説明

推進管の連結部構造

【課題】
推進工法による下水道等の管路、特に屈曲した管路の構築に際し、ヒューム管等からなる推進管の相互間で推進力を好適に分散し且つ効率よく伝達することができる推進管の連結部構造の提供。
【解決手段】
推進工法により互いに連設される前方の推進管1aの後端面5aと後方の推進管1bの前端面5bとの間に中間部材10を介材させてなる推進管の連結部構造において、中間部材10は、変形可能な袋状に形成された袋状部材11の内部に無数の球状体12,12...を充填して構成され、無数の球状体12,12...は、推進の過程で両推進管の端面間部形状に変化が生じた際に、両端面5a,5b間の距離が狭められる側から両端面5a,5b間の距離が広がる側に向けて両端面5a,5bに押圧されて袋状部材11内を移動するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進工法による下水道等の管路、特に屈曲した管路の構築に際し、ヒューム管、鋼管、陶管等からなる推進管の相互間で好適に推進力を伝達することができるようにする推進管の連結部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、推進工法による管路の構築では、掘進機の後方に工場で製造されたヒューム管等からなる複数の推進管を順次連結しつつ、後端の推進管をジャッキ等により押圧して掘進の推進力を付与し、それにより複数の推進管を連続配置に地中に圧入するようになっている。
【0003】
この推進工法には、推進管を直線配置に連設する所謂「直線推進」の他、連設する推進管の軸心方向を互いにずらし、各推進管を屈曲した配置に連設する所謂「曲線推進」が知られている。
【0004】
推進工法における各推進管の連結部では、コンクリート製推進管の端面を互いに突き合わせて直接接触させるとひび割れ(クラック)を生じるおそれがあり、特に、曲線推進の場合では、前方の推進管に対して後方の推進管の軸心方向をずらして配置するので、連設される前方の推進管の後端面と後方の推進管の前端面とが屈曲半径方向内側の一部でのみ接触し、推進力が作用した際にその接触部一点に応力が集中し、推進管にひび割れが生じ易い。
【0005】
このような問題を鑑み、従来では、連設される前方の推進管の後端面と後方の推進管の前端面との間に緩衝材等を介在させるようにしており(例えば、特許文献1)、この緩衝材には、発泡ウレタン樹脂などの弾性体を用い、推進管の先後両端面間に作用する圧縮力により変形するようにしたものがある(例えば、特許文献2)。
【0006】
また、上述の応力集中を防止する推進管の連結部構造としては、連設される前方の推進管の後端面と後方の推進管の前端面との間に水や油等の流体を封入した袋状の中間部材を管の周方向に複数並べて介在させるとともに、各中間部材を連通管により互いに連通させた構造のものが開発されている(例えば、特許文献3)。
【0007】
この連結部構造にあっては、推進の過程で前後に連なる推進管の端面間部の形状に変化が生じた際に、両端面間の距離が狭められる位置に配置された中間部材内の流体が両端面に押圧されて連通管を通じて端面間距離が広がる位置に配置された中間部材内に移動し、それにより両推進管の端面間で中間部材を介して推進力を分散して伝達できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−235785号公報
【特許文献2】特開平07−158743号公報
【特許文献3】特開2001−288984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の特許文献1に示す如き従来の技術では、各推進管間部の形状が曲線推進の過程において多様に変化するため、この様な変化に対応して推進管端面間に隙間が生じないように緩衝材を予め設置しておくことは困難であり、推進管の連結部において屈曲半径方向外側部に隙間が生じ、推進力が好適に分散されないという問題がある。
【0010】
また、特許文献2に示す従来技術では、上述の如き変化に対応すべく発砲ポリスチレン樹脂等の弾性体を用いるものであるが、その弾性体の一部が曲線推進過程の手前側部では屈曲半径方向内側部に位置し、その後移動した位置においては屈曲半径方向外側部に位置するようになる場合、手前の屈曲半径内側部において両端面より圧縮力を受けて変形した前記一部分が弾性復帰せず、その部分が屈曲周方向の厚みが薄いままの状態であるために前記屈曲半径外側部において端面間に隙間が生じ、推進力が分散されないという問題があった。
【0011】
一方、上述の特許文献3に示す従来の技術では、連設される両推進管間で水や油等の流体を媒体として推進力を伝達するものであるため伝達効率が悪いという問題があった。
【0012】
そこで、本発明は、このような従来の問題に鑑み、推進工法による下水道等の管路、特に屈曲した管路の構築に際し、ヒューム管等からなる推進管の相互間で推進力を好適に分散し且つ効率よく伝達することができる推進管の連結部構造の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための請求項1に記載の発明の特徴は、推進工法により互いに連設される前方の推進管の後端面と後方の推進管の前端面との間に中間部材を介材させてなる推進管の連結部構造において、前記中間部材は、変形可能な袋状に形成された袋状部材の内部に無数の球状体を充填して構成され、該無数の球状体は、推進の過程で前記両推進管の端面間部形状に変化が生じた際に、前記両端面に押圧されて前記袋状部材内の前記両端面間の距離が狭められる側から前記両端面間の距離が広がる側に向けて移動するようにしたことにある。
