説明

接着性が改善されたフィルムプライマー

本発明は、式(I)の化合物と、1分子当たり少なくとも1個の求核性官能基を有するポリマーPとを含むプライマー組成物の、プラスチックフィルムの接合のための使用に関する。このタイプのプライマー組成物の使用は、特に、成形部品および成形品を、特に、真空深絞り成形によってラミネートするのに好適である。加えて、プラスチックフィルム上のプライマーの接着性および延性が改良されていることにより、フィルムの上面に痕跡を残す亀裂がプライマー層で発生しないという利点がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックフィルムの接合のためのプライマーの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムの接合着、特にいわゆるラミネーションにおいて、プライマーは、フィルムと接着剤との間の接着促進剤として用いられる。接着性を向上させることに加えて、プライマー層は、一方では、プラスチックフィルムと接着剤との間の可塑剤バリアとして働き、他方では、フィルムロールにおけるプラスチックフィルムの前面と後面との間のブロッキング(亀裂)を回避するためのものである。この場合、溶媒をベースとする系と水をベースとする系の両方が知られている。
【0003】
公知の、特に水をベースとする系の本質的な欠点は、プラスチックフィルム上のプライマー層の接着性と伸縮性とが不満足であることが多いことである。特に、フィルムがプライマーでプレコーティングされる用途、ならびに成形部品および成型品を例えば真空付加絞りによってラミネートする用途において、この不満足な接着性によって、プライマー層のかなりのクラッキングが何度も引き起こされる。プライマーにクラック(ひび割れ)が生じた時点、あるいはフィルムから剥がれた時点で、プラスチック、とりわけフォームフィルム中ではクラックが広がる。これらのクラックがフィルムの後面で発生する一方、フィルムの視認可能な面上でもコントラスト像(光学的品質の損失)として証拠付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第10000656号
【特許文献2】国際公開第01/34559号パンフレット
【特許文献3】独国特許出願公開第19521500号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、プラスチックフィルムの接合のためのプライマー組成物であって、従来技術の欠点を克服し、プラスチックフィルム内で改良された接着性および伸縮性を示すプライマー組成物を入手可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚くべきことに、請求項1において定義したプライマー組成物が、この目的を達成することが見出された。式(I)の化合物を、プラスチックフィルムの接合のためのプライマー組成物において使用すると、接着性の向上と、プラスチックフィルム上のプライマーの高い伸縮能力とがもたらされ、これにより、プラスチックフィルムの接合時のプライマー層のクラッキングが回避される。結果として、例えば、成形部品および成型品のラミネーション時に、ラミネートされた部品および成型品の光学的な外観を損なうコントラスト像が回避される。
【0007】
加えて、本発明のプライマー組成物は、プラスチックフィルムに適用可能であり、フィルムが貯蔵のために巻かれた状態から広げられた場合に、フィルムロールの前面と後面との間のブロッキングがほんのわずかであるという利点を有する。
【0008】
本発明の他の側面は、さらなる独立クレームの主題である。本発明のとりわけ好ましい実施態様は、従属請求項の主題である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、プライマー組成物Zの使用に関する。このプライマー組成物Zは、少なくとも、
a)式(I):
【化1】

(式中、R基は、2〜15個のC原子を有し、任意選択でヘテロ原子を有していてもよいn価の脂肪族炭化水素基を表し、
基は、水素原子またはメチル基を表し、
nは2〜4の値を表す)
の化合物の1つと、
b)少なくとも1個の求核性官能基を有する少なくとも1種のポリマーPと
を含む。
【0010】
本明細書において、「ポリ」で始まる物質名、例えば、ポリオールまたはポリイソシアネートは、その名称に含まれる官能基を形式的に1分子当たり2個以上有する物質を指す。
【0011】
本明細書において、用語「ポリマー」は、一方では、化学的に均一であるが、重合度、分子量、および鎖長については異なる巨大分子の集合体であって、ポリ反応(重合、重付加、重縮合)によって製造される集合体を包含する。この用語「ポリマー」は、他方では、このようなポリ反応からの巨大分子の集合体の誘導体、すなわち、例えば、特定の巨大分子上の官能基の付加反応または置換反応によって得られる化合物であって、化学的に均一であっても化学的に不均一であってもよいものも包含する。加えて、この用語は、いわゆるプレポリマー、すなわちその官能基が巨大分子の生成に関与する反応性オリゴマー性プレポリマーも包含する。
