説明

描画装置の駆動制御方法および描画装置

【課題】記録媒体の記録面とヘッドのノズル面とのギャップの変動を考慮して吐出タイミングを調整することができる描画装置の駆動制御方法および描画装置を提供する。
【解決手段】インクジェットヘッド76のノズル面91と、インクジェットヘッド76に対し相対的に印刷送りされる記録媒体Aの記録面A1と、のギャップが周期的に変化する描画装置1の駆動制御方法であって、1周期における、記録媒体Aの送り量とギャップの刻々の変化量との相関関係で規定される、ギャップの周期変化を取得する周期変化取得工程と、取得したギャップの周期変化に基づいて、記録媒体Aへの着弾位置が適正位置となるように、印刷送りにおけるインクジェットヘッド76の吐出タイミングを制御するタイミング制御工程と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドを用いて、紙やフィルム等の記録媒体に描画処理を実施する描画装置の駆動制御方法および描画装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、描画対象となる記録媒体(ワーク)に対して、インクジェット方式のヘッドからインク(液滴)を吐出することで画像を描画する描画装置(液滴吐出装置)が知られている。この描画装置は、ヘッドを第1移動軸(X軸)に沿って移動させる第1操作部と、記録媒体を保持するためのテーブルを第1移動軸とは直交する第2移動軸(Y軸)に沿って移動させる第2操作部と、テーブルに保持され、第1移動軸と第2移動軸との位置ずれを計測するための複数のマークからなるパターンを有する位置ずれ計測用部材と、第1移動軸に沿って移動しながら位置ずれ計測用部材のパターンを撮像する撮像部と、を備えている。そして、撮像部による位置ずれ計測用部材のパターンの撮像結果に基づいて、第1移動軸と第2移動軸との座標の相対的な位置精度の調整を行うことにより、ヘッドから記録媒体に対してインクを吐出する際に、当該インクを記録媒体の適切な位置に吐出することができる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−270799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、描画装置により記録媒体にインクジェットヘッドからインクを吐出して描画を行う場合、インクジェットヘッドのノズル面と記録媒体の記録面とのギャップ(間隙量)は一定であることが望ましい。
しかしながら、上記描画装置の記録媒体を設置するためのテーブル(設置部材)は、製造精度上(加工精度上)の設置面の形状の粗さ(歪みやうねり、厚みムラ等)や熱膨張による変形によって、記録媒体の設置面が微妙に変形したり、あるいは、テーブルの取付精度の影響により本来の位置から微少にずれて取り付けられることが考えられる。この場合、ヘッドのノズル面と記録媒体の記録面とのギャップが、記録媒体の送り動作により変動し、精度良く描画処理を行うことができないという問題があった。つまり、一定のギャップを想定したタイミングでインクを吐出した場合、インクの着弾位置が想定していた位置からずれてしまう。
【0005】
本発明は上記の問題に鑑み、記録媒体の記録面とヘッドのノズル面とのギャップの変動を考慮して吐出タイミングを調整することができる描画装置の駆動制御方法および描画装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の描画装置の駆動制御方法は、インクジェットヘッドのノズル面と、インクジェットヘッドに対し相対的に印刷送りされる記録媒体の記録面と、のギャップが周期的に変化する描画装置の駆動制御方法であって、1周期における、記録媒体の送り量とギャップの刻々の変化量との相関関係で規定される、ギャップの周期変化を取得する周期変化取得工程と、取得したギャップの周期変化に基づいて、記録媒体への着弾位置が適正位置となるように、印刷送りにおけるインクジェットヘッドの吐出タイミングを制御するタイミング制御工程と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の描画装置は、インクジェットヘッドのノズル面と、インクジェットヘッドに対し相対的に印刷送りされる記録媒体の記録面と、のギャップが周期的に変化する描画装置であって、記録媒体を送る記録媒体送り手段と、送られてゆく前記記録媒体に印刷を行うインクジェットヘッドと、記録媒体送り手段およびインクジェットヘッドを制御する制御手段と、を備え、制御手段は、1周期における、記録媒体の送り量とギャップの刻々の変化量との相関関係で規定されるギャップの周期変化の制御テーブルに基づいて、記録媒体への着弾位置が適正位置となるように、印刷送りにおけるインクジェットヘッドの吐出タイミングを制御することを特徴とする。
