説明

接触分解触媒及びその製造方法ならびに炭化水素油の接触分解方法

【課題】高い分解活性とオクタン価の高いFCCガソリンを製造できる炭化水素油の接触分解触媒と、その製造方法や、それを用いる炭化水素油の接触分解方法を提供すること。
【解決手段】ソーダライトケージを含むゼオライトを20〜50質量%、シリカゾル由来のケイ素をSiO換算で10〜30質量%、第一リン酸アルミニウム由来のリン・アルミニウムをAl・3P換算で0.1〜21質量%、粘土鉱物を5〜65質量%含有することを特徴とする炭化水素油の接触分解触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素油の接触分解触媒(以下「FCC触媒」と記すこともある)と、その製造方法と、それを用いる炭化水素油の接触分解方法に関し、より詳しくは、高い分解活性を有し、なおかつガソリン留分(以下「FCCガソリン」と記すこともある)の収率を低下させることなく、オクタン価の高い高品質なガソリンを製造することができる炭化水素油の接触分解触媒及びその製造方法と、それを用いる炭化水素油の接触分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境意識の高まりや温暖化への対策が重要視されるようになり、その中でも、自動車の排気ガスが環境に与える影響は大きいので、該排気ガスのクリーン化が期待されている。自動車排気ガスのクリーン化は、自動車の性能とガソリンの燃料組成に影響を受けることが一般的に知られており、特に石油精製産業では、高品質なガソリンを提供することが求められている。
【0003】
ガソリンは、原油の精製工程において得られる複数のガソリン基材を混合することによって製造される。特に、重質炭化水素油の接触分解反応によって得られるFCCガソリンは、ガソリンへの配合量が多く、ガソリンの品質改善に与える影響は非常に大きい。
【0004】
重質炭化水素油の接触分解反応は、石油精製工程で得られる低品位な重質油を接触分解することによって、軽質な炭化水素油へと変換する反応であるが、FCCガソリンを製造する際に、副生成物として、水素・コーク、液化石油ガス(Liquid Petroleum Gas:LPG)、中間留分(Light Cycle Oil:LCO)、重質留分(Heavy Cycle Oil:HCO)が生産される。効率的にFCCガソリンを製造するためには、触媒の分解活性が高く、またFCCガソリン収率が高く、更にはオクタン価の高い高品質なFCCガソリンが得られることが当業者にとって好ましい。
【0005】
高品質なFCCガソリンを得るためには、ZSM―5などの酸性質の高いハイシリカゼオライトを触媒に添加し、FCCガソリン中の軽質オレフィン分を増加させ、FCCガソリンのオクタン価を向上させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、重質油を軽質オレフィン分と高オクタン価のFCCガソリンに転化する接触分解方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。更に、炭化水素油の接触分解を効率的に進行させる目的で、特定の性状の結晶性アルミノケイ酸塩をバインダーとしてシリカゾルとアルミナゾルを用いて粘土鉱物中に分散させた触媒を使用する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
また、炭化水素油の接触分解方法においては、近年の原油の重質化・低品位化に伴い、バナジウムやニッケル等の重金属や残留炭素分の高い原料油を流動接触分解装置に投入しなければならない事態が生じている。バナジウムは、FCC触媒に沈着し堆積すると、FCC触媒の活性成分であるゼオライトの構造を破壊するため、触媒の著しい活性低下をもたらし、かつ水素・コークの生成量を増大させ、ガソリンの選択性を低下させるなどの問題を有していることが知られている。また、ニッケルも、触媒表面に沈着堆積し、脱水素反応を促進するため水素・コークの生成量を増加させ、ガソリンの選択性を低下させるなどの問題を有している。このような原油の重質化・低品位化に対応するためには、高い分解活性を有する触媒の開発が望まれている。
【0007】
更にまた、FCC触媒の分解活性を向上させる目的で、FCC触媒にリンを含有させる方法が提案されている(例えば、特許文献4、5、6参照)。
【0008】
なお更にまた、FCC触媒にリンを含有させることで生成物選択性を向上させる方法が提案されている(例えば、特許文献7、8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭60−208395号公報
【特許文献2】特開平10−195454号公報
【特許文献3】特開平11−33406号公報
【特許文献4】特表2003−514752号公報
【特許文献5】特開昭63−197549号公報
【特許文献6】特開2006−142273号公報
【特許文献7】特開平4−354541号公報
【特許文献8】特開2007−244964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、FCCガソリンの収率が低下する欠点があった。また、特許文献2に記載の方法では、オクタン価を高くするオレフィンの量は増加するが、触媒に堆積するコークも多くなってしまうという問題があった。そして、特許文献3に記載の方法では、反応生成物中のLCO留分を増加させることはできるものの、オクタン価の高い高品質なFCCガソリンを得ることができない問題があった。
【0011】