【0012】
用語「ポリウレタンポリマー」は、いわゆるジイソシアネート-ポリ付加法によって製造される全てのポリマーを包含する。これには、ウレタン基をほとんどまたは完全に含まない全てのポリマーが包含される。ポリウレタンポリマーの例は、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレア、ポリウレア、ポリエステルポリウレア、ポリイソシアヌレート、およびポリカルボジイミドである。
【0013】
特に、可撓性の、0.05〜5mmの厚さの大面積プラスチックは、「プラスチックフィルム」として定義され、これは巻き取ることができる。したがって、この用語は、厳密な意味において1mm未満の厚さである「フィルム」に加えて、トンネル、屋根、又はスイミングプールをシールするために典型的に用いられる、典型的には1〜3mmの厚さ、特別な場合には5mmまでの厚さを有するシーリングストリップをも定義する。このようなポリマーフィルムは、通常、コーティング、注型、カレンダー加工、又は押出しによって製造され、典型的には、ロールで市販され、あるいはその場所で製造される。これらは単一層にも多層にも作製することができる。
【0014】
用語「プライマー」は、当業者に知られている用語であり、本明細書では、典型的には1mmより薄い、特に1〜200μm、好ましくは1〜100μmの薄層であって、基材の表面に塗布されるものである。必要に応じて、このプライマーを、フラッシュオフ(表面乾燥)後に接着剤と接触させる。このプライマーによって、接着剤の基材への接着性の改良がもたらされる。
【0015】
本明細書を通じて、「フラッシュオフ」は、適用後のプライマー組成物の乾燥として定義され、これによって、溶媒または分散剤は、完全にまたは少なくとも大部分蒸発する。
「揮発性有機化合物」(VOCとも言う)は、本明細書において、常圧で250℃未満の沸点を有するかまたは20℃で0.1mbarより高い蒸気圧を有する有機化合物として定義される。
【0016】
23℃の温度を、「室温」と呼ぶ。
【0017】
式(I)の化合物において、R基は、好ましくは、ポリオールがエステル化されたかまたは部分的にエステル化された基を表す。このポリオールは、グリセロール、1,1,1-トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、1,1,1-トリメチロールプロパン、およびジ(トリメチロールプロパン)からなる群から特に選択される。
【0018】
Rが、ポリオールが完全にエステル化された基を表す場合、特に、以下の群から選択される基に相当する。
【化2】

【0019】
本明細書の式中の点線は、各場合において、各置換基とそれに関連する分子基との間の結合を表す。
【0020】
nは、好ましくは3の値を表し、R基は、式(II)または式(III)の基を表す。
【化3】

【0021】
とりわけ好ましい式(I)の化合物は、トリメチロールプロパン-トリス((2-メチル)アジリジン-1-イル)-プロピオネート、トリメチロールプロパン-トリス-3-(アジリジン-1-イル)プロピオネート、およびペンタエリスリトール-トリス-3-(アジリジン-1-イル)プロピオネートからなる群から選択される。
【0022】
このような式(I)の化合物は、例えば、Bayer Material Science LLC社(米国)から、商標名XAMA(登録商標)2、XAMA(登録商標)7、およびXAMA(登録商標)220の下で、あるいは、Nippon ShokubaiCO.,LTD.社(日本)から商標名Chemitite(登録商標)PZの下で商業的に入手可能である。
【0023】
式(I)の化合物は、例えば、メチル-3-(2-メチルアジリジン-1-イル)プロピオネートまたはメチル-3-(アジリジン-1-イル)プロピオネートと式(IV)のポリオールとの、触媒、特に三級アミン、チタニウム(IV)化合物もしくはスズ(IV)化合物を用いる再エステル化から製造することができる。
【化4】

【0024】
例えば、式(I)の化合物は、2-メチルアジリジンもしくはアジリジンの式(V)の化合物へのマイケル付加によって製造することもできる。
【化5】

【0025】
式(IV)の化合物および式(V)の化合物におけるR基およびnの値は、既に上述したとおりである。
【0026】
式(I)の化合物の割合は、プライマー組成物Zの全質量に対して、好ましくは0.1質量%〜3質量%、特に0.2質量%〜2質量%、好ましくは0.3質量%〜0.7質量%である。
【0027】
ポリマーPは、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホネート基、およびホスホネート基からなる群から特に選択される求核性官能基を少なくとも1個有する。
【0028】
