説明

推進ユニット用旋回装置

【課題】異常が生じた状況に応じた推進ユニットの適切な旋回動作を迅速に行うことができ、推進ユニット用旋回装置の破損を招いてしまうことを抑制する。
【解決手段】旋回アクチュエータ11a〜11dは、旋回ギア104に噛み合うピニオンが設けられた減速機と減速機を回転駆動する電動モータとを有し、推進ユニットを旋回させる。制御部12は、電動モータの回転を制御する。旋回コントローラ13は、電動モータの回転指令信号を制御部12に出力し、推進ユニットの旋回方向の回転位置及び回転速度を制御する。また、旋回コントローラ13は、旋回アクチュエータ11a〜11d及び制御部12の異常を検知する異常検知部23〜25を有し、異常が検知されたときは、旋回アクチュエータ11a〜11dの運転負荷を制限するよう制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロペラの回転により船舶を推進させるとともにプロペラ軸と垂直な旋回軸線を中心として船舶において回転自在に支持された推進ユニットを、旋回軸線を中心に旋回させる推進ユニット用旋回装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アジマススラスターやポッド等と称され、プロペラの回転により船舶を推進させるとともにプロペラ軸と垂直な旋回軸線を中心として船舶において回転自在に支持された推進ユニットが知られている。そして、この推進ユニットが設けられる船舶においては、特許文献1に開示されているように、旋回軸線を中心に推進ユニットを旋回させる推進ユニット用旋回装置が設けられている。このように推進ユニット及び推進ユニット用旋回装置が設けられた船舶においては、推進ユニットのプロペラが回転することで船舶が推進され、推進ユニット用旋回装置によって推進ユニットが旋回することで船舶の操舵が行われる。
【0003】
特許文献1に開示された推進ユニット用旋回装置においては、制御手段と、サーボアンプと、サーボモータと、旋回軸線を軸線方向として配置される旋回ギアである旋回輪とが備えられている。そして、制御手段から推進ユニットの旋回指令信号が出力され、その旋回指令信号に応じてサーボアンプから速度指令信号が出力されてサーボモータが駆動され、これにより、旋回輪とともに推進ユニットが旋回される。尚、特許文献1においては、サーボモータに、一定のトルクリミット値を超える過大なトルクが作用したときにこのトルクの伝達を遮断するトルクリミッタの機能が備えられている点が開示されている。また、特許文献1においては、サーボモータ及びサーボアンプの組が2組以上設けられ、いずれかの組に支障が生じたときには、支障が生じた組のサーボアンプの電源をOFFとし、支障が生じていない組のサーボモータ及びサーボアンプにて運転を行うことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−57002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された推進ユニット用旋回装置においては、サーボモータに過大なトルクが作用したときにはそのトルクの伝達が遮断される。しかしながら、過大なトルクが発生したサーボモータの破損がトルクの伝達の遮断によって一時的に回避されるだけであるため、過大なトルクが発生した状況に応じた運転状態で迅速に推進ユニット用旋回装置の運転を継続することができない。このため、異常が生じた状況に応じた推進ユニットの適切な旋回動作を迅速に行うことができない。そして、推進ユニット用旋回装置に対する負荷が過大な状態が続いたまま運転が継続されると、推進ユニット用旋回装置の破損を招いてしまう虞がある。
【0006】
また、特許文献1に開示された推進ユニット用旋回装置においては、サーボモータ及びサーボアンプの組が複数設けられ、それらのうちのいずれかの組に支障が生じた場合には、支障が生じた組のサーボアンプの電源を遮断することで、支障が生じていない組のみにて運転が継続される。しかしながら、支障が生じた組の発見が遅れた場合には、支障が生じた組のサーボアンプの電源が遮断されず、いずれかの組に支障が生じた状態のまま運転
が継続されてしまうことになる。このため、異常が生じた状況に応じた推進ユニットの適切な旋回動作を迅速に行うことができず、推進ユニット用旋回装置の破損を招いてしまう虞がある。また、支障が生じている対象がサーボモータではなくサーボアンプのみである場合、サーボアンプの電源が遮断されることで、支障が生じていないサーボモータの運転も不能となる。このため、支障が生じていないサーボモータを有効に活用することができず、異常が生じた状況に応じた推進ユニットのより適切な旋回動作を行うことができないことになる。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、異常が生じた状況に応じた推進ユニットの適切な旋回動作を迅速に行うことができ、推進ユニット用旋回装置の破損を招いてしまうことを抑制することができる、推進ユニット用旋回装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための第1発明に係る推進ユニット用旋回装置は、プロペラの回転により船舶を推進させるとともにプロペラ軸と垂直な旋回軸線を中心として船舶において回転自在に支持された推進ユニットを、前記旋回軸線を中心に旋回させる推進ユニット用旋回装置に関する。そして、第1発明に係る推進ユニット用旋回装置は、前記旋回軸線を中心位置として配置された旋回ギアの内周又は外周に形成された歯に噛み合うピニオンが設けられた減速機と当該減速機に連結されて当該減速機を回転駆動する電動モータとを有し、前記電動モータが回転することで前記推進ユニットを前記旋回軸線を中心に旋回させる旋回アクチュエータと、前記電動モータの回転を制御する制御部と、前記電動モータの回転指令信号を前記制御部に出力し、前記推進ユニットの旋回方向における回転位置及び回転速度を制御する旋回コントローラと、を備え、前記旋回コントローラは、前記旋回アクチュエータ及び前記制御部のうちの少なくともいずれかの異常を検知する異常検知部を有し、当該異常検知部が異常を検知したときは、前記旋回アクチュエータの運転負荷を制限するように、前記旋回アクチュエータ及び前記制御部を制御することを特徴とする。