【0014】
請求項2に記載の発明の特徴は、請求項1の構成に加え、前記袋状部材内に潤滑用の流体を封入し、該流体を前記球状体間に充填させたことにある。
【0015】
請求項3に記載の発明の特徴は、請求項1又は2の構成に加え、前記袋状部材は、中空円環状に形成されたことにある。
【0016】
請求項4に記載の発明の特徴は、請求項1、2又は3の構成に加え、前記球状体は、粒径が50μm〜1000μmであることにある。
【0017】
請求項5に記載の発明の特徴は、請求項1〜3又は4の構成に加え、前記袋状部材は、炭素繊維等の高強度繊維材を袋状に形成してなることにある。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る推進管の連結部構造は、上述したように、推進工法により互いに連設される前方の推進管の後端面と後方の推進管の前端面との間に中間部材を介材させてなる推進管の連結部構造において、前記中間部材は、変形可能な袋状に形成された袋状部材の内部に無数の球状体を充填して構成され、該無数の球状体は、推進の過程で前記両推進管の端面間部形状に変化が生じた際に、前記両端面に押圧されて前記袋状部材内の前記両端面間の距離が狭められる側から前記両端面間の距離が広がる側に向けて移動するようにしたことにより、前後に連なる推進管の端面間相互で効率よく且つ均一に推進力を伝達することができる。
【0019】
また、本発明において、前記袋状部材内に潤滑用の流体を封入し、該流体を前記球状体間に充填させたことにより、球状体が袋状部材内をスムースに移動することができる。
【0020】
さらに本発明において、前記袋状部材は、中空円環状に形成されたことにより、推進力を均一に伝達することができる。
【0021】
更にまた本発明において、前記球状体は、粒径が50μm〜1000μmであることにより、球状体が袋状部材内をスムースに移動することができる。
【0022】
また、本発明において、前記袋状部材は、炭素繊維等の高強度繊維材を袋状に形成してなることにより、推進力が作用した際にも破損しないようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る推進管の連結部構造の一例であって、管路の直線状部を示す縦断面図である。
【図2】同上の管路の曲線状部を示す縦断面図である。
【図3】図1中の中間部材の内部構造を示す部分拡大断面図である。
【図4】本発明に係る推進管の連結部構造の他の一例であって、管路の曲線状部を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明に係る推進管の連結部構造の実施の態様を図1〜図3に示す実施例に基づいて説明する。尚、図中符号1はヒューム管等からなる推進管である。
【0025】
推進工法による管路の構築では、掘進機の後方に複数の推進管1,1...を順次連結させつつ、後端の推進管をジャッキ等により押圧して掘進の推進力を付与し、それにより複数の推進管1,1...を連続配置に地中に圧入するようになっている。
【0026】
この推進工法に使用される推進管1は、円筒形に成形された鉄筋コンクリート製のヒューム管をもって構成され、前方推進管1aの後端部に固定されて後向きに突出した外周カラー2の内側に後方推進管1b の前端部分を挿入することにより前後方向で連結されるようになっている。
【0027】
尚、図中符号3はゴム製のシール材であって、外周カラー2の内側面に固定されたシール材3が後方推進管1bの小径部4の外周部が密着することにより両推進管1a,1bの連結部が止水されるようになっている。
【0028】
一方、この推進管の連結部構造においては、連設される前方推進管1aの後端面5aと後方推進管1bの前端面5bとの間に中間部材10が介在され、この中間部材10を介して推進管1a,1b相互で推進力が伝達されるようになっている。
【0029】
この中間部材10は、端面5a,5bの周方向に沿った形状の中空円環状の袋状部材11の内部に無数の球状体12,12...を充填して構成され、推進の過程で生じる両推進管1a,1bの端面間部形状の変化に応じて変形し、推進管1a,1b相互間に推進力が作用した際の緩衝材として機能するとともに、その推進力を両端面5a,5b間で伝達するようになっている。
【0030】
袋状部材11は、炭素繊維等の高強度繊維材をもって内部に水や油、圧縮空気等の流体を封入可能に形成されるとともに内部に収容された多数の球状体12,12...の移動に連動して形状が変化できるようになっている。
【0031】
この袋状部材11は、各端面5a,5bと対向する部分の一定範囲がそれぞれ端面5a,5bに接着剤等により固定され、端面間5a,5b距離の変化に連動してその形状を変化させるようになっている。
【0032】
また、この袋状部材11内には、水や油等の潤滑用の流体13が封入され、各球状体12,12間の隙間が流体13により充填されている。
【0033】
球状体12は、鋼材又は硬質プラスチック材等の推進力による加圧に耐えうる強度を有する材料をもって粒径50μm〜1000μmの球状に形成されている。特には、500μm程度の粒径に形成することが好ましい。尚、各球状体12,12...には、同一の粒径のものを使用してもよく、異なる粒径のものを組み合わせて使用してもよい。
