説明

接着剤・塗料・金属類その他の夾雑物を含む建築木質廃材の処理方法

【課題】 接着剤・塗料・金属類その他の夾雑物を含む建築木質廃材から、容易かつ確実に木質部分を取り出し、また金属類その他を分離する。
【解決手段】 建築物の解体現場から発生する接着剤・塗料・金属類その他の夾雑物を含む建築木質廃材を解体現場又は処理工場にて、(1)木質廃材と、それ以外の(2)プラスチック、金属の廃材に区分し、前記(1)木質廃材は破砕して粒径40〜10mmの木質廃材破砕物となした後、前記(1)及び(2)の廃材を、磁選機にかけて釘・鋲・蝶番等の金属類を除去し、その後前記木質廃材破砕物を苛性ソーダアルカリ溶液中に浸漬させて、接着剤(主に尿素樹脂・ニカワ・メラミン樹脂等)を液中に溶かし込み、かつ塗料・泥等を木質廃材表面から剥離させて、良質の木質材を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来処理が極めて困難とされている建築廃棄物の木質系廃棄物の内、リサイクルがすすんでいる柱・はり・板材以外の合板を処理し、製紙パルプ用原料又はセルロース産業用の原料として利用するための接着剤・塗料・金属類その他の夾雑物を含む建築木質廃材の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年は高度経済成長期に建てられた住宅・工場が解体され、国土交通省の調査によれば関東地方のみでも年間数百万トンの木質廃棄物が排出され、そのうち30%前後が廃合板となっている。廃合板は一般に粗大であり、接着剤・塗料・金属・泥等により汚れており、かさばり、風にあおられやすく、燃やしても黒煙を発し、処理が困難なため不法投棄になっているものもある。
合板は木質が原料であり、木質はリグニン、セルロース、ヘミセルロースからなっているが、廃合板の処理により接着剤等の夾雑物が除去され、更にアルカリ剤により一部のリグニンが除去されれば、十分に紙パルプ用原料やセルロース産業に利用が可能であり循環型社会に対応する処理技術である。
【0003】
従来の廃合板処理は次のような方法がある。
(1)民間の焼却炉又は自治体の焼却炉にて焼却処理する方法。
(2)セメント会社に持ち込みセメント製造時のエネルギー源とする方法。
(3)管理型処分場に搬入し埋立処分する方法。
(4)不法投棄。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記(1)の方法については、住民の反対により許可を受けている焼却施設は民間では僅かであり、排出量に対して処理能力が不足している。
自治体の焼却施設での廃合板類の焼却は一般廃棄物の内限定された範囲であり、その処理は僅かである。
(2)の方法は、最近セメント会社では廃合板の熱カロリーはタイヤ等に比べて低く受入制限又は受入拒否になりつつある。
【0005】
(3)については、全国的に最終処分場(管理型処分場)が不足しており、現在殆どの都道府県・政令指定都市は事前協議制を採用し処分を制限しているので、処分が難しくなっている。埋立処分の場合木質系廃棄物は有機物であるため、全て管理型処分場への処分となりそのため料金が高い。又全て破砕しなければ処分は不可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、このような前記の課題を解決するものであり、下記構成の接着剤・塗料・金属類その他の夾雑物を含む建築木質廃材の処理方法等である。
〔1〕建築物の解体現場から発生する接着剤・塗料・金属類その他の夾雑物を含む建築木質廃材を解体現場又は処理工場にて、(1)木質廃材と、それ以外の(2)プラスチック、金属の廃材に区分し、前記(1)木質廃材は破砕して粒径40〜10mmの木質廃材破砕物となした後、前記(1)及び(2)の廃材を、磁選機にかけて釘・鋲・蝶番等の金属類を除去し、その後前記木質廃材破砕物を苛性ソーダアルカリ溶液中に浸漬させて、接着剤(主に尿素樹脂・ニカワ・メラミン樹脂等)を液中に溶かし込み、かつ塗料・泥等を木質廃材表面からはく離させて、良質の木質材を回収することを特徴とする接着剤・塗料・金属類その他の夾雑物を含む建築木質廃材の処理方法。
〔2〕木質廃材破砕物を浸漬する苛性ソーダアルカリ溶液の濃度が、8〜15%、液温が80〜100℃であることを特徴とする前記〔1〕記載の建築木質廃材の処理方法。
〔3〕木質廃材破砕物を苛性ソーダアルカリ溶液中に浸漬させた後、苛性ソーダアルカリ溶液を攪拌ないし還流循環し、しかる後再び加熱された苛性ソーダアルカリ溶液中に浸漬させ、その後水洗いして夾雑物及びアルカリ剤の除去を行う良質の木質材を回収することを特徴とする前記〔1〕又は〔2〕記載の建築木質廃材の処理方法。
〔4〕木質廃材破砕物を、耐アルカリ性のステンレス製又はプラスチック製の網目状容器に入れ、苛性ソーダアルカリ溶液中に浸漬した後、浸漬処理済み木質廃材破砕物を乾燥させることを特徴とする前記〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の建築木質廃材の処理方法。
