接触式触覚センサの制御方法およびそのシステム
【課題】物体の3次元形状の計測の高速化を図り、物体の3次元形状を計測する際の計測時間を短縮化する。
【解決手段】駆動電極と帰還電極とを有する圧電振動板と、上記圧電振動板に固着された針とを有し、上記駆動電極に交流電圧を印加することにより上記針が微小振動する一方で、上記帰還電極からは上記針の振動に応じた帰還電圧が出力される接触式触覚センサの制御方法において、所定の基準振幅値と現在の振幅値との差分から接触式触覚センサと測定対象物との相対距離を得る第1のステップと、上記第1のステップで得た相対距離の変化の履歴に基づいて、上記接触式触覚センサの速度を得る第2のステップとを有する。
【解決手段】駆動電極と帰還電極とを有する圧電振動板と、上記圧電振動板に固着された針とを有し、上記駆動電極に交流電圧を印加することにより上記針が微小振動する一方で、上記帰還電極からは上記針の振動に応じた帰還電圧が出力される接触式触覚センサの制御方法において、所定の基準振幅値と現在の振幅値との差分から接触式触覚センサと測定対象物との相対距離を得る第1のステップと、上記第1のステップで得た相対距離の変化の履歴に基づいて、上記接触式触覚センサの速度を得る第2のステップとを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触式触覚センサの制御方法およびそのシステムに関し、さらに詳細には、物体の3次元形状を計測する際に用いて好適な接触式触覚センサの制御方法およびそのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、物体の3次元形状を計測するための手法として、例えば、接触式触覚センサを用いる手法が知られている。
【0003】
従来、この接触式触覚センサによる物体(以下、「測定対象物」と適宜に称する。)の3次元形状の形状計測の手法は、計測ポイントをグリッド状に定め、その点に測定対象物が存在するか否かを接触式触覚センサの振幅の大小から2値的に判断し、測定対象物の3次元形状を判断するというものであった。
【0004】
また、接触式触覚センサを用いる手法とは異なり、タッチプローブを用いて、測定対象物とタッチプローブとの相対的距離をX軸、Y軸に対してベクトル情報として測定することで測定対象物の存在位置を判断し、測定対象物の3次元形状の計測を行うという手法も知られている。
【0005】
この計測方法によれば、タッチプローブの移動の際にもベクトル情報を利用してタッチプローブの次の進行方向を決定し、測定対象物表面をなぞりながら形状を計測できるため、高速な形状計測が可能という利点を有していた。
【0006】
ところで、上記した接触式触覚センサを用いる手法によれば、測定対象物を高精度に計測しようとすればグリッド数を、平面計測の場合は精度の2乗で増加、3次元計測の場合は精度の3乗で増加させる必要があった。そして、測定対象物の存在をグリッド毎に総当り的に、かつ、接触式触覚センサを停止させながら接触式触覚センサの振幅を精査する必要があるため、計測時間が指数関数的に増加することになり、計測時間が長時間に及んでしまうという問題点があった。
【0007】
なお、接触式触覚センサを上記したタッチプローブのように動作させようとしても、接触式触覚センサは振幅というスカラ情報しか有していない、即ち、ベクトル情報を持たないために、接触式触覚センサの次の進行方向を決定することができず、実際には上記したタッチプローブのように動作させることができないという問題点があった。そして、この問題点のために、測定対象物の存在をグリッド毎に総当り的に、かつ、接触式触覚センサを停止させながら接触式触覚センサの振幅を精査する手法による計測を行わなくてはならないものであった。
【0008】
なお、本願出願人が特許出願のときに知っている先行技術は、文献公知発明に係る発明ではないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記したような従来の技術の有する種々の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、物体の3次元形状の計測の高速化を図り、物体の3次元形状を計測する際の計測時間を短縮化することができるようにした接触式触覚センサの制御方法およびそのシステムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、接触式触覚センサの振幅情報から当該接触式触覚センサの次の進行方向を決定する制御手法を提案するものであり、具体的には、
ステップ1:基準振幅値(電圧値)を定め、基準振幅値と現在の振幅値との差分から接触式触覚センサと測定対象物との相対距離を求め、
ステップ2:上記相対距離の変化の履歴に基づいて接触式触覚センサの次の進行方向を定める、
ようにしたものである。
【0011】
即ち、上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、駆動電極と帰還電極とを有する圧電振動板と、上記圧電振動板に固着された針とを有し、上記駆動電極に交流電圧を印加することにより上記針が微小振動する一方で、上記帰還電極からは上記針の振動に応じた帰還電圧が出力される接触式触覚センサの制御方法において、所定の基準振幅値と現在の振幅値との差分から接触式触覚センサと測定対象物との相対距離を得る第1のステップと、上記第1のステップで得た相対距離の変化の履歴に基づいて、上記接触式触覚センサの速度を得る第2のステップとを有するようにしたものである。
【0012】
また、本発明のうち請求項2に記載の発明は、本発明のうち請求項1に記載の発明において、上記相対距離の変化の履歴は、上記相対距離の積分であるようにしたものである。
【0013】
また、本発明のうち請求項3に記載の発明は、本発明のうち請求項2に記載の発明において、上記第2のステップは、上記相対距離を所定倍したものと上記相対距離を所定倍したものの積分とを加算したものを上記接触式触覚センサの速度とするようにしたものである。
【0014】
また、本発明のうち請求項4に記載の発明は、本発明のうち請求項2に記載の発明において、上記第2のステップは、上記相対距離を所定倍したものと上記相対距離の積分を所定倍したものとを加算したものを上記接触式触覚センサの速度とするようにしたものである。
【0015】
また、本発明のうち請求項5に記載の発明は、本発明のうち請求項2に記載の発明において、上記第2のステップは、上記相対距離を所定倍したものと上記相対距離を所定倍したものの積分とを加算し、上記加算したものに対してcos演算したものに所定の速度を乗じたものを上記接触式触覚センサの速度とするようにしたものである。
【0016】
また、本発明のうち請求項6に記載の発明は、本発明のうち請求項2に記載の発明において、上記第2のステップは、上記相対距離を所定倍したものと上記相対距離の積分を所定倍したものとを加算し、上記加算したものに対してcos演算したものに所定の速度を乗じたものを上記接触式触覚センサの速度とするようにしたものである。
【0017】
また、本発明のうち請求項7に記載の発明は、本発明のうち請求項2に記載の発明において、上記第2のステップは、上記第2のステップは、上記相対距離を所定倍したものと上記相対距離を所定倍したものの積分とを加算し、上記加算したものに対してsin演算したものに所定の速度を乗じたものを上記接触式触覚センサの速度とするようにしたものである。
【0018】
また、本発明のうち請求項8に記載の発明は、本発明のうち請求項2に記載の発明において、上記相対距離の積分を所定倍したものとを加算し、上記加算したものに対してsin演算したものに所定の速度を乗じたものを上記接触式触覚センサの速度とするようにしたものである。
【0019】
また、本発明のうち請求項9に記載の発明は、本発明のうち請求項2に記載の発明において、駆動電極と帰還電極とを有する圧電振動板と、上記圧電振動板に固着された針14とを有し、上記駆動電極に交流電圧を印加することにより上記針が微小振動する一方で、上記帰還電極からは上記針の振動に応じた帰還電圧が出力される接触式触覚センサの制御システムにおいて、所定の基準振幅値と現在の振幅値との差分から接触式触覚センサと測定対象物との相対距離を得る第1の手段と、上記第1のステップで得た相対距離の変化の履歴に基づいて、上記接触式触覚センサの速度を得る第2の手段とを有するようにしたものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、物体の3次元形状の計測の高速化を図り、物体の3次元形状を計測する際の計測時間を短縮化することができるようにした接触式触覚センサの制御方法およびそのシステムを提供することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付の図面に基づいて、本発明による接触式触覚センサの制御方法およびそのシステムの実施の形態の一例を詳細に説明するものとする。
