説明

接着処方物

【課題】完全に合成物であり、従ってウイルス伝染の問題がなく、特性が高度に一貫した外科手術用接着剤または封止剤を提供すること。
【解決手段】本開示は、医療用/外科手術用の合成接着剤および封止剤として使用するための組成物を形成するために有用な、生体適合性成分に関する。本開示の生体適合性成分は、ポリマーポリオールコアを含み得、このポリマーポリオールコアは、ニトロアリール化合物で処理されてニトロエステルを形成し得る。得られるニトロエステル基は、還元されてアミノ基を形成し得、このアミノ基が次に処理されて、イソシアネート基を形成し得る。次いで、得られるイソシアネートは、第二の成分と反応させられて、接着剤および/または封止剤組成物を形成し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の引用)
本願は、2009年2月19日に出願された米国仮特許出願番号61/153,714に対する優先権を主張する。この米国仮特許出願の開示は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、動物組織に医療的および外科手術的にインビボで使用するための、合成成分から形成される接着剤および封止剤に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、縫合糸を接着による結合で置き換えること、または縫合糸を接着による結合で増強することが開発されており、興味が増大している。この興味の増大の理由としては、以下が挙げられる:(1)修復が達成され得る潜在的な速度;(2)結合物質が完全な閉鎖を行い、これにより流体の浸出を防止する能力;および(3)組織の過度の変形または組織へのさらなる損傷なしで結合を形成する可能性。
【0004】
しかし、当該分野における研究は、外科手術用接着剤が外科医により認容されるためには、これらの接着剤が種々の特性を有するべきであることを明らかにしている。例えば、これらの接着剤は、高い初期粘着、および生存組織に迅速に結合する能力を示すべきであり;結合強度は、結合の欠損より前に組織の欠損を引き起こすように充分に強いべきであり;この接着剤は、橋架け(代表的には、透過性の可撓性の橋架け)を形成するべきであり;そしてこの接着剤の橋架けおよび/またはその代謝産物は、局部的な組織毒性の影響も発癌性の影響も引き起こさないべきである。
【0005】
組織接着剤または組織封止剤として有用な数種の材料が、現在利用可能である。現在入手可能な1つの型の接着剤は、シアノアクリレート接着剤である。しかし、シアノアクリレート接着剤は、分解して、望ましくない副生成物(例えば、ホルムアルデヒド)を生成する可能性がある。シアノアクリレート接着剤の別の欠点は、これらの接着剤の有用性を制限し得る高い弾性係数を有し得ることである。
【0006】
現在利用可能な別の型の組織封止剤は、ウシ供給源および/またはヒト供給源から誘導された成分を利用する。例えば、フィブリン封止剤が利用可能である。しかし、あらゆる天然物質の場合と同様に、この材料の変動性が頻繁に観察されており、そしてこの封止剤は天然タンパク質から誘導されるので、ウイルスの伝染の問題が存在し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
完全に合成物であり、従ってウイルス伝染の問題がなく、特性が高度に一貫した外科手術用接着剤または封止剤を提供することが望ましい。このような組成物は、可撓性かつ生体適合性であるべきであり、そして接着剤または封止剤として使用するために適切であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
【0009】
【化1】

を含有する生体適合性成分であって、該式において、
Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、芳香族基、ヘテロ芳香族基、複素環式基、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;
nは、1〜5であり得;
は、各位置において同じであっても異なっていてもよく、そしてCH、アルキル、OCH、SCH、NHCH、O−アルキル、S−アルキル、NH−アルキル、O−アリール、NH−アリール、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;そして
PAOは、約200〜約4000の分子量を有するポリアルキレンオキシドである、
生体適合性成分。
(項目2)
Rが、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、シクロへキシレン、フェニレン、ピリジレン、これらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目に記載の生体適合性成分。
(項目3)
前記ポリアルキレンオキシドが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ラクチド結合を有するポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール−co−ポリエチレンオキシドコポリマー、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドコポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のいずれか一項に記載の生体適合性成分。
(項目4)
第二の成分と組み合わせられた上記項目のいずれか一項に記載の生体適合性成分を含有する組成物。
(項目5)
前記第二の成分がポリオールを含む、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目6)
前記ポリオールが、グリセロール、トリメチロールプロパン、ヘキサン−1,2,6−トリオール、ポリカプロラクトントリオール、ポリアルキレンオキシド、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目7)
項目1に記載の生体適合性成分が、前記組成物の約50重量%〜約90重量%の量で存在し、そして前記第二の成分が、該組成物の約10重量%〜約50重量%の量で存在する、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目8)
創傷を閉鎖するための、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目9)
動物組織における漏出部を封止するための、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目10)
動物組織の表面に医療デバイスを接着するための、上記項目のいずれか一項に記載の組成物。
(項目11)
ポリオールをニトロアリールカルボン酸誘導体と接触させて、ニトロアリールエステルおよびニトロアリールエーテルからなる群より選択される化合物を形成する工程;
該ニトロアリールエステルまたはニトロアリールエーテルを、パラジウムと水素、パラジウムとギ酸アンモニウム、酸化パラジウムと水素、ニッケルと水素、塩化スズ(II)、鉄と酢酸、アルミニウムと塩化アンモニウム、ボラン、亜ジチオン酸ナトリウム、ヒドラジン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される還元剤と接触させて、アミノエステルおよびアミノエーテルからなる群より選択される第二の化合物を形成する工程;
該アミノエステルまたはアミノエーテルを、ホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲン、クロロギ酸4−ニトロフェニル、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される反応剤と、必要に応じて塩基の存在下で、必要に応じて非プロトン性溶媒の存在下で接触させることにより、対応するイソシアン酸エステルまたはイソシアン酸エーテルに変換する工程;ならびに
該イソシアン酸エステルまたはイソシアン酸エーテルを回収する工程、
を包含する、方法。
(項目12)
前記ポリオールが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ラクチド結合を有するポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール−co−ポリエチレンオキシドコポリマー、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドコポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリアルキレンオキシドを含む、上記項目に記載の方法。
(項目13)
前記ニトロアリールカルボン酸誘導体が、芳香族環を含み、該芳香族環に窒素が結合しており、少なくとも1つのカルボン酸基は、該芳香族環に直接には結合していない、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記ニトロアリールカルボン酸誘導体が、o−ニトロフェニル酢酸、m−ニトロフェニル酢酸、p−ニトロフェニル酢酸、o−ニトロフェノキシ酢酸、m−ニトロフェノキシ酢酸、p−ニトロフェノキシ酢酸、4−ニトロ馬尿酸、o−ニトロケイ皮酸、m−ニトロケイ皮酸、p−ニトロケイ皮酸、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記ニトロアリールカルボン酸誘導体が、塩化オキサリル、塩化チオニル、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、カルボミルジイミダゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される成分との反応により形成される、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記ポリオールと前記ニトロアリールカルボン酸誘導体とが、約0℃〜約80℃の温度で、約3時間〜約24時間にわたって化合させられる、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記ポリオールと前記ニトロアリールカルボン酸誘導体とが、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸プロピル、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される溶媒を利用して溶液中で化合させられる、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記アミノエステルまたは前記アミノエーテルを、対応するイソシアン酸エステルまたはイソシアン酸エーテルに変換する工程が、トリエチルアミン、ピリジン、ジイソプロピルエチルアミン、炭酸ナトリウム、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される塩基の存在下で行われ、そしてまた、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、酢酸プロピル、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される非プロトン性溶媒の存在下で行われる、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記ポリアルキレンオキシドが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ラクチド結合を有するポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール−co−ポリエチレンオキシドコポリマー、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドコポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、上記項目のいずれか一項に記載の方法。
【0010】
(項目20)
上記項目のいずれか一項に記載の組成物を創傷に塗布する工程;および
該組成物を硬化させることにより該創傷を閉鎖する工程、
を包含する、創傷を閉鎖する方法。
【0011】
(項目21)
上記項目のいずれか一項に記載の組成物を漏出部に塗布する工程;および
該組成物を硬化させることにより該漏出部を封止する工程、
を包含する、動物組織における漏出部を封止する方法。
【0012】
(項目22)
上記項目のいずれか一項に記載の組成物をデバイス、表面、またはこれらの両方に塗布する工程;
該デバイス、組成物および表面を互いに接触させる工程;および
該組成物を硬化させることにより該デバイスと該表面とを互いに接着させる工程、
を包含する、動物組織の表面に医療デバイスを接着させる方法。
【0013】
(摘要)
本開示は、医療用/外科手術用の合成接着剤および封止剤として使用するための組成物を形成するために有用な、生体適合性成分に関する。本開示の生体適合性成分は、ポリマーポリオールコアを含み得、このポリマーポリオールコアは、ニトロアリール化合物で処理されてニトロエステルを形成し得る。得られるニトロエステル基は、還元されてアミノ基を形成し得、このアミノ基が次に処理されて、イソシアネート基を形成し得る。次いで、得られるイソシアネートは、第二の成分と反応させられて、接着剤および/または封止剤組成物を形成し得る。
【0014】
(要旨)
生体適合性組成物が提供され、これらの組成物は、ある実施形態において、組織接着剤および/または組織封止剤として使用され得る。ある実施形態において、本開示の生体適合性組成物は、以下の式:
【0015】
【化2】