特許文献4〜6に記載の方法はいずれも、超安定化Yゼオライトを単独でリン酸処理し、その後にFCC触媒の粒子を形成する方法であって、分解活性の向上には効果があるものの、オクタン価の高い高品質なFCCガソリンの製造に関しては課題がある。
【0012】
特許文献7に記載の触媒組成物は、硝酸アルミニウムとリン酸から調製されたリン酸アルミニウムを原料に用いた触媒組成物であるが、分解生成物中のC3、C4オレフィン類やイソブチレンの収率増大を目的としており、FCC触媒の分解活性向上を図るものではない。
【0013】
また、特許文献8に記載の触媒組成物は、結合剤に第一リン酸アルミニウムを使用した触媒組成物であるが、使用するゼオライトはペンタシル型ゼオライトのみであり、C3留分の選択性を向上させるものである。しかも、特許文献8に記載の触媒組成物は、FCC触媒に物理混合するアディティブ粒子であって、単独で重質油の接触分解に使用できるものではない。
【0014】
本発明は、以上述べた従来の諸点を考慮し、高い分解活性とオクタン価の高いFCCガソリンを製造できる炭化水素油の接触分解触媒と、その製造方法と、それを用いる炭化水素油の接触分解方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ソーダライトケージを含むゼオライトと、シリカゾル由来のケイ素と、第一リン酸アルミニウム由来のリン・アルミニウムと、粘土鉱物とを特定の割合で含有するFCC触媒であれば、炭化水素油の接触分解反応において必要な高い分解活性を示し、なおかつオクタン価の高い高品質なFCCガソリンを製造することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0016】
すなわち、本発明は以下の炭化水素油の接触分解触媒及びその製造方法ならびに炭化水素油の接触分解方法に関する。
[1]ソーダライトケージを含むゼオライトを20〜50質量%、
シリカゾル由来のケイ素をSiO換算で10〜30質量%、
第一リン酸アルミニウム由来のリン・アルミニウムをAl・3P換算で0.1〜21質量%、
粘土鉱物を5〜65質量%含有することを特徴とする炭化水素油の接触分解触媒。
[2]前記シリカゾル由来のケイ素に対する前記第一リン酸アルミニウム由来のリンのモル比が0.01〜0.75の範囲であることを特徴とする上記[1]に記載の炭化水素油の接触分解触媒。
[3]水性スラリー中の全固形分基準で以下の各成分を固形物換算したときに、
ソーダライトケージ構造を有するゼオライトを20〜50質量%、
シリカゾルをSiO換算で10〜30質量%、
第一リン酸アルミニウムをAl・3P換算で0.1〜21質量%、及び
粘土鉱物を5〜65質量%含有する水性スラリーを用いることを特徴とする炭化水素油の接触分解触媒の製造方法。
[4]水性スラリーにおけるシリカゾル由来のケイ素に対する第一リン酸アルミニウム由来のリンのモル比が0.01〜0.75の範囲であることを特徴とする上記[3]に記載の炭化水素油の接触分解触媒の製造方法。
[5]上記[3]または[4]に記載の製造方法で製造された炭化水素油の接触分解触媒。
[6]上記[1]、[2]または[5]に記載の炭化水素油の接触分解触媒を使用することを特徴とする炭化水素油の接触分解方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る接触分解触媒は、高い分解活性を有しており、接触分解反応時に高収率でガソリン、中間留分(LCO)を得ることができる。一般に炭化水素油の流動接触分解は、その性質上、わずかでも分解活性が向上するとFCC装置にかかるコスト及び負担を減少させることができる。更に、一般にFCCガソリンは、市場に出荷するガソリンへの配合量が多く、FCCガソリンのオクタン価向上により生み出される利益は非常に大きい。即ち、本発明の接触分解触媒は、上記のように、高い分解活性を示し、なおかつオクタン価の高い高品質なFCCガソリンを製造することができるものであって、実用上極めて有効である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
≪触媒の構成成分≫
<ソーダライトケージを含むゼオライト>
本発明の接触分解触媒(以下「本発明の触媒」とも記載する)は、ソーダライトケージを含むゼオライトを含有する。
本発明の触媒は、ソーダライトケージを含むゼオライトを20〜50質量%、好ましくは35〜45質量%含有する。ソーダライトケージを含むゼオライトの量が20質量%以上であれば、所期の分解活性を得ることができ、また、50質量%以下であれば、相対的に触媒を構成する他の成分の量が少なくなりすぎて、触媒強度が低下すること、また触媒の嵩密度が小さくなり、装置の運転において好ましくない結果が生じること、を回避できる。
【0019】
ゼオライトのソーダライトケージは、アルミニウム及びケイ素四面体を基本単位とし、頂点の酸素をアルミニウム又はケイ素が共有することにより形成される立体的な正八面体の結晶構造の各頂点を切り落とした形の十四面体のゼオライトの結晶構造により規定される空隙構造であって、四員環と六員環の細孔構造を有している。このソーダライトケージ同士の結合場所や方法が変化することによって種々の細孔構造、骨格密度、チャンネル構造を有するソーダライトケージを含むゼオライトがある。しかして、本発明で用いるソーダライトケージを含むゼオライトとしては、上記種々の細孔構造、骨格密度、チャンネル構造を有するソーダライトケージを含むゼオライトを用い得て、ソーダライト、A型ゼオライト、EMT、Xゼオライト、Yゼオライト、安定化Yゼオライトなどが挙げられ、好ましくは安定化Yゼオライトである。
【0020】