【0022】
なお、以下の説明においては、同一あるいは相当する構成にはそれぞれ同一の符号を付して示すことにより、それらの重複する説明は適宜に省略する。
【0023】
図1には、本発明による接触式触覚センサの制御方法およびそのシステムに用いる接触式触覚センサの構成説明図が示されている。なお、図1(a)は接触式触覚センサの正面図であり、図1(b)は接触式触覚センサの右側面である。
【0024】
この接触式触覚センサ10は、従来より広く知られたものであって、圧電振動板12と、圧電振動板12に固着された針14とを有して構成されている。
【0025】
即ち、接触式触覚センサ10は圧電振動板12に針14が固着されて構成されており、圧電振動板12の駆動電極12aに交流電圧を印加することにより、針14が微小振動するようになされている。一方、帰還電極12bからは、針14の振動に応じた電圧(帰還電圧)が出力されるものである。
【0026】
このため、接触式触覚センサ10においては、針14先端の振動の振幅を帰還電圧から推定することができる。
【0027】
この接触式触覚センサ10は、構造がシンプルで剛性が高いとともに、従来の接触式プローブよりもコストが安くかつ頑強であるので、近年各種の装置に用いられるようになっている。
【0028】
なお、上記した接触式触覚センサ10における圧電振動板12としては、例えば、ムラタ社製7BB35−3CAOを用いることができる。
【0029】
次に、接触式触覚センサ10において、基準振幅値(電圧値)を定め、基準振幅値と現在の振幅値との差分から接触式触覚センサ10と測定対象物との相対距離を導出する手法について説明する。
【0030】
まず、接触式触覚センサ10において、振動する針14が変位する距離と帰還電圧との関係は、図2に示すとおり近似的に線形関係を示すことになる。
【0031】
即ち、接触式触覚センサ10のX、Y軸方向においては、図3に示すように、接触式触覚センサ10を図3における(b)の位置から(a)の位置まで移動させ、振動している針14と測定対象物100とを接近させながら帰還電圧の変化を測定したところ、接触式触覚センサ10の中心の位置と帰還電圧の変化との関係について図2上図に示す結果が得られた。
【0032】
ここで、帰還電圧の屈曲点は針14が測定対象物100に接触し、帰還電圧が減少を開始する位置(図3における(c)で示す位置)で、そこを0とおいた。接触式触覚センサ10の位置が負、即ち、測定対象物100から離れている場合は、針14は十分に振れ帰還電圧は最大値を維持するが、測定対象物100と接触後、針14が測定対象物100に押し付けられ、振動が小さくなるにつれて帰還電圧は減少する。最終的に針14の振動が停止したときに、帰還電圧は最小値となる。
【0033】
また、接触式触覚センサ10のZ軸方向においては、図9に示すように、測定対象物100の上方から接触式触覚センサ10を移動させ、同様に帰還電圧の変化を測定したところ、図2下図に示す結果が得られた。図の屈曲点は針14が測定対象物100に接触し、帰還電圧が減少を開始する位置で、そこを位置0とした。
【0034】
この結果より、針14が変位する距離と帰還電圧とが近似的に図4に示す数式の線形関係にあることが求められる。なお、図4に示す数式において、Viは帰還電圧[V]、Diは距離(針14が変位する距離)[μm]を表す(i=x,y,z)。
【0035】
この図2に示す結果からは、接触式触覚センサ10は、針14と測定対象物100との接触・非接触を判断するだけではなく、針14と測定対象物100との相対的な距離も計測できることが確認できた。また、接触式触覚センサ10は、特に、Z方向(Z direction)に対する感度が高く、1[μm]以上の精度で測定対象物100を計測することが可能であることがわかった。
【0036】
つまり、接触式触覚センサ10は、上記したように、針14と測定対象物100との接触・非接触を判断するだけではなく、針14と測定対象物100との相対的な距離も計測することができるものである。
【0037】
そこで、基準振幅値(電圧値)を図2におけるReferenceと表示してある電圧レベルに定めると、この電圧の前後では電圧値から一意に相対距離が求められる。即ち、電圧が飽和するまでは、電圧と距離とが比例の関係にあり、電圧がわかれば距離もわかる。なお、この基準振幅値(電圧値)は、最大電圧と最小電圧の中点近傍に設定する。
【0038】
また、図2における図中X、Y、Zと示される座標は接触式触覚センサ10の座標系であり、それは図1に示すとおりである。Zは、測定対象物100の存在する針14の下方を正方向としてある。
【0039】
また、上記した結果を得た際の本願発明者による実験の条件は、以下に示す通りであった。
【0040】
即ち、接触式触覚センサ10の入力としては、接触式触覚センサ10の駆動電極12aに対して、0.147[Vp−p]、2.66[kHz]の正弦波交流を印加した。一方、測定電圧としては、帰還電極12bからの出力を図10に示す接触式触覚センサ10の回路における「CN2 1番ピン」につなげたときの「CN1 4番ピン」の信号で観測した。
【0041】
また、測定対象物100としてはミツトヨ社製セラブロック(精度+/−0.1μm)を使用し、接触式触覚センサ10の移動には駿河精機社製XYステージを用い、手動にてXYステージを移動させながら測定対象物100に接触させ(測定対象物100は固定)、その際の電圧を観測した。X、Y軸の測定については、針14は先端より0.5mmの位置が測定対象物100の側面に接触するように位置調整を行った。
【0042】
次に、上記のようにして求められる相対距離の変化の履歴に基づいて、接触式触覚センサ10の次の進行方向を定める手法について説明する。
【0043】
なお、この手法としては、PI制御とcos関数との組み合わせによる手法とsin関数とcos関数との組み合わせによる手法とがあり、まず、PI制御とcos関数との組み合わせによる手法について説明する。
【0044】
図5には、PI制御とcos関数との組み合わせにより、相対距離の変化の履歴に基づき接触式触覚センサ10の次の進行方向を定める手法を実現するための制御ブロック構成図が示されている。
【0045】
この図5に示す制御ブロック構成図において、Zmotor502は接触式触覚センサ10をZ方向(測定対象物100に対する上下方向である。図1および図3の座標系に示すZ方向を参照する。)に駆動するモータを表し、Ymotor504は接触式触覚センサ10をY方向(接触式触覚センサ10に対する前後方向である。図1および図3の座標系に示すY方向を参照する。)に駆動するモータを表す。従って、接触式触覚センサ10は、Zmotor502によりZ方向に移動され、Ymotor504によりY方向に移動されることになる。
【0046】
これら接触式触覚センサ10、Zmotor502ならびにYmotor504が、図5に示す制御ブロック構成図におけるハードウェア的な構成要素であり、接触式触覚センサ10はZmotor502とYmotor504とによって移動され、針14と測定対象物100との相対位置(SensorPosition)を変化させる。接触式触覚センサ10は、針14と測定対象物100との相対位置に応じて、図2によって定められる帰還電圧を出力することになる。
【0047】
また、図5における破線で示す枠の内部は、相対距離の変化の履歴に基づき接触式触覚センサ10の次の進行方向を定める処理を行う制御手段たるコントローラ506の構成を示している。
【0048】
このコントローラ506には接触式触覚センサ10の帰還電圧が入力され、一方、コントローラ506からはZmotor502、Ymotor504それぞれに指令速度(Reference Velocity)uz、uyが出力される。各モータは指令されたとおりの速度で動作する。
【0049】
ここで、接触式触覚センサ10からの出力電圧(帰還電圧)という一つのスカラ情報から、如何に指令速度uz、uyという2つのベクトル情報を獲得するかであるが、そのためにこの実施の形態においては、まず、ReferenceVoltageとして、上記のようにして求められる基準振幅値(電圧)を採用し、差分手段508により基準振幅値(電圧)と現在のSensorPsitionによって定められる振幅値(電圧)との差分を取ることによって、測定対象物100との相対距離を得るようにしている。
【0050】
