説明

接線流濾過用ポートアダプタ

【課題】フィルタホルダ、TFFカセット、中空延長ポートアダプタを有する接線流濾過組立体を提供する。
【解決手段】フィルタホルダが、1対の圧縮マニホルドを有し、圧縮マニホルドの少なくとも1つが、外側表面、内側表面、外側表面から内側表面への流体通路に通じるポートを有する。圧縮マニホルドの間に係合されたTFFカセットが、平面の枠組み内に配置された限外濾過膜を備える単一フィルタ板を使用する。中空延長ポートアダプタが、フランジが間に配置された係合端部と挿入端部を備える。エラストマー状シール要素が、アダプタの挿入端部に配置されている。中空延長ポートアダプタが、(i)挿入端部の最遠位端が圧縮マニホルドの内側表面と面一であるか、僅かに引っ込んでおり、(ii)フランジがポート上に着座し、(iii)エラストマー状シール要素が流体通路内に無菌性水密シールを形成するように、ポートから流体通路に挿入されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年9月2日に米国特許商標庁に出願された米国仮出願第60/606,762号の特典を主張するものであり、その内容の全てが本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
精製(たとえば、微粒子または分子汚染物質を除去することによる)または濃縮(たとえば、研究室での解析のために)の目的のための膜による液体サンプルの濾過は、十分に開発された技術である。そのような目的に対して、多くの場合、液体サンプルの膜表面に対する流れは、実質的に平行(すなわち接線流れ)、または実質的に垂直(すなわち垂直流れ)のいずれかに有意に特色付けられる。
【0003】
接線流濾過(TFF)では、それよりかなり少ない量だけが膜を貫通して流れるのに対して、液体サンプルの多くの量が、濾過中、膜の表面に実質的に平行な方向に流れ続ける。そのような流れの、早期目詰まり、汚れ、および濃度分極を抑制する掃払、洗浄特性によって、接線流濾過は、対応する垂直流濾過より大きな流量および大きな処理量をしばしば達成することができる。これら、および他の長所によって、TFFシステムは、薬品製造プロセスの濾過用に中枢として採用されることが多い。
【0004】
薬品製造業者にとって、幾種類もの規模の多様な用途の接線流濾過システムが、市場で入手可能である。より大規模なTFFプロセスは、しばしば数リッタの流体を扱うが、一般に、複数の膜支持濾過板の積層中に分布する数百または数千平方センチメートルの規模の膜総面積を有するフィルタ組立体を用いる。規模がより小さいTFFプロセスは、しばしば数ミリリットルの流体を扱うが、通常、膜総面積が僅か数平方センチメートルのフィルタカセットを用いる。
【0005】
規模が小さい方のTFFは、一般に、たとえば、サンプル流体が僅かしか提供されず、無駄を最小限にしなければならないことが多い製薬会社の研究開発段階のような研究所の設備に用いられる。
【特許文献1】米国仮出願第60/606,762号明細書
【特許文献2】米国特許第6,054,051号明細書
【特許文献3】米国特許第4,761,230号明細書
【特許文献4】米国特許第5,096,582号明細書
【特許文献5】米国特許第5,256,294号明細書
【特許文献6】米国特許第5,525,144号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在入手できるものより多様な定格容量を有し、それによって研究所規模の濾過計画の設計により高い柔軟性および/または適応性を提供する小規模TFFカセット製品のより大きな製品系列を薬品製造業者に提案することに現在、利点がある。残念ながら、多くの現存のTFFカセットは、それ自体は比較的廉価で使い捨てだが、その最適な濾過能力を発揮させるには精緻な技術による専用のフィルタホルダ中で使用する必要がある。したがって、既存のフィルタホルダ中に「嵌る」新しいTFFカセットを開発できたとしても、新しいTFFカセットの固有の設計がフィルタホルダの設計に影響を与えていないために、最適な濾過を達成できそうもない。その結果、新しいTFFカセットの開発および採用は、それに適合する専用のフィルタホルダも一緒に開発し採用する必要があるとの考えが広く行きわたっていることによって、阻まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一般に、限外濾過実施用の接線流濾過組立体、特に、サンプル「残留」量を減少させる手段を組み込んだ接線流濾過組立体を対象とする。
