説明

推進工法用エントランスの止水構造

【課題】出隅部を有する推進函体であっても、発進口周辺における止水性能を向上させることができる推進工法用エントランスの止水構造を提供する。
【解決手段】エントランスパッキン20と、反転防止用押え板30と、推進函体10の出隅部11に対応する発進口1の角部3でエントランスパッキン20の内側に設けられたコーナー部材40とを備えており、角部3は、推進函体10の出隅部11の通過位置よりも外側に膨らむように曲面状に形成され、反転防止用押え板30は、発進口1の開口縁部に沿って複数設けられており、角部3に対応する位置における複数の反転防止用押え板30は、角部3の曲面に沿って曲線状に配置され、コーナー部材40は、その内側面41が推進函体10の出隅部11に沿った形状に形成され、外側面43が角部3に沿うように曲面状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進工法用エントランスの止水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルを掘削するに際しては、まず、立坑の側壁に形成された発進口からシールド掘進機や推進函体を地盤内に挿入することとなる。このとき、地盤内の水が立坑内空に流れ込まないように、発進口と、シールド掘進機または推進函体の外周面との隙間を止水するようになっている。この止水構造としては、発進口の周縁部にエントランスパッキンを設け、シールド掘進機や推進函体の外周面にエントランスパッキンを摺接させる構造が一般的であった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
さらには、図8に示すように、エントランスパッキン101が立坑内空側に捲れるのを防止するための反転防止用押え板102を設ける止水構造もあった。反転防止用押え板102は、発進口100の周縁部に沿って所定ピッチで複数配置されており、エントランスパッキン101の立坑内空側に被されて設けられ、エントランスパッキン101を押さえるようになっている。エントランスパッキン101と反転防止用押え板102は、推進函体110の外周面111に当接して、推進方向前方に傾斜した状態で保持される。なお、エントランスパッキン101は、発進口100の開口周縁部に沿うように環状に形成されている。なお、図8および図9中、破線で示した符号105は、発進口100の内周面を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3721460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、推進函体110が断面矩形の場合、図8に示すように、角部103の反転防止用押え板102は、その舌片部102aが斜め内側(発進口100の開口部の中心側)に向かって延出するように配置されるが、推進函体110の出隅部112が反転防止用押え板102の舌片部102aを外側(発進口100の開口部の外方側)に押し出してしまう。そのため、角部103のエントランスパッキン101が外側に押し出された反転防止用押え板102によって持ち上げられて、推進函体110とエントランスパッキン101との間に隙間が発生して、止水性能が低下してしまう問題があった。このことは、特に、大深度で高水圧下の条件でトンネルの掘削を行う場合に問題になる虞がある。
【0006】
また、特許文献1の止水構造は、矩形のシールド掘進機には対応できるが、シールド掘進機が推進した後は、発進口に構築されたセグメントの外周面に閉塞部材を固定することで発進口の止水を行う構造であるので、発進口に対して相対移動する推進函体に対応することができなかった。
【0007】
このような観点から、本発明は、出隅部を有する推進函体であっても、発進口周辺における止水性能を向上させることができる推進工法用エントランスの止水構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために創案された本発明は、立坑内における断面多角形状の推進函体の発進口周辺の推進工法用エントランスの止水構造において、前記発進口の開口縁部に設けられたエントランスパッキンと、地下水圧による前記エントランスパッキンの反転を防止する反転防止用押え板と、前記推進函体の出隅部に対応する前記発進口の角部で前記エントランスパッキンの内側に設けられたコーナー部材とを備えており、前記角部は、前記推進函体の出隅部の通過位置よりも外側に膨らむように曲面状に形成され、前記反転防止用押え板は、前記発進口の開口縁部に沿って複数設けられており、前記角部に対応する位置における複数の前記反転防止用押え板は、前記角部の曲面に沿って曲線状に配置され、前記コーナー部材は、その内側面が前記推進函体の出隅部に沿った形状に形成され、外側面が前記角部に沿うように曲面状に形成されていることを特徴とする推進工法用エントランスの止水構造である。