その後に、Zmotor502に対しては、相対距離をKpz倍手段(比例係数Kpzは負の値である。)510によりKpz倍したものと、相対距離をKiy倍手段(比例係数Kiyは正の値である。)511によりKiy倍したのち積分手段512により積分した相対距離の積分をKiz倍手段(比例係数Kizは負の値である。)514によりKiz倍したものとを、加算手段516により足し合わせ、これをZmotor502への指令速度uzとする。なお、「相対距離の変化の履歴」とは、この実施の形態においては相対距離の積分をさす。
【0051】
また、この実施の形態においては、相対距離をKiy倍手段511により所定倍した後にそれを積分手段512で積分しているが、これに限られることなしに、相対距離を積分した後に所定倍するようにする、即ち、Kiy倍手段511に相当する手段と積分手段512に相当する手段との処理手順を入れ替えるように変形してもよいことは勿論であり、両者は本質的になんら変わりは無いためその詳細な説明は省略する。
【0052】
また、この実施の形態においては、相対距離をKiy倍手段511により所定倍した後にそれを積分手段512で積分し、その積分をさらにKiz倍手段514で所定倍するようにしているが、差分手段508により得られた相対距離を直接に積分手段512に相当する手段で積分し、その積分をさらにKiz倍手段514に相当する手段で所定倍するように変形してもよいし、これとは逆に、差分手段508により得られた相対距離をKiz倍手段514に相当する手段で所定倍した後に積分手段512に相当する手段で積分するように変形してもよく、これらは全て本質的になんら変わりは無いためその詳細な説明は省略する。
【0053】
上記した制御の手法によれば、接触式触覚センサ10の針14と測定対象物100とのZ方向の相対距離を一定値に制御することができる。即ち、接触式触覚センサ10の針14が測定対象物100に近づき過ぎれば接触式触覚センサ10の出力たる帰還電圧は低下し、差分手段508における差分値は正(+)となる。このとき負のKpzによってZmotor502の速度が負となり、測定対象物100から離れる方向に接触式触覚センサ10の針14を移動させる。
【0054】
それとは反対に、接触式触覚センサ10の針14が測定対象物100から離れすぎれば、接触式触覚センサ10の出力たる帰還電圧は上昇し、差分手段508における差分値は負(−)となる。このとき負のKpzによってZmotor502の速度が正となり、測定対象物100に接近する方向に接触式触覚センサ10の針14を移動させる。
【0055】
ここで、相対距離の積分は、現在の移動速度を維持するために用いる。即ち、あるZ方向の速度を有したときに測定対象物100と接触式触覚センサ10の針14との相対距離が0となった場合に、Kpzの項だけではZmotor502の速度も0となり停止しまう。積分手段512により現時点での速度が保持され、同一の速度でZmotor502は動き続けることができる。
【0056】
また、Ymotor504に対しては、差分手段508により上記した測定対象物100と接触式触覚センサ10の針14との相対距離を得た後に、相対距離をKpy倍手段(比例係数Kpyは正の値である。)518によりKpy倍したものと、相対距離をKiy倍手段511によりKiy倍したのち積分手段512により積分した相対距離の積分とを、加算手段520により足し合わせる。この加算手段520の出力uiは演算手段522へ入力され、演算手段522において、加算手段520の出力uiをcos(ui)したものにYmotor504の最高速度Vmaxを乗じたものが得られ、これをYmotor504への指令速度uyとする。
【0057】
この制御の手法によれば、測定対象物100の形状に合わせYmotor504の速度を調節し、測定対象物100への接触式触覚センサ10の針14の衝突を防止することができる。
【0058】
即ち、積分手段512に差分が溜まる状態とは、Z方向への移動速度が大きい状態で接触式触覚センサ10の針14と測定対象物100との相対位置が保持されることを意味し、測定対象物100の傾斜が大きいことを示す。この場合に、Ymotor504の移動速度が抑制されなければ、接触式触覚センサ10の針14は測定対象物100に衝突してしまう。
【0059】
このため、uiにcos演算を施すことで、積分が溜まった場合にYmotor504の速度を抑制する。uiが0であればYmotor504は最高速度Vmaxで移動することになる。
【0060】
なお、Kpyは積分だけでは速応性が悪いため、応答性の改善のために用いてある。また、積分手段512の出力は、cosの演算結果の符合が逆転しないよう、+π/2〜−π/2で飽和(Saturation)するように抑制してある。
【0061】
なお、最高速度Vmaxは、ハードウェアの制限に応じて適宜決定すればよい。また、Kpz、Kiz、Kpyは、最も応答性がよく、かつ、発振が起きないように実験的に選定することになる。
【0062】
ここで、図6には、上記した手法により駆動される接触式触覚センサ10の動作状態が示されている。なお、図6における実線が測定対象物100の輪郭を示し、図6における一点鎖線が接触式触覚センサ10の針14の外形を示し、図6における破線が接触式触覚センサ10の針14の先端の移動の軌跡を示す。
【0063】
接触式触覚センサ10の針14が、例えば、図6の左方から右方向に移動して、図6におけるaのポイントで測定対象物100に接触したものとする。このとき接触式触覚センサ10の帰還電圧の電圧値は大きく減少し、上記した差分手段508における差分値は正方向に増加する。また、それと同時に、積分手段512の値も増加する。
【0064】
このとき、Kpz、Kizにより、Zmotor502は、接触式触覚センサ10の針14の上方向(負)への移動を開始する。また、uiにより、Ymotor504による接触式触覚センサ10の針14のY方向への移動速度は減少し始める。さらに、積分手段512の積分値が増加し、上限の+π/2まで増加したときにYmotor504は停止し、接触式触覚センサ10の針14は測定対象物100をなぞりながらZ方向のみ上方向に移動する。このとき、定常状態では差分手段508における差分値は0であり、Zmotor502、Ymotor504とも積分手段512の出力のみで移動する。
【0065】
接触式触覚センサ10の針14が、測定対象物100の頂点の近傍の位置たる図6におけるbのポイントに差し掛かったとき、接触式触覚センサ10の針14はさらに上方向へ移動するが、測定対象物100の傾斜が緩やかになるため、接触式触覚センサ10と測定対象物100とが離れ、接触式触覚センサ10の帰還電圧の電圧値が増加する。このとき差分手段508の差分値は負となり、積分手段512の積分値の減少とともにuz、uiの値が減少するため、接触式触覚センサ10の移動方向(傾斜)は緩やかになっていく。
【0066】
図6におけるcのポイントではほぼ積分値は0となり、水平方向へ最高速度Vmaxで進んでいく。それと同時に、Z軸に関しては、微細な制御を繰り返しながら、差分手段508の差分値が常に0となるように相対距離を維持する。
【0067】
以上において説明した制御の結果、接触式触覚センサ10は常に測定対象物100の表面をなぞりながら移動することになり、そのため接触式触覚センサ10の通った軌跡は測定対象物100の形状を精度よく表現することになり、形状計測が可能となる。
【0068】
ここで、図7には、幅1mmの測定対象物100を計測したときの実験結果が示されている。外側の破線が接触式触覚センサ10の針14の先端の移動の軌跡を示し、内側の実線が針14の先端の幅を補正して得られた測定対象物100の外形である。本実験の場合には、精度17μmで形状計測が可能であった。
【0069】
なお、上記した実験の条件は、以下の通りである。即ち、
Kpz=0.2[mm/s/V]
Kiz=275[mm/s/rad]
Kpy=π/6[rad/s/V]
Kiy=37.68[rad/s/V]
Vmax=0.6[mm/s]
測定対象物100:ミツトヨ社製セラブロック(精度+/−0.1μm)
1mm×10mm×30mm
印加電圧および測定電圧:図2に関する実験の際の条件と同一
基準電圧:2.75V
駆動機器:MRXプロトタイプ
なお、本願発明者による種々の実験によれば、工具などの複雑形状あるいは人間の手などの柔軟体に対しても、本発明による手法により形状を獲得できることが確認された。
【0070】
また、本発明による手法によれば、垂直な壁が最も計測条件が厳しいものであるが、上記の実験結果に示すように、その厳しい条件下においても精度よく形状を獲得することができた。即ち、本発明による手法は、どのような形状の測定対象物100に対しても適用することができる。
【0071】