【0008】
上記の必要性に応えて、本発明は、限外濾過TFFカセットおよび少なくとも1つの中空延長ポートアダプタを組み合わせて使用することによって、少量サンプルの限外濾過を最適化することを可能にする接線流濾過組立体を提供する。この濾過の最適化は、本来より大量のサンプルの限外濾過用に設計された既存のフィルタホルダを使用しても達成される。
【0009】
接線流濾過組立体は、一般に、フィルタホルダ、TFFカセット、および中空延長ポートアダプタを備える。
【0010】
フィルタホルダは、一対の圧縮マニホルド50a、50bを備え、少なくとも1つの前記圧縮マニホルド50aが外側表面57、内側表面58、および、前記外側表面57から前記内側表面58への流体通路52に通じるポート54を有する。
【0011】
TFFカセットは、圧縮マニホルド50aと50bの間に機能的に係合され、単一の濾過板を収容する筐体を備える。単一の濾過板自体は、実質的に平らな枠組内に配置された限外濾過膜を備える。
【0012】
中空延長ポートアダプタ10は、係合端部および挿入端部を有し、フランジ14がその間に配置され、エラストマー状シール要素16が前記挿入端部に配置されている。中空延長ポートアダプタは前記ポート54から前記流体通路52中に、(i)挿入端部の最遠位端が、圧縮マニホルド50aの内側表面58と面一であるか、またはそれから僅かに引っ込み、(ii)フランジ14が、前記ポート54上に着座し、(iii)エラストマー状シール要素16が、流体通路52内で実質的に無菌性の水密シールを形成するように、挿入されている。
【0013】
本発明は、前記接線流濾過組立体、接線流濾過キット、または接線流濾過方法として実現される。本発明の接線流濾過キットは、一般に、事前組合せ式のTFFカセットとポートアダプタ部品を含むことを特徴とする。本発明の接線流濾過方法は、比較的少量の「残留」量による接線流限外濾過を達成するために、本発明のポートアダプタを使用することを特徴とする。
【0014】
上記に照らして、「残留」量が最小限である少量限外濾過TFFカセットを使用して、接線流限外濾過を実施するための手段を提供することが本発明の基本的な目的である。
【0015】
本発明の別の目的は、フィルタホルダ、TFFカセット、および少なくとも1つの中空延長ポートアダプタを備える接線流濾過組立体を提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、TFFカセットとポートアダプタ部品の組合せを備える接線流濾過キットを提供することである。
【0017】
本発明の別の目的は、サンプル「残留」量が最小限の接線流濾過方法を提供することである。
【0018】
本発明の他の特徴および利点は、添付図面と関連して行う以下の本発明の代表的な実施形態の詳細な説明から明らかになろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、一般に、少量TFF限外濾過を実施するための手段を提供し、その手段は、「残留」量がほぼ最小限の流路を提供しながら、既存のTFFフィルタホルダ器材を使用することにより費用効果が高いことに特に特徴がある。本発明の中枢は、顧客個別構成の中空延長ポートアダプタ10である。
【0020】
中空延長ポートアダプタ10は、本来大容量接線流濾過用に設計された既存のフィルタホルダを用いて少量接線流濾過を行うことが可能なように顧客個別構成になっている。そのようなフィルタホルダは、通常、TFFカセットをその間に機能的に係合するように配置された一対の圧縮マニホルド50a、50bを備える。そのようなフィルタホルダでは、1つの前記圧縮マニホルド50a(通常は両方)が、前記外側表面57から前記内側表面58への流体通路に通じる少なくとも1つのポート54(通常は数個)を備える。図1Aおよび1Bの実施形態では、前記流体通路はポート内腔52によって設けられている。
【0021】
