説明

接着剤層を有する多層板状部材の分離方法及び分離装置

【課題】薄い接着剤層の多層板状部材を各板状部材に損傷を与えることなく容易に分離させる。
【解決手段】多層板状部材100の一側辺100aの幅よりも大きい長辺寸法を有し、多層板状部材100における接着剤層2の幅内に収まるように、金属薄板7を配置し、金属薄板7を、多層板状部材100の接着剤層2の一側端2aから対向する他側端2bまで通過させ、多層板状部材100の上側の板状部材1を残りの部材3と分離させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の板状部材を接着剤層で接着した多層板状部材を、その接着剤層で分離して少なくとも2枚の板状部材を得る分離方法及び分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
板状部材とは、例えば、平面的な表示パネルと透明な保護ガラス板、プラスチック板又は表示パネルを支持する基板等である。平面的な表示パネルとは、LCD(液晶)表示パネル、プラズマ表示パネル、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示パネル、電子ペーパーの電気泳動式表示パネル等のように、光の透過量や発光量等を変化させて表示する表示パネルである。
【0003】
それらの平面的な表示パネルは、表面を保護するためや、表示特性を向上させる為に、透明な保護板が透明な接着剤で略全面にわたる広い面積で接着されることがある。透明な保護板等の材料としては、例えば、ガラス板、アクリル樹脂板(PMMA板)、ポリカーボネート樹脂板(PC板)、アクリル樹脂板とポリカーボネート樹脂板の積層板、エポキシ樹脂を硬化した板等を用いることができる。また、表示パネルが液晶等の自発光性ではない場合には、それらの表示パネルの背面側に、光源からの光を表示パネルの全面に均等に配光するために透明な導光板又は各画素に集光するための透明なマイクロレンズ基板等が接着されることがある。あるいは、それらの表示パネルは、表示パネルを支持するためのシャーシや外部基板と接着されることがある。
【0004】
また、近年においては、表示パネルの表示面側にタッチパネルを接着することがある。タッチパネルの方式としては、例えば、静電容量式や抵抗膜式等がある。静電容量式タッチパネルは、透明板の上に透明電極を形成しその上に透明接着剤で保護板を貼合せる構造になっている。
【0005】
それらの表示パネルと保護板や、表示パネルとタッチパネル、タッチパネル等の透明板と保護板等は、透明な接着剤で接着された後の検査等で、接着剤の貼合わせ面内へのゴミや気泡が混入等の接着剤層の不良が発見される場合がある。その場合に、環境保護の観点と、材料コスト削減の観点から、表示パネル、保護板、タッチパネル、シャーシ、基板等を再利用するため、接着剤層の上下の板状部材を分離させる処理が行われる。接着剤の硬化前であれば、各板状部材を容易に分離させて各々の何れかを他の板状部材と再接着することができるが、接着剤の硬化後は、手や単純な工具で分離させようとすると表示パネルや保護板は割れてしまい、容易に分離すことが難しい。
【0006】
硬化後の接着剤で結合された上下の板状部材を分離させる処理としては、例えば、接着剤層を挟んだ2枚の板状部材における下側の板状部材のみを固定し、くさび状の治具を接着剤層に圧入させることで分離させる方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、接着剤層の上下の板状部材を分離させる処理として、糸鋸を用いて切断する方法が知られている。その糸鋸は、横挽き鋸の横挽き歯(横目歯)のように、のこ身(胴体部)を中心として、各歯をのこ身の厚さ方向における外側に交互に偏向させて突出させた「あさり」を有している(例えば、特許文献2参照)。その他に、表示パネルを単純に加熱して熱可塑性の接着剤を軟化させて分離させる方法、刃物を振動させながら挿入して切り分ける方法等が知られている。
【0008】
また、二つの平面状の光学機能性部材の間に、硬化度が100%未満の光硬化性樹脂の接着剤により接着層が設けられた積層体について、その接着層の全周を囲むように、可撓性樹脂部材のひも状部材を巻き付け、そのひも状部材の周長を短くするようにひも状部材の2点を引っ張り、接着層を切断することにより、光学機能性部材を互いに分離させる方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−167681号公報
【特許文献2】特開2004−184677号公報
【特許文献3】特開2010−49026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献1の方法では、表示パネルや保護板は、その厚みが充分にあって強度が充分にある場合には、接着剤層へのくさびの圧入による応力に耐えることができるが、強度が充分ではない場合には、板状部材に亀裂や割れが発生することがある。近年、表示パネルの薄型化に伴い、ガラス等の貼合せ部材も薄くなり割れやすくなってきている。また、特許文献2の方法では、上下の板状部材を貼り合わせた間の接着剤層の厚み幅が、糸鋸における隣接する歯の厚み方向幅よりも広いことが要求され、一般的に500μm以上の厚みが必要である。例えば、糸鋸の厚みを500μm以下に細くした場合、糸鋸の強度が不足して、接着剤層の切断中に糸鋸が切れて、板状部材を損傷させる可能性がある。損傷した板状部材は、一般的に再利用が不能になり、材料コストを下げることができず、環境保護に役立たない。
【0011】
また、表示パネルを単純に加熱して熱可塑性の接着剤を軟化させて分離させる方法は、加熱により表示パネルを損傷させて再利用が不能になる。従って、表示パネルの温度をなるべく上げずに接着剤層のみの温度が上がるように加熱することが望まれているが、表示パネルにダメージを与えずに接着剤層のみを加熱することは困難である。
【0012】
