説明

掻痒の予防及び/又は治療用組成物

【課題】 掻痒の予防及び/又は治療用の組成物を提供する。
【解決手段】 ケフィアを含む掻痒の予防及び/又は治療用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掻痒の予防及び/又は治療用の組成物、並びにこの組成物の食品及び医薬品としての用途に関する。
【背景技術】
【0002】
掻痒、すなわち痒みは、非常に不快なものであり、日常生活に支障を来たすこともある。掻痒は、アトピー性皮膚炎、老人性皮膚掻痒症、蕁麻疹、湿疹、虫刺され、乾燥肌、及びかぶれなどの皮膚疾患、腎臓病、糖尿病、膠原病、老齢、並びに温熱寒冷刺激などの様々な原因で生じる。掻痒部位を掻破するなどして症状をさらに悪化させたり、より強い痒みを生じさせたりするという悪循環を招く場合もある。
例えば、アトピー性皮膚炎は、発汗、掻破、摩擦などの外的刺激によって容易に増悪することが知られ、かゆみが最も重要な治療目標となっている。
したがって、上記のような皮膚疾患を治療していく上でも、まずは痒みを抑える処置を施すことが重要である。
【0003】
掻痒に対する処置法としては、種々の内服療法や外用療法が知られている。例えば、内服療法では、ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、メキタジン、ケトチフェン、アゼラスチン、オキサトミド、テルフェナジン、エピナスチンなどの抗ヒスタミン剤、トラニラスト、スプラタストなどの抗アレルギー剤などが利用される。外用療法では、ワセリン、尿素、ヘパリンなどの保湿剤、ジフェンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミンなどの抗ヒスタミン剤、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾンなどのステロイド剤、クロタミトンなどの鎮痒剤、ジブカイン、リドカインなどの局所麻酔剤などが利用される。
【0004】
また、近年では天然由来のものが掻痒の予防又は治療に用いられるようになってきた。例えば、特許文献1には、カプシノイドを植物体又は果実の形で配合する抗掻痒組成物が記載されている。また、特許文献2には、シラン、シランより得られる抽出物、及びこれらの由来成分の少なくともいずれか一種を含有することを特徴とする抗掻痒剤が記載されている。さらに、特許文献3には、マトリカリア(Matricaria)属又はアンテミス(Anthemis)属に属する植物の植物体又は該植物体の抽出物を有効成分として含有する鎮痒又は抗掻痒活性を有する経口剤が記載されている。
【特許文献1】特開2003−321361号公報
【特許文献2】特開2001−354577号公報
【特許文献3】国際公開第02/045733号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、長期に服用しても、副作用などのおそれがない、優れた掻痒の予防及び/又は治療用の組成物、並びにこの組成物の食品及び医薬としての用途を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、ケフィアが抗掻痒効果を発揮することを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、ケフィアを含む掻痒の予防及び/又は治療用組成物、並びにこの組成物の食品及び医薬品としての用途に関する。
また、本発明は、掻痒のために上記組成物を使用する方法にも関する。
さらに、本発明は、掻痒の治療及び/又は治療用組成物を製造するための、ケフィアを使用する方法にも関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の組成物は、抗掻痒効果ないし鎮痒効果を奏して、掻痒の発症を予防し、また掻痒を治癒したり減退させたりするので、掻痒の予防及び/又は治療に使用することができる。
また、本発明で使用されるケフィアは、天然由来品であり、本質的には食用であるので、安全に内服で常用することができる。また、本発明の組成物は、内服で使用できるので、全身的効果を期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明でケフィアとは、乳酸菌を少なくとも1種類含む種菌(スターター)を接種された原料を発酵させて得られた発酵乳のことをいう。
特に、特許第2676591号公報記載の方法により得られるケフィアは、良好な抗掻痒効果を発揮するので好ましい。
【0010】
本発明のケフィアは、乳酸菌を少なくとも1種類含む種菌を接種された原料を発酵させる慣用の方法で製造できるが、以下のケフィアの製造方法1及び2が、良好な抗掻痒効果を発揮するケフィアを得る上で好ましい。
