提示方法
【課題】より簡単な構成によって毛様体筋を弛緩させることを誘発することができる提示方法を提供する。
【解決手段】観察者の毛様体筋が弛緩することを誘発するために、任意画像で構成される視標を、両眼に対応させて分離して提示する提示部1を有し、提示部1によって、視標を見るための観察者の視角が2000秒から3000秒までの範囲内の何れかの視角とする視差量の両眼分離画像102,103を、視標として提示する。フィルタメガネ2を通して、観察者は、左眼で左眼用画像102のみを見て、右眼で右眼用画像103のみを見る。
【解決手段】観察者の毛様体筋が弛緩することを誘発するために、任意画像で構成される視標を、両眼に対応させて分離して提示する提示部1を有し、提示部1によって、視標を見るための観察者の視角が2000秒から3000秒までの範囲内の何れかの視角とする視差量の両眼分離画像102,103を、視標として提示する。フィルタメガネ2を通して、観察者は、左眼で左眼用画像102のみを見て、右眼で右眼用画像103のみを見る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視標を提示する提示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、観察者の右眼と左眼のそれぞれで異なる画像を視認させる両眼視画像を利用した眼科検査として、図13に示すような器具を利用したステレオテストがある。この眼科検査では、右眼用フィルタと左眼用フィルタとで異なる色のめがね1000を装着させて両眼分離画像を見させて、立体視機能の有無の判別検査、立体視機能の能力測定を行っている。
【0003】
立体視機能の判別検査では、観察者が両眼分離画像を見るための視角として3600秒の視差をつけた両眼分離画像1001を観察させ、両眼分離画像1001が立体的に見えるかを判断させる。観察者が見るための視角として3600秒の視差をつけた立体画像を用いるのは、健常者であれば確実に立体であると判別できることによる。
【0004】
また、立体視機能の能力測定では、観察者が両眼分離画像1002を見るための視角として40秒から800秒の視差をつけた立体映像を観察させ、立体を識別できる最小視差を測定する。観察者が見るための視角として40秒〜800秒の視差をつけた立体画像を用いるのは、どの位まで細やかな立体を認識できるかを測定するためである。
【0005】
更に、画像の視差を利用した技術としては、下記の特許文献1に示すような眼精疲労等回復ディスプレイ装置がある。この眼精疲労等回復ディスプレイ装置は、立体画像による視標の移動に伴う輻輳調節と画像の主観的遠近感とによって、毛様体筋の弛緩又は緊張を誘発させている。具体的には、映像として表示させている視標を移動させることによって、当該視標を見るための視差量を変化させる。これにより、観察者の毛様体筋の緊張を誘発させた後、この緊張状態から通常の状態に戻させ、ストレッチを模した動きを誘発させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−325605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したディスプレイ装置においては、上記特許文献1の図3等に開示されているように、毛様体筋を通常の状態から強制的に緊張させていたので、実際には緊張状態から通常状態に弛緩する動きを誘発しているにすぎず、単に毛様体筋を通常状態と緊張状態との間で変化させるものであった。
【0008】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、より簡単な構成によって毛様体筋を弛緩させることを誘発することができる提示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様に係る提示方法は、観察者の毛様体筋が弛緩することを誘発するために、任意画像で構成される視標を、両眼に対応させて分離して提示する提示部を用いて、前記視標を見るための前記観察者の視角が2000秒から3000秒までの範囲内の何れかの視角とする視差量の両眼分離画像を、前記視標として提示する。
【0010】
第1の態様に係る提示方法であって、第2の態様に係る提示方法は、前記提示部は、複数の両眼分離画像のうちから何れかの選択された両眼分離画像を提示するものであり、各両眼分離画像が、2000秒から3000秒までの範囲内の視角のうちそれぞれ異なる視角によって前記観察者に観察される視差量となっていてもよい。
【0011】
第1の態様に係る提示方法であって、第3の態様に係る提示方法は、2000秒から3000秒までの範囲内で連続的に当該両眼分離画像を見るための視角を変化させるように前記両眼分離画像の視差量を変化させる画像操作部を用いて、特定の視差量の両眼分離画像を設定可能としてもよい。
【0012】
第3の態様の発明に係る提示方法であって、第4の態様に係る提示方法は、前記画像操作部は、観察者の眼位ずれ量に応じて前記両眼分離画像の視差量を変化させる補正部を備え、該補正部によって、当該観察者が視標を見るための実質的な視角を2000秒から3000秒までの範囲内の何れかの視角としてもよい。
【0013】
