説明

接着方法及び印刷装置

【課題】インクジェットプリンターを用いて媒体の接着を行う際に、接着部が一度開封さ
れると、開封されたことが明確に分かるような接着方法を提供する
【解決手段】印刷装置のヘッド部からインクを噴出することにより、透明な媒体上に画像
を形成することと、光が照射されると硬化する接着剤により、接着剤噴出面を形成するこ
とと、印刷装置の照射部から前記接着剤噴出面に光を照射することと、前記接着剤噴出面
に光が照射されることによって形成される接着面を挟んで、前記画像が形成された媒体と
被接着媒体とが接着されることと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着方法及び印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノズルから液体を噴出させ、印刷を行うインクジェットプリンターが広く普及している
。インクジェットプリンターは、媒体上の任意の位置に、任意の形状の印刷面を形成する
ことができるため、インクの代わりにノズルから接着剤を噴出することで接着面を形成し
、媒体を接着することが考えられる。そこで、接着剤噴出ヘッドを設けたインクジェット
プリンターから紫外線硬化型の接着剤を媒体上に噴出し、該接着剤が塗布された媒体に紫
外線を照射して接着剤を硬化させ、接着面を形成することで、媒体を接着する方法が提案
されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−187269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の方法によれば、インクジェットプリンターを用いて封筒の「のりしろ」と
なる領域に紫外線硬化型の接着剤を噴出した後で、該領域に紫外線を照射して接着剤を硬
化させ、接着面を形成することで封筒の封緘をすることができる。
【0005】
しかし、そのようにして封緘された封筒は、一度開封した場合でも、再度封をして元の
状態に戻してしまえば、開封されたものか否かの判断ができなくなるため、情報の守秘や
安全の点で問題となる。
【0006】
本発明では、インクジェットプリンターを用いて媒体の接着を行う際に、接着部が一度
開封されると、開封されたことが明確に分かるような接着方法を提供することを目的とし
ている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための主たる発明は、
印刷装置のヘッド部からインクを噴出することにより、透明な媒体上に画像を形成する
ことと、
光が照射されると硬化する接着剤により、接着剤噴出面を形成することと、
印刷装置の照射部から前記接着剤噴出面に光を照射することと、
前記接着剤噴出面に光が照射されることによって形成される接着面を挟んで、前記画像
が形成された媒体と被接着媒体とが接着されることと、
を有する接着方法である。
【0008】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】印刷システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】図2Aはプリンターのローラー式搬送ユニットを説明する図である。図2Bはベルト式搬送ユニットを説明する図である。
【図3】図3Aは、本実施形態のプリンターの構成を説明する図である。図3Bは、本実施形態のプリンターの構成を説明する側面図である。
【図4】ヘッドの構造を説明するための断面図である。
【図5】長方形の媒体に形成される接着面を説明するための図である。
【図6A】媒体を封緘した際の接着面の断面構造を表す図である。
【図6B】展開封筒を封緘した際の接着面の断面構造を表す図である。
【図7】展開封筒を印刷する場合に形成される接着面を説明する図である。
【図8】展開封筒を封緘した際の接着面の様子を示す図である。
【図9】展開封筒を封緘した際の接着面を剥がした場合の様子を示す図である。
【図10】展開封筒を印刷する場合に形成される接着面の変形例である。
【図11A】図10の展開封筒を封緘した際の接着面の断面構造を表す図である。
【図11B】図10の展開封筒を封緘した際の接着面の様子を示す図である。
【図12】図10の展開封筒を封緘した際の接着面を剥がした場合の様子を示す図である。
【図13】インターフェース画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0011】
印刷装置のヘッド部からインクを噴出することにより、透明な媒体上に画像を形成する
ことと、光が照射されると硬化する接着剤により、接着剤噴出面を形成することと、印刷
装置の照射部から前記接着剤噴出面に光を照射することと、前記接着剤噴出面に光が照射
されることによって形成される接着面を挟んで、前記画像が形成された媒体と被接着媒体
とが接着されることと、を有する接着方法。
このような接着方法によれば、インクジェットプリンターを用いて媒体の接着を行う際
に、接着部が一度開封されると、開封されたことが明確に分かるような接着を行うことが
できる。
【0012】
かかる接着方法であって、前記媒体を折り曲げて、該媒体同士の接着を行う場合に、前
記接着剤噴出面が、前記ヘッド部のうち前記インクを噴出したものとは異なるノズルから
、前記媒体の折り曲げ線を挟んで前記画像と対称となる領域に前記接着剤を噴出すること
により形成され、前記媒体を折り曲げて、前記画像と前記接着面とを密着させることが望
ましい。
このような接着方法によれば、画像と接着面とをそれぞれ、接着する際に対向するよう
な位置関係に形成することで、画像部分を確実に接着し、接着後に剥がすと画像が壊れる
ような印刷を行うことができる。
【0013】
かかる接着方法であって、前記接着剤噴出面及び前記画像が複数形成され、接着面と画
像とがそれぞれが隣り合う位置に形成されることが望ましい。
このような接着方法によれば、画像部分が細かく、多数印字されるため、壊された画像
を同時にすべて元の状態に戻すことは難しくなり、封筒が開封されたか否かの判断がより
明確に分かるようになる。
【0014】
かかる接着方法であって、前記接着剤噴出面を形成する領域、及び、前記画像を形成す
る領域が、印刷装置制御部のユーザーインターフェース画面を介してユーザーに設定され
ることが望ましい。
このような接着方法によれば、媒体上の任意の領域に画像及び接着面を形成することが
できる。
【0015】
かかる接着方法であって、ユーザーが前記媒体上に前記接着剤噴出面を形成する領域、
または、前記画像を形成する領域を設定すると、前記印刷装置制御部は、前記媒体の折り
曲げ線を挟んで対称となる位置に、前記画像を形成する領域、または、前記接着剤噴出面
を形成する領域を設定することが望ましい。
このような接着方法によれば、媒体を折り曲げて接着する際に、確認用の画像と接着面