【0009】
本発明における「内側」とは、立坑内空側から発進口を見たときの発進口の中心側を意味し、「外側」とは、発進口の外方側を意味する。前記のように発進口は、発進口の角部の内周面が外側に膨らむように曲面状に形成され、反転防止用押え板は、発進口の内周面に沿って曲線状に配置され、さらにコーナー部材の外側面が反転防止用押え板に沿うように曲面状に形成されているので、反転防止用押え板がコーナー部材の外側面に滑らかに押し上げられてエントランスパッキンを押さえることができる。したがって、エントランスパッキンとコーナー部材との間に隙間が発生し難く、エントランスパッキンが捲れるのを防止することができる。さらにコーナー部材の内側面が、発進口の角部に沿った平面形状であって、出隅部を覆っているので、内側面に従来のシール部材を設けるだけで、止水性能を向上させることができる。
【0010】
また、本発明は、前記コーナー部材が、前記発進口から推進方向に向かって延在するように配置され、その外側面の少なくとも一部が推進方向前方に向かうに連れて前記発進口の内側へ向かって傾斜して形成されており、前記外側面の傾斜部分に前記エントランスパッキンの先端部が当接するように、前記コーナー部材が前記発進口の開口縁部に固定されていることを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、地下水圧が反転防止用押え板およびエントランスパッキンを立坑内空側へ押し出そうとする圧力の一部は、コーナー部材の傾斜部分を押圧する応力となるので、エントランスパッキンとコーナー部材との密着性が高くなり、止水性能をより一層高くすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、出隅部を有する推進函体であっても、発進口周辺における止水性能を向上させることができるといった優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係る止水構造を示した正面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る止水構造の発進口を示した正面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る止水構造のエントランスパッキンの取付状態を示した正面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る止水構造のエントランスパッキンおよび反転防止用押え板の取付状態を示した正面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る止水構造のコーナー部材を示した斜視図である。
【図6】(a)は、本発明の第1実施形態に係る止水構造を示した断面図、(b)は、本発明の第2実施形態に係る止水構造を示した断面図である。
【図7】(a)および(b)は、コーナー部材の固定状態を示した正面図である。
【図8】従来の止水構造を示した正面図である。
【図9】従来の止水構造の角部を示した拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための第1実施形態を、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態では、断面矩形を呈する推進函体(以下、「矩形推進函体」と言う場合がある)を用いた推進工法における推進工法用エントランスの止水構造を例に挙げて説明する。
【0015】
ここで、推進工法とは、トンネルの覆工となる筒状の推進函体(トンネル函体)を坑口から順次地中に圧入してトンネルを構築する工法である。なお、推進函体の先端には、刃口や掘進機などが取り付けられている。推進工法の掘進機は、推進函体に反力をとって自ら掘進するもの(つまり、推進ジャッキを装備しているもの)でもよいし、推進函体を介して伝達された元押しジャッキの推力により掘進するものであってもよいが、本実施形態では、元押しジャッキの推力で掘進する推進工法が採用されている。