第1乃至第4の態様の発明に係る提示方法であって、第5の態様に係る提示方法は、前記提示部に、前記両眼分離画像を投影する手段を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、2000秒〜3000秒の範囲内の何れかの視角とする視差量の両眼分離画像を視標として提示するので、より簡単な構成によって毛様体筋の弛緩を誘発させて、観察者の眼精疲労等に効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】眼の構造を示す図である。
【図2】両眼分離画像を見るときの視角について説明する図である。
【図3】立体を見る視角と右眼の毛様体筋の弛緩・緊張状態との関係を示す図である。
【図4】立体を見る視角と左眼の毛様体筋の弛緩・緊張状態との関係を示す図である。
【図5】毛様体筋弛緩器具に両眼分離画像を提示し、当該両眼分離画像を観察者が見るときの様子を説明する図である。
【図6】毛様体筋弛緩器具に両眼分離画像を提示し、当該両眼分離画像を観察者が見るときの様子を説明する他の図である。
【図7】複数の両眼分離画像を描いた提示部を冊子にして、段階的に視差量が異なる両眼分離画像を観察者に見させることについて説明する図である。
【図8】複数の両眼分離画像を描いた提示部を冊子にして、段階的に視差量が異なる両眼分離画像を観察者に見させることについて説明する他の図である。
【図9】観察者の操作によって、両眼分離画像の視差量を変化させることができる構成を示す図である。
【図10】観察者の操作によって、両眼分離画像の視差量を変化させることができる他の構成を示す図である。
【図11】観察者の眼位ずれ量に応じて両眼分離画像の視差量を変化させることができる構成を示す図である。
【図12】平面スクリーンに両眼分離画像を表示させる構成を示す図である。
【図13】従来において行われていたステレオテストを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
毛様体筋弛緩器具は、観察者に画像を視認させることによって、観察者の毛様体筋を通常の状態から弛緩させることを誘発するものである。
【0018】
眼の構造は、図1に示すように、水晶体に対して毛様体筋が圧をかけることにより、当該水晶体の厚さを調整するようになっている。水晶体は眼内における透明な凸レンズ部分に相当し、水晶体に入ってきた光のピントを調整して網膜に映し出す。この光のピント調整は、毛様体筋が水晶体の厚さを調整して行われ、観察者は、遠方と近方の視力を調節している。近視状態では、毛様体筋が緊張して水晶体が厚くなり、遠視状態では、毛様体筋は弛緩して水晶体は元の厚さに戻ることとなる。
【0019】
また、観察者は、左眼と右眼とで見ることができる画像を分離させた両眼分離画像を見る場合には、図2に示すような視角で両眼分離画像を見ることとなる。この視角は、観察者の左眼位置と右眼位置とを結んだ線分の中心点を視点位置とし、当該視点位置と左眼用映像とを結ぶ線分と当該視点位置と右眼用映像とを結ぶ線分とのなす角度である。視機能検査などでは、より細やかな視角を扱うこととなるので、この視角の1°を60分として表し、この60分を3600秒と表して、視角の調整を行う。したがって、毛様体筋弛緩器具は、後述する特定範囲での左眼用画像と右眼用画像との間隔である視差量とすることによって、当該左眼用画像と右眼用画像からなる両眼分離画像を見るための視角[秒]を特定範囲とすることができる。
【0020】
毛様体筋弛緩器具は、本願の発明者の研究によって得た、図3、図4に示す「立体映像観察時における観察者の水晶体の調節反応を測定した結果、視角が2000秒〜3000秒の範囲となる視差量の映像を見たときに、他の視角で映像を見たときよりも毛様体筋が弛緩することが確認された。」という視機能の性質を利用したものである。図3に示す視角[秒]と毛様体筋の調節度合い(D)との関係は、観察者に立体映像を注視させた時の右眼の毛様体筋、水晶体の変化を示し、図4に示す視角[秒]と毛様体筋の調節度合い(D)との関係は、観察者に立体映像を注視させた時の左眼の毛様体筋、水晶体の変化を示している。
【0021】
ここで、毛様体筋は、近方の物体を注視した時には調節緊張し、水晶体の厚さを厚くなる方向に変形させる。一方、毛様体筋は、遠方の物体を注視した時には調節弛緩し、結果として水晶体の厚さを薄くさせる。また、観察者が立体映像を注視した場合、図3及び図4に示すように、視角が2000秒〜3000秒の範囲(a−a’)で両眼視差(交叉性視差)として認識されて立体視をした時の毛様体筋の弛緩度合いが、視差が0の立体感が得られていない時の毛様体筋の弛緩度合いよりも、著しく高くなる。すなわち、2000秒〜3000秒の視角で立体感を感じさせているにも拘わらず、あたかも遠方を見ているかのように毛様体筋を弛緩する。
【0022】
このような毛様体筋の変化に基づき、毛様体筋弛緩器具は、視標を見るための観察者の視角が2000秒から3000秒までの範囲内となると、それ以外の視角で視標を見るときよりも毛様体筋の弛緩度合いが大きくなることを利用して、当該毛様体筋の弛緩を誘発することを特徴とする。
【0023】
両眼分離画像を提示して立体画像を提示する方式としては、アナグリフ方式、偏光方式、時分割方式などが存在する。このうち、図5に、毛様体筋弛緩器具として、アナグリフ方式を用いた提示部1の構成を示す。アナグリフ方式とは、観察者の左眼、右眼にそれぞれ左眼用フィルタ(赤色)2Lと右眼用フィルタ(青色)2Rとを有するフィルタメガネ2を装着させ、白い紙などの提示部1上に描いた左眼用画像(青色)102、右眼用画像(赤色)103からなる両眼分離画像を見させるものである。なお、この両眼分離画像102,103は、静止画像であり、その間隔や大きさは変化しないものとし、提示部1における表示位置の移動(並進、回転)しないものとする。