の成分を含有し得る。この式において、Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、芳香族基、ヘテロ芳香族基、複素環式基、およびこれらの組み合わせであり得、そしてnは、約1〜約5、ある実施形態においては約2〜約3の整数であり;
は、各位置において同じであっても異なっていてもよく、そしてCH、アルキル、OCH、SCH、NHCH、O−アルキル、S−アルキル、NH−アルキル、O−アリール、NH−アリール、およびこれらの組み合わせであり得;そして
PAOは、約200〜約4000の分子量を有するポリアルキレンオキシドである。
【0016】
これらの生体適合性組成物を作製するプロセスもまた提供される。ある実施形態において、本開示のプロセスは、ポリオールをニトロアリールカルボン酸誘導体と接触させてニトロアリールエステルおよび/またはニトロアリールエーテルなどの化合物を形成する工程;このニトロアリールエステルおよび/またはニトロアリールエーテルを、パラジウムと水素、パラジウムとギ酸アンモニウム、酸化パラジウムと水素、ニッケルと水素、塩化スズ(II)、鉄と酢酸、アルミニウムと塩化アンモニウム、ボラン、亜ジチオン酸ナトリウム、ヒドラジン、およびこれらの組み合わせなどの還元剤と接触させて、アミノエステルおよびアミノエーテルが挙げられる第二の化合物を形成する工程;このアミノエステルまたはアミノエーテルを、ホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲン、クロロギ酸4−ニトロフェニル、およびこれらの組み合わせなどの反応剤と、必要に応じて塩基の存在下で、必要に応じて非プロトン性溶媒の存在下で接触させることにより、対応するイソシアン酸エステルまたはイソシアン酸エーテルに変換する工程;ならびにこのイソシアン酸エステルまたはイソシアン酸エーテルを回収する工程を包含する。
【0017】
本開示の組成物を組織接着剤および/または組織封止剤として使用する方法もまた提供される。ある実施形態において、このような方法は、創傷を閉鎖すること、動物組織における漏出部を封止すること、医療デバイスを組織に接着させること、これらの組み合わせなどを包含し得る。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、完全に合成物であり、従ってウイルス伝染の問題がなく、特性が高度に一貫した外科手術用接着剤または封止剤を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(詳細な説明)
本開示は、組織接着剤または組織封止剤として使用するための、生体適合性組成物に関する。これらの接着剤または封止剤は、非免疫原性であり、そして生分解性である。これらの生体適合性組成物は、組織の縁部を近付けるため、医療デバイス(例えば、移植物)を組織に接着するため、組織の空気/流体漏出部を封止するため、および組織を増強するため(例えば、組織の空隙または欠損部を封止または充填するため)に使用され得る。従って、本明細書中で使用される場合、「接着剤」は、1つのものを別のものに(例えば、組織の縁部を互いに、またはデバイス(例えば、移植物)を組織に)接着させる組成物を包含すると理解され、そして「封止剤」は、組織に塗布されて組織の空気/流体漏出部を封止するか、または組織の小さい空隙もしくは欠損部を封止もしくは充填する、組成物を包含すると理解される。しかし、本明細書中の接着組成物は、封止剤として使用され得、そして封止剤組成物は、接着剤として使用され得る。
【0020】
生体適合性組成物は、動物(人を含む)の生体組織および/または肉に塗布され得る。科学界では、用語「肉」と「組織」との用法の間はある程度区別され得るが、これらの用語は、本発明の組成物が医療分野において患者の処置のために利用されると当業者が理解する一般的な支持層をいう場合、本明細書中で交換可能に使用される。本明細書中で使用される場合、「組織」としては、皮膚、骨、ニューロン、軸索、軟骨、血管、角膜、筋肉、筋膜、脳、前立腺、乳房、子宮内膜、肺、膵臓、小腸、血液、肝臓、精巣、卵巣、頚部、結腸、胃、食道、脾臓、リンパ節、骨髄、腎臓、末梢血、胚組織、および/または腹水組織が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0021】
本開示によれば、ポリマーコアを含む生体適合性成分が提供される。利用され得る適切なコアとしては、ポリマーポリオール(ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリエステル−ウレタンジオール、これらの組み合わせなどの、ポリマージオールが挙げられる)などが挙げられ得るが、これらに限定されない。本開示に従ってポリマーコアを形成するために利用され得る他のポリマーポリオールとしては、ブロックコポリマー(分枝鎖エトキシ化アルコールが挙げられる);アルコキシ化アルコール(例えば、Shell Chemical Companyから市販されているNEODOL(登録商標));ポリビニルアルコール;多価アルコール;多価アルコールのカルボン酸エステル;ポリグリコール;ポリラクトンポリオール;これらの組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
いくつかの実施形態において、ポリマーポリオールとして使用するために適切なポリオールとしては、ポリアルキレンオキシド(ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリプロピレングリコール(「PPG」)、ポリエチレンオキシド(「PEO」)、ポリプロピレンオキシド(「PPO」)、ラクチド結合を有するポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール−co−ポリエチレンオキシドのブロックコポリマーまたはランダムコポリマー、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドコポリマー(本明細書中で時々、PEO/PPOコポリマーまたはポロキサマーと称され、BASF Corporation(Mt.Olive,NJ)からPLURONICS(登録商標)として市販されているトリブロックPEO/PPOコポリマーが挙げられる)、これらの組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない)ベースのものなどのポリエーテルベースのポリオールが挙げられる。
【0023】
他の実施形態において、ポリマーポリオールとして使用するために適切なポリオールとしては、ポリエステルベースのポリオール(例えば、ポリカプロラクトンベースのポリオール(ジオールを含む)、ポリラクチドベースのポリオール(ジオールを含む)、ポリラクチドベースのポリオール(ジオールを含む)、ポリグリコリドベースのポリオール(ジオールを含む)、これらの組み合わせ)などが挙げられる。
【0024】
他の実施形態において、ポリマーコアは、ジカルボン酸と反応する1つより多くのポリアルキレンオキシドを含み得、このジカルボン酸は、メチレン基または他のアルキレン基、シクロアルキレン基、芳香族基、ヘテロ芳香族基、あるいはこれらの組み合わせを含む。このような基の例としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、シクロへキシレン、フェニレン、ピリジレン、これらの組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
いくつかの実施形態において、ポリオール(上記ジオールを含む)は、これらのポリオールをさらなる成分(酸(例えば、セバシン酸、アゼライン酸、スベリン酸、ピメリン酸、アジピン酸、グルタール酸、コハク酸、マロン酸、シュウ酸、テレフタル酸、シクロヘキシルジカルボン酸、ピリジンジカルボン酸、これらの組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない))と反応させてエステルを形成することにより、官能基化され得る。ある実施形態において、PEGエステルが形成され得、そしてポリマーポリオール成分として利用され得る。このような場合には、このポリオールは、このエステルの約66重量%〜約97重量%、ある実施形態においては、このエステルの約70重量%〜約90重量%の量で存在し得、酸は、このエステルの約3重量%〜約34重量%、ある実施形態においては、このエステルの約10重量%〜約30重量%の量で存在し得る。
【0026】
他の実施形態において、分枝ポリオールがコアを形成するために利用され得、この分枝ポリオールとしては、分枝ポリエーテルジオールまたは分枝ポリエステルジオールが挙げられる。
【0027】
ある実施形態において、ポリマーポリオールは、約400グラム/mol〜約5000グラム/mol、ある実施形態においては、約850グラム/mol〜約2000グラム/molの分子量を有し得る。
【0028】
ある実施形態において、このポリオールは次いで、イソシアネートプレポリマーに変換され得る。本開示によれば、上記ポリオール(例えば、ポリエステルジオールまたはポリエーテルジオール)は、最初にニトロアリールエステルまたはニトロアリールエーテルに変換させることにより、イソシアネートプレポリマー、ある実施形態においては、ジイソシアネートプレポリマーに変換され得る。例えば、上記のようなジオールは、ニトロアリールカルボン酸誘導体と反応させられ得る。本明細書中で使用される場合、ある実施形態において、ニトロアリールカルボン酸誘導体は、芳香族環を含み、この芳香族環には少なくとも1つのニトロ基が結合しており、少なくとも1つのカルボン酸基またはその誘導体がこの芳香族環に直接には結合していない。適切なニトロアリールカルボン酸誘導体としては、例えば、o−ニトロフェニル酢酸、m−ニトロフェニル酢酸、p−ニトロフェニル酢酸、o−ニトロフェノキシ酢酸、m−ニトロフェノキシ酢酸、p−ニトロフェノキシ酢酸、4−ニトロ馬尿酸、o−ニトロケイ皮酸、m−ニトロケイ皮酸、p−ニトロケイ皮酸、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0029】
ある実施形態において、ポリオールをニトロアリールカルボン酸と反応させる前に、カルボン酸基が、塩化オキサリル、塩化チオニル、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、カルボミルジイミダゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCI)、これらの組み合わせなどでの処理により、活性化され得る。ニトロアリールカルボン酸誘導体に添加される試薬の量は、約1モル当量〜約2.5モル当量、ある実施形態においては、約1.2モル当量〜1.6モル当量であり得る。
【0030】
酸塩化物の形成は、約0℃〜約60℃、ある実施形態においては、約10℃〜約30℃の温度で、約1時間〜約6時間、ある実施形態においては、1.5時間〜約3時間にわたって行われ得る。酸塩化物の形成は、塩化オキサリルまたは塩化チオニルが試薬として使用される場合、必要に応じて、触媒(例えば、ジメチルホルムアミド)の添加により起こり得る。
【0031】
ニトロアリールカルボン酸誘導体は、ポリオールと化合させられて、当業者の知識の範囲内である任意の手段(混合、ブレンド、これらの組み合わせなどが挙げられる)により、ニトロアリールエステルを生成し得る。ニトロアリールカルボン酸誘導体およびポリオールは、約0℃〜約80℃、ある実施形態においては、約25℃〜約60℃の温度で、約3時間〜約24時間、ある実施形態においては、約5時間〜約16時間にわたって、化合させられ得る。ある実施形態において、この反応は、適切な溶媒(例えば、酢酸エチル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、トルエン、これらの組み合わせなど)を利用して、溶液中で行われ得る。
【0032】
このように生成されたニトロアリールエステルは、当業者の知識の範囲内である任意の手段(例えば、洗浄および濾過、沈殿、結晶化、クロマトグラフィー、これらの組み合わせなどが挙げられる)を利用して、溶液から回収され得る。
【0033】
ニトロアリールカルボン酸誘導体およびポリオールの量は、所望の最終用途に依存して変動し得、ニトロアリールカルボン酸誘導体は、ニトロアリールエステルの約8重量%〜約42重量%、ある実施形態においては、ニトロアリールエステルの約15重量%〜約24重量%の量で存在し、そしてポリオールは、ニトロアリールエステルの約58重量%〜約92重量%、ある実施形態においては、ニトロアリールエステルの76重量%〜約85重量%の量で存在する。
【0034】
ある実施形態において、得られたニトロアリールエステルまたはニトロアリールエーテルは、次いで、還元反応により、アミノエステルまたはアミノエーテルに変換され得る。この還元反応のために適切な還元剤の例としては、パラジウムと水素、パラジウムとギ酸アンモニウム、酸化パラジウムと水素、ニッケルと水素、塩化スズ(II)、鉄と酢酸、アルミニウムと塩化アンモニウム、ボラン、亜ジチオン酸ナトリウム、ヒドラジン、これらの組み合わせなどが挙げられるが、これらに限定されない。アミノエステルを形成するための還元反応を実施するために利用される還元剤の量は、約2モル当量〜約20モル当量、ある実施形態においては、約6モル当量〜約15モル当量であり得る。
【0035】
この還元反応は、これらの成分を、当業者の知識の範囲内である任意の手段(混合、ブレンド、これらの組み合わせなどが挙げられる)を利用してあわせることにより行われ得る。この還元反応において利用される反応物質は、必要に応じて、約30℃〜約120℃、ある実施形態においては、約50℃〜約80℃の温度まで加熱され得る。ある実施形態において、この反応は、適切な溶媒(例えば、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸プロピル、これらの組み合わせなど)を利用して、溶液中で行われ得る。
【0036】
このように生成されたアミノエステルは、当業者の知識の範囲内である任意の手段(例えば、洗浄および濾過、沈殿、結晶化、クロマトグラフィー、これらの組み合わせなどが挙げられる)を利用して、溶液から回収され得る。
【0037】
得られたアミノエステルまたはアミノエーテルは、次いで、適切な反応物質(例えば、ホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲン、クロロギ酸4−ニトロフェニル、これらの組み合わせなどが挙げられる)と反応させることにより、イソシアン酸エステルまたはイソシアン酸エーテルに変換され得る。イソシアネートを形成するために利用される成分は、当業者の知識の範囲内である任意の手段(例えば、混合、ブレンド、これらの組み合わせなどが挙げられる)を使用して化合させられ得る。イソシアネートを形成するために利用される成分は、必要に応じて、約30℃〜約120℃、ある実施形態においては、約45℃〜約80℃の温度まで加熱され得る。イソシアネートの形成は、必要に応じて、塩基(例えば、トリエチルアミン、ピリジン、ジイソプロピルエチルアミン、炭酸ナトリウム、これらの組み合わせなど)の存在下で、そして必要に応じて、非プロトン性溶媒(例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、酢酸エチル、酢酸プロピル、これらの組み合わせなど)中で行われ得る。
【0038】
イソシアネートを形成するために利用される、ホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲン、クロロギ酸4−ニトロフェニルなどの試薬の量は、アミンに対して、約1モル当量〜約3モル当量、ある実施形態においては、約1.2モル当量〜約1.75モル当量であり得る。
【0039】
従って、得られたイソシアン酸エステルまたはイソシアン酸エーテル(時々、ある実施形態において、生体適合性イソシアネートと称される)は、ある実施形態において、以下の式:
【0040】
【化3】