その基本構造に関しては、中空延長ポートアダプタ10は、図1A、1B、2A、および2Bに示すように、係合端部および挿入端部を有し、その間にフランジ14が配置され、エラストマー状のシール要素16が前記挿入端部に配置されている。
【0022】
より詳細には、中空延長ポートアダプタは、前記ポート54から前記流体通路中にその水密な挿入を行うことが可能なように、前記既存のフィルタホルダに十分な考慮を払って構成されており、挿入されたときは、(i)前記挿入端部の最遠位端が、前記圧縮マニホルド50aの前記内側表面58と面一(flush)になるか、またはそれから僅かに引っ込み、(ii)前記フランジ14が、前記ポート54上に着座し、(iii)前記エラストマー状シール要素16が、前記流体通路52内で実質的に無菌性の水密シールを形成するように、構成されている。
【0023】
諸図に示されているように、ポートアダプタは全長に亘って中空である。換言すれば、流体を通す実質的に同軸の内腔12が、アダプタの係合端部から挿入端部へ通っている。アダプタ12の内腔の直径は、標準的な限外濾過運転パラメータ内、すなわち流量40〜150ml/minおよび最大膜差圧50psiの適切な流体の流れが可能になるように設定されている。アダプタ内腔の直径は、ポート内腔の容積を最大85%、十分に減少させる値であることが好ましい。アダプタ内腔12の直径を十分に減少させることによって、アダプタを適用しないポート直径52に比較して、残留量を減少させることができ、したがって、少量限外濾過に対して有利な、または適切な流体保存レベルを得ることができる。
【0024】
典型的な、または有用なTFFフィルタホルダの基本的な構造設計は、図3に示されるホルダによって(ただし、それに限定されない)代表される。そこに示されるように、フィルタホルダは、フィルタカセット80をその中に保持するように摺動的に係合することができる1対の圧縮マニホルド50aおよび50bを備える。圧縮マニホルド50aは、基盤152上に固定的に搭載され、対向する圧縮マニホルド50bを係合するための軸柱54が備え付けられている。供給ポート、捕捉物ポート、および透過物ポートが備えられており、それぞれ、通常、ポート54のように構成されている。これら、および他のポート(たとえば、「廃棄」ポート)の正確な位置(すなわち、プレート50a、50b上の)は、TFF組立体の流体通路の構成によるフィルタホルダの設計の違いによって変わる。
【0025】
TFFカセットをTFFホルダ内に機能的に係合するために、TFFカセットが、先ず、そのポートがプレート50aのポートと位置が合うように、圧縮マニホルド50aの内側表面51と対面して位置が決められる。図3に例示的に示されるように、軸柱154と対合し係合する位置決め溝82をTFFカセット80上に設けることによって位置決めを容易にすることができる。位置決めが完了すると、背面の圧縮マニホルド50bが、軸柱153に挿し込まれ、次いで、やはりカセット80上に設けられた背面のポートと位置合わせしながら、TFFカセットの背後にしっかりと滑り込まされる。軸柱154上に配置された固定ナット156が、位置決めされた全ての箇所で実質的に水密なシールが行われるように、圧縮マニホルドをカセットに対して固定し、かつ/または締め上げるのに使用される。
【0026】
上記のように、中空延長ポートアダプタ10は、その挿入端部の最遠位端がフィルタホルダの内側表面51と面一になるか、またはそれから僅かに引っ込むように、フィルタホルダのポートに挿入されるべきである。内側表面と完全に面一になることが好ましいが、製造および使用上の容易さから、僅かな凹み、すなわち、TFF運転後にポート内腔を洗浄する必要がある範囲を限定する僅かな、または容認できる残留量にしかならないような凹みを受容するように、中空延長ポートアダプタを意図的に設計することが推奨される。ポートアダプタ10が完全に面一になるように設計するのは難しく、ポートアダプタがTFFカセット80中に突き出して、濾過プロセスを妨害し、かつ/またはTFFカセット中に収容されている膜要素に衝接しそれを損傷する危険性がある。
【0027】