とが必ず対向する位置関係となり、確認用の画像を確実に接着面に接着することができる

【0016】
かかる接着方法であって、前記印刷装置制御部は、前記画像を形成する印刷データを作
成する際に、該画像の鏡像のデータを作成することが望ましい。
このような接着方法によれば、文字を鏡像として印刷することで、封緘時に透明媒体の
裏側から見たときに、文字を正像として視認することができる。
【0017】
かかる接着方法であって、前記接着剤噴出面が、前記ヘッド部のうち前記インクを噴出
したものとは異なるノズルから、媒体上に形成された前記画像の上に前記接着剤を噴出す
ることによって形成されることが望ましい。
このような接着方法によれば、形成された画像の上に直接接着面を形成することができ
るため、画像と接着面との位置関係がずれないように形成することができる。
【0018】
また、(A)光を照射すると硬化するインク、及び、光を照射すると硬化するインクを
噴出するヘッド部と、(B)光を照射する照射部と、(C)前記ヘッド部から光が照射さ
れると硬化するインクを噴出させて透明な媒体上に画像を形成し、前記ヘッド部から光が
照射されると硬化する接着剤を噴出させて透明な媒体上に接着剤噴出面を形成し、前記照
射部から前記接着剤噴出面に光を照射させて接着面を形成する制御部と、を備える印刷装
置が明らかとなる。
【0019】
===印刷装置の基本的構成===
発明を実施するための印刷装置の形態として、インクジェットプリンター(プリンター
1)を例に挙げて説明する。
【0020】
<プリンター1の構成>
図1は、プリンター1の全体構成を示すブロック図である。
プリンター1は、紙・布・フィルム等の媒体に文字や画像を記録(印刷)する液体噴出
装置であり、外部装置であるコンピューター110と通信可能に接続されている。
【0021】
コンピューター110にはプリンタードライバーがインストールされている。プリンタ
ードライバーは、表示装置(不図示)にユーザーインターフェースを表示させ、アプリケ
ーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換させるためのプログラ
ムである。このプリンタードライバーは、フレキシブルディスクFDやCD−ROMなど
の記録媒体(コンピューターが読み取り可能な記録媒体)に記録されている。また、プリ
ンタードライバーはインターネットを介してコンピューター110にダウンロードするこ
とも可能である。なお、このプログラムは、各種の機能を実現するためのコードから構成
されている。
コンピューター110はプリンター1に画像を印刷させるため、印刷させる画像に応じ
た印刷データをプリンター1に出力する。
【0022】
プリンター1は、搬送ユニット10と、キャリッジユニット20と、ヘッドユニット3
0と、照射ユニット40と、検出器群50と、コントローラー60と、を有する。コント
ローラー60は、外部装置であるコンピューター110から受信した印刷データに基づい
て各ユニットを制御し、媒体に画像を印刷する。プリンター1内の状況は検出器群50に
よって監視されており、検出器群50は検出結果をコントローラー60に出力する。コン
トローラー60は検出器群50から出力された検出結果に基づいて各ユニットを制御する

【0023】
<搬送ユニット10>
搬送ユニット10は、媒体(例えば紙Sなど)を所定の方向(以下、搬送方向という)
に搬送させるためのものである。ここで、搬送方向はキャリッジの移動方向と交差する方
向である。
【0024】
一般的なインクジェットプリンターでは、図2Aに示されるように、媒体の印刷範囲外
の余白部分を、搬送ローラー13や排紙ローラー15等の上下のローラーで挟み込み、該
ローラーを回転させることで媒体の搬送を行う所謂ローラー搬送タイプの搬送ユニットを
採用しているものが多い。しかし、本実施形態においては、図2Aのようなローラー搬送
タイプの搬送ユニットを使用することは難しい。本実施形態では、媒体の余白部分(通常
ローラーに挟まれる部分)に接着剤が噴出される場合があるため、噴出された該接着剤が
搬送ローラー13や排紙ローラー15の媒体上面側に付着すると、それ以降のスムーズな
媒体の搬送を妨げるおそれが生じるからである。
【0025】
このようなことから、本実施形態においては、搬送ユニット10をベルトを用いた搬送
機構としている。図2Bは、本実施形態のプリンター1の搬送機構の概略を表した図であ
る。図2Bに示すように、ベルト搬送機構は、上流側搬送ローラー16A及び下流側搬送
ローラー16Bと、ベルト17とを有する。不図示の搬送モーターが回転すると、上流側
搬送ローラー16A及び下流側搬送ローラー16Bが回転し、ベルト17が回転する。搬
送中の媒体はベルト17に静電吸着又はバキューム吸着されている。給紙ローラー(不図
示)によって給紙された媒体は、ベルト17によって印刷可能な領域(ヘッドと対向する
領域)まで搬送される。印刷可能な領域を通過した紙Sはベルト17によって外部へ排紙
される。搬送過程を通して、媒体表面(被印刷面)と搬送機構とは機械的に非接触の状態
に保たれるため、媒体上に接着面が形成された後でも、粘着物質が搬送機構に付着すると
いうような問題は生じにくくなる。
【0026】
<キャリッジユニット20>
図3A及び図3Bに、本実施形態のプリンター1の概略図を示す。
キャリッジユニット20は、ヘッドユニット30が取り付けられたキャリッジ21を所
定の方向(以下、移動方向という)に移動(「走査」とも呼ばれる)させるためのもので
ある。キャリッジユニット20は、キャリッジ21と、キャリッジモーター22(CRモ
ーターとも言う)とを有する(図3A及び図3B)。
キャリッジ21は、移動方向に往復移動可能であり、キャリッジモーター22によって
駆動される。キャリッジモーター22の動作はプリンター側のコントローラー60により
制御される。また、キャリッジ21は、インクを収容するインクカートリッジを着脱可能
に保持している。
【0027】
<ヘッドユニット30>
ヘッドユニット30は、紙Sにインクを噴出するためのものである。ヘッドユニット3
0は、複数のノズルを有するヘッド31を備える。このヘッド31はキャリッジ21に設
けられ、キャリッジ21が移動方向に移動すると、ヘッド31も移動方向に移動する。そ
して、ヘッド31が移動方向に移動中にインクを断続的に噴出することによって、移動方
向に沿ったドットライン(ラスタライン)が紙に形成される。
【0028】
図4は、ヘッド31の構造を示した断面図である。ヘッド31は、ケース311と、流
路ユニット312と、ピエゾ素子群PZTとを有する。ケース311はピエゾ素子群PZ
Tを収納し、ケース311の下面に流路ユニット312が接合されている。流路ユニット
312は、流路形成板312aと、弾性板312bと、ノズルプレート412cとを有す
