説明

接続用クランプ装置

【課題】ストッパー8を設けて被締結部2に対するストラップバンド3の締付け力を一定に維持する品質管理が可能な接続用クランプ装置1を提供する。
【解決手段】螺子5の回転操作によりストラップバンド3の他端部側3Bが一端部側3Aの上面を相対的に摺動するが、ストッパー8により他端部側3Bの摺動量が規制される。このため、締付けトルクが設定された締付け工具を用いることにより、ストッパー8により他端部側3Bの摺動量が規制された位置で、ストラップバンド3に一定の締付け力を付与することができる。これにより、被締結部2に対するストラップバンド3の締付け力を一定に維持する品質管理が可能となり、接続用クランプ装置1に高品質を保証し、併せて生産性の向上にも寄与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状部材を金属管などに連結する時、これらの被締結部にストラップバンドを巻いて縮径変位させることにより一定の締付け力で巻締める接続用クランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の接続用クランプ装置では、ホースクリップ(例えば、特許文献1参照)、ウォームギア式ホースクランプ(例えば、特許文献2参照)あるいは単にホースクランプなどが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
特許文献1では、ホースの外面に圧接するように湾曲したインサートシールドとストラップとの間に、バイアス装置として板ばねが設けられており、ホースクリップの内面がホースの外面に付着する傾向を少なくしている。これにより、使用期限後もホースに漏れが生じない高精度に調整可能なホースクリップを具体化している。
特許文献2では、外側バンドに設けられ、ウォームギアが噛合するギア溝列を断面矩形波状に形成し、外側バンドの断面積が減少することによる強度低下を抑制している。
特許文献3では、ホースをパイプなどに締付けるベルトとウォーム歯車を備えたハウジングとを硬質の合成樹脂により一体成形して全体の軽量化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7−26711号公報
【特許文献2】特開昭61−244906号公報
【特許文献3】特開2003−28366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
接続用クランプ装置では、品質維持の観点からストラップバンドによる締付け力の管理を行う必要があるが、特許文献1〜3のいずれも締付け力を一定に保つ品質管理を行う手段を備えていないため、被締結部に対する締付け力の点で製品にばらつきが生じ易く、製品の品質を保証するうえでの支障となる虞がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、ストッパーを設けてストラップバンドの他端部側の摺動量を一定に規制することにより、被締結部に対するストラップバンドによる締付け力を一定に保つ品質管理が可能となり、高品質を保証できる接続用クランプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(請求項1について)
有端環状のストラップバンドは、一端部側の接線方向にハウジングを設け、他端部側をハウジング内に収容する。螺子は、ハウジング内で回転操作可能に配設されている。
歯列部は、螺子の螺旋歯に噛合する複数の歯部から成り、ハウジングの内部でストラップバンドの一端部側の上面に重ね合わされる他端部側に設けられ、ストラップバンドを幅方向に横切り、長手方向に沿って並列配置されている。締付け工具による螺子の回転操作時に他端部側が一端部側の上面を相対的に摺動することにより、ストラップバンドが締付けのため縮径する。
他端部側にストッパーを取付け、螺子によるストラップバンドの締付け終了時にハウジングの一端部をストッパーに当接させ、ストラップバンドの一端部側に対する他端部側の摺動量を規制する。
【0008】
請求項1の構成では、螺子の回転操作によりストラップバンドの他端部側が一端部側の上面を相対的に摺動するが、ストッパーにより他端部側の摺動量が規制される。このため、通常の概念としては、他端部側の摺動量と被締結部に対する締付け力との関係を予め求めておけば、他端部側の摺動量により一定の締付け力を設定することができる。