〔5〕前記〔4〕に記載の木質廃材破砕物の乾燥は、建家内の高さ方向に鉄骨により数段の風通しの良い床をつくり、その床の上に前記破砕物が入った網目状の容器を置き、下から熱風を送り、建家の上部からこの熱風を回収し、必要により再加熱等を行い、その熱風をくり返し、乾燥用に利用して、木質の含水率を10%以下に下げることを特徴とする建築木質廃材の処理方法。
【0007】
〔6〕苛性ソーダ溶液はくり返し循環使用した後、その中に溶存された木質を構成しているリグニンを分離するため、循環使用済みの苛性ソーダ溶液に酸を加えて可溶性のリグニンを不溶化させて固液分離を行い、さらに溶液中のNa(ナトリウム)濃度が高くなったナトリウムイオンをイオン交換樹脂にて除去した後、再生して苛性ソーダ溶液となしてくり返し使用することを特徴とする前記〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の建築木質廃材の処理方法。
〔7〕前記〔6〕に記載の苛性ソーダ溶液の処理において、酸にて中和処理後、溶液中の有機物の濃度が高い場合は、溶液中にオゾン(O3)を微小な気泡(100ミクロン以下の微細気泡)にして接触させ、オゾン原子の酸化力により溶液中の有機物を酸化分解させることを特徴とする建築木質廃材の処理方法。
〔8〕前記〔1〕に記載の接着剤・塗料・金属類その他の夾雑物を含む建築木質廃材の処理方法において、プラスチック類と木質廃材は、赤外線・風力・比重(水に浮上するもの沈むものの分離)により分別し、プラスチック類はエネルギー源として焼却処理する方法。
【発明の効果】
【0008】
本願発明によれば、接着剤・塗料・金属類その他の夾雑物を含む建築木質廃材から容易かつ確実に木質部分を取り出すことができ、また金属類その他を分離できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、発明を実施するための最良の形態について、フローシートを参照して説明する。
図1は建築木質廃材である廃合板類の実施例の処理フローシートである。
図示のごとく、まず、(1)において、解体現場から廃材が発生し、(2)において、それから廃合板類を選別する。(3)において、廃合板類は破砕して粒径40〜10mm(例えば30mm)の木質廃材破砕物となした後、(4)において、磁選機にかけて釘・鋲・蝶番等の金属類を除去し、(5)において、前記木質廃材破砕物を苛性ソーダアルカリ溶液(液浸槽)中に浸漬させて、接着剤(主に尿素樹脂・ニカワ・メラミン樹脂等)を液中に溶かし込み、かつ塗料・泥等を表面から剥離させ(前処理)、(6)において、再度苛性ソーダアルカリ溶液を循環使用して(5)の処理を行う(後処理)、(7)において、木質廃材破砕物を水洗槽に入れて水洗し、(8)において、乾燥させ、(9)において、検査を行い、(10)において、パルプ用材料として利用する。
なお、上記において、(5)と(6)工程において、熱湯とアルカリ(苛性ソーダ)剤を追加供給し、かつ循環使用する。
【0010】
また、図2は前記液浸槽及び水洗槽から排出する有機物を含む廃液の処理フローシートである。
(11)において、前記前処理液浸槽と後処理液浸槽と水洗槽からの各液が集合され、それに(12)において、塩酸が添加されて中和され、さらにpH3程度以下に調整される。
次いで、(13)において、廃水中の有機物がSS化され、(14)において、固液分離される。
その後、固液分離された、固形分は、脱水され、例えば燃料として利用される。
また、固液分離された、液分には、オゾンO微細気泡が噴射され、含有する有機物を殺菌等処理し、前記液浸用の液として再利用される。
【0011】
以上において、〈1〉廃合板の接着剤は、殆どが尿素樹脂・メラミン樹脂・ニカワであるため、これらはいずれもアルカリ液によく溶ける。
また廃合板の塗料は、塗膜を形成しており、塗膜は木質部分と接着しているが、その接着している木質部分の内リグニン(一部セルロースやヘミセルロースも含まれる)を液浸槽のアルカリ液の中に溶かし込むことにより塗膜は木質部分から剥離される。
さらに、廃合板に付いている金属類(主に釘・鋲・蝶番等)は磁選により容易に取り除くことができる。
泥・土壌の類は前記アルカリ溶液の洗浄にて除去できる。
〈2〉アルカリ剤として苛性ソーダを使う理由は、アルカリのOH-にリグニンが溶け込みやすく、また、接着剤もよく溶け、かつ比較的に低価格あるからである。そして、この木質廃材破砕物の処理物を紙・パルプ原料にした場合、リグニンの除去がかなりすすんでいるため、好都合である。
〈3〉液浸槽のアルカリ剤の温度を80℃、好ましくは90℃以上にすると、リグニン・接着剤の溶け込み方が早くなり効率がよい。
〈4〉木質廃材破砕物の粒径を40mm以下、好ましくは30mm以下とすると、アルカリ剤による前記前処理及び後処理の効率が良く、また紙製造用のパルプ用材料に利用する際に好適なセルロースの繊維長となるものである。
〈5〉アルカリ溶液はくり返し使用するが、このアルカリ液には接着剤とリグニンが溶け込んでくるので10回位のくり返し使用後、アルカリ液を処理しなければならない。処理の方法はアルカリ液に塩酸を加えpHを3以下にすれば溶け込んでいるリグニンは不溶性の懸濁物質(SS化)となり、少量の凝集剤を加えれば容易に沈殿・分離する。上水はかなりの有機物を含んでいるので、オゾン処理による同pH下によるOの酸化分解力(酸素原子の酸化力)により効率的かつ容易に分解できる。