る。流路形成板312aには、圧力室312dとなる溝部、ノズル連通口312eとなる貫
通口、共通インク室312fとなる貫通口、インク供給路312gとなる溝部が形成され
ている。弾性板312bはピエゾ素子PZTの先端が接合されるアイランド部312hを
有する。そして、アイランド部312hの周囲には弾性膜312iによる弾性領域が形成
されている。インクカートリッジに貯留されたインクが、共通インク室312fを介して
、各ノズルNzに対応した圧力室312dに供給される。ノズルプレート312cはノズ
ルNzが形成されたプレートである。画像を印刷するためのカラーインク用ノズル面では
、イエローインクを噴出するイエローノズル列Yと、マゼンタインクを噴出するマゼンタ
ノズル列Mと、シアンインクを噴出するシアンノズル列Cと、ブラックインクを噴出する
ブラックノズル列Kと、が形成されている。各ノズル列では、ノズルNzが搬送方向に所
定間隔Dにて並ぶことによって構成されている。なお、本実施形態のプリンターでは後述
する紫外線硬化型の接着剤(以下、UV接着剤とも呼ぶ)を硬化させるためのUV照射ユ
ニット40を備えているため、画像や文字を印刷するYMCKのカラーインクとして、紫
外線硬化型のインク(以下、UVインクとも呼ぶ)を使用することが可能である。
【0029】
そして、本実施形態では、該カラーインク用ノズル列に加えて、光硬化領域形成用のU
V接着剤噴出ノズル列UVが備えられている。なお、UV接着剤噴出用のヘッドは、目詰
まり防止のために、噴出する液体の性質(濃度、粘度等)に対応して、流路312やノズ
ル径を、カラーインク用ヘッドよりも大き目にしておくことが望ましい。
【0030】
ピエゾ素子群PZTは、櫛歯状の複数のピエゾ素子(駆動素子)を有し、ノズルNzに
対応する数分だけ設けられている。ヘッド制御部HCなどが実装された配線基板(不図示
)によって、ピエゾ素子に駆動信号COMが印加され、駆動信号COMの電位に応じてピ
エゾ素子は上下方向に伸縮する。ピエゾ素子PZTが伸縮すると、アイランド部312h
は圧力室312d側に押されたり、反対方向に引かれたりする。このとき、アイランド部
312h周辺の弾性膜312iが変形し、圧力室312d内の圧力が上昇・下降すること
により、ノズルからインク滴が噴出される。
【0031】
<照射ユニット40>
照射ユニット40は、媒体に着弾したUV接着剤に向けてUVを照射するものである。
媒体上に形成されたUV接着剤のドットからなる光硬化領域は、照射ユニット40からの
UV照射を受けることにより、半硬化状態となり、接着面を形成する。
【0032】
本実施形態のプリンター1では、照射ユニット40として、UV接着剤を半硬化させる
ためのUV照射を行なう半硬化用照射部43を備えている。なお、本実施形態において、
半硬化とは、媒体に着弾したUV接着剤等からなる光硬化領域を半硬化状態まで硬化させ
、粘着性を有する接着面を形成することを言う。図3Bに示されるように、半硬化用照射
部43は、ヘッド31よりも搬送方向下流側に設けられており、移動方向の長さが印刷対
象となる媒体の幅よりも長くなっている。そして、半硬化用照射部43は、移動すること
なく媒体に向けてUVを照射する。この構成により、UV接着剤ドット等によって光硬化
領域が形成された媒体が、搬送ユニット10によって半硬化用照射部43の下まで搬送さ
れると、半硬化用照射部43によるUVの照射を受けるようになっている。
【0033】
なお、本実施形態では、半硬化用照射部43の光源として発光ダイオード(LED:Li
ght Emitting Diode)、または、ランプ(メタルハライドランプ、水銀ランプなど)を用
いることができる。LEDは入力電流の大きさを制御することによって、照射エネルギー
を容易に変更することが可能である。一方、ランプはLEDよりも大きなエネルギーでU
V照射を行うことができるため、光硬化領域の硬化を迅速に進めたい場合等に有効である

【0034】
<検出器群50>
検出器群50は、プリンター1の状況を監視するためのものである。検出器群50には
、リニア式エンコーダ51、ロータリー式エンコーダ52、紙検出センサ53、及び光学
センサ54等が含まれる(図3A及び図3B)。
【0035】
リニア式エンコーダ51は、キャリッジ21の移動方向の位置を検出する。ロータリー
式エンコーダ52は、搬送ローラー16Aまたは16Bの回転量を検出する。紙検出セン
サ53は、給紙中の紙Sの先端の位置を検出する。光学センサ54は、キャリッジ21に
取付けられている発光部と受光部により、対向する位置の紙Sの有無を検出し、例えば、
移動しながら紙の端部の位置を検出し、紙の幅を検出することができる。また、光学セン
サ54は、状況に応じて、紙Sの先端(搬送方向下流側の端部であり、上端ともいう)・
後端(搬送方向上流側の端部であり、下端ともいう)も検出できる。
【0036】
<コントローラー60>
コントローラー60は、プリンターの制御を行うための制御ユニット(制御部)である
。コントローラー60は、インターフェース部61と、CPU62と、メモリ63と、ユ
ニット制御回路64とを有する。
【0037】
インターフェース部61は、外部装置であるコンピューター110とプリンター1との
間でデータの送受信を行う。CPU62は、プリンター1の全体の制御を行うための演算
処理装置である。メモリ63は、CPU62のプログラムを格納する領域や作業領域等を
確保するためのものであり、RAM、EEPROM等の記憶素子によって構成される。そ
して、CPU62は、メモリ63に格納されているプログラムに従って、ユニット制御回
路64を介して搬送ユニット10等の各ユニットを制御する。
【0038】
<プリンタードライバーによる印刷処理について>
プリンタードライバーは、アプリケーションプログラムから画像データを受け取り、プ
リンター1が解釈できる形式の印刷データに変換し、印刷データをプリンターに出力する
。アプリケーションプログラムから画像データを印刷データに変換する際に、プリンター
ドライバーは、解像度変換処理、色変換処理、ハーフトーン処理、ラスタライズ処理、コ
マンド付加処理などを行う。また、プリンタードライバーは、接着面形成のためのアンダ
ーコート層や光硬化領域の設定に関する処理も行う。
【0039】
以下に、画像データから文字等を印字するためにプリンタードライバーが行う各種の処
理について説明する。接着面形成のための処理については後で別途説明する。
【0040】
解像度変換処理は、アプリケーションプログラムから出力された画像データ(テキスト
データ、イメージデータなど)を、媒体に印刷する際の解像度(印刷解像度)に変換する
処理である。例えば、印刷解像度が720×720dpiに指定されている場合、アプリ
ケーションプログラムから受け取ったベクター形式の画像データを720×720dpi