【0011】
(製造方法1)
乳酸菌を含む少なくとも8種類以上の種菌を含有するスターターを接種した原料に対して、連続的に設定された培養時間の中で、以下の工程:
(工程1)培養温度25℃で約8時間の発酵;
(工程2)培養温度21℃で約16時間の発酵;
(工程3)培養温度18℃で約4.8時間の熟成;
(工程4)培養温度15℃で約4.8時間の熟成;
(工程5)培養温度14℃で約4.8時間の熟成;
(工程6)培養温度10℃で約4.8時間の熟成;
(工程7)培養温度5℃で約4.8時間の熟成;
を順に行い、段階的に低温側に移行する温度制御を実施することにより、本発明のケフィアを得ることができる。
【0012】
(製造方法2)
乳酸菌を含む少なくとも8種類以上の種菌を含有するスターターを接種した原料に対して、断続的に設定された培養時間の中で、以下の工程:
(工程1)培養温度を当初の43℃乃至45℃から目的の19℃まで無段階に降下させ、その無段階の温度降下に約8時間の培養時間を割り当てて発酵を行う;
(工程2)培養温度18℃で約2時間の熟成;
(工程3)培養温度4℃で約8時間の熟成;
を行うことで、最初は無段階に、以降は段階的に低温側に移行する温度制御を実施することにより、本発明のケフィアを得ることができる。
【0013】
上記のケフィアの製造において使用される原料として乳が挙げられる。乳は、特に制限されないが、例えば、ウシ、スイギュウ、ウマ、ヒツジ又はヤギなどから得られる獣乳、大豆などの発酵産物又は乳化物などの豆乳、あるいは白米乳又は玄米乳などの米乳が使用できる。
【0014】
上記のケフィアの製造において使用される少なくとも乳酸菌を含む種菌として、ケフィア粒(ケフィアグレーン又はケフィア種とも称される)が例示される。ケフィア粒は、ケフィアの種菌として使用されるものであれば、特に制限されない。例えば、コーカサス地方で広く飲食されているケフィア粒を使用できる。
また、ケフィアから慣用の方法で分離して得られたもの、例えば、カルチャーパウダーをケフィア粒として使用することもできる。上記ケフィア粒には乳酸菌以外に酵母などが含まれている。
【0015】
上記のケフィアの製造において使用される少なくとも乳酸菌を含む種菌として、乳酸菌と酵母とを混在させたものも例示される。この乳酸菌及び酵母は、ケフィア又はその他発酵乳などの食品分野において通常使用されているものであれば特に制限されず、例えば、ケフィア粒から単離・培養して得ることもできるし、ケフィア粒に由来していないものを使用することもできる。
【0016】
上記のケフィアの製造において使用される少なくとも乳酸菌を含む種菌として、上記のケフィア粒と、ケフィア粒に由来していない乳酸菌又は酵母とが混在したものを使用してもよい。
【0017】
本発明の種菌に含まれる乳酸菌として、例えば、Lactobacillus属に属する菌(乳酸桿菌)並びにLactococcus属、Enterococcus属、Streptococcus属、及びLeuconostoc属などに属する菌(乳酸球菌)などが挙げられる。
Lactobacillus属に属する菌としてLactobacillus kefiranofaciens、Lactobacillus casei、Lactobacillus kefiri、Lactobacillus brevis、及びLactobacillus acidophilusなどが例示される。
また、Lactococcus属に属する菌としてLactococcus lactisなどが;Enterococcus属に属する菌としてEnterococcus faecalisなどが;Streptococcus属に属する菌としてStreptococcus lactis、Streptococcus cremoris、及びStreptococcus diacetylactisなどが;Leuconostoc属に属する菌としてLeuconostoc mesenteroides、特にLeuconostoc mesenteroides subsp dextranicum、及びLeuconostoc cremorisなどが、それぞれ例示される。
【0018】
本発明の種菌に含まれる酵母として、例えば、Kluyveromyces属、Candida属、Brettanomyces属、Torulopsis属、又はSaccharomyces属に属するものが挙げられる。
Kluyveromyces属に属する酵母としてKluyveromyces marxianus、特にKluyveromyces marxianus var. marxianus、及びKluyveromyces marxianus var. lactisなどが例示される。