【0012】
しかしながら、苛性ソーダと塩酸により塩分が少しずつ生成されるので塩分の除去を必要とする。塩分除去方法は膜により塩分濃縮を行い、大規模の処理の場合は電解法とするが、小規模の場合はイオン交換樹脂を使用する。
〈6〉木質破砕物をパルプ用原料とする場合、製紙・パルプ用メーカーの受入条件の1つに含水率を10%以下とする項目があり、そのため乾燥させる必要がある。この方法については破砕物の大きさを40mm以下、好ましくは30mm以下の細片とすれば乾燥は容易である。
〈7〉リグニンが溶け込んでいる液を酸性側にし、可溶性のリグニンを不活性のSS化(懸濁物質とする)をすることにより固液分離が行われるが、その上水にはまだ有機物(リグニン他)が残っているので分解の必要があり、O3の気泡を小さく(マイクロバブルを目指す)して散気させる方法をとることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】木質廃材である廃合板類の実施例の処理フローシートである。
【図2】液浸槽及び水洗槽から排出する有機物を含む廃液の処理フローシートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の解体現場から発生する接着剤・塗料・金属類その他の夾雑物を含む建築木質廃材を解体現場又は処理工場にて、(1)木質廃材と、それ以外の(2)プラスチック、金属の廃材に区分し、前記(1)木質廃材は破砕して粒径40〜10mmの木質廃材破砕物となした後、前記(1)及び(2)の廃材を、磁選機にかけて釘・鋲・蝶番等の金属類を除去し、その後前記木質廃材破砕物を苛性ソーダアルカリ溶液中に浸漬させて、接着剤(主に尿素樹脂・ニカワ・メラミン樹脂等)を液中に溶かし込み、かつ塗料・泥等を木質廃材表面からはく離させて、良質の木質材を回収することを特徴とする接着剤・塗料・金属類その他の夾雑物を含む建築木質廃材の処理方法。
【請求項2】
木質廃材破砕物を浸漬する苛性ソーダアルカリ溶液の濃度が、8〜15%、液温が80〜100℃であることを特徴とする請求項1記載の建築木質廃材の処理方法。
【請求項3】
木質廃材破砕物を苛性ソーダアルカリ溶液中に浸漬させた後、苛性ソーダアルカリ溶液を攪拌ないし還流循環し、しかる後再び加熱された苛性ソーダアルカリ溶液中に浸漬させ、その後水洗いして夾雑物及びアルカリ剤の除去を行う良質の木質材を回収することを特徴とする請求項1又は2記載の建築木質廃材の処理方法。
【請求項4】
木質廃材破砕物を、耐アルカリ性のステンレス製又はプラスチック製の網目状容器に入れ、苛性ソーダアルカリ溶液中に浸漬した後、浸漬処理済み木質廃材破砕物を乾燥させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の建築木質廃材の処理方法。
【請求項5】
請求項4記載の木質廃材破砕物の乾燥は、建家内の高さ方向に鉄骨により数段の風通しの良い床をつくり、その床の上に前記破砕物が入った網目状の容器を置き、下から熱風を送り、建家の上部からこの熱風を回収し、必要により再加熱等を行い、その熱風をくり返し、乾燥用に利用して、木質の含水率を10%以下に下げることを特徴とする建築木質廃材の処理方法。
【請求項6】
苛性ソーダ溶液はくり返し循環使用した後、その中に溶存された木質を構成しているリグニンを分離するため、循環使用済みの苛性ソーダ溶液に酸を加えて可溶性のリグニンを不溶化させて固液分離を行い、さらに溶液中のNa(ナトリウム)濃度が高くなったナトリウムイオンをイオン交換樹脂にて除去した後、再生して苛性ソーダ溶液となしてくり返し使用することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の建築木質廃材の処理方法。
【請求項7】
請求項6記載の苛性ソーダ溶液の処理において、酸にて中和処理後、溶液中の有機物の濃度が高い場合は、溶液中にオゾン(O3)を微小な気泡(100ミクロン以下の微細気泡)にして接触させ、オゾン原子の酸化力により溶液中の有機物を酸化分解させることを特徴とする建築木質廃材の処理方法。
【請求項8】
請求項1記載の接着剤・塗料・金属類その他の夾雑物を含む建築木質廃材の処理方法において、プラスチック類と木質廃材は、赤外線・風力・比重(水に浮上するもの沈むものの分離)により分別し、プラスチック類はエネルギー源として焼却処理する方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−152184(P2007−152184A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−348397(P2005−348397)
【出願日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(505328775)株式会社 東亜興業 (4)
【Fターム(参考)】