のものであり得る。この式において、Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、芳香族基、ヘテロ芳香族基、複素環式基、およびこれらの組み合わせであり得、そしてnは、約1〜約5、ある実施形態においては約2〜約3の整数であり;
は、CH、アルキル、OCH、SCH、NHCH、O−アルキル、S−アルキル、NH−アルキル、O−アリール、および/またはNH−アリールであり得、そしてRは、各位置において同じであっても異なっていてもよく;そして
PAOは、約200〜約4000、ある実施形態においては、約600〜約2000の分子量を有する、上記のようなポリアルキレンオキシド(ある実施形態においては、ポリエチレングリコール)である。
【0041】
ある実施形態において、Rは、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、シクロへキシレン、フェニレン、ピリジレン、これらの組み合わせなどであり得る。
【0042】
このように生成されたイソシアネートは、次いで、第二の成分と反応させられて、本開示による接着剤組成物または封止剤組成物を形成し得る。当業者に容易に明らかになるように、本開示の組成物の所望の特性は、得られる接着剤組成物または封止剤組成物を調製するために利用される特定の成分の選択により、調整され得る。
【0043】
上記生体適合性イソシアネート(すなわち、イソシアン酸エステルまたはイソシアン酸エーテル)と反応させられ得る適切な第二の成分としては、ポリマーコアを形成する際に使用するための上記ポリオールが挙げられる。ある実施形態において、第二の成分は、別のアルコール(例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、ヘキサン−1,2,6−トリオール、ポリカプロラクトントリオール、ポリアルキレンオキシド、アミノアルコール、これらの組み合わせなど)を含有し得る。他の実施形態において、第二の成分はまた、ポリアミドを、必要に応じて上記のようなアルコールと組み合わせて、含有し得る。
【0044】
利用され得る他のアルコールとしては、ポリオールと、例えばポリイソシアネート、ポリカルボン酸誘導体、これらの組み合わせなどとの部分的な反応により得られる、任意のポリオールが挙げられる。この反応は、より長いポリマー分子の作製を可能にする。
【0045】
従って、本開示の接着剤組成物および/または封止剤組成物は、本開示の生体適合性イソシアネート成分を、この組成物の約10重量%〜約100重量%、ある実施形態においては、この組成物の50重量%〜95重量%の量で有し得、この接着剤組成物および/または封止剤組成物の第二の成分は、この組成物の約0重量%〜約90重量%、ある実施形態においては、この組成物の5重量%〜50重量%の量で存在する。
【0046】
いくつかの実施形態において、本開示の生体適合性イソシアネート成分対本開示の組成物中の第二の成分の重量比は、5000:1〜約1:1、ある実施形態においては、1000:1〜約10:1であり得る。
【0047】
得られた本開示の組成物は、縫合糸、ステープル、クランプ、これらの組み合わせなどの代わりにか、またはこれらと組み合わせて、医療/外科手術の能力で使用され得る。
【0048】
任意の成分が、本開示の組成物に添加されて、特定の使用用途(例えば、接着剤または封止剤として)に従ってその粘度を調整し得る。このような任意の成分としては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル(「DIGLYME」)、ジメチルホルムアミド(「DMF」)、コハク酸ジメチル、グルタール酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、これらの組み合わせなどが挙げられ得る。本開示の組成物の粘度を調整するために使用され得る増粘剤としては、ポリシアノアクリレート、ポリアクリル酸、ポリグリコール酸、乳酸−グリコール酸コポリマー、ポリ−3−ヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、ペクチン、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0049】
利用される場合、このような添加剤は、組成物の約1重量%〜約30重量%、ある実施形態においては、組成物の約2重量%〜約15重量%の量で存在するように、含有され得る。
【0050】
必要に応じて、安定剤が、本開示の組成物の貯蔵安定性を増加させるために添加され得る。適切な安定剤としては、尚早な重合を防止する安定剤(例えば、キノン、ヒドロキノン、ヒンダードフェノール、ヒドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール、ベンゾキノン、2−ヒドロキシベンゾキノン、p−メトキシフェノール、t−ブチルカテコール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、t−ブチルヒドロキノン、これらの組み合わせなど)が挙げられ得る。適切な安定剤としてはまた、酸無水物、シリルエステル、スルトン(例えば、α−クロロ−α−ヒドロキシ−o−トルエンスルホン酸−γ−スルトン)、二酸化硫黄、硫酸、スルホン酸、亜硫酸、ラクトン、三フッ化ホウ素、有機酸、硫酸アルキル、亜硫酸アルキル、3−スルホレン、アルキルスルホン、アルキルスルホキシド、メルカプタン、硫化アルキル、これらの組み合わせなどが挙げられ得る。いくつかの実施形態において、酸無水物(例えば、無水マレイン酸、セバシン酸無水物、および/またはアゼライン酸無水物)が、安定剤として使用され得る。他の実施形態において、酸化防止剤(例えば、ビタミンE、ビタミンK1、ケイ皮酸、および/またはフラバノン)が、安定剤として使用され得る。
【0051】
利用される場合、このような安定剤は、これらの安定剤が組成物の約0.01重量%〜約10重量%、ある実施形態において、約0.1重量%〜約2重量%の量で存在するように、含有され得る。
【0052】
いくつかの実施形態において、固体担持触媒が、合成の間に使用されて、得られる本開示の組成物の安定性を改善し得る。このような触媒の存在は、使用の間の反応性を増大させ得る。適切な触媒は、当業者の知識の範囲内であり、そしてオクタン酸スズ、トリエチルアミン、ジエチルアミノエタノール、ジメチルアミノピリジン(DMAP)、これらの組み合わせなどが挙げられ得る。使用される触媒の量は、組成物の他の成分1キログラムあたり約0.5グラム〜約50グラムであり得る。
【0053】
本開示の組成物は、ヒトおよび動物の多数の異なる医療用途(創傷閉鎖(外科手術切開および他の創傷が挙げられる)、医療デバイス(移植物が挙げられる)のための接着、空隙充填剤、ならびに塞栓材料が挙げられるが、これらに限定されない)のために使用され得る。接着組成物および/または封止剤組成物は、縫合糸、ステープル、クランプ、テープ、包帯などの代わりにか、またはこれらの補足としてかのいずれかで、組織を一緒に結合するために使用され得る。開示される組成物の使用は、現行の実施の間に通常必要とされる縫合糸を排除し得るか、または縫合糸の数をかなり減少させ得、そしてステープルおよび特定の型の縫合糸を引き続いて除去する必要性を排除し得る。従って、本開示の組成物は、縫合糸、クランプまたは他の従来の組織閉鎖機構がさらなる組織損傷を引き起こし得る繊細な組織に対して使用するために、特に有用であり得る。
【0054】
他の添加剤ありまたはなしの本開示の組成物の塗布は、任意の従来の手段によってなされ得る。これらとしては、浸漬、ブラッシング、または組成物の他の直接的な組織表面上での操作、注射器(例えば、ミキサーノズルを用いる)によるもの、あるいは表面への組成物の噴霧が挙げられる。開腹外科手術においては、手、鉗子などによる塗布が企図される。内視鏡外科手術においては、この組成物は、トロカールのカニューレを通して送達され得、そして当業者の知識の範囲内の任意のデバイスによって、その部位に広げられ得る。
【0055】
ある実施形態において、本開示の生体適合性イソシアネート成分は、必要に応じて第二の成分と組み合わせて、溶媒に溶解されて塗布のための溶液を形成し得る。適切な溶媒としては、水混和性であり、かつ医療/外科手術用途のために生物学的に受容可能である溶媒が挙げられる。いくつかの実施形態において、これらの溶媒としては、DIGLYME(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、N,N−ジメチルホルムアミド(「DMF」)、ジメチルスルホキシド、これらの組み合わせなどが挙げられ得る。
【0056】
ある実施形態において、生体適合性イソシアネート成分は、第一の溶液中に存在し得、少なくとも1種の第二の成分が、水性媒体(必要に応じて少なくとも1種の生分解性増粘剤を含有する)に溶解している。生物学的に受容可能な適切な増粘剤としては、二糖類、多糖類、アルギネート、ヒアルロン酸、ペクチン、デキストラン、セルロース性物質(例えば、カルボキシメチルセルロール、メチルセルロース)、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0057】
生体適合性イソシアネート成分は、第一の溶液中に、この第一の溶液の約10重量%〜約100重量%、ある実施形態においては、この第一の溶液の約50重量%〜約90重量%の量で存在し得る。水性媒体(時々、本明細書中で第二の溶液と称される)中の第二の成分の量は、この第二の溶液の約0.01重量%〜約10重量%、ある実施形態においては、この第二の溶液の約0.05重量%〜約5重量%であり得る。存在する場合、生分解性増粘剤は、第二の溶液の約0重量%〜約10重量%の量で存在し得る。
【0058】
次いで、生体適合性イソシアネート成分の溶液および第二の成分の溶液は、塗布の際に合わせられて、本開示の封止剤組成物または接着剤組成物を形成し得る。例えば、本開示の組成物は、従来の接着剤ディスペンサーから分配され得、このディスペンサーは、接着剤または封止剤を分配する前に、生体適合性イソシアネート成分と第二の成分との混合を提供し得る。このようなディスペンサーは、例えば、米国特許第4,978,336号、同第4,361,055号、同第4,979,942号、同第4,359,049号、同第4,874,368号、同第5,368,563号、および同第6,527,749号(これらの各々の開示は、本明細書中に参考として援用される)に開示されている。
【0059】