また、刃物を振動させながら挿入して切り分ける方法も、接着剤層の厚み幅が、刃物を振動させた場合の刃物の厚み以上の幅となるように必要であり、特許文献2の方法と同様に、細くした場合、強度が不足して接着剤層の切断中に、刃が折れて板状部材を損傷させる可能性がある。
【0013】
また、特許文献3の方法では、接着剤層で貼り合わされる上下の板状部材の外周が、面取りなどを施された鋭利な状態ではない場合は接着剤層を切断できるが、外周が鋭利な状態である場合では、切断作業中に糸が鋭利な外周部分に触れることで切れてしまい、その都度に糸の交換が必要であったため、作業性が著しく低下していた。特に、前記表示パネル、前記タッチパネルには面取りされていない場合が多いので、作業性が低下する場合があった。
【0014】
本発明は、上述した問題を解決するために、糸ではなく金属薄膜を用いることで、外周が鋭利な状態であっても、切断作業中に金属薄膜が破断することがないため、作業性の低下がなく分離作業を行え、また、薄い接着剤層でもその両側の板状部材を容易に且つ確実に分離させることができ、その際に各板状部材に損傷を与えることのない分離方法と分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)上記した課題を解決するために本態様の多層板状部材の分離方法では、複数の板状部材を接着剤層で接着した多層板状部材を、該接着剤層で分離する方法であって、前記多層板状部材の一側辺の幅よりも大きい長辺寸法を有し、前記多層板状部材における接着剤層に、金属薄板を配置する工程と、前記金属薄板を、前記多層板状部材の前記接着剤層の一側端から対向する他側端まで通過させる工程と、前記多層板状部材の上側の板状部材を残りの部材と分離させる工程を有する。
上記した多層板状部材の分離方法では、多層板状部材の接着剤層中を金属薄板が通過することで、薄い接着剤層でもその両側の板状部材を容易に且つ確実に分離させることができ、その際に各板状部材に損傷を与えることなく分離させることができる。
【0016】
(2)本態様の多層板状部材の分離方法では、前記金属薄板を配置する工程は、前記金属薄板を、載置台上の前記多層板状部材における接着剤層に対応させて支持部材に取り付け、前記金属薄板を通過させる工程は、前記載置台上に載置した前記多層板状部材を、前記金属薄板の方向に向けて移動させる工程と、前記金属薄板に当接後も前記方向へ移動させることで、前記金属薄板を、前記接着剤層の一側端から対向する他側端まで通過させる工程を含むようにしても良い。
上記した多層板状部材の分離方法では、多層板状部材を移動させながらその接着剤層中を、固定した金属薄板が通過するので、容易に処理することができる。
【0017】
(3)本態様の多層板状部材の分離方法では、前記載置台は、多層板状部材を前記金属薄板の方向へ移動させ易い表面を有し、前記多層板状部材を前記金属薄板の方向に向けて移動させる工程では、前記多層板状部材を、分離作業中に前記多層板状部材が反り返ることで破損することを防ぐ為に、前記載置台側に押圧しながら前記金属薄板の方向に向けて摺動させ、前記金属薄板を、前記接着剤層の一端から他端まで通過させる工程では、前記多層板状部材を、前記金属薄板に当接後も、前記押圧と前記方向への摺動を継続させることで、前記金属薄板を、前記接着剤層の一側端から対向する他側端まで通過させるようにしても良い。
上記した多層板状部材の分離方法では、載置台の表面を、例えば平坦にする、または剛球(ベアリング等)を敷き詰めること等で多層板状部材の載置台上の摩擦を低減させることができ、手動で処理ができ作業性を向上できる。
【0018】
(4)本態様の多層板状部材の分離方法では、前記金属薄板を、前記接着剤層の一端から他端まで通過させる工程は、前記多層板状部材における前記金属薄板に対向する側の辺の両端のうち、一方の端部の角を前記金属薄板に当接させ、その後、前記多層板状部材を、前記両角のうち他方の端部の角が、進行方向に対して先端となるように交互に左右に回動させながら移動させ、前記多層板状部材の回動が所定角度に達したら、反対方向に回動させる処理を繰り返しながら移動させるようにしても良い。
上記した多層板状部材の分離方法では、多層板状部材を左右に捻りながら移動させることで、金属薄板に接着剤層中を通過させる際の抵抗を低減させることができ、移動を容易にすることができる。
【0019】
(5)上記した課題を解決するために本態様の多層板状部材の分離方法では、前記金属薄板を配置する工程は、前記金属薄板を、前記多層板状部材の接着剤層に対応する位置となるように、前記載置台上に沿って移動可能な支持部材に取り付け、前記金属薄板を通過させる工程は、平坦な表面を有する載置台上に、前記多層板状部材を固定する工程と、前記前記支持部材を、前記多層板状部材の方向に向けて移動させる工程と、前記支持部材を、前記金属薄板の前記多層板状部材に当接後も前記方向へ移動させることで、前記金属薄板を、前記接着剤層の一側端から対向する他側端まで通過させる工程を含むようにしても良い。
上記した多層板状部材の分離方法では、固定した多層板状部材の接着剤層中を、金属薄板を支持部材と共に移動させながら通過させるので、容易に処理することができる。
【0020】
(6)本態様の多層板状部材の分離方法では、前記載置台は、多層板状部材を前記金属薄板の方向へ移動させ易い表面を有し、前記支持部材を前記多層板状部材の方向に向けて移動させる工程では、前記支持部材を、前記載置台側に押圧しながら前記多層板状部材の方向に向けて摺動させ、前記金属薄板を、前記接着剤層の一端から他端まで通過させる工程では、前記支持部材を、前記金属薄板の前記多層板状部材に当接後も、前記押圧と前記方向への摺動を継続させることで、前記金属薄板を、前記接着剤層の一側端から対向する他側端まで通過させるようにしても良い。
上記した多層板状部材の分離方法では、載置台の表面を、例えば平坦にする、または剛球(ベアリング等)を敷き詰めること等で支持部材の載置台上の摩擦を低減させることができ、手動で処理ができ作業性を向上できる。
【0021】