一般には、エアインパクト・ドライバーなどの締付け工具のように、ストラップバンドの締付け時に、締付け工具に一定の締付けトルクを設定しているため、他端部側の摺動量がストッパーにより規制された位置で被締結部に対して一定の締付け力を付与して、螺子の締付け工程を終了することができる。
これにより、被締結部に対するストラップバンドによる締付け力を一定に保つ品質管理が可能となり、接続用クランプ装置に高品質を保証することができる。しかも、ハウジングに対するストッパーの当接を目視する必要がなくなり、螺子の締付け工程を素早く終了させることができて生産性の向上に寄与する。
【0009】
(請求項2について)
ストラップバンドは他端部側の先端を出代端としており、ストラップバンドの出代端に対応する位置にマーカー線が付され、ストラップバンドの締付け終了時に、出代端がマーカー線に至ることにより、他端部側の摺動量を目視可能にしている。
請求項2では、マーカー線により他端部側の摺動量を目視できるので、ストッパーによる摺動量の規制と相俟って、ストラップバンドの締付け力について二重の確認が可能となり、誤りのない確実な品質管理を行うことができる。
【0010】
(請求項3について)
ストラップバンドは他端部側の先端を出代端としており、ストラップバンドの出代端に対応する位置に、直線状に並ぶ複数の小突部が目視部として一列に設けられ、ストラップバンドの締付け終了時に出代端が目視部に至ることにより、他端部側の摺動量を目視可能にしている。
請求項3では、目視部により他端部側の摺動量を目視できるので、請求項2と同様に、ストラップバンドの締付け力について二重の確認が可能となり、誤りのない確実な品質管理を行うことができる。
【0011】
(請求項4について)
ストラップバンドは他端部側の先端を出代端としており、ストラップバンドの出代端に対応する位置に、細線状の凸条部が目視部として一列に設けられ、ストラップバンドの締付け終了時に出代端が目視部に至ることにより、他端部側の摺動量を目視可能にしている。
請求項4でも、目視部により他端部側の摺動量を目視できるので、請求項2と同様に、ストラップバンドの締付け力について二重の確認が可能となり、誤りのない確実な品質管理を行うことができる。
【0012】
(請求項5について)
ストッパーは両端に折曲部を有し、折曲部に挟まれた一側端に立設した突辺部を備えた金属製の矩形板である。矩形板の取付け時に突辺部を歯部、あるいは他端部側に設けた取付穴に係合させながら折曲部を他端部側にかしめている。
請求項5では、比較的簡素な構造の矩形板により、ストッパーを構成することができるので、全体の構造が複雑化せずコスト的にも有利である。しかも、突辺部を歯部あるいは取付穴に係合させることにより、ストラップバンドの他端部側に対する矩形板の位置決めが可能となる。
【0013】
(請求項6について)
ハウジングは被係合部としての開口縁辺部を有する筒状に形成されており、ストッパーは、ストラップバンドの締付け終了時に、ハウジングの開口縁辺部を遭遇させて係合させる切欠状のスリット部を有する。
請求項6では、ストラップバンドの締付け終了時に、ストッパーとハウジングとがスリット部を介して遭遇するので、ストラップバンドの締付けの終了を確認し易くなる。
【0014】
(請求項7について)
螺子によるストラップバンドの締付け終了直前に、ストッパーがハウジングに当接状態で移動することにより、自ら塑性変形してハウジングからストッパーが受ける衝撃を緩和するクラッシュ部材を構成する。
請求項7では、クラッシュ部材を設けたことにより、ハウジングに対するストッパーの衝撃が吸収により緩和されるので、ストッパーからストラップバンドに過度な引張荷重が伝わらなくなり、被締結部に与える悪影響を軽減することができる。
【0015】
(請求項8について)
ストッパーのクラッシュ部材は、他端部側にかしめられた折曲部と歯部に係合する突辺部を備えた金属製の矩形板であり、矩形板の両端部を肉取りした穴部を形成して痩身化することにより、塑性変形し易くなっている。
請求項8では、クラッシュ部材の矩形板が痩身化により塑性変形し易くなっているので、ハウジングからストッパーが受ける衝撃を十分に緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ハウジングがストッパーに当接する前の接続用クランプ装置およびストッパーを示す斜視図である(実施例1)。