いくつかの実施形態において、二重区画アプリケータが利用され得、そして生体適合性イソシアネート成分の溶液と第二の成分の溶液との混合は、エアロゾルによってか、またはアプリケータもしくは注射器に取り付けられた混合ヘッドによって、分配の際に行われて接着剤を形成し得る。他の添加剤が、生体適合性イソシアネート成分の溶液、第二の成分の溶液、またはこれらの両方に導入され得る。
【0060】
例えば、接着剤組成物は、哺乳動物の組織に噴霧され得、これは、この組織へのさらなる機械的応力の危険性を低下させる。この噴霧による塗布は、この組成物が微細な霧またはエアロゾルとして塗布され得るような、当業者の知識の範囲内である任意の手段により得る。例えば、この組成物は、スプレーボトルに入れられ得、そしてハンドポンプによって送達され得る。あるいは、この組成物は、非クロロフルオロ炭化水素推進剤(例えば、空気、窒素、二酸化炭素、および/または炭化水素)を用いる容器に入れられ得、そして加圧されるスプレー缶を使用して送達され得る。いずれの場合も、この組成物は、微細な開口部を通過して霧を形成し、そして外科手術位置に送達される。
【0061】
他の実施形態において(特に、本開示の組成物が、空隙充填剤として利用されるか、または動物の身体の欠損部を充填する場合)、架橋の状態および程度をより正確に制御することが有利であり得る。このような場合、動物組織の空隙を充填する使用の前に、この組成物を部分的に架橋させることが望ましくあり得る。次いで、本開示の組成物は、空隙または欠損部に塗布され得、そして硬化され得、これによって、この空隙または欠損部を充填する。
【0062】
2つの組織の縁部の接合を行うために、これらの2つの縁部が接近させられ得、そして生体適合性イソシアネート成分が第二の成分と組み合わせて塗布され得る。他の実施形態において、生体適合性イソシアネート成分が1つの組織の縁部に塗布され得、第二の成分が第二の組織の縁部に塗布され得、次いでこれらの2つの縁部が互いに接触させられ得る。これらの成分は迅速に架橋し、一般には1分かからない。従って、本開示の組成物は、創傷(外科手術の切開を含む)を閉鎖するための接着剤として使用され得る。このような場合、本開示の組成物は、創傷に塗布され得、そして硬化され得、これによってこの創傷を閉鎖する。
【0063】
別の実施形態において、本開示は、本開示の接着剤組成物を使用して、組織の2つの縁部を固定するのではなく、組織に医療デバイスを接着させるための方法に関する。いくつかの局面において、この医療デバイスは、移植物を備える。他の医療デバイスとしては、ペースメーカー、ステント、バイパスなどが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、医療デバイスの組成に依存して、この医療デバイスにコーティングが必要とされ得る。いくつかの局面において、このようなコーティングは、第二の成分と組み合わせた本開示の生体適合性イソシアネート成分を含有し得る。一般に、デバイスを動物組織の表面に接着させるためには、本開示の組成物は、デバイス、組織表面、またはこれらの両方に塗布され得る。他の実施形態において、本開示の生体適合性イソシアネート成分は、デバイスまたは組織表面のうちのいずれかに塗布され得、第二の成分が他方(すなわち、生体適合性イソシアネート成分が塗布されていない方)に塗布される。次いで、デバイスおよび組織表面は、互いに接触させられ、そして組成物が硬化させられ、これによって、このデバイスとこの組織表面とを互いに接着する。
【0064】
本開示の組成物はまた、外科手術後の癒着を防止するために使用され得る。このような用途において、この組成物は、内部組織の表面に層として塗布され得、そして硬化され得る。この目的は、治癒プロセス中に外科手術部位において癒着が形成されることを防止することである。癒着障壁の形成に加えて、ある実施形態において、この接着剤は、移植物(例えば、移植のためのガスケット、支持具または外科用綿撒糸)を形成するために利用され得る。
【0065】
別の実施形態において、組成物は、皮膚の移植片を付着させるため、および再構成外科手術の間に組織フラップを位置決めするために、使用され得る。なお別の実施形態において、組成物は、歯周手術において組織フラップを閉鎖するために使用され得る。
【0066】
本開示の組成物の用途としてはまた、縫合線またはステープル線における血液または他の流体の漏出を防止または制御するために、組織を封止することが挙げられる。ある実施形態において、組成物は、機械的応力を引き起こし得る従来の道具の代わりに、繊細な組織を一緒に封止または接着させるために使用され得る。組成物はまた、組織における空気および/または流体の漏出部を封止するために使用され得る。さらに、組成物は、癒着を防止するため、損傷した繊細な組織に対する保護層を提供するため、および/または外科手術部位に薬物送達層を提供するために、障壁として組織に塗布され得る。
【0067】
封止剤として使用される場合、本開示の組成物は、外科手術手順の最中と後との両方に、出血または流体の漏出を防止または抑制するために、外科手術において使用され得る。この組成物はまた、肺手術に関連する空気の漏出を防止するために塗布され得る。封止剤は、望ましい領域に直接、組織のあらゆる欠損部を密封するため、およびあらゆる流体または空気の移動を密封するために少なくとも必要な量で塗布され得る。
【0068】
種々の任意の成分(医療薬剤が挙げられる)もまた、本開示の組成物に添加され得る。これらの薬剤は、本開示の接着剤組成物、本開示の封止剤組成物、またはこれらの両方に添加され得る。さらなる医療薬剤としては、抗菌剤、着色剤、防腐剤、または医療薬剤(例えば、タンパク質およびペプチド調製物、解熱剤、消炎剤および鎮痛剤、抗炎症剤、血管拡張薬、抗高血圧剤および抗不整脈剤、低血圧剤、鎮咳剤、抗腫瘍薬、局所麻酔、ホルモン調製剤、喘息治療剤および抗アレルギー剤、抗ヒスタミン薬、抗凝固薬、鎮痙薬、大脳の循環および代謝の改質剤、抗うつ剤および抗不安薬、ビタミンD調製物、低血糖剤、抗潰瘍剤、睡眠薬、抗生物質、抗真菌剤、鎮静剤、気管支拡張剤、抗ウイルス剤、排尿障害剤、これらの組み合わせなど)が挙げられる。抗菌安定化特性を提供し、そして組成物中の他の材料の分散を補助する、リン脂質界面活性剤もまた、本開示の組成物に添加され得る。
【0069】
画像化剤(例えば、ヨウ素、硫酸バリウム、またはフッ素)もまた、本開示の組成物に組み合わせられて、画像化設備(X線、MRI、および/またはCATスキャンが挙げられる)の使用による外科手術領域の可視化を可能にし得る。
【0070】
さらに、酵素が、本開示の組成物に添加されて、分解速度を増加させ得る。適切な酵素としては、例えば、ペプチドヒドロラーゼ(例えば、エラスターゼ、カテプシンG、カテプシンE、カテプシンB、カテプシンH、カテプシンL、トリプシン、ペプシン、キモトリプシン、γ−グルタミルトランスフェラーゼ(γ−GTP)など);糖鎖ヒドロラーゼ(例えば、ホスホリラーゼ、ノイラミニダーゼ、デキストラナーゼ、アミラーゼ、リゾチーム、オリゴサッカラーゼなど);オリゴヌクレオチドヒドロラーゼ(例えば、アルカリホスファターゼ、エンドリボヌクレアーゼ、エンドデオキシリボヌクレアーゼなど)が挙げられる。いくつかの実施形態において、酵素が添加される場合、この酵素は、その放出速度を制御するためのリポソームまたはマイクロスフェア内に含まれ得、これによって、本開示の組成物の分解速度を制御する。酵素をリポソームおよび/またはマイクロスフェアに組み込むための方法は、当業者の知識の範囲内である。
【0071】
本発明の組成物は、多数の有利な特性を有する。得られる本開示の組成物は、安全かつ生体適合性であり、組織に対する増強した接着性を有し、そして生分解性であり、止血能力を有し、低費用であり、そして調製および使用が容易である。この組成物はまた、迅速な硬化時間を有する。他の添加剤ありまたはなしでのこの組成物の塗布は、任意の従来の手段によりなされ得る。成分の選択を変化させることによって、接着剤組成物および/または封止剤組成物のゲル化時間が制御され得ると同様に、強度および弾性が制御され得る。
【0072】
これらの組成物は、柔軟なゲルマトリックスを形成し、この組成物が接着剤として利用される場合には、組織の縁部または移植された医療デバイスの所望の位置への静止した位置決めを保証し、そしてこの組成物が封止剤として使用される場合には、密封して接着しながらなお可撓性のシールを保証する。いずれの場合においても、ゲル化の迅速さは、全体的に必要とされる外科手術/塗布時間を低下させる。繊細な組織または海綿質の組織が関与する場合、および/あるいは空気または流体の漏出部が封止されなければならない場合、組成物の噴霧塗布が利用され、組織に対する応力を回避し得、そしてその領域にわたる均一なコーティングを保証し得る。
【0073】
本開示の組成物は、これらの組成物が塗布される組織の位置的一体性および/または医療デバイスの位置を保持する。これらの組成物は、強力な密着性の結合を形成する。これらは、良好な機械的性能および強度を示し、一方で生体組織を接着させるために必要な柔軟性を維持する。この強度および柔軟性は、外科手術組織縁部を移動させることなく、組織のある程度の動きを可能にする。さらに、これらの組成物は、生分解性であり、分解性分に被験体の身体を安全に通過させる。
【0074】
以下の実施例は、本開示の実施形態を図示するために与えられる。これらの実施例は、例示のみであることが意図され、本開示の範囲を限定することは意図されない。また、部および百分率は、他に示されない限り、重量に基づく。本明細書中で使用される場合、「室温」とは、約20℃〜約25℃の温度をいう。
【実施例】
【0075】
(実施例1)
p−ニトロフェニル酢酸(約12.02グラム)のTHF(約130ml)中の溶液を、室温で、塩化オキサリル(約12.25グラム)および2滴のN,N−ジメチルホルムアミドで処理した。得られた混合物を室温で約1.5時間攪拌し、次いで、ロータリーエバポレーターを使用して乾固するまでエバポレートした。得られた酸塩化物を、約50グラムのアジピン酸ポリエチレングリコール(M約1658)と混合した。この混合物を約70℃で約16時間加熱した。室温まで冷却した後に、これをTHF(約100ml)で希釈し、活性炭(約2グラム)およびCELITE(登録商標)(約10グラム)で処理した。約15分間攪拌した後に、この混合物をCELITE(登録商標)のパッドで濾過し、そしてTHF(約50ml)で洗浄した。その濾液を減圧下でエバポレートし、その残渣を減圧下でさらに乾燥させ、そしてビスp−ニトロフェニル酢酸エステルを得た。
【0076】
その化学構造を、H−NMRおよび13C NMRにより確認した。この反応の要約を、以下に式IIとして提供する。
【0077】
【化4】