(7)本態様の多層板状部材の分離方法では、前記金属薄板を、前記接着剤層の一端から他端まで通過させる工程は、前記多層板状部材における前記金属薄板に対向する側の辺の両端のうち、一方の端部の角に接触するように前記金属薄板を当接させ、その後、前記金属薄板を、前記多層板状部材における前記両角のうち他方の端部の角に接触するように所定角度だけ回動させながら移動させ、前記金属薄板の回動が所定角度に達したら、反対方向に回動させる処理を繰り返しながら移動させるようにしても良い。
上記した多層板状部材の分離方法では、金属薄板を左右に捻りながら移動させることで、金属薄板に接着剤層中を通過させる際の抵抗を低減させることができ、移動を容易にすることができる。
【0022】
(8)本態様の多層板状部材の分離方法では、前記載置台は、前記多層板状部材を加温可能な発熱源装置を有し、前記金属薄板を通過させる工程の前に、前記多層板状部材の耐熱温度以内で前記載置台を加温する工程を有するようにしても良い。
上記した多層板状部材の分離方法では、多層板状部材を加温するので金属薄板による多層板状部材の分離を容易にできる。
【0023】
(9)本態様の多層板状部材の分離方法では、前記金属薄板は、前記金属薄板を加温可能な発熱源装置を有し、前記金属薄板を通過させる工程の前に、前記多層板状部材の前記接着剤層を軟化させる温度まで前記金属薄板を加温する工程を有するようにしても良い。
上記した多層板状部材の分離方法では、金属薄板を加温するので金属薄板による多層板状部材の分離を容易にできる。
【0024】
従って、本態様では、前記多層板状部材、及び/または、前記金属薄板を、前記接着剤層を軟化させ、作業性を向上させることができる温度まで、加温可能な発熱源装置を有していても良い。なお、加温可能な温度は、前記多層板状部材が破損しない温度に調整する。
【0025】
(10)本態様の多層板状部材の分離方法では、前記金属薄板として、厚さ寸法が5〜500μmのフィラーゲージを用いるようにしても良い。好ましくは、接着剤層とほぼ同じ厚み、または、接着剤層以下の厚みの金属薄板を用いる。
上記した多層板状部材の分離方法では、金属薄板としてフィラーゲージを用いることで、板状部材の分離に適した高強度で均等厚の金属薄板を容易に且つ安価に入手できる。
【0026】
(11)上記した課題を解決するために本態様の多層板状部材の分離装置では、複数の板状部材を接着剤層で接着した多層板状部材を、該接着剤層で分離する装置であって、前記多層板状部材を載置する載置台と、前記多層板状部材の一側辺の幅よりも大きい長辺寸法を有する金属薄板と、前記金属薄板を、前記載置台上の前記多層板状部材における接着剤層に対応させて支持可能な支持部材と、前記載置台上に載置した前記多層板状部材を、前記金属薄板の方向に向けて移動させ、前記金属薄板に当接後も前記方向へ移動させることで、前記金属薄板を、前記接着剤層の一側端から対向する他側端まで通過させることが可能な水平移動装置と、前記多層板状部材を前記金属薄板に当接させて、前記金属薄板が前記接着剤層の一側端から対向する他側端まで通過して移動させるように前記水平移動装置を制御する制御装置を有する。
上記した多層板状部材の分離装置では、多層板状部材を移動させながらその接着剤層中を、固定した金属薄板が通過することで、薄い接着剤層でもその両側の板状部材を容易に且つ確実に分離させることができ、その際に各板状部材に損傷を与えることなく分離させることができる。
【0027】
(12)本態様の多層板状部材の分離装置では、さらに前記多層板状部材を所定角度だけ回動させることが可能な回動装置を有し、前記制御装置は、前記多層板状部材における前記金属薄板に対向する側の辺の両端のうち、一方の端部の角を前記金属薄板に当接させ、その後、前記多層板状部材を、前記両角のうち他方の端部の角が、進行方向に対して先端となるように所定角度だけ回動させながら移動させ、前記多層板状部材の回動が所定角度に達したら、反対方向に回動させる処理を繰り返しながら移動させるように前記水平移動装置と前記回動装置を制御するようにしても良い。
上記した多層板状部材の分離装置では、多層板状部材を左右に捻りながら移動させることで、金属薄板に接着剤層中を通過させる際の抵抗を低減させることができ、移動を容易にすることができる。
【0028】
(13)上記した課題を解決するために本態様の多層板状部材の分離装置では、複数の板状部材を接着剤層で接着した多層板状部材を、該接着剤層で分離する装置であって、前記多層板状部材を載置する載置台と、前記多層板状部材を載置台上で固定する固定部材と、前記多層板状部材の一側辺の幅よりも大きい長辺寸法を有する金属薄板と、前記金属薄板を、前記載置台上の前記多層板状部材における接着剤層に対応させて支持可能で、且つ、前記載置台上を前記多層板状部材の方向に移動可能な支持部材と、前記載置台上の前記金属薄板と支持部材を、前記多層板状部材の方向に向けて移動させ、前記金属薄板の前記多層板状部材への当接後も前記方向へ移動させることで、前記金属薄板を、前記接着剤層の一側端から対向する他側端まで通過させることが可能な水平移動装置と、前記金属薄板を前記多層板状部材に当接させて、前記金属薄板が前記接着剤層の一側端から対向する他側端まで通過して移動させるように前記水平移動装置を制御する制御装置を有する。
上記した多層板状部材の分離装置では、固定した多層板状部材の接着剤層中を、金属薄板を支持部材と共に移動させながら通過させることで、薄い接着剤層でもその両側の板状部材を容易に且つ確実に分離させることができ、その際に各板状部材に損傷を与えることなく分離させることができる。
【0029】
(14)本態様の多層板状部材の分離装置では、さらに前記金属薄板を所定角度だけ回動させることが可能な回動装置を有し、前記制御装置は、前記多層板状部材における前記金属薄板に対向する側の辺の両端のうち、一方の端部の角が前記金属薄板に当接するように前記金属薄板を移動及び回動させ、その後、前記多層板状部材の前記両角のうち他方の端部の角が前記金属薄板に当接するように前記金属薄板を所定角度だけ回動させながら移動させ、前記金属薄板の回動が所定角度に達したら、反対方向に回動させる処理を繰り返しながら移動させるように前記水平移動装置と前記回動装置を制御するようにしても良い。