ポートアダプタ10のフランジは、フィルタホルダポート54に対するポートアダプタの横方向変位を拘束するために前記フィルタホルダポート54に係合するように構成されている。ポートの中に納まった後、中空延長ポートアダプタ10を固定するためにフランジおよびポートの周りにクランプ60を用いることができる。横方向変位は内向き外向き共に、防ぐべきである。内向きの変位を防止することによって、たとえば、ポートアダプタの係合端部にホースを取り付けるために力を掛けたとき、たとえば、中空延長ポートアダプタ10が不本意ながら突き出して膜要素を損傷することを確実に防げる。外向きの変位を防止することによって、中でも、TFF運転中にしばしば遭遇する流体圧力の上昇によって中空延長ポートアダプタ10がポート内腔から飛び出すのを確実に防ぐ。
【0028】
フランジの構造は極めて多様である。図1A/2Aおよび図2A/2Bに2つの例示的例を示す。
【0029】
図1Aおよび2Aに示されるように、フランジ14は、クランプ60がポート座56上に適切に係合したとき作られる内部空間内に纏まって固く嵌り込む、または接近する複数のひれ板(fin)を備える。フランジ14は、基本的に、中空延長ポートアセンブリ10の顕著な一部として一体に成形される。
【0030】
図2Aに示される実施形態は、強度があり、しかも構造的に経済的な構造を用いており、その構造は、とりわけ、製品の容積を減らし、より良い構造剛性を付与し、容積がより大きな嵩張った構造の鋳造には伴うことが多い収縮欠陥を最小限に抑えている。ただし、これらが重要な問題でない場合は、本発明は、たとえば余肉取りや余肉切除無しのより中実の中身の詰まった形状を用いてもよい。そのような形状は鋳造がより容易であることが多い。
【0031】
図1Aおよび2Aのフランジ実施形態とは対照的に、図1Bおよび2Bの中空延長ポートアダプタ10のフランジ構成部分は、組み立てたときに外側フランジ覆いを形成する協働する半割り部分142および144内に包まれた内部フランジ14を備える。単一体の実施形態と同様に、完全に組み立てられたフランジ14、142、および144は、クランプ60がポート座56上に適切に係合したとき作られる内部空間内に固く嵌り込むか、または接する。
【0032】
単一体のフランジを用いるか、複合体のフランジを用いるか、または他の構成を用いるかは、当業者に任される。しかしながら、簡単には、単一体の構成は必要とする構成部品が少なく、他方、複合体の構成は、ガスケット状の外側フランジ要素142および144が通常すでに設けられており、それによって組み立てられたとき中空延長ポートアダプタ10の係合面に接する付加の水密シールを提供するある種の市販のTFFホルダに対応できる。
【0033】
中空延長ポートアダプタ10の挿入端部に配置されたエラストマー状シール要素16は、基本的機能(すなわち、実質的に無菌性の水密シールの提供)が達成される限り、構造、位置、および数に関して多様であり得る。好ましい実施形態では、エラストマー状シール要素は、アダプタの延長端部の最遠位端に近接する環状溝162中に配置された2本のO−リングを備える。O−リングは、中空延長ポートアダプタ10をポート内腔52中に十分に容易に挿入することが可能であり、さらに、前記「実質的に無菌性の水密シール」をそれによって実現する、接線流限外濾過を伴う水圧に耐える十分な力でポート内腔壁を押し付けるように選択された弾力性を有する材料および寸法によって構成される。
【0034】
O−リングがアダプタの遠位端から離れて配置されるほど、それだけ流体がホルダポート54中に這い込むことができるポート内腔52部分の長さが長くなる。次のTFF運転にフィルタホルダを再使用する前に、そのような長さ部分は洗浄する必要があろう。したがって、好ましい構成では、実質的な最遠位端へのO−リングの配置を試みるべきである。O−リングを単に1つではなく2個(図に示すように)使用することは、本質的にアダプタの機能には関係ない。しかし、O−リングを追加することによって、アダプタを介するポートからの流体の漏洩をさらに確実に防ぐことになり、それはある種の用途では、「残留」量を管理するのと少なくとも同等に重要なことである。
【0035】
O−リングを製造するのに利用できるエラストマー状材料には、それらに限定されないが、ブナ−Nのようなニトリル系ゴム、バイトン(米国デラウェア州ウィルミントン市のE.I.du Pont de Nemours社製のフルオロポリマー)、エチレンプロピレンゴム、AFLAS(日本国東京都の旭硝子製のテトラフルオロエチレンとプロピレンの共重合体)、シリコーン、テフロン(登録商標)、ポリテトラフルオロエチレン、テフロン(登録商標)被覆バイトン、ネオプレンが含まれる。
