説明

接着剤組成物

【課題】 ラミネート基材間の強い接着強度を得ることができ、長期にわたって強い接着強度を維持できる接着剤、ならびに酸性度の高い食品や油性食品を充填し、該接着剤を用いて接着製造した場合においても、経時的なラミネート基材間の接着強度の低下がない包装用積層体を提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸を共重合させてなる樹脂(A)、ポリマーポリオール(B)および有機イソシアネート化合物(C)を含有することを特徴とするウレタン系接着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種プラスチックフィルム、および金属蒸着フィルムあるいは金属箔を複数積層して、食品、医療品、化粧品等の包装用積層体を製造する際に好適に用いられる、優れた接着機能を有する接着剤に関する。さらに、本発明は、食品、医療品、化粧品等の包装に用いられる包装用積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食品、医療品、化粧品等の包装材料として、アルミニウム箔などの金属箔あるいは金属蒸着フィルムとポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリエステル、ナイロンなどのプラスチックフィルムを多層ラミネートして複合化したものが用いられている。これらのプラスチックフィルムと金属箔あるいは金属蒸着フィルムとを張り合わせる接着剤としては、芳香族多価カルボン酸無水物を反応せしめたポリマーポリオール及び有機イソシアネート化合物からなるものが知られている。
【0003】
しかし、このような接着剤は、ボイル、レトルト、ハイレトルトの高温殺菌処理を必要とする場合、処理後の積み重ねなどの作業時において、不本意の折り曲げで部分的に接着不良が発生し、外観不良の状態になること、あるいは内容物や基材によっては経時的な性能面の劣化が問題となることがあった(特開昭60−243182)。
【0004】
特開2001−152127、特開2005−132902では、スチレン−無水マレイン酸樹脂、トリメリット酸エステル無水物を導入することにより、高温殺菌処理、長期保存時の接着力維持を提案しているが、内容物が多様化している近年では処理条件も多様化し、更なる接着性能が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−243182号公報
【特許文献2】特開2001−152127号公報
【特許文献3】特開2005−132902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、硬化した際の、耐熱水性および耐酸性が優れ、接着性が経時劣化しにくい接着剤及びこれを用いた包装用積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明の第1の発明は、(メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸とを共重合させてなる樹脂(A)、ポリマーポリオール(B)、および有機イソシアネート化合物(C)を含有することを特徴とするウレタン系接着剤組成物に関するものである。
【0008】
さらに、本発明の第2の発明は、(メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸とを共重合させてなる樹脂(A)を、ポリマーポリオール(B)100重量部に対して、0.1〜10重量部含有することを特徴とする第1の発明に記載のウレタン系接着剤組成物に関するものである。
【0009】
また、本発明の第3の発明は、さらに、シランカップリング剤、リンの酸素酸、およびリン酸エポキシから選択される成分を含有することを特徴とする第1の発明また第2の発明に記載のウレタン系接着剤組成物に関するものである。
【0010】
さらに、本発明の第4の発明は、第1ないし第3の発明のいずれか1項に記載のウレタン系接着剤組成物を含有することを特徴とする包装材用のラミネート用接着剤に関するものである。
【0011】
また、本発明の第5の発明は、第4の発明に記載の包装材用のラミネート用接着剤により、二つ以上の基材同士を接合してなることを特徴とする包装用積層体に関するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、食酢、遊離脂肪酸等を内容物とする場合のラミネート積層体のプラスチックフィルム、或いは金属箔間の接着力が、長期保管後でも変化がなく良好である。つまり、本発明の接着剤によれば、硬化した際の、耐熱水性および耐酸性が優れ、接着性が経時劣化しにくい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のウレタン系接着剤組成物について説明する。本発明のウレタン系接着剤組成物は(メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸とを共重合させてなる樹脂(A)、ポリマーポリオール(B)および有機イソシアネート化合物(C)を含むことを特徴とする。
【0014】
<(メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸とを共重合させてなる樹脂(A)>
本発明で用いられる(メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸とを共重合させてなる樹脂には、合成時の全量に対して、(メタ)アクリル酸エステルの含有量が50〜95%が好ましく、より好ましくは50〜70%、無水マレイン酸の含有量が5〜50%が好ましく、30〜50%がより好ましい。無水マレイン酸の含有量が5%以上であると、長期保管時の接着力は劣化せず、また、50%以下であると、(メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸の共重合物の合成が容易である。
(メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸とを共重合させてなる樹脂の数平均分子量は300〜50000が好ましく、より好ましくは1000〜12000である。数平均分子量が300以上であると、長期保管時の接着力の劣化がなく、また、50000以下であると、接着剤樹脂配合物の相溶性が良好で、接着剤の塗工外観が優れる。
(メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸を共重合させてなる樹脂(A)の添加量は、ポリマーポリオール(B)100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、より好ましくは1〜5重量部である。樹脂(A)の添加量がポリマーポリオール(B)に対して、0.1重量部以上だと、接着力の長期保持が可能であり、また、10重量部以下では接着剤樹脂配合物の相溶性が良好で、接着剤の塗工外観が優れる。
【0015】
本発明に用いられる(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸−i−プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−i−ブチル、メタクリル酸−t−ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘプチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ヒドロキシメチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル等が挙げられる。なかでも無水マレイン酸との共重合性の観点からメタクリル酸メチルが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸との共重合させてなる樹脂(A)の合成方法は、ラジカル共重合法が用いられる。例えば、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等から、適宜選ばれる。
【0016】
<ポリマーポリオール(B)>
本発明で用いられるポリマーポリオールは、硬化速度の観点から、1分子中の官能基数が、2〜10であることが好ましく、より好ましくは2〜8である。また、数平均分子量が、接着剤組成物の粘度の観点から、好ましくは500〜100,000、より好ましくは1,000〜30,000である。更に詳しくは、ポリマーポリオール(B)として、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシルアルカン、ポリウレタンポリオール、ひまし油又はそれらの混合物(以下、これらを有機ポリオール(1)とする。)が挙げられる。これらのなかでも、耐熱性の観点から、ポリウレタンポリオールが好ましい。
【0017】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等二塩基酸若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物と、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3′−ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のグリコール類若しくはそれらの混合物とを反応させて得られるポリエステルポリオール或いはポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β−メチル−γ−バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0018】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を、例えば、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の低分量ポリオールを開始剤として重合して得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0019】
ポリエーテルエステルポリオールとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の二塩基酸若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物と、上記ポリエーテルポリオールを反応させて得られるポリエーテルエステルポリオールが挙げられる。
【0020】
ポリエステルアミドポリオールとしては、上記エステル化反応に際し、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアミノ基を有する脂肪族ジアミンを原料としてあわせて使用することによって得られる。
【0021】
アクリルポリオールの例としては、1分子中に1個以上の水酸基を含むアクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロプル、アクリルヒドロキシブチル等、或いはこれらの対応するメタクリル酸誘導体等と、例えばアクリル酸、メタクリル酸又はそのエステルとを共重合することによって得られる。