の解像度のビットマップ形式の画像データに変換する。
【0041】
なお、解像度変換処理後の画像データの各画素データは、RGB色空間により表される
各階調(例えば256階調)のRGBデータである。ここで、画素とは、画像を構成する
単位要素であり,この画素が2次元的に並ぶことによって画像が形成される。画素データ
とは、画像を構成する単位要素の印刷データであり、例えば、紙S上に形成されるドット
の階調値などを意味する。
【0042】
色変換処理は、RGBデータをCMYK色空間のデータに変換する処理である。CMY
K色空間の画像データは、プリンターが有するインクの色に対応したデータである。この
色変換処理は、RGBデータの階調値とCMYKデータの階調値とを対応づけたテーブル
(色変換ルックアップテーブルLUT)に基づいて行われる。
【0043】
なお、色変換処理後の画素データは、CMYK色空間により表される256階調の8ビ
ットCMYKデータである。本実施形態では該データを利用して画像処理を行い、印刷さ
れる2つの画像の境界部分におけるインクのにじみを防止している。画像処理の詳細につ
いては後述する。
【0044】
ハーフトーン処理は、高階調数のデータを、プリンターが形成可能な階調数のデータに
変換する処理である。例えば、ハーフトーン処理により、256階調を示すデータが、2
階調を示す1ビットデータや、4階調を示す2ビットデータに変換される。ハーフトーン
処理では、ディザ法・γ補正・誤差拡散法などが利用される。ハーフトーン処理されたデ
ータは、印刷解像度(例えば720×720dpi)と同等の解像度である。ハーフトー
ン処理後の画像データでは、画素ごと1ビット又は2ビットの画素データが対応しており
、この画素データは各画素でのドット形成状況(ドットの有無、ドットの大きさ)を示す
データになる。
【0045】
ラスタライズ処理は、マトリクス状に並ぶ画素データを、プリンター1に転送すべきデ
ータ順に、画素データごとに並び替える。例えば、各ノズル列のノズルの並び順に応じて
、画素データを並び替える。
【0046】
コマンド付加処理は、ラスタライズ処理されたデータに、印刷方法に応じたコマンドデ
ータを付加する処理である。コマンドデータとしては、例えば媒体の搬送速度を示す搬送
データなどがある。
【0047】
これらの処理を経て生成された印刷データは、プリンタードライバーによりプリンター
1に送信される。
【0048】
<プリンターの印刷動作>
プリンター1の印刷動作について簡単に説明する。コントローラー60は、コンピュー
ター110からインターフェース部61を介して印刷命令を受信し、各ユニットを制御す
ることにより、給紙処理・ドット形成処理・搬送処理等を行う。
【0049】
給紙処理は、印刷すべき紙をプリンター内に供給し、印刷開始位置(頭出し位置とも言
う)に紙を位置決めする処理である。コントローラー60は、不図示の給紙ローラーを回
転させ、印刷すべき紙を搬送ベルト17まで送る。続いて、上下流の搬送ローラー16A
及び16Bによりベルト17を回転させ、給紙ローラーから送られてきた紙を印刷開始位
置に位置決めする。
【0050】
ドット形成処理は、移動方向(走査方向)に沿って移動するヘッドからインクや接着剤
を断続的に噴出させ、紙上にドットを形成する処理である。コントローラー60は、キャ
リッジ21を移動方向に移動させ、キャリッジ21が移動している間に、印刷データに基
づいてヘッド31からインク等を噴出させる。噴出されたインク滴が紙上に着弾すると、
紙上にドットが形成され、紙上には移動方向に沿った複数のドットからなるドットライン
が形成される。
【0051】
搬送処理は、紙をヘッドに対して搬送方向に沿って相対的に移動させる処理である。コ
ントローラー60は、上下流の搬送ローラー16A及び16Bを回転させて紙を搬送方向
に搬送する。この搬送処理により、ヘッド31は、先ほどのドット形成処理によって形成
されたドットの位置とは異なる位置に、ドットを形成することが可能になる。
【0052】
コントローラー60は、印刷すべきデータがなくなるまで、ドット形成処理と搬送処理
とを交互に繰り返し、ドットラインにより構成される画像を徐々に紙に印刷する。そして
、印刷すべきデータがなくなると、ベルト搬送によりその紙を排紙する。なお、排紙を行
うか否かの判断は、印刷データに含まれる排紙コマンドに基づいても良い。
【0053】
なお、本実施形態においては、接着面を形成するために、印刷途中で媒体の搬送方向を
逆にする処理が必要となる。詳細は後で説明する。
【0054】
===接着面の形成について===
<紫外線硬化型接着剤を用いた接着方法>
本実施形態における印刷装置では、UVを照射することにより硬化するUV接着剤を用
いて接着面を形成する。UV接着剤は、紫外線硬化樹脂を含有する液体であり、UVの照
射を受けると紫外線硬化樹脂において光重合反応が起こることにより硬化する。本実施形
態では、媒体上の接着面を形成したい箇所に、印刷装置のヘッド部からUV接着剤を噴出
し、その後、UVを照射してUV接着剤を硬化させることで粘着性を持たせ、接着面を形
成する。
【0055】
接着を行う前に媒体に噴出されたUV接着剤を完全硬化させてしまうと、粘着性を失っ
て媒体を接着することができなくなるため、UV照射量を調節して、UV接着剤が半硬化
の状態の接着面を形成する。そして、該接着面と被接着面とを密着させた状態で、半硬化
状態の接着面を完全に硬化させることで、接着が完了する。UV接着剤は、一度重合反応
が開始された後はUV照射を終了した後でもわずかに反応が進行する。そのため、UV接
着剤が半硬化の状態で接着面と被接着面とを密着させておけば、時間の経過により完全硬
化して、媒体を固着することができる。
【0056】
なお、より短時間でUV接着剤を完全硬化させるためには、前述の半硬化した接着面を
、被接着媒体と密着させた状態で媒体ごと高出力のUVにさらす。こうすることで、接着
面を即時に完全硬化させることができる。特に、本実施形態では、後述するように透明な
媒体を使用するため、媒体の接着後でも透明媒体を通して接着面にUVを照射することが
可能であるため、媒体ごとUVにさらす方法を用いることは有効である。
【0057】
<接着面形成方法の説明>
本実施形態の印刷装置を用いて実際に印刷を行う際に、媒体上にどのように接着面が形
成されるのかについて説明する。
【0058】
図5に長方形の媒体101を用いて印刷を行う場合の例を示す。本実施形態では、透明
な媒体を透かして接着面上に画像を視認できる必要があるため、媒体101は紙ではなく
透明なフィルムシート等を用いる。媒体中央部の斜線部で表される領域102は文字や図
形等の情報が印刷される印刷領域である。なお、印刷領域102は、あらかじめ白や黒な
どのUVインクを塗布して硬化させることにより背景画像を形成しておくことで、封筒と