【0016】
図1に示すように、本実施形態に係る推進工法用エントランスの止水構造W1は、立坑内における矩形推進函体10の発進口1の止水構造である。止水構造W1は、エントランスパッキン20と反転防止用押え板30とコーナー部材40とを備えている。
【0017】
図1および図2に示すように、発進口1は、立坑の壁面に固定された枠体9の内側に設けられている。枠体9は、例えば鋼材にて形成されており、その内側の開口部が発進口1を構成している。枠体9の開口部は、立坑の壁面に形成された貫通孔と同じ断面形状(立坑内空側から見た平面形状)を呈しており、貫通孔と連通するように重なって配置されている。発進口1は、矩形推進函体10が通過できるように、矩形推進函体10の外形よりも大きく形成されている。発進口1の内周面2は、上下左右の角部3,3・・と、左右方向に隣り合う角部3,3間を直線状に結ぶ水平中間部4と、上下方向に隣り合う角部3,3間を直線状に結ぶ垂直中間部5とを備えて構成されている。水平中間部4は発進口1の上下それぞれに配置され、垂直中間部5は発進口1の左右それぞれに配置されている。角部3は、立坑内空側から見て、矩形推進函体10の出隅部11を含む外周面12の通過位置よりも外側に膨らむように形成されている。角部3は、両端に位置する平面部3a,3aと、中間部に位置する曲面部3bとを備えている。平面部3aは、各中間部4,5側から連続的に繋がり、直線状に外側に膨らんで傾斜している。曲面部3bは、矩形推進函体10の出隅部11の通過位置の近傍に曲面状に形成され、両側の平面部3a,3aから滑らかに連続して繋がっている。
【0018】
図3に示すように、エントランスパッキン20は、発進口1の開口縁部に設けられた弾性部材である。エントランスパッキン20は、例えば、プレート状の弾性ゴムにて構成されている。エントランスパッキン20は、発進口1の開口縁部の形状に沿って正面視で略矩形枠状を呈するように形成されている。エントランスパッキン20は、幅方向外周側21が発進口1の開口縁部の枠体9の立坑内空側表面6に面接触して固定されており、幅方向内周側22が発進口1の開口部の中心側に向かって延在するように構成されている。エントランスパッキン20の幅方向内周側22は、四隅においてコーナー部材40の外側面に面接触するリップ部を構成し、一方、水平中間部4と垂直中間部5の一部において矩形推進函体10の外周面12と摺接するリップ部を構成する。なお、エントランスパッキン20の幅方向内周側22は、四隅が発進口1の外側に窪んで形成されており、幅方向内周側22がコーナー部材40の外側面43に追従しやすくなっている。外側に窪んだ幅方向内周側22は、その一部が矩形推進函体10の外周面12の通過位置と接する位置にある。
【0019】
図4に示すように、反転防止用押え板30は、掘削される地山側の地下水圧によるエントランスパッキン20の反転を防止するために、エントランスパッキン20を立坑内空側から押さえる部材である。反転防止用押え板30は、発進口1の開口縁部の周方向に沿って互いに間隔をあけて複数設けられている。反転防止用押え板30は、金属製の板ばねにて構成されている。
【0020】
図4および図6に示すように、反転防止用押え板30の基端部31は、エントランスパッキン20の幅方向外周側21を覆うように配置され、固定ピン33によって枠体9の立坑内空側表面6に固定されている。反転防止用押え板30は屈曲しており、反転防止用押え板30の先端部32は、発進口1の開口部の中心側に向かって延在するとともに、推進方向前方に向かって傾斜している。この先端部32が、エントランスパッキン20の幅方向内周側22を推進方向前方に押さえることで、エントランスパッキン20が立坑内空側へ反転するのを防止している。
【0021】
図1および図4に示すように、角部3に対応する位置における複数の反転防止用押え板30は、その先端を連ねた形状が発進口1の角部3の内周面形状に沿うように配置されている。角部3の平面部3aに対応する位置の反転防止用押え板30は直線状に配置され、角部3の曲面部3bに対応する位置の反転防止用押え板30は曲線状に配置されている。曲線状に配置された反転防止用押え板30は、基端部31よりも先端部32の幅が狭くなるように形成されており、隣り合う反転防止用押え板30,30同士が干渉するのを防止している。一方、水平中間部4および垂直中間部5における複数の反転防止用押え板30は、発進口1の内周面に沿って(内周面と平行に)直線状に配置されている。