【0009】
この発明によると、旋回コントローラからの指令信号に基づいて作動する制御部により旋回アクチュエータにおける電動モータの回転が制御され、電動モータの回転が減速機を介してピニオンから出力される。そして、ピニオンと旋回ギアとの噛み合いを介して旋回コントローラの指令に基づく目標の回転速度で目標の回転位置まで推進ユニットが回転する。このように推進ユニットの旋回方向における回転位置及び回転速度が制御され、推進ユニットの所望の旋回動作が行われる。一方、旋回コントローラには異常検知部が設けられており、旋回アクチュエータ及び制御部の少なくともいずれかの異常が常時監視されており、異常が発生すると直ちに検知される。そして、異常検知部にて異常が検知されると、この検知結果に基づいて、旋回コントローラが、旋回アクチュエータの運転負荷を制限するように、旋回アクチュエータ及び制御部を制御する。このため、異常が発生すると迅速に検知されるとともに、この検知結果に基づく旋回コントローラからの指令によって、異常が生じた状況に対応して旋回アクチュエータの運転負荷が制限されることになる。また、異常発生状況に迅速に対応して運転負荷が制限されるため、推進ユニット用旋回装置の破損を招いてしまうことも抑制されることになる。
【0010】
従って、本発明によると、異常が生じた状況に応じた推進ユニットの適切な旋回動作を迅速に行うことができ、推進ユニット用旋回装置の破損を招いてしまうことを抑制することができる、推進ユニット用旋回装置を提供することができる。
【0011】
第2発明に係る推進ユニット用旋回装置は、第1発明の推進ユニット用旋回装置において、潮流の速度及び方向を検出する潮流センサと、前記推進ユニットの旋回方向の回転位置及び回転速度を検出する回転センサと、を更に備え、前記異常検知部は、前記潮流センサ及び前記回転センサでの検出結果に基づいて、前記ピニオンの回転速度が、所定の回転
速度閾値を超えたときに、前記旋回アクチュエータの運転状態の異常を検知し、前記旋回コントローラは、前記異常検知部が異常を検知したときは、前記電動モータの回転速度を制限することで前記旋回アクチュエータの運転負荷を制限するように、前記旋回アクチュエータ及び前記制御部を制御することを特徴とする。
【0012】
この発明によると、潮流センサ及び回転センサでの検出結果に基づいて、旋回アクチュエータの減速機の出力側のピニオンの回転速度が所定の回転速度閾値を超えたときに、旋回アクチュエータの運転状態に異常が発生したことが異常検知部によって検知される。そして、電動モータの回転速度が制限されて旋回アクチュエータの運転負荷が制限される。このため、潮流の速度及び方向と推進ユニットの旋回方向の回転位置及び回転速度とに応じて、旋回アクチュエータのピニオンの回転速度が閾値を越えない適正な範囲に収まるように、旋回アクチュエータの運転負荷が制限されることになる。即ち、潮流の影響によって推進ユニットの回転位置や回転速度との関係で急激な旋回力が外力として推進ユニットに作用してしまい、旋回アクチュエータにおいて過負荷状態での異常な運転状態が継続されてしまうことが、抑制されることになる。これにより、旋回アクチュエータの破損を招いてしまうことを抑制することができる。とくに、潮流が早まるように変化するときにその早まる方向と逆行する方向に推進ユニットの旋回動作を高速で行ってしまって旋回アクチュエータの破損を招いてしまうような事態を抑制するために有効となる。尚、電動モータの回転速度を制限する方法としては、その回転速度を減少させる或いは回転を停止させる方法を選択することができる。
【0013】
第3発明に係る推進ユニット用旋回装置は、第2発明の推進ユニット用旋回装置において、前記回転速度閾値は、潮流の速度及び方向と前記推進ユニットの旋回方向の回転位置及び回転速度との関係で予め定められる前記ピニオンの回転速度についての所定の回転速度値であることを特徴とする。
【0014】
この発明によると、異常検知部は、潮流の速度及び方向と推進ユニットの旋回方向の回転位置及び回転速度との関係で予め定められる旋回アクチュエータのピニオンの回転速度についての所定の回転速度閾値に基づいて、異常を検知する。このため、潮流の影響によって推進ユニットの回転位置や回転速度との関係で急激な旋回力が外力として推進ユニットに作用して旋回アクチュエータの運転状態に異常が発生する場合をより正確に判断して抑制することができる。これにより、旋回アクチュエータの破損を招いてしまうことをより効率よく抑制することができる。
【0015】