【0022】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,8−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールAの中から選ばれた1種又は2種以上のグリコールをジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲン等との反応によって得られたものが挙げられる。
【0023】
ポリヒドロキシアルカンとしては、ブタジエン、又はブタジエンとアクリルアミド等と共重合して得られる液状ゴムが挙げられる。
【0024】
ポリウレタンポリオールとしては、1分子中にウレタン結合を有するポリオールであり、例えば、数平均分子量200〜20,000のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール等と有機ポリイソシアネートとをNCO/OHが1未満が好ましく、より好ましくは0.9以下で反応させて得られる。
【0025】
本発明では、上記有機ポリオールとして、その分子中(分子内部や分子末端)にカルボキシル基を有するもの(以下、有機ポリオール(2)という。)を用いることができる。本発明で用いられる有機ポリオール(2)は、望ましくは上記の有機ポリオール(1)と多塩基酸若しくはその無水物とを反応させることにより得られる。この際用いられる有機ポリオール(1)としては、分子末端に2個以上の水酸基を含有し、数平均分子量が、好ましくは1,000〜100,000、より好ましくは3,000〜15,000である。前記数平均分子量が1,000以上だと凝集力が十分であり、100,000以下では、合成上、末端に多塩基酸若しくはその無水物を容易に反応させることができ、増粘やゲル化がない。
【0026】
<有機イソシアネート化合物(C)>
本発明で用いられる有機イソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート等の脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート;m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−2,6−トリレンジイソシアネート又は2,6−トリレンジイソシアネート若しくはその混合物、4,4′−トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;1,3−1,4−キシリレンジイソシアネート又は1,4−キシリレンジイソシアネート若しくはその混合物、ω,ω′−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン又は1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン若しくはその混合物等の芳香族ジイソシアネート;トリフェニルメタン−4,4′,4″−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、2,4,6−トリイソシアネートトルエン等の有機トリイソシアネート;4,4′−ジフェニルジメチルメタン−2,2′−5,5′−テトライソシアネート等の有機テトライソシアネート等のポリイソシアネート単量体;上記ポリイソシアネート単量体から誘導されたダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート;炭酸ガスと上記ポリイソシアネート単量体とから得られる2,4,6−オキサジアジントリオン環を有するポリイソシアネート;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3′−ジメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の分子量200未満の低分子ポリオールと上記ポリイソシアネート単量体との付加体;分子量200〜20,000のポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシアルカン、ひまし油、ポリウレタンポリオール等と上記ポリイソシアネート単量体との付加体;ポリエーテルポリオールと有機ポリイソシアネートとをNCO/OHが1未満で反応させて得られるポリウレタンポリオールと上記ポリイソシアネート単量体の付加体;等が挙げられる。これらポリイソシアネート化合物は、接着剤の用途により単独或いは二種以上の混合物として適宜用いることが出来る。例えば、硬化速度、及び耐熱性の観点からは、芳香族系のポリイソシアネートが好ましい。
有機イソシアネート化合物(C)は、硬化速度の観点から、ポリマーポリオール(B)100重量部に対して、1〜50重量部含有することが好ましく、より好ましくは5〜30重量部である。
【0027】
<シランカップリング剤>
本発明の接着剤には、耐熱水性を高めるため、さらに、シランカップリング剤を含有させることができる。シランカップリング剤としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を有するトリアルコキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基を有するトリアルコキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のグリシジル基を有するトリアルコキシシラン等が挙げられる。シランカップリング剤の添加量は、接着剤の固形分を基準として0.1〜5重量%であることが好ましく、0.5〜3重量%であることがより好ましい。
【0028】
<リンの酸素酸>