【0024】
また、左眼用フィルタ(赤色)2L及び右眼用フィルタ(青色)2Rは、提示部1上にて重複した部分の形状も観察者に知覚させるために、半透明の色で構成する必要がある。この重複部分は、例えば、セロファンを所定の視標形状に切り抜いて、白い紙の上に配置することで重なった部分の形状も知覚させることができる。なお、この色の組み合わせ例に限らず、左眼、右眼のフィルタは赤と緑、赤とシアンなどの他の組み合わせでも良い。
【0025】
このような構成により、両眼分離画像102,103を観察者に観察させることにより、両眼分離を実現し、観察者に対して立体画像101を提示することができる。すなわち、赤色の右眼用画像103は青色フィルタ2Rを介してしか見えず、青色の両眼分離画像102,103は左眼用フィルタ(赤色)2Lを介してしか見えないため、立体画像101として認識させることができる。
【0026】
したがって、この毛様体筋弛緩器具によれば、右眼用フィルタ(青色)2Rを介して右眼用画像103を見る右目視線3Rと、左眼用フィルタ(赤色)2Lを介して右眼用画像103を見る左目視線3Lとが交差する立体画像101上の点101aにて、当該左目視線3Lと右目視線3Rとのなす角度が、観察者の視角となる。したがって、この視角が、2000秒〜3000秒の何れかとなるように、提示部1上で左眼用画像102と右眼用画像103との間隔が調整されていることによって、観察者の毛様体筋の弛緩を誘発できる。
【0027】
ここで、観察者の視角とは、当該観察者の視点位置と両眼分離画像102,103とを結ぶ左眼視線3L、右眼視線3Rとのなす角度で構成される角度で表される。このため、毛様体筋弛緩器具を用いるためには、提示部1に対する視点位置を限定する必要がある。この提示部1に対する視点位置は、通常の本を読むときの観察者の視点位置と本との間の距離を想定して、提示部1から40cm離れた位置に視点位置を設定する。この場合、両眼分離画像102,103を見たときの観察者の視角が2000秒〜3000秒となる両眼分離画像102,103の視差量とは、白い紙の提示部1上に描画される両眼分離画像102,103間の距離で換算すると、約15.5mm〜23.3mmとなる。
【0028】
この提示部1と視点位置との距離Dに対する、両眼分離画像102,103間の距離Sは、下記の式1のようになる。
【0029】
S=2×D×tan(θ/2)
ここで、上記式中のθは視角(°)である。したがって、提示部1と視点位置との距離Dを変更させたい場合には、視角θを2000秒〜3000秒の何れかの角度とし、両眼分離画像102,103間の距離Sを変化させる。これにより、任意の提示部1と視点位置との距離Dから両眼分離画像102,103を見させる場合でも、両眼分離画像102,103間の距離Sを調整して、2000秒〜3000秒の何れかの視角θで両眼分離画像102,103を見させることができる。
【0030】
なお、両眼分離画像102,103で表される視標は、図5に示したようなひし形、丸や十字形状などの単純形状でもよく、観察者が知覚可能な大きさがあればよい。なお、図5に示した例では、両眼分離画像102,103として、大きさが5°の視角で視認されるひし形形状を採用している。
【0031】
また、視標は、図6に示すような顔や、クマ、車といった絵柄でもよい。ただし、両眼分離画像102,103は、左眼用画像102と右眼用画像103とは、両眼分離画像を融像できる形状が望ましいため、同一形状であることが望ましい。
【0032】
以上説明したように、毛様体筋弛緩器具は、観察者の毛様体筋が弛緩することを誘発するために、任意画像で構成される視標を、両眼に対応させて分離して提示する提示部1を有する。そして、毛様体筋弛緩器具は、提示部1によって、視標を見るための観察者の視角を2000秒から3000秒までの範囲内の何れかの視角とする視差量の両眼分離画像を、視標として提示することができる。したがって、この毛様体筋弛緩器具によれば、提示部1に描いた両眼分離画像102,103を観察させるだけで、観察者の毛様体筋の弛緩を誘発することができる。したがって、この毛様体筋弛緩器具によれば、観察者にフィルタメガネ2を装着させて通常の姿勢で提示部1上の両眼分離画像102,103を見させるだけで、眼精疲労などの回復といった効果を得ることができる。
【0033】
また、この毛様体筋弛緩器具によれば、両眼分離画像102,103を2000秒〜3000秒の何れかの視角で視認させるための構成として、提示部1とフィルタメガネ2とからなるようなアナグリフ方式のような簡素な構成とすることができる。したがって、その構成が大掛かりになることはない。
【0034】
つぎに、上述したように観察者の毛様体筋の弛緩を誘発できる他の毛様体筋弛緩器具の構成について説明する。
【0035】
図7に示す毛様体筋弛緩器具は、複数の提示部1A,1B,1C,1Dである用紙のそれぞれに、両眼分離画像102,103を描いて冊子10を構成している。提示部1A,1B,1C,1Dのそれぞれに描かれた各両眼分離画像102,103は、2000秒から3000秒までの範囲内の視角のうちそれぞれ異なる視角によって観察者に観察されるように、両眼分離画像102,103間の間隔が調整されている。
【0036】