ポリマーPは、好ましくはポリウレタンPUR、特にポリエステルポリウレタン、またはポリ(メタ)アクリレートPACである。
【0029】
少なくとも1個の求核性基を有するポリウレタンPURは、少なくとも1種のポリイソシアネート、少なくとも1種のポリオール、ならびに、イソシアネート基またはイソシアネート基と比較して反応性の基を少なくとも1個有し、少なくとも1個の求核性官能基をさらに有する少なくとも1種のモノマーM1から特に製造することができる。
【0030】
ポリイソシアネートとして、商業的に入手可能な脂肪族、環式脂肪族、または芳香族ポリイソシアネート、特にジイソシアネートを使用することができる。
【0031】
ポリオールとしては、特に、ポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオール、好ましくはポリエステルジオールまたはポリエーテルジオールが好適である。加えて、低分子量二価または多価アルコール、例えば、1,2-エタンジオール、1,3-および1,4-ブタンジオール、1,2-および1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、異性体ジプロピレングリコール類、ジプロピレングリコール、およびトリプロピレングリコール、異性体ペンタンジオール類、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ウンデカンジオール、1,3-および1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、二量体脂肪族アルコール類、1,1,1-トリメチロールエタン、1,1,1-トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、糖アルコール(例えば、キシリトール、ソルビトール、もしくはマンニトールなど)、糖類(例えば、サッカロースなど)、他の多価アルコール、前述の二価および多価アルコールの低分子量アルコキシル化生成物、ならびに前述のアルコールの混合物が好適である。
【0032】
好適なモノマーM1は、好ましくは、少なくとも1個のカルボキシル基および/または1個のスルホネート基を有する。好ましくは、モノマーM1は、アミノカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、特にジヒドロキシアルキルカルボン酸であり、例えば、ジメチロールプロピオン酸またはこれに構造が類似したジオールカルボン酸、またはNCOに対して反応性の基を有するスルホン酸(例えば、ジヒドロキシスルホン酸など)である。スルホネート基を有するモノマーM1は、好ましくは、N-(2-アミノエチル)-2-アミノエタンスルホン酸のナトリウム塩である。
【0033】
特に好適なポリウレタンは、その内容を本明細書に参照として組み込む独国特許出願公開第10000656号もしくは国際公開第01/34559号パンフレットに、「ポリマー(PII)」として記載され、あるいは独国特許出願公開第19521500号に「ポリウレタン」として記述されているものであることが明らかとなった。
【0034】
少なくとも1個の求核性基を有するポリ(メタ)アクリレートPACは、少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマー、ならびに、この(メタ)アクリレートモノマーと重合可能であり、少なくとも1個の求核性官能基を有する少なくとも1種のモノマーM2から特に製造することができる。例えば、このようなポリ(メタ)アクリレートは、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、およびブタンジオールジ(メタ)アクリレートからなる群から特に選択される少なくとも1種の(メタ)アクリレートモノマーと、少なくとも1種の不飽和カルボン酸〔特に、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸など〕、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリルアミドまたは(メタ)アクリル酸エステル〔特に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば、ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)、ヒドロキシブチルメタアクリレート(HBMA)、ヒドロキシプロピルアクリレート(HPA)、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、もしくはヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)〕とからなるコポリマー、またはポリオール(好ましくは、グリセリンまたはトリメチロールプロパン)と(メタ)アクリル酸との部分エステルからなるコポリマーである。
