説明

接着芯地用基布および接着芯地

【課題】衣料品の軽量化に対応し、表生地と接着したときに表生地の風合いを損なわず、適度のハリコシがあり、且つ、軽量でソフト感を呈することができる接着芯地用基布及び接着芯地を提供する。
【解決手段】経糸と緯糸とにより製織された布帛で、経糸と緯糸の一方が、単糸繊度0.9〜3.5デシテックス、全繊度30〜100デシテックスの仮撚加工糸、経糸と緯糸の他方が、単糸繊度0.5〜1.2デシテックス、全繊度20〜100デシテックスの仮撚加工糸よりなり、かつ、前記一方と他方の単糸繊度の比が1.6〜6.0であり、前記一方と他方の単位あたり繊度の比が1.4〜2.0である接着芯地用基布、及びこの接着芯地用基布に接着樹脂を塗布してなる接着芯地。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャケット、コート等の衣料品に使用される接着芯地用基布および接着芯地に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、生活環境の変化や消費者の好みの変化により、各種衣料品の軽量化が進んできている。ジャケットやコート等の外衣についても表地素材が軽量化することにより、軽量化が一層求められている。衣料品の軽量化に対応するために、これらに使用する接着芯地についても軽量化が求められている。
【0003】
ジャケット、コート等の外衣に使用される接着芯地には、表地の風合いを生かしつつ、被服として長期間使用したときに、被服の形状を良好に保つことが求められている。例えば、経糸方向にハリコシを持たせるために、経糸にポリエステルと綿(コットン)の紡績糸を用い、緯糸に仮撚加工糸を用いた芯地や、表地の寸法変化に追随できるように、経糸緯糸ともに単糸繊度が5デニール以下の仮撚加工糸を用いた芯地(特許文献1)が提案されている。
【0004】
しかしながら、近年のジャケットやコート等の外衣に求められている、適度のハリコシを保持しつつ軽量でソフト感のある芯地は得られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−97937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、ジャケットやコート等の衣料品の軽量化に対応し、表生地と接着したときに表生地の風合いを損なわず、適度のハリコシを保有して、しかも軽量でソフト感を呈することができる、接着芯地用基布と該基布を使用した接着芯地を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決する本発明は、経糸と緯糸とにより製織された布帛であって、経糸と緯糸の一方が、単糸繊度0.9〜3.5デシテックス、全繊度30〜100デシテックスの仮撚加工糸、経糸と緯糸の他方が、単糸繊度0.5〜1.2デシテックス、全繊度20〜100デシテックスの仮撚加工糸よりなり、かつ、前記一方と他方の単糸繊度の比(一方の単糸繊度/他方の単糸繊度)が1.6〜6.0であり、前記一方と他方の単位あたり繊度の比(一方の単位あたり繊度/他方の単位あたり繊度)が1.4〜2.0であることを特徴とする接着芯地用基布である。
【0008】
また、本発明の他の一つは、前記の接着芯地用基布に接着樹脂を塗布してなる接着芯地である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の接着芯地用基布及び接着芯地によれば、ジャケットやコート等の衣料品の軽量化に対応できて、しかも、表生地と接着したときに表生地の風合いを損なわず、適度にハリコシがあって、且つ軽量でソフト感を呈するものとなる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