各両眼分離画像102,103の視差量の変化量は、特に限定はしないが、視角を1秒ずつ変化させた1001パターンの両眼分離画像102,103を作成してもよく、100秒ずつ変化させた11パターンの両眼分離画像102,103を作成してもよい。
【0037】
そして、冊子10を構成する提示部1A,1B,1C,1Dのうちから、観察者によって複数の両眼分離画像102,103のうちから何れかの選択された両眼分離画像102,103を提示することができる。具体的には、異なる視差量の両眼分離画像102,103を複数のページに記載し、特定の視差量の両眼分離画像102,103を提示したい場合は、対応するページを開けばよいこととなる。
【0038】
なお、図7に示した例では、各両眼分離画像102,103が同一の形状であったが、図8に示すように、各両眼分離画像102,103の視差量ごとに異なる形状としても良く、顔やクマ、車といった絵柄でもよい。ただし、両眼分離画像102,103は、左眼用画像102と右眼用画像103とは、両眼分離画像を融像できる形状が望ましいため、同一形状であることが望ましい。
【0039】
このような毛様体筋弛緩器具によれば、観察者が見るための視角が異なる視差量となっている両眼分離画像102,103を複数用意しておき、選択させることができる。これにより、毛様体筋の弛緩効果が最大に発揮される両眼分離画像102,103の視差量には個人差があるが、予め設定された複数の異なる視差量の両眼分離画像102,103のうち、特定のものを選択できる機能を有するようにした。これにより、観察者にとって適した視差量の両眼分離画像102,103を見させることによって、2000秒〜3000秒の範囲内であっても観察者にとって最も効果が高い視角で両眼分離画像102,103を見て毛様体筋の弛緩効果を与えることができる。
【0040】
また、複数の異なる視差量の両眼分離画像102,103を順次に見させている時に、観察者の水晶体の厚みを視機能検査機器で測定して、最も毛様体筋の弛緩効果が現れた両眼分離画像102,103を求めるようにしても良い。これにより、観察者ごとに最も毛様体筋の弛緩効果が得られる両眼分離画像102,103の視差量が異なっても、各観察者に対して最も毛様体筋の弛緩効果が得られる両眼分離画像102,103を見させることができる。また、観察者の視機能の回復又は衰えにより、最も毛様体筋の弛緩効果が発揮される両眼分離画像102,103の視差量に変化がある。これに対し、観察者にとって最も毛様体筋の弛緩効果が得られる両眼分離画像102,103を測定すれば、観察者にとって最も毛様体筋の弛緩効果が得られるように両眼分離画像102,103を更新して、見させることができる。
【0041】
更に、図8に示したように、各両眼分離画像102,103で異なる絵柄とすることによって、幼児が毛様体筋弛緩器具を使用する場合に、当該幼児に適した視差量付近の両眼分離画像102,103の絵柄を日毎に変えることができ、検査などを飽きさせることなく行わせ、検査などに対する集中力を持続させることができる。
【0042】
図9には、他の毛様体筋弛緩器具として、2000秒から3000秒までの範囲内で連続的に両眼分離画像102,103を見るための視角を変化させるように当該両眼分離画像102,103を変化させる画像操作部4,5を備える構成を示す。そして、この毛様体筋弛緩器具は、当該画像操作部4,5の操作によって、特定の視差量の両眼分離画像102,103を設定可能とする。
【0043】
具体的には、画像操作部4,5は、当該画像操作部4,5を操作させることにより、図9(a)のよう左眼用画像102と右眼用画像103との位置関係から、図9(b)に示すように左眼用画像102’を移動させ、更に図9(c)に示すように左眼用画像102’’を連続的に移動させることができる。これにより、左眼用画像102と右眼用画像103との位置関係を変化させる。
【0044】
画像操作部4,5は、図9(d)に示すように、操作者(観察者)に両眼分離画像102,103を見るのに必要な視角を提示する視角提示部4と、両眼分離画像102,103を見るために必要な視角を変化させる操作部5とからなる。操作部5は、所定の可動幅Wの範囲で左眼用画像102をスライド可能となっている。また、視角提示部4は、当該視角提示部4の左端部が2000秒の視角を示し、当該視角提示部4の右端部が3000秒の視角を示す目盛4a,4bが描かれている。
【0045】
そして、操作者(観察者)は操作部5のスライド軸5aと視角提示部4の目盛4a,4bとから現在の視差量を見て操作部5をスライド操作する。これによって、左眼用画像102と右眼用画像103との位置関係を任意に設定して、所望の視角で両眼分離画像102,103を見ることができる。
【0046】
このような毛様体筋弛緩器具によれば、2000秒〜3000秒という観察者の毛様体筋の弛緩を促すことができる範囲で左眼用画像102と右眼用画像103との位置関係に基づく視差量を連続的に変化させることができる。したがって、この毛様体筋弛緩器具によれば、観察者にとって最も毛様体筋の弛緩効果を得られる視角を連続的に選択させることができる。
【0047】
また、この毛様体筋弛緩器具によれば、図5,6に示した毛様体筋弛緩器具では2000秒〜3000秒のうちの単一の視角でしか両眼分離画像102,103を見ることができず、図7,8に示した毛様体筋弛緩器具では2000秒〜3000秒のうち段階的に変化させた視角でした両眼分離画像102,103を見ることができなかった。これに対し、図9に示した毛様体筋弛緩器具によれば、左眼用画像102と右眼用画像103との位置関係を連続的に変化させて、2000秒〜3000秒の範囲で視角を連続的に変化させて両眼分離画像102,103を見させることができる。
