説明

接着シート

【課題】製造が容易であると共に、被着体に貼着した時に、巻き込まれた空気を容易に接着シート外に逃すことができる接着シートの提供。
【解決手段】基材表面に第1接着層、及びその表面に第2接着層が積層されてなる接着シート。前記第1接着層が、基材縁部にまで連続する空間を有するように、部分的に設けられてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マーキングフィルム等に使用される接着シートに関し、特に、被着体に貼着する際に空気を逃しやすくて気泡が残り難い、容易にきれいに貼着することができる接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル等の樹脂製シートの片面に粘着剤を塗布してなる接着シートは、塗装と異なり、溶剤を使用しない、乾燥の工程を必要としない等の点で有利であるので、マーキングフィルム等に用いられる。接着シートは、接着層表面に剥離紙が貼着されており、使用の際は、剥離紙から剥がし、接着層が被着体表面に接するように貼着する。しかしながら、接着シートは樹脂製であるため通気性が低く、手作業によりシートを貼着する際、接着シートと被着体表面との間に空気が巻き込まれ、シートの貼着後に気泡が残るという問題があった。
【0003】
気泡を防止するためには、ガラス等の被着体表面を、予め界面活性剤を含有する水溶液で濡らして、接着シートを貼着し、乾燥するという方法が従来なされていたが、この方法は作業が煩雑であり、特に、広い面積に渡り接着シートを貼着する場合、巻き込まれた空気を全て除去しながら貼着することは非常に困難であり、手作業により接着シートを貼着するには、相当の熟練を必要としていた。
【0004】
そこで、接着シートと被着体表面との間に巻き込まれた空気を追い出すために、基材シート上に独立した多数の小凸部が散点状に設けられた粘着剤層を有する粘着加工シート(特許文献1)、及び、シリカ粒子やマイクロバルーン等の微粒子が表面に散布された粘着剤層を有する粘着ラベル(特許文献2)が提案されている。
しかしながら、これらは貼着する際、空気が抜けやすく貼着が容易であるものの、製造工程が複雑で煩雑となる上、被着体との密着性が不十分である等の問題点があった。
【特許文献1】実開平6−20043号公報
【特許文献2】特開平1−118584号公報
【0005】
また、接着層と被着体表面との間に巻き込まれた空気を逃す手段として、剥離紙にエンボス処理を施して凹凸を設け、接着シートの接着層に該凹凸を転写させたり(特許文献3)、接着シートに微細な孔を開けたりする(特許文献4)等の方法が提案されている。しかしながら、表面に凹凸を有する剥離紙を使用する場合、剥離紙の凹凸に接着剤を塗布するときに塗布ムラが生じやすいため、剥離性が不均一になりやすい。一方、平滑な剥離紙に凹凸を設ける場合には、凸部の角の部分で、剥離剤が脱落しやすいために、部分的に剥離不良が生じることがある。
また、接着シートに微細な孔を開ける場合は、特殊な機械が必要となるため、製造工程が複雑化する。
【特許文献3】実開平3−67043号公報
【特許文献4】実開平6−69971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、製造が容易であると共に、被着体に貼着した時に、巻き込まれた空気を容易に接着シート外に逃すことができる接着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、基材表面に2以上の接着層を設け、少なくとも基材表面に接着する接着層を、基材縁部にまで連続する空間を有するように部分的に設けた場合には、巻き込まれた空気を容易にシート外部に逃すことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、基材表面に第1接着層、及びその表面に第2接着層が積層されてなる接着シートであって、前記第1接着層が、基材縁部にまで連続する空間を有するように、部分的に設けられてなることを特徴とする接着シート、及び、基材表面に第1接着層を設け、剥離シートの剥離面に第2接着層を設け、前記基材と剥離シートを、第1接着層と第2接着層とが接するように貼合することを特徴とする、前記接着シートの製造方法である。
【0009】
前記基材縁部にまで連続する空間は、スジ状であることが好ましく、前記第1接着層の上に設けられた第2接着層にも、スジ状空間が形成されてなることがより好ましい。また、前記第1接着層及び第2接着層に形成されたスジ状空間は、直線上であることが好ましく、互いに平行であっても交差していてもよい。