次に、sin関数とcos関数との組み合わせによる手法について説明するが、図8には、sin関数とcos関数との組み合わせにより、相対距離の変化の履歴に基づき接触式触覚センサ10の次の進行方向を定める手法を実現するための制御ブロック構成図が示されている。
【0072】
この手法の基本的な動作原理は、上記において説明したPI制御とcos関数との組み合わせによる手法と同様であるが、PI制御の部分がsin関数となっている点において両者は相違する。
【0073】
即ち、積分値が0の場合、Ymotor504が最大速度で動作する一方、Xmotor502は停止し、他方、積分値が増加した場合にはYmotor504の速度を緩める一方、Xmotor502の進行を早める。
【0074】
この制御手法により、測定対象物100の表面をなぞりながら走査し、その結果、接触式触覚センサ10の軌跡が測定対象物100の形状を精度よく表現する。
【0075】
なお、最高速度αは、ハードウェアの制限に応じて適宜決定すればよい。また、Kp、Kiは、最も応答性がよく、かつ、発振が起きないように実験的に選定することになる。この実施の形態においては、
αz=0.5[mm/s]
Kp=π/3[rad/V]
Ki=1.74[rad/V]
である。
【0076】
ここで、図11には、直径1mmの測定対象物100を計測したときの実験結果が示されている。
【0077】
この実験における測定対象物100は、株式会社アイゼン社製EC1.0(型番)で、図11において破線が測定対象物100の輪郭を示し、実線が針14の先端の幅を補正して得られた測定対象物100の測定形状である。
【0078】
また、図12には、上記した手法により駆動される接触式触覚センサ10の動作状態が示されている。図12は、上からそれぞれ、帰還電圧、接触式触覚センサ10のX軸の位置、接触式触覚センサ10のY軸の位置、真値との誤差の変化を示している。本実験の場合には、最大誤差32μmで形状計測が可能であった。
【0079】
なお、接触式触覚センサ10の特性が類似しているX軸、Y軸制御の場合には、sin関数とcos関数との組み合わせによる制御手法を用い、一方、接触式触覚センサ10の特性が著しく異なるZ軸、X軸およびZ軸、Y軸制御の場合には、PI制御とcos関数との組み合わせによる制御手法を用いることが好ましい。
【0080】
以上において説明したように、上記した実施の形態によれば、振幅というスカラ情報しか有しない接触式触覚センサ10からベクトル情報を得て、その結果、高速な形状計測が可能となり、短時間で測定対象物100の形状を精度よく測定することができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、品質管理のための製品検査、例えば、従来困難であった安価な量産製品に対する全数寸法計測を行う際に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1(a)(b)は、本発明による接触式触覚センサの制御方法およびそのシステムに用いる接触式触覚センサの構成説明図であり、(a)は接触式触覚センサの正面であり、(b)は接触式触覚センサの右側面である。
【図2】図2は、接触式触覚センサ中心の位置と帰還電圧との関係を示すグラフであり、上図はXあるいはY軸方向に接触式触覚センサを動かしたときの接触式触覚センサ中心(圧電振動板中心)の位置に関して示し、下図はZ軸方向に接触式触覚センサを動かしたときの接触式触覚センサ中心(圧電振動板中心)の位置に関して示すものである。
【図3】図3は、測定対象物に対する接触式触覚センサの針の移動の動作を示す説明図である。
【図4】図4は、接触式触覚センサにおける振動する針が変位する距離と帰還電圧との関係を示す数式である。
【図5】図5は、PI制御とcos関数との組み合わせにより、相対距離の変化の履歴に基づき接触式触覚センサの次の進行方向を定める手法を実現するための制御ブロック構成図である。
【図6】図6は、PI制御とcos関数との組み合わせによる手法により駆動される接触式触覚センサの動作状態を示す説明図である。
【図7】図7は、本願発明者の実験結果を示すグラフである。
【図8】図8は、sin関数とcos関数との組み合わせにより、相対距離の変化の履歴に基づき接触式触覚センサ10の次の進行方向を定める手法を実現するための制御ブロック構成図である。
【図9】図9は、測定対象物に対する接触式触覚センサの針の移動の動作を示す説明図である。
【図10】図10は、接触式触覚センサの回路図である。
【図11】図11は、本願発明者の実験結果を示すグラフであり、sin,cos関数制御による円形の測定対象物の測定結果(軌跡)を示す。
【図12】図12は、本願発明者の実験結果を示すグラフであり、sin,cos関数制御による円形の測定対象物の測定結果(時系列)を示すものであって、上からそれぞれ、帰還電圧、接触式触覚センサのX軸の位置、接触式触覚センサのY軸の位置、真値との誤差の変化を示す。
【符号の説明】
【0083】
10 接触式触覚センサ
12 圧電振動板
12a 駆動電極
12b 帰還電極
14 針
100 測定対象物
502 Zmotor
504 Ymotor
506 コントローラ
508 差分手段
510 Kpz倍手段
511 Kiy倍手段
512 積分手段
514 Kiz倍手段
516 加算手段
518 Kpy倍手段
520 加算手段
522 演算手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触式触覚センサの制御方法およびそのシステムに関し、さらに詳細には、物体の3次元形状を計測する際に用いて好適な接触式触覚センサの制御方法およびそのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、物体の3次元形状を計測するための手法として、例えば、接触式触覚センサを用いる手法が知られている。
【0003】
従来、この接触式触覚センサによる物体(以下、「測定対象物」と適宜に称する。)の3次元形状の形状計測の手法は、計測ポイントをグリッド状に定め、その点に測定対象物が存在するか否かを接触式触覚センサの振幅の大小から2値的に判断し、測定対象物の3次元形状を判断するというものであった。
【0004】
また、接触式触覚センサを用いる手法とは異なり、タッチプローブを用いて、測定対象物とタッチプローブとの相対的距離をX軸、Y軸に対してベクトル情報として測定することで測定対象物の存在位置を判断し、測定対象物の3次元形状の計測を行うという手法も知られている。
【0005】
この計測方法によれば、タッチプローブの移動の際にもベクトル情報を利用してタッチプローブの次の進行方向を決定し、測定対象物表面をなぞりながら形状を計測できるため、高速な形状計測が可能という利点を有していた。
【0006】
ところで、上記した接触式触覚センサを用いる手法によれば、測定対象物を高精度に計測しようとすればグリッド数を、平面計測の場合は精度の2乗で増加、3次元計測の場合は精度の3乗で増加させる必要があった。そして、測定対象物の存在をグリッド毎に総当り的に、かつ、接触式触覚センサを停止させながら接触式触覚センサの振幅を精査する必要があるため、計測時間が指数関数的に増加することになり、計測時間が長時間に及んでしまうという問題点があった。
【0007】
なお、接触式触覚センサを上記したタッチプローブのように動作させようとしても、接触式触覚センサは振幅というスカラ情報しか有していない、即ち、ベクトル情報を持たないために、接触式触覚センサの次の進行方向を決定することができず、実際には上記したタッチプローブのように動作させることができないという問題点があった。そして、この問題点のために、測定対象物の存在をグリッド毎に総当り的に、かつ、接触式触覚センサを停止させながら接触式触覚センサの振幅を精査する手法による計測を行わなくてはならないものであった。
【0008】
なお、本願出願人が特許出願のときに知っている先行技術は、文献公知発明に係る発明ではないため、記載すべき先行技術文献情報はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記したような従来の技術の有する種々の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、物体の3次元形状の計測の高速化を図り、物体の3次元形状を計測する際の計測時間を短縮化することができるようにした接触式触覚センサの制御方法およびそのシステムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、接触式触覚センサの振幅情報から当該接触式触覚センサの次の進行方向を決定する制御手法を提案するものであり、具体的には、
ステップ1:基準振幅値(電圧値)を定め、基準振幅値と現在の振幅値との差分から接触式触覚センサと測定対象物との相対距離を求め、