本発明の接着芯地用基布は、経糸と緯糸との一方に単糸繊度が0.9〜3.5デシテックス、全繊度が30〜100デシテックスの仮撚加工糸を用い、経糸と緯糸との他方に単糸繊度が0.5〜1.2デシテックス、全繊度が20〜100デシテックスの仮撚加工糸を用いて、平織等の織組織で製織された布帛よりなる。特に、本発明においては、経緯のハリコシが必要な方向と該方向に対して直交する方向とに、それぞれ前記一方と他方の仮撚加工糸を用いることとして、これら一方と他方の仮撚加工糸の単糸繊度の比が1.6〜6.0であり、単位あたり繊度の比が1.4〜2.0であることを特徴としている。なお、前記仮撚加工糸の単位あたり繊度は、単位寸法間(インチ間)あたりの全経糸又は全緯糸の合計繊度のことであり、次式で求められる。
【0012】
単位あたり繊度=単位寸法(インチ)間にある糸の本数(密度)×糸の全繊度
例えば、緯糸方向よりも経糸方向にハリコシが必要とする場合には、経糸に単糸繊度が0.9〜3.5デシテックスで、全繊度が30〜100デシテックスの仮撚加工糸を用い、緯糸に単糸繊度が0.5〜1.2デシテックス、全繊度が20〜100デシテックスの仮撚加工糸を用い、かつ、前記経糸と緯糸の単糸繊度の比(経糸の単糸繊度/緯糸の単糸繊度)が1.6〜6.0であり、経糸と緯糸の単位あたり繊度の比(経糸の単位あたり繊度/緯糸の単位あたり繊度)が1.4〜2.0であるように織物を製造すればよい。これにより、緯糸方向よりも経糸方向にハリコシのある接着芯地用基布が得られる。
【0013】
また、前記のように経糸方向に有る程度のハリコシが必要な場合、ジャケット、コート等の表生地とのバランスにより、経糸には、単糸繊度が0.9〜3.5デシテックスで、全繊度が30〜100デシテックスの仮撚加工糸が用いられる。さらに好ましくは、30〜85デシテックスの仮撚加工糸が用いられる。前記単糸繊度が0.9デシテックスより小さいと、ハリコシが不足する。また、前記単糸繊度が3.5デシテックスより大きいと、風合いが硬くなる。これらの点から、好ましくは、単糸繊度1.1〜3.5デシテックスの仮撚加工糸が用いられる。
【0014】
前記の場合、緯糸には、単糸繊度が0.5〜1.2デシテックスで、全繊度が20〜100デシテックスの仮撚加工糸が用いられる。前記単糸繊度が0.5デシテックスより小さいと、ハリコシが不足する。また、前記単糸繊度が1.2デシテックスより大きいと表生地と接着したときの風合いが硬くなる。
【0015】
前記のように経糸方向に適度のハリコシを必要とする場合には、前記経糸と緯糸に用いられる仮撚加工糸の単糸繊度の比(経糸の単糸繊度/緯糸の単糸繊度)は、1.6〜6.0とするのが好適である。すなわち、前記単糸繊度比が6.0より大きいと、表生地と接着したときに、経緯のハリコシのバランスが悪くなる。また、前記単糸繊度比が1.6より小さいと、表生地と接着したときの風合いが硬くなる。
【0016】
また、前記経糸と緯糸との単位あたり繊度の比(経糸の単位あたり繊度/緯糸の単位あたり繊度)は、前記のように1.4〜2.0とするのが好ましい。経糸と緯糸のそれぞれの全繊度が前記の20〜100デシテックスの範囲にあることから、前記単位あたり繊度の比を、前記のように1.4〜2.0とすることにより、経糸の織密度に比して緯糸の織密度が小さくなり(緯糸の打ち込み本数が少ない)、経糸と緯糸の織密度に差がつけられて、全体として軽量でソフト感を呈するものになる。そのため、前記単位あたり繊度の比が1.4より小さい場合には、表生地と接着したときに軽量でソフト感のある芯地が得られないことになる。また、前記カバーファクターの比が2.0より大きい場合には、緯糸の織密度がさらに小さくなるため、目ずれが起き易く、製造上の取り扱いが困難である。これらの効果の点から、より好ましくは、前記単位あたり繊度の比が1.55〜2.0のものである。
【0017】
本発明の接着芯地用基布の構成に使用する仮撚加工糸は、熱可塑性合成樹脂製の長繊維に仮撚を施した捲縮性のある各種繊維の糸を用いることができ、中でも、ポリエステル繊維の仮撚加工糸が熱安定性、製造コスト、風合いの点から特に好適に用いられる。