第4発明に係る推進ユニット用旋回装置は、第1発明の推進ユニット用旋回装置において、前記旋回ギアの歯と前記ピニオンとの間で作用する圧力又は当該圧力に比例して増減する物理量を検出する圧力検出部を更に備え、前記異常検知部は、前記圧力検出部で検出された検出結果に基づいて、前記圧力又は前記物理量が所定の圧力閾値を超えたときに、前記旋回アクチュエータの異常を検知することを特徴とする。
【0016】
この発明によると、旋回ギアとピニオンとの間の圧力又はそれに比例した物理量が検出され、その検出結果に基づいて圧力閾値を超えたときに旋回アクチュエータの異常が検知される。このため、旋回ギアとピニオンとの間で過大な負荷が生じてしまった場合に、その異常の発生状況を迅速且つ適切に検知して旋回アクチュエータの運転負荷を制限することができる。これにより、旋回アクチュエータの破損を効率よく抑制することができる。
【0017】
第5発明に係る推進ユニット用旋回装置は、第4発明の推進ユニット用旋回装置において、前記圧力閾値は、前記物理量であって前記電動モータに印加される電圧についての所定の電圧値であることを特徴とする。
【0018】
この発明によると、圧力に比例して増減する物理量が、電動モータに印加される電圧として容易に検出される。そして、その検出された電圧が圧力閾値である所定の電圧値と比較されることで、旋回ギアとピニオンとの間で生じた過大な負荷を迅速且つ適切に検知することができる。
【0019】
第6発明に係る推進ユニット用旋回装置は、第1発明の推進ユニット用旋回装置において、前記電動モータは誘導電動機として設けられ、前記制御部はインバータとして設けられるとともに複数備えられ、前記異常検知部は、前記制御部の異常を検知し、前記旋回アクチュエータは、複数備えられ、前記異常検知部が異常を検知していないときは、前記制御部のそれぞれに対して1つ又は複数ずつが対応して作動する状態で前記電動モータの回転が制御され、前記旋回コントローラは、前記異常検知部がいずれかの前記制御部の異常を検知したときは、異常が検知されていない前記制御部によって全ての前記電動モータの回転を制御させ、前記旋回アクチュエータの運転負荷を制限するように、前記旋回アクチュエータ及び前記制御部を制御することを特徴とする。
【0020】
この発明によると、制御部であるインバータに異常が発生していない通常運転時においては、各インバータに対応する1つ又は複数の電動モータが各インバータによって制御されて、推進ユニットの旋回動作が行われる。一方、いずれかのインバータに異常が発生すると、その異常が異常検知部で速やかに検知され、異常が発生していないインバータによって全ての電動モータの回転が制御される。このため、異常が発生していないインバータの仕様の範囲で、全ての電動モータが負荷が制限された状態で駆動され、推進ユニットの旋回動作が行われることになる。これにより、異常が発生したインバータのみを切り離して、異常が発生していない電動モータを有効に活用でき、異常が生じた状況に応じた推進ユニットのより適切な旋回動作を行うことができる。また、全ての電動モータが負荷が制限された状態で運転が行われることになるため、各旋回アクチュエータにおける均等な負荷バランスを異常が発生していない状態のときと同様に維持することができる。このため、旋回アクチュエータ間で負荷バランスが崩れて特定の旋回アクチュエータに負荷が集中して破損を招いてしまうことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、異常が生じた状況に応じた推進ユニットの適切な旋回動作を迅速に行うことができ、推進ユニット用旋回装置の破損を招いてしまうことを抑制することができる、推進ユニット用旋回装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】船舶とその船舶に設けられる推進ユニット及び推進ユニット用旋回装置とについて示す模式図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る推進ユニット用旋回装置の一部と推進ユニットとを模式的に示す斜視図である。
【図3】図2に示す推進ユニット用旋回装置の制御構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。本発明の実施形態は、プロペラの回転により船舶を推進させるとともにプロペラ軸と垂直な旋回軸線を中心として船舶において回転自在に支持された推進ユニットを、旋回軸線を中心に旋回させる推進ユニット用旋回装置として、広く適用することができるものである。
【0024】
図1は、本発明の一実施の形態に係る推進ユニット用旋回装置1(以下、単に「旋回装置1」ともいう)が設けられる船舶100について外形線のみで模式的に示す模式図である。図1に示す船舶100には、アジマススラスターやポッド等と称され、この船舶10
0を推進させるための推進ユニット101が設けられている。また、図2は、旋回装置1の一部と推進ユニット101とを模式的に示す斜視図である。
【0025】
図1及び図2に示す推進ユニット101は、船舶100の後方の下部に配置されており、略水平に配置されるポッド本体101aとこのポッド本体101aに対して回転自在に支持されるプロペラ101bとを備えて構成されている。ポッド本体101aは、船舶100の後方下部において旋回筒103及びストラット102を介して下方に吊り下げられた状態で支持されている。尚、旋回筒103は、円形断面を有する筒状に形成されて船舶100に対して回転自在に取り付けられている。この旋回筒103の上端側には、外周に歯104aが形成された外歯歯車要素として構成された旋回ギア104が設けられている。旋回ギア104は、リング状に形成されており、旋回筒103と一体に回転するように構成されている。また、ストラット102は、翼状断面を有する筒状に形成され、上端側で旋回筒103に対して固定されるとともに下端側にポッド本体101aが固定されている。これにより、推進ユニット101は、プロペラ101bのプロペラ軸101cと垂直な旋回軸線P(図1において一転鎖線で示す)を中心として船舶100において旋回筒103及びストラット102を介して回転自在に支持されている。そして、後述する旋回装置1の作動によって、旋回軸線Pを中心とした推進ユニット101の旋回動作が行われる。
