説明

接着剤組成物及びそれを用いた光ディスク

ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート(A)、環状エーテル構造を有するジ(メタ)アクリレート(B)及び光重合開始剤(C)を含有する接着剤組成物(紫外線硬化型樹脂組成物)及び該組成物の硬化物により接着された貼り合わせ光ディスクを提供する。該組成物を用いて銀または銀合金等からなる半透明反射膜または全反射膜を有する光ディスク基板を接着し、貼り合わせ光ディスクを得ることにより従来の金半透明反射膜を使用した光ディスクと同等の高い耐久性と、反射膜と接着剤硬化物、及びポリカーボネート基板と接着剤硬化物との高い密着強度が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク基板の貼り合わせに適した紫外線硬化型樹脂組成物からなる接着剤組成物に関し、特にDVDに使用される2枚の光ディスク基板を接着するのに有用である。また、本発明は、該接着剤組成物を用いて、貼り合わされた光ディスクにも関する。
【背景技術】
【0002】
現在、実用化されているDVDは、ディスク製造時から映画等の情報が記録済みであるDVD−ROM、製造時には情報が記録されておらず、色素記録層又は無機記録層に消費者自らが情報を記録するブランクDVDに大きく分けられる。DVD−ROMは情報が基板に記録されており、次のような種類がある。片面読込みで記録層が一層の記録容量およそ5ギガバイトのDVD−5、片面読込みで記録層が二層の記録容量およそ9ギガバイトのDVD−9、両面読込みで記録層が二層の記録容量およそ10ギガバイトのDVD−10、及び両面読込みで記録層が四層の記録容量およそ18ギガバイトのDVD−18等がある。現在、約2時間半の映画を収録できる記録容量を持つことからDVD−9が現在の主流となっている。DVD−9は、片面読込み二層式であるので全反射膜と半透明反射膜を用いるが、全反射膜としてアルミニウム合金を用い、半透明反射膜として金を用いたものが主流である。半透明反射膜は全反射膜と異なりレーザーを透過させなければならないため薄膜化されなければならないが、薄膜化が容易で比較的安定な物質である金が従来用いられてきた。
【0003】
しかしながら金は高価な材料であるため、半透明反射膜用材料は、金からシリコンやシリコン化合物、更に銀または銀合金へと移行してきている。また、現在、記録容量を更に高めるために青色レーザー使用の検討が進んでいる。従来の赤色レーザーを使用する光ディスクでは半透明反射膜用材料としては金、シリコン、シリコン化合物、銀または銀合金のいずれであってもレーザーの透過性に問題はなかったのに対し、青色レーザーではその波長が400nm付近であり、該波長の光の透過性のよい半透明反射膜用材料としては銀または銀合金に限られる。しかしこれらのものは金よりも酸化を受けやすく不安定であるという欠点がある。銀または銀合金の薄膜を半透明反射膜に使用した光ディスクを、従来の貼り合わせ光ディスク用樹脂組成物で接着した場合には、従来の金を半透明反射膜材料とした貼り合わせ光ディスクと同等の耐久性が得られない。そのため耐久性において満足できる接着用樹脂組成物の提供が求められている。
【0004】
一方、ブランクDVDの分野には、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RW、DVD−RAM等多くのフォーマットが存在している。現在主流のDVD−R、DVD−RAM、DVD+R、DVD+RWは片面一層タイプであり、ポリカーボネート基板と、記録層及び反射膜層を備えた基板とを貼り合わせたものが用いられる。反射膜層の材料としては、反射率が高い銀または銀合金をある程度の厚さ(例えば10〜200nm)にして使用されている。また、新しいフォーマットにはDVD−9と同様に半透明反射膜と全反射膜層の2層をもつタイプがあり、反射膜層の材料としては、反射率が高い銀または銀合金が使用されている。しかし、銀または銀合金は酸化されやすいため保護コートを設けなければならない。保護コートを設けることにより高い耐久性が得られるが、反面、光ディスクの生産効率の低下、生産コストの上昇、歩留まりの低下等を招くことが問題となっている。保護コートを設けずに同等の耐久性が得られる接着用樹脂組成物の開発が望まれている。
【0005】
特許文献1には、脂環式構造を有する(メタ)アクリレートを主成分とする光ディスク用紫外線硬化型接着剤組成物が記載されており、銀や銀合金の半透明反射膜を使用した貼り合わせ光ディスクでの酸化などの化学変化に対する耐久性が改善されることが示されている。しかしながら、脂環式構造を有する(メタ)アクリレートを主成分とする光ディスク用紫外線硬化型接着剤では、該半透明反射膜及び/または全反射膜と接着剤硬化物との密着性が弱いという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開2001−167478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、銀または銀合金等からなる全反射膜または半透明反射膜を有する貼り合わせ光ディスクにおいて、従来の金半透明反射膜を使用した貼り合わせ光ディスクと同等の高い耐久性を付与でき、更に反射膜及びポリカーボネート基板の両者と接着剤層(接着剤硬化物)との密着性に優れた接着用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、銀または銀合金等からなる全反射膜または半透明反射膜を有する貼り合わせ光ディスクにおいても、耐久性と密着性に優れる接着用組成物を見出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明は、
(1)ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート(A)、環状エーテル構造を有するジ(メタ)アクリレート化合物(B)及び光重合開始剤(C)を含有する接着剤組成物;
(2)更に、リン酸(メタ)アクリレート化合物(D)を含有する上記(1)記載の接着剤組成物。;
【0010】
(3)更に、ウレタン(メタ)アクリレート(E)を含有する上記(1)記載の接着剤組成物;
(4)ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート(A)、環状エーテル構造を有するジ(メタ)アクリレート化合物(B)、光重合開始剤(C)、リン酸(メタ)アクリレート化合物(D)及びウレタン(メタ)アクリレート(E)を含有する上記(1)記載の接着剤組成物;