【0018】
なお、上記の説明では、緯糸方向よりも経糸方向にハリコシが必要である場合を例にして説明したが、これとは逆に、緯糸方向にハリコシが必要とする場合には、前記経糸と緯糸に用いる仮撚加工糸の繊度、単糸繊度の比、及び単位あたり繊度の比を、それぞれ経糸と緯糸とが逆になるように設定して製織することにより、緯糸方向にハリコシのある接着芯地用基布が得られることになる。
【0019】
本発明の接着芯地は、前記の接着芯地用基布の片面に接着樹脂を塗布してなるものである。
【0020】
前記接着芯地に用いられる接着樹脂としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル等の熱可塑性樹脂が用いられる。また、接着樹脂の塗布方法としては、パウダードット、ペーストドット、ダブルドット、シンター、ウェブ等の公知の方法が挙げられる。芯地用基布の厚みや材質に応じて、また接着対象の表生地の厚み等に応じて、最適な塗布方法が採用される。
【0021】
前記のようにして得られる接着芯地は、接着芯地用基布の経糸と緯糸に用いる仮撚加工糸の繊度、単糸繊度比、単位あたり繊度の比をそれぞれ特定の範囲に設定したことにより、表生地と接着したときに表生地の風合いを損なわず、適度にハリコシがあって、且つ軽量でソフト感を呈するものとなる。
【実施例】
【0022】
以下、下記の表1に示す本発明の実施例1〜3、並びに比較例1〜5について説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0023】
[実施例1]
経糸に83デシテックス/36フィラメントのポリエステル仮撚加工糸を、緯糸に83デシテックス/144フィラメントのポリエステル仮撚加工糸を用い、平織の生機を製織し、精練、染色・仕上げ加工後、仕上密度が経糸53本/インチ、緯糸28本/インチの芯地用基布を得た。この芯地用基布に、接着樹脂としてポリアミドを、ダブルドット方式の塗布方法により密度17個/インチ(289個/in)で塗布して接着芯地を得た。
【0024】
[実施例2]
経糸に83デシテックス/36フィラメントのポリエステル仮撚加工糸を、緯糸に83デシテックス/72フィラメントのポリエステル仮撚加工糸を用い、平織の生機を製織し、実施例1と同様の加工を行い、仕上密度が経糸53本/インチ、緯糸28本/インチの芯地用基布を得た。この芯地用基布に、実施例1と同様に、接着樹脂を塗布して接着芯地を得た。
【0025】
[実施例3]
経糸に33デシテックス/36フィラメントのポリエステル仮撚加工糸を、緯糸に83デシテックス/144フィラメントのポリエステル仮撚加工糸を用い、平織の生機を製織し、実施例1と同様の加工を行い、仕上密度が経糸100本/インチ、緯糸28本/インチの芯地用基布を得た。この芯地用基布に、実施例1と同様に、接着樹脂を塗布して接着芯地を得た。
【0026】
[比較例1]
経糸に83デシテックス/36フィラメントのポリエステル仮撚加工糸輪、緯糸に83デシテックス/36フィラメントのポリエステル仮撚加工糸を用い、平織の生機を製織し、実施例1と同様の加工を行い、仕上密度が経糸53本/インチ、緯糸48本/インチの芯地用基布を得た。この芯地用基布に、実施例1と同様に接着樹脂を塗布して接着芯地を得た。
【0027】
[比較例2]
経糸に83デシテックス/36フィラメントのポリエステル仮撚加工糸を、緯糸に83デシテックス/72フィラメントのポリエステル仮撚加工糸を用い、平織の生機を製織し、実施例1と同様の加工を行い、53本/インチ、緯糸48本/インチの芯地用基布を得た。この芯地用基布に、実施例1と同様に接着樹脂を塗布して接着芯地を得た。
【0028】
[比較例3]
経糸に83デシテックス/36フィラメントのポリエステル仮撚加工糸を、緯糸に83デシテックス/144フィラメントのポリエステル仮撚加工糸を用い、平織の生機を製織し、実施例1と同様の加工を行い、仕上密度が経糸53本/インチ、緯糸48本/インチの芯地用基布を得た。この芯地用基布に、実施例1と同様に接着樹脂を塗布して接着芯地を得た。