【0026】
また、推進ユニット101は、プロペラ101aが回転することにより船舶100を前方に向かって推進させるように構成されている。プロペラ101aのプロペラ軸101cは、インバータ107によって回転が制御される推進用の電動モータ108に対して複数組(例えば2組)のかさ歯車機構を介して連結されている。これにより、電動モータ108の回転軸方向が変換されてプロペラ軸101cに伝達され、プロペラ101bが回転駆動されて船舶100の推進力が得られることになる。
【0027】
尚、船舶100には、操縦者の操作に基づいて船舶100の航行状態の集中制御を行うメインコントローラ105が備えられている。このメインコントローラ105には、下位のコントローラとして推進コントローラ106が接続されており、更に推進コントローラ106に上記のインバータ107が接続されている。そして、メインコントローラ105から推進コントローラ106に対して船舶100の推進速度指令が出力される。推進コントローラ106はこの推進速度指令に基づいて電動モータ108の回転指令信号をインバータ107に出力し、推進ユニット101におけるプロペラ101bの回転速度が制御される。尚、本実施形態では、ポッド本体101aの外部に電動モータ108が配置されて、かさ歯車機構を介して回転がプロペラ軸101cに伝達されるものを例にとって説明したが、この通りでなくもよい。即ち、電動モータ108が、ポッド本体101a内に配置されて、プロペラ軸101aと連結されていてもよい。
【0028】
次に、本発明の一実施の形態に係る旋回装置1について説明する。図3は、旋回装置1の制御構成を示すブロック図である。図1乃至図3に示すように、旋回装置1は、複数の旋回アクチュエータ11(11a、11b、11c、11d)、複数のインバータ12(12a、12b)、旋回コントローラ13、潮流センサ14、回転センサ15、等を備えて構成されている。尚、図1の模式図では、便宜上、複数の旋回アクチュエータ11と複数のインバータ12とについて、それぞれ1つの要素で模式的に示している。
【0029】
図1乃至図3に示す旋回アクチュエータ11は、本実施形態の旋回装置1においては、4つ備えられている。そして、各旋回アクチュエータ11(11a、11b、11c、11d)は、船舶100に固定され、それぞれ減速機21と電動モータ22とを備えて構成されている。
【0030】
減速機21は、入力側が電動モータ22の出力軸(図示せず)と連結され、出力側にピニオン21aが設けられている。そして、減速機21のケーシング内には、図示しない複数の歯車要素が設けられており、電動モータ22の回転を減速して伝達してピニオン21aから出力するように構成されている。また、各減速機21のピニオン21aは、旋回軸線Pを中心位置として配置されて船舶100に対して回転自在に支持された旋回ギア104の外周に形成された歯104aとそれぞれ噛み合うように配置されている。また、各ピニオン21aは、旋回ギア104の外周に沿ってその周方向における均等角度位置に(本実施形態では90°毎に)配置されている。
【0031】
電動モータ22は、誘導電動機として設けられており、上記のように、減速機21に連結されて減速機22を回転駆動するように構成されている。各電動モータ22が回転することで各ピニオン21aが回転し、船舶100に回転自在に支持されるとともにピニオン21aに噛み合う旋回ギア104が旋回軸線Pを中心として回転する。そして、旋回ギア104が設けられた旋回筒103及びストラット102とともに推進ユニット101が旋回軸線Pを中心に回転する。このように、旋回アクチュエータ11は、電動モータ22が回転することで推進ユニット101を旋回軸線Pを中心に旋回させるように構成されている。
【0032】
図1及び図3に示すインバータ12は、電動モータ22の回転を制御する本実施形態の制御部を構成しており、本実施形態では2つ備えられている。各インバータ12(12a、12b)は、旋回コントローラ13に対して通信可能にそれぞれ接続されるとともに、全ての電動モータ22に対して供給電力を制御可能にそれぞれ接続されている。そして、各インバータ12(12a、12b)は、交流周波数等を変化させることで、旋回コントローラ13からの指令信号に基づいて、所定の電動モータ22の回転速度や回転位置を制御する。
【0033】
図3に示す潮流センサ14は、潮流の速度及び方向を検出するセンサ機構として設けられている。この潮流センサ14は、例えば、海水速度ベクトル検出部と海底速度ベクトル検出部と潮流演算部とを備えて構成されている。海水速度ベクトル検出部は、船舶100に対する海水の相対的な流れの速度ベクトルを検出する。海底速度ベクトル検出部は、例えば、船舶100の船底から海底に向けて発射した音波が海底に反射して戻ってくるときに生じるドップラ周波数を計測することで、海底に対する船舶100の速度ベクトルを検出する。潮流演算部は、これらの海水速度ベクトル検出部及び海底速度ベクトル検出部での検出結果に基づいて潮流の速度及び方向を演算して検出する。尚、潮流センサ14としては、海底に対する船舶100の速度ベクトルを検出する海底速度ベクトル検出部が用いられるものに限らず、GPS(Global Positioning System)によって船舶100の対地速度ベクトルを検出する対地速度ベクトル検出部が用いられるものであってもよい。