Candida属に属する酵母としてCandita kefyr及びCandita holmiiなどが例示される。
Brettanomyces属に属する酵母としてBrettanomyces anomalusなどが例示される。
Torulopsis属に属する酵母としてTorulopsis anatomiae、Torulopsis castellii、Torulopsis bacillaris、及びTorulopsis colliculosaなどが例示される。
Saccharomyces属に属する酵母としてSaccharomyces unisporous、Saccharomyces cerevisiae、及びSaccharomyces unisporaqsなどが例示される。
【0019】
良好な抗掻痒効果を奏する本発明の組成物を得る上で、本発明の種菌は、場合によりさらにAcetobacter属に属する菌(酢酸菌)、例えばAcetobacter aceti、Acetobacter orientalis、Acetobacter pasteurianus、Acetobacter xylinum、及びAcetobacter orleanensisなど;Bifidobacterium属に属する菌、例えばBifidobacterium bifidum、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium infantis、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium adolescentis、及びBifidobacterium animalisなどのビフィズス菌、好ましくはBifidobacterium bifidum;又はEnterococcusに属する腸内細菌、例えばEnterococcus faeciumなどを含んでもよい。
【0020】
本発明に使用されるに上記の菌は、生菌であっても死菌であってもよい。また、本発明のケフィア菌発酵乳は生菌及び死菌の両方を含んでいてもよい。本発明では生菌が好ましい。
【0021】
本発明のケフィアの製造において使用される種菌は、少なくとも乳酸菌1種を含めば上記の菌をいかなる組み合わせで含んでいてもよい。良好な抗掻痒効果を奏するケフィアを得る上で、上記に例示した、Streptococcus属、Leuconostoc属、及びLactobacillus属に属する乳酸菌;Candida属、Torulopsis属、及びSaccharomyces属に属する酵母;並びにBifidobacteruim属及びEnterococcus属に属する腸内細菌からなる群より選択される、乳酸菌を少なくとも1種類含む少なくとも8種類以上の菌を含有する種菌が好ましい。
【0022】
本発明においては、ケフィアの形態は特に制限されず、粉末などの固形及び液状のものが使用できる。
【0023】
本発明の組成物は、他の抗掻痒効果を有する物質、例えば、クロタミンなどの抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤、ウコン、又はマカを含んでもよい。特に、相乗効果による優れた抗掻痒効果が得られる点で、ウコン、又はマカを含有するのが好ましい。
【0024】
本発明の組成物は、核酸、ビタミン、及びミネラルからなる群より選ばれる1種以上の成分を含んでもよい。
【0025】
上記の核酸として、DNA及びRNAが例示され、好ましくはDNAである。本発明の組成物は、これら核酸を単独でも、2種以上含んでもよい。
【0026】
上記のビタミンとして、葉酸、ビタミンA油、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ニコチン酸アミド、パントテン酸カルシウム、ビタミンC、ビタミンD2、ビタミンE、及びビタミンKが例示される。好ましくは、葉酸、ビタミンB2、又はビタミンB12である。本発明の組成物は、これらビタミンを単独でも、又は2種以上含んでもよい。
【0027】
上記のミネラルとして、銅、亜鉛、セレン、カルシウム、マンガン、カリウム、及び鉄などが例示され、特に好適なのはカルシウムである。本発明の組成物は、これらミネラルを単独でも、2種以上含んでもよい。
【0028】
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない限り、賦形剤、甘味料、酸味料、増粘剤、香料、色素、乳化剤、及びその他に食品で一般に利用されている素材を含んでいてもよい。
【0029】