【0011】
(5)接着剤組成物全体に対して、重量%で
ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート(A):1〜70%
環状エーテル構造を有するジ(メタ)アクリレート化合物(B):5〜75%
光重合開始剤(C):0.05〜20%及び
その他成分:残部
を含有する上記(1)記載の接着剤組成物;
(6)環状エーテル構造を有するジ(メタ)アクリレート化合物(B)が、ヒドロキシ置換を有してもよい炭素数4〜10の3級アルデヒド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレートである上記(1)記載の接着剤組成物;
(7)環状エーテル構造を有するジ(メタ)アクリレート化合物(B)が、ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレートである上記(6)記載の接着剤組成物。
(8)2枚の光ディスク基板が上記(1)〜(7)記載のいずれか1項に記載の接着剤組成物の硬化物により接着されている貼り合わせ光ディスク;
(9)光ディスク基板が、少なくとも、そのいずれか一方が銀または銀合金の全反射膜または半透明反射膜を有する光ディスク基板である上記(8)記載の記載の貼り合わせ光ディスク;
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明組成物(紫外線硬化型樹脂組成物)を用いて光ディスク基板を接着することにより、銀または銀合金の半透明反射膜または全反射膜を使用した貼り合わせ光ディスクにおいて、金を半透明反射膜とした従来の貼り合わせ光ディスクと同等の高い耐久性を得ることができ、更に半透明反射膜または全反射膜と接着剤硬化物との高い密着強度を得ることができる。また、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RW、DVD−RAM等のブランクDVDのうち、反射膜に銀または銀合金を使用したブランクDVDにおいて、保護コート使用時と同等の高い耐久性を得ることができ、更に金属反射膜と接着剤硬化物、及びポリカーボネート基板と接着剤硬化物との高い密着強度を得ることができる。高い密着強度によりDVDを繰り返し使用しても貼り合わせた光ディスクがはがれない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の接着剤組成物は、光ディスク貼り合わせ用に適するもので、通常、光、特に紫外線で硬化する紫外線硬化型樹脂組成物である。従って以下において本発明の接着剤組成物を本発明の紫外線硬化型樹脂組成物として記載する場合もある。該組成物は少なくともビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート(A)、環状エーテル構造を有するジ(メタ)アクリレート(B)及び光重合開始剤(C)の三者を含有することを特徴とする。なお、本発明において、例えばビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート又は(メタ)アクリル酸等で使用される「(メタ)アクリレート」「(メタ)アクリル酸」等は、何れもメタクリレート及びアクリレート若しくはメタクリル酸及びアクリル酸のいずれか一方若しくは両者を意味する。
【0014】
本発明においてビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート(A)は、硬化速度の向上や硬化物の硬度を向上させる機能がある。
本発明の組成物に含有されるビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート(A)としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂等と(メタ)アクリル酸との反応、例えば後記のような条件の反応によって得られるエポキシ(メタ)アクリレートが挙げられる。該ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂であれば何れも使用しうるが、好ましいものとしては例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、ジャパンエポキシレジン社製エピコート802、1001、1004(商品名)等)またはビスフェノールF型エポキシ樹脂(例えば、ジャパンエポキシレジン社製エピコート4001P、4002P、4003P(商品名)等)等が挙げられる。ビスフェノールA型エポキシ樹脂がより好ましい。なお、(A)成分におけるビスフェノール型エポキシ樹脂は、その変性体若しくは水添体等は含まず、該変性体若しくは水添体等は後記する(B−1)成分に含まれる。
好ましいビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート(A)は次のようにして得ることができる。
ビスフェノール型エポキシ樹脂等と(メタ)アクリル酸とを、ビスフェノール型エポキシ樹脂(グリシジルエーテル型エポキシ化合物)のエポキシ基1当量に対して、(メタ)アクリル酸を0.9〜1.5モル、より好ましくは0.95〜1.1モルの比率で反応させる。反応温度は80〜120℃が好ましく、反応時間は10〜35時間程度である。反応を促進させるために、例えば、トリフェニルフォスフィン、トリエタノールアミン、テトラエチルアンモニウムクロライド等の触媒を使用するのが好ましい。また、反応中、重合を防止するために重合禁止剤(例えば、パラメトキシフェノール、メチルハイドロキノン等)を使用することもできる。
ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート(A)は1種または2種以上を任意の割合で混合使用することができる。ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート(A)の含有量は通常本発明組成物全体に対して、1〜70重量%、好ましくは5〜40重量%、より好ましくは10〜40重量%である。ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート(A)の分子量としては500〜10000が好ましい。
【0015】