【0034】
回転センサ15は、推進ユニット101の旋回方向(旋回軸線Pを中心とした回転方向)の回転位置及び回転速度を検出するセンサ機構として設けられている。この回転センサ15は、例えば、電動モータ22に設けられたエンコーダと、旋回速度位置演算部と、を備えて構成されている。旋回速度位置演算部は、上記エンコーダで検出された電動モータ22の回転角度、減速機21における減速比、ピニオン21aと旋回ギア104との歯数比等に基づいて、推進ユニット101の旋回方向の回転位置及び回転速度を演算する。尚、回転センサ15の旋回速度位置演算部や前述の潮流センサ14の潮流演算部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やメモリ等によって構成されている。
【0035】
また、潮流センサ14及び回転センサ15は、操縦者が船舶100の航行状態を監視するためのディスプレイである監視モニタ109に接続されている。そして、潮流センサ14にて検出された潮流の速度及び方向と、回転センサ15にて検出された推進ユニット1
01の旋回方向の回転位置及び回転速度とについては、航行状態を示す他のデータとともに、監視モニタ109においてリアルタイムにて常時表示されている。
【0036】
図1及び図3に示す旋回コントローラ13は、図示しないCPU(Central Processing
Unit)やメモリ等を備えて構成されており、上位のコントローラであるメインコントローラ105及び各インバータ12(12a、12b)と通信可能に接続されている。また、旋回コントローラ13は、監視モニタ109、潮流センサ14及び回転センサ15とも接続されており、監視モニタ109に表示するデータを出力するとともに、潮流センサ14及び回転センサ15で検出された検出信号を受信可能に構成されている。尚、旋回コントローラ13におけるメモリには、推進ユニット101の旋回動作の制御や旋回アクチュエータ11の運転負荷制限の制御を行う旋回コントローラ13としての処理を行うためのプログラムが記憶されており、CPUにより読み出されて実行される。
【0037】
メインコントローラ105から旋回コントローラ13に対しては、操縦者の操作に基づいてメインコントローラ105にて決定される船舶100の旋回方向や旋回速度を規定する旋回指令信号が発信される。そして、旋回コントローラ13は、メインコントローラ105からのこの旋回指令信号に基づいて、各電動モータ22における回転速度と回転を停止する回転角度位置とについての回転指令信号を各インバータ12(12a、12b)に出力する。これにより、旋回コントローラ13は、インバータ12(12a、12b)、旋回アクチュエータ11(11a〜11d)、旋回ギア104を介して、推進ユニット101の旋回方向における回転位置及び回転速度を制御するように構成されている。
【0038】
また、旋回コントローラ13には、メモリに記憶されたプログラムがCPUによって読み出されて実行されることにより構築される第1異常検知部23、第2異常検知部24、第3異常検知部25、圧力検出部26が備えられている。第1異常検知部23及び第2異常検知部24は、旋回アクチュエータ11の異常を検知する異常検知部として設けられており、第3異常検知部25は、インバータ12の異常を検知する異常検知部として設けられている。そして、旋回コントローラ13は、各異常検知部(23〜25)の少なくともいずれかが異常を検知したときは、旋回アクチュエータ11の運転負荷を制限するように、旋回アクチュエータ11及びインバータ12を制御するよう構成されている。
【0039】
第1異常検知部23は、潮流センサ14及び回転センサ15での検出結果に基づいて、旋回アクチュエータ11の減速機21の出力側のピニオン21aの回転速度が、所定の回転速度閾値を超えたときに、旋回アクチュエータ11の運転状態の異常を検知する。この回転速度閾値は、潮流の速度及び方向と推進ユニット101の旋回方向の回転位置及び回転速度との関係で予め定められる旋回アクチュエータ11のピニオン21aの回転速度についての所定の回転速度値として設定されている。例えば、この回転速度閾値は、潮流の速度及び方向と推進ユニット101の旋回方向の回転位置及び回転速度との関係でパラメータが規定されるテーブルや式に基づいて設定され、旋回コントローラ13のメモリに記憶されている。尚、ピニオン21aの回転速度の実績値については、旋回コントローラ13において常時検出されて監視されている。例えば、旋回コントローラ13においては、インバータ12を介して旋回コントローラ13に送信される電動モータ22のエンコーダでの検出信号に基づいて、減速機21の減速比から常時ピニオン21aの回転速度を演算して検出し、監視している。
【0040】
そして、旋回コントローラ13は、第1異常検知部23が旋回アクチュエータ11の運転状態の異常を検知したときは、電動モータ22の回転速度を制限することで旋回アクチュエータ11の運転負荷を制限するように、旋回アクチュエータ11及びインバータ12を制御する。尚、電動モータ22の回転速度を制限する方法としては、回転中の電動モータ22の回転速度を減少させる方法や、電動モータ22に設けられた非常ブレーキ手段を