【0008】
これらの構成によれば、インクジェットヘッドのノズル面と記録媒体の記録面とのギャップの周期変化に基づいて、インクジェットヘッドの吐出タイミングを制御する。これにより、例えば、記録媒体を設置するための設置部材の設置面の製造精度上の形状の粗さ(歪みやうねり、厚みムラ等)や熱膨張による変形、あるいは、描画装置における記録媒体の設置部材の取付精度の影響により、インクジェットヘッドのノズル面と記録媒体の記録面とのギャップ(ペーパギャップ)が一定に保たれない場合であっても(記録媒体の送り動作に伴ってギャップが周期的に変化する場合であっても)、記録媒体への着弾位置が適正位置になるようにインクを吐出することができる。ゆえに、描画処理を精度良く実施することができる。
また、1周期におけるギャップの周期変化に基づいて、インクジェットヘッドの吐出タイミングを制御するため、1周期に対するギャップ測定を予め行うだけで、容易に記録媒体への着弾位置が適正位置になるようにインクを吐出することができる。
なお、ギャップの測定は、超音波式、レーザー式(光センサー式)、接触式、あるいは、磁気センサー式のものを用いることが考えられる。また、1周期に対するギャップ測定は、描画装置の出荷時や駆動開始時に1度だけ行うようにしても良いし、経時変化に対応すべく、出荷時や駆動開始時に加え、駆動中に定期的に再測定を行うようにしても良い。
【0009】
本発明の描画装置の駆動制御方法において、記録媒体は、一方向に回転する回転ドラムの外周面に密着させて印刷送りされ、1周期が回転ドラムの1回転に対応していることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、回転ドラム(回転体)の外周面に記録媒体を密着させ、当該回転ドラムを回転することで記録媒体の送り動作を行う描画装置(つまり、円弧面に沿って記録媒体の送り動作(搬送)をする描画装置)において、インクジェットヘッドのノズル面と記録媒体の記録面とのギャップが、回転ドラムの回転位相によって変動する場合であっても、記録媒体への着弾位置が適正位置になるようにインクを吐出することができる。
【0011】
本発明の描画装置の駆動制御方法において、吐出タイミングは、インクの吐出方向と鉛直方向との為す角度に基づく、重力を考慮して補正されることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、重力の影響によるインクの飛行速度や飛行曲がりを考慮して、インクの吐出タイミングを補正することで、より正確に記録媒体の適正な着弾位置にインクを吐出することができる。
【0013】
本発明の描画装置の駆動制御方法において、吐出タイミングは、インクの粘性を考慮して補正されることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、複数色のインクを用いて印刷を行う場合、各色で異なるインクの粘性の高低を考慮して(粘性の高低による飛行速度を考慮して)、吐出タイミングを補正することができる。これにより、複数色のインクを用いる場合においても、より正確に記録媒体の適正な着弾位置に、インクを吐出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態に係るインクジェット装置の正面図である。
【図2】装置本体の側方断面図である。
【図3】ヘッドユニット廻りの断面図である。
【図4】印刷ヘッドの斜視図である。
【図5】ヘッドユニットの斜視図である。
【図6】ピニングユニットの斜視図である。