【0035】
プライマー組成物Zは、好ましくは水性ポリマー分散液であり、これによってポリマーPは固体として存在し、ポリマーPの割合は、好ましくは、プライマー組成物Zの全質量に対して15質量%〜55質量%、特に25質量%〜50質量%、好ましくは35質量%〜45質量%である。
【0036】
この場合において、水性ポリマー分散液は、特に、各場合において既に前述したように、少なくとも1種のポリウレタンPURを含む水性ポリマー分散液と、少なくとも1種のポリ(メタ)アクリレートPACを含むポリ(メタ)アクリレート分散液とからなる混合物である。
【0037】
水性ポリウレタン分散液の割合は、好ましくは、プライマー組成物Zの全質量に対して10質量%〜50質量%、特に20質量%〜40質量%、好ましくは33質量%〜36質量%である。この場合において、水性ポリウレタン分散液の固形分(すなわち、ポリウレタンPURの割合)は、水性ポリウレタン分散液の全質量に対して35質量%〜55質量%、特に40質量%〜50質量%、好ましくは44質量%〜56質量%である。
【0038】
水性ポリ(メタ)アクリレート分散液の割合は、好ましくは、プライマー組成物Zの全質量に対して40質量%〜80質量%、特に50質量%〜70質量%、好ましくは60質量%〜66質量%である。水性ポリ(メタ)アクリレート分散液の固形分(すなわち、ポリ(メタ)アクリレートPACの割合)は、水性ポリ(メタ)アクリレート分散液の全質量に対して30質量%〜50質量%、特に35質量%〜40質量%、好ましくは37質量%〜38質量%である。
【0039】
好ましくは、プライマー組成物Zは、2成分形組成物であり、この場合において2つの成分AおよびBは、適用時まで互いに別々に貯蔵され、適用の直前に互いに混合される。典型的には、第一成分Aが少なくともポリマーPを含有し、第二成分Bが少なくとも式(I)の化合物を含有する。
【0040】
加えて、プライマー組成物Zは、他の成分を含むこともできる。他の成分は、特に、安定剤、乳化剤、増粘剤、溶媒、レオロジー添加剤、防腐剤、酸化防止剤、殺生物剤、防カビ剤、顔料、染料、湿潤剤、消泡剤、艶消し剤、中和剤、および充填剤からなる群から選択される。
【0041】
この場合、当業者であれば当然に、プライマー組成物の1つの成分に含める追加の成分を、それらの成分が共に反応して、それらの成分の貯蔵寿命が損なわれることにならないように選択すべきことは明らかである。
【0042】
プライマー組成物Zが水性ポリマー分散液である場合、原則として、通常水性分散液に用いられる安定剤が好適である。しかし、湿潤剤、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ならびにこれらの混合物を使用すると、ポリマー分散液の貯蔵寿命が明らかに向上することが明らかとなった。
【0043】
加えて、プライマー組成物Zは、常圧で250℃未満の沸点を有するかまたは20℃で0.1mbarより高い蒸気圧を有する有機化合物(上述したVOC)を、プライマー組成物Zの全質量に対して、5質量%未満、特に0質量%〜2質量%、好ましくは0質量%〜1質量%の、主として好ましくは0質量%含む。このことは、特に、生態学、健康、および安全の観点から非常に有利である。
【0044】
特に、本発明は、分散液接着剤のためのプライマーとして前述したように、プライマー組成物Zの使用を包含する。
【0045】
前述したプライマー組成物Zの使用は、プラスチックフィルムのコーティングおよび接合のためのプライマーとして好適である。このプラスチックフィルムは、熱可塑性プラスチック、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、特に軟質PVC、エチレン/酢酸ビニルコポリマー(EVA)、または熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、アクリロニトリル/スチレン/アクリル酸エステルコポリマー(ASA)、ポリウレタン(PUR)、ポリアミド(PA)、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、またはこれらのプラスチックアロイから製造される。
【0046】
PVCフィルム、特にPVCフォームフィルムが、とりわけ好ましいと考えられる。
【0047】
プライマー組成物Zは、成形部品および成形品のラミネート、特に真空深絞り成形のために用いられるプラスチックフィルムに最も好適である。
【0048】
プライマー組成物Zの適用は、タオル、フェルト、ローラー、スポンジ、塗料刷毛、ドクターナイフ、スプレー、塗布、ローラー塗装、注型塗装、スタンピング、ディップコーティングなどを使用することによって行うことができ、手動によってもロボットによっても行うことができる。
【0049】
別の実施態様では、本発明は、2つの基材S1およびS2を接合させる方法を含む。この方法は、
(i)上述の記載によるプライマー組成物Zを、接合されるべき基材S1上に適用する工程;