作動させて電動モータ22の回転を停止させる方法を選択することができる。
【0041】
圧力検出部26は、旋回ギア104の歯104aと旋回アクチュエータ11のピニオン21aとの間で作用する荷重の圧力に比例して増減する物理量を検出する。本実施形態では、この物理量として、電動モータ22にインバータ12を介して印加される電圧が検出される。旋回ギア104とピニオン21aとの間での回転力の伝達状態に支障が生じて過負荷となり、旋回ギア104とピニオン21aとの間で作用する荷重の圧力が上昇すると、電動モータ22に印加される電圧も上昇した負荷に応じて上昇することになる。
【0042】
そして、第2異常検知部24は、圧力検出部26で検出された電圧の検出結果に基づいて、その電圧が所定の圧力閾値を超えたときに、旋回アクチュエータ11の異常を検知する。この圧力閾値は、旋回ギア104とピニオン21aとの間で作用する圧力に比例する物理量であって電動モータ22に印加される電圧についての所定の電圧値として設定されている。そして、旋回コントローラ13は、第2異常検知部24が旋回アクチュエータ11の異常を検知したときは、電動モータ22の回転速度を減少又は停止させて制限することで旋回アクチュエータ11の運転負荷を制限するように、旋回アクチュエータ11及びインバータ12を制御する。
【0043】
尚、本実施形態では、圧力検出部26が旋回ギア104とピニオン21aとの間で作用する圧力に比例する物理量としての電動モータ22の電圧を検出する場合を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、旋回ギア104とピニオン21aとの間で作用する圧力を直接に検出する圧力検出部が設けられるものであってもよい。また、旋回ギア104とピニオン21aとの間で作用する圧力に比例する物理量として、電動モータ22の電圧以外の物理量を検出する圧力検出部が設けられるものであってもよい。
【0044】
第3異常検知部25は、前述のように、インバータ12(12a、12b)の異常を検知する。即ち、インバータ12a及びインバータ12bのいずれかに故障や作動不良等の異常が発生した場合に、異常が発生したインバータ(12a又は12b)を特定して検知する。
【0045】
旋回装置1においては、インバータ12のいずれにも異常が発生しておらず、第3異常検知部25が異常を検知していないときは、旋回アクチュエータ11は、インバータ12のそれぞれに対して2つずつが対応して作動する状態で電動モータ22の回転が制御される。即ち、第3異常検知部25が異常を検知していないときは、旋回コントローラ13からの回転指令信号に基づいて、インバータ12aが、旋回アクチュエータ11aの電動モータ22及び旋回アクチュエータ11bの電動モータ22の回転を制御する。同様に、インバータ12bが、旋回アクチュエータ11cの電動モータ22及び旋回アクチュエータ11dの電動モータ22の回転を制御する。
【0046】
一方、第3異常検知部25がいずれかのインバータ12(12a、12b)の異常を検知したときは、旋回コントローラ13は、異常が検知されたインバータ12(12a及び12bの一方)の作動を停止させる。そして、旋回コントローラ13は、異常が検知されていないインバータ12(12a及び12bの他方)によって、旋回アクチュエータ11(11a〜11d)における4つの全ての電動モータ22の回転を制御させる。これにより、旋回コントローラ13は、異常が検知されていないインバータ12(12a及び12bの他方)の仕様の範囲で旋回アクチュエータ11の運転負荷を制限するように、旋回アクチュエータ11及びインバータ12を制御する。
【0047】
次に、上述した旋回装置1の作動について説明する。旋回装置1においては、旋回コントローラ13からの指令信号に基づいて作動するインバータ12により旋回アクチュエー
タ11における電動モータ22の回転が制御され、電動モータ22の回転が減速機21を介してピニオン21aから出力される。そして、ピニオン21aと旋回ギア104との噛み合いを介して旋回コントローラ13の指令に基づく目標の回転速度で目標の回転位置まで推進ユニット101が回転する。このように推進ユニット101の旋回方向における回転位置及び回転速度が制御され、推進ユニット101の所望の旋回動作が行われる。
【0048】
一方、旋回コントローラ13には異常検知部(23〜25)が設けられており、旋回アクチュエータ11及びインバータ12の異常が常時監視されており、異常が発生すると直ちに検知される。そして、異常検知部(23〜25)にて異常が検知されると、この検知結果に基づいて、旋回コントローラ13が、旋回アクチュエータ11の運転負荷を制限するように、旋回アクチュエータ11及びインバータ12を制御する。このため、異常が発生すると迅速に検知されるとともに、この検知結果に基づく旋回コントローラ13からの指令によって、異常が生じた状況に対応して旋回アクチュエータ11の運転負荷が制限されることになる。また、異常発生状況に迅速に対応して運転負荷が制限されるため、旋回装置1の破損を招いてしまうことも抑制されることになる。
【0049】
以上説明したように、推進ユニット用旋回装置1によると、異常が生じた状況に応じた推進ユニット101の適切な旋回動作を迅速に行うことができ、推進ユニット用旋回装置1の破損を招いてしまうことを抑制することができる。
【0050】