ステップ2:上記相対距離の変化の履歴に基づいて接触式触覚センサの次の進行方向を定める、
ようにしたものである。
【0011】
即ち、上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、駆動電極と帰還電極とを有する圧電振動板と、上記圧電振動板に固着された針とを有し、上記駆動電極に交流電圧を印加することにより上記針が微小振動する一方で、上記帰還電極からは上記針の振動に応じた帰還電圧が出力される接触式触覚センサの制御方法において、所定の基準振幅値と現在の振幅値との差分から接触式触覚センサと測定対象物との相対距離を得る第1のステップと、上記第1のステップで得た相対距離の変化の履歴に基づいて、上記接触式触覚センサの速度を得る第2のステップとを有するようにしたものである。
【0012】
また、本発明のうち請求項2に記載の発明は、本発明のうち請求項1に記載の発明において、上記相対距離の変化の履歴は、上記相対距離の積分であるようにしたものである。
【0013】
また、本発明のうち請求項3に記載の発明は、本発明のうち請求項2に記載の発明において、上記第2のステップは、上記相対距離を所定倍したものと上記相対距離を所定倍したものの積分とを加算したものを上記接触式触覚センサの速度とするようにしたものである。
【0014】
また、本発明のうち請求項4に記載の発明は、本発明のうち請求項2に記載の発明において、上記第2のステップは、上記相対距離を所定倍したものと上記相対距離の積分を所定倍したものとを加算したものを上記接触式触覚センサの速度とするようにしたものである。
【0015】
また、本発明のうち請求項5に記載の発明は、本発明のうち請求項2に記載の発明において、上記第2のステップは、上記相対距離を所定倍したものと上記相対距離を所定倍したものの積分とを加算し、上記加算したものに対してcos演算したものに所定の速度を乗じたものを上記接触式触覚センサの速度とするようにしたものである。
【0016】
また、本発明のうち請求項6に記載の発明は、本発明のうち請求項2に記載の発明において、上記第2のステップは、上記相対距離を所定倍したものと上記相対距離の積分を所定倍したものとを加算し、上記加算したものに対してcos演算したものに所定の速度を乗じたものを上記接触式触覚センサの速度とするようにしたものである。
【0017】
また、本発明のうち請求項7に記載の発明は、本発明のうち請求項2に記載の発明において、上記第2のステップは、上記第2のステップは、上記相対距離を所定倍したものと上記相対距離を所定倍したものの積分とを加算し、上記加算したものに対してsin演算したものに所定の速度を乗じたものを上記接触式触覚センサの速度とするようにしたものである。
【0018】
また、本発明のうち請求項8に記載の発明は、本発明のうち請求項2に記載の発明において、上記相対距離の積分を所定倍したものとを加算し、上記加算したものに対してsin演算したものに所定の速度を乗じたものを上記接触式触覚センサの速度とするようにしたものである。
【0019】
また、本発明のうち請求項9に記載の発明は、本発明のうち請求項2に記載の発明において、駆動電極と帰還電極とを有する圧電振動板と、上記圧電振動板に固着された針14とを有し、上記駆動電極に交流電圧を印加することにより上記針が微小振動する一方で、上記帰還電極からは上記針の振動に応じた帰還電圧が出力される接触式触覚センサの制御システムにおいて、所定の基準振幅値と現在の振幅値との差分から接触式触覚センサと測定対象物との相対距離を得る第1の手段と、上記第1のステップで得た相対距離の変化の履歴に基づいて、上記接触式触覚センサの速度を得る第2の手段とを有するようにしたものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、物体の3次元形状の計測の高速化を図り、物体の3次元形状を計測する際の計測時間を短縮化することができるようにした接触式触覚センサの制御方法およびそのシステムを提供することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付の図面に基づいて、本発明による接触式触覚センサの制御方法およびそのシステムの実施の形態の一例を詳細に説明するものとする。
【0022】
なお、以下の説明においては、同一あるいは相当する構成にはそれぞれ同一の符号を付して示すことにより、それらの重複する説明は適宜に省略する。
【0023】
図1には、本発明による接触式触覚センサの制御方法およびそのシステムに用いる接触式触覚センサの構成説明図が示されている。なお、図1(a)は接触式触覚センサの正面図であり、図1(b)は接触式触覚センサの右側面である。
【0024】
この接触式触覚センサ10は、従来より広く知られたものであって、圧電振動板12と、圧電振動板12に固着された針14とを有して構成されている。
【0025】
即ち、接触式触覚センサ10は圧電振動板12に針14が固着されて構成されており、圧電振動板12の駆動電極12aに交流電圧を印加することにより、針14が微小振動するようになされている。一方、帰還電極12bからは、針14の振動に応じた電圧(帰還電圧)が出力されるものである。
【0026】
このため、接触式触覚センサ10においては、針14先端の振動の振幅を帰還電圧から推定することができる。
【0027】
この接触式触覚センサ10は、構造がシンプルで剛性が高いとともに、従来の接触式プローブよりもコストが安くかつ頑強であるので、近年各種の装置に用いられるようになっている。
【0028】
なお、上記した接触式触覚センサ10における圧電振動板12としては、例えば、ムラタ社製7BB35−3CAOを用いることができる。
【0029】
次に、接触式触覚センサ10において、基準振幅値(電圧値)を定め、基準振幅値と現在の振幅値との差分から接触式触覚センサ10と測定対象物との相対距離を導出する手法について説明する。
【0030】
まず、接触式触覚センサ10において、振動する針14が変位する距離と帰還電圧との関係は、図2に示すとおり近似的に線形関係を示すことになる。
【0031】
即ち、接触式触覚センサ10のX、Y軸方向においては、図3に示すように、接触式触覚センサ10を図3における(b)の位置から(a)の位置まで移動させ、振動している針14と測定対象物100とを接近させながら帰還電圧の変化を測定したところ、接触式触覚センサ10の中心の位置と帰還電圧の変化との関係について図2上図に示す結果が得られた。
【0032】
ここで、帰還電圧の屈曲点は針14が測定対象物100に接触し、帰還電圧が減少を開始する位置(図3における(c)で示す位置)で、そこを0とおいた。接触式触覚センサ10の位置が負、即ち、測定対象物100から離れている場合は、針14は十分に振れ帰還電圧は最大値を維持するが、測定対象物100と接触後、針14が測定対象物100に押し付けられ、振動が小さくなるにつれて帰還電圧は減少する。最終的に針14の振動が停止したときに、帰還電圧は最小値となる。
【0033】
また、接触式触覚センサ10のZ軸方向においては、図9に示すように、測定対象物100の上方から接触式触覚センサ10を移動させ、同様に帰還電圧の変化を測定したところ、図2下図に示す結果が得られた。図の屈曲点は針14が測定対象物100に接触し、帰還電圧が減少を開始する位置で、そこを位置0とした。
【0034】
この結果より、針14が変位する距離と帰還電圧とが近似的に図4に示す数式の線形関係にあることが求められる。なお、図4に示す数式において、Viは帰還電圧[V]、Diは距離(針14が変位する距離)[μm]を表す(i=x,y,z)。
【0035】
この図2に示す結果からは、接触式触覚センサ10は、針14と測定対象物100との接触・非接触を判断するだけではなく、針14と測定対象物100との相対的な距離も計測できることが確認できた。また、接触式触覚センサ10は、特に、Z方向(Z direction)に対する感度が高く、1[μm]以上の精度で測定対象物100を計測することが可能であることがわかった。
【0036】
つまり、接触式触覚センサ10は、上記したように、針14と測定対象物100との接触・非接触を判断するだけではなく、針14と測定対象物100との相対的な距離も計測することができるものである。
【0037】
そこで、基準振幅値(電圧値)を図2におけるReferenceと表示してある電圧レベルに定めると、この電圧の前後では電圧値から一意に相対距離が求められる。即ち、電圧が飽和するまでは、電圧と距離とが比例の関係にあり、電圧がわかれば距離もわかる。なお、この基準振幅値(電圧値)は、最大電圧と最小電圧の中点近傍に設定する。
【0038】