【0036】
中空延長ポートアダプタの係合端部は、流体導管(たとえばホース、パイプその他)を装着する手段を有するように構成されるのが好ましい。好ましい構成は、よく知られている「ルアー(luer)」タイプ接続構成であり、ルアースリップ18および対合するルアーロック182(図2Bに示す)を備える。ホースまたは他の継手(適切な対合する「雌」継手手段を備えた)をルアースリップ18上に滑り込ませ、ルアーロック182を用いて所定の位置に固定する。ルアー構成とは別の他の接続手段を使用することもでき、たとえばバーブ式ノズル(摩擦嵌合い式の導管接続用)や注射器ベースの継手を使用することができる。中空ポートアダプタは「一回使用」使い捨てが意図されているので、好ましい構成は、容易に低コストで製造でき、しかも良好な無菌性の接続を実現できる構成である。ルアータイプの構成は、これら因子の最良のバランスを実現すると思われる。
【0037】
材料および方法に関して、中空延長ポートアダプタは、それに組み立てられている構成部品(たとえばO−リング、ルアーロック)を除いて、一般に、重合体材料から、たとえばよく知られている射出成形などのプロセスによって、一体部品として(すなわち単一、同質、一様な組立不要の部品として)成形される。重合体材料の選定は、適用する薬品との適合性および「一回のみの使い捨て」目的との適合性を考慮して行われるべきである。適切な重合体材料としては、それに限定されないが、ポリカーボネート、ポリエステル、ナイロン、PTFE樹脂および他のフルオロポリマー、アクリルおよびメタクリル樹脂および重合体、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールスルホン、ポリスチレン、ポリビニルクロライド、塩素化ポリビニルクロライド、ABSならびにそのアロイおよびブレンド、ポリウレタン、熱硬化性ポリマー、ポリオレフィン(たとえば低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンおよびその共重合体)、ポリプロピレンおよびその共重合体、メタロセン生成ポリオレフィンが含まれる。好ましい重合体はポリオレフィン、特にポリエチレンおよびその共重合体、ポリスチレン、ならびにポリカーボネートである。
【0038】
好ましい実施形態では、本発明は、既存のフィルタホルダと共に使用して接線流濾過を可能にする顧客個別構成の接線流濾過キットを提供する。既存のフィルタホルダは、TFFカセットをその間に機能的に係合するように配置された一対の圧縮マニホルド50a、50bを備え、1つの前記圧縮マニホルド50aが外側表面57と、内側表面58と、前記外側表面57から前記内側表面58への流体通路52に通じるポート54とを有する。
【0039】
接線流濾過キットは、(a)少なくとも1つのTFFカセット80であって、一枚のフィルタ板を内蔵する筐体を備え、前記フィルタ板が実質的に平面の枠組み内に配置された膜を備えるTFFカセットと、(b)フランジ14がその間に配置された係合端部と挿入端部を備え、エラストマー状シール要素16が前記挿入端部に配置された中空延長ポートアダプタ10であって、前記ポート54から前記流体通路52の中へ水密に挿入されるように構成されており、挿入されたとき、(i)前記挿入端部の最遠位端が前記圧縮マニホルド50aの前記内側表面58と面一になるか、またはそれから僅かに引っ込み、(ii)前記フランジ14が前記ポート54上に着座し、(iii)前記エラストマー状シール要素16が実質的に無菌性の水密シールを前記流体通路52内に形成するような中空延長ポートアダプタとを、共通パッケージ内に収納して備えるべきである。
【0040】
任意選択の他のキット構成部品としては、たとえば、使い捨てリングクランプ60、流体導管、使い捨て流体サンプルバッグなどがある。ある種のキットの用途に対しては、望むなら、諸要素は個々に包装し、および/または事前消毒することができる。
【0041】