【図2】(a)は図1のSa−Saに沿う横断面図、(b)は図1に示すR1方向の矢視図である(実施例1)。
【図3】ハウジング内の螺子を回転操作するエアインパクトドライバーの正面図である(実施例1)。
【図4】(a)はハウジングがストッパーに当接した際の接続用クランプ装置を示す斜視図、(b)は(a)に示すR2方向の矢視図である(実施例1)。
【図5】(a)、(b)はストッパーを成す矩形板の斜視図(実施例2)、(c)はストッパーの斜視図である(変形例)。
【図6】(a)はクラッシュ部材の斜視図、(b)は他端部側に取付けたクラッシュ部材の平面図である(実施例3)。
【図7】ハウジングに当接するクラッシュ部材の上面図である(実施例3)。
【図8】ハウジングに当接して塑性変形したクラッシュ部材の下面図である(実施例3)。
【図9】(a)、(b)はストラップバンドの締付け時間と引張り荷重との関係を示すグラフである(実施例3)。
【図10】クラッシュ部材を示す斜視図である(実施例4)。
【図11】(a)はクラッシュ部材を示す展開図、(b)はクラッシュ部材を示す斜視図である(実施例5)。
【図12】クラッシュ部材を示す斜視図である(実施例6)。
【図13】クラッシュ部材を示す斜視図である(実施例7)。
【図14】(a)〜(e)はマーカー線に代わる目視部の平面図(変形例)、(f)は(e)のV−V線に沿う縦断面図である(変形例)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の接続用クランプ装置について、ストラップバンドによる締付け力を一定に維持する品質管理を実現する構成を各実施例により具体化して示す。
【実施例】
【0018】
〔実施例1の構成〕
本発明の実施例1を図1ないし図4に基づいて説明する。
図1における接続用クランプ装置1は、とりわけホースなどの被締結部2に大きな面圧の締付け力を必要とする場合に好適であり、例えば、過給機付きエンジン(図示せず)であって、空気の充填率を高めるため、圧搾空気を冷却するインタークーラーと吸気管(いずれも図示せず)とを接続する場合に適用される。以後、被締結部2に対する巻締め力と締付け力とは、互いに同一の意味で使用する。
【0019】
接続用クランプ装置1は、被締結部2を囲繞して締付ける有端環状のストラップバンド3を備えている。ストラップバンド3は、例えばSUS304系のステンレス鋼板などの弾性材により、所望の幅寸法と長さ寸法とを有する帯状に形成されている。
【0020】
ストラップバンド3の一端部側3Aには、例えば、図1に示すように、筒状のハウジング4が一端部側3Aの概ね接線方向に取付けられている。ハウジング4は、図2(a)に示すように、丸屋根部4aと丸屋根部4aの基底部から延出する両側の取付け辺4bを有する。両側の取付け辺4bを一端部側3Aの裏面3sに対して内側に折り曲げ、例えば、プロジェクション溶接によりハウジング4を一端部側3Aに固定する。この場合、取付け辺4bは、プロジェクション溶接に代わって、かしめにより一端部側3Aに固定してもよい。
【0021】
螺子5は、六角頭部5aと螺旋歯5sを有する軸部5bから成り、軸部5bをハウジング4内で回転操作できるように配設している。
ストラップバンド3の他端部側3Bは、ハウジング4の内部で一端部側3Aの上面3tに重ね合わされている{図2(a)参照}。ストラップバンド3の他端部側3Bには、図1に示すように、螺子5の螺旋歯5sに噛合する複数の歯部6aから成る歯列部6が設けられている。歯列部6の歯部6aは、細長なスリットであり、ストラップバンド3を幅方向に横切り、長手方向に沿って一定の間隔で並列配置されている。
以後、ストラップバンド3の一端部側3Aおよび他端部側3Bについては、特に断らない限り、ストラップバンド3を付さず、単に一端部側3Aおよび他端部側3Bとして説明する。
【0022】
螺子5の回転操作に伴い、ストラップバンド3の他端部側3Bが一端部側3Aの上面を相対的に摺動することにより、ストラップバンド3が縮径して被締結部2を巻締める(図1参照)。
ストラップバンド3は、図2(b)に示すように、他端部側3Bの先端を出代端3Sとしており、ストラップバンド3の出代端3Sに対応する位置に各種の色彩で塗装されたマーカー線7が付されている。