【0022】
図1および図5に示すように、コーナー部材40は、金属部材によって構成されており、その内側面41が矩形推進函体10の出隅部11に沿った形状に形成され、外側面43が発進口1の角部3に沿うように曲面状に形成されている。コーナー部材40は、発進口1の内周面と、その内部を推進する矩形推進函体10の外周面12との間に、エントランスパッキン20および反転防止用押え板30と当接した状態で挿入される部材である。なお、コーナー部材40の材質は、金属部材に限定されるものではなく、例えばゴムブロック等で形成するようにしてもよい。
【0023】
内側面41は、直角に交差する矩形推進函体10の外周形状に対応しており、2つの平面が直角に交差して入隅部を形成している。内側面41には、図示しないゴムブロック、インフレートシート、リップシール等からなる周知のシール手段が設けられている。コーナー部材40の内側面41と矩形推進函体10の出隅部11は互いに平行な平面同士が対向しているので、従来から存在する通常のシール手段で十分な止水性能を得ることができる。
【0024】
外側面43は、角部3に沿うように形成されている。具体的には、外側面43は、角部3の平面部3aに対応する位置では、平面部3aと隙間をあけて略平行になるように平面上状に形成され、角部3の曲面部3bに対応する位置では、曲面部3bと隙間をあけて略平行になるように曲面状に形成されている。
【0025】
図5に示すように、コーナー部材40は、推進方向に延在して形成されており、内側面41の各平面が推進方向に平行になるように配置されている。図6に示すように、コーナー部材40は、発進口1の開口部から地山側に挿入されている。コーナー部材40は、推進方向後方側の一端が、発進口1の開口部から立坑内空側に突出するように配置されており、その突出部分を介して発進口1の開口縁部に固定されている。つまり、コーナー部材40は、エントランスパッキン20および反転防止用押え板30に対して一定の相対位置関係を保って、エントランスパッキン20および反転防止用押え板30に接触するようになっている。
【0026】
推進方向に沿って切断したコーナー部材40の断面は、図6の(a)および(b)に示す形状のどちらであってもよい。図6の(a)に示すコーナー部材40は、断面方向において内側面41と外側面43とが互いに平行になっており、推進方向で切断した断面形状が長方形を呈している。そして、発進口1の開口部から地山側に挿入された部分の外側面43に、エントランスパッキン20の先端部(幅方向内周側22の先端部分)が当接する。一方、図6の(b)に示すコーナー部材40は、外側面43の少なくとも一部が推進方向前方に向かうに連れて発進口1の内側へ向かうように傾斜して形成されている。具体的には、外側面43のうち、発進口1の開口部よりも地山側に挿入された部分が、内側面41に向かって傾斜して形成されており、推進方向で切断した断面形状が直角三角形を呈している。この直角三角形の斜辺部分(外側面43の傾斜部分)に、エントランスパッキン20の先端部(幅方向内周側22)が当接する。
【0027】
図7の(a)に示すように、発進口1の開口縁部(枠体9)の立坑内空側には、鉄骨を井桁状に組み合わせて構成された固定用鋼材7が設けられており、この固定用鋼材7を介して各コーナー部材40が発進口1の開口縁部に固定されている。固定用鋼材7は、発進口1の開口縁部の立坑内空側表面6に立坑内空側に突出して設けられたブラケット(図示せず)を介して、発進口1の開口縁部に固定されている。固定用鋼材7は、各コーナー部材40を取り囲むように形成されている。固定用鋼材7は、枠体9に対して、その平面方向(推進方向に直交する平面方向)のみにスライド可能に固定されている。このスライド量は、コーナー部材40の外側面43と反転防止用押え板30との間に隙間が発生しない程度の若干の距離である。コーナー部材40の立坑内空へ突出した部分の外側面43を固定用鋼材7の内側面に溶接することによって、4つのコーナー部材40を固定用鋼材7に一体化して固定している。なお、コーナー部材40と固定用鋼材7の固定方法は、溶接に限定されるものではない。
【0028】