(ii)接着剤を、基材S1上に置かれた前記プライマー組成物Zに適用する工程;
(iii)前記接着剤を、第2の基材S2と接触させる工程
を含むか、あるいは
(i')上述の記載によるプライマー組成物Zを、接合されるべき基材S1上に適用する工程;
(ii’)接着剤を、基材S2上に適用する工程;
(iii’)前記接着剤を、基材S1上に置かれた前記プライマー組成物Zと接触させる工程
を含むか、あるいは
(i’’)上述の記載によるプライマー組成物Zを、接合されるべき基材S1上に適用する工程;
(ii’’)接着剤を、基材S1上に置かれた前記プライマー組成物Z上に適用する工程;
(ii’’)接着剤を、基材S2上に適用する工程;
(iii’’)基材S1上に置かれた前記プライマー組成物Z上の前記接着剤を、基材S2上に置かれた前記接着剤と接触させる工程
を含む。
【0050】
この場合、前述したように、基材S1およびS2の少なくとも1つは、プラスチックフィルムである。
【0051】
プライマー組成物Zの適用後であって接着剤の適用前に、必要に応じて、プライマー組成物Zのフラッシュオフを行って、気泡を有するプライマー組成物および/または少なくとも部分的に架橋したプライマー組成物を形成させることができる。
【0052】
加えて、本発明は、プライマー組成物Zでコーティングされたプラスチックフィルムの製造方法であって、
(i’’’)上述の記載によるプライマー組成物Zを、プラスチックフィルム上に適用する工程;
(ii’’’)前記プライマー組成物Zのフラッシュオフを行って、気泡を含んだプライマー組成物および/または少なくとも部分的に架橋したプライマー組成物を形成させる工程
を含む、方法に関する。
【0053】
フラッシュオフは、通気手段なしで、あるいは通気手段を用いて空気蒸発させることによって実施することができる。通気手段としては、たとえば、ベローズ、特にエアベローズを使用することができる。通気手段を好ましくは使用する。フラッシュオフは、室温または高温で、特に150℃未満の温度で実施することができる。フラッシュオフは、低温で行うことが好ましい。
【0054】
したがって、本発明は、上述したように、上述したプライマー組成物Z、および/または発泡したプライマー組成物、および/または少なくとも部分的に架橋したプライマー組成物でコーティングされたプラスチックフィルムも包含する。
【0055】
こうして製造された、プライマー組成物Zでコーティングされたプラスチックフィルムは、必要に応じて、適切な長さに切り、斜角をつけ、巻き取るか、あるいは直接さらに加工することができる。コーティングされたプラスチックフィルムのロールは、必要に応じて、貯蔵または輸送することができる。プライマー組成物Zでコーティングされている記述したプラスチックフィルムの重要な利点は、長期の貯蔵または輸送後でさえ巻き取ったフィルムの接合が全く起こらないため、剥離紙インターリーフを使用することなく巻き取ることができることである。当業者であれば、剥離紙の中間層を使用する特定の条件下でもなお有利であり得ることは明らかである。プラスチックフィルムは、例えば、フィルム製造業者によってコーティングされ、長期間にわたって貯蔵され、必要に応じて製造現場に輸送された後、このプレコーティングされたフィルムにキャリアを結合することができる。コーティングと加工と間の期間がこのように長いにもかかわらず、完璧な接合が確保され得る。したがって、この利点は、産業界、特に、製造において「コンベヤベルトから供給業者への移行」が目立ったトレンドとなっている自動車製造業においてとりわけ重要である。このトレンドは、例えば車体ドアの直接供給業者と、その供給業者である例えば装飾材料の供給業者との間にも部分的に続いている。
【0056】
別の側面では、本発明は、プライマー組成物Zでコーティングされたプラスチックフィルムの使用であって、例えば、前述した車体内装部品、とりわけインストルメントパネル、ドアサイドパネルカバー、センターコンソール、シートカバーなどをラミネートするための使用なども包含する。
【0057】
この場合、典型的には、プラスチックフィルムを、真空深絞り法またはプレスラミネーション法によって基材上に適用する。
【0058】
真空深絞り法では、プライマー組成物でコーティングされたプラスチックフィルム、特に、空気不透過性材料からなる装飾用フィルムを、フレーム内で気密な状態で延伸し、加熱する。この状態で、フィルムを、ラミネートされるべき成形用型または部品の上または中にやはり気密に置かれているハウジング上に接合させる。この成形用型または部品を、接着剤、とりわけ分散液接着剤でコーティングし、必要に応じて曝気する。このデバイスから空気を吸引すると、プラスチックフィルムが基底にある部品にぴったりと密着して、大気圧下でその表面に圧着する。
【0059】