【0023】
ストラップバンド3の巻締め終了時、出代端3Sが後述するマーカー線7に至ることにより、他端部側3Bの摺動量を目視可能にしている。
マーカー線7は、例えば、締付け上限位置7aと締付け下限位置7bとから上下二段に形成されており、出代端3Sが締付け上限位置7aと締付け下限位置7bとの帯域内に位置する限り、被締結部2に対するストラップバンド3の締付け力が正常であるとする。
なお、締付け上限位置7aと締付け下限位置7bには、彩色に加えて細長い底付溝状の窪みをプレス加工などにより形成してもよい。また、マーカー線7は螢光塗料などにより形成して、暗闇でも目視可能としてもよい。
【0024】
ストラップバンド3の他端部側3Bには、ハウジング4と対向するように位置するストッパー8が設けられている(図1参照)。ストッパー8は、金属製の矩形板9であり、中央の本体部9dと本体部9dの両端部に形成した折曲部9a、9bと本体部9dの一側端面部に立設した突辺部9cとを備えている。
矩形板9をストッパー8として他端部側3Bに取付ける際、突辺部9cを歯部6aに係合させながら折曲部9a、9bを他端部側3Bにかしめている。この場合、折曲部9a、9bは、かしめに加えて溶接により他端部側3Bに取付けてもよい。
【0025】
螺子5の締付け工程で螺子5を回転操作する際、一例として図3に示すエアインパクト・ドライバー10を締付け専用工具として用いる。
エアインパクト・ドライバー10には、一定の締付けトルクが設定されており、ドライバー本体10a内に圧搾空気を供給することにより、引き金10cを介して羽根付き伝達軸(図示せず)を回転駆動し、螺子5の六角頭部5aが嵌め込まれたレンチヘッド10bを一定の締付けトルクで回転操作する。
これにより、螺子5が図1の矢印Y方向に回転操作されるため、螺旋歯5sが歯列部6の歯部6aを押圧し、他端部側3Bが一端部側3Aの上面を図1の矢印Z方向に相対的に摺動することにより、ストラップバンド3が縮径して被締結部2を巻締める。
【0026】
そして、ストラップバンド3の巻締め終了時、図4(a)に示すように、ハウジング4の開口縁辺部4dを矩形板9の一端部9sに当接させ、一端部側3Aに対する他端部側3Bの摺動量を規制し、螺子5の回転操作を阻止する。
【0027】
螺子5の回転が阻止されるので、レンチヘッド10bは、エアインパクト・ドライバー10による駆動力を受けるものの、回転付勢したまま螺子5を一定の締付けトルクで締付ける。この時点で、操作者は、レンチヘッド10bをエアインパクト・ドライバー10と一緒に螺子5から抜き取って螺子5の締付け工程を終える。
この際、図4(b)に示すように、出代端3Sが締付け上限位置7aと締付け下限位置7bとの幅域内に位置することを目視することにより、被締結部2に対するストラップバンド3の締付け力が適切であるか否かを判別することができる。
【0028】
〔実施例1の効果〕
上記構成では、螺子5の回転操作により、ストラップバンド3の他端部側3Bが一端部側3Aの上面を相対的に摺動するが、ストッパー8(矩形板9)により他端部側3Bの摺動量が規制される。
【0029】
この際、エアインパクト・ドライバー10などの締付け工具を用い、ストラップバンド3の締付け時、締付け工具に一定の締付けトルクを設定している。このため、他端部側3Bの摺動量がストッパー8により規制された位置で被締結部2に一定の締付け力を付与して、螺子5の締付け工程が終了する。
これにより、被締結部2に対するストラップバンド3による締付け力を一定に保つ品質管理が可能となり、接続用クランプ装置1に高品質を保証することができる。しかも、ハウジング4に対するストッパー8の当接を目視する必要がなくなり、螺子5の締付け工程を素早く終了させることができて生産性の向上に寄与する。
【0030】
とりわけ、ストッパー8を矩形板9としているので、締付け終了時にストッパー8に対するハウジング4の当接状態が面接触となり、点接触や線接触により当接する構造のものと異なり、ストラップバンド3のゆがみを緩和して一端側方向への片寄りを防ぐことができる。
【0031】
また、出代端3Sが位置するマーカー線7により他端部側3Bの摺動量を目視できるので、ストッパー8による摺動量の規制と相俟って、ストラップバンド3の締付け力について二重の確認が可能となり、誤りのない確実な品質管理を行うことができる。