上記した多層板状部材の分離装置では、金属薄板を左右に捻りながら移動させることで、金属薄板に接着剤層中を通過させる際の抵抗を低減させることができ、移動を容易にすることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、多層板状部材の接着剤層中を、金属薄板が通過することで、薄い接着剤層でもその両側の板状部材を容易に且つ確実に分離させることができる。また、その際に各板状部材に損傷を与えることなく分離させることができる分離方法及び分離装置を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】(a)は本発明の一実施形態の多層板状部材の構成を示す断面図であり、(b)は本発明の一実施形態の多層板状部材の分離装置の一部を示す断面図である。
【図2】(a)は本発明の第一実施形態の分離装置上に多層板状部材を載置した第1の状態を示す斜視図であり、(b)は本発明の一実施形態の分離装置上の多層板状部材を移動させた第2の状態を示す斜視図である。
【図3】(a)は本発明の第一実施形態の分離装置上の多層板状部材を移動させた第3の状態を示す斜視図であり、(b)は本発明の一実施形態の分離装置上の多層板状部材を移動させ終わり分離を行った第4の状態を示す斜視図である。
【図4】(a)は本発明の第二実施形態の分離装置上の多層板状部材を移動させた第2の状態の一例を示す上面図であり、(b)は(a)本発明の第2の状態におけるさらに次の状態を示す上面図である。
【図5】本発明の第三実施形態の多層板状部材の分離装置の概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の表示装置の実施の形態について、図面を用いながら詳細に説明する。
<第一実施形態>
図1(a)の多層板状部材100は、上から板状部材1、接着剤層2、板状部材3の積層構造であり、板状部材1が接着剤層2により板状部材3に接着されている。多層板状部材100の金属薄板7側の辺が100aであり、接着剤層2の金属薄板7側の辺が2aであり対向する反対側の辺が2bである。
【0033】
図1(b)には、載置台8に載った多層板状部材100と、その多層板状部材100の上に置かれている押圧摺動用治具200を示している。押圧摺動用治具200は、使用者が把持して力を伝えるハンドル4と、多層板状部材100の上面と接触して押圧する上面板5と、多層板状部材100における金属薄板7側と対向する一側面と接触して押圧する側面板6とを備えている。
【0034】
板状部材1は、例えば、液晶表示装置における最も外側の透明な保護板である。透明な保護板等の材料としては、例えば、樹脂材料、金属材料、セラミック材料等も含み、樹脂材料としては、例えば、アクリル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリエステル樹脂、シクロオレフィンポリマー又はシクロオレフィンコポリマー等を使用できる。また、板状部材1の用途としては、例えば、上記したような保護フィルム(板)、偏光フィルム(板)、反射フィルム(板)、プリズムフィルム(板)等である。
【0035】
また、板状部材1の寸法は、例えば、縦40mm×横30mm×厚み1mmである。板状部材1の寸法は、上記の寸法に限られるものではなく任意のサイズであってよい。また、板状部材1が保護板である場合、飛散防止フィルム付きガラス板、強化ガラス板、飛散防止フィルム付き強化ガラス板であってもよい。
【0036】
接着剤層2は、例えば、波長350nmの紫外線で硬化する光硬化性接着剤の層であり、厚みは0.1mmである。接着剤層2の厚みは上記の寸法に限られるものではなく、その他の任意の厚みであってもよい。本実施例の接着剤層2は、硬化度が50%まで紫外線により硬化させたものであるが、本実施形態の方法によれば、それ以上に硬化させたもの、例えば硬化度100%のものでも分離可能である。図1(a)、(b)では、金属薄板7側の辺を2aとし、それに対向する反対側の辺を2bとしている。
【0037】
また、本実施形態では、接着剤として光硬化性接着剤が用いられており、具体的には、ポリブタジエンアクリレート系光硬化性接着樹脂(協立化学産業株式会社製:ワールドロックNo.8963)が用いられている。ただし、光硬化性接着剤として、ポリブタジエンアクリレート系光硬化性接着樹脂に限定されるものではく、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリブタジエンメタアクリレート、ポリイソプレン(メタ)アクリレート、ポリイソブチレン(メタ)アクリレート系、さらには光カチオン硬化型を含む任意の光硬化性接着剤を用いることができる。また、接着剤として、光硬化性接着剤だけでなく、熱可塑性、熱硬化性接着剤を始めとするその他の任意の接着剤を用いることができる。熱硬化性接着剤としては、熱カチオン硬化型接着剤を例示することができる。
【0038】
板状部材3は、例えば、液晶表示装置における表示素子である液晶が形成された透明基板である。透明基板の材料としては、上記板状部材1と同様の材料を用いることができる。板状部材3の寸法は、例えば、縦50mm×横40mm×厚み1mmである。
【0039】
表示素子は、例えば、液晶表示素子(パネル)、バックライト素子(ユニット)、エレクトロ・ルミネッセンス(EL)素子(パネル) 、プラズマディスプレー素子(パネル)、電気泳動式表示素子(パネル)等である。液晶表示装置の場合は、通常、液晶表示素子、保護板、及びバックライトユニットを含み、液晶表示素子が、保護板(例えば板状部材1)とバックライトユニット(例えば板状部材2を含む)に挟まれて構成される。液晶表示素子と保護板とは、例えば、光硬化性接着剤によって接着され、接着剤層2の硬化度が50%になるまで紫外線を照射される。また、液晶表示素子とバックライトユニットも接着剤層2によって貼り合される。