また、前記第1接着層と第2接着層の間に支持体が介在していてもよく、この場合、前記支持体が通気性を有することがより好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の接着シートは製造適性に優れるだけでなく、特別の熟練を必要とすることなく、広い面積に渡って気泡を巻き込まずにシートを貼着することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を、図を用いて説明する。
本発明の接着シートの断面を図1に示す。符号1は、基材2の表面に、スジ状空間4aを有する第1接着層3aが設けられてなる本発明の接着シートであり、第1接着層3aの上には、スジ状空間4bを有する第2接着層3bが設けられている。図1の態様は、第1接着層及び第2接着層が有するスジ状空間4a及び4bが、平行に且つ互いに隔離されるように設けられている場合である。
【0012】
図2は、本発明の他の態様の断面を示すものであり、A−A’断面を図3に示す。この態様においては、スジ状空間4a及び4bが格子状に交差するように設けられている。
図4は、図2を第2接着層側から見た平面図である。
図5は、接着剤層3aと3bとの間に支持体5が介在する例を示す。
図6は、第2接着層3bにスジ状空間を有しない例を示す。図7及び図8に示すように、第2接着層3bと被接着体6の間に巻き込まれた空気7は、スキージを用いてシートの中央部から縁部に向かって圧着することにより、第2接着層3bを、第1接着層3aのスジ状空間4aに沿って押し上げながらシートの外部に逃される。
また、本発明においては、第2接着層の上に、更に接着層を設けてもよく、これらの接着層にも第1及び第2接着層と同様のスジ状空間を設けてもよい。
【0013】
前記基材2の材質は特に制限されることはなく、接着シートの基材として使用し得る公知のものの中から、適宜選択して用いることができる。この基材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体等のエチレン共重合体系樹脂、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂等のポリスチレン系樹脂、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート等のポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩素系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等のプラスチックシート、上質紙、グラシン紙等の紙類を挙げることができる。
本発明で使用する基材の厚さは特に制限されることはなく、用途などに応じて適設計定されるが、取り扱い容易性の観点から、一般的には10〜1000μmであり、特に20〜500μmであることが好ましい。
【0014】
また、本発明で使用する接着剤としては、例えば、アクリル系、ゴム系、シリコーン系、エポキシ系、ポリエステル系、ウレタン系、ポリオレフィン系等をあげることができるが、これらに限定されることはなく、適宜、公知のものの中から選択して用いることができる。接着層の厚みは3〜100μmであることが好ましく、5〜60μmであることがより好ましい。3μm未満であるとエア抜け性が不足したり、接着力が不足したりする場合があり、100μmを超えると経済的に好ましくないばかりか、粘着剤塗布後の乾燥に相当の時間を要し、生産効率が低下するので好ましくない。
【0015】
本発明においては、接着層を2以上設けるが、少なくとも基材表面に接着する第1接着層3aが、基材縁部にまで連続する空間4aを有するように基材表面上に部分的に設けられることが必要であり、前記空間が、空気を外部に逃すための流通経路となる。この空気を外部に逃す行程は、スキージ等を用いて気泡を追い出す際に実施される。この場合、過大な力を必要としないので、接着シートの基材が破れる等の破損は生じない。
これらの効果により、空気が、接着シートと被着体表面の間に留まって外観を損なうということがないので、本発明の接着シートを、被着体に対して容易且つきれいに貼着することができる。
【0016】
接着層の態様は、海島状、格子状としてもよいが、製造効率の観点からスジ状であることが好ましい。
スジ状空間の幅は、通常0.1〜80mmであり、0.5〜20mmであることが好ましく、0.8〜5mmであることがより好ましい。一方、前記空間と他の空間との間隔は、通常0.1〜80mmであり、0.5〜20mmであることが好ましく、0.8〜5mmであることがより好ましい。
【0017】
本発明においては、第1接着層の上に設ける第2接着層3bにも、前記第1接着層と同様にスジ状空間4bを設けてもよい。この場合、第1及び第2接着層に設けられたスジ状空間が直線状であることが、製造容易性の観点から好ましい。