本発明の組成物に含有される環状エーテル構造を有するジ(メタ)アクリレート(B)としては、例えば1〜複数個、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜2の酸素原子を含有する脂環式部分構造をもつジ(メタ)アクリレートであり、好ましくは3〜8員環、より好ましくは5〜6員環の環状エーテル構造を含むジ(メタ)アクリレートである。該ジ(メタ)アクリレートは環状エーテル部位の効果により、銀、銀合金またはアルミニウム等の金属反射膜と接着剤硬化物、及びポリカーボネート基板と接着剤硬化物との密着性を向上させる機能がある。
【0016】
環状エーテル構造を有するジ(メタ)アクリレート(B)としては、ヒドロキシ置換(C4〜C10)3級アルデヒド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート若しくはその変性物、具体的には、ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート(例えば、日本化薬(株)社製KAYARAD R−604)若しくはその変性物(例えば、カプロラクトン変性ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等)、またはスピログリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。好ましくはヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレートである。
【0017】
これら(B)成分は、1種または2種以上を任意の割合で混合使用することができる。(B)成分の含有量は本発明組成物全体に対して、通常5〜75重量%(以下特に断りのない限り%は重量%を表す)、好ましくは10〜60%若しくは70%、より好ましくは35〜65%である。
【0018】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物には、前記(B)成分、後記する(D)成分及び(E)成分以外の(メタ)アクリレートモノマー(B−1)(場合によりその他アクリレートと略称する)を加えることができる。(B−1)成分としては例えばヒドロキシ基又はアルコキシ基等の置換基を有してもよい炭素数1〜15のアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル等の単官能若しくは多官能モノマーが挙げられる。具体的には、単官能モノマーとしては例えば、トリシクロデカン(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルフォリン(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、アテアリル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0019】
また、(B−1)成分として、分子中に2個以上の(メタ)アクリレート基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては例えば、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,3−ジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート(例えば、日本化薬(株)社製、KAYARAD R−684、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート等)、水添ビスフェノールAポリエトキシジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAポリプロポキシジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFポリエトキシジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4ジメタノールのポリエトキシジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサン−1,4−ジメタノールのε−カプロラクトン付加物のジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテルのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリス〔(メタ)アクリロキシエチル〕イソシアヌレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
これら(メタ)アクリレートモノマー(B−1)は1種または2種以上を任意の割合で混合使用することができる。該(メタ)アクリレートモノマー(B−1)の含有量は本発明組成物全体に対して、通常0〜85%、好ましくは0〜60%、より好ましくは0〜40%である。場合により10〜60%が好ましい。
【0021】
本発明の組成物に含有される光重合開始剤(C)としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−〔4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル〕−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オンまたは2−メチル−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−1−プロパノンが好ましく、1種または2種以上を任意の割合で混合使用することができる。光重合開始剤(C)の含有量は本発明組成物全体に対して、通常0.5〜20%、好ましくは1〜10%である。
【0022】
また、本発明では必要に応じて、その他の光重合開始剤を併用してもよい。好ましいものとしては次のものを挙げることができる。例えば、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフォスフィンオキシドまたはビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、1種または2種以上を任意の割合で混合使用することができる。その含有量は本発明組成物全体に対して、通常0〜5%、場合により0.005〜5%、好ましくは0〜5%、場合により0.01〜3%である。
【0023】