プレスラミネーション法では、プライマー組成物でコーティングされたプラスチックフィルムは、真空深絞り法とは異なって空気不透過性である必要がないのみならず、むしろ開孔物質、例えばPVCフォームからなっていることができ、ラミネートされるべき成形用型または部品に、溶融または圧縮によって接合することができる。プレスラミネーション法では、接着剤を、ラミネートされるべき成形用型または部品上にも適用し、必要に応じてプラスチックフィルム上にも適用する。
【実施例】
【0060】
[プライマー組成物の製造]
プライマー組成物の成分A’として、水性ポリウレタン分散液DPUR、水性ポリ(メタ)アクリレート分散液DPAC、およびレオロジー添加剤(Borchi(登録商標)Gel L 75N、Borchers GmbH社(独国)から商業的に入手可能)を含む組成物を、表1に示した質量割合で一緒に混合したものを、本発明による実施例1と比較実施例2との両方で用いた。
【0061】
固形分約45質量%、約7のpH、(DIN EN ISO 3219に準拠して剪断速度250秒-1で測定して)室温で50〜180mPa・秒の粘度、および1.06g/cmの密度を有する水性陰イオン性ポリエステルポリウレタン分散液を、水性ポリウレタン分散液DPURとして用いた。
【0062】
固形分約37質量%、約10のpH、(DIN EN ISO 3219に準拠して剪断速度250秒-1で測定して)室温で約30mPa・秒の粘度、および1.03g/cmの密度を有する水性陰イオン性ポリ(メタ)アクリレート分散液を、水性ポリ(メタ)アクリレート分散液DPACとして用いた。
【0063】
水乳化性イソシアネート(Desmodur(登録商標)DN、Bayer MaterialScience社(独国)から商業的に入手可能)を、比較実施例2のための成分B’として用いた。トリメチロールプロパン-トリス-3-(1-アジリジノプロピオネート)を、本発明による実施例1の成分B’として用いた。
【0064】
使用前に、それぞれの成分A’およびB’を、表1に示した質量割合にしたがって一緒に混合した。
【0065】
[測定方法の説明]
クラッキング(亀裂)試験:引張試験
それぞれのプライマー組成物を、ドクターナイフを使用して、PVCフォームフィルム上に60μmの厚さの層に塗布した。このフィルムを、オーブン内で120℃の温度にて1分間乾燥した後、室温で24時間貯蔵した。その後、フィルムを細長いひも状に切り、130℃、50mm/分の引張り速度、および100%の最大引張長さでの引張試験にかけた。引張試験の後、プライマー組成物でコーティングされたフィルム面上で亀裂を評価した。このプライマー層中の亀裂は、視認により評価した。
【0066】
クラッキング(亀裂)試験:深絞り試験
深絞り中のプライマー層内のクラッキングを測定するための第一の試験では、それぞれ実施例1および2(比較)によるプライマー組成物でコーティングされたプラスチックフィルム各1個を、150℃の温度に加熱した後、漏斗の上部の大きな開口部上にかけた。漏斗の下部の開口部(すなわち細長い首部分)に真空を適用し、これによってプラスチックフィルムを深絞りした。プライマー層中の亀裂を、視認によって評価した。
【0067】
第二の深絞り試験では、それぞれ実施例1および2(比較)によるプライマー組成物でコーティングされたプラスチックフィルム各1個を、150℃の温度に加熱した後、接着剤分散液でコーティングしたアクリロニトリル/ブタジエン/スチレンの試験片上に深絞りした。クラッキングを、フィルムの表面上のコントラスト像に基づいて、視認により評価した。
【0068】
プライマーの剥離強度(ブロッキング強度)試験
上述した方法によって、5×10cmの寸法のテストストリップを製作し、フィルムの前面と後面が互いに接触するように互いに置いた。これらの試料に2.5kgの材料の荷重をかけ、この状態で、乾燥用オーブン中、80℃の温度で24時間貯蔵した。試料を室温に冷却した後、フィルムの分離力および剥離強度を、室温および引張速度200mm/分でのT-剥離試験(180°剥離試験)で測定した。
【0069】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)式(I):
【化1】

(式中、R基は、2〜15個のC原子を有し、任意選択でヘテロ原子を有していてもよいn価の脂肪族炭化水素基を表し、
基は、水素原子またはメチル基を表し、
nは2〜4の値を表す)
の化合物の1つと、
b)少なくとも1個の求核性官能基を有する少なくとも1種のポリマーPと
を少なくとも含むプライマー組成物Zの、プラスチックフィルムのコーティングおよび接合のためのプライマーとしての使用。
【請求項2】
R基が、ポリオールがエステル化されたかまたは部分的にエステル化された基を表し、
前記ポリオールが、グリセロール、1,1,1-トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、1,1,1-トリメチロールプロパン、およびジ(トリメチロールプロパン)からなる群から特に選択されることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