また、推進ユニット用旋回装置1によると、潮流センサ14及び回転センサ15での検出結果に基づいて、旋回アクチュエータ11の減速機21の出力側のピニオン21aの回転速度が所定の回転速度閾値を超えたときに、旋回アクチュエータ11の運転状態に異常が発生したことが第1異常検知部23によって検知される。そして、電動モータ22の回転速度が制限されて旋回アクチュエータ11の運転負荷が制限される。このため、潮流の速度及び方向と推進ユニット101の旋回方向の回転位置及び回転速度とに応じて、旋回アクチュエータ11のピニオン21aの回転速度が閾値を越えない適正な範囲に収まるように、旋回アクチュエータ11の運転負荷が制限されることになる。即ち、潮流の影響によって推進ユニット101の回転位置や回転速度との関係で急激な旋回力が外力として推進ユニット101に作用してしまい、旋回アクチュエータ11において過負荷状態での異常な運転状態が継続されてしまうことが、抑制されることになる。これにより、旋回アクチュエータ11の破損を招いてしまうことを抑制することができる。とくに、潮流が早まるように変化するときにその早まる方向と逆行する方向に推進ユニット101の旋回動作を高速で行ってしまって旋回アクチュエータ11の破損を招いてしまうような事態を抑制するために有効となる。
【0051】
また、推進ユニット用旋回装置1によると、第1異常検知部23は、潮流の速度及び方向と推進ユニット101の旋回方向の回転位置及び回転速度との関係で予め定められる旋回アクチュエータ11のピニオン21aの回転速度についての所定の回転速度閾値に基づいて、異常を検知する。このため、潮流の影響によって推進ユニット101の回転位置や回転速度との関係で急激な旋回力が外力として推進ユニット101に作用して旋回アクチュエータ11の運転状態に異常が発生する場合をより正確に判断して抑制することができる。これにより、旋回アクチュエータ11の破損を招いてしまうことをより効率よく抑制することができる。
【0052】
また、推進ユニット用旋回装置1によると、旋回ギア104とピニオン21aとの間の圧力に比例した物理量が検出され、その検出結果に基づいて圧力閾値を超えたときに旋回アクチュエータ11の異常が第2異常検知部24により検知される。このため、旋回ギア104とピニオン21aとの間で過大な負荷が生じてしまった場合に、その異常の発生状況を迅速且つ適切に検知して旋回アクチュエータ11の運転負荷を制限することができる
。これにより、旋回アクチュエータ11の破損を効率よく抑制することができる。また、推進ユニット用旋回装置1によると、圧力に比例して増減する物理量が、電動モータ22に印加される電圧として容易に検出される。そして、その検出された電圧が圧力閾値である所定の電圧値と比較されることで、旋回ギア104とピニオン21aとの間で生じた過大な負荷を迅速且つ適切に検知することができる。
【0053】
また、推進ユニット用旋回装置1によると、インバータ12に異常が発生していない通常運転時においては、各インバータ12(12a、12b)に対応する複数の電動モータ22が各インバータ12によって制御されて、推進ユニット101の旋回動作が行われる。一方、いずれかのインバータ12に異常が発生すると、その異常が第3異常検知部25で速やかに検知され、異常が発生していないインバータ12によって全ての電動モータ22の回転が制御される。このため、異常が発生していないインバータ12の仕様の範囲で、全ての電動モータ22が負荷が制限された状態で駆動され、推進ユニット101の旋回動作が行われることになる。これにより、異常が発生したインバータ12のみを切り離して、異常が発生していない電動モータ22を有効に活用でき、異常が生じた状況に応じた推進ユニット101のより適切な旋回動作を行うことができる。また、全ての電動モータ22が負荷が制限された状態で運転が行われることになるため、各旋回アクチュエータ11における均等な負荷バランスを異常が発生していない状態のときと同様に維持することができる。このため、旋回アクチュエータ11間で負荷バランスが崩れて特定の旋回アクチュエータ11に負荷が集中して破損を招いてしまうことを抑制することができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができる。例えば、次のように変更して実施することができる。
【0055】
(1)本実施形態では、インバータが2つで旋回アクチュエータが4つ備えられているものを例にとって説明したが、この通りでなくてもよく、インバータ及び旋回アクチュエータの数については、種々変更して実施してもよい。また、本実施形態では、制御部がインバータであって電動モータが誘導電動機である場合を例にとって説明したが、この組み合わせに限らず、制御部及び電動モータの種類を種々変更して実施してもよい。
【0056】
(2)本実施形態では、旋回ギアの外周に形成された歯に対して旋回アクチュエータのピニオンが噛み合う場合を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。即ち、旋回ギアの内周に形成された歯に対して旋回アクチュエータのピニオンが噛み合うように構成されるものであってもよい。
【0057】
(3)本実施形態では、旋回ギアが設けられた旋回筒が船舶に対して回転自在に支持されて、旋回アクチュエータが船舶に対して固定された場合を例にとって説明したがこの通りでなくてもよい。即ち、旋回ギアが設けられた旋回筒が船舶に対して固定され、旋回軸線を中心として旋回ギアの周方向に沿って配置された旋回アクチュエータが船舶に対して旋回軸線を中心に周方向に移動可能なようにストラット側に固定されているものであってもよい。