【0018】
本発明の接着シートにおいて、図1及び2に示すように、第1接着層3aのみでなく、第2接着層3bにもスジ状空間4bを設ける場合、第1接着層に設けられたスジ状空間4aと第2接着層に設けられたスジ状空間4bとは、図1に示すように平行であってもよいが、空気を逃しやすいという観点から図2に示すように交差していることが好ましい。交差角は30〜90°であることが好ましい。
【0019】
基材縁部まで連続する接着剤の塗布は、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、Tダイ法、カーテン法、転写法、又は櫛形ブレードを用いるロールコーター法等の、公知の方法によって行なうことができる。
第1接着層の上に第2接着層を設ける方法としては、基材表面に第1接着層を設け、剥離シートの剥離面に第2接着層を設け、前記基材と剥離シートを、第1接着層と第2接着層とが接するように貼合する方法が挙げられる。
【0020】
剥離シートとしては、上質紙、グラシン紙等の紙基材、これらの紙基材にポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン等をラミネートしたラミネート紙、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂等のプラスチックシートにシリコーン等の剥離剤を塗布したものなどが挙げられる。剥離シートの厚みは特に制限されるものではないが、通常は30〜180μmである。
【0021】
また、本発明においては、図5に示すように、第1接着層3aと第2接着層3bの間に支持体5を介在させることもできる。この場合、支持体は通気性を有するものであることが好ましく、このようにすることにより、第2接着層3bと被着体との間に巻き込まれた空気が、通気性を有する支持体を介して第1接着層3aに形成されたスジ状空間4aに達し、シート外部に逃される。通気性を有する支持体としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂等からなる織布、不織布、連続発泡体及び紙類等が挙げられる。また、支持体の厚さは10〜1000μmであることが好ましい。
【0022】
このようにして得られた本発明の接着シートは、基材の接着層とは反対側の表面に、グラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷などの一般的な印刷方法により、所望の印刷を施すことができる。本発明の接着シートは、例えば、マーキングフィルム等の大型表示ラベルとして好適に用いられる。
【0023】
以下、本発明を実施例によって更に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【実施例1】
【0024】
厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、アクリル系粘着剤(PA−T1E;リンテック株式会社製の製品名)を、塗布幅50mm、未塗布幅50mm及び乾燥後の塗布厚みが25μmとなるように塗布した後、100℃にて1分間乾燥し、第1接着層を設けた。
【0025】
一方、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に剥離剤が塗布されている剥離シート(SP−PET3811;リンテック株式会社製の製品名)の剥離剤塗布面に、アクリル系粘着剤(PA−T1E;リンテック株式会社製の製品名)を、塗布幅70mm、未塗布幅30mm及び乾燥後の塗布厚みが25μmとなるように塗布した後、100℃にて1分間乾燥し、第2接着層を設けた。
【0026】
それぞれ接着層を有する、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの第1接着層と剥離シートの第2接着層とを、未塗布部分が平行になるように貼り合わせ、図1に示す断面を有する接着シートを得た。
【0027】
得られた接着シートを300mm×300mmに裁断して試験片とし、該試験片を、直径約15mmの気泡ができるように、メラミン塗装板上に手作業により貼着した。
貼着された試験片を、スキージを使用して圧着したところ、容易に気泡が消失することが確認された。
【実施例2】
【0028】
第1接着層と第2接着層とが直角に交差するように、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムと剥離シートを貼り合わせたこと以外は、実施例1と同様の手法により、図2に示す断面を有する接着シートを得た。
更に、実施例1と同様にメラミン塗装板に貼着し、スキージを使用して圧着したところ、気泡が消失したことが確認された。
【実施例3】
【0029】