この好ましく用いられる安定化Yゼオライトは、Yゼオライトを出発原料として合成され、Yゼオライトと比較して、結晶化度の劣化に対し耐性を示すものであり、一般には、Yゼオライトを高温での水蒸気処理を数回行った後、必要に応じて、塩酸等の鉱酸、水酸化ナトリウム等の塩基、フッ化カルシウム等の塩、エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤で処理することにより得られる。上記の手法で得られた安定化Yゼオライトは、水素、アンモニウムあるいは多価金属から選ばれるカチオンでイオン交換された形で使用することができる。また、安定化Yゼオライトとして、より安定性に優れたヒートショック結晶性アルミノシリケートゼオライト(特許第2544317号公報参照)を使用することもできる。
【0021】
本発明で用いる安定化Yゼオライトは、一般に、(a)化学組成分析によるバルクのSiO/Alモル比が4〜15、好ましくは5〜10、(b)単位格子寸法が24.35〜24.65Å、好ましくは、24.40〜24.60Å、(c)ゼオライト骨格内Alの全Alに対するモル比が0.3〜1.0、好ましくは0.4〜1.0、のものを用いる。この安定化Yゼオライトは、天然のフォージャサイトと基本的に同一の結晶構造を有し、酸化物として下記組成式(I)を有する。
〔組成式(I)〕
(0.02〜1.0)R2/mO・Al・(5〜11)SiO・(5〜8)H
式中;R:Na、K、その他のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン
m:Rの原子価
【0022】
上記安定化Yゼオライトにおける単位格子寸法はX線回折装置(XRD)により測定することができ、また、全Alに対するゼオライト骨格内Alのモル数は、化学組成分析によるSiO/Al比及び単位格子寸法から下記数式(A)〜(C)を用いて算出される値である。なお、数式(A)は、H.K.Beyer et al.,J.Chem.Soc.,Faraday Trans.1,(81),2899(1985).に記載の式を採用したものである。
〔数式(A)〕
Al= (a0−2.425)/0.000868
式中;a0:単位格子寸法/nm
Al:単位格子あたりのAl原子数
2.425:単位格子骨格内の全Al原子が骨格外に脱離したときの単位格子寸法
0.000868:実験により求めた計算値であり、a0とNAlについて1次式で整理したとき(a0=0.000868NAl+2.425)の傾き
〔数式(B)〕
(Si/Al)計算式=(192−NAl)/NAl
式中;192:Yゼオライトの単位格子寸法あたりの(Si+Al)の原子数
〔数式(C)〕
ゼオライト骨格内Al/全Al =(Si/Al)化学組成分析値/(Si/Al)計算式
【0023】
ゼオライトのSiO/Alモル比は、触媒の酸強度を示しており、モル比が大きいほど触媒の酸強度が強くなる。SiO/Alモル比が4以上であれば、重質炭化水素油の接触分解に必要な酸強度を得ることができ、その結果分解反応が好ましく進行する。SiO/Alモル比が15以下であれば、触媒の酸強度は強くなり、また必要な酸の数を確保でき、重質炭化水素油の分解活性を確保し易くなる。
【0024】
上記ゼオライトの単位格子寸法は、ゼオライトを構成する単位ユニットのサイズを示しているが、24.35Å以上であれば、重質油の分解に必要なAlの数が適当であり、その結果分解反応が好適に進行する。24.65Å以下であれば、ゼオライトの結晶の劣化を防ぎやすく、触媒の分解活性の低下が著しくなることを回避することができる。
【0025】
ゼオライト結晶を構成するAlの量が多くなりすぎると、結果、ゼオライトの骨格から脱落したAl粒子が多くなり、強酸点が発現しないために接触分解反応が進行しなくなるおそれがあるが、上記ゼオライト骨格内Alの全Alに対するモル比が0.3以上であれば、上記現象を回避できる。また、ゼオライト骨格内Alの全Alに対するモル比が1に近いと、ゼオライト内のAlの多くがゼオライト単位格子に取り込まれていることを意味し、ゼオライト内のAlが強酸点の発現に効果的に寄与するため好ましい。
本発明の接触分解触媒では、以上述べたソーダライトケージを含むゼオライトを用いることによって、所期の高分解活性を有することができる。
【0026】
<シリカゾル由来のケイ素>
本発明の接触分解触媒は、シリカゾル由来のケイ素を酸化物の状態で含有する。
シリカゾルは本発明の触媒の製造時において、結合剤として使用される。ここで、結合剤とは、ゼオライト及び粘土鉱物の粒子間に存在して、触媒を微粒子化する時の成形性を良くし、球状にさせ、また得られる触媒微粒子の流動性及び耐摩耗性を図るために使用するものである。
【0027】
本発明の触媒ではシリカゾル由来のケイ素をSiO換算で10〜30質量%、好ましくは15〜30質量%、より好ましくは15〜20質量%含有する。含有量が10質量%未満では十分な強度が得づらく、触媒の散飛、生成油中への混入等の好ましくない現象が起きやすくなる。30質量%を超えても使用量に見合った触媒性能の向上は得られない傾向にあり、経済的ではない。
【0028】
シリカゾルとしては、種々の珪素化合物を使用できるが、水溶性のシリカゾルが好ましい。また、シリカゾルには、幾つかの種類が知られており、コロイダルシリカを例に挙げれば、ナトリウム型、リチウム型、酸型等があり、本発明はいずれの型を用いてもよい。また、シリカゾルとしては、ゾル状である限りにおいてはそのSiO濃度は特に限定はなく、例えば10質量%程度のものから50質量%程度のものまで幅広く使用することができる。更に、商業的規模での生産の場合、希釈水ガラス水溶液と硫酸水溶液とを反応させて得られるシリカヒドロゾルなどを用いることもできる。