【図7】インクジェットヘッドの吐出タイミングを制御するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係るインクジェット装置(描画装置)について説明する。このインクジェット装置は、周方向に複数のインクジェットヘッドを配置したセンタードラム式の記録装置であり、リールツーリールで供給した長尺の記録媒体に、UVインク(紫外線硬化型インク)を用いて印刷を実施する。記録媒体としては、例えばラベル用のフィルムや用紙等のシート状のものであって、各種幅および厚みの異なるものを印刷対象としている。なお、以降の説明では、図1において紙面を貫通する方向を前後とし、手前側を「前」、奥側を「後」とする。具体的には、後述する回転ドラム61の回転軸(ドラム軸62)の延在方向を前後とし、後述するドラムモーター64から回転ドラム61へ向かう方向を手前方向(手前側)、回転ドラム61からドラムモーター64へ向かう方向を奥方向(奥側)とする。また、記録媒体Aの媒体送り経路Lにおいて、後述する媒体供給装置6側を「上流側」、後述する媒体回収装置7側を「下流側」とする。
【0017】
図1の全体図に示すように、インクジェット装置1は、インクジェット方式で記録媒体Aに印刷を行うセンタードラム式の装置本体2と、装置本体2に記録媒体Aを供給し且つ印刷済みの記録媒体Aを回収するリールツーリール方式の媒体供給・回収装置3と、これら構成装置を統括制御する制御装置(図示省略)と、を備えている。媒体供給・回収装置3は、装置本体2に記録媒体Aを供給する媒体供給装置6と、装置本体2から記録媒体Aを回収する媒体回収装置7と、を有している。一方、装置本体2および媒体供給・回収装置3に構成した記録媒体Aの媒体送り経路Lは、媒体供給装置6から装置本体2に至る供給送り経路L1と、装置本体2に構成した円に近い円弧状の印刷送り経路L2と、装置本体2から媒体回収装置7に至る回収送り経路L3と、を有している。
【0018】
供給送り経路L1を介して、媒体供給装置6から繰り出すようにして供給された記録媒体Aは、装置本体2において印刷送り経路L2に沿って送られ、この部分で印刷に供される。また、印刷が完了した記録媒体Aは、回収送り経路L3を介して媒体回収装置7により巻き取るようにして回収される。
【0019】
さらに、装置本体2と折返しユニット25との間には、回収送り経路L3に臨むように、後述する装置本体2のUV照射ユニット44が配設されている。
【0020】
制御装置により、装置本体2に同期して巻取りモーターを駆動すると、記録媒体Aは、バックテンションユニット23により所定のテンションを付与されつつ、装置本体2から送り出され、回収送り経路L3に沿って送られてゆく。装置本体2から送り出された記録媒体Aは、先ずUV照射ユニット44を通過する。この通過過程で、UVインクは硬化する。続いて、折返しユニット25によりUターンした記録媒体Aは、バックテンションユニット23を経て、巻取りリール21に巻き取られる。なお、巻取りリール21に巻き取られた記録媒体Aは、別工程の装置に導入され、ラベルとして裁断され或いはラベル部分にハーフカットが施される。
【0021】
図1に示すように、装置本体2は、大口径の回転ドラム61を有し、印刷送り経路L2に沿って記録媒体Aを送る媒体送り機構(記録媒体送り手段)41と、それぞれが複数のインクジェットヘッド(印刷ヘッド)76を有し、印刷送り経路L2に臨むように、回転ドラム61に対し放射状に配設した複数のキャリッジユニット42と、上記の回収送り経路L3に臨み、記録媒体AのUVインクを硬化させる本硬化用のUV照射ユニット44と、インクジェットヘッド76から回転ドラム61の外周面71a(図3参照)までの距離を測定(検出)する距離測定センサー45と、を備えている。
【0022】
複数のキャリッジユニット42は、供給するUVインクの色別のユニットであり、全体として印刷手段48を構成している。
【0023】
図2に示すように、装置フレーム46は、機台となるベースフレーム51と、ベースフレーム51の後半部に立設したメインフレーム52と、メインフレーム52の前面に広く設けた板状のサブフレーム53と、サブフレーム53を介しメインフレーム52の前部に配設したチャンバーフレーム54と、を有している。
【0024】
メインフレーム52は、チャンネル材を方形に組んで構成され、サブフレーム53を介して各種の構成装置を支持すると共に、回転ドラム61を主体とする媒体送り機構41を支持している。サブフレーム53は、厚肉方形のステンレス板等で構成され、前面側において、複数のキャリッジユニット42、UV照射ユニット44および距離測定センサー45(いずれも図1参照)を片持ちの形式で支持している。
【0025】