【0048】
なお、この毛様体筋弛緩器具は、視角を2000秒から3000秒という細かい距離範囲で両眼分離画像102,103を動かすため、操作者(観察者)によっては視角提示部4の両端間で操作部5を動かす距離が短くなるおそれがある。そこで、操作部5に対する大きな動作を、両眼分離画像102,103の小さい移動に変換する機能を設けることが望ましい。
【0049】
具体的には、図10に示すように、操作者(観察者)の所定範囲Wの回転動作を左眼用画像102のスライド動作に変換する機構を設けている。このような毛様体筋弛緩器具の操作部5は、左眼用画像102に接続されたスライド軸5aと、支点5bを中心として回転操作がされる回転レバー5cとを有する。提示部1には、回転レバー5cを回転動作させる規制となる案内溝6が設けられている。この案内溝6は、回転レバー5cと図示しない貫通軸によって接続されている。また、回転レバー5cには、当該回転レバー5cの回転操作をスライド軸5aのスライド動作に変換するために、図10(d)に示すように、溝部5eが設けられると共に、スライド軸5aと接続され回転レバー5cの回転操作時に当該溝部5e内で往復移動可能する接続軸5dが設けられる。
【0050】
このような構成により、毛様体筋弛緩器具は、回転レバー5cのA方向の回転操作を、B方向の並進動作に変換して、スライド軸5aを介して左眼用画像102をスライド動作させることができる。したがって、この毛様体筋弛緩器具によれば、図9に示した可動幅Wよりも長い距離の範囲Wで操作をさせて、図10(a)のよう左眼用画像102と右眼用画像103との位置関係から、図10(b)に示すように左眼用画像102’を移動させ、更に図10(c)に示すように左眼用画像102’’を連続的に移動させることができる。
【0051】
つぎに、上述した毛様体筋弛緩器具において、観察者の眼位ずれ量に応じて両眼分離画像102,103の視差量を変化させる構成について、図11を参照して説明する。なお、図11では、図9のような操作部5をスライド操作させて左眼用画像102をスライド動作させる構成を示しているが、図10のように回転操作を左眼用画像102のスライド動作に変換する構成を採用しても良い。
【0052】
この毛様体筋弛緩器具は、画像操作部4,5が、観察者の眼位ずれ量に応じて両眼分離画像102,103の視差量を変化させ、当該観察者が両眼分離画像102,103を見るための実質的な視角を2000秒から3000秒までの範囲内の何れかの視角とすることを特徴とするものである。これにより毛様体筋弛緩器具は、眼位ずれ量を両眼分離画像102,103の視差量に反映させて、観察者の視機能による両眼分離画像102,103の視差量に対する認識の個人差を軽減する。
【0053】
観察者の眼位ずれとは、左眼、右眼に異なる画像を提示し、各画像を中心位置で重ね合わせる作業を行ったときの位置ずれを指す。眼位ずれがない正常な場合であれば、左右の異なる画像を中心位置で重ね合わせることができる。眼位ずれがあり異常である場合、本人は中心位置で重なり合っていると認識しているものの、実際には左右の映像が中心位置で重なっておらず、左右の映像間に距離(位置ずれ)が発生する。そして、この位置ずれが観察者の眼位ずれであり、当該眼位ずれがあると、両眼分離画像102,103の視差量に対する認識に個人差が発生する。
【0054】
したがって、この毛様体筋弛緩器具は、観察者の眼位ずれ量を両眼分離画像102,103の視差量に加える補正機構7を備えている。具体的には、補正機構7は、図11(d)に示すように、提示部1にガイド溝7aを設け、当該ガイド溝7aに対し、貫通軸7bが操作部5が接続されるようにする。また、補正機構7は、操作部5がガイド溝7aに沿ってスライド操作させる時に、当該操作部5の位置に対して視角提示部4の目盛4a,4bの支持位置を補正する指示矢印7cが取り付けられている。この指示矢印7cは、操作部5のスライド操作と共にスライドして移動するようになっている。この視角提示部4に対する操作部5の位置と、補正機構7の位置のとのスライド方向における差は、観察者の眼位ずれ量となっている。したがって、観察者の眼位ずれ量に応じて操作部5と補正機構7の指示矢印7cとの位置を調整する。なお、図11(d)に示す補正機構7は、上述した視角提示部4及び操作部5(画像操作部4,5)に追加した構成であるために別個に説明しているが、当該視角提示部4及び操作部5と一体に構成された画像操作部4,5,7として機能するものである。
【0055】
したがって、この毛様体筋弛緩器具によれば、観察者に眼位ずれがある場合でも、当該観察者個々の眼位ずれの量に応じて操作部5と補正機構7の指示矢印7cとの距離を調整することができ、図11(a)〜(c)のように実質的に2000秒〜3000秒の間の視角で両眼分離画像102,103を見させることができる。
【0056】
また、毛様体筋弛緩器具は、用紙などの提示部1に両眼分離画像102,103を描いたものを観察者に所定の視角で観察させるものであったが、図12に示すようにシルバー塗装された平面スクリーン30に対して、直線偏光または円偏光で分離された両眼分離画像102,103の映像を表示させるものであっても良い。
【0057】