本発明の組成物は、掻痒の予防又は治療あるいは掻痒の予防及び治療に使用できる。このような掻痒として、湿疹、皮膚炎、蕁麻疹、痒疹(prurigo nodularis)、及び掻痒症などの皮膚疾患に伴う皮膚掻痒などが例示される。詳細には、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、主婦湿疹、手湿疹、おむつ皮膚炎、脂漏性皮膚炎、老人性皮膚掻痒症、痒疹、かぶれ、老人性乾皮症、皮脂欠乏性湿疹、虫さされ、股部白癬、足部白癬、及び花粉症に伴う眼瞼炎などの皮膚疾患に伴う皮膚掻痒が例示される。また、本発明の組成物は背痛感覚異常(notalgia paresthetica)、腎不全治療のための血液透析(hemodialysis)による掻痒、痒みを伴う乾癬(psoriasis)にも有用である。
特に、本発明の組成物は、アレルギーなどの免疫異常を起因とする掻痒、例えば、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、花粉症に伴う眼瞼炎、とりわけアトピー性皮膚炎及び花粉症に伴う眼瞼炎に対して有用である。
【0030】
本発明に係る組成物は、食品として、特に掻痒の予防及び/又は解消などの目的で健康食品、機能性食品、健康補助食品、特定保健用食品、美容食品、及び栄養補助食品(サプリメント)として使用することができる。これら食品は、例えば、お茶及びジュースなどの飲料水;アイスクリーム、ゼリー、あめ、チョコレート、及びチューインガムなどの形態であってもよい。また、液剤、粉剤、粒剤、カプセル剤、又は錠剤の形態であってもよい。
【0031】
また、本発明に係る組成物は、医薬として、例えば、掻痒の予防及び/又は治療用に使用することができる。これら医薬品は、例えば、錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬若しくは軟ゼラチンカプセル剤、液剤、乳濁剤、又は懸濁剤の形態で経口的に投与する。
【0032】
本発明に係る組成物の摂取量は、特に制限されないが、剤型、並びに使用者又は患者の年齢、体重、及び症状に応じて適宜選択することができる。例えば、成人1日当たり有効成分量としてケフィア2.5〜20g、好ましくは2.5〜10g、より好ましくは2.5〜7.5gの経口摂取が望ましい。また、摂取期間は、使用者又は患者の年齢、症状に応じて任意に定めることができる。
【0033】
以下に、本発明の実施例を示すが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0034】
(1)ケフィアの製造例1
前記の製造方法1に従いケフィアを製造した。連続的に設定された48時間の培養時間Aは、24時間の発酵時間Bと、24時間の熟成時間Cとに区分されている(図1)。
まず、発酵時間Bでは25℃の培養温度を約8時間維持した後、21℃に切り替えて約16時間維持した。それに続く熟成時間Cでは18℃、15℃、14℃、10℃、及び5℃の順に設定された各培養温度に対して等分の維持時間すなわち約4.8時間ずつが配分された。
【0035】
(2)ケフィアの製造例2
前記の製造方法2に従いケフィアを製造した。途中の2箇所に培養時間断続部D、Dを含むことにより断続的に設定された18時間の培養時間Aは、約8時間の発酵時間Bと、約10時間の熟成時間Cとに区分されている(図2)。
発酵時間Bにおいて当初の培養温度43℃から1時間毎に−3℃の温度降下率で目的の培養温度19℃まで無段階で温度を降下させる制御が行われた。次に、第1の培養時間断続部Dを経てから熟成時間Cに達し、その熟成時間Cでは培養温度18℃を約2時間維持した。その後、第2の培養時間断続部Dを介して、培養温度4℃を約8時間維持する段階的な温度降下の制御を行った。
なお、培養時間断続部Dでは、培養中の原料の攪拌均質化、安定剤や補完成分の添加、流通用容器への充填、別の保管施設への移送などの工程から選択される所望の工程を実施することができる。
【0036】
製造例2では、発酵時間Bの区間において培養温度を43℃から19℃まで無段階に降下させる際の温度降下率を一定にし、また培養時間断続部Dを2箇所に設定しているが、選定した菌の活動特性に培養条件をより一層適応させるために必要であれば、図3のグラフで示すように、発酵時間Bの区間における温度降下率を任意に変化させたり、培養時間断続部Dの設定数を変更したりすることも可能であった。
【0037】
殺菌、均質化などの前処理を終えた原料に対して、乳酸菌を含む少なくとも8種類以上の種菌を含有するスターターを接種し、図1〜3で示した培養条件で次第に低温側に移行する培養を行うと、まず、培養開始時の温度設定に適応する菌の培養が進行し、以降、培養温度が降下制御されるにつれて、相対的に低温域で活動する菌の培養に適切に移行する。このようにして得られる発酵済み原料に対して、例えば、攪拌均質化、ペクチンなどの安定剤や補完成分の添加、乾燥粉末化、フィルタープレスによる飲用成分の抽出、流通用容器への充填などの工程から選択される所望の工程を実施することにより、ヨーグルトやその加工食品の製品を得ることができる。