【0029】
<第一リン酸アルミニウム由来のリン及びアルミニウム>
また、本発明の接触分解触媒は、第一リン酸アルミニウム由来のリン及びアルミニウムを酸化物の状態で含む。第一リン酸アルミニウムは、一般式[Al(HPO]で示される水溶性の酸性リン酸塩であり、第一リン酸アルミニウム、モノリン酸アルミニウム又は重リン酸アルミニウムとも称される。第一リン酸アルミニウムは加熱によって脱水され、水分を失うと、酸化物形態となって安定化する。第一リン酸アルミニウムとしては、第一リン酸アルミニウムの状態である限りにおいてはそのAl・3P換算濃度に特に限定はなく、例えば30質量%程度のものから95質量%程度のものまで幅広く用いることができる。
第一リン酸アルミニウムは他のアルミニウム源と比較して、水溶液中で多核錯体のポリマーとして存在しており、表面に多量の水酸基を含有しているため、強い結合力を発揮する。すなわち、上記のシリカゾルと同様に、本発明の接触分解触媒の製造において、結合剤として機能する。
また、第一リン酸アルミニウムを使用することで触媒中の酸性質が変化し、それによって所期の高い分解活性を示し、オクタン価の高いFCCガソリンを得られる触媒とすることができる。
【0030】
本発明の触媒では第一リン酸アルミニウム由来のリン・アルミニウムをAl・3P換算で0.1〜21質量%、好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%、特に好ましくは0.5〜5質量%含有する。第一リン酸アルミニウム由来のリン・アルミニウムの含有量が下限値未満では十分な分解活性向上効果が得づらい。一方、上限値を超えても使用量に見合った触媒性能の向上は得られない傾向にあり、またオクタン価の高いFCCガソリンが得づらくなる傾向にある。
【0031】
本発明で用いる第一リン酸アルミニウムは、本発明の触媒の製造に当たり、例えばシリカゾルと共に結合剤水溶液を調製して用いることもできるし、ソーダライトケージを含むゼオライトと粘土鉱物と共にスラリーを調製し、該スラリーをシリカゾルの水溶液と混合するようにして用いることもできる。
【0032】
<リン/ケイ素モル比>
また、本発明の触媒において、シリカゾル由来のケイ素に対する第一リン酸アルミニウム由来のリンのモル比(以下「リン/ケイ素モル比」とも言う。)は、好ましくは0.01〜0.75、より好ましくは0.01〜0.35、特に好ましくは0.03〜0.35の範囲である。リン/ケイ素モル比が0.01以上であれば高い分解活性が得られ、また0.75以下であれば高オクタン価のFCCガソリンが得られるため好ましい。リン/ケイ素モル比は、第一リン酸アルミニウムとシリカゾルの配合量を調節することにより設定することができる。
【0033】
<粘土鉱物>
また、本発明で用いる粘土鉱物としては、モンモリロナイト、カオリナイト、ハロイサイト、ベントナイト、アタパルガイト、ボーキサイト等の粘土鉱物を用いることができる。また、本発明の触媒においては、シリカ、シリカ−アルミナ、アルミナ、シリカ−マグネシア、アルミナ−マグネシア、リン−アルミナ、シリカ−ジルコニア、シリカ−マグネシア−アルミナ等の通常の接触分解触媒に使用される公知の無機酸化物の微粒子を上記粘土鉱物と併用して使用することもできる。
【0034】
本発明の触媒では粘土鉱物を5〜65質量%、好ましくは10〜60質量%の範囲内で含有する。粘土鉱物が5質量%未満であると、触媒強度や、触媒の嵩密度が小さくて、装置の運転に支障をきたすおそれがあり、また、65質量%を超えると、相対的にソーダライトケージを含むゼオライトや結合剤の量が少なくなり、所期の分解活性が得られなくなることや、結合剤量の不足により触媒の調製が困難となるおそれがある。
【0035】
<希土類金属>
本発明の触媒は、必要に応じて希土類金属を含有させることができる。
希土類金属の種類としては、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ガドリニウム、ディスプロシウム、ホルミウム等の1種あるいは2種以上を含有させることができ、好ましいのはランタン、セリウムである。希土類金属を含有させると、ゼオライト結晶の崩壊を抑制することができ、触媒の耐久性を高めることができる。
【0036】
本発明の触媒が希土類金属を含有する場合は、触媒中の希土類の含有量は、触媒を基準で、酸化物として0.01〜10質量%含有していてもよい。希土類の含有量が上記範囲であれば、高分解活性を示し、かつ、高オクタン価ガソリンを得ることができる。
【0037】
<その他>
本発明の触媒では、本発明の所期の効果が得られる限りにおいて、アルミナゾル等の他の結合剤を一部混合して使用できる。
【0038】
≪触媒の製造方法≫
本発明の接触分解触媒は種々の手法によって製造することができるが、好ましい製造方法は、本発明にかかる接触分解触媒の製造方法である、ソーダライトケージを含むゼオライト、シリカゾル、第一リン酸アルミニウム及び粘土鉱物を含有する水性スラリーを用いる製造方法である。以下、本発明にかかる接触分解触媒の製造方法について説明する。
【0039】
本発明の製造方法で用いる水性スラリー中に含まれる各成分は以下の通りである。
ソーダライトケージを含むゼオライトとしては、本発明の接触分解触媒の説明で述べた各種ゼオライトを用いることができ、最も好ましく用いられるものは安定化Yゼオライトである。