図12の構成は、平面スクリーン30に両眼分離画像102,103の映像を表示させるために、映像制御装置20から、観察者の左右の眼に対応した2台のプロジェクタ40R、40Lに左眼用映像信号、右眼用映像信号を供給する。そして、プロジェクタ40R、40Lは、それぞれ、左眼用映像光、右眼用映像光を平面スクリーン30に対して投影する。
【0058】
なお、このような構成を採用する場合、偏光メガネ(不図示)を装着した観察者は、平面スクリーン30に対して所定の視点位置とする必要がある。また、プロジェクタ40R、40Lからそれぞれ異なる偏光方向の映像光を出射する場合には、プロジェクタ40R、40Lの出射口にそれぞれ異なる偏光方向のフィルタを取り付ける。これに対し、フィルタメガネ2は、左右で異なる偏光方向のフィルタが取り付けられているものとする。
【0059】
映像制御装置20は、プロジェクタ40R、40Lと接続されたインターフェース21,表示制御部22,ハードディスク装置などからなる映像記憶部23及び操作部24を備える。
【0060】
映像記憶部23には、上述したひし形や丸形、顔などの各種絵柄の両眼分離画像102,103が記憶されている。なお、映像記憶部23には、各種の色の組み合わせで両眼分離画像102,103を記憶していても良いが、表示制御部22で両眼分離画像102,103の色加工をする場合には、記憶している必要はない。
【0061】
操作部24は、上述したように操作者(観察者)が操作部5を操作することと同様に、平面スクリーン30に表示させている両眼分離画像102,103を調整する場合に操作される。この操作部24は、キーボードやポインティングデバイスなどからなるものでも良いが、図9に示したスライド機構を模したものであっても良く、図10に示した回転レバー状のものであっても良い。
【0062】
表示制御部22は、映像記憶部23に記憶された両眼分離画像102,103を加工して、インターフェース21を介してプロジェクタ40R、40Lに出力する制御を行う。表示制御部22は、上述したように両眼分離画像102,103の間隔を調整して、観察者が両眼分離画像102,103を見るための視角を調整する操作が操作部24に対してなされた場合に、両眼分離画像102,103間の間隔を変更する映像加工処理を行う。このとき、表示制御部22は、所定の観察者の視点位置から両眼分離画像102,103を見たときの視角を2000秒〜3000秒の何れかとするように両眼分離画像102,103の視差量を調整する。このように両眼分離画像102,103の視差量が調整された映像をプロジェクタ40R、40Lにより投影し、両眼分離画像102,103を平面スクリーン30に表示させることができる。
【0063】
なお、このような構成にかぎらず、両眼分離画像102,103を提示できる立体映像提示システムであれば、どのような構成を採用してもよい。両眼分離方式の現行技術としては、アナグリフ方式、偏光方式、時分割方式等が存在し、映像表示方式としては、HMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)方式、ディスプレイ方式、プロジェクション方式等が存在するが、任意の技術を用いて良い。
【0064】
このような構成を採用することにより、任意の形状や絵柄を選択して両眼分離画像102,103を提示し、両眼分離画像102,103を見るときの視角を2000秒〜3000秒の何れかとするように両眼分離画像102,103の視差量を映像制御装置20で調整できる。
【0065】
また、映像制御装置20は、自動的に、両眼分離画像102,103の視差量を段階的に順次増減させることもでき、連続的に増減させることもできる。
【0066】
更に、予め操作部24によって観察者の眼位ずれ量を入力することにより、映像制御装置20によって、当該眼位ずれ量に応じて両眼分離画像102,103を自動算出して、適切な視差量の両眼分離画像102,103を表示することができる。
【0067】
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0068】
1 提示部
2 フィルタメガネ
2L 左眼用フィルタ(赤色)
2R 右眼用フィルタ(青色)
3L 左眼視線
3R 右眼視線
4,5 画像操作部
4 視角提示部
5 操作部
6 案内溝
7 補正機構
10 冊子
20 映像制御装置
21 インターフェース
22 表示制御部
23 映像記憶部
24 操作部
30 平面スクリーン
40 プロジェクタ
101 立体画像
102,103 両眼分離画像
【技術分野】
【0001】
本発明は、視標を提示する提示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、観察者の右眼と左眼のそれぞれで異なる画像を視認させる両眼視画像を利用した眼科検査として、図13に示すような器具を利用したステレオテストがある。この眼科検査では、右眼用フィルタと左眼用フィルタとで異なる色のめがね1000を装着させて両眼分離画像を見させて、立体視機能の有無の判別検査、立体視機能の能力測定を行っている。
【0003】
立体視機能の判別検査では、観察者が両眼分離画像を見るための視角として3600秒の視差をつけた両眼分離画像1001を観察させ、両眼分離画像1001が立体的に見えるかを判断させる。観察者が見るための視角として3600秒の視差をつけた立体画像を用いるのは、健常者であれば確実に立体であると判別できることによる。
【0004】