TFFカセット80に関し、その一般的な構造および構成はよく知られている。しかし基本的には、図4Aに概略的に示されるように、TFFカセット80は、供給入口182、捕捉物出口184、および透過物出口186、ならびに単一の限外濾過膜担持フィルタ板84を備える。適切な限外濾過膜は、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールスルホン、再生セルロース、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート、ポリアクリロニトリル、ビニル共重合体、ポリアミド(「ナイロン 6」または「ナイロン 66」など)、ポリカーボネート、PFA、それらの混合物などから形成し得る。
より詳細なTFFカセットの構成が、たとえば以下の特許文書に記載および/または開示されている。たとえば、2000年4月25日にR.D. van Reisに発行された米国特許第6,054,051号明細書、1998年8月2日にJ.F. Pacheco等に発行された米国特許第4,761,230号明細書、1992年3月17日にA.A. Lombardi等に発行された米国特許第5,096,582号明細書、1993年10月26日にR.D. van Reisに発行された米国特許第5,256,294号明細書、および1996年6月11日にA.Z. Gollanに発行された米国特許第5,525,144号明細書である。TFFカセットは、市場でも入手可能であり、たとえば、「Pellicon XL」および「Pellicon 2」TFFカートリッジ(01730 マサチューセッツ州ベッドフォードのMillipore Corporation製)、「Centramate」「Centrasette」「Maximate」および「Maximate−Ext」TFFカートリッジ(11548 ニューヨーク州イーストヒルズのPall Corporation製)がある。
【0042】
本発明にとって、好ましい接線流濾過モジュールは、限外濾過材料製の単一のシートを担持している板を1枚だけ備える市販のTFFカセットであり、特にそのような市販のTFFカセットが「線型に作られた」(すなわち、系列構成製品の全範囲を通じて濾過パラメータの比率が一定な線型である)TFFカセット系列に属している場合であり、たとえばMillipore社の「Pellicon」系列のTFFカセットである。
【0043】
単一の限外濾過TFFカセットの使用は好ましい実行方法であるが、ある種の用途では、「直列」流れ流体通路(図4B参照)またはより蓋然性の高い「並列」流れ流体通路(図4C参照)のいずれかを実現するように構成された2個以上の前記カセットを使用してもよい(たとえば、図4Bおよび4CのTFFカセット80aおよび80b参照)。当業者に知られているように、これら通路は、TFFカセット80の向きおよび/または対面の仕方と、カセット筐体および/または収納されている膜板84に設けられている内側流路、外側流路およびポートのシステムとの組合せによって作り上げられる。
【0044】
少残留量による良好な限外濾過を特徴とする本発明の接線流濾過の方法は、フィルタホルダ、TFFカセット80、および適用する中空延長ポートアダプタ10を準備することによって開始される。
【0045】
これらキットの構成要素は、基本的に上記に記載したように提供される。したがって、フィルタホルダは、TFFカセットを機能的に係合するように配置された少なくとも1対の圧縮マニホルド50a、50bであって、その1つが、外側表面57、内側表面58および、前記外側表面57から前記内側表面58への流体通路52に通じるポート54を有するマニホルドを備えるべきである。同様に、TFFカセット80は、少なくとも、膜材を収納する筐体を備えるべきである。また、中空延長ポートアダプタ10は、フランジ14が係合端部と挿入端部の間に配置され、挿入端部にエラストマー状シール要素16が配置された、係合端部および挿入端部を少なくとも備えるべきである。
【0046】
TFFカセットが圧縮マニホルド50a、50bの間に機能的に係合され、中空延長ポートアダプタ10が、(i)前記挿入端部の最遠位端が前記圧縮マニホルド50aの前記内側表面58と面一になるか、またはそれから僅かに引っ込み、(ii)前記フランジ14が前記ポート54上に着座し、(iii)前記エラストマー状シール要素16が実質的に無菌性の水密シールを前記流体通路52内に形成するように、前記流体通路52中に挿入されている。フィルタホルダに2個以上の稼動ポートが存在する場合、中空延長ポートアダプタ10が、それぞれに挿入される。