また、本発明の接着剤には、耐酸性を高めるため、さらに、リンの酸素酸またはその誘導体を含有させることができる。リンの酸素酸またはその誘導体の内、リンの酸素酸としては、遊離の酸素酸を少なくとも1個有しているものであればよく、例えば、次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、次リン酸等のリン酸類、メタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、ウルトラリン酸等の縮合リン酸類が挙げられる。また、リンの酸素酸の誘導体としては、上記のリンの酸素酸を遊離の酸素酸を少なくとも1個残した状態でアルコール類と部分的にエステル化されたもの等が挙げられる。これらのアルコールとしては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等の脂肪族アルコール、フェノール、キシレノール、ハイドロキノン、カテコール、フロログリシノール等の芳香族アルコール等が挙げられる。リンの酸素酸またはその誘導体は、2種以上を組み合わせて用いてもよい。リンの酸素酸またはその誘導体の添加量は、接着剤の固形分を基準として0.01〜10重量%であることが好ましく、0.05〜5重量%であることがより好ましく、0.1〜1重量%であることが特に好ましい。
<リン酸エポキシ>
さらに、本発明の接着剤は、金属密着性能向上のために、リン酸エポキシを含有させることができる。リン酸エポキシとしては、DSM Resinsレジン社製URAD-DD79が挙げられる。
リン酸エポキシの添加量は、接着剤の固形分を基準として、0.01〜10重量%であることが好ましく、0.1〜1重量%であることが特に好ましい。
【0029】
<その他の添加剤>
本発明の接着剤には、さらに、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、防黴剤、増粘剤、可塑剤、顔料、充填剤等の添加剤を必要に応じて含有させることができる。また、硬化反応を調節するため公知の触媒、添加剤等を含有させることができる。
<接着剤>
本発明の接着剤は、(メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸とを共重合させてなる樹脂(A)、ポリマーポリオール(B)、および有機イソシアネート化合物(C)を配合し、その粘度が常温〜150℃、好ましくは常温〜100℃で100〜10,000mPa・s、好ましくは100〜5,000mPa・sの場合は無溶剤型で用いることができる。接着剤の粘度が上記範囲より高い場合は、有機溶剤で希釈してもよい。有機溶剤としては、例えば酢酸エチル等のエステル系、メチルエチルケトン等のケトン系、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系等のイソシアネートに対して不活性なものであれば必要に応じいかなるものを使用してもよい。
【0030】
本発明の接着剤は、溶剤型または無溶剤型のラミネーターによってフィルム表面に塗布し、溶剤型の場合は溶剤を揮散させた後、無溶剤型ではそのまま接着面を貼り合せ、常温または加温下に硬化させることにより使用することができる。通常、無溶剤型では塗布量が乾燥固形物量1.0〜2.0g/m 、溶剤型では乾燥固形物量2.0〜5.0g/m の範囲で使用すると好都合である。
【0031】
<包装用積層体>
次に、本発明の包装用積層体について説明する。本発明の包装用積層体は、第1のシート状基材と第2のシート状基材とが、本発明の接着剤から形成される接着剤層を介して積層されているものである。
シート状基材は、包装用積層体に通常用いられているプラスチックフィルム、紙、金属箔等であり、第1のシート状基材と第2のシート状基材とは、同種のものでも異種のものでも良い。プラスチックフィルムとしては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂のフィルムを用いることができるが、熱可塑性樹脂のフィルムが好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、アセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、繊維素系プラスチック等が挙げられる。
【0032】
包装用積層体の厚さは、通常10μm以上である。本発明の接着剤を用いて、包装用積層体を作るには、通常用いられている方法、例えば、ドライラミネーターによって接着剤を一方のシート状基材の片面に塗布し、溶剤を揮散させた後、他方のシート状基材と貼り合わせ、常温もしくは加温下に硬化させれば良い。シート状基材表面に施される接着剤量は1〜10g/m程度である。
【実施例】
【0033】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。実施例及び比較例中の部、%は、特に指定がない場合は重量部、重量%を意味する。
また、本発明において「数平均分子量」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを利用し、標準ポリスチレンの検量線を使用して算出した。酸価、水酸基価は、1gのポリマーポリオール当りのKOHのmgで表わす。酸価はKOHによる中和滴定で、水酸基価はピリジンと無水酢酸を用いるアセチル化により測定した。
【0034】