(実施例2)
上記実施例1において生成したp−ニトロフェニルアセテート(約60グラム)の、THF(約300ml)中の溶液を、約10%の炭素担持パラジウム(約1.61グラム)およびギ酸アンモニウム(約19.1グラム)で順番に処理した。得られた混合物を約60℃で約2時間加熱した。室温まで冷却した後に、この反応混合物をCELITE(登録商標)で濾過し、そしてその濾液をエバポレートした。その残渣をブライン(約100ml)と酢酸エチル(約350ml)との間で分配した。その有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、そしてエバポレートして、対応するp−アミノフェニル酢酸エステルを得た。その化学構造を、H−NMRおよび13C NMRにより確認した。この反応の要約を、以下に式IIIとして提供する。
【0078】
【化5】

(実施例3)
実施例2において生成したp−アミノフェニルアセチルエステル(約57.3グラム)のTHF(約100ml)中の溶液を、添加漏斗を使用して、トリホスゲン(約6.63グラム)のTHF(約200ml)中の溶液に、室温でゆっくりと添加した。この反応混合物を約65℃で一晩加熱した。この反応混合物をエバポレートし、そしてその残渣をNMRおよびIRにより分析し、そして本発明のイソシアネートプレポリマーとして同定した。この反応の要約を以下に式IVとして提供する。
【0079】
【化6】