して封緘した時に、102に印字された内容を見えなくすることができる。
【0059】
印刷領域102の周囲の「のりしろ」となる余白部分には、ヘッド部からUVインクを
噴出し、照射部からUVを照射して硬化させ、接着面が開封されたか否かの確認を行うた
めの画像103を形成する。画像103には「封」の文字や「×」の記号や模様等の画像
を印刷し、接着後に透明媒体を通して確認できるようにしておく。なお、文字を印刷する
際に、接着時に透明媒体の裏側から当該文字を読み取れるようにしたい場合には、当該文
字を鏡像として印刷しておくと確認がしやすくなる。例えば、図5においては、画像10
3の領域に「seal」の文字を鏡像として印刷しており、媒体の接着後に透明媒体10
1を通して裏側から見たときに、「seal」の文字が読み取れるようにしてある。
【0060】
次に、図6Aに媒体101を封緘した際の封緘部の断面の様子を示す。本実施形態では
画像103の上に接着剤噴出面(接着面)104が形成され、接着面104によって被接
着媒体105を接着することによって、媒体101と被接着媒体105とを接着する。
【0061】
接着剤噴出面104は、前述の確認用画像103が形成された後に、媒体の搬送方向を
逆方向(搬送下流側から上流側)にして、再び印刷可能な領域まで媒体を逆搬送し、ヘッ
ド部の接着剤噴出用ノズルから画像103上にUV接着剤を噴出することで形成される。
なお、使用するUV接着剤の色に制限は無いが、ここでは画像103が見やすいように、
背景として光が透過しない有色のUV接着剤を使用するものとして説明する。
【0062】
その後、もう一度搬送方向を正方向(搬送上流側から下流側)に切り替えて、搬送下流
域に設置された照射部40からUVを照射して接着剤噴出面104のUV接着剤を半硬化
させ、接着面を形成する。そして、プリンターから排出された媒体101の接着面上に被
接着媒体105を密着させることで、媒体101と被接着媒体105とが接着され、印刷
領域102を内側にした袋状の封筒として封緘される。図6Aのように、画像103及び
接着面104は媒体101及び被接着媒体105に挟まれる形で封緘されている。この状
態で、画像103は接着面104を背景として媒体101を通して(図6Aにおいて媒体
101の下側から)視認することができる。また、UV接着剤及び被接着媒体105が透
明であれば、被接着媒体105を通して(上側から)視認することも可能である。
【0063】
この方法によれば、形成された確認用の画像103の上に直接UV接着剤を噴出して接
着面を形成するため、画像103と接着面104との位置がずれたりすることはなく、画
像と接着面とを確実に接着することができる。したがって、封筒として封緘した後に開封
しようとすると、接着面104を剥がす際に画像103も破壊されるため、開封されたか
否かの判断を容易にすることができる。
【0064】
なお、封緘する際の被接着媒体105の代わりに、図6Bのように媒体101を折り曲
げることで、見開き型の封筒(以下、展開封筒とも呼ぶ)として封緘する方法であっても
よい。
【0065】
次に、媒体の搬送方向を切り替えずに、展開封筒を印刷する場合の例を示す。図7に長
方形の媒体201を展開封筒として印刷する場合の例を示す。
【0066】
前述の場合と同様に、透明媒体201中央の斜線部で表される領域202は文字や図形
等の情報が印刷される印刷領域である。印刷領域202の周囲の余白上には、開封確認を
行うための画像203と、接着剤噴出面204とが形成される。折り曲げ線206は媒体
201を中央で左右(または上下)に2分割する線であり、媒体201を展開封筒として
封緘する際には該折り曲げ線206で媒体を谷折りにして接着する。本実施形態において
、確認用画像203と、接着剤噴出面204とは、折り曲げ線206を挟んで対称な形状
に形成される。そのため、封緘時に折り曲げ線206で媒体を折り曲げた際には、確認用
画像203と、接着剤噴出面204とが必ず対向する位置関係となり、接着状態では、前
述の図6Bの場合と同様の形で、203と204とが密着することになる。
【0067】
確認用画像203及び接着剤噴出面204が形成された後、UVを照射することでUV
接着剤を半硬化状態にして接着面を形成する。そして、媒体201を折り曲げ線206で
折り曲げて、画像203と接着面204とを密着させた状態で完全硬化させることで展開
封筒として封緘を行う。図8に、媒体201を展開封筒として封緘した状態で媒体裏側か
ら接着面を見た場合(203側から204側を見た場合)の様子を示す。媒体201が透
明であるため、封緘後でも媒体の裏側から接着面確認用に印刷された画像(図7において
は「seal」の文字)を確認することができる。
【0068】
この方法では、画像203と接着剤噴出面204とが、媒体201を封緘する際に対向
する位置関係に形成される。したがって、画像部分が確実に接着され、封緘後に接着部を
剥がすと、該画像部分も確実に破壊されることになる。また、媒体201が上流から下流
へと搬送される過程で画像203と接着剤噴出面204とを1回の印刷工程(搬送過程)
で形成することが可能であり、途中で媒体を逆搬送する必要がなくなるため、全体的に印
刷時間を短縮することもできる。
【0069】
このようにして封緘された封筒を開封しようとすると、接着面を剥がす際に、該接着面
に密着している確認用画像が破壊されてしまう。図8の状態で封緘されている展開封筒の
接着面を剥がすことによって、画像が破壊された場合の例を図9に示す。このようにして
破壊された画像203は、一度開封した接着面204を再度接着しても、元に戻すことは
できない。本実施形態では、媒体を透明としているため、再度封をしたとしても、当該破
壊された画像の状態を確認することによって封筒が開封されたか否かの判断をすることが
可能であり、印刷領域202に印字された情報の守秘性等を担保することができる。
【0070】
しかし、図7で形成される接着面の場合、画像と接着面とがそれぞれ媒体の両側に均一
に形成されるため、接着面を剥がす際に、たまたまきれいに剥がせてしまい、画像があま
り破壊されなかったような場合には、一見して判断することが難しくなるおそれがある。
また、破壊された画像の状態が良好で、そのまま接着面がずれないように再接着すれば、
画像を元の状態に戻せるような場合にも、明確に判断しにくいことが考えられる。そこで
、次の変形例に示すように、確認用画像と接着面とを交互に細かく形成することで、接着
面を剥がした際に画像が細かく裁断され、元に戻しにくいような接着面を形成する方法も
ある。
【0071】
図10に、前述の展開封筒を印刷する場合の変形例を示す。前述の場合と同様、透明な
媒体301の中央の斜線部で表される領域302は印刷領域であり、302の周囲の余白
部分に確認用画像303と、接着剤噴出面304とが形成される。ただし、本実施形態に