また、図2における図中X、Y、Zと示される座標は接触式触覚センサ10の座標系であり、それは図1に示すとおりである。Zは、測定対象物100の存在する針14の下方を正方向としてある。
【0039】
また、上記した結果を得た際の本願発明者による実験の条件は、以下に示す通りであった。
【0040】
即ち、接触式触覚センサ10の入力としては、接触式触覚センサ10の駆動電極12aに対して、0.147[Vp−p]、2.66[kHz]の正弦波交流を印加した。一方、測定電圧としては、帰還電極12bからの出力を図10に示す接触式触覚センサ10の回路における「CN2 1番ピン」につなげたときの「CN1 4番ピン」の信号で観測した。
【0041】
また、測定対象物100としてはミツトヨ社製セラブロック(精度+/−0.1μm)を使用し、接触式触覚センサ10の移動には駿河精機社製XYステージを用い、手動にてXYステージを移動させながら測定対象物100に接触させ(測定対象物100は固定)、その際の電圧を観測した。X、Y軸の測定については、針14は先端より0.5mmの位置が測定対象物100の側面に接触するように位置調整を行った。
【0042】
次に、上記のようにして求められる相対距離の変化の履歴に基づいて、接触式触覚センサ10の次の進行方向を定める手法について説明する。
【0043】
なお、この手法としては、PI制御とcos関数との組み合わせによる手法とsin関数とcos関数との組み合わせによる手法とがあり、まず、PI制御とcos関数との組み合わせによる手法について説明する。
【0044】
図5には、PI制御とcos関数との組み合わせにより、相対距離の変化の履歴に基づき接触式触覚センサ10の次の進行方向を定める手法を実現するための制御ブロック構成図が示されている。
【0045】
この図5に示す制御ブロック構成図において、Zmotor502は接触式触覚センサ10をZ方向(測定対象物100に対する上下方向である。図1および図3の座標系に示すZ方向を参照する。)に駆動するモータを表し、Ymotor504は接触式触覚センサ10をY方向(接触式触覚センサ10に対する前後方向である。図1および図3の座標系に示すY方向を参照する。)に駆動するモータを表す。従って、接触式触覚センサ10は、Zmotor502によりZ方向に移動され、Ymotor504によりY方向に移動されることになる。
【0046】
これら接触式触覚センサ10、Zmotor502ならびにYmotor504が、図5に示す制御ブロック構成図におけるハードウェア的な構成要素であり、接触式触覚センサ10はZmotor502とYmotor504とによって移動され、針14と測定対象物100との相対位置(SensorPosition)を変化させる。接触式触覚センサ10は、針14と測定対象物100との相対位置に応じて、図2によって定められる帰還電圧を出力することになる。
【0047】
また、図5における破線で示す枠の内部は、相対距離の変化の履歴に基づき接触式触覚センサ10の次の進行方向を定める処理を行う制御手段たるコントローラ506の構成を示している。
【0048】
このコントローラ506には接触式触覚センサ10の帰還電圧が入力され、一方、コントローラ506からはZmotor502、Ymotor504それぞれに指令速度(Reference Velocity)uz、uyが出力される。各モータは指令されたとおりの速度で動作する。
【0049】
ここで、接触式触覚センサ10からの出力電圧(帰還電圧)という一つのスカラ情報から、如何に指令速度uz、uyという2つのベクトル情報を獲得するかであるが、そのためにこの実施の形態においては、まず、ReferenceVoltageとして、上記のようにして求められる基準振幅値(電圧)を採用し、差分手段508により基準振幅値(電圧)と現在のSensorPsitionによって定められる振幅値(電圧)との差分を取ることによって、測定対象物100との相対距離を得るようにしている。
【0050】
その後に、Zmotor502に対しては、相対距離をKpz倍手段(比例係数Kpzは負の値である。)510によりKpz倍したものと、相対距離をKiy倍手段(比例係数Kiyは正の値である。)511によりKiy倍したのち積分手段512により積分した相対距離の積分をKiz倍手段(比例係数Kizは負の値である。)514によりKiz倍したものとを、加算手段516により足し合わせ、これをZmotor502への指令速度uzとする。なお、「相対距離の変化の履歴」とは、この実施の形態においては相対距離の積分をさす。
【0051】
また、この実施の形態においては、相対距離をKiy倍手段511により所定倍した後にそれを積分手段512で積分しているが、これに限られることなしに、相対距離を積分した後に所定倍するようにする、即ち、Kiy倍手段511に相当する手段と積分手段512に相当する手段との処理手順を入れ替えるように変形してもよいことは勿論であり、両者は本質的になんら変わりは無いためその詳細な説明は省略する。
【0052】
また、この実施の形態においては、相対距離をKiy倍手段511により所定倍した後にそれを積分手段512で積分し、その積分をさらにKiz倍手段514で所定倍するようにしているが、差分手段508により得られた相対距離を直接に積分手段512に相当する手段で積分し、その積分をさらにKiz倍手段514に相当する手段で所定倍するように変形してもよいし、これとは逆に、差分手段508により得られた相対距離をKiz倍手段514に相当する手段で所定倍した後に積分手段512に相当する手段で積分するように変形してもよく、これらは全て本質的になんら変わりは無いためその詳細な説明は省略する。
【0053】
上記した制御の手法によれば、接触式触覚センサ10の針14と測定対象物100とのZ方向の相対距離を一定値に制御することができる。即ち、接触式触覚センサ10の針14が測定対象物100に近づき過ぎれば接触式触覚センサ10の出力たる帰還電圧は低下し、差分手段508における差分値は正(+)となる。このとき負のKpzによってZmotor502の速度が負となり、測定対象物100から離れる方向に接触式触覚センサ10の針14を移動させる。
【0054】
それとは反対に、接触式触覚センサ10の針14が測定対象物100から離れすぎれば、接触式触覚センサ10の出力たる帰還電圧は上昇し、差分手段508における差分値は負(−)となる。このとき負のKpzによってZmotor502の速度が正となり、測定対象物100に接近する方向に接触式触覚センサ10の針14を移動させる。
【0055】
ここで、相対距離の積分は、現在の移動速度を維持するために用いる。即ち、あるZ方向の速度を有したときに測定対象物100と接触式触覚センサ10の針14との相対距離が0となった場合に、Kpzの項だけではZmotor502の速度も0となり停止しまう。積分手段512により現時点での速度が保持され、同一の速度でZmotor502は動き続けることができる。
【0056】
また、Ymotor504に対しては、差分手段508により上記した測定対象物100と接触式触覚センサ10の針14との相対距離を得た後に、相対距離をKpy倍手段(比例係数Kpyは正の値である。)518によりKpy倍したものと、相対距離をKiy倍手段511によりKiy倍したのち積分手段512により積分した相対距離の積分とを、加算手段520により足し合わせる。この加算手段520の出力uiは演算手段522へ入力され、演算手段522において、加算手段520の出力uiをcos(ui)したものにYmotor504の最高速度Vmaxを乗じたものが得られ、これをYmotor504への指令速度uyとする。
【0057】
この制御の手法によれば、測定対象物100の形状に合わせYmotor504の速度を調節し、測定対象物100への接触式触覚センサ10の針14の衝突を防止することができる。
【0058】
即ち、積分手段512に差分が溜まる状態とは、Z方向への移動速度が大きい状態で接触式触覚センサ10の針14と測定対象物100との相対位置が保持されることを意味し、測定対象物100の傾斜が大きいことを示す。この場合に、Ymotor504の移動速度が抑制されなければ、接触式触覚センサ10の針14は測定対象物100に衝突してしまう。
【0059】
このため、uiにcos演算を施すことで、積分が溜まった場合にYmotor504の速度を抑制する。uiが0であればYmotor504は最高速度Vmaxで移動することになる。
【0060】
なお、Kpyは積分だけでは速応性が悪いため、応答性の改善のために用いてある。また、積分手段512の出力は、cosの演算結果の符合が逆転しないよう、+π/2〜−π/2で飽和(Saturation)するように抑制してある。
【0061】