式(I)の化合物が、トリメチロールプロパン-トリス(1-(2-メチル)アジリジノ)-プロピオネート、トリメチロールプロパン-トリス-3-(1-アジリジノプロピオネート)、およびペンタエリスリトール-トリス-3-(-アジリジノプロピオネート)からなる群から選択される、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
式(I)の化合物の割合が、プライマー組成物Zの全質量に対して、0.1質量%〜3質量%、特に0.2質量%〜2質量%、好ましくは0.3質量%〜0.7質量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
ポリマーPが、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホネート基、およびホスフェート基からなる群から選択される少なくとも1個の求核性官能基を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
ポリマーPが、ポリウレタン、特にポリエステルポリウレタン、またはポリ(メタ)アクリレートである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
プライマー組成物Zが、水性ポリマー分散液であり、ポリマーPが固体として存在する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
ポリマーPの割合が、プライマー組成物Zの全質量に対して、15質量%〜55質量%、特に25質量%〜50質量%、好ましくは35質量%〜45質量%である、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記水性ポリマー分散液が、水性ポリウレタン分散液と水性ポリ(メタ)アクリレート分散液とからなる混合物を含む、請求項7または8に記載の使用。
【請求項10】
前記水性ポリウレタン分散液の割合が、プライマー組成物Zの全質量に対して10質量%〜50質量%、特に20質量%〜40質量%、好ましくは33質量%〜36質量%であり、前記水性ポリ(メタ)アクリレート分散液の割合が、プライマー組成物Zの全質量に対して40質量%〜80質量%、特に50質量%〜70質量%、好ましくは60質量%〜66質量%である、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記水性ポリウレタン分散液の固形分が、前記水性ポリウレタン分散液の全質量に対して35質量%〜55質量%、特に40質量%〜50質量%、好ましくは44質量%〜56質量%である、請求項9または10に記載の使用。
【請求項12】
前記水性ポリ(メタ)アクリレート分散液の固形分が、前記水性ポリ(メタ)アクリレート分散液の全質量に対して30質量%〜50質量%、特に35質量%〜40質量%、好ましくは37質量%〜38質量%である、請求項9〜11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
プライマー組成物Zが、2成分形組成物であって、
第一成分Aが、少なくとも1種のポリマーPを含み、かつ、
第二成分Bが、少なくとも1種の式(I)の化合物を含む
、請求項1〜12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
プライマー組成物Zが、少なくとも1種のレオロジー添加剤をさらに含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
プライマー組成物Zが、常圧で250℃未満の沸点を有するかまたは20℃で0.1mbarより高い蒸気圧を有する有機化合物を、プライマー組成物Zの全質量に対して、5質量%未満、特に0質量%〜2質量%、好ましくは0質量%〜1質量%の、主として好ましくは0質量%含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
前記プラスチックフィルムが、熱可塑性プラスチック、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、特に軟質PVC、エチレン/酢酸ビニルコポリマー(EVA)、または熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、アクリロニトリル/スチレン/アクリル酸エステルコポリマー(ASA)、ポリウレタン(PUR)、ポリアミド(PA)、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、またはこれらのプラスチックアロイから製造される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
前記プラスチックフィルムが、PVCフィルム、特にPVCフォームフィルムである、請求項1〜16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