(合成例1)(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合物(A−1)の合成 攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、トルエン200部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ、攪拌しながら110℃まで昇温した。次に、滴下槽1にメタクリル酸メチル90部、アクリル酸ブチル60部、無水マレイン酸150部、トルエン50部を仕込み、滴下槽2に過酸化ベンゾイル9部をトルエン50部に溶解せしめたものを仕込み、夫々同時に2時間かけて反応容器内の温度を110℃にたもちながら、攪拌下に滴下した。反応終了後、室温まで冷却し、大量のメタノールによりポリマーを沈殿、ろ過し、120℃で6時間乾燥し、数平均分子量3000、酸価488の(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合物(A−1)を得た。
【0035】
(合成例2)(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合物(A−2)の合成
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、トルエン200部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ、攪拌しながら110℃まで昇温した。次に、滴下槽1にメタクリル酸メチル90部、アクリル酸ブチル120部、無水マレイン酸90部、トルエン50部を仕込み、滴下槽2に過酸化ベンゾイル9部をトルエン50部に溶解せしめたものを仕込み、夫々同時に2時間かけて反応容器内の温度を110℃にたもちながら、攪拌下に滴下した。反応終了後、室温まで冷却し、大量のメタノールによりポリマーを沈殿、ろ過し、120℃で6時間乾燥し、数平均分子量3500、酸価298の(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合物(A−2)を得た。
【0036】
(合成例3)スチレン−無水マレイン酸共重合物(A−3)の合成
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、トルエン200部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ、攪拌しながら110℃まで昇温した。次に、滴下槽1にスチレン150部、無水マレイン酸150部、トルエン50部を仕込み、滴下槽2に過酸化ベンゾイル9部をトルエン50部に溶解せしめたものを仕込み、夫々同時に2時間かけて反応容器内の温度を110℃にたもちながら、攪拌下に滴下した。反応終了後、室温まで冷却し、大量のメタノールによりポリマーを沈殿、ろ過し、120℃で6時間乾燥し、数平均分子量2800、酸価501のスチレン−無水マレイン酸共重合物(A−3)を得た。
【0037】
(合成例4)αオレフィン−無水マレイン酸共重合物(A−4)の合成
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、トルエン200部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ、攪拌しながら110℃まで昇温した。次に、滴下槽1に1−ヘキセン150部、無水マレイン酸150部、トルエン50部を仕込み、滴下槽2に過酸化ベンゾイル9部をトルエン50部に溶解せしめたものを仕込み、夫々同時に2時間かけて反応容器内の温度を110℃にたもちながら、攪拌下に滴下した。反応終了後、室温まで冷却し、大量のメタノールによりポリマーを沈殿、ろ過し、120℃で6時間乾燥し、数平均分子量2900、酸価487のαオレフィン−無水マレイン酸共重合物(A−4)を得た。
【0038】
(合成例5)ポリマーポリオール(B−1)の合成
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、エチレングリコール7.3部、ネオペンチルグリコール16.3部、1,6−ヘキサンジオール13.9部、イソフタル酸39.4部、テレフタル酸4.4部、安息香酸1.0部、セバシン酸18.0部を仕込み、窒素気流下で攪拌しながら260℃まで昇温した。酸価が5以下になるまで反応を続けた後に、徐々に減圧を行って、1mmHgで反応を継続し、余剰のアルコールを除去して、水酸基価が10mgKOH/g、数平均分子量10000のポリマーポリオール(B−1)を得た。
【0039】
(合成例6)ポリマーポリオール(B−2)の合成
上記ポリマーポリオール(B−1)300gを窒素気流下で攪拌しながら過熱し、150℃の雰囲気中で、イソホロンジイソシアネート3g添加し、攪拌を継続した。IR分析にて未反応のNCO由来の吸収が消失するまで攪拌を続け、水酸基価が8mgKOH/g、数平均分子量12000のポリマーポリオール(B−2)を得た。
【0040】
(合成例7)ポリマーポリオール(B−3)の合成
上記ポリマーポリオール(B−2)300gを窒素気流下で攪拌しながら180℃まで昇温し、エチレングリコールビスアンヒドロトリテート4g及び、無水トリメリット酸2gを仕込み、180℃で1時間保持し、水酸基価が5mgKOH/g、数平均分子量12500のポリマーポリオール(B−3)を得た。
【0041】
(実施例1)
攪拌機、温度計、還流冷却管、滴下槽及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、合成例1で得た(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合物(A−1)2.7g、合成例5で得たポリマーポリオール(B−1)90g、酢酸エチル210g、を仕込み、窒素ガスを導入しつつ、攪拌しながら78℃まで昇温し、1時間保持した。室温まで冷却後、リン酸0.036g、シランカップリング剤(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)0.27g、及び、有機イソシアネート化合物(C)として、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体(IPDI−TMPアダクト)と、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加体(XDI−TMPアダクト)との3/7(重量比)混合物の酢酸エチル希釈液(不揮発分70重量%)を22.7g、酢酸エチル210gを配合し、接着剤を調合した。