(実施例4)
実施例3において調製したジイソシアネートプレポリマー(約45.5グラム、約4.41% NCO含有量)を三口丸底フラスコに入れ、そしてトリメチロールプロパン(約0.71グラム)で処理した。得られた混合物を約65℃で約16時間加熱し、そして注射器に封入した。この反応の要約を以下に式Vとして提供する。
【0080】
【化7】

γ線照射による滅菌後、得られた接着剤/封止剤は、約2.47%のイソシアネート含有量、約34905センチポアズの粘度、および約1238グラムの重ね剪断を有した。
【0081】
(実施例5)
約80mlのTHF中の約11.8グラムのp−ニトロフェノキシ酢酸の溶液を、約9.5グラムの塩化オキサリルおよび数滴のジメチルホルムアミドで処理した。得られた溶液を室温で約1.5時間攪拌し、そして乾固するまでエバポレートして、対応する酸塩化物を得た。この酸塩化物を約40グラムのPEG−アジペート(M約1608)と合わせ、そして得られた混合物を約60℃で約16時間加熱した。この反応混合物を約150mlのTHFで希釈し、そして約2グラムの活性炭および約10グラムのCELITE(登録商標)で処理した。この混合物を約15分間攪拌し、次いで、CELITE(登録商標)で濾過し、約50mlのTHFで洗浄し、そしてエバポレートした。その残渣(これは、約40.6グラムのp−ニトロフェノキシ酢酸エステルであった)を減圧下で乾燥させ、そしてその構造をNMRにより確認した。この反応の要約を以下に式VIとして提供する。
【0082】
【化8】

(実施例6)
上記実施例5において生成したp−ニトロフェノキシアセテート(約40.55グラム)のTHF(約150ml)中の溶液を、約10%の炭素担持パラジウム(約1.11グラム)およびギ酸アンモニウム(約13.2グラム)で順番に処理した。得られた混合物を約60℃で約16時間加熱した。室温まで冷却した後に、この反応混合物を、取り付けた350mlの漏斗中に充填した約2cmのアルミナで濾過し、そしてその濾液をエバポレートした。その有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、そしてエバポレートして、対応するp−アミノフェノキシ酢酸エステルを得た。
【0083】
その化学構造を、H−NMRにより確認した。この反応の要約を以下に式VIIとして提供する。
【0084】
【化9】

(実施例7)
上記実施例6において生成したp−アミノフェノキシ酢酸エステル(約25.85グラム)のTHF(約35ml)中の溶液を、添加漏斗を使用して、トリホスゲン(約2.32グラム)のTHF(約25ml)中の溶液に、室温でゆっくりと添加した。この反応混合物を約65℃で一晩加熱した。この反応混合物をエバポレートし、そしてその残渣をNMRおよびIRにより分析して、本発明のイソシアネートプレポリマーであると同定した。この反応の要約を以下に式VIIIとして提供する。
【0085】
【化10】