2つの基材S1およびS2の接合方法であって、
(i)請求項1〜17のいずれか一項の使用において記述したとおりのプライマー組成物Zを、接合されるべき基材S1上に適用する工程;
(ii)接着剤を、基材S1上に置かれた前記プライマー組成物Z上に、適用する工程;
(iii)前記接着剤を、第2の基材S2と接触させる工程
を含むか、あるいは
(i')請求項1〜17のいずれか一項の使用において記述したとおりのプライマー組成物Zを、接合されるべき基材S1上に適用する工程;
(ii’)接着剤を、基材S2上に適用する工程;
(iii’)前記接着剤を、基材S1上に置かれた前記プライマー組成物Zと接触させる工程
を含むか、あるいは
(i’’)請求項1〜17のいずれか一項の使用において記述したとおりのプライマー組成物Zを、接合されるべき基材S1上に適用する工程;
(ii’’)接着剤を、基材S1上に置かれた前記プライマー組成物Z上に適用する工程;
(ii’’)接着剤を、基材S2上に適用する工程;
(iii’’)基材S1上に置かれた前記プライマー組成物Z上の前記接着剤を、基材S2上に置かれた前記接着剤と接触させる工程
を含み、基材S1およびS2の少なくとも1つがプラスチックフィルムである、接合方法。
【請求項19】
プライマー組成物Zの適用後であって接着剤の適用前に、プライマー組成物Zのフラッシュオフを行って、気泡を有するプライマー組成物および/または少なくとも部分的に架橋したプライマー組成物を形成させる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
基材S1およびS2の少なくとも1つが、熱可塑性プラスチック、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、特に軟質PVC、エチレン/酢酸ビニルコポリマー(EVA)、または熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、アクリロニトリル/スチレン/アクリル酸エステルコポリマー(ASA)、ポリウレタン(PUR)、ポリアミド(PA)、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、またはこれらのプラスチックアロイから製造されるプラスチックフィルムである、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記プラスチックフィルムが、PVCフィルム、特にPVCフォームフィルムである、請求項18〜20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
プライマー組成物Zでコーティングされたプラスチックフィルムの製造方法であって、
(i’’’)請求項1〜17のいずれか一項の使用において記述したとおりのプライマー組成物Zを、プラスチックフィルム上に適用する工程;
(ii’’’)前記プライマー組成物Zのフラッシュオフを行って、気泡を含んだプライマー組成物および/または少なくとも部分的に架橋したプライマー組成物を形成させる工程
を含む、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法によって製造したプラスチックフィルム。
【請求項24】
熱可塑性プラスチック、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、特に軟質PVC、エチレン/酢酸ビニルコポリマー(EVA)、または熱可塑性ポリオレフィン(TPO)、アクリロニトリル/スチレン/アクリル酸エステルコポリマー(ASA)、ポリウレタン(PUR)、ポリアミド(PA)、ポリ(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、またはこれらのプラスチックアロイから製造される、請求項23に記載のプラスチックフィルム。
【請求項25】
PVCフィルム、特にPVCフォームフィルムである、請求項23に記載のプラスチックフィルム。
【請求項26】
乗り物の内装部品、特にインストラメントパネル、ドアサイドパネルカバー、センターコンソール、シートカバーなどをラミネートするための、請求項23〜25のいずれか一項に記載のプラスチックフィルム。

【公表番号】特表2011−504957(P2011−504957A)
【公表日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535398(P2010−535398)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【国際出願番号】PCT/EP2008/066464
【国際公開番号】WO2009/068664
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】