また、比較的簡素な構造の矩形板9により、ストッパー8を構成することができるので、全体の構造が複雑化せずコスト的にも有利である。しかも、突辺部9cを歯部6aに係合させるという簡素な構成で、ストラップバンド3の他端部側3Bに対するストッパー8の位置決めが可能となる。
【0032】
〔実施例2〕
図5(a)、(b)は本発明の実施例2を示す。実施例2が実施例1と異なるところは、ストッパー8における一端部9sで本体部9dの両側に第1切欠溝9Eおよび折曲部9a、9bに第2切欠溝9Fをそれぞれ形成したことである{図5(a)参照}。
矩形板9の折曲部9a、9bを他端部側3Bによりかしめる際、第1切欠溝9Eと第2切欠溝9Fとが重なり合って連通溝9Gを切欠状のスリット部として形成する{図5(b)参照}。そして、ストラップバンド3の巻締め終了時、ハウジング4の開口縁辺部4dが、図5(b)の一点鎖線で示すように、被係合部として連通溝9Gに遭遇して係合する。なお、ストラップバンド3における歯部6aの隙間形状と突辺部9cの先端形状とを同一に設定し、突辺部9cを歯部6aにがたつかせることなく、確実に係合させてストッパー8の位置決めを図ってもよい。
【0033】
〔実施例2の効果〕
実施例2では、ストラップバンド3の巻締め終了前にハウジング4の開口縁辺部4dがストッパー8の連通溝9Gに係合するに伴って、ストッパー8とハウジング4とが連通溝9Gを介して遭遇するので、ストラップバンド3の締付けの終了を確認し易くなる。
図5(c)は実施例2の変形例を示す。この変形例が実施例2と異なるところは、折曲部9a、9bの外側端部を一端部9sから延長させて両側に側端部9H、9Jを形成したことである。
これにより、ストラップバンド3の巻締め終了前にハウジング4の開口縁辺部4dが一点鎖線で示すように、側端部9H、9Jの長手方向に沿ってスライドして連通溝9Gに係合するようになる。
【0034】
このため、ストラップバンド3の巻締め力が大きくなった際、ハウジング4に変形力が加わっても、ハウジング4の開口縁辺部4dは側端部9H、9Jで拘束されているため、不動状態となって、ハウジング4の口開きを抑制する強度補完効果が得られる。
また、側端部9H、9Jを延長寸法Thとして所定に設定することにより、ハウジング4の開口縁辺部4dが側端部9H、9Jで占める位置により、ストラップバンド3の締付け力を最大締付け力から最小締付け力の範囲内で判別することができる。
【0035】
〔実施例3〕
図6ないし図8は本発明の実施例3を示す。実施例3が実施例1と異なるところは、ストッパー8がクラッシュ部材13を兼ねるように構成したことである。
ストッパー8である矩形板9は、図6(a)に示すように、一方の折曲部9aと本体部9dとにかけて長円の貫通穴9fが形成され、他方の折曲部9bと本体部9dとにかけて長円の貫通穴9gが形成されている。
【0036】
矩形板9の本体部9dは、小円穴9hとともに、小円穴9hを挟む長円穴9j、9kを穴部として形成し、肉取りによる痩身化を図っている。
矩形板9のうち、突辺部9cの反対側となる一端部9sにストッパー部8Aを兼ねさせている。また、矩形板9のうち、貫通穴9f、9g、小円穴9hおよび長円穴9j、9kの配置区域を塑性変位領域Spとしている。塑性変位領域Spは、一定以上の荷重を受けて座屈変形し易いクラッシャブル・エリアとして機能するが、この座屈変形は後述するように塑性変形として説明する。
【0037】
矩形板9は、実施例1と同様に、折曲部9a、9bをストラップバンド3の他端部側3Bにかしめる。これに伴い、折曲部9a、9bのストッパー部8Aに存する留置部分8Bを他端部側3Bに溶接などの取付け手段により固定する{図6(b)および図7参照}。ストッパー部8Aの留置部分8Bは、他端部側3Bに対してかしめるだけでもよい。
【0038】
ストラップバンド3を被締結部2に締付けるには、図3のエアインパクト・ドライバー10を用いて、実施例1と同様に、螺子5を回転操作する。
これにより、ストラップバンド3の巻締め終了直前に、ハウジング4の開口縁辺部4dにクラッシュ部材13が当接しながら移動する。
この過程で、ハウジング4は、図8に示すように、折曲部9a、9bを他端部側3Bに摺動させながら、クラッシュ部材13を塑性変形させて停止し、被締結部2に対するストラップバンド3の巻締めが終了する。
【0039】
〔実施例3の効果〕