おいては、画像303と接着剤噴出面304とがそれぞれ交互に多数形成される。例えば
、図10において、折り曲げ線306を挟んで左側の領域には303L1〜303L8で
表される画像領域と、304L1〜304L8で表される接着剤噴出面とが、交互に形成
される。同様に、媒体301の右側の領域には画像303R1〜303R8と、接着剤噴
出面304R1〜304R8が交互に形成される。画像303と接着剤噴出面304で、
反対の記号(LとR)及び同じ数字(1〜8)が付された領域(例えば、画像303L2
と接着剤噴出面304R2)は、折り曲げ線306を挟んで対称な形状であり、媒体を折
り曲げた時に対向する位置関係にある。このため、封筒の封緘時には、各領域に形成され
た画像が、必ず接着面と向かい合わせとなって密着する。
【0072】
図11Aに、媒体301の封緘時における接着面の断面の様子を示す。図11Aに示さ
れるように、インクにより形成された画像303と、UV接着剤により形成された接着面
304とが必ず隣り合って接触する位置関係となっている。これにより、ある領域(例え
ば303R7)に形成された画像は、周囲の接着剤(304R7、304R8、及び30
4L7)により完全に固着された状態となる。そして、当該接着面上に形成された画像は
透明な媒体を通して視認することができる。例えば、303R7により形成された画像は
、封筒が封緘された状態で、透明な媒体301の下側から確認することが可能である。
【0073】
図11Aで表される接着面を下側から見たときの様子を図11Bに示す。この状態では
、媒体301を透かして接着面上に形成された画像303の「seal」の文字がはっき
りと読み取れる。しかし、図11Bに表される接着面を引き剥がそうとすると、形成され
ている画像がバラバラに破壊される。図12に、接着面を剥がしたことによって該接着面
上の画像が破壊された場合の例を示す。接着面に印刷されていた「seal」の文字はそ
れぞれが周囲を接着面に囲まれて接着されており、該接着面を無理に剥がすと、画像は図
12のように細かく裁断されてしまう。剥がした接着面上には裁断された画像片が散在す
ることになるため、再度媒体を折り曲げて図11Bのような元の状態に戻そうとしても、
全ての領域で完全に画像を再現することは非常に困難となる。また、画像と接着面とが交
互に形成されていることから、再度接着しようとする場合に、接着面に接着剤を塗布しな
おすことは難しく、一旦完全硬化した接着面に再び粘着性を得させることも難しい。
【0074】
このようなことから、変形例のようにして封緘された封筒は、一度開封すると、透明媒
体を通して接着面に見える画像が完全に破壊され、かつ、再び元の状態に戻すことが極め
て困難であるため、封筒が開封されたか否かの判断が一目瞭然となる。
【0075】
===印刷データの処理について===
印刷開始にあたり、インクや接着剤等の噴出位置や噴出量を決定するための印刷データ
がプリンタードライバーによって作成される。そして、作成された印刷データに基づいて
、コントローラー60により、ヘッドユニット30から適宜UVインクやUV接着剤を噴
出し、照射ユニット40からUV照射を行うことで、媒体上に印刷面及び接着面が形成さ
れる。通常の印刷であれば、前述の印刷処理手順に従って画像データから印刷データが作
成されるが、本実施形態では、接着面も同時に形成されるため、接着剤噴出面の設定など
について特殊な処理が必要となる。
【0076】
<接着剤噴出面等の決定>
まず、媒体上で接着剤噴出面及び確認用画像を形成する領域を特定する。本実施形態に
おいて、接着剤噴出面等は、プリンター制御部であるプリンタードライバーのユーザーイ
ンターフェース画面を利用して設定することができる。
【0077】
プリンタードライバーにはあらかじめ数種類の接着剤噴出面の領域が設定されており、
ユーザーはこれらの一つを選択することで。接着剤噴出面の特定をすることができる。例
えば、前述の展開封筒の場合であれば、A4やA3の定型サイズの媒体に対応する余白部
分に、それぞれ図7の204のような接着剤噴出面が最初から設定されている。市販され
ている定型サイズのOHPシートやプラスチック板等を使用して印刷を行う場合には、こ
のように、当初からプリンタードライバーに設定されているデータを利用して、接着剤噴
出面を特定することが可能である。
【0078】
これに対して、不定形サイズの媒体を使用して印刷を行う時など、接着剤噴出面をプリ
ンタードライバーの初期設定値から選択することができない場合は、ユーザー自身が接着
剤噴出面を形成する領域の設定を行う必要がある。例えば、図13に示すようなユーザー
インターフェース画面上で接着剤噴出面を設定できるようにしておく。その際の主な設定
項目は、接着剤噴出面の「位置」と「大きさ」であり、マウス等の指示装置を用いて媒体
上に所定の領域を指定する。
【0079】
ここで、図7や図10に示されるような展開封筒として印刷を行う場合には、接着面形
成用のUV接着剤が噴出される接着剤噴出面と、封緘確認画像形成用のUVインクが噴出
される画像領域とが、別々に形成される。これらの領域は、媒体を折り曲げて接着する際
にお互いが重なり合うことによって接着されることになるため、折り曲げ線を中心として
対称な形状に形成される必要がある。したがって、ユーザーが一方の領域を設定すると、
プリンタードライバーは、折り曲げ線を挟んで左右対称となるよう他方の領域を自動的に
設定し、ユーザーによって不適切な領域が設定されたり、誤入力されたりすることがない
ようにしている。例えば、図7に示されるような接着剤噴出面及び画像を形成する場合、
ユーザーは、まず接着剤噴出面204を設定する。すると、プリンタードライバーが、折
り曲げ線(中心線)206を挟んで204と対称な領域203を設定する。また、図10
において、ユーザーが接着剤噴出面304R1を設定すると、プリンタードライバーは3
04R1と対向する位置に画像形成領域303L1を設定する。このように、対象となる
領域のうち、ユーザーが一方の領域を設定するだけで、プリンタードライバーによって他
方の領域も自動的に設定されるため、封筒の封緘時に接着位置がずれたり、確認用画像と
接着面が対向しなかったりする問題が生じるのを確実に防止することができる。
【0080】
また、プリンタードライバーは、接着面が形成された時に、十分な強度で接着が行える
よう、接着剤噴出面を設定できる範囲を制限したり、その大きさ(面積)に最小値を設け
たりしておくこともできる。例えば、ユーザー入力により設定された接着剤噴出面(接着
面)の総面積が所定の値よりも小さい場合には、プリンタードライバーから警告が発せら
れる。そして、ユーザーに十分な大きさの領域を再設定させるようにすることで、不十分
な接着面が形成されるのを未然に防止し、確実に接着ができるようにする。
【0081】