更に、光重合開始助剤となりうるアミン類等を上記の光重合開始剤と併用することもできる。使用しうるアミン類等としては、安息香酸2−ジメチルアミノエチルエステル、ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルまたはp−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル等が挙げられる。該アミン類等の光重合開始助剤を使用する場合、その含有量は本発明組成物全体に対して、通常0〜5%、場合により0.005〜5%、好ましくは0〜3%、場合により0.01〜3%である。
【0024】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物には必要によりリン酸(メタ)アクリレート化合物(D)を加えることができる。リン酸(メタ)アクリレート化合物(D)は、アルミニウム、銀または銀合金と接着剤硬化物との接着性を向上させるが、金属膜を腐食させる恐れがあるのでその使用量には注意が必要である。
【0025】
本発明の組成物に含有し得るリン酸(メタ)アクリレート化合物(D)としては、リン酸エステル骨格を有する(メタ)アクリレートであれば、モノエステル、ジエステルあるいはトリエステル等特に限定されない。例えば、好ましいものとしては、C1〜C3アルキレンオキシド変性C6〜C10アリールオキシ若しくはC1〜C10アルコキシリン酸モノ、ジ若しくはトリ(メタ)アクリレート、例えばエチレンオキシド変性フェノキシリン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ブトキシリン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性オクチルオキシリン酸(メタ)アクリレート、C1〜C3アルキレンオキシド変性リン酸モノ、ジ又はトリ(メタ)アクリレート、例えばエチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸トリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのなかではC1〜C3アルキレンオキシド変性リン酸モノ、ジ又はトリ(メタ)アクリレートが好ましい。C1〜C3アルキレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレートはより好ましい。リン酸(メタ)アクリレート(D)は1種または2種以上を任意の割合で混合使用することができる。リン酸(メタ)アクリレート化合物(D)の含有量は本発明組成物全体に対して、0〜5%、場合により0.005〜5%、好ましくは0〜3%、場合により0.05〜3%である。
【0026】
本発明組成物には必要によりウレタン(メタ)アクリレート(E)を加えることができる。ウレタン(メタ)アクリレート(E)は、密着性を更に向上させると共に接着剤硬化膜の柔軟性を向上させる。従って(E)成分を含有させることにより、得られた貼り合わせ光ディスクの反りを少なくすることができる。本発明におけるウレタン(メタ)アクリレート(E)は、多価アルコール、有機ポリイソシアネート及びヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物を反応させることによって得られる。
【0027】
多価アルコールとしては、例えば、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール及び1,6−ヘキサンジオール等のC1〜C10アルキレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリシクロデカンジメチロール、ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等の脂肪族ポリオール、好ましくはC1〜C15より好ましくはC2〜C12脂肪族ポリオール、これら脂肪族ポリオールと多塩基酸、好ましくはC3〜C12の多塩基酸(例えば、コハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、テトラヒドロ無水フタル酸等)との反応によって得られるポリエステルポリオール、前記脂肪族ポリオールとε−カプロラクトンとの反応によって得られるカプロラクトンアルコール、前記脂肪族ポリオールとカーボネートとの反応によって得られるポリカーボネートポリオール(例えば、1,6−ヘキサンジオールとジフェニルカーボネートとの反応によって得られるポリカーボネートジオール等)、またはポリエーテルポリオール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール、好ましくはポリC1〜C6アルキレングリコール、エチレンオキシド変性ビスフェノールA等)等が挙げられる。
【0028】
有機ポリイソシアネートとしては、例えば炭素数1〜20好ましくはC6〜C15の炭化水素残基にイソシアネート基が2以上、好ましくは2〜4個のイソシアネート基が結合した化合物が挙げられ、具体的にはイソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートまたはジシクロペンタニルジイソシアネート等が挙げられる。
【0029】
ヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物としては、例えばヒドロキシ置換C1〜C15炭化水素(メタ)アクリレート、好ましくはヒドロキシ置換C2〜C10炭化水素(メタ)アクリレート、具体的には、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチロールシクロヘキシルモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシカプロラクトン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0030】
ウレタン(メタ)アクリレート(E)は以下の反応により得られる。即ち、多価アルコールに有機ポリイソシアネートを、水酸基1当量あたりイソシアネート基が好ましくは1.1〜2.0当量になるように混合し、反応温度を好ましくは70〜90℃で反応させ、ウレタンオリゴマーを製造する。次いで得られたウレタンオリゴマーのイソシアネート基1当量あたり、水酸基が好ましくは1〜1.5当量となるようにヒドロキシ(メタ)アクリレート化合物を混合し、好ましくは70〜90℃で反応させると目的とするウレタン(メタ)アクリレート(E)が得られる。