実施例3では、螺子5の回転操作時、クラッシュ部材13の塑性変形により、ハウジング4からストッパー8が受ける衝撃が吸収により緩和されるので、ストッパー8からストラップバンド3に過度な引張り荷重が伝わらなくなる。これに伴い、ストラップバンド3が被締結部2に食い込んだり、局部的な締付け力を及ぼして被締結部2の荷重分布を不均等にするという悪影響が減少する。
【0040】
ちなみに、図9(a)、(b)に示すグラフは、ストラップバンド3の締付け時間Rとストラップバンド3が受ける引張り荷重Wとの関係を示したものである。
図9(a)のグラフは、ストッパー8のみを設けた場合で、図9(b)のグラフは、ストッパー8にクラッシュ部材13を兼用させた場合である。
図9(a)では、ストッパー8とハウジング4との当接時、記号Mで示すように引張り荷重Wが一時的に大きな負荷としてスパイク状に立ち上がる。これに対して、図9(b)では、クラッシュ部材13とハウジング4との当接時、記号Nで示すように引張り荷重Wの立ち上がりが極めて緩やかになり、ハウジング4に働くストッパー8の衝撃力が大幅に緩和されることが分かる。
【0041】
〔実施例4〕
図10は本発明の実施例4を示す。実施例4が実施例3と異なるところは、ストッパー8である矩形板9には、貫通穴9f、9gの代わりに矩形穴9m、9nの幅域を塑性変位領域Spとして設けたことである。
また、クラッシュ部材13を成す矩形板9の本体部9dには、実施例3の小円穴9hおよび長円穴9j、9kに代わって、U字状の切欠部9pおよび切欠部9pの両側に位置する縦穴部9q、9tを形成している。
このように構成しても、実施例3と同様な効果が得られる。
【0042】
〔実施例5〕
図11は本発明の実施例5を示す。実施例5が実施例4と異なるところは、図11(a)に示すように、ストッパー8の基端部に長尺なストッパー部8Aを板状に延出形成したことである。
ストッパー部8Aに隣接する本体部9dには、互いに突辺部9cと、平行な二本の折目線8v、8wが形成されている。本体部9dを折目線8v、8wに沿ってそれぞれ一定の傾斜角{図11(b)のθ参照}で外部に膨出させることにより、ストッパー部8Aに対して勾配を有する傾斜部8yを設けている。また、矩形板9の本体部9dには、実施例4の切欠部9pおよび縦穴部9q、9tを含む領域に比較的大きな矩形状の切欠部9uを形成している。
【0043】
ストッパー8をストラップバンド3の他端部側3Bに取付ける際、図11(b)に示すように、矩形板9における折曲部9a、9bを折り曲げて他端部側3Bにかしめてクラッシュ部材13を構成するとともに、ストッパー部8Aの留置部分8Bを他端部側3Bにかしめて溶接などの取付け手段により固定する。
このように構成しても、実施例3と同様な効果が得られる。
【0044】
〔実施例6〕
図12は本発明の実施例6を示す。実施例6のクラッシュ部材13は、他端部側3Bにかしめ等で固定された金属製の板部13aと、板部13aの一端部に並列状態に延設されてストッパー部13pとして機能する左右の筒状部13b、13cとを備えている。
板部13aの他端部には、小さな厚みTで一定幅Lのスクロール部13jを有する転位板部13dが一体に延出形成されている。
スクロール部13jは、転位板部13dを二つ折りしたとき先端部に生じる円弧状の曲成部であり、転位板部13dが長手方向Hに押圧された時、スクロール部13jは塑性変形を連続的に受けて同方向Hに前進するようになっている。
【0045】
転位板部13dの先端両側には、左右に並列する管状の摺動部13e、13fが一体に延設されて筒状部13b、13c内にそれぞれ挿入されている。摺動部13e、13fの先端部13g、13hは、筒状部13b、13cの先端から一定の長さKだけ外部に突出してハウジング4に対向している。
このように構成しても、実施例3と同様な効果が得られる。
【0046】
図3のエアインパクト・ドライバー10を用いて螺子5を回転操作する際、ストラップバンド3の締付け終了直前に、クラッシュ部材13は、摺動部13e、13fの先端部13g、13hをハウジング4の開口縁辺部4dに当接させたまま押圧する。
これにより、摺動部13e、13fが筒状部13b、13c内を矢印J方向に摺動して、先端部13g、13hが筒状部13b、13cの先端と面一になる位置で、ハウジング4が開口縁辺部4dを筒状部13b、13cの先端に当接させて停止する。
【0047】