媒体送り機構41は、横倒しの王冠状に形成された回転ドラム61と、ドラム軸62を介して回転ドラム61を片持ちで回転自在に支持する軸受け63と、回転ドラム61を一方向に低速回転させるドラムモーター64と、ドラム軸62とドラムモーター64との間に介設したベルトドライブの動力伝達機構65と、ドラム軸62の後端部に取り付けられたエンコーダー66と、を有している。ドラムモーター64は、例えばサーボモーターで構成され、回転ドラム61の外周面71aにおける周速(印刷速度)が一定になるように、回転ドラム61を回転させる。エンコーダー66は、回転ドラム61の回転量(回転角度)を計測することで、回転ドラム61の回転位置を検出する。
【0026】
回転ドラム61は、円筒状のドラム本体71と、ドラム本体71の後端を覆うディスク部72とを備え、アルミニウム等の軽金属で構成されている。記録媒体Aは、ドラム本体71の外周面71aに密着し、回転するドラム本体71により円(円弧)を描くように送られる。すなわち、媒体供給装置6から送り込まれた記録媒体Aは、回転ドラム61により外周面71aに倣う円弧状の印刷送り経路L2に沿って送られる。そして、この送りに同期して印刷手段48が適宜駆動することにより、記録媒体Aに印刷が行われる。
【0027】
上述のように、印刷手段48は、回転ドラム61に対し放射状に配設した複数のキャリッジユニット42を備えている(図1参照)。複数のキャリッジユニット42は、インク色別のユニットであり、印刷送り経路L2の始端側から終端側に向って、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)の順で、周方向にほぼ等間隔で配設されている。詳細は後述するが、各キャリッジユニット42には、複数のインクジェットヘッド76が搭載され、この複数のインクジェットヘッド76により、最大幅の記録媒体Aに対応するヘッド77(ラインヘッド,図5参照)が構成されている。このため、印刷送り経路L2に沿って印刷送りされてゆく記録媒体Aに、各色のヘッド77が順に臨むことになり、記録媒体Aに印刷データに基づく所望のカラー印刷が行われる。
【0028】
図4に示すように、各インクジェットヘッド76は、そのノズル面91に相互に並行な複数の吐出ノズル92から成る2列のノズル列93を有している。この場合、2列のノズル列93は、ノズル列方向に1/2ノズルピッチ位置ズレして配設されている。
【0029】
一方、図3および図5に示すように、ヘッドユニット83は、キャリッジ82に対し前方から着脱自在に装着されている。ヘッドユニット83は、ヘッドプレート94と、ヘッドプレート94に支持されると共に、それぞれが回転ドラム61の接線に対し並行になるように山形に連ねた一対のサブプレート95と、一対のサブプレート95に2分して搭載された複数のインクジェットヘッド76(実施形態のものは、7個+7個)と、を備えている。
【0030】
この場合、各サブプレート95に搭載された複数のインクジェットヘッド76(7個)は、いずれもノズル列93が前後方向に向く姿勢で、且つ前後方向において千鳥に配設されている。また、一方のサブプレート95に搭載された複数のインクジェットヘッド76と、他方のサブプレート95に搭載された複数のインクジェットヘッド76とは、前後方向(ノズル列方向)に1/4ノズルピッチ位置ズレして配設されている。これにより、ヘッドプレート94に搭載した全インクジェットヘッド76により、前後方向(記録媒体Aの幅方向)に延在するラインヘッドとしてのヘッド77、すなわち最大幅の記録媒体Aに対応する1/4ノズルピッチのヘッド77が構成されている。そして、上記の各インクジェットヘッド76(各吐出ノズル92)からのインクの吐出タイミングを、ヘッド制御基板モジュール(当該モジュールの中核を成すコントローラー)により制御することで、高解像度の描画(印刷)を行う。なお、詳細は後述するが、インクジェットヘッド76の吐出タイミングは、インクジェットヘッド76のノズル面91と記録媒体Aの記録面A1とのギャップ(離間距離)の変動を考慮して決定される。
【0031】
図6に示すように、ピニングユニット86は、記録媒体AのUVインクを仮硬化させる仮硬化UVランプ98と、仮硬化UVランプ98に添設したダクト接続のミスト吸引口99と、を有している。仮硬化UVランプ(ランプアレイ)98およびミスト吸引口(スリット吸引口)99は、相互に並行に且つ前後方向に延在し、上記のヘッド77に対し、ほぼ同じ長さに且つ前後方向に同位置に配設されている。また、複数のインクジェットヘッド76(ヘッド77)、ミスト吸引口99、仮硬化UVランプ98は、記録媒体Aの送り方向においてこの順で配設されており、インクジェットヘッド76から吐出されたUVインクのミストをミスト吸引口99で吸引し、記録媒体Aに着弾したUVインクを仮硬化UVランプ98で仮硬化させる。