【0031】
ウレタン(メタ)アクリレート(E)は1種または2種以上を任意割合で混合使用することができる。ウレタン(メタ)アクリレート(E)の含有量は本発明組成物全体に対して、0〜50%、場合により1〜50%、好ましくは0〜40%、場合により5〜40%である。ウレタン(メタ)アクリレート(E)の分子量としては400〜10000が好ましい。
【0032】
なお、本発明において分子量とは重量平均分子量であり、測定方法は光散乱法による。
【0033】
本発明組成物には酸化防止剤(F)を加えてもよく、酸化防止剤(F)としては、例えば、ヒンダードフェノール化合物、アミン化合物、イオウ化合物及び/またはリン化合物等を挙げることができる。
【0034】
酸化防止剤(F)としてのヒンダードフェノール化合物の具体例としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオ−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール ビス〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール ビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル 3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルフォスフォネート ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、イソオクチル 3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等を挙げることができる。
【0035】
酸化防止剤(F)としてのアミン化合物の具体例としては、オクチル化ジフェニルアミン(例えば、4,4’−ジオクチル−ジフェニルアミン等)、4,4’−ジクミル−ジフェニルアミン、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンポリマー等を挙げることができる。
【0036】
酸化防止剤(F)としてのイオウ化合物の具体例としては、2−メルカプトベンズイミダゾール、2,4−ビス(オクチルチオメチル〕−o−クレゾール、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、アデカスタブ AO−412S(旭電化工業(株)社製)等を挙げることができる。
【0037】
酸化防止剤(F)としてのリン化合物の具体例としては、トリス(ノニル化フェニル)ホスファイト、アデカスタブ PER−4C(旭電化工業(株)社製)、アデカスタブ 260(旭電化工業(株)社製)、アデカスタブ 522A(旭電化工業(株)社製)等を挙げることができる。
【0038】
これら酸化防止剤(F)の中で特に好ましいものとしては、ヒンダードフェノール化合物を挙げることができる。これら酸化防止剤は、1種または2種以上を使用することができる。酸化防止剤(F)の含有量は本発明組成物全体に対して、通常0〜10%、場合により0.005〜10%、好ましくは通常0〜5%、場合により0.01〜5%である。
【0039】
更に、その他の添加剤として、本発明組成物にはポリマーとして、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリアクリル系、ポリウレタン系、ポリビニル系樹脂を加えてもよい。
【0040】
また、有機溶剤、シランカップリング剤、重合禁止剤、レベリング剤、帯電防止剤、表面潤滑剤、蛍光増白剤、光安定剤(例えば、ヒンダードアミン化合物等)、充填剤等の添加剤を加えてもよい。これらのその他の添加剤は通常0〜10%程度、好ましくは0〜5%程度である。
好ましい本発明組成物の例を挙げれば、接着剤組成物全体に対して、
ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート(A)、好ましくはビスフェノールA型エポキシ樹脂:1〜70%、好ましくは5〜40%、より好ましくは10〜40%、
環状エーテル構造を有するジ(メタ)アクリレート化合物(B)、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜2の酸素原子を含有する脂環式部分構造をもつジ(メタ)アクリレートであり、好ましくは3〜8員環、より好ましくは5〜6員環の環状エーテル構造を含むジ(メタ)アクリレート、更に好ましくはヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジアクリレート:5〜75%、好ましくは10〜70%、より好ましくは35〜65%、
光重合開始剤(C):0.05〜20%、好ましくは1〜10%及び
その他成分:残部
を含有する組成物を挙げることができる。
上記におけるその他成分としてはリン酸(メタ)アクリレート化合物(D)、ウレタン(メタ)アクリレート(E)、前記(B)成分(D)成分及び(E)成分以外の(メタ)アクリレートモノマー(B−1)(場合によりその他アクリレートと略称する)、酸化防止剤(F)及びその他添加剤などを挙げることができる。これらの中で、リン酸(メタ)アクリレート化合物(D)及びウレタン(メタ)アクリレート(E)を含む組成物が好ましい。また、(B−1)成分を含む組成も好ましい態様の一つである。それらの本発明組成物全体に対しての含有割合の例を挙げれば下記の通りである。
リン酸(メタ)アクリレート化合物(D)、好ましくはC1〜C3アルキレンオキシド変性リン酸モノ、ジ又はトリ(メタ)アクリレート、より好ましくはC1〜C3アルキレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート:0〜5%、場合により0.005〜5%、好ましくは0〜3%、場合により0.05〜3%
ウレタン(メタ)アクリレート(E):0〜50%、場合により1〜50%、好ましくは0〜40%、場合により5〜40%
その他アクリレート(B−1)成分:0〜85%、好ましくは0〜60%、より好ましくは0〜40%。
【0041】
本発明組成物は、前記した各成分を常温〜80℃で混合溶解して得ることができ、必要により狭雑物をろ過等の操作により取り除いてもよい。本発明組成物は、塗布性を考えると25℃の粘度が100〜5000mPa・S(B型粘度計により測定)の範囲が好ましい。
【0042】