このような構成によれば、固定用鋼材7およびコーナー部材40は、矩形推進函体10の推進方向には移動しないので、矩形推進函体10の推進によってコーナー部材40を地山側に引き込もうとする応力を、固定用鋼材7およびブラケットを介して枠体9に伝達して反力を取ることができる。逆に、地山側の土水圧によってコーナー部材40が立坑内へ押し出されることを防止することもできる。また、固定用鋼材7が枠体9に対してその平面方向にスライド可能に固定されているので、矩形推進函体10の蛇行に追従することができる。さらには、コーナー部材40が固定用鋼材7の内側に固定されているので、各コーナー部材40同士間の離間距離を一定にすることができ、矩形推進函体10の外側面12とコーナー部材40の内側面41との相対位置関係を一定に保つことができる。したがって、矩形推進函体10とコーナー部材40間の止水性の低下を抑制できる。
【0029】
また、コーナー部材40の固定方法は、前記構成に限定されるものではない。例えば、図7の(b)に示すように、固定用鋼材8を4つのコーナー部材40毎にそれぞれ別個に設けて、コーナー部材40を発進口1の開口縁部の立坑内空側表面6に固定してもよい。この場合、固定用鋼材8は、上下方向に延在する鉄骨8aと、左右方向に延在する鉄骨8bとで構成されるのが好ましい。固定用鋼材8は、枠体9に対して、その平面方向(推進方向に直交する平面方向)のみにスライド可能に固定されている。このような構成によれば、コーナー部材40を地山側に引き込もうとする応力を立坑内空側表面6に伝達して反力を取ることができる。また、地山側の土水圧によってコーナー部材40が立坑内へ押し出されることを防止することもできる。さらに、固定用鋼材8がスライドすることで、矩形推進函体の蛇行に追従することができる。
【0030】
さらに、前記した一手法の固定では無く、夫々を組み合わせる方法もある。図示しないが、例えば、固定用鋼材を4つのコーナー部材毎にそれぞれ別個に設けて、コーナー部材を発進口の開口縁部の立坑内空側表面に固定し、且つコーナー部材4つをワイヤーロープや鋼材で横方向に連結してもよい。このような構成では、軸方向への出入りを鉄骨で固定し、函体全体のズレをワイヤーロープや鋼材で函体に引き寄せていることで対抗させる。
【0031】
以上のような構成の推進工法用エントランスの止水構造W1によれば、発進口1の角部3が外側に膨らむように曲面状に形成され、角部3に対応する位置の反転防止用押え板30は発進口1の内周面に沿って曲線状に配置され、さらにコーナー部材40の外側面43が角部3に沿うように曲面状に形成されているので、立坑内空側から地山側に向かって発進口1を見た際に、反転防止用押え板30の配置方向(反転防止用押え板30の先端を連ねた形状の延在方向)と、コーナー部材40の外側面43とが略平行となる。これによって、コーナー部材40の外側面43が反転防止用押え板30の表面に沿うように面接触することとなり、反転防止用押え板30が発進口1の外側(内周面2側)に向かって滑らかに押し上げられて、エントランスパッキン20を押さえることとなる。つまり、反転防止用押え板30の表面とコーナー部材40の外側面43との間には隙間が発生しないので、反転防止用押え板30に押えられたエントランスパッキン20に皺が発生することなく、コーナー部材40の外側面43との間に隙間が発生するのを抑制できる。したがって、エントランスパッキン20と外側面43との密着性を高めることができ、止水性能を向上させることができる。また、角部3におけるエントランスパッキン20の破損も発生し難くなる。
【0032】
具体的には、地山側から地下水圧がかかると、図6の(a)に示すように、エントランスパッキン20が立坑内空側へ押圧されて反転防止用押え板30が押されるが、反転防止用押え板30の先端部が地山側(推進方向前方側)へ傾いた状態で、コーナー部材40の外側面43に当接しているので、反転防止用押え板30がそれ以上立坑内空側に押し戻されることはなく、確実にエントランスパッキン20の反転(捲れ)を防止できる。また、コーナー部材40の外側面43は滑らかな曲面状に形成されていることから、反転防止用押え板30の先端が外側面43に沿って当接する。そのため、エントランスパッキン20が外側に押し上げられないので、コーナー部材40の外側面43に沿わすことができ、止水性能を低下させることはない。さらに、エントランスパッキン20の先端部(幅方向内周側22)では、地下水圧はコーナー部材40側に向かってかかるので、エントランスパッキン20が外側面43に押し付けられることとなり、止水性能を高めることができる。特に、地下水圧が高い場合には、エントランスパッキン20の先端部がコーナー部材40の外側面43に強い圧力で押し付けられるので、高い止水性能を得られる。