【0034】
このように構成された推進管の連結部構造では、直線推進部分においては、図1に示すように、無数の球状体12,12...が袋状部材11内で略均一に分布し、前後に連なる推進管1a,1bの両端面5a,5b間に推進力が作用した際に、中間部材10が両端面5a,5bに押圧されて、当該押圧力が一定以上になると、それにより隣接する各球状体12,12...がそれぞれ点で接触して互いに支持し合った状態で安定し、且つ球状体12,12...が推進力による押圧力に耐え得る強度を有する剛体であることから、その状態で各球状体12,12...を介して両端面5a,5b間に推進力が均一且つ効率よく伝達される。
【0035】
一方、この推進管が推進の過程で上記直線推進部より曲線推進部に移動する場合、前後に連なる推進管1a,1bは、推進方向前方よる受ける反力、ジャッキによる推進力及び掘進孔内側面より受ける地盤反力等を受けて軸心方向がずれた配置となり、その連結部は屈曲し、それに伴い端面間部形状も変化する。即ち、両端面5a,5b間距離は、屈曲半径方向内側において狭まり、屈曲半径外側において広がる。
【0036】
これにより中間部材10は、両端面5a,5b間距離が広がる側の部分、即ち屈曲半径方向外側部で袋状部材11中空部の管周方向断面積が広がる方向に引っ張られて、両端面5a,5bより受ける圧力が軽減され、一方、両端面5a,5b間距離が狭まる側の部分、即ち屈曲半径方向内側部では袋状部材11中空部の管周方向断面積が狭まる方向に押圧されて両端面5a,5bより受ける圧力が上昇し、袋状部材11内の球状体12,12...間の支持状態が不安定となる。
【0037】
これに伴い袋状部材11内の各球状体12,12...は、安定した支持状態に移行すべく、図2に示すように、両端面5a,5bより受ける力に押圧されて袋状部材11内の両端面5a,5b間距離が狭まる側より両端面5a,5b間距離が広がる側に向けて移動する。
【0038】
そして、移動後の位置において隣接する各球状体12,12...は、それぞれ点で接触して互いに支持し合った状態で安定し、連結部が屈曲した状態にあっても、各球状体12,12...を介して両端面5a,5b間に推進力が均一且つ効率よく伝達される。
【0039】
一方、推進の過程で曲線推進部から直線推進部又は他方向に屈曲する場合においても、袋状部材11内の各球状体12,12...は、両端面5a,5bより受ける力に押圧されて袋状部材11内の両端面5a,5b間距離が狭まる側より両端面5a,5b間距離が広がる側に移動し、それによって、隣接する各球状体12,12...がそれぞれ点で接触して互いに支持し合った状態で安定し、各球状体12,12...を介して両端面5a,5b間に推進力が均一且つ効率よく伝達される。
【0040】
尚、上述の実施例では、推進管をヒューム管により構成した例について説明したが、推進管は、鋼管、陶管等をもって構成してもよい。
【0041】
また、上述の実施例では、推進管の連結部構造に外周カラー2のみを有するものについて説明したが、連結部構造は、図4に示すように、内周カラー20を有する構造であってもよい。尚、図中符号21は後方推進管1bの前端内周面部に前端面側に拡開したテーパー状に成形された屈曲用拡幅部、符号22はゴム材等をもって筒状に形成された接続スリーブである。
【符号の説明】
【0042】
1a 前方推進管
1b 後方推進管
2 外周カラー
3 シール材
4 小径部
5 端面
10 中間部材
11 袋状部材
12 球状体
13 流体
20 内周カラー
21 屈曲用拡幅部
22 接続スリーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進工法により互いに連設される前方の推進管の後端面と後方の推進管の前端面との間に中間部材を介材させてなる推進管の連結部構造において、
前記中間部材は、変形可能な袋状に形成された袋状部材の内部に無数の球状体を充填して構成され、該無数の球状体は、推進の過程で前記両推進管の端面間部形状に変化が生じた際に、前記両端面に押圧されて前記袋状部材内の前記両端面間の距離が狭められる側から前記両端面間の距離が広がる側に向けて移動するようにしてなる推進管の連結部構造。
【請求項2】
前記袋状部材内に潤滑用の流体を封入し、該流体を前記球状体間に充填させた請求項1に記載の推進管の連結部構造。
【請求項3】
前記袋状部材は、中空円環状に形成された請求項1又は2に記載の推進管の連結部構造。
【請求項4】
前記球状体は、粒径が50μm〜1000μmである請求項1、2又は3に記載の推進管の連結部構造。
【請求項5】
前記袋状部材は、炭素繊維材等の高強度繊維材を袋状に形成してなる請求項1〜3又は4に記載の推進管の連結部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−219590(P2012−219590A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89761(P2011−89761)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000229667)日本ヒューム株式会社 (70)
【Fターム(参考)】