水性スラリー中に含有されるソーダライトケージを含むゼオライトの割合は、スラリー中の全固形分を基準に換算したときに、20〜50質量%であり、35〜45質量%とすることが好ましい。水性スラリー中に含有するソーダライトケージを含むゼオライトの量が20質量%以上であると、得られる接触分解触媒に所期の分解活性を付与することができ、また、50質量%以下であると、得られる接触分解触媒における他の成分の含有量を所望の範囲にすることができることから、好ましい触媒強度や触媒の嵩密度としやすく、装置を好適に運転し得る接触分解触媒を得ることができる。
【0040】
シリカゾルとしては、本発明の接触分解触媒の説明で述べた各種シリカゾルを用いることができる。
水性スラリー中に含有されるシリカゾルの割合は、スラリー中の全固形分を基準に換算したときに、SiO換算で10〜30質量%、好ましくは15〜30質量%、より好ましくは15〜20質量%含有する。含有量が10質量%未満では十分な強度が得づらく、触媒の散飛、生成油中への混入等の好ましくない現象が起きやすくなる。30質量%を超えても使用量に見合った触媒性能の向上は得られない傾向にあり、経済的ではない。
【0041】
第一リン酸アルミニウムとしては、本発明の接触分解触媒の説明で述べた各種第一リン酸アルミニウムを用いることができる。
水性スラリー中に含有される第一リン酸アルミニウムの割合は、スラリー中の全固形分を基準に換算したときに、Al・3P換算で0.1〜21質量%、好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%、特に好ましくは0.5〜5質量%であることが特に好ましい。水性スラリー中に含有する第一リン酸アルミニウムの量が0.1質量%未満では十分な分解活性向上効果が得づらい。21質量%を超えても使用量に見合った触媒性能の向上は得られない傾向にあり、またオクタン価の高いFCCガソリンが得づらくなる。
【0042】
粘土鉱物としては、本発明の接触分解触媒の説明で述べた各種粘土鉱物を用いることができる。
水性スラリー中に含有される粘土鉱物の割合は、スラリー中の全固形分を基準に換算したときに、5〜65質量%であり、10〜60質量%であることが好ましい。水性スラリー中に含有する粘土鉱物の量が5質量%未満であると、触媒強度や、触媒の嵩密度が小さくて、装置の運転に支障をきたすおそれがあり、また、65質量%を超えると、相対的にソーダライトケージを含むゼオライトや結合剤の量が少なくなり、所期の分解活性が得られなくなることや、結合剤量の不足により触媒の調製が困難となるおそれがある。
【0043】
上記の水性スラリー中において、シリカゾル由来のケイ素に対する第一リン酸アルミニウム由来のリンのモル比(以下「リン/ケイ素モル比」とも言う。)は、好ましくは0.01〜0.75、より好ましくは0.01〜0.35、特に好ましくは0.03〜0.35の範囲である。リン/ケイ素モル比が0.01以上であれば高い分解活性を有する触媒が得られ、また0.75以下であれば高オクタン価のFCCガソリンが得られる触媒を製造できるため好ましい。リン/ケイ素モル比は、第一リン酸アルミニウムとシリカゾルの配合量を調節することにより設定することができる。
【0044】
上記各成分を含有する水性スラリー中の全固形分の含有割合は、約5〜60質量%になるように調整することが好ましく、10〜50質量%になるように調整することがより好ましい。固形分の含有割合が上記範囲内であれば、蒸発させる水分量が適当となり、噴霧乾燥工程などで支障をきたすことがなく、また、水性スラリーの粘度が高くなり過ぎて、水性スラリーの輸送が困難になることがない。
【0045】
上記水性スラリーの調製方法としては、上記の各成分を所定の割合で含有し、均一に分散したものとすることができれば特に限定はなく、例えば、シリカゾルを用いて均一な結合剤水溶液を調製し、次いで、該調製した結合剤水溶液と、第一リン酸アルミニウム、ソーダライトケージを含むゼオライト及び粘土鉱物を混合し、均一な触媒構成成分を混合してなる水性スラリーを得る方法が挙げられる。また、シリカゾルと第一リン酸アルミニウムを用い、均一な結合剤水溶液を調製し、該調製した結合剤水溶液と、ソーダライトケージを含むゼオライト及び粘土鉱物を混合し、均一な触媒構成成分を混合してなる水性スラリーを得るようにすることもできる。
このように、第一リン酸アルミニウムの添加段階は、結合剤水溶液調製段階でも、ソーダライトケージを含むゼオライト及び粘土鉱物を含むスラリーの調製段階でも差し支えなく、第一リン酸アルミニウムは任意段階で添加して本発明の効果を得ることができる。
本発明の製造方法では、上記水性スラリーを用いて接触分解触媒を製造することが特徴である。この水性スラリーを用いる製造方法としては、例えば以下のような方法が挙げられる。
【0046】
次いで、上記の水性スラリーを、通常噴霧乾燥し、微小球体(触媒あるいは触媒前駆体)を得る。この噴霧乾燥は、噴霧乾燥装置により、200〜600℃のガス入口温度、及び100〜300℃のガス出口温度で行うことが好ましい。噴霧乾燥により得られる微小球体は、20〜150μmの粒子径、及び5〜30質量%の水分含有量を有している。
【0047】
<触媒の洗浄及びイオン交換>
上記のようにして得られた微小球体は、必要に応じて、公知の方法で洗浄し、引き続いてイオン交換を行い、各種の原料から持ち込まれる過剰のアルカリ金属や可溶性の不純物等を除去した後、乾燥し、本発明の触媒を得ることができる。なお、微小球体に過剰のアルカリ金属や可溶性の不純物等が存在しない場合には、洗浄やイオン交換等を行うことなくそのまま触媒として使用することもできる。