【0042】
(実施例2〜6、比較例1〜4)
表1記載の材料を使用した以外は、実施例1と同様な操作により、接着剤を調合した。
【0043】
(4層複合積層体の作成)
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ12μm)/ナイロン(NY)フィルム(厚さ15μm)/アルミニウム(AL)箔(厚さ9μm)/未延伸ポリプロピレン(CPP)フィルム(厚さ70μm、表面コロナ放電処理)の4層複合積層体を接着剤の固形分塗布量を3.5g/m2として、以下に記載の方法で作成した。すなわち、接着剤溶液を常温にてラミネーターにより、まずポリエチレンテレフタレートフィルムの印刷面に塗布し、溶剤を揮散させた後、塗布面をナイロンフィルムと貼り合せた。さらに、その積層体のナイロンフィルム面に同様に接着剤溶液を塗布し、溶剤を揮散させた後、塗布面をアルミニウム箔表面と貼り合せた。ついで、その積層体のアルミニウム箔面に同様に接着剤溶液を塗布し、溶剤を揮散させた後、塗布面を未延伸ポリプロピレンフィルムと貼り合せ、40℃で3日間保温し、4層複合積層体を作成した。表2において、ラミネート外観の○は良好、×は全面に欠膠部ありを示す。ここで、欠膠部とは、接着剤を基材へ塗布した際に、基材への濡れ性が悪いと接着剤がハジかれるが、ハジかれて塗布量が少なくなった部分を意味する。欠膠部があると、接着力が発現しない。
【0044】
(ラミネート強度試験)
上記のようにして作成した4層複合積層体から15mm×300mmの大きさの試験片を作り、引張り試験機を用い、温度20℃、相対湿度65%の条件下で、T型剥離により、剥離速度30cm/分で、PETフィルム/NYフィルム間、NYフィルム/AL箔間、およびAL箔/CPPフィルム間のラミネート強度(N/15mm)を測定した。表2の数値は、5個の試験片の平均値である。測定はレトルトの前後でそれぞれ行った。レトルト条件は、(株)日坂製作所製「RCS-60SPXTG」レトルト試験機により、10r.p.m.、135℃、30分、3MPaの加圧下で熱水殺菌を行った。
【0045】
(耐熱水性試験)
各々の4層複合積層体を使用して、未延伸ポリプロピレンが内側となるように21cm×30cmの大きさのパウチを作成し、内容物として水1kgを真空充填した。このパウチを(株)日坂製作所製「RCS-60SPXTG」レトルト試験機により、10r.p.m.、135℃、30分、3MPaの加圧下で熱水殺菌を行った後、PETフィルム/NYフィルム間、NYフィルム/AL箔間およびAL箔/CPPフィルム間の剥離状態を観察した。表2において、剥離外観の○は良好(剥離なし)、△は部分的に剥離あり、×は全面に剥離ありを示す。
【0046】
(耐酸性試験1)
各々の4層複合積層体を使用して、未延伸ポリプロピレンが内側となるように9cm×13cmの大きさのパウチを作成し、内容物として4.2重量%以上の濃度を有する食酢を充填した。このパウチを(株)日坂製作所製「RCS-60SPXTG」レトルト試験機により、3r.p.m.、135℃、30分、3MPaの加圧下で熱水殺菌を行った後、60℃、2週間保存後および60℃、4週間保存後のAL箔/CPPフィルム間の剥離状態を観察した。表2において、剥離外観の○は良好(剥離なし)、△は部分的に剥離あり、×は全面に剥離ありを示す。
【0047】
(耐酸性試験2)
各々の4層複合積層体を使用して、未延伸ポリプロピレンが内側となるように9cm×13cmの大きさのパウチを作成し、内容物として4.2重量%以上の濃度を有する食酢を充填した。このパウチを未処理で、60℃、2週間保存後および60℃、4週間保存後のAL箔/CPPフィルム間の剥離状態を観察した。表2において、剥離外観の○は良好(剥離なし)、△は部分的に剥離あり、×は全面に剥離ありを示す。
結果を表2に示す。
【表1】

【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸とを共重合させてなる樹脂(A)、
ポリマーポリオール(B)、および
有機イソシアネート化合物(C)を含有することを特徴とするウレタン系接着剤組成物。
【請求項2】
前記(メタ)アクリル酸エステルと無水マレイン酸とを共重合させてなる樹脂(A)を、前記ポリマーポリオール(B)100重量部に対して、0.1〜10重量部含有することを特徴とする請求項1記載のウレタン系接着剤組成物。
【請求項3】
さらに、シランカップリング剤、リンの酸素酸およびリン酸エポキシから選択される成分を含有することを特徴とする請求項1また2記載のウレタン系接着剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のウレタン系接着剤組成物を含有することを特徴とする包装材用のラミネート用接着剤。
【請求項5】
請求項4に記載の包装材用のラミネート用接着剤により、二つ以上の基材同士を接合してなることを特徴とする包装用積層体。

【公開番号】特開2012−184283(P2012−184283A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46340(P2011−46340)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(396009595)東洋モートン株式会社 (13)
【Fターム(参考)】