【0032】
また、図1に示すように、距離測定センサー45は、印刷送り経路L2に臨み、当該距離測定センサー45から回転ドラム61の外周面71aまでの距離を測定する。距離測定センサー45は、いわゆる渦電流式の磁気センサーで構成されている。即ち、回転ドラム61のドラム本体71は、誘電体で構成されており、距離測定センサー45は、回転するドラム本体71の外周面71aとの間に高周波磁界を発生させ、これに伴って、外周面71aとの間に発生する渦電流を測定し、外周面71aまでの距離を検出する。これにより、当該距離測定センサー45が臨む位置の外周面71aにおける径方向の高さを検出することができる。そして、この測定結果と、記録媒体Aの厚さと、距離測定センサー45とインクジェットヘッド76のノズル面91との位置関係と、に基づいて、インクジェットヘッド76のノズル面91と記録媒体Aの記録面A1との間のギャップが測定(算出)される。
【0033】
このギャップの測定は、インクジェット装置1の出荷時、あるいはインクジェット装置1の駆動開始時に1度だけ行われるものであり、回転ドラム61(ドラム軸62)に取り付けられたエンコーダー66のZ相を基準とし、回転ドラム61の1回転分(1周期分)における所定回転量毎(所定距離間隔毎。言い換えれば、所定の記録媒体Aの送り量毎)の各位置のギャップを測定する。
【0034】
この測定結果を元に、制御装置は、前記各位置と、それぞれの位置におけるギャップ変動量(測定したギャップと、予め定められた基準となるギャップ(基準ギャップ)との差)と、を関連付けた補正テーブル(制御テーブル)を作成し、これをヘッド制御基板モジュール内に保存する(周期変化取得工程,周期変化取得手段)。つまり、インクジェットヘッド76のノズル面91と記録媒体Aの記録面A1とのギャップの周期変化を示す補正テーブルを作成する。そして、ヘッド制御基板モジュール(コントローラー)は、この補正テーブルに基づいて、インクジェットヘッド76の吐出タイミングを制御(補正)する。
【0035】
ここで、図7のフローチャートを参照し、インクジェットヘッド76の吐出タイミングを制御する手順(タイミング制御工程)について説明する。まず、ヘッド制御基板モジュール(コントローラー)は、エンコーダー66により現在の回転ドラム61の回転位置を取得する(S01)。次に、ヘッド制御基板モジュール内に予め保存された補正テーブルを読み込み(S02)、当該補正テーブルに基づいて、現在の回転ドラム61の回転位置に適した各インクジェットヘッド76の吐出タイミング信号(プリントタイミング信号)を生成する(S03)。即ち、インクジェットヘッド76のノズル面91と記録媒体Aの記録面A1との間のギャップが基準ギャップより広い場合は、そのギャップ変動量を考慮して、予め規定された吐出タイミング(基準ギャップに対応した吐出タイミング)よりも、吐出タイミングを早めるように補正した吐出タイミング信号を生成する。一方、インクジェットヘッド76のノズル面91と記録媒体Aの記録面A1との間のギャップが基準ギャップよりも狭い場合は、そのギャップ変動量を考慮して、予め規定された吐出タイミングよりも、吐出タイミングを遅延させるように補正した吐出タイミング信号を生成する。そして、ヘッド制御基板モジュールは、生成した吐出タイミング信号に基づいて各インクジェットヘッド76からインクの吐出を行い、記録媒体Aに描画を行う(S04)。
【0036】
以上のように、本実施形態によれば、インクジェットヘッド76のノズル面91と記録媒体Aの記録面A1とのギャップの周期変化に基づいて、インクジェットヘッド76の吐出タイミングを制御する。これにより、例えば、記録媒体Aを送るための回転ドラム61の外周面71aの製造精度上の形状の粗さ(歪みやうねり、厚みムラ等)や熱膨張による変形、あるいは、回転ドラム61の取付精度の影響により、インクジェットヘッド76のノズル面91と記録媒体Aの記録面A1とのギャップ(ペーパーギャップ)が一定に保たれない場合であっても(ギャップが変動する場合においても)、記録媒体Aへの着弾位置が適正位置になるようにインクを吐出することができ、描画処理を精度良く実施することができる。