上記の洗浄は具体的には、水あるいはアンモニア水を用いて行い、これにより可溶性不純物量を低減させることができる。この洗浄終了後の微小球体は次いで、イオン交換を行う。イオン交換は具体的には、硫酸アンモニウム、亜硫酸アンモニウム、硫酸水素アンモニウム、亜硫酸水素アンモニウム、チオ硫酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、ホスフィン酸アンモニウム、ホスホン酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、シュウ酸アンモニウムなどのアンモニウム塩の水溶液によって行うことができ、このイオン交換によって微小球体に残存するナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属を低減させることができる。
【0048】
本発明の触媒では、アルカリ金属や可溶性不純物は、乾燥触媒基準で、アルカリ金属が1.0質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、可溶性不純物が2.0質量%以下、好ましくは1.5質量%以下にまで低減させることが、触媒活性を高める上で好ましい。また、上記の洗浄及びイオン交換の工程は、本発明の所期の効果が得られる限りにおいて、順序を逆にして行うこともできる。
上記の洗浄及びイオン交換の操作の後続いて、得られた微小球体を100〜500℃の温度で再度乾燥し、水分含有量を1〜25質量%にして、本発明の触媒を得ることができる。
【0049】
<希土類金属の含有>
希土類金属を本発明の触媒へ含有させる態様としては、上記イオン交換によるアルカリ金属の洗浄除去後、微小球体を乾燥する前に、希土類金属によるイオン交換を行う態様や、ソーダライトケージを含むゼオライトに、予め希土類金属を担持させ、いわゆる金属修飾型のソーダライトケージを含むゼオライトとなし、該金属修飾型のソーダライトケージを含むゼオライトを用いて触媒を製造する態様が挙げられる。
要するに、ソーダライトケージを含むゼオライトに希土類金属を含有させる場合は、従来公知の方法により行うことができる。例えば、希土類金属の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩等の化合物の単独あるいは2種以上を含有する水溶液を、乾燥状態あるいは湿潤状態にあるソーダライトケージを含むゼオライト、あるいはそれを含有する触媒にイオン交換あるいは含浸させ、必要に応じて加熱することにより行うことができる。
【0050】
希土類金属の種類としては、本発明の接触分解触媒で説明した各種希土類金属を用いることができる。
【0051】
なお、希土類金属を含有させる態様が、上記予め金属修飾型にしたソーダライトケージを含むゼオライトを用いて触媒を製造する態様の場合も、触媒の製造は、修飾型でないソーダライトケージを含むゼオライトを用いて触媒を製造する場合と同様にして行うことができる。即ち、金属修飾型のソーダライトケージを含むゼオライトを用いて、結合剤と粘土鉱物と共にスラリーを調製し、次いで該スラリーを噴霧乾燥し、微小球体にする。その後、アルカリ金属の洗浄除去を行い、ついで、触媒の乾燥処理を行い、本発明の触媒を得ることができる。
【0052】
また、本発明の触媒には、本発明の所期の効果が得られる限りにおいて、希土類以外の金属も含有させることができる。
【0053】
≪接触分解方法≫
本発明の触媒を使用して炭化水素油を接触分解するには、ガソリンの沸点以上で沸騰する炭化水素油(炭化水素混合物)を、本発明の触媒に接触させればよい。このガソリン沸点範囲以上で沸騰する炭化水素油とは、原油の常圧あるいは減圧蒸留で得られる軽油留分や常圧蒸留残渣油及び減圧蒸留残渣油を意味し、もちろんコーカー軽油、溶剤脱瀝油、溶剤脱瀝アスファルト、タールサンド油、シェールオイル油、石炭液化油、GTL(Gasto Liquids)油、植物油、廃潤滑油、廃食油をも包括するものである。 更にこれらの原料炭化水素油は、当業者に周知の水素化処理、即ちNi−Mo系触媒、Co−Mo系触媒、Ni−Co−Mo系触媒、Ni−W系触媒などの水素化処理触媒の存在下、高温・高圧下で水素化脱硫した水素化処理油も接触分解の原料として使用できることは言うまでもない。
【0054】
商業的規模での炭化水素油の接触分解は、通常、垂直に据え付けられたクラッキング反応器と触媒再生器との2種の容器からなる接触分解装置に、上記した本発明の触媒を連続的に循環させて行う。すなわち、触媒再生器から出てくる熱い再生触媒を、分解すべき炭化水素油と混合し、クラッキング反応器内を上向の方向に導く。その結果、触媒上に析出したコークによって失活した触媒を、分解生成物から分離し、ストリッピング後、触媒再生器に移す。触媒再生器に移した失活した触媒を、該触媒上のコークを空気燃焼による除去で再生し、再びクラッキング反応器に循環する。一方、分解生成物は、ドライガス、LPG、ガソリン留分、中間留分(LCO)、及びHCOあるいはスラリー油のような1種以上の重質留分に分離する。もちろん、分解生成物から分離した中間留分(LCO)、HCO、スラリー油のような重質留分の一部あるいは全部を、クラッキング反応器内に再循環させて分解反応をより進めることもできる。
【0055】
このときのFCC装置におけるクラッキング反応器の運転条件としては、反応温度を400〜600℃、好ましくは450〜550℃、反応圧力を常圧〜5kg/cm、好ましくは常圧〜3kg/cm、触媒/原料炭化水素油の質量比を2〜20、好ましくは4〜15とすることが適当である。
反応温度が400℃以上であれば、炭化水素油の分解反応が好適に進行して、分解生成物を好適に得ることができる。また、600℃以下であれば、分解により生成するドライガスやLPGなどの軽質ガス生成量を軽減でき、目的物のガソリン留分の収率を相対的に増大させることができ経済的である。
圧力は5kg/cm以下であれば、モル数の増加する反応の分解反応の進行が阻害さ