また、立体視機能の能力測定では、観察者が両眼分離画像1002を見るための視角として40秒から800秒の視差をつけた立体映像を観察させ、立体を識別できる最小視差を測定する。観察者が見るための視角として40秒〜800秒の視差をつけた立体画像を用いるのは、どの位まで細やかな立体を認識できるかを測定するためである。
【0005】
更に、画像の視差を利用した技術としては、下記の特許文献1に示すような眼精疲労等回復ディスプレイ装置がある。この眼精疲労等回復ディスプレイ装置は、立体画像による視標の移動に伴う輻輳調節と画像の主観的遠近感とによって、毛様体筋の弛緩又は緊張を誘発させている。具体的には、映像として表示させている視標を移動させることによって、当該視標を見るための視差量を変化させる。これにより、観察者の毛様体筋の緊張を誘発させた後、この緊張状態から通常の状態に戻させ、ストレッチを模した動きを誘発させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−325605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述したディスプレイ装置においては、上記特許文献1の図3等に開示されているように、毛様体筋を通常の状態から強制的に緊張させていたので、実際には緊張状態から通常状態に弛緩する動きを誘発しているにすぎず、単に毛様体筋を通常状態と緊張状態との間で変化させるものであった。
【0008】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、より簡単な構成によって毛様体筋を弛緩させることを誘発することができる提示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様に係る提示方法は、観察者の毛様体筋が弛緩することを誘発するために、任意画像で構成される視標を、両眼に対応させて分離して提示する提示部を用いて、前記視標を見るための前記観察者の視角が2000秒から3000秒までの範囲内の何れかの視角とする視差量の両眼分離画像を、前記視標として提示する。
【0010】
第1の態様に係る提示方法であって、第2の態様に係る提示方法は、前記提示部は、複数の両眼分離画像のうちから何れかの選択された両眼分離画像を提示するものであり、各両眼分離画像が、2000秒から3000秒までの範囲内の視角のうちそれぞれ異なる視角によって前記観察者に観察される視差量となっていてもよい。
【0011】
第1の態様に係る提示方法であって、第3の態様に係る提示方法は、2000秒から3000秒までの範囲内で連続的に当該両眼分離画像を見るための視角を変化させるように前記両眼分離画像の視差量を変化させる画像操作部を用いて、特定の視差量の両眼分離画像を設定可能としてもよい。
【0012】
第3の態様の発明に係る提示方法であって、第4の態様に係る提示方法は、前記画像操作部は、観察者の眼位ずれ量に応じて前記両眼分離画像の視差量を変化させる補正部を備え、該補正部によって、当該観察者が視標を見るための実質的な視角を2000秒から3000秒までの範囲内の何れかの視角としてもよい。
【0013】
第1乃至第4の態様の発明に係る提示方法であって、第5の態様に係る提示方法は、前記提示部に、前記両眼分離画像を投影する手段を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、2000秒〜3000秒の範囲内の何れかの視角とする視差量の両眼分離画像を視標として提示するので、より簡単な構成によって毛様体筋の弛緩を誘発させて、観察者の眼精疲労等に効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】眼の構造を示す図である。
【図2】両眼分離画像を見るときの視角について説明する図である。
【図3】立体を見る視角と右眼の毛様体筋の弛緩・緊張状態との関係を示す図である。
【図4】立体を見る視角と左眼の毛様体筋の弛緩・緊張状態との関係を示す図である。
【図5】毛様体筋弛緩器具に両眼分離画像を提示し、当該両眼分離画像を観察者が見るときの様子を説明する図である。
【図6】毛様体筋弛緩器具に両眼分離画像を提示し、当該両眼分離画像を観察者が見るときの様子を説明する他の図である。
【図7】複数の両眼分離画像を描いた提示部を冊子にして、段階的に視差量が異なる両眼分離画像を観察者に見させることについて説明する図である。
【図8】複数の両眼分離画像を描いた提示部を冊子にして、段階的に視差量が異なる両眼分離画像を観察者に見させることについて説明する他の図である。
【図9】観察者の操作によって、両眼分離画像の視差量を変化させることができる構成を示す図である。
【図10】観察者の操作によって、両眼分離画像の視差量を変化させることができる他の構成を示す図である。
【図11】観察者の眼位ずれ量に応じて両眼分離画像の視差量を変化させることができる構成を示す図である。
【図12】平面スクリーンに両眼分離画像を表示させる構成を示す図である。
【図13】従来において行われていたステレオテストを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0017】
毛様体筋弛緩器具は、観察者に画像を視認させることによって、観察者の毛様体筋を通常の状態から弛緩させることを誘発するものである。
【0018】