【実施例2】
【0038】
(1)試験飼料の調製
特許第2676591号に係る発明に従い製造されたケフィアを含有する市販品(商品名:健調楽、ムサシノ製薬株式会社販売)を必要量秤量して、普通飼料(商品名:ラボMRストック、粉末、日本農産工業株式会社)に混合し、該ケフィアをそれぞれ2%及び5%含有する試験飼料1及び2を調製した。試験飼料の調製は、試験期間中では週に1回以上の頻度で実施し、得られた試験飼料は冷暗所で保存した。
【0039】
(2)使用動物
ddYマウス(4−5週齢、体重約20g、雄性、日本SLC社より購入)を使用した。普通飼料(商品名:ラボMRストック、粉末、日本農産工業株式会社)を給餌して、検疫を含む7日間の予備飼育をした後、一般状態に異常がみられなかったマウスを以下の試験に使用した。
【0040】
(3)試験スケジュール
上記のマウスを、体重を指標に層別連続無作為化法により、普通飼料群、compound処理群、試験飼料1群、及び試験飼料2群の4群に6匹ずつ割り付けた。群分けの翌日より、普通飼料群及びcompound処理群には上記普通飼料を、試験飼料1群には試験飼料1を、試験飼料2群には試験飼料2を、それぞれ自由に摂取させた。また、各群とも水道水は自由に摂取させた。
上記各群のマウスは、温度22±3℃、湿度50±20%、照明時間8:00〜20:00、及び換気回数10〜17回/時間に設定した飼育環境下で、ポリカーボネート製ケージ(182W×260D×128Hmm)に個別に収容した。
飼料摂取開始後28日(4週)、35日(5週)及び42日(6週)にマウスの掻痒行動を測定した。
【0041】
(4)測定方法
Compound48/80(Sigma社製)を生理食塩水に0.125mg/mlとなるよう溶解し、これを、compound処理群、試験飼料1群、及び試験飼料2群の各マウスに0.5mg/kg(20μg/匹)ずつ、背部皮下投与した。次いで、このマウスを個別にプラスチック容器に入れて、上記Compound48/80投与後30分間のマウスの掻痒行動をビデオ撮影した。
撮影したビデオ映像からマウスの掻痒行動の回数をカウントした。すなわち、上記の掻痒行動を、左右後肢による頸背部の引っ掻き行動(以下、「スクラッチ」という)、前肢による頭部のグルーミング行動(以下、「グルーミング」という)、腹部から背部を舐める行動(以下、「舐め行動」という)の3つに分類して、それぞれの回数を5分ごとの累積回数としてカウントした。
【0042】
(5)統計処理
上記で得られたそれぞれの掻痒行動の累積回数を各群ごとにまとめ、平均値±標準誤差を算出した。
掻痒行動の累積回数について、バートレット(Bartlett)法により等分散性の検定を行い、等分散の場合(P>0.05)は、更に一元配置分散分析(ANOVA)により比較を行い、ANOVAが有意な場合(P≦0.05)のみさらにテューキー(Tukey)法により平均値の比較を行った。バートレット法で不等分散の場合(P≦0.05)は、クルスカル−ワリス(Kruskal-Wallis)のH検定で比較を行い、有意な場合(P≦0.05)のみ、さらにテューキー法により平均値の比較を行った。
なお、ANOVA乃至はクルスカル−ワリスのH検定による各群内の時系列比較は、4、5、及び6週目の各々で累積回数を総合的に比較した解析結果として表示した。
バートレット法、一元配置分散分析、クルスカル−ワリスのH検定、及びテューキー法の危険率はそれぞれ5%とした。
【0043】
(6)試験結果
各掻痒行動の累積回数のカウント結果を表1に示した。
普通飼料群とCompound処理群とを比較すると、4、5、及び6週のいずれの時点でもCompound処理群のスクラッチ回数が多かった。特に6週目でのスクラッチ回数の差は統計的に有意であった(P<0.001)。また、統計的有意ではないが、グルーミング回数においても、普通飼料群よりもCompound処理群の方が多かった。
以上から、Compound48/80の処理により痒みが増したことが認められ、本試験系の成立が確認できた。
一方、試験飼料1群及び2群では、スクラッチの回数が減少した。また、4週目と5週目のグルーミングの回数についても、試験飼料1群及び2群では減少した。さらに、舐め行動の回数については、Compound処理による増加は見られなかったが、試験飼料1群及び2群では5週目において統計的に有意に減少した。
以上の結果より、試験飼料1及び2の摂取によりマウスの掻痒行動が抑制されたことが認められ、ケフィアは皮膚掻痒に対して有効であることが示された。