<印刷データの作成>
印刷領域(図10の場合では領域302)にインクを噴出するための画像印刷データは
前述のとおり、プリンタードライバーによる印刷処理において、元となる画像データから
作成される。ここで、該元画像データが接着剤噴出面と重複する場合、例えば、元画像デ
ータが媒体全体に縁なしで印刷を行うようなデータであった場合には、重複部分に印刷用
のカラーインクと接着面形成用のUV接着剤とを共に噴出することになる。しかし、当該
領域は接着面となる領域であり、封筒を開封するときに確実に破壊される領域であるため
、この領域に封緘部確認用画像以外の画像情報が形成されるのは適当でない。したがって
、プリンタードライバーがアプリケーションプログラムから画像データを受け取った際に
、文字等が印字される印刷領域(図10における領域302)と、接着面が形成される予
定の領域(図10における領域303および304)とが重複している場合、プリンター
ドライバーは、該画像データの印字範囲を縮小または一部を削除することにより、印刷領
域と接着剤噴出面とが重ならないように調整する。これにより、印刷領域にUV接着剤が
噴出されるのを防止する。
【0082】
そして、プリンタードライバーは、前述のようにして設定された各領域にUV接着剤お
よび、UVインクを噴出するためのデータを生成する。接着剤噴出面に噴出されるUV接
着剤の色は、印刷データ上では考慮されないため、前述の画像処理における色変換処理を
行う必要はない。また、画素ごとに階調値を変える必要もないため、ハーフトーン処理も
不要である。したがって、接着剤噴出面として設定された領域を形成する全ての画素に、
所定の大きさのUV接着剤液滴を1ドット分ずつ噴出するような印刷データが生成される
。一方、封緘部確認用の画像部分には、例えば「seal」の文字や「×」などの記号を
印刷するデータが作成される。確認用画像としてどのような画像を形成するかについても
、ユーザーインターフェース画面においてユーザーが設定できるようにしておくこともで
きる。文字や記号だけではなく、色や模様を印刷してもよい。また、前述のように、文字
を鏡像として印刷するよう設定できるようにもしておく。
【0083】
コントローラー60は、作成された該印刷データに基づいて、ヘッドユニット30から
媒体上にUVインクやUV接着剤を噴出させることで、印刷領域や接着剤噴出面、および
確認用画像を形成し、形成された接着剤噴出面にUVを照射してUV接着剤を半硬化させ
ることで接着面を形成する。そして、UV接着剤が完全に硬化する前に接着面を被接着媒
体と密着させ、完全硬化させることで、封緘を行うことができる。
【0084】
===まとめ===
本実施形態では、インクジェットプリンターを用いて、一度開封すると開封したことが
一目瞭然となるような接着面を形成して、封筒等の封止印刷を行うことができる。
【0085】
透明媒体上の「のりしろ」となる余白部分に文字や図形等の封緘部確認用画像を形成し
、UV接着剤にUV照射を行って半硬化させた接着面により、当該画像部分を被接着媒体
と密着させて、封筒として封緘する。封緘後の確認用画像は、透明媒体を通して接着面上
に確認することができ、接着面を剥がして封筒を開封しようとすると、同時に画像も破壊
されるため、開封されたか否かの判断が明確になる。
【0086】
また、媒体を折り曲げて封緘する展開封筒について接着面を形成する方法として、該媒
体の所定の領域に画像を形成し、折り曲げ線を挟んで対称となる領域に接着剤噴出面を形
成する。その後、UV照射により接着面を形成してから、媒体を折り曲げて、画像部分と
接着面とを対向・密着させることにより封緘を行う。これにより、画像は接着面と対抗す
る位置関係に形成され、接着後に該接着面を剥がすと確実に画像が破壊されるようになる

【0087】
また、接着剤噴出面と確認用画像とは、互いに隣り合うように複数形成される。接着面
上の確認用画像が細かく多数形成されることになるため、接着面を剥がすと画像はバラバ
ラになり、再度接着を行っても、全ての画像を完全に元の状態に戻すことが難しくなる。
これにより、封筒が開封されたか否かを、より明確に判断することができる
また、接着剤噴出面を形成する領域及び確認用の画像を形成する領域は、プリンタード
ライバーのユーザーインターフェース画面を介して、ユーザー自身で設定することができ
る。これにより、媒体上の任意の領域に接着面を形成することが可能になる。
【0088】
また、接着剤噴出面を形成する領域と確認用の画像を形成する領域とが、媒体の折り曲
げ線を挟んで対称に形成される必要がある場合、ユーザーがどちらか一方の領域を設定す
ると、他方の領域はプリンタードライバーによって設定される。これにより、封緘時に画
像と接着面とが対向しないような、間違った位置や大きさの領域が設定されることを防止
できる。
【0089】
また、接着面を形成する方法として、媒体上に形成された確認用の画像の上に、プリン
ターのヘッド部からUV接着剤を噴出して接着剤噴出面を形成し、該接着剤噴出面にUV
照射を行うことにより接着面を形成する方法を用いる。これにより、確認用画像の上に直
接接着面を形成することができるため、該画像と接着面とが確実に接着される。したがっ
て、封緘後に接着面を開くと画像も破壊され、封筒が開封されたか否かの判断が容易にな
る。
【0090】
また、プリンタードライバーは、確認用画像を印刷する際に、元の文字や画像等の鏡像
となるデータを作成して印刷を行うことができる。これにより、封緘された状態の媒体を
裏側から見たときに、接着面上に形成された文字をしっかりと読むことができる。
【0091】
===その他の実施形態===
一実施形態としてのプリンター等を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容
易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、
その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含ま
れることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれる
ものである。
【0092】
<接着面の形成について>
前述の実施形態では、1回の印刷動作で媒体上に接着面を形成していたが、接着面の形
成工程を複数回の印刷に分けて実行しても良い。例えば、1回目の印刷時に、媒体上にア
ンダーコート層を形成しておいて、一旦、プリンターから媒体を排出し、2回目の印刷時
に、光硬化領域を形成するような印刷を行ってもよい。
【0093】
<使用するカラーインクについて>
前述の実施形態では、CMYKの4色のインクを使用して印刷する例が説明されていた
が、これに限られるものではない。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ、ホワイト、