なお、最高速度Vmaxは、ハードウェアの制限に応じて適宜決定すればよい。また、Kpz、Kiz、Kpyは、最も応答性がよく、かつ、発振が起きないように実験的に選定することになる。
【0062】
ここで、図6には、上記した手法により駆動される接触式触覚センサ10の動作状態が示されている。なお、図6における実線が測定対象物100の輪郭を示し、図6における一点鎖線が接触式触覚センサ10の針14の外形を示し、図6における破線が接触式触覚センサ10の針14の先端の移動の軌跡を示す。
【0063】
接触式触覚センサ10の針14が、例えば、図6の左方から右方向に移動して、図6におけるaのポイントで測定対象物100に接触したものとする。このとき接触式触覚センサ10の帰還電圧の電圧値は大きく減少し、上記した差分手段508における差分値は正方向に増加する。また、それと同時に、積分手段512の値も増加する。
【0064】
このとき、Kpz、Kizにより、Zmotor502は、接触式触覚センサ10の針14の上方向(負)への移動を開始する。また、uiにより、Ymotor504による接触式触覚センサ10の針14のY方向への移動速度は減少し始める。さらに、積分手段512の積分値が増加し、上限の+π/2まで増加したときにYmotor504は停止し、接触式触覚センサ10の針14は測定対象物100をなぞりながらZ方向のみ上方向に移動する。このとき、定常状態では差分手段508における差分値は0であり、Zmotor502、Ymotor504とも積分手段512の出力のみで移動する。
【0065】
接触式触覚センサ10の針14が、測定対象物100の頂点の近傍の位置たる図6におけるbのポイントに差し掛かったとき、接触式触覚センサ10の針14はさらに上方向へ移動するが、測定対象物100の傾斜が緩やかになるため、接触式触覚センサ10と測定対象物100とが離れ、接触式触覚センサ10の帰還電圧の電圧値が増加する。このとき差分手段508の差分値は負となり、積分手段512の積分値の減少とともにuz、uiの値が減少するため、接触式触覚センサ10の移動方向(傾斜)は緩やかになっていく。
【0066】
図6におけるcのポイントではほぼ積分値は0となり、水平方向へ最高速度Vmaxで進んでいく。それと同時に、Z軸に関しては、微細な制御を繰り返しながら、差分手段508の差分値が常に0となるように相対距離を維持する。
【0067】
以上において説明した制御の結果、接触式触覚センサ10は常に測定対象物100の表面をなぞりながら移動することになり、そのため接触式触覚センサ10の通った軌跡は測定対象物100の形状を精度よく表現することになり、形状計測が可能となる。
【0068】
ここで、図7には、幅1mmの測定対象物100を計測したときの実験結果が示されている。外側の破線が接触式触覚センサ10の針14の先端の移動の軌跡を示し、内側の実線が針14の先端の幅を補正して得られた測定対象物100の外形である。本実験の場合には、精度17μmで形状計測が可能であった。
【0069】
なお、上記した実験の条件は、以下の通りである。即ち、
Kpz=0.2[mm/s/V]
Kiz=275[mm/s/rad]
Kpy=π/6[rad/s/V]
Kiy=37.68[rad/s/V]
Vmax=0.6[mm/s]
測定対象物100:ミツトヨ社製セラブロック(精度+/−0.1μm)
1mm×10mm×30mm
印加電圧および測定電圧:図2に関する実験の際の条件と同一
基準電圧:2.75V
駆動機器:MRXプロトタイプ
なお、本願発明者による種々の実験によれば、工具などの複雑形状あるいは人間の手などの柔軟体に対しても、本発明による手法により形状を獲得できることが確認された。
【0070】
また、本発明による手法によれば、垂直な壁が最も計測条件が厳しいものであるが、上記の実験結果に示すように、その厳しい条件下においても精度よく形状を獲得することができた。即ち、本発明による手法は、どのような形状の測定対象物100に対しても適用することができる。
【0071】
次に、sin関数とcos関数との組み合わせによる手法について説明するが、図8には、sin関数とcos関数との組み合わせにより、相対距離の変化の履歴に基づき接触式触覚センサ10の次の進行方向を定める手法を実現するための制御ブロック構成図が示されている。
【0072】
この手法の基本的な動作原理は、上記において説明したPI制御とcos関数との組み合わせによる手法と同様であるが、PI制御の部分がsin関数となっている点において両者は相違する。
【0073】
即ち、積分値が0の場合、Ymotor504が最大速度で動作する一方、Xmotor502は停止し、他方、積分値が増加した場合にはYmotor504の速度を緩める一方、Xmotor502の進行を早める。
【0074】
この制御手法により、測定対象物100の表面をなぞりながら走査し、その結果、接触式触覚センサ10の軌跡が測定対象物100の形状を精度よく表現する。
【0075】
なお、最高速度αは、ハードウェアの制限に応じて適宜決定すればよい。また、Kp、Kiは、最も応答性がよく、かつ、発振が起きないように実験的に選定することになる。この実施の形態においては、
αz=0.5[mm/s]
Kp=π/3[rad/V]
Ki=1.74[rad/V]
である。
【0076】
ここで、図11には、直径1mmの測定対象物100を計測したときの実験結果が示されている。
【0077】
この実験における測定対象物100は、株式会社アイゼン社製EC1.0(型番)で、図11において破線が測定対象物100の輪郭を示し、実線が針14の先端の幅を補正して得られた測定対象物100の測定形状である。
【0078】
また、図12には、上記した手法により駆動される接触式触覚センサ10の動作状態が示されている。図12は、上からそれぞれ、帰還電圧、接触式触覚センサ10のX軸の位置、接触式触覚センサ10のY軸の位置、真値との誤差の変化を示している。本実験の場合には、最大誤差32μmで形状計測が可能であった。
【0079】
なお、接触式触覚センサ10の特性が類似しているX軸、Y軸制御の場合には、sin関数とcos関数との組み合わせによる制御手法を用い、一方、接触式触覚センサ10の特性が著しく異なるZ軸、X軸およびZ軸、Y軸制御の場合には、PI制御とcos関数との組み合わせによる制御手法を用いることが好ましい。
【0080】
以上において説明したように、上記した実施の形態によれば、振幅というスカラ情報しか有しない接触式触覚センサ10からベクトル情報を得て、その結果、高速な形状計測が可能となり、短時間で測定対象物100の形状を精度よく測定することができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、品質管理のための製品検査、例えば、従来困難であった安価な量産製品に対する全数寸法計測を行う際に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1(a)(b)は、本発明による接触式触覚センサの制御方法およびそのシステムに用いる接触式触覚センサの構成説明図であり、(a)は接触式触覚センサの正面であり、(b)は接触式触覚センサの右側面である。
【図2】図2は、接触式触覚センサ中心の位置と帰還電圧との関係を示すグラフであり、上図はXあるいはY軸方向に接触式触覚センサを動かしたときの接触式触覚センサ中心(圧電振動板中心)の位置に関して示し、下図はZ軸方向に接触式触覚センサを動かしたときの接触式触覚センサ中心(圧電振動板中心)の位置に関して示すものである。
【図3】図3は、測定対象物に対する接触式触覚センサの針の移動の動作を示す説明図である。
【図4】図4は、接触式触覚センサにおける振動する針が変位する距離と帰還電圧との関係を示す数式である。
【図5】図5は、PI制御とcos関数との組み合わせにより、相対距離の変化の履歴に基づき接触式触覚センサの次の進行方向を定める手法を実現するための制御ブロック構成図である。
【図6】図6は、PI制御とcos関数との組み合わせによる手法により駆動される接触式触覚センサの動作状態を示す説明図である。
【図7】図7は、本願発明者の実験結果を示すグラフである。
【図8】図8は、sin関数とcos関数との組み合わせにより、相対距離の変化の履歴に基づき接触式触覚センサ10の次の進行方向を定める手法を実現するための制御ブロック構成図である。
【図9】図9は、測定対象物に対する接触式触覚センサの針の移動の動作を示す説明図である。
【図10】図10は、接触式触覚センサの回路図である。
【図11】図11は、本願発明者の実験結果を示すグラフであり、sin,cos関数制御による円形の測定対象物の測定結果(軌跡)を示す。