【0033】
また、矩形推進函体10が蛇行した場合、コーナー部材40は、偏心して僅かに動くことがあるが、コーナー部材40とエントランスパッキン20および反転防止用押え板30が一体的に接触しており、反転防止用押え板30の位置が所定の間隔で調整可能になっているので、コーナー部材40の移動を吸収することができる。したがって、コーナー部材40とエントランスパッキン20および反転防止用押え板30との位置関係を一定に保つことができ、隙間の発生を抑制できるので、止水性能を確保することができる。
【0034】
さらに、図6の(b)に示すように、コーナー部材40の外側面43の、発進口1の開口部よりも地山側に挿入された部分が、内側面41に向かって傾斜していると、エントランスパッキン20にかかる地下水圧のうち、エントランスパッキン20を立坑内空側に押し出そうとする応力の一部も外側面43の傾斜部分で受けることができる。これによって、エントランスパッキン20と外側面43との密着性がさらに高くなり、止水性能をより一層高めることができる。
【0035】
なお、コーナー部材40の内側面41と矩形推進函体10との間には、通常のシール手段が設けられているが、コーナー部材40の内側面41は、矩形推進函体10の出隅部11に沿った平面形状であって、その出隅部11を覆っているので、矩形推進函体10と、その外周面が摺動する内側面41との間であっても、必要な止水性能を確保することができる。
【0036】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施の形態に限定する趣旨ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、本実施形態では、コーナー部材が四隅にそれぞれ別個に設けられているが、各コーナー部材を連結して一体的な枠状のものとしてもよい。このようにすれば、コーナー部材の内側面の形状が一定に固定され、発進口1への固定強度を低減することができる。
【符号の説明】
【0037】
W1 止水構造
1 発進口
2 内周面
3 角部
10 矩形推進函体(推進函体)
11 出隅部
12 外周面
20 エントランスパッキン
30 反転防止用押え板
40 コーナー部材
41 内側面
43 外側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立坑内における断面多角形状の推進函体の発進口周辺の推進工法用エントランスの止水構造において、
前記発進口の開口縁部に設けられたエントランスパッキンと、地下水圧による前記エントランスパッキンの反転を防止する反転防止用押え板と、前記推進函体の出隅部に対応する前記発進口の角部で前記エントランスパッキンの内側に設けられたコーナー部材とを備えており、
前記角部は、前記推進函体の出隅部の通過位置よりも外側に膨らむように曲面状に形成され、
前記反転防止用押え板は、前記発進口の開口縁部に沿って複数設けられており、前記角部に対応する位置における複数の前記反転防止用押え板は、前記角部の曲面に沿って曲線状に配置され、
前記コーナー部材は、その内側面が前記推進函体の出隅部に沿った形状に形成され、外側面が前記角部に沿うように曲面状に形成されている
ことを特徴とする推進工法用エントランスの止水構造。
【請求項2】
前記コーナー部材は、前記発進口から推進方向に向かって延在するように配置され、その外側面の少なくとも一部が推進方向前方に向かうに連れて前記発進口の内側へ向かって傾斜して形成されており、
前記外側面の傾斜部分に前記エントランスパッキンの先端部が当接するように、前記コーナー部材が前記発進口の開口縁部に固定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の推進工法用エントランスの止水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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