クリアー等、CMYK以外の色のインクを用いて印刷を行ってもよい。
また、本実施形態では印刷媒体として透明なフィルムシートを使用することを想定して
おり、プリンター本体にUV照射部を備えていることから、UV硬化型のカラーインクを
使用することが望ましい。
【0094】
<UV接着剤について>
前述の実施形態では、紫外線(UV)の照射を受けることによって硬化する接着剤(U
V接着剤)をノズルから噴出していた。しかし、噴射する接着剤は、このような接着剤に
限られるものではなく、UV以外の他の電磁波(例えば赤外線や可視光線など)の照射を
受けることによって硬化するものであってもよい。この場合、照射ユニットから、その液
体を硬化させるための電磁波(赤外線や可視光線など)を照射するようにすればよい。
【0095】
<使用する媒体について>
前述の実施形態では、使用する媒体として、透明なフィルムシートを用いて印刷、封緘
する方法が説明されていたが、これに限られるものではない。例えば、ポリエステル等の
樹脂や、プラスチック、または、それらの複合素材等、透明な媒体で、UVインクを用い
た印刷ができるものであればよい。また、のりしろとなる部分のみが透明なシート状であ
って、印刷面は紙等の素材から構成される媒体であってもよい。
さらに、媒体は長方形である必要はなく、のりしろ部分の条件を満たしていれば、定型
封筒のようなものでも封止印刷を行うことができる。
【0096】
<ピエゾ素子について>
前述の実施形態では、液体を噴出させるための動作を行う素子としてピエゾ素子PZT
を例示したが、他の素子であってもよい。例えば、発熱素子や静電アクチュエーターを用
いてもよい。
【0097】
<プリンタードライバーについて>
プリンタードライバーの処理はプリンター側で行ってもよい。その場合、プリンターと
ドライバーをインストールしたPCとで印刷装置が構成される。
【0098】
<他の印刷装置について>
前述の実施形態では、ヘッド31をキャリッジとともに移動させるタイプのプリンター
1を例に挙げて説明したが、プリンターはヘッドが固定された、いわゆるラインプリンタ
ーであってもよい。
【符号の説明】
【0099】
1 プリンター、
10 搬送ユニット、13 搬送ローラー、15 排紙ローラー、
16A 上流側搬送ローラー、16B 下流側搬送ローラー、17 ベルト、
20 キャリッジユニット、21 キャリッジ、22 キャリッジモーター、
30 ヘッドユニット、31 ヘッド、311 ケース、312 流路ユニット、
312a 流路形成板、312b 弾性板、312c ノズルプレート、
312d 圧力室、312e ノズル連通口、312f 共通インク室、
312g インク供給路、312h アイランド部、312i 弾性膜、
40 照射ユニット、 43 半硬化用照射部、50 検出器群、
51 リニア式エンコーダ、52 ロータリー式エンコーダ、
53 紙検出センサ、54 光学センサ、60 コントローラー、
61 インターフェース部、62 CPU、63 メモリ、
64 ユニット制御回路、110 コンピューター
101 媒体、102 印刷領域、103 確認用画像、
104 接着剤噴出面、105 被接着媒体、
201 媒体(展開封筒)、202 印刷領域、203 確認用画像、
204 接着剤噴出面、206 折り曲げ線、
301 媒体(展開封筒)、302 印刷領域、303 確認用画像、
304 接着剤噴出面、306 折り曲げ線、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置のヘッド部からインクを噴出することにより、透明な媒体上に画像を形成する
ことと、
光が照射されると硬化する接着剤により、接着剤噴出面を形成することと、
印刷装置の照射部から前記接着剤噴出面に光を照射することと、
前記接着剤噴出面に光が照射されることによって形成される接着面を挟んで、前記画像
が形成された媒体と被接着媒体とが接着されることと、
を有する接着方法。
【請求項2】
請求項1に記載の接着方法であって、
前記媒体を折り曲げて、該媒体同士の接着を行う場合に、
前記接着剤噴出面が、前記ヘッド部のうち前記インクを噴出したものとは異なるノズル
から、前記媒体の折り曲げ線を挟んで前記画像と対称となる領域に前記接着剤を噴出する
ことにより形成され、
前記媒体を折り曲げて、前記画像と前記接着面とを密着させることを特徴とする接着方
法。
【請求項3】
請求項2に記載の接着方法であって、
前記接着剤噴出面及び前記画像が複数形成され、
接着面と画像とがそれぞれが隣り合う位置に形成されることを特徴とする接着方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の接着方法であって、
前記接着剤噴出面を形成する領域、及び、前記画像を形成する領域が、印刷装置制御部
のユーザーインターフェース画面を介してユーザーに設定されることを特徴とする接着方
法。
【請求項5】
請求項4に記載の接着方法であって、
ユーザーが前記媒体上に前記接着剤噴出面を形成する領域、または、前記画像を形成す
る領域を設定すると、
前記印刷装置制御部は、前記媒体の折り曲げ線を挟んで対称となる位置に、前記画像を
形成する領域、または、前記接着剤噴出面を形成する領域を設定することを特徴とする接
着方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の接着方法であって、
前記印刷装置制御部は、前記画像を形成する印刷データを作成する際に、該画像の鏡像
のデータを作成することを特徴とする接着方法。
【請求項7】
請求項1に記載の接着方法であって、
前記接着剤噴出面が、前記ヘッド部のうち前記インクを噴出したものとは異なるノズル
から、媒体上に形成された前記画像の上に前記接着剤を噴出することによって形成される
ことを特徴とする接着方法。
【請求項8】
(A)光を照射すると硬化するインク、及び、光を照射すると硬化するインクを噴出す
るヘッド部と、
(B)光を照射する照射部と、
(C)前記ヘッド部から光が照射されると硬化するインクを噴出させて透明な媒体上に
画像を形成し、
前記ヘッド部から光が照射されると硬化する接着剤を噴出させて透明な媒体上に
接着剤噴出面を形成し、
前記照射部から前記接着剤噴出面に光を照射させて接着面を形成する制御部と、
を備える印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−121180(P2011−121180A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278271(P2009−278271)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】