【図12】図12は、本願発明者の実験結果を示すグラフであり、sin,cos関数制御による円形の測定対象物の測定結果(時系列)を示すものであって、上からそれぞれ、帰還電圧、接触式触覚センサのX軸の位置、接触式触覚センサのY軸の位置、真値との誤差の変化を示す。
【符号の説明】
【0083】
10 接触式触覚センサ
12 圧電振動板
12a 駆動電極
12b 帰還電極
14 針
100 測定対象物
502 Zmotor
504 Ymotor
506 コントローラ
508 差分手段
510 Kpz倍手段
511 Kiy倍手段
512 積分手段
514 Kiz倍手段
516 加算手段
518 Kpy倍手段
520 加算手段
522 演算手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動電極と帰還電極とを有する圧電振動板と、前記圧電振動板に固着された針とを有し、前記駆動電極に交流電圧を印加することにより前記針が微小振動する一方で、前記帰還電極からは前記針の振動に応じた帰還電圧が出力される接触式触覚センサの制御方法において、
所定の基準振幅値と現在の振幅値との差分から接触式触覚センサと測定対象物との相対距離を得る第1のステップと、
前記第1のステップで得た相対距離の変化の履歴に基づいて、前記接触式触覚センサの速度を得る第2のステップと
を有することを特徴とする接触式触覚センサの制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の接触式触覚センサの制御方法において、
前記相対距離の変化の履歴は、前記相対距離の積分である
ことを特徴とする接触式触覚センサの制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載の接触式触覚センサの制御方法において、
前記第2のステップは、前記相対距離を所定倍したものと前記相対距離を所定倍したものの積分とを加算したものを前記接触式触覚センサの速度とする
ことを特徴とする接触式触覚センサの制御方法。
【請求項4】
請求項2に記載の接触式触覚センサの制御方法において、
前記第2のステップは、前記相対距離を所定倍したものと前記相対距離の積分を所定倍したものとを加算したものを前記接触式触覚センサの速度とする
ことを特徴とする接触式触覚センサの制御方法。
【請求項5】
請求項2に記載の接触式触覚センサの制御方法において、
前記第2のステップは、前記相対距離を所定倍したものと前記相対距離を所定倍したものの積分とを加算し、前記加算したものに対してcos演算したものに所定の速度を乗じたものを前記接触式触覚センサの速度とする
ことを特徴とする接触式触覚センサの制御方法。
【請求項6】
請求項2に記載の接触式触覚センサの制御方法において、
前記第2のステップは、前記相対距離を所定倍したものと前記相対距離の積分を所定倍したものとを加算し、前記加算したものに対してcos演算したものに所定の速度を乗じたものを前記接触式触覚センサの速度とする
ことを特徴とする接触式触覚センサの制御方法。
【請求項7】
請求項2に記載の接触式触覚センサの制御方法において、
前記第2のステップは、前記相対距離を所定倍したものと前記相対距離を所定倍したものの積分とを加算し、前記加算したものに対してsin演算したものに所定の速度を乗じたものを前記接触式触覚センサの速度とする
ことを特徴とする接触式触覚センサの制御方法。
【請求項8】
請求項2に記載の接触式触覚センサの制御方法において、
前記相対距離の積分を所定倍したものとを加算し、前記加算したものに対してsin演算したものに所定の速度を乗じたものを前記接触式触覚センサの速度とする
ことを特徴とする接触式触覚センサの制御方法。
【請求項9】
駆動電極と帰還電極とを有する圧電振動板と、前記圧電振動板に固着された針14とを有し、前記駆動電極に交流電圧を印加することにより前記針が微小振動する一方で、前記帰還電極からは前記針の振動に応じた帰還電圧が出力される接触式触覚センサの制御システムにおいて、
所定の基準振幅値と現在の振幅値との差分から接触式触覚センサと測定対象物との相対距離を得る第1の手段と、
前記第1のステップで得た相対距離の変化の履歴に基づいて、前記接触式触覚センサの速度を得る第2の手段と
を有することを特徴とする接触式触覚センサの制御システム。
【請求項1】
駆動電極と帰還電極とを有する圧電振動板と、前記圧電振動板に固着された針とを有し、前記駆動電極に交流電圧を印加することにより前記針が微小振動する一方で、前記帰還電極からは前記針の振動に応じた帰還電圧が出力される接触式触覚センサの制御方法において、
所定の基準振幅値と現在の振幅値との差分から接触式触覚センサと測定対象物との相対距離を得る第1のステップと、
前記第1のステップで得た相対距離の変化の履歴に基づいて、前記接触式触覚センサの速度を得る第2のステップと
を有することを特徴とする接触式触覚センサの制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の接触式触覚センサの制御方法において、
前記相対距離の変化の履歴は、前記相対距離の積分である
ことを特徴とする接触式触覚センサの制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載の接触式触覚センサの制御方法において、
前記第2のステップは、前記相対距離を所定倍したものと前記相対距離を所定倍したものの積分とを加算したものを前記接触式触覚センサの速度とする
ことを特徴とする接触式触覚センサの制御方法。
【請求項4】
請求項2に記載の接触式触覚センサの制御方法において、
前記第2のステップは、前記相対距離を所定倍したものと前記相対距離の積分を所定倍したものとを加算したものを前記接触式触覚センサの速度とする
ことを特徴とする接触式触覚センサの制御方法。
【請求項5】
請求項2に記載の接触式触覚センサの制御方法において、
前記第2のステップは、前記相対距離を所定倍したものと前記相対距離を所定倍したものの積分とを加算し、前記加算したものに対してcos演算したものに所定の速度を乗じたものを前記接触式触覚センサの速度とする
ことを特徴とする接触式触覚センサの制御方法。
【請求項6】
請求項2に記載の接触式触覚センサの制御方法において、
前記第2のステップは、前記相対距離を所定倍したものと前記相対距離の積分を所定倍したものとを加算し、前記加算したものに対してcos演算したものに所定の速度を乗じたものを前記接触式触覚センサの速度とする
ことを特徴とする接触式触覚センサの制御方法。
【請求項7】
請求項2に記載の接触式触覚センサの制御方法において、
前記第2のステップは、前記相対距離を所定倍したものと前記相対距離を所定倍したものの積分とを加算し、前記加算したものに対してsin演算したものに所定の速度を乗じたものを前記接触式触覚センサの速度とする
ことを特徴とする接触式触覚センサの制御方法。
【請求項8】
請求項2に記載の接触式触覚センサの制御方法において、
前記相対距離の積分を所定倍したものとを加算し、前記加算したものに対してsin演算したものに所定の速度を乗じたものを前記接触式触覚センサの速度とする
ことを特徴とする接触式触覚センサの制御方法。
【請求項9】
駆動電極と帰還電極とを有する圧電振動板と、前記圧電振動板に固着された針14とを有し、前記駆動電極に交流電圧を印加することにより前記針が微小振動する一方で、前記帰還電極からは前記針の振動に応じた帰還電圧が出力される接触式触覚センサの制御システムにおいて、
所定の基準振幅値と現在の振幅値との差分から接触式触覚センサと測定対象物との相対距離を得る第1の手段と、
前記第1のステップで得た相対距離の変化の履歴に基づいて、前記接触式触覚センサの速度を得る第2の手段と
を有することを特徴とする接触式触覚センサの制御システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−40940(P2007−40940A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−228288(P2005−228288)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000116057)ローランドディー.ジー.株式会社 (163)
【出願人】(304027349)国立大学法人豊橋技術科学大学 (391)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000116057)ローランドディー.ジー.株式会社 (163)
【出願人】(304027349)国立大学法人豊橋技術科学大学 (391)
【Fターム(参考)】
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