れにくい。また、触媒/原料炭化水素油の質量比が2以上であれば、クラッキング反応器内の触媒濃度を適度に保つことができ、原料炭化水素油の分解が好適に進行する。また、20以下であれば、触媒濃度を上げる効果が飽和してしまい、触媒濃度を高くするに見合った効果が得られずに不利となることを回避できる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例により説明するが、これらは例示であって、本発明はこれら実施例によりなんら制限されるものではない。
【0057】
<触媒の調製>
実施例1
ソーダライトケージを含むゼオライトとして表1の物性を有する安定化Yゼオライトを、結合剤として第一リン酸アルミニウム(Al・3P濃度46.2質量%)とシリカゾル(SiO濃度29.0質量%)を、粘土鉱物としてカオリナイトを、それぞれ使用した。
【0058】
【表1】

【0059】
シリカゾル144.8gを25%硫酸で希釈し、第一リン酸アルミニウム2.2gを加え攪拌し、第一リン酸アルミニウム由来のリンとシリカゾル由来のケイ素のモル比、すなわちリン/ケイ素モル比が0.02となる結合剤水溶液を調製した。一方、表1の物性を有する安定化Yゼオライト80.0g(乾燥基準)に蒸留水を加え、ゼオライトスラリーを調製した。上記の結合剤水溶液に、カオリナイト77.0g(乾燥基準)を加えて混合し、更に上記のゼオライトスラリーを添加し、更に10分間混合し、水性スラリーを得た。得られた水性スラリーを210℃の入口温度、及び140℃の出口温度の条件で噴霧乾燥し、触媒前駆体である微小球体を得た。次いで60℃の5質量%硫酸アンモニウム水溶液3リットル(以下、「L」と記すこともある)で2回イオン交換し、更に3Lの蒸留水で洗浄し、乾燥機中、110℃で一晩乾燥して触媒Aを得た。
【0060】
実施例2
第一リン酸アルミニウムの量を4.3gに代え、リン/ケイ素モル比を0.03とし、更にカオリナイトの混合量を76.0g(乾燥基準)とする以外は実施例1と同様の方法で、触媒Bを得た。
【0061】
実施例3
第一リン酸アルミニウムの量を13.0gに代え、リン/ケイ素モル比を0.10とし、更にカオリナイトの混合量を72.0g(乾燥基準)とする以外は実施例1と同様の方法で、触媒Cを得た。
【0062】
実施例4
第一リン酸アルミニウムの量を21.7gに代え、リン/ケイ素モル比を0.16とし、更にカオリナイトの混合量を78.6g(乾燥基準)とする以外は実施例1と同様の方法で、触媒Dを得た。
【0063】
実施例5
第一リン酸アルミニウムの量を43.3gに代え、リン/ケイ素モル比を0.32とし、更にカオリナイトの混合量を58.0g(乾燥基準)とする以外は実施例1と同様の方法で、触媒Eを得た。
【0064】
実施例6
第一リン酸アルミニウムの量を90.9gに代え、リン/ケイ素モル比を0.71とし、更にカオリナイトの混合量を36.0g(乾燥基準)とする以外は実施例1と同様の方法で、触媒Fを得た。
【0065】
実施例7
シリカゾルの量を113.8g、第一リン酸アルミニウムの量を16.9gに代え、リン/ケイ素モル比を0.16とし、更にカオリナイトの混合量を91.5g(乾燥基準)とする以外は実施例1と同様の方法で、触媒Gを得た。
【0066】
実施例8
シリカゾルの量を193.1g、第一リン酸アルミニウムの量を28.6gに代え、リン/ケイ素モル比を0.16とし、更にカオリナイトの混合量を58.7g(乾燥基準)とする以外は実施例1と同様の方法で、触媒Hを得た。
【0067】
実施例9
シリカゾル144.8gを25%硫酸で希釈し、均一な結合剤水溶液を調製した。その後に表1記載の物性を有する安定Yゼオライト80.0g(乾燥基準)に蒸留水を添加したゼオライトスラリー、カオリナイト58.0g(乾燥基準)、更に第一リン酸アルミニウム43.3g(乾燥基準)を加え水溶性スラリーを得ること以外は実施例1と同様の方法で触媒Iを得た。
【0068】
実施例10
第一リン酸アルミニウムをAl・3P濃度85.7質量%のものに変更し、配合量を1.2gとし、リン/ケイ素モル比を0.02とし、さらに、カオリナイトの混合量を89.0g(乾燥基準)とする以外は実施例1と同様の方法で、触媒Xを得た。
【0069】
実施例11
第一リン酸アルミニウムを実施例10と同様のものを使用し、かつ、配合量を11.7gに代え、リン/ケイ素モル比を0.16とし、更にカオリナイトの配合量を78.6g(乾燥基準)とする以外は、実施例1と同様の方法で触媒Yを得た。
【0070】
比較例1
第一リン酸アルミニウムを添加せず、更にカオリナイトの混合量を78.0g(乾燥基準)とする以外は実施例1と同様の方法で、触媒Jを得た。
【0071】
比較例2
第一リン酸アルミニウムの量を108.2gに代え、リン/ケイ素モル比を0.83とし、更にカオリナイトの混合量を28.0g(乾燥基準)とする以外は実施例1と同様の方法で、触媒Kを得た。
【0072】
比較例3
硝酸アルミニウム9水和物7.5gを蒸留水で溶解させ、またオルトリン酸9.4gを注ぎ込み、リン源水溶液を調製した。このリン源水溶液とシリカゾル144.8gを混合し、シリカゾル由来のケイ素に対するオルトリン酸由来のリンのモル比が0.16となる結合剤水溶液を調製した。一方、表1の物性を有する安定化Yゼオライト80.0g(乾燥基準)に蒸留水を加え、ゼオライトスラリーを調製した。上記の結合剤水溶液に、カオリナイト96.8g(乾燥基準)を加えて混合し、更に上記のゼオライトスラリーを添加し、更に10分間混合して、水性スラリーを得た。得られた水性スラリーを210℃の入口温度、及び140℃の出口温度の条件で噴霧乾燥し、触媒前駆体である微小球体を得た。次いで60℃の5質量%硫酸アンモニウム水溶液3Lで2回イオン交換し、更に3Lの蒸留水で洗浄し、乾燥機中、110℃で一晩乾燥して触媒Lを得た。