第1及び第2接着層の間に厚さ180μmのポリエチレン製不織布(タイベック1025D;旭・デュポン・フラッシュスパン・プロダクツ株式会社製の製品名)を挟んで、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムと剥離シートを貼り合わせたこと以外は、実施例1と同様の手法により、図5に示す断面を有する接着シートを得た。
更に、実施例1と同様にメラミン塗装板に貼着し、スキージを使用して圧着したところ、気泡が消失したことが確認された。
【実施例4】
【0030】
厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、アクリル系粘着剤(MA;リンテック株式会社製の製品名)を、塗布幅2.0mm、未塗布幅1.0mm、及び乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布した後,100℃にて1分間乾燥し、第1接着層とした。
一方、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に剥離剤が塗布されてなる剥離シート(SP−PET3811;リンテック株式会社製の製品名)の剥離剤塗布面に、アクリル系粘着剤(PM;ンテック株式会社製の製品名)を乾燥後の厚みが10μmとなるように全面塗布した後、100℃にて1分間乾燥し、第2接着層を設けた。
前述のポリエチレンテレフタレートフィルムと剥離シートを、第1接着層と第2接着層とが接するように貼り合わせ、図6に示す断面を有する接着シートを得た。
更に、実施例1と同様にメラミン塗装板に貼着し、スキージを使用して圧着したところ、気泡が消失したことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の接着シートは、被着体への圧着後に気泡が残らず、手作業による貼着が容易に且つきれいに貼着することができるので、マーキングフィルム等の大型表示ラベルとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の接着シートの断面図
【図2】本発明の接着シートの他の態様の断面図
【図3】本発明の図2の態様のA−A’における断面図
【図4】本発明の図2の態様の下面図
【図5】第1及び第2接着層の間に支持体を有する本発明の態様の断面図
【図6】本発明実施例4の接着シートの断面図
【図7】気泡を含んで被着体表面に貼着された本発明の接着シートの断面図
【図8】図7における気泡をスキージ等で圧着した後の断面図
【符号の説明】
【0033】
1 本発明の接着シート
2 基材
3a 第1接着層
3b 第2接着層
4a スジ状空間
4b スジ状空間
5 支持体
6 被着体
7 空気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面に第1接着層、及びその表面に第2接着層が積層されてなる接着シートであって、前記第1接着層が、基材縁部にまで連続する空間を有するように、部分的に設けられてなることを特徴とする接着シート。
【請求項2】
前記基材縁部にまで連続する空間がスジ状である、請求項1に記載された接着シート。
【請求項3】
前記第1接着層の上に設けられた第2接着層にも、スジ状空間が形成されてなる、請求項2に記載された接着シート。
【請求項4】
前記第1接着層及び第2接着層に設けられたスジ状空間が直線状である、請求項3に記載された接着シート。
【請求項5】
前記第1接着層に形成されたスジ状空間と前記第2接着層に形成されたスジ状空間とが互いに平行である、請求項4に記載された接着シート。
【請求項6】
前記第1接着層に形成されたスジ状空間と前記第2接着層の間に形成されたスジ状空間とが交差している、請求項4に記載された接着シート。
【請求項7】
前記第1接着層と第2接着層の間に支持体が介在する、請求項1−6の何れかに記載された接着シート。
【請求項8】
前記支持体が通気性を有する、請求項7に記載された接着シート。
【請求項9】
基材表面に第1接着層を設け、剥離シートの剥離面に第2接着層を設け、前記基材と剥離シートを、第1接着層と第2接着層とが接するように貼合することを特徴とする、請求項1−8の何れかに記載された接着シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−167368(P2009−167368A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−10269(P2008−10269)
【出願日】平成20年1月21日(2008.1.21)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】