(実施例8)
実施例7において調製したジイソシアネートプレポリマー(約18.74グラム、約3.66% NCO含有量)を、三口丸底フラスコに入れ、そしてトリメチロールプロパン(約0.24グラム)で処理した。得られた混合物を約65℃で約16時間加熱し、そして分枝物質を得た。この反応の要約を以下に式IXとして提供する。
【0086】
【化11】

(実施例9)
約155.32グラムのポリエチレングリコールを約105℃で加熱し、そしてこの物質に窒素を約4時間吹き込むことにより、乾燥させた。室温まで冷却した後に、これを約28.9グラムの塩化テレフタロイルで処理した。この混合物を約65℃で加熱し、そしてこの温度で約20時間維持した。この反応混合物を約450mlのTHFで希釈し、分液漏斗に移し、そして約200mlのブラインで洗浄した。これらの2つの相を分離し、そしてその水相を約100mlのTHFで抽出した。合わせた有機相を硫酸マグネシウムおよびアルミナで乾燥させ、そして濾過した。その濾液を減圧下でエバポレートし、そしてその残渣を高真空下でさらに乾燥させて、テレフタル酸ポリエチレングリコールを得た。この反応の要約を以下に式Xとして提供する。
【0087】
【化12】

(実施例10)
約6.72グラムのp−ニトロフェニル酢酸の、約50mlのTHF中の溶液を、約6.43グラムの塩化オキサリルおよび数滴のジメチルホルムアミドで処理した。得られた溶液を室温で約1.5時間攪拌し、そして乾固するまでエバポレートして、対応する酸塩化物を得た。この酸塩化物を約30グラムのPEG−テレフタレート(M約1778)と合わせ、そして得られた混合物を約60℃で約16時間加熱した。この反応混合物を約150mlのTHFで希釈し、そして約10グラムの硫酸マグネシウム、約2グラムの活性炭、および約10グラムのCELITE(登録商標)で処理した。この混合物を約15分間攪拌し、次いで、CELITE(登録商標)で濾過し、約50mlのTHFで洗浄し、そしてエバポレートした。その残渣(これは、p−ニトロフェニル酢酸エステルであった)を減圧下で乾燥させ、そしてその構造をNMRにより確認した。この反応の要約を以下に式XIとして提供する。
【0088】
【化13】

(実施例11)
上記実施例10において生成したp−ニトロフェニルアセテート(約36.7グラム)のTHF(約150ml)中の溶液を、約10%の炭素担持パラジウム(約0.93グラム)およびギ酸アンモニウム(約11グラム)で順番に処理した。得られた混合物を約60℃で一晩加熱した。室温まで冷却した後に、この反応混合物を硫酸マグネシウム(約10グラム)、CELITE(登録商標)(約5グラム)および活性炭(約1グラム)で処理し、そして約15分間攪拌した。次いで、これをCELITE(登録商標)で濾過し、そして約300mlのTHFで洗浄した。その濾液をエバポレートし、そして高真空下で乾燥させて、p−アミノ−フェニルアセテートを得た。この反応の要約を以下に式XIIとして提供する。
【0089】
【化14】

(実施例12)
約3.92グラムのトリホスゲンを、機械攪拌子、冷却器および添加漏斗を備えた250mlの三口丸底フラスコに、静止窒素下で入れた。約50mlのTHFを添加した。トリホスゲンが完全に溶解した後に、実施例11から得られた約36グラムのフェニルアセチルアミノエステルの約100mlのTHF中の溶液を滴下した。この反応混合物を約65℃で約16時間加熱した。このTHFを窒素気流下で一晩エバポレートし、所望のジイソシアネートプレポリマーが残った。その構造をH NMR分析およびIR分析により確認した。この反応の要約を以下に式XIIIとして提供する。
【0090】
【化15】

(実施例13)
実施例12において生成した約14.98グラムのジイソシアネートプレポリマーを三口丸底フラスコに入れ、そして約0.21グラムのトリメチロールプロパンで処理した。この混合物を約65℃まで加熱し、そしてこの温度で約20時間維持して、本開示の接着剤/封止剤を生成した。得られた材料は、約1.94%のNCO含有量、約365.5キロセンチポアズの粘度、および約266グラムの重ね剪断を有した。この反応の要約を以下に式XIVとして提供する。
【0091】
【化16】

(実施例14)
約11.98グラムのm−ニトロフェノキシ酢酸を約150mlのTHFに溶解し、そしてこの溶液を約11.22グラムの塩化オキサリルで処理し、続いて2滴のジメチルホルムアミドで処理した。得られた混合物を室温で約1.5時間攪拌し、次いで、乾固するまでエバポレートして、対応する酸塩化物を得た。次いで、この酸塩化物を約46グラムのPEG−アジペートと合わせた。この混合物を約60℃で約20時間加熱した。室温まで冷却した後に、この反応混合物を約300mlのTHFで希釈し、アルミナ、CELITE(登録商標)および硫酸マグネシウムで処理し、そして約15分間攪拌した。次いで、これをCELITE(登録商標)で濾過し、そしてエバポレートした。その残渣を高真空下でさらに乾燥させて、約41.7グラムの、PEG−アジペートの対応するm−ニトロフェノキシ酢酸エステルを得た。この反応の要約を以下に式XVとして提供する。
【0092】
【化17】

(実施例15)
実施例14において生成した41.7グラムのm−ニトロフェノキシアセテートを約300mlのTHFに溶解し、そして約1.2グラムの炭素担持パラジウムおよび約14.27グラムのギ酸アンモニウムで処理した。この混合物を約60℃で加熱し、そしてこの温度で約3時間維持した。この混合物を約10グラムの硫酸マグネシウム、約5グラムのCELITE(登録商標)、および約1グラムの活性炭で処理し、そして約15分間攪拌した。次いで、これをCELITE(登録商標)で濾過し、そして約250mlのTHFで洗浄した。その濾液を減圧下でエバポレートし、そして高真空下でさらに乾燥させて、所望のm−アミノフェノキシアセテートを得た。この反応の要約を以下に式XVIとして提供する。
【0093】
【化18】

(実施例16)
約4.97グラムのトリホスゲンを約100mlのTHFに、機械攪拌子、冷却器および添加漏斗を備えた500mlの三口丸底フラスコ中、静止窒素下で添加した。実施例15において生成した約39.8グラムのm−アミノ−フェノキシ酢酸エステルの、約100mlのTHF中の溶液を、この添加漏斗を使用して添加した。得られた混合物を窒素気流下約65℃で約20時間加熱して、ジイソシアネートプレポリマーを得た。その構造を、NMRおよびIRにより確認した。この反応の要約を以下に式XVIIとして提供する。
【0094】
【化19】

(実施例17)
実施例16において生成した約16.54グラムのジイソシアネートプレポリマーを、乾燥させた三口丸底フラスコに入れ、そして約0.21グラムのトリメチロールプロパンで処理した。この混合物を約65℃まで加熱し、そしてこの温度で約20時間維持し、本開示の接着剤/封止剤を生成した。得られた材料は、約2.92%のCNO含有量、約15キロセンチポアズの粘度および約352グラムの重ね剪断を有した。
【0095】
第二の反応を、同じ条件下で、約18.92グラムの実施例16のジイソシアン酸エステルを約0.35グラムのトリメチロールプロパンと反応させることにより、実施した。得られた材料は、約2.54%のNCO含有量、約35.4キロセンチポアズの粘度および約1020グラムの重ね剪断を有した。この反応の要約を以下に式XVIIIとして提供する。
【0096】
【化20】