【0047】
TFFカセット10が機能的に係合され、稼動ポートの全てにアダプタが嵌められた後は、任意の所望の限外濾過事前計画に従って、サンプル流が、TFFカセット80の中へ前記中空延長ポートアダプタ10を通して押入(urge)され、または流れる。この最後のステップは、たとえば、適切な流体導管、サンプル貯蔵器、収集容器、ポンプ、バルブ、およびセンサを使用するTFFフィルタ組立体に接続すること、運転前および/または運転後の膜完全性試験の実施、および運転前蒸気殺菌の実施を含むことができる。
【0048】
本明細書には複数の実施形態が開示されているが、当業者は、本明細書に示された教示の恩恵を受けて、それらに数多くの変更を加えることができる。添付の特許請求の範囲に示されるように、これら変更は本発明の範囲内にあるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1A】本発明の実施形態による、フィルタホルダ50に設けられたポート54の内腔52中に挿入された中空延長ポートアダプタ10の概略断面図である。
【図1B】本発明の別の実施形態による、フィルタホルダ50に設けられたポート54の内腔52中に挿入された別の中空延長ポートアダプタ10の概略断面図である。
【図2A】図1Aに示された中空延長ポートアダプタ10のある特定な構成を示す図である。
【図2B】図1Bに示された中空延長ポートアダプタ10のある特定な構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態による、フィルタホルダ(50a、50b)内に機能的に係合されたTFFカセット80を備え、ホルダのポート54の内腔52中に挿入された中空延長ポートアダプタ10を有する接線流濾過組立体を示す図である。
【図4A】TFFカセット80を概略的に示す図である。
【図4B】重ね合わされた2つのTFFカセット80aおよび80bを通る「並列」流体流路を概略的に示す図である。
【図4C】重ね合わされた2つのTFFカセット80aおよび80bを通る「直列」流体流路を概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0050】
10 中空延長ポートアダプタ
12 内腔
14 フランジ
16 エラストマー状シール要素
18 ルアースリップ
50a、50b 圧縮マニホルド、フィルタホルダ、プレート
52 流体通路、ポート直径、ポート内腔
54 ポート、フィルタホルダポート
56 ポート座
57 外側表面
58 内側表面
60 クランプ
80 TFFカセット
82 位置決め溝
84 フィルタ板、膜板
142、144 外側フランジ要素、半割り部分
152 基盤
154 軸柱
156 固定ナット
162 環状溝
182 ルアーロック、供給入口
184 捕捉物出口
186 透過物出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)TFFカセットを間に機能的に係合するように配置された1対の圧縮マニホルドを備えるフィルタホルダであって、前記圧縮マニホルドの少なくとも1つが、外側表面、内側表面、および前記外側表面から前記内側表面への流体通路に通じるポートを有するフィルタホルダと、
(b)前記圧縮マニホルドの間に機能的に係合された前記TFFカセットであって、TFFカセットが単一フィルタ板を内蔵する筐体を備え、前記単一フィルタ板が実質的に平面の枠組み内に配置された限外濾過膜を備える少なくとも1つのTFFカセットと、
(c)フランジがその間に配置された係合端部と挿入端部、ならびに前記挿入端部に配置されたエラストマー状シール要素を有する中空延長ポートアダプタであって、
(i)前記挿入端部の最遠位端が前記圧縮マニホルドの前記内側表面と面一であるか、またはそれから僅かに引っ込んでおり、
(ii)前記フランジが前記ポート上に着座し、
(iii)前記エラストマー状シール要素が前記流体通路内に実質的に無菌性水密シールを形成するように、中空延長ポートアダプタが前記ポートから前記流体通路に挿入されている中空延長ポートアダプタと