【0040】
ハンドル4は、使用者が押圧摺動用治具200に下側へ押す力と、金属薄板7の側端部7a側へ押す力を伝えるためのものである。ハンドル4の形状は図1(b)に示されたような握り形状ではなくてもよく、単なる突起形状であっても良い。ハンドル4の材質は、押す力を伝えるために充分な強度を有すれば任意のものを使用することができ、例えば、金属製、プラスチック製、木製であってもよい。
【0041】
上面板5は、ハンドル4から伝わった力を下面側の多層板状部材100に伝えるためのものであり、また、分離作業中に前記多層板状部材100が反り返ることで破損することを防ぐ為に、多層板状部材100の上側に配置される。上面板5の形状は図1(b)に示されたような平面形状ではなくてもよく、多層板状部材100との間に充分な接触面積を有していれば、多層板状部材100を保持できる任意の形状であっても良い。上面板5の材質は、押す力を伝えるために充分な強度を有すれば任意のものを使用することができ、例えば、金属製、プラスチック製、木製であってもよい。また、上面板5の下面は、多層板状部材100の上面との間で、充分な摩擦力が得られる材質と形状を有していることが好ましい。
【0042】
側面板6も、上面板5と同様にハンドル4から伝わった力を下面の多層板状部材100に伝えるためのものであるが、多層板状部材100の側面で、金属薄板7側とは反対側に配置される。側面板6の形状は図1(b)に示されたような平面形状ではなくてもよく、多層板状部材100との間に充分な接触面積を有していれば、多層板状部材100を保持できる任意の形状であっても良い。本実施形態では、側面板6は、上面板5における金属薄板7側とは反対側と接続されて一体化されている。また、側面板6の材質も、上面板5と同様に押す力を伝えるために充分な強度を有すれば任意のものを使用することができる。この側面板6により、使用者がハンドル4を上から押さえながら金属薄板7側へ押すことで、側面板6は多層板状部材100を金属薄板7側に押圧することができる。
【0043】
金属薄板7は、図1(b)に示したように接着剤層2の幅内に収まるようにその高さに水平に、側端部7aが接着剤層2の一側端2aと対向するように固定される。金属薄板7の側端部7aは、押圧摺動用治具200が金属薄板7の方に押圧されることで、最終的に接着剤層2の他側端2bまで、接着剤層2の内部を切り裂きながら通過する。金属薄板7には、金属薄板7自体を加温可能な発熱源装置を有してもよい。
【0044】
金属薄板7は、金属薄板であり、例えば、厚さ寸法が5〜500μmのフィラーゲージである。材質は、通常、SK焼入鋼(ゲージ鋼、炭素工具鋼鋼材)、又はステンレス鋼(SUS)である。フィラーゲージは、シムテープ、シクネステープとも称されている。フィラーゲージは、主に自動車エンジン・その他内燃機の組立並びに調整用として使用される。フィラーゲージは、長さ寸法1m等の単位で販売されており、所要寸法に切って使用できるため、単一のすきまの連続測定使用に便利である。テープ幅は12.7mmであり、0.005mmから0.05mmとびに0.045mmまで、0.05から0.01とびに0.15まで等のものが市販されている。また、厚さ0.1mmの場合の許容差は±0.006mm程度であり、非常に平坦度が高い。また、金属薄板7は、多層板状部材100の一側辺100aの幅よりも大きい長辺寸法を有しており、後述する支持部材9、10を用いて、多層板状部材100における接着剤層2の幅内に収まる高さに配置される。このように金属薄板7としてフィラーゲージを用いることで、板状部材1、3の分離に適した高強度で均等厚の金属薄板7を容易に且つ安価に入手することができる。
【0045】
載置台8は、多層板状部材100を載置する台であり、特に、多層板状部材100を摺動させる場合には、載置台8の上面の平坦度を高くする、または剛球(ベアリング等)を敷き詰める等を施し、摩擦を軽減させることが好ましい。多層板状部材100の載置台8上の摩擦を低減させることで、手動で処理ができ作業性を向上できる。載置台8の寸法は、多層板状部材100を摺動させて、金属薄板7の固定された位置を通過させるに充分な面積であることが好ましい。載置台8の材質は、多層板状部材100が押される力を受け止めるに充分な強度を有すれば任意のものを使用することができ、例えば、金属製、プラスチック製、木製であってもよい。
【0046】
また、載置台8には、多層板状部材100を加温可能な発熱源装置を有するようにしてもよい。その場合、例えば、金属薄板7を通過させる前に、多層板状部材100の耐熱温度以内で載置台8を介して接着剤層2を加温する。この場合、多層板状部材100を加温することができるので、金属薄板7による多層板状部材100の分離を容易にすることができる。
【0047】
図2〜図3等に示された支持部材9、10は、金属薄板7を固定するための部材であり、例えば、載置台8の側面に固定された横向きの万力/クランプ/バイス等であってもよい。支持部材9、10には、金属薄板7を加温可能な発熱源装置を有してもよい。金属薄板7自体を加温可能な発熱源装置を設けることが最も好ましいが、金属薄板7にヒーター等の発熱源装置を設けるスペースの余裕がない場合等には、支持部材9、10に発熱源装置を設けて、金属薄板7を間接的に加温してもよい。その場合、例えば、金属薄板7を通過させる前に、多層板状部材100の接着剤層2を軟化させる温度まで金属薄板7を加温する。このように金属薄板7を加温することで、金属薄板7による多層板状部材100の分離を容易にすることができる。
【0048】
次に、本実施形態の動作について説明する。まず、図2(a)に示したように、金属薄板7が載置台8上に配置されるように支持部材9、10に固定する。その際に、金属薄板7は、載置台8上の多層板状部材100における接着剤層2の高さに対応させて、その接着剤層2の幅の範囲内に収まるように対応支持部材9、10に取り付けられる。その後、多層板状部材100が、載置台8上に載せられる。
【0049】