【0058】
(4)本実施形態では、第1乃至第3異常検知部を全て備えているものを例にとって説明したが、この通りでなくてもよく、少なくともいずれか1つの異常検知部を備えているものであればよい。また、潮流センサ及び回転センサの両方の検出結果に基づいて旋回アクチュエータの運転状態の異常を検知する第1異常検知部を説明したが、この通りでなくてもよく、潮流センサ及び回転センサのうちのいずれか一方の検出結果に基づいて旋回アクチュエータの運転状態の異常を検知する異常検知部を実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、プロペラの回転により船舶を推進させるとともにプロペラ軸と垂直な旋回軸線を中心として船舶において回転自在に支持された推進ユニットを、旋回軸線を中心に旋回させる推進ユニット用旋回装置として、広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0060】
1 推進ユニット用旋回装置
11、11a、11b、11c、11d 旋回アクチュエータ
12、12a、12b、12c インバータ(制御部)
13 旋回コントローラ
21 減速機
21a ピニオン
22 電動モータ
23 第1異常検知部(異常検知部)
24 第2異常検知部(異常検知部)
25 第3異常検知部(異常検知部)
100 船舶
101 推進ユニット
104 旋回ギア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロペラの回転により船舶を推進させるとともにプロペラ軸と垂直な旋回軸線を中心として船舶において回転自在に支持された推進ユニットを、前記旋回軸線を中心に旋回させる推進ユニット用旋回装置であって、
前記旋回軸線を中心位置として配置された旋回ギアの内周又は外周に形成された歯に噛み合うピニオンが設けられた減速機と当該減速機に連結されて当該減速機を回転駆動する電動モータとを有し、前記電動モータが回転することで前記推進ユニットを前記旋回軸線を中心に旋回させる旋回アクチュエータと、
前記電動モータの回転を制御する制御部と、
前記電動モータの回転指令信号を前記制御部に出力し、前記推進ユニットの旋回方向における回転位置及び回転速度を制御する旋回コントローラと、
を備え、
前記旋回コントローラは、前記旋回アクチュエータ及び前記制御部のうちの少なくともいずれかの異常を検知する異常検知部を有し、当該異常検知部が異常を検知したときは、前記旋回アクチュエータの運転負荷を制限するように、前記旋回アクチュエータ及び前記制御部を制御することを特徴とする、推進ユニット用旋回装置。
【請求項2】
請求項1に記載の推進ユニット用旋回装置であって、
潮流の速度及び方向を検出する潮流センサと、
前記推進ユニットの旋回方向の回転位置及び回転速度を検出する回転センサと、
を更に備え、
前記異常検知部は、前記潮流センサ及び前記回転センサでの検出結果に基づいて、前記ピニオンの回転速度が、所定の回転速度閾値を超えたときに、前記旋回アクチュエータの運転状態の異常を検知し、
前記旋回コントローラは、前記異常検知部が異常を検知したときは、前記電動モータの回転速度を制限することで前記旋回アクチュエータの運転負荷を制限するように、前記旋回アクチュエータ及び前記制御部を制御することを特徴とする、推進ユニット用旋回装置。
【請求項3】
請求項2に記載の推進ユニット用旋回装置であって、
前記回転速度閾値は、潮流の速度及び方向と前記推進ユニットの旋回方向の回転位置及び回転速度との関係で予め定められる前記推進ユニットの旋回方向の回転速度についての所定の回転速度値であることを特徴とする、推進ユニット用旋回装置。
【請求項4】
請求項1に記載の推進ユニット用旋回装置であって、
前記旋回ギアの歯と前記ピニオンとの間で作用する圧力又は当該圧力に比例して増減する物理量を検出する圧力検出部を更に備え、
前記異常検知部は、前記圧力検出部で検出された検出結果に基づいて、前記圧力又は前記物理量が所定の圧力閾値を超えたときに、前記旋回アクチュエータの異常を検知することを特徴とする、推進ユニット用旋回装置。
【請求項5】
請求項4に記載の推進ユニット用旋回装置であって、
前記圧力閾値は、前記物理量であって前記電動モータに印加される電圧についての所定の電圧値であることを特徴とする、推進ユニット用旋回装置。
【請求項6】
請求項1に記載の推進ユニット用旋回装置であって、
前記電動モータは誘導電動機として設けられ、
前記制御部はインバータとして設けられるとともに複数備えられ、
前記異常検知部は、前記制御部の異常を検知し、
前記旋回アクチュエータは、複数備えられ、前記異常検知部が異常を検知していないときは、前記制御部のそれぞれに対して1つ又は複数ずつが対応して作動する状態で前記電動モータの回転が制御され、
前記旋回コントローラは、前記異常検知部がいずれかの前記制御部の異常を検知したときは、異常が検知されていない前記制御部によって全ての前記電動モータの回転を制御させ、前記旋回アクチュエータの運転負荷を制限するように、前記旋回アクチュエータ及び前記制御部を制御することを特徴とする、推進ユニット用旋回装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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