この過程で、転位板部13dがスクロール部13jを二点鎖線の位置から実線の位置まで塑性変形させて前進させることにより、ハウジング4から受けるストッパー部13pの衝撃力を吸収して緩和する。
この場合、摺動部13e、13fの先端部13g、13hが筒状部13b、13cの先端と面一になるまでの区間は、スクロール部13jが二点鎖線の位置から実線の位置まで前進する区域に相当し、塑性変位領域Spとして機能する。
なお、スクロール部13jには、長手方向に沿って細長な矩形穴あるいは多数列の小円穴群を設けて、スクロール部13jを塑性変形し易く構成してもよい。
【0048】
〔実施例7〕
図13は本発明の実施例7を示す。実施例7が実施例4と異なるところは、取付穴3mを他端部側3Bにおける歯列部6とは別の位置に設けたことである。
取付穴3mは、他端部側3Bの幅方向Wsに伸びるスリット状を成し、内部に突辺部9cを差し込むことにより係合させている。
実施例7では、取付穴3mに対する突辺部9cの係合方向が他端部側3Bの周方向Wtに沿っているので、突辺部9cの係合力が他端部側3Bの長手方向に沿って真っ直ぐに働く。このため、ストラップバンド3が他端部側3Bから幅方向Wsに対して左右に歪む方向の外力を受けることがない。
【0049】
(変形例)
(a)実施例1の出代端3Sにおいては、図2のマーカー線7に代わって、図14(a)に示すように、目視部7Aを設け、断面円形で点状の小突部7B、7Cをストラップバンド3の幅方向に沿って直線状に並列させて締付け上限位置7Dおよび締付け下限位置7Eを構成してもよい。小突部7B、7Cに代わって、プレス加工などにより小凹部を設けてもよい。
【0050】
(b)点状の小突部7B、7Cに代わって、図14(b)に示すように、ストラップバンド3の幅方向を横切ってジグザグ状に細かく蛇行する突条部7F、7Gを目視部7Aにおける締付け上限位置7Dおよび締付け下限位置7Eに設けてもよい。突条部7F、7Gに代わって、プレス加工などにより凹条部を設けてもよい。
小突部7B、7Cは断面円形に限らず、半球状、断面方形や断面三角形でもよい{図14(c)、(d)参照}。また、点状の小突部7B、7Cに代わって、歯列部6の歯部6aよりも幅狭な微小スリット(図示せず)を設けてもよい。
(c)目視部7Aにおいては、図14(e)、(f)に示すように、細線状の凸条部7M、7Nを締付け上限位置7Dおよび締付け下限位置7Eに設けてもよい。
【0051】
(d)実施例1のストラップバンド3は、SUS304系のステンレス鋼板に代わって、強化合成樹脂、銅板または各種の金属合金により形成してもよい。ハウジング4は、三角筒状、四角筒状、五角筒状あるいは多角筒状にしてもよい。
(e)マーカー線7の締付け上限位置7aと締付け下限位置7bとは、識別し易くするため、同一ではなく異なる色彩で着色してもよい。
(f)螺子5の軸部5bは鼓状に形成し、軸部5bがストラップバンド3の周方向に沿い易くし、歯部6aに対する螺旋歯5sの噛合数を増やしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
接続用クランプ装置のストラップバンドは、螺子の回転操作にエアインパクト・ドライバーなどの締付け工具を用いることにより、ストッパーがハウジングに当接した時点で、螺子の締付け工程を終えることができる。このため、ハウジングに対するストッパーの当接を目視する必要がなくなり、螺子の締付け工程を素早く終了させることができて生産性の向上に寄与する。優れた巻締め機能に関係業者の需要が喚起されて、関連部品などの流通を介して機械業界に適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 接続用クランプ装置
2 被締結部
3 ストラップバンド
3A ストラップバンドの一端部側
3B ストラップバンドの他端部側
3m 取付穴
3S ストラップバンドの出代端
4 ハウジング
4d ハウジングの開口縁辺部(被係合部)
5 螺子
5s 螺旋歯
6 歯列部
6a 歯部
7 マーカー線
7a、7D 締付け上限位置
7b、7E 締付け下限位置
7A 目視部
7B、7C 小突部
7M、7N 凸条部
8 ストッパー
8A、13p ストッパー部
9 矩形板
9a、9b 折曲部
9c 突辺部
9j、9k 長円穴(穴部)
9E 第1切欠溝
9F 第2切欠溝
9G 連通溝(スリット部)
9s 矩形板の一端部