(実施例18)
約8.21グラムのp−ニトロフェノキシ酢酸の約60mlのTHF中の溶液を、約7.85グラムの塩化オキサリル、続いて2滴のジメチルホルムアミドで順番に処理した。得られた溶液を室温で約1.5時間攪拌し、そして減圧下でエバポレートして、対応する酸塩化物を得た。次いで、この酸塩化物を約38.9グラムのポリエチレングリコール−シクロヘキシルジカルボキシレート(PEG−シクロヘキシルジカルボキシレート)と合わせた。次いで、この混合物を約60℃で約20時間加熱した。この反応物を約150mlのTHFで希釈し、そして約2グラムの活性炭、約10グラムの硫酸マグネシウム、および約5グラムのCELITE(登録商標)で処理し、そして約15分間攪拌した。次いで、この混合物をCELITE(登録商標)で濾過し、そして約50mlのTHFで洗浄した。その濾液を減圧下でエバポレートし、そして高真空下でさらに乾燥させて、p−ニトロフェニルアセチルエステルを得た。この反応の要約を以下に式XIXとして提供する。
【0097】
【化21】

(実施例19)
実施例18において生成した約39.2グラムのp−ニトロフェニルアセチルエステルの約200mlのTHF中の溶液を、約0.94グラムの炭素担持パラジウムおよび約11.17グラムのギ酸アンモニウムで順番に処理した。この混合物を約60℃で加熱し、そしてこの温度で約12時間〜約20時間維持した。この混合物を約2グラムの活性炭、約10グラムの硫酸マグネシウムおよび約5グラムのCELITE(登録商標)で処理し、そして約15分間攪拌した。次いで、これをCELITE(登録商標)で濾過し、そして約250mlのTHFで洗浄した。その濾液を減圧下でエバポレートし、次いで高真空下で乾燥させて、対応するp−アミノフェニルアセテートを得た。この反応の要約を以下に式XXとして提供する。
【0098】
【化22】

(実施例20)
3.56グラムのトリホスゲンの約250mlのTHF中の溶液を、機械攪拌子、冷却器および添加漏斗を備えた三口丸底フラスコに静止窒素下で入れた。これに、実施例19において生成した約34.45グラムのp−アミノフェニルアセテートの約120mlのTHF中の溶液を、この添加漏斗を使用して添加した。この混合物を約65℃で加熱し、そしてこの温度で約16時間〜約20時間維持した。このTHFをエバポレートし、対応するジイソシアネートプレポリマーを得た。この反応の要約を以下に式XXIとして提供する。
【0099】
【化23】

(実施例21)
実施例20において生成した約13.16グラムのジイソシアネートプレポリマーを、乾燥させた三口丸底フラスコに入れ、そして約0.09グラムのトリメチロールプロパンで処理した。この混合物を約65℃で加熱し、そしてこの温度で約20時間維持し、本開示の接着剤/封止剤を生成した。得られた材料は、約2.73%のNCO含有量、約20.6キロセンチポアズの粘度および約0グラムの重ね剪断を有した。この反応の要約を以下に式XXIIとして提供する。
【0100】
【化24】

種々の改変が、本明細書中に開示される実施形態に対してなされ得ることが理解される。例えば、本開示による組成物は、他の生体適合性物質、生体吸収性物質、または非生体吸収性物質とブレンドされ得る。別の例として、任意の成分(例えば、色素、充填剤、医薬または抗菌化合物)が、この組成物に添加され得る。従って、上記説明は限定と解釈されるべきではなく、単に、実施形態の例示と解釈されるべきである。当業者は、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内で、他の改変を予測する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化25】

を含有する生体適合性成分であって、該式において、
Rは、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキレン基、シクロアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、芳香族基、ヘテロ芳香族基、複素環式基、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;
nは、1〜5であり得;
は、各位置において同じであっても異なっていてもよく、そしてCH、アルキル、OCH、SCH、NHCH、O−アルキル、S−アルキル、NH−アルキル、O−アリール、NH−アリール、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され;そして
PAOは、約200〜約4000の分子量を有するポリアルキレンオキシドである、
生体適合性成分。
【請求項2】
Rが、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、シクロへキシレン、フェニレン、ピリジレン、これらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の生体適合性成分。
【請求項3】
前記ポリアルキレンオキシドが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ラクチド結合を有するポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール−co−ポリエチレンオキシドコポリマー、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドコポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載の生体適合性成分。
【請求項4】
第二の成分と組み合わせられた請求項1に記載の生体適合性成分を含有する組成物。
【請求項5】
前記第二の成分がポリオールを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリオールが、グリセロール、トリメチロールプロパン、ヘキサン−1,2,6−トリオール、ポリカプロラクトントリオール、ポリアルキレンオキシド、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の生体適合性成分が、前記組成物の約50重量%〜約90重量%の量で存在し、そして前記第二の成分が、該組成物の約10重量%〜約50重量%の量で存在する、請求項4に記載の組成物。
【請求項8】
創傷を閉鎖するための、請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
動物組織における漏出部を封止するための、請求項4に記載の組成物。
【請求項10】
動物組織の表面に医療デバイスを接着するための、請求項4に記載の組成物。
【請求項11】
ポリオールをニトロアリールカルボン酸誘導体と接触させて、ニトロアリールエステルおよびニトロアリールエーテルからなる群より選択される化合物を形成する工程;
該ニトロアリールエステルまたはニトロアリールエーテルを、パラジウムと水素、パラジウムとギ酸アンモニウム、酸化パラジウムと水素、ニッケルと水素、塩化スズ(II)、鉄と酢酸、アルミニウムと塩化アンモニウム、ボラン、亜ジチオン酸ナトリウム、ヒドラジン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される還元剤と接触させて、アミノエステルおよびアミノエーテルからなる群より選択される第二の化合物を形成する工程;
該アミノエステルまたはアミノエーテルを、ホスゲン、ジホスゲン、トリホスゲン、クロロギ酸4−ニトロフェニル、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される反応剤と、必要に応じて塩基の存在下で、必要に応じて非プロトン性溶媒の存在下で接触させることにより、対応するイソシアン酸エステルまたはイソシアン酸エーテルに変換する工程;ならびに
該イソシアン酸エステルまたはイソシアン酸エーテルを回収する工程、
を包含する、方法。
【請求項12】
前記ポリオールが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ラクチド結合を有するポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール−co−ポリエチレンオキシドコポリマー、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドコポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるポリアルキレンオキシドを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ニトロアリールカルボン酸誘導体が、芳香族環を含み、該芳香族環に窒素が結合しており、少なくとも1つのカルボン酸基は、該芳香族環に直接には結合していない、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記ニトロアリールカルボン酸誘導体が、o−ニトロフェニル酢酸、m−ニトロフェニル酢酸、p−ニトロフェニル酢酸、o−ニトロフェノキシ酢酸、m−ニトロフェノキシ酢酸、p−ニトロフェノキシ酢酸、4−ニトロ馬尿酸、o−ニトロケイ皮酸、m−ニトロケイ皮酸、p−ニトロケイ皮酸、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記ニトロアリールカルボン酸誘導体が、塩化オキサリル、塩化チオニル、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、カルボミルジイミダゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される成分との反応により形成される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリオールと前記ニトロアリールカルボン酸誘導体とが、約0℃〜約80℃の温度で、約3時間〜約24時間にわたって化合させられる、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリオールと前記ニトロアリールカルボン酸誘導体とが、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸プロピル、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される溶媒を利用して溶液中で化合させられる、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記アミノエステルまたは前記アミノエーテルを、対応するイソシアン酸エステルまたはイソシアン酸エーテルに変換する工程が、トリエチルアミン、ピリジン、ジイソプロピルエチルアミン、炭酸ナトリウム、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される塩基の存在下で行われ、そしてまた、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、酢酸プロピル、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される非プロトン性溶媒の存在下で行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリアルキレンオキシドが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ラクチド結合を有するポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール−co−ポリエチレンオキシドコポリマー、ポリエチレンオキシド/ポリプロピレンオキシドコポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項11に記載の方法。

【公開番号】特開2010−188132(P2010−188132A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34132(P2010−34132)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【Fターム(参考)】