【0037】
また、回転ドラム61の1回転分(1周期分)のギャップの周期変化に基づいて、インクジェットヘッド76の吐出タイミングを制御するため、回転ドラム61の1回転に対するギャップ変動量の取得を予め行うだけで、容易に記録媒体Aへの着弾位置が適正位置になるようにインクを吐出することができる。
【0038】
なお、本実施形態では、回転ドラム61の1回転分のギャップの測定をインクジェット装置1の出荷時や駆動開始時に1度だけ行い、これに基づいて補正テーブルを作成するようにしているが、例えば、経時変化に対応すべく、出荷時や駆動開始時に加え、駆動中に定期的に再測定を行い、その都度、補正テーブルを更新するようにしても良い。
【0039】
また、吐出タイミングを決定する際、ギャップ変動量に加え、インクの吐出方向と鉛直方向との為す角度に基づく、重力の影響によるインクの飛行速度や飛行曲がりを考慮して、インクの吐出タイミングを補正しても良い。あるいは、上記に加え、インク(インク色)により異なる粘性の高低を考慮して(粘性の高低による飛行速度を考慮して)、吐出タイミングを補正するようにしても良い。これにより、より正確に記録媒体Aの適正な着弾位置に、インクを吐出することができる。
【0040】
また、本実施形態においては、距離測定センサー45として、渦電流式の磁気センサーを用いたが、例えば、超音波式、レーザー式(光センサー式)または接触式のものを用いても良い。
【符号の説明】
【0041】
1…インクジェット装置 41…媒体送り機構 61…回転ドラム 71a…外周面 76…インクジェットヘッド 91…ノズル面 A…記録媒体 A1…記録面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドのノズル面と、前記インクジェットヘッドに対し相対的に印刷送りされる記録媒体の記録面と、のギャップが周期的に変化する描画装置の駆動制御方法であって、
1周期における、前記記録媒体の送り量と前記ギャップの刻々の変化量との相関関係で規定される、前記ギャップの周期変化を取得する周期変化取得工程と、
取得した前記ギャップの周期変化に基づいて、前記記録媒体への着弾位置が適正位置となるように、印刷送りにおける前記インクジェットヘッドの吐出タイミングを制御するタイミング制御工程と、を備えたことを特徴とする描画装置の駆動制御方法。
【請求項2】
前記記録媒体は、一方向に回転する回転ドラムの外周面に密着させて前記印刷送りされ、
前記1周期が前記回転ドラムの1回転に対応していることを特徴とする請求項1に記載の描画装置の駆動制御方法。
【請求項3】
前記吐出タイミングは、インクの吐出方向と鉛直方向との為す角度に基づく、重力を考慮して補正されることを特徴とする請求項1または2に記載の描画装置の駆動制御方法。
【請求項4】
前記吐出タイミングは、インクの粘性を考慮して補正されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の描画装置の駆動制御方法。
【請求項5】
インクジェットヘッドのノズル面と、前記インクジェットヘッドに対し相対的に印刷送りされる記録媒体の記録面と、のギャップが周期的に変化する描画装置であって、
前記記録媒体を送る記録媒体送り手段と、
送られてゆく前記記録媒体に印刷を行うインクジェットヘッドと、
前記記録媒体送り手段および前記インクジェットヘッドを制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、1周期における、前記記録媒体の送り量と前記ギャップの刻々の変化量との相関関係で規定される前記ギャップの周期変化の制御テーブルに基づいて、前記記録媒体への着弾位置が適正位置となるように、印刷送りにおける前記インクジェットヘッドの吐出タイミングを制御することを特徴とする描画装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−235566(P2011−235566A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109932(P2010−109932)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】