位置であることを特定できるように構成されていることを特徴とする接合部品の位置検出が容易な樹脂複合体。
【請求項3】
請求項1において、上記検査用段差部は、上記部品基準点上において交差する2本の直線を通ると共に上記表側面に対して垂直な2つの平面上に配置され、2つの平面に挟まれた隣接する領域の厚み方向の突出高さに差異を設けてあり、
上記本体部品の表面側から上記接合部品の位置検出を行うに当たっては、上記超音波探触子を上記本体部品の表側面上において、上記検査基準点を中心とした真円上を通るように上記超音波探触子を走査させ、上記検査用段差部と上記真円が交わる4つの交点位置を特定し、上記真円上において1つ飛ばして隣接する2つの交点同士を結んだ直線を2本引き、当該直線の交点が上記部品基準点の存在位置であることを特定できるように構成されていることを特徴とする接合部品の位置検出が容易な樹脂複合体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、上記本体部品及び上記接合部品はポリエチレンよりなることを特徴とする接合部品の位置検出が容易な樹脂複合体。
【請求項5】
合成樹脂よりなる本体部品と、該本体部品の裏側面に溶着された同材質の合成樹脂よりなる接合部品とを有する樹脂複合体における、上記接合部品の位置検出を上記本体部品の表側面から行う位置検査方法であって、
上記接合部品には、接合された面とは反対側の裏側面に、上記本体部品における本体基準点上に位置するべき部品基準点に関して規則的に配設された検査用段差部を予め設けておき、
超音波を先端から発する超音波探触子を用い、上記本体部品の表側面上に上記超音波探触子を当接させ、上記本体基準点上またはその近傍の検査基準点に関して規則的に上記超音波探触子を移動させ、該超音波探触子の移動軌跡と上記検査用段差部とが交わる交点位置を複数検出し、該複数の交点位置を基にして幾何学的に上記部品基準点の存在位置を特定することを特徴とする樹脂複合体における接合部品の位置検出方法。
【請求項6】
請求項5において、上記検査用段差部は、上記部品基準点を中心とした真円上に配置され、該検査用段差部を境にしてその内側と外側とで厚み方向の突出高さに差異を設けてあり、
上記本体部品の表面側から上記接合部品の位置検出を行うに当たっては、上記超音波探触子を上記本体部品の表側面上において、上記検査基準点において交差する2本の直線検査線上を通るように上記超音波探触子を走査させ、上記検査用段差部と上記直線検査線が交わる4つの交点位置を特定し、任意の2点の中点を通る垂線を2本引き、当該垂線の交点が上記部品基準点の存在位置であることを特定することを特徴とする樹脂複合体における接合部品の位置検出方法。
【請求項7】
請求項5において、上記検査用段差部は、上記部品基準点上において交差する2本の直線を通ると共に上記表側面に対して垂直な2つの平面上に配置され、2つの平面に挟まれた隣接する領域の厚み方向の突出高さに差異を設けてあり、
上記本体部品の表面側から上記接合部品の位置検出を行うに当たっては、上記超音波探触子を上記本体部品の表側面上において、上記検査基準点を中心とした真円上を通るように上記超音波探触子を走査させ、上記検査用段差部と上記真円が交わる4つの交点位置を特定し、上記真円上において1つ飛ばして隣接する2つの交点同士を結んだ直線を2本引き、当該直線の交点が上記部品基準点の存在位置であることを特定することを特徴とする樹脂複合体における接合部品の位置検出方法。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項において、上記本体部品及び上記接合部品はポリエチレンよりなることを特徴とする樹脂複合体における接合部品の位置検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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