次に、図2(b)に示したように、載置台8上に載置した多層板状部材100を、金属薄板7の方向に向けて移動させる。より具体的には、多層板状部材100を、載置台8側に押圧しながら金属薄板7の方向に向けて摺動させる。その場合、多層板状部材100の金属薄板7側の辺が100aが先頭になり、多層板状部材100の反対側の辺が最後尾となる。多層板状部材100の移動が進行すると、多層板状部材100の金属薄板7側の辺100aと、金属薄板7の側端部7aが接触する。さらに多層板状部材100を進行させる、つまり、多層板状部材100を、金属薄板7に当接後も、押圧しながら同方向への摺動を継続させると、金属薄板7の側端部7aが、多層板状部材100の金属薄板7側の辺100aのうちの、接着剤層2の金属薄板7側の一側端2aの中に挿入され、板状部材1と板状部材3を徐々に分離させる。
【0050】
このようにして、図3(a)に示したように、多層板状部材100をさらに進行させることで、金属薄板7を、多層板状部材100の接着剤層2の一側端2aから対向する他側端2bまで通過させる。なお、図3(a)では押圧摺動用治具200が示されていないので進行距離が誇張されているが、実際には、押圧摺動用治具200における側面板6に金属薄板7の側端部7aが接触するまで、多層板状部材100が進行される。
【0051】
図3(b)では、図3(a)の状態で、板状部材1と板状部材3とは分離されているので、多層板状部材100の上側の板状部材1を持ち上げることで、残りの板状部材3と分離させることができる。板状部材1には接着剤層2の上部分2cが付着しており、板状部材3には、接着剤層2の下部分2dが付着する。
【0052】
このように本実施形態の多層板状部材100の分離方法では、金属薄板7を固定し、固定した金属薄板7が、移動する多層板状部材100の接着剤層2中を通過することで、薄い接着剤層2であっても、その両側の板状部材1と3を容易に且つ確実に分離させることができる。また、その際に、金属薄板7が薄いことから、各板状部材1と3に与える応力が少ないので、板状部材1と3に損傷を与えることなく分離させることができる。このように本実施形態では、簡単な治具200で手動で処理することができる。従って、治具コストを低減させることができる。
【0053】
<第二実施形態>
次に、第二実施形態について、図4を参照して説明する。なお、第一実施形態と同様な部材及び動作については、重複する記載を省略する。
本実施形態の多層板状部材100の分離方法では、図4(a)に示したように、金属薄板7を、接着剤層2の一端から他端まで通過させる際に、まず、多層板状部材100における金属薄板7に対向する側の辺100aの両端の角1aと1bのうち、一方の端部の角1aを金属薄板7の側端部7aに当接させ、そのまま多層板状部材100を、金属薄板7の方向に向けて移動させる。
【0054】
その移動の際に、図4(a)に示したように、両角1aと1bのうち他方の端部の角1bが、進行方向に対して先端となるように、水平面上の接着材層内で多層板状部材100を、前記金属薄板の進行方向の先頭側の辺が、進行方向に直角の角度から左右何れかに、例えば略45度以下の所定角度の範囲内で交互に逆方向に傾くように、回動させながら移動させる。従って、この場合の所定角度は、進行方向に対して、多層板状部材100の辺100aにおける一方の角1aが先頭の状態から、多層板状部材100の辺100aにおける他方の角1bが先頭の状態になるように、多層板状部材100を接着材層内で回動させる角度である。そして、多層板状部材100の回動が所定角度に達したら、反対方向に回動させる処理を行う。本実施形態では、この処理を繰り返しながら多層板状部材100を移動させる。
【0055】
このように多層板状部材100を左右に捻りながら移動させることで、金属薄板7に接着剤層2中を通過させる際に、金属薄板7の側端部7aと接着剤層2の接する長さが減少する。従って、接着剤層2中で金属薄板7を通過させる際の抵抗を低減させることができ、移動を容易にすることができる。
【0056】
次に、第二実施形態の変形として、逆に、多層板状部材100を固定し、金属薄板7を左右に捻りながら移動させる説明する。
その場合、まず、支持部材9、10が、固定されないで、平坦な表面を有する載置台8の上面に沿って水平に移動できるものとなる。そして、支持部材9、10には、金属薄板7が、多層板状部材100の接着剤層2の幅内に収まる高さ位置となるように移動可能な支持部材9、10に取り付けられる。
【0057】
そして、多層板状部材100が載置台8上に固定され、支持部材9、10を多層板状部材100の方向に向けて移動させる。その際に、多層板状部材100における金属薄板7に対向する側の辺100aの両端のうち、一方の端部の角1aに接触するように金属薄板7の側端部7aを当接させる。また、多層板状部材100の辺100aと金属薄板7の側端部7aが平行ではなく、多層板状部材100の辺100aにおける一方の角1aに金属薄板7の側端部7aがピンポイントで接触するように傾けて移動させる。進行するに従い、多層板状部材100の辺100aに金属薄板7の側端部7aに接触する。
【0058】
さらに、金属薄板7が多層板状部材100に当接した後も、支持部材9、10をその方向へ移動させる。その後、金属薄板7を、多層板状部材100における両角1a、1bのうち他方の端部の角1bに接触するように、接着材層内で所定角度だけ回動させながら移動させる。さらに、金属薄板7の回動が所定角度に達したら、反対方向に回動させる処理を繰り返しながら移動させる。
【0059】
そして、金属薄板7が多層板状部材100に当接した後も、その方向への支持部材9、10の摺動を押圧しながら継続させることで、最終的に、金属薄板7を、接着剤層2の一側端2aから対向する他側端2bまで通過させる。その金属薄板7を、接着剤層2の一端から他端まで通過させる際には、まず、多層板状部材100の角1aを金属薄板7の側端部7aに当接させ、そのまま多層板状部材100を、金属薄板7の方向に向けて移動させる。
【0060】