【0044】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、掻痒の予防及び/又は治療用組成物を得ることができる。
詳細には、本発明の組成物は、アレルギー疾患における掻痒の予防及び/又は治療に有用である。
これら組成物は、医薬品、あるいは健康食品、健康補助食品、特定保健用食品、又は栄養補助食品などの食品に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】製造方法1に従って本発明のケフィアを製造する際の培養温度と培養時間の関係を示す図である。
【図2】製造方法2に従って本発明のケフィアを製造する際の培養温度と培養時間の関係を示す図である。
【図3】製造方法2において、培養温度を無段階に降下させる制御の設定と培養時間断続部の設定を変更した例を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
A 培養時間
B 培養時間のうち発酵に割り当てられた時間
C 培養時間のうち熟成に割り当てられた時間
D 培養時間の断続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケフィアを含有する、掻痒の予防及び/又は治療用組成物。
【請求項2】
ケフィアが乳酸菌を少なくとも1種類含む種菌を用いて得られた発酵乳である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
ケフィアが、乳酸菌を含む少なくとも8種類以上の種菌を含有するスターターを接種した原料に対して、連続的に設定した培養時間の経過に従い、以下の工程:
(工程1)培養温度25℃で約8時間の発酵;
(工程2)培養温度21℃で約16時間の発酵;
(工程3)培養温度18℃で約4.8時間の熟成;
(工程4)培養温度15℃で約4.8時間の熟成;
(工程5)培養温度14℃で約4.8時間の熟成;
(工程6)培養温度10℃で約4.8時間の熟成;
(工程7)培養温度5℃で約4.8時間の熟成;
を行うことにより得られる発酵乳である、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
ケフィアが、乳酸菌を含む少なくとも8種類以上の種菌を含有するスターターを接種した原料に対して、断続的に設定された培養時間の経過に従い、以下の工程:
(工程1)培養温度を当初の43℃乃至45℃から目的の19℃まで無段階に降下させ、その無段階の温度降下に約8時間の培養時間を割り当てて発酵を行う;
(工程2)培養温度18℃で約2時間の熟成;
(工程3)培養温度4℃で約8時間の熟成;
を行うことにより得られる発酵乳である、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項5】
種菌が、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、レウコノストク(Leuconostoc)属、及びラクトバシラス(Lactobacillus)属に属する菌からなる群より選択される乳酸菌を少なくとも1種類含む、請求項2〜4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
種菌が、カンディダ(Candida)属、トルロプシス(Torulopsis)属、及びサッカロマイセス(Saccharomyces)属に属する酵母からなる群より選択される酵母を少なくとも1種類含む、請求項2〜5のいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
種菌が、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属及びエンテロコッカス(Enterococcus)属に属する菌からなる群より選択される腸内細菌を少なくとも1種類含む、請求項2〜6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
食品としての、請求項1〜7記載の組成物。
【請求項9】
医薬としての、請求項1〜4記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−273783(P2006−273783A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−97669(P2005−97669)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(500050538)ムサシノ製薬株式会社 (1)
【Fターム(参考)】