本発明組成物は、貼り合わせ光ディスク用接着剤、特に貼り合わせ光ディスクの基板の一方または両方が、銀または銀合金の全反射膜または半透明反射膜を有する光ディスク基板を貼り合せる際に用いる接着剤として好適に使用できる。具体的には、貼り合わせた接着層の膜厚が1〜100μmとなるように任意の方法、例えば、スピンコート法、2P法、ロールコート法、スクリーン印刷法等で組成物を光ディスク基板に塗工し、2枚の光ディスク基板を重ね合わせた後、片側もしくは両面から紫外〜近紫外(波長250〜400nm付近)等の光線を照射して接着層を硬化させ、接着する。照射量は約50〜1000mJ/cmが好ましく、特に好ましくは、100〜700mJ/cm程度である。紫外〜近紫外の光線照射は、紫外〜近紫外の光線を照射するランプであれば光源を問わない。例えば、低圧、高圧若しくは超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、(パルス)キセノンランプ、または無電極ランプ等が挙げられる。
【0043】
光ディスク基板としては公知のもの、即ち、半透明反射膜として金を使用したもの、シリコン、シリコン化合物、銀及び銀合金を使用したもの等が使用できる。特に本発明組成物は、全反射膜または半透明反射膜として銀または銀合金を使用した貼り合わせ光ディスクに好適に使用できる。
【0044】
本発明には、上記の本発明組成物の硬化物により接着されている貼り合わせ光ディスクも含まれる。特に光ディスク基板の少なくとも一方が銀または銀合金の全反射膜または半透明反射膜を有する光ディスク基板が本発明組成物の硬化物により接着されている貼り合わせ光ディスクも含まれる。該光ディスクはDVD−ROM(DVD−5、DVD−10、DVD−9、DVD−14、DVD−18)、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RW、DVD−RAM、DVD−R片面2層方式、DVD+R片面2層方式、DVD−RW片面2層方式、DVD+R片面2層方式等のDVD等に使用される。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら制限されるものではない。なお、特に断りのない限り実施例及び表中の部は重量部である。
実施例1
【0046】
攪拌機、温度計を備えた反応容器にビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート(EPA−37)(A)30部、ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジアクリレート(R−604)(B)60部、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(イルガキュアー651)(C)9部、ジシクロペンタジエンオキシエチルアクリレート(FA−512A)(B−1)30部、エチレンオキシド変性リン酸ジメタクリレート(PM−2)(D)0.1部、ポリエーテル系ウレタンアクリレート(UA−732)(E)5部を60℃で1時間混合溶解し、本発明組成物を作製した。このとき、本発明組成物の粘度は25℃で500mPa・s(B型粘度計で測定)であった。
この組成物を用いて下記1〜4の工程により2枚の光ディスク基板を接着し、DVD−9タイプの貼り合せ光ディスクを作製した(必要に応じて記録情報のピットが形成されている基板を使用した)。また、同様にこの組成物を用いて下記5〜8の工程により2枚の光ディスク基板を接着し、DVD+Rタイプの貼り合せ光ディスクを作製した。
【0047】
1.0.6mm厚ポリカーボネート(以下PCと記す)基板に、平均10nmの膜厚になるよう銀合金(ターゲットテクノロジー社製銀合金TTP−55A)を蒸着(以下スパッタと記す)し、銀合金半透明反射膜基板(DVD基板)を作製した。
また、アルミニウム合金全反射膜基板(DVD基板)は、0.6mm厚PC基板に平均45nmの膜厚になるようアルミニウム合金(ユナクシス社製)をスパッタすることにより作製した。
2.上記で得られた全反射膜DVD基板内円周上に沿って、接着剤組成物(紫外線硬化型樹脂組成物)2.5gで円を描いた。
3.また、上記1で得られた半透明反射膜DVD基板を、スパッタ面が下になるように上記2のアルミニウム合金基板上(スパッタ面が上)に乗せ、2000rpmの速度で4秒間スピンコートし、銀合金半透明反射膜とアルミニウム合金間の樹脂組成物膜厚が45から65μmになるように重ね合わせた。装置はオリジン社製を使用した。
4.上下2機のキセノンフラッシュランプを使用し、上側ランプ1800Vで8ショット照射し、下側ランプ1600Vで4ショット照射して樹脂組成物を硬化し、ディスク基板を接着させ、DVD−9タイプの貼り合せ光ディスクを得た。なお、DVDディスクの向きは上側が銀合金半透明反射膜、下側がアルミニウム合金全反射膜である。
【0048】
5.DVD+Rタイプの貼り合せ光ディスクを作成するため、DVD+R用のピットが形成されている0.6mm厚PC基板にアゾ色素記録層をスピンコート法により作成し、80℃で15分間乾燥させた後、平均100nmの膜厚になるよう銀(ユナクシス社製)をスパッタし、銀反射膜基板を作製した。
6.銀反射膜基板内円周上に沿って、接着剤組成物(紫外線硬化型樹脂組成物)接着剤2.5gで円を描いた。
7.0.6mmPC基板を、上記6で得た銀反射膜基板上(スパッタ面が上)に乗せ、3000rpmの速度で4秒間スピンコートし、PC基板と銀反射膜間の樹脂組成物膜厚が35から55μmになるように重ね合わせた。装置はオリジン社製を使用した。
8.キセノンフラッシュランプを使用し、上側から1800Vで、8ショット照射して樹脂組成物を硬化し、ディスク基板を接着させ、DVD+Rタイプの貼り合せ光ディスクを得た。なお、DVDディスクの向きは上側がPC基板、下側が銀反射膜基板である。
9.上記5〜8により作成した、DVD+R基板に、PLEXSTAR社製ドライブ(型式:PX−708A)により8倍速の書き込み速度で、約4.7ギガバイトの信号を記録した。
実施例2
【0049】
ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート(EPA−37)(A)30部、ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジアクリレート(R−604)(B)60部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュアー184)(C)9部、ジシクロペンタジエンオキシエチルアクリレート(FA−512A)(B−1)30部、エチレンオキシド変性リン酸ジメタクリレート(PM−2)(D)0.1部、ポリエーテル系ウレタンアクリレート(UA−732)(E)5部を用いる以外は実施例1と同様にして、表1の本発明組成物を作製し、続いて実施例1と同様にして、貼り合せ光ディスクを作製した。
実施例3
【0050】
ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート(EPA−37)(A)10部、ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジアクリレート(R−604)(B)50部、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(イルガキュアー651)(C)7部、エチレンオキシド変性リン酸ジメタクリレート(PM−2)(D)0.1部、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート(M−315)(B−1)10部、EO(エチレンオキシド)変性ビスフェノールAジアクリレート(R−551)10部、ポリエーテル系ウレタンアクリレート(UA−732)(E)5部を使用する以外は実施例1と同様にして、表1の本発明組成物を作製し、続いて実施例1と同様にして、貼り合せ光ディスクを作製した。
実施例4
【0051】
ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート(EPA−37)(A)30部、ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジアクリレート(R−604)(B)60部、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン(イルガキュアー907)(C)9部、エチレンオキシド変性リン酸ジメタクリレート(PM−2)(D)0.1部、ポリエーテル系ウレタンアクリレート(UA−732)(E)5部を使用する以外は実施例1と同様にして、表1の本発明組成物を作製し、続いて実施例1と同様にして、貼り合せ光ディスクを作製した。
比較例1
【0052】
ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート(EPA−37)(A)30部、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュアー184)(C)9部、ジシクロペンタジエンオキシエチルアクリレート(FA−512A)(B−1)30部、エチレンオキシド変性リン酸ジメタクリレート(PM−2)(D)0.1部、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート(R−684)(B−1)60部を用いる以外は実施例1とほぼ同様にして、表1の環状エーテル構造を有するジ(メタ)アクリレート化合物(B)を含まず、脂環式構造を有する(メタ)アクリレート化合物(トリシクロデカンジメチロールジアクリレート:R−684)を含む比較例組成物を作製し、続いて実施例1と同様に貼り合せ光ディスクを作製した。
【0053】
【表1】

【0054】
なお、表1中に略称で示した各組成は下記の通りである。また、表1中の組成を示す数字は重量部を表す。
EPA−37:ビスフェノールAジクリシジルエーテルジアクリレート、日本化薬(株)社製
R−604:ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジアクリレート、日本化薬(株)社製
イルガキュアー651:2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製
イルガキュアー184:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製
イルガキュアー907:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製
FA−512A:ジシクロペンタジエンオキシエチルアクリレート、日立化成(株)社製
PM−2:エチレンオキシド変性リン酸ジメタクリレート、日本化薬(株)社製
M−315:トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、東亜合成(株)社製
R−684:トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、日本化薬(株)社製
R−551:EO(エチレンオキシド)変性ビスフェノールAジアクリレート、日本化薬(株)社製
UA−732:ポリエーテル系ウレタンアクリレート、日本化薬(株)社製
【0055】
試験例
実施例または比較例で得られた貼り合せ光ディスクを以下の方法で評価した。
【0056】
1.耐久性試験前後の反射膜外観(DVD−9、DVD+R共通)
得られた貼り合せ光ディスクを、80℃、85%RH(相対湿度)の環境下、500時間及び700時間放置した。目視による反射膜の状態を観察した。観察した結果を以下の基準により評価し、表2に示した。
○・・・接着直後と比較し、700時間後の評価において全反射膜及び半透明反射膜の状態に変化が見られない。
△・・・接着直後と比較し、500時間後の評価では全反射膜及び半透明反射膜の状態に変化が見られないが、700時間後の評価では全反射膜及び半透明反射膜に変色またはピンホールが多く見られる。
×・・・接着直後と比較し、500時間後の評価で全反射膜及び半透明反射膜に変色または、ピンホールが多く見られる。
【0057】
2.耐久性試験前後の光ディスク電気信号
DVD−9
得られた貼り合せ光ディスクを、80℃、85%RHの環境下、700時間放置した。DVDデータ信号測定装置AECO社製DVD−2000を用いて、耐久性試験後の貼り合せ光ディスクの電気信号を評価した。
システムジッター、PIエラーは光ディスクの電気信号のひとつであり、これらの数値が高いほど、貼り合せ光ディスクのデータが劣化していることを示す。
○・・・システムジッター値8.0以下、且つ、PIエラー値250以下。
△・・・システムジッター値8.1〜9.0、且つ、PIエラー値251〜350。
×・・・システムジッター値9.1以上、且つ、PIエラー値351以上。
DVD+R