【0073】
<触媒一覧>
以上の実施例1〜11で得た触媒の組成及び比較例1〜3で得た触媒の組成を表2に纏めて示す。なお、各原料は触媒の最終組成物に含まれる割合で示している。即ち、安定化Yゼオライトは乾燥基準での値を示している。また、粘土鉱物も乾燥基準での値を示している。また、第一リン酸アルミニウム[Al(HPO]はAl・3Pでの値、シリカゾル[NaO・xSiO・nHO(x=2〜4)]はSiOでの値、オルトリン酸[HPO]はPでの値、硝酸アルミニウム9水和物[Al(NO・9HO]はAlでの値をそれぞれ示している。さらに、リン/ケイ素モル比は、第一リン酸アルミニウム及びオルトリン酸由来のリンのモル数と、シリカゾル由来のケイ素のモル数より算出した。
【0074】
【表2】

【0075】
<調製した触媒を用いた流動接触分解>
上記の実施例1〜11、比較例1〜3にて調製した触媒は、反応容器と触媒再生器とを有する流動床式接触分解装置であるベンチスケールプラントを用い、同一原料油、同一測定条件のもとで接触分解特性を試験した。
なお、試験に先立ち、上記触媒について、実際の使用状態に近似させるべく、即ち平衡化させるべく、500℃にて5時間乾燥した後、各触媒にニッケル及びバナジウムがそれぞれ1000質量ppm、2000質量ppmとなるようにナフテン酸ニッケル、ナフテン酸バナジウムを含むシクロヘキサン溶液を吸収させ、乾燥し、500℃で5時間の焼成を行い、引き続き、各触媒を100%水蒸気雰囲気中、785℃で6時間処理した。
続いて、この実際の使用状態に近似させた触媒を表3に記載の反応条件、表4に記載の性状を示す炭化水素油(脱硫減圧軽油(VGO)50%+脱流残油(DDSP)50%)を使用し、接触分解反応を行った。
得られた分解生成油は、Agilent technologies社製 AC Simdis Analyzerを用いてガスクロ蒸留法にて解析し、ガソリン(25〜190℃)、中間留分(LCO(190〜350℃))、HCO(350℃以上)の生成物量を解析した。
なお、得られたガソリンのオクタン価はヒューレッドパッカード社製PONA分析装置を用い、ガスクロマトグラフ法によるGC−RONで測定した。
【0076】
【表3】

【0077】
【表4】

【0078】
<調製した触媒の接触分解反応結果>
実施例1〜11、比較例1〜3で得られた触媒を用いた接触分解反応で得られた生成物の分布結果とガソリン留分のオクタン価を表5に合わせて示す。ここで、分解活性である転化率は、100−(LCOの質量%)―(HCOの質量%)で表現する。
【0079】
【表5】

【0080】
表5から明らかなように、第一リン酸アルミニウムを含まない比較例1はオクタン価は高いものの、転化率が低く、触媒の実装置での運用上好ましくない。一方、第一リン酸アルミニウムを本発明の規定範囲よりも多く含む比較例2は、高転化率であるものの、オクタン価の低下が著しい。また、第一リン酸アルミニウムの代わりにオルトリン酸を用いた比較例3は、オクタン価は程々高いが、転化率の低下が著しい。比較例のいずれも高い分解活性と高オクタン価の両方を満たすことができない。これに対し、本発明に従って調製した実施例1〜11の触媒は、高い分解活性と高オクタン価の両方を満足するものであり、実用上極めて有効なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソーダライトケージを含むゼオライトを20〜50質量%、
シリカゾル由来のケイ素をSiO換算で10〜30質量%、
第一リン酸アルミニウム由来のリン・アルミニウムをAl・3P換算で0.1〜21質量%、
粘土鉱物を5〜65質量%含有することを特徴とする炭化水素油の接触分解触媒。
【請求項2】
前記シリカゾル由来のケイ素に対する前記第一リン酸アルミニウム由来のリンのモル比が0.01〜0.75の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の炭化水素油の接触分解触媒。
【請求項3】
水性スラリー中の全固形分基準で以下の各成分を固形物換算したときに、
ソーダライトケージ構造を有するゼオライトを20〜50質量%、
シリカゾルをSiO換算で10〜30質量%、
第一リン酸アルミニウムをAl・3P換算で0.1〜21質量%、及び
粘土鉱物を5〜65質量%含有する水性スラリーを用いることを特徴とする炭化水素油の接触分解触媒の製造方法。
【請求項4】
水性スラリーにおけるシリカゾル由来のケイ素に対する第一リン酸アルミニウム由来のリンのモル比が0.01〜0.75の範囲であることを特徴とする請求項3に記載の炭化水素油の接触分解触媒の製造方法。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の製造方法で製造された炭化水素油の接触分解触媒。
【請求項6】
請求項1、請求項2または請求項5に記載の炭化水素油の接触分解触媒を使用することを特徴とする炭化水素油の接触分解方法。

【公開番号】特開2010−247146(P2010−247146A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51764(P2010−51764)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(590000455)財団法人石油産業活性化センター (249)
【出願人】(000105567)コスモ石油株式会社 (443)
【Fターム(参考)】