移動させる際には、支持部材9、10を、載置台8側に押圧しながら多層板状部材100の方向に向けて摺動させる。その移動の際に、両角1aと1bのうち他方の端部の角1bが、進行方向に対して先端となるように、接着材層内で多層板状部材100を所定角度だけ回動させながら移動させる。従って、この場合の所定角度は、進行方向に対して、多層板状部材100の辺100aにおける一方の角1aが先頭の状態から、多層板状部材100の辺100aにおける他方の角1bが先頭の状態になるように、多層板状部材100を接着材層内で回動させる角度である。そして、多層板状部材100の回動が所定角度に達したら、反対方向に回動させる処理を行う。本実施形態では、この処理を繰り返しながら多層板状部材100を移動させる。
【0061】
このように固定した多層板状部材100の接着剤層2中を、金属薄板7を、支持部材9、10と共に移動させながら通過させることで、上記した第二実施形態の場合と同様に処理を容易にすることができ、金属薄板7を左右に捻りながら移動させることで、金属薄板7に接着剤層2中を通過させる際の抵抗を低減させることができ、移動を容易にすることができる。
【0062】
<第三実施形態>
次に、第三実施形態について、図5を参照して説明する。なお、第一実施形態及び/又は第二実施形態と同様な部材及び動作については、重複する記載を省略する。
本実施形態では、例えば、多層板状部材100を載置する載置台8には、回転軸32を移動させるためのセンタースリット20が設けられている。センタースリット20から載置台8の上に突出する回転軸32の先には、不図示の回動載置台が設けられており、回動載置台の上に多層板状部材100が載置される。
【0063】
金属薄板7は、第一実施形態と同様に、支持部材9、10に固定される。回転軸32の下側には、回動させるための回動装置30が設けられ、回動載置台を任意の角度に制御することを可能にしており、従って、多層板状部材100を接着材層内で所定角度だけ回動させることを可能にしている。なお、回動装置30は、例えば、ステッピングモータ等であってもよい。
【0064】
また、載置台8上に載置した多層板状部材100を、金属薄板7の方向に向けて回動装置30と共に移動させることができる水平駆動装置40が設けられている。水平駆動装置40は、水平軌道42上を、金属薄板7に当接後も多層板状部材100をその方向へ移動させることで、金属薄板7を、接着剤層2の一側端2aから対向する他側端2bまで通過させることが可能である。
【0065】
さらに、多層板状部材100を金属薄板7に当接させて、金属薄板7が接着剤層2の一側端2aから対向する他側端2bまで通過して移動させるように水平移動装置40を制御し、その間に、回動装置30により回動載置台を任意の角度に制御する制御装置60を備える。
【0066】
制御装置60は、回動装置30及び水平駆動装置40と、電源/制御線62により接続され、多層板状部材100における金属薄板7に対向する側の辺100aの両端1a、1bのうち、一方の端部の角1aを金属薄板7に当接させ、その後、多層板状部材100を、両角1a、1bのうち他方の端部の角1bが、進行方向に対して先端となるように、接着材層内で所定角度だけ回動させながら移動させ、多層板状部材100の回動が所定角度に達したら、反対方向に回動させる処理を繰り返しながら移動させるように水平移動装置40と回動装置30を制御する。また、制御装置60は、加温可能な発熱源装置を有する場合には、その発熱源装置とも電源/制御線62により接続され、温度制御も行う。
【0067】
このように多層板状部材100を移動させながらその接着剤層2中を、固定した金属薄板7が通過することで、薄い接着剤層2でもその両側の板状部材1、3を容易に且つ確実に分離させることができ、その際に各板状部材1、3に損傷を与えることなく分離させることができる。また、多層板状部材100を左右に捻りながら移動させることで、金属薄板7に接着剤層2中を通過させる際の抵抗を低減させることができ、移動を容易にすることができる。
【0068】
<第四実施形態>
次に、第四実施形態について説明する。なお、第一実施形態〜第三実施形態と同様な部材及び動作については、重複する記載を省略する。
本実施形態では、金属薄板7の両端を固定する支持部材9、10は、例えば、金属薄板7の上空で量部材を連結する連結バーで連結され、その連結バーの中心部に回転軸32が接続され、回転軸32の先には回動させるための回動装置30が設けられる。回動装置30は、金属薄板7を、接着材層内で所定角度だけ回動させることが可能である。
【0069】
また、支持部材9、10の下側は、例えば、水平軌道42に接続されており、水平駆動装置40により水平方向に移動させることができる。載置台8の上には、多層板状部材100が固定される。
【0070】
多層板状部材100は、クランパ等の固定部材により載置台8上に固定される。支持部材9、10は、金属薄板7を、載置台8上の多層板状部材100における接着剤層2の幅内に収まる高さ位置となるように支持可能であり、且つ、載置台8上を多層板状部材100の方向に移動可能である。
【0071】
水平移動装置40は、載置台8上の金属薄板7と支持部材9、10とを、多層板状部材100の方向に向けて移動させ、金属薄板7の多層板状部材100への当接後もその方向へ移動させることで、金属薄板7を、接着剤層2の一側端2aから対向する他側端2bまで通過させることが可能である。
【0072】
制御装置60は、金属薄板7を多層板状部材100に当接させて、金属薄板7が接着剤層2の一側端2aから対向する他側端2bまで通過して移動させるように水平移動装置40を制御することができる。
【0073】
制御装置60は、回動装置30及び水平駆動装置40と、電源/制御線62により接続され、多層板状部材100における金属薄板7に対向する側の辺100aの両端1a、1bのうち、一方の端部の角1aが金属薄板7に当接するように金属薄板7を移動及び回動させる。その後、制御装置60は、多層板状部材100の両角1a、1bのうち他方の端部の角1bが金属薄板7に当接するように金属薄板7を接着材層内で所定角度だけ回動させながら移動させる。さらに制御装置60は、金属薄板7の回動が所定角度に達したら、反対方向に回動させる処理を繰り返しながら移動させるように水平移動装置40と回動装置30を制御する。また、制御装置60は、加温可能な発熱源装置を有する場合には、その発熱源装置とも電源/制御線62により接続され、温度制御も行う。