13 クラッシュ部材
10 エアインパクト・ドライバー(締付け工具)
Sp 塑性変位領域
Ws 幅方向
Wt 周方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部側で前記一端部側の接線方向にハウジングを設け、前記ハウジング内に他端部側を収容する有端環状のストラップバンドと、
前記ハウジング内で回転操作可能に配設された螺子と、
前記ハウジングの内部で前記ストラップバンドの前記一端部側の上面に重ね合わされる前記他端部側に設けられ、前記ストラップバンドを幅方向に横切り、長手方向に沿って並列配置されて前記螺子の螺旋歯に噛合する複数の歯部から成る歯列部とを備え、
締付け工具による前記螺子の回転操作時に前記他端部側が前記一端部側の前記上面を相対的に摺動することにより、前記ストラップバンドが締付けのため縮径する接続用クランプ装置において、
前記他端部側にストッパーを取付け、前記螺子による前記ストラップバンドの締付け終了時に前記ハウジングの一端部を前記ストッパーに当接させ、前記一端部側に対する前記他端部側の摺動量を規制するようにしたことを特徴とする接続用クランプ装置。
【請求項2】
前記ストラップバンドは前記他端部側の先端を出代端としており、前記ストラップバンドの前記出代端に対応する位置にマーカー線が付され、前記ストラップバンドの締付け終了時に前記出代端が前記マーカー線に至ることにより、前記他端部側の摺動量を目視可能にしたことを特徴とする請求項1に記載の接続用クランプ装置。
【請求項3】
前記ストラップバンドは前記他端部側の先端を出代端としており、前記ストラップバンドの前記出代端に対応する位置に、直線状に並ぶ複数の小突部が目視部として一列に設けられ、前記ストラップバンドの締付け終了時に前記出代端が前記目視部に至ることにより、前記他端部側の摺動量を目視可能にしたことを特徴とする請求項1に記載の接続用クランプ装置。
【請求項4】
前記ストラップバンドは前記他端部側の先端を出代端としており、前記ストラップバンドの前記出代端に対応する位置に、細線状の凸条部が目視部として一列に設けられ、前記ストラップバンドの締付け終了時に前記出代端が前記目視部に至ることにより、前記他端部側の摺動量を目視可能にしたことを特徴とする請求項1に記載の接続用クランプ装置。
【請求項5】
前記ストッパーは両端に折曲部を有し、前記折曲部に挟まれた一側端に立設した突辺部を備えた金属製の矩形板であり、前記矩形板の取付け時に前記突辺部を前記歯部、あるいは前記他端部側に設けた取付穴に係合させながら前記折曲部を前記他端部側にかしめたことを特徴とする請求項1に記載の接続用クランプ装置。
【請求項6】
前記ハウジングは被係合部としての開口縁辺部を有する筒状に形成されており、前記ストッパーは、前記ストラップバンドの締付け終了時に、前記ハウジングの開口縁辺部を遭遇させて係合させる切欠状のスリット部を有することを特徴とする請求項5に記載の接続用クランプ装置。
【請求項7】
前記ストッパーは、前記螺子による前記ストラップバンドの締付け終了直前に前記ハウジングが当接状態で移動することにより、自ら塑性変形して前記ハウジングから前記ストッパーが受ける衝撃を緩和するクラッシュ部材を構成することを特徴とする請求項1に記載の接続用クランプ装置。
【請求項8】
前記ストッパーの前記クラッシュ部材は、前記他端部側にかしめられた折曲部と前記歯部に係合する突辺部を備え、金属素材により形成された矩形板であり、前記矩形板の両端部を肉取り操作を行うことにより、単一あるいは複数の穴部を形成し、全体を痩身化して外力を受けた場合に、全体的に塑性変形し易くなっていることを特徴とする請求項7に記載の接続用クランプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−241838(P2012−241838A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114214(P2011−114214)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(592243357)株式会社高木製作所 (9)
【出願人】(000210986)中央発條株式会社 (173)
【出願人】(511124208)株式会社そうぎょう (1)
【Fターム(参考)】