【0029】
[比較例4]
経糸に83デシテックス/48フィラメントのポリエステル仮撚加工糸を、緯糸に83デシテックス/48フィラメントのポリエステル仮撚加工糸を用い、平織の生機を製織し、実施例1と同様の加工を行い、仕上密度が経糸53本/インチ、緯糸40本/インチの芯地用基布を得た。この芯地用基布に、実施例1と同様に接着樹脂を塗布して接着芯地を得た。
【0030】
[比較例5]
経糸に22デシテックス/24フィラメントのポリエステル仮撚加工糸を、緯糸に83デシテックス/144フィラメントのポリエステル仮撚加工糸を用い、平織の生機を製織し、実施例1と同様の加工を行い、仕上密度が経糸101本/インチ、緯糸30本/インチの芯地用基布を得た。この芯地用基布に、実施例1と同様に接着樹脂を塗布して接着芯地を得た。
【0031】
評 価
上記の実施例1〜3、比較例1〜5で得られた接着芯地を表生地(ウール、平織、目付130g/m)に接着して、下記の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0032】
(1)風合い 触感による。
◎ 良
○ やや良
△ やや不可
× 不可
(2)目付 (接着芯地単独の単位あたり重さg/m
(3)表生地と接着した時の曲げ硬さ
カトーテック社製のKESFB2−AUTO−Aを用いて経、緯方向の各々の曲げ硬さを測定した。曲げ硬さは、単位当たりの曲げ剛性(cN・cm/cm)で表される測定値とした。
【表1】

【0033】
上記の結果、比較例1〜5の場合、経糸と緯糸の単位当たり繊度の比がいずれも実施例1〜3よりも小さくて、本発明で設定する1.4〜2.0の範囲になく、さらに比較例1と4は経糸と緯糸の単糸繊度にも差がない。そのため、比較例1〜4は、実施例1〜3に比して、風合いが悪く、また目付が大きくて軽量性に劣り、曲げ硬さが経緯共に高くて、経緯共にハリコシを有するものの、ソフト感に劣るものであり、また、経糸全繊度を小さくして織密度我高くした比較例5の場合、軽量にはなるが、曲げ硬さが経緯共に低く、ハリコシの効果が得られないものであった。
【0034】
これに対し、経糸と緯糸に、単糸繊度を異にして全繊度が同じ仮撚加工糸を用いた実施例1、2、3のいずれも、経糸と緯糸の単糸繊度の比、及び単位あたり繊度の比が、本発明で特定する範囲にあることで、表生地に接着したとき風合いが良好である上、目付が比較例に比して小さく軽量で、しかも経緯の少なくとも一方の曲げ硬さが低くて、比較例1〜4に比してソフト感を呈するものとなった。特に、経糸方向にはある程度の曲げ硬さがあって適度のハリコシを保持しながら、緯糸方向には曲げ硬さが低くて、ソフト感を有するものとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸と緯糸とにより製織された布帛であって、経糸と緯糸の一方が、単糸繊度0.9〜3.5デシテックス、全繊度30〜100デシテックスの仮撚加工糸、経糸と緯糸の他方が、単糸繊度0.5〜1.2デシテックス、全繊度20〜100デシテックスの仮撚加工糸よりなり、かつ、前記一方と他方の単糸繊度の比が1.6〜6.0であり、前記一方と他方の単位あたりの繊度の比が1.4〜2.0であることを特徴とする接着芯地用基布。
【請求項2】
請求項1に記載の接着芯地用基布に接着樹脂を塗布してなる接着芯地。

【公開番号】特開2010−222744(P2010−222744A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72538(P2009−72538)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000003975)日東紡績株式会社 (251)
【Fターム(参考)】