得られた貼り合せ光ディスクを、80℃、85%RH環境下、480時間放置した。DVDデータ信号測定装置AUDIO DEV.社製DVD−CATS SA−300を用いて、耐久性試験後の貼り合せ光ディスクの電気信号を評価した。
チルトジッター、PISum8は光ディスクの電気信号のひとつであり、これらの数値が高いほど、貼り合せ光ディスクのデータが劣化していることを示す。
○・・・チルトジッター値8.0以下、且つ、PISum8値250以下。
△・・・チルトジッター値8.1〜9.0、且つ、PISum8値251〜350。
×・・・チルトジッター値9.1以上、且つ、PISum8値351以上。
【0058】
3.反射膜との密着性評価
DVD−9
得られた貼り合わせ光ディスクの反射膜と光ディスク基板との接着剤による密着強度を評価した。評価は得られた貼り合わせ光ディスクの貼り合わせ界面部にカッターで深さ5mm程度の小さな切込みを入れ、その切込みから貼り合わせ光ディスクを指で剥離し、剥離した後の反射膜の状態の観察による。
○・・・密着性に優れ、剥離の際に半透明反射膜または全反射膜の半分以上がポリカーボネート基板より剥離した。
△・・・密着性が不十分で、剥離の際に半透明反射膜または全反射膜の一部しかポリカーボネート基板から剥離しなかった。
×・・・密着性は弱く反射膜のほとんどがポリカーボネート基板から剥離しなかった。
DVD+R
得られた貼り合わせ光ディスクの反射膜と光ディスク基板との接着剤による密着強度を評価した。評価は得られた貼り合わせ光ディスクの貼り合わせ界面部にカッターで深さ5mm程度の小さな切込みを入れ、その切込みから貼り合わせ光ディスクを指で剥離し、剥離した後の反射膜の状態を観察した。
○・・・密着性に優れ、剥離の際に全反射膜の半分以上が色素層との界面より剥離した。
△・・・密着性が不十分で、剥離の際に全反射膜の一部しか色素層との界面から剥離しなかった。
×・・・密着性は弱く反射膜のほとんどが色素層との界面から剥離しなかった。
DVD−9での評価結果を表2に記載する。
【0059】
【表2】

DVD+Rでの評価結果を表3に記載する。
【0060】
【表3】

【0061】
表2及び表3の結果は、環状エーテル構造を有するジ(メタ)アクリレート化合物を含有する本発明組成物を用いて接着した光ディスクは、特に反射膜と紫外線硬化物との密着性に優れることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明組成物(紫外線硬化型樹脂組成物)を用いて光ディスク基板を接着することにより、銀または銀合金の半透明反射膜または全反射膜を使用した貼り合わせ光ディスクにおいて、金を半透明反射膜とした従来の貼り合わせ光ディスクと同等の高い耐久性を得ることができ、更に半透明反射膜または全反射膜と接着剤硬化物との高い密着強度を得ることができる。また、DVD−R、DVD+R、DVD−RW、DVD+RW、DVD−RAM等のブランクDVDのうち、反射膜に銀または銀合金を使用したブランクDVDにおいて、保護コート使用時と同等の高い耐久性を得ることができ、更に金属反射膜と接着剤硬化物、及びポリカーボネート基板と接着剤硬化物との高い密着強度を得ることができる。高い密着強度によりDVDを繰り返し使用しても貼り合わせた光ディスクがはがれない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート(A)、環状エーテル構造を有するジ(メタ)アクリレート化合物(B)及び光重合開始剤(C)を含有する接着剤組成物。
【請求項2】
更に、リン酸(メタ)アクリレート化合物(D)を含有する請求項第1項に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
更に、ウレタン(メタ)アクリレート(E)を含有する請求第1項に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート(A)、環状エーテル構造を有するジ(メタ)アクリレート化合物(B)、光重合開始剤(C)、リン酸(メタ)アクリレート化合物(D)及びウレタン(メタ)アクリレート(E)を含有する請求の範囲第1項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
接着剤組成物全体に対して、重量%で
ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート(A):1〜70%
環状エーテル構造を有するジ(メタ)アクリレート化合物(B):5〜75%
光重合開始剤(C):0.05〜20%及び
その他成分:残部
を含有する請求の範囲第1項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
環状エーテル構造を有するジ(メタ)アクリレート化合物(B)が、ヒドロキシ置換(C4〜C10)3級アルデヒド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート若しくはその変性物である請求項第1項に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
環状エーテル構造を有するジ(メタ)アクリレート化合物(B)が、ヒドロキシピバルアルデヒド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレートである請求項第6項に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
2枚の光ディスク基板が請求項第1項〜第7項のいずれか1項に記載の接着剤組成物の硬化物により接着されている貼り合わせ光ディスク。
【請求項9】
光ディスク基板が、少なくとも、そのいずれか一方が銀または銀合金の全反射膜または半透明反射膜を有する光ディスク基板である請求項第8項に記載の貼り合わせ光ディスク。

【国際公開番号】WO2005/014748
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【発行日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513006(P2005−513006)
【国際出願番号】PCT/JP2004/011545
【国際出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【出願人】(500538092)株式会社日本化薬福山 (14)
【Fターム(参考)】