【0074】
このように、固定した多層板状部材100の接着剤層2中を、金属薄板7を支持部材9、10と共に移動させながら通過させることで、薄い接着剤層2でもその両側の板状部材1、3を容易に且つ確実に分離させることができ、その際に各板状部材1、3に損傷を与えることなく分離させることができる。また、属薄板7を左右に捻りながら移動させることで、金属薄板7に接着剤層2中を通過させる際の抵抗を低減させることができ、移動を容易にすることができる。
【符号の説明】
【0075】
1 板状部材、
1a 角、
1b 角、
2 接着剤層、
2a、2b 辺、
2c 上部分、
2d 下部分、
3 板状部材、
4 ハンドル、
5 上面板、
6 側面板、
7 金属薄板、
7a 側端部、
8 載置台、
9、10 支持部材、
20 センタースリット、
30 回動装置、
40 水平移動装置、
42 水平軌道、
60 制御装置、
62 電源/制御線、
100 多層板状部材、
100a 辺、
200 押圧摺動用治具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の板状部材を接着剤層で接着した多層板状部材を、該接着剤層で分離する方法であって、
前記多層板状部材の一側辺の幅よりも大きい長辺寸法を有し、前記多層板状部材における接着剤層に、金属薄板を配置する工程と、
前記金属薄板を、前記多層板状部材の前記接着剤層の一側端から対向する他側端まで通過させる工程と、
前記多層板状部材の上側の板状部材を残りの部材と分離させる工程
を有することを特徴とする接着剤層を有する多層板状部材の分離方法。
【請求項2】
前記金属薄板を、前記接着剤層の一端から他端まで通過させる工程では、
前記多層板状部材における前記金属薄板に対向する側の辺の両端のうち、一方の端部の角を前記金属薄板に当接させ、
その後、前記多層板状部材を、前記両角のうち他方の端部の角が、進行方向に対して先端となるように回動させながら移動させ、
前記多層板状部材の回動が所定角度に達したら、反対方向に回動させる処理を繰り返しながら移動させる
ことを特徴とする請求項1に記載の接着剤層を有する多層板状部材の分離方法。
【請求項3】
前記多層板状部材、及び/または、前記金属薄板を加温可能な発熱源装置を有し、
前記多層板状部材、及び/または、前記金属薄板を加温しながら前記金属薄板を、前記多層板状部材の前記接着剤層の一側端から対向する他側端まで通過させる工程と、
前記金属薄板を通過させる工程の前に、前記多層板状部材の前記接着剤層を軟化させる温度まで前記金属薄板を加温する工程
を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の接着剤層を有する多層板状部材の分離方法。
【請求項4】
前記金属薄板として、厚さ寸法が5〜500μmの薄板を用いる
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の接着剤層を有する多層板状部材の分離方法。
【請求項5】
複数の板状部材を接着剤層で接着した多層板状部材を、該接着剤層で分離する装置であって、
前記多層板状部材を載置する載置台と、
前記多層板状部材の一側辺の幅よりも大きい長辺寸法を有する金属薄板と、
前記金属薄板を、前記載置台上の前記多層板状部材における接着剤層に対応させて支持可能な支持部材と、
前記載置台上に載置した前記多層板状部材を、前記金属薄板の方向に向けて移動させ、前記金属薄板に当接後も前記方向へ移動させるか、又は、前記載置台上の前記金属薄板と支持部材を、前記多層板状部材の方向に向けて移動させ、前記金属薄板の前記多層板状部材への当接後も前記方向へ移動させることで、前記金属薄板を、前記接着剤層の一側端から対向する他側端まで通過させることが可能な水平移動装置と、
前記多層板状部材と前記金属薄板の何れか一方を他方に当接させて、前記金属薄板が前記接着剤層の一側端から対向する他側端まで通過して移動させるように前記水平移動装置を制御する制御装置
を有することを特徴とする接着剤層を有する多層板状部材の分離装置。
【請求項6】
さらに前記多層板状部材又は前記金属薄板の何れか一方を、所定角度だけ回動させることが可能な回動装置を有し、
前記制御装置は、前記多層板状部材における前記金属薄板に対向する側の辺の両端のうち、一方の端部の角が前記金属薄板に当接するように前記多層板状部材又は前記金属薄板の何れか一方を移動及び回動させ、その後、前記多層板状部材の前記両角のうち他方の端部の角が前記金属薄板に当接するように前記多層板状部材又は前記金属薄板の何れか一方を所定角度だけ回動させながら移動させ、前記多層板状部材又は前記金属薄板の回動が所定角度に達したら、反対方向に回動させる処理を繰り返しながら移動させるように前記水平移動装置と前記回動装置を制御する
ことを特徴とする請求項5に記載の接着剤層を有する多層板状部材の分離装置。
【請求項7】
前記多層板状部材、及び/または、前記金属薄板を、前記多層板状部材の前記接着剤層を軟化させる温度まで加温可能な発熱源装置を有する
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の接着剤層を有する多層板状部材の分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−218474(P2011−218474A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−88941(P2010−88941)
【出願日】平成22年4月7日(2010.4.7)
【出願人】(000162434)協立化学産業株式会社 (73)
【Fターム(参考)】