を備える、少量限外濾過に有用な接線流濾過組立体。
【請求項2】
接線流濾過を可能にするべく既存のフィルタホルダと共に使用するための顧客個別構成の接線流濾過キットであって、前記既存のフィルタホルダが、TFFカセットを間に機能的に係合するように配置された1対の圧縮マニホルドを備え、前記圧縮マニホルドの少なくとも1つが、外側表面、内側表面、および前記外側表面から前記内側表面への流体通路に通じるポートを有し、接線流濾過キットが、
(a)少なくとも1つの前記TFFカセットと、
(b)フランジがその間に配置された係合端部および挿入端部を備え、エラストマー状シール要素が前記挿入端部に配置された中空延長ポートアダプタであって、前記ポートから前記流体通路の中へ実質的に水密に挿入されるように構成されており、挿入されたとき、
(i)前記挿入端部の最遠位端が前記圧縮マニホルドの前記内側表面と面一になるか、またはそれから僅かに引っ込み、
(ii)前記フランジが前記ポート上に着座し、
(iii)前記エラストマー状シール要素が実質的に無菌性の水密シールを前記流体通路内に形成するような中空延長ポートアダプタとを、共通パッケージ内に含めて備える接線流濾過キット。
【請求項3】
TFFカセットおよび中空延長ポートアダプタが事前に殺菌される請求項2に記載の接線流濾過キット。
【請求項4】
前記共通パッケージに、
(c)前記中空延長ポートアダプタが前記流体通路に挿入されたとき、前記フランジと前記ポートとを固定して係合することを可能にするクランプ
をさらに含む請求項2に記載の接線流濾過キット。
【請求項5】
中空延長ポートアダプタが、前記ポートの内部容積を最大85%減少させるような構造で構成された請求項2に記載の接線流濾過キット。
【請求項6】
(a)フィルタホルダを準備するステップであって、前記フィルタホルダが、TFFカセットを間に機能的に係合するように配置された1対の圧縮マニホルドを有し、前記圧縮マニホルドの1つが、外側表面、内側表面、および前記外側表面から前記内側表面への流体通路に通じるポートを有するステップと、
(b)1つの前記TFFカセットを準備するステップであって、TFFカセットが単一フィルタ板を内蔵する筐体を備え、前記フィルタ板が実質的に平面の枠組み内に配置された膜を備えるステップと、
(c)中空延長ポートアダプタを準備するステップであって、中空延長ポートアダプタが、フランジがその間に配置された係合端部と挿入端部、ならびに前記挿入端部に配置されたエラストマー状シール要素を有するステップと、
(d)前記TFFカセットを前記1対の圧縮マニホルドの間に係合するステップと、
(e)(i)前記挿入端部の最遠位端が前記圧縮マニホルドの前記内側表面と面一になるか、またはそれから僅かに引っ込み、(ii)前記フランジが前記ポート上に着座し、(iii)前記エラストマー状シール要素が実質的に無菌性の水密シールを前記流体通路内に形成するように、前記中空延長ポートアダプタを前記流体通路中に挿入するステップと、
(f)サンプル流体を前記中空延長ポートアダプタを通して前記TFFカセットに押入するステップと
を含む接線流濾過方法。
【請求項7】
前記TFFカセットが約2mlの内部流体容積を有する請求項6に記載の接線流濾過方法。
【請求項8】
前記膜が、公称分子量限界(NMWL)が約1kD〜約1000kDの限外濾過膜である請求項6に記載の接線流濾過方法。
【請求項9】
前記サンプル流体が、流量範囲40〜150ml/min、最大膜差圧50psiで前記TFFカセットに流入する請求項6に記載の接線流濾過方法。
【請求項10】
上記に記載の中空電極ポートアダプタおよび関連する主題事項。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【公開番号】特開2006−68734(P2006−68734A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−239389(P2005−239389)
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【出願人】(390019585)ミリポア・コーポレイション (212)
【氏名又は名称原語表記】MILLIPORE CORPORATION
【Fターム(参考)】