眼の構造は、図1に示すように、水晶体に対して毛様体筋が圧をかけることにより、当該水晶体の厚さを調整するようになっている。水晶体は眼内における透明な凸レンズ部分に相当し、水晶体に入ってきた光のピントを調整して網膜に映し出す。この光のピント調整は、毛様体筋が水晶体の厚さを調整して行われ、観察者は、遠方と近方の視力を調節している。近視状態では、毛様体筋が緊張して水晶体が厚くなり、遠視状態では、毛様体筋は弛緩して水晶体は元の厚さに戻ることとなる。
【0019】
また、観察者は、左眼と右眼とで見ることができる画像を分離させた両眼分離画像を見る場合には、図2に示すような視角で両眼分離画像を見ることとなる。この視角は、観察者の左眼位置と右眼位置とを結んだ線分の中心点を視点位置とし、当該視点位置と左眼用映像とを結ぶ線分と当該視点位置と右眼用映像とを結ぶ線分とのなす角度である。視機能検査などでは、より細やかな視角を扱うこととなるので、この視角の1°を60分として表し、この60分を3600秒と表して、視角の調整を行う。したがって、毛様体筋弛緩器具は、後述する特定範囲での左眼用画像と右眼用画像との間隔である視差量とすることによって、当該左眼用画像と右眼用画像からなる両眼分離画像を見るための視角[秒]を特定範囲とすることができる。
【0020】
毛様体筋弛緩器具は、本願の発明者の研究によって得た、図3、図4に示す「立体映像観察時における観察者の水晶体の調節反応を測定した結果、視角が2000秒〜3000秒の範囲となる視差量の映像を見たときに、他の視角で映像を見たときよりも毛様体筋が弛緩することが確認された。」という視機能の性質を利用したものである。図3に示す視角[秒]と毛様体筋の調節度合い(D)との関係は、観察者に立体映像を注視させた時の右眼の毛様体筋、水晶体の変化を示し、図4に示す視角[秒]と毛様体筋の調節度合い(D)との関係は、観察者に立体映像を注視させた時の左眼の毛様体筋、水晶体の変化を示している。
【0021】
ここで、毛様体筋は、近方の物体を注視した時には調節緊張し、水晶体の厚さを厚くなる方向に変形させる。一方、毛様体筋は、遠方の物体を注視した時には調節弛緩し、結果として水晶体の厚さを薄くさせる。また、観察者が立体映像を注視した場合、図3及び図4に示すように、視角が2000秒〜3000秒の範囲(a−a’)で両眼視差(交叉性視差)として認識されて立体視をした時の毛様体筋の弛緩度合いが、視差が0の立体感が得られていない時の毛様体筋の弛緩度合いよりも、著しく高くなる。すなわち、2000秒〜3000秒の視角で立体感を感じさせているにも拘わらず、あたかも遠方を見ているかのように毛様体筋を弛緩する。
【0022】
このような毛様体筋の変化に基づき、毛様体筋弛緩器具は、視標を見るための観察者の視角が2000秒から3000秒までの範囲内となると、それ以外の視角で視標を見るときよりも毛様体筋の弛緩度合いが大きくなることを利用して、当該毛様体筋の弛緩を誘発することを特徴とする。
【0023】
両眼分離画像を提示して立体画像を提示する方式としては、アナグリフ方式、偏光方式、時分割方式などが存在する。このうち、図5に、毛様体筋弛緩器具として、アナグリフ方式を用いた提示部1の構成を示す。アナグリフ方式とは、観察者の左眼、右眼にそれぞれ左眼用フィルタ(赤色)2Lと右眼用フィルタ(青色)2Rとを有するフィルタメガネ2を装着させ、白い紙などの提示部1上に描いた左眼用画像(青色)102、右眼用画像(赤色)103からなる両眼分離画像を見させるものである。なお、この両眼分離画像102,103は、静止画像であり、その間隔や大きさは変化しないものとし、提示部1における表示位置の移動(並進、回転)しないものとする。
【0024】
また、左眼用フィルタ(赤色)2L及び右眼用フィルタ(青色)2Rは、提示部1上にて重複した部分の形状も観察者に知覚させるために、半透明の色で構成する必要がある。この重複部分は、例えば、セロファンを所定の視標形状に切り抜いて、白い紙の上に配置することで重なった部分の形状も知覚させることができる。なお、この色の組み合わせ例に限らず、左眼、右眼のフィルタは赤と緑、赤とシアンなどの他の組み合わせでも良い。
【0025】
このような構成により、両眼分離画像102,103を観察者に観察させることにより、両眼分離を実現し、観察者に対して立体画像101を提示することができる。すなわち、赤色の右眼用画像103は青色フィルタ2Rを介してしか見えず、青色の両眼分離画像102,103は左眼用フィルタ(赤色)2Lを介してしか見えないため、立体画像101として認識させることができる。
【0026】
したがって、この毛様体筋弛緩器具によれば、右眼用フィルタ(青色)2Rを介して右眼用画像103を見る右目視線3Rと、左眼用フィルタ(赤色)2Lを介して右眼用画像103を見る左目視線3Lとが交差する立体画像101上の点101aにて、当該左目視線3Lと右目視線3Rとのなす角度が、観察者の視角となる。したがって、この視角が、2000秒〜3000秒の何れかとなるように、提示部1上で左眼用画像102と右眼用画像103との間隔が調整されていることによって、観察者の毛様体筋の弛緩を誘発できる。
【0027】
ここで、観察者の視角とは、当該観察者の視点位置と両眼分離画像102,103とを結ぶ左眼視線3L、右眼視線3Rとのなす角度で構成される角度で表される。このため、毛様体筋弛緩器具を用いるためには、提示部1に対する視点位置を限定する必要がある。この提示部1に対する視点位置は、通常の本を読むときの観察者の視点位置と本との間の距離を想定して、提示部1から40cm離れた位置に視点位置を設定する。この場合、両眼分離画像102,103を見たときの観察者の視角が2000秒〜3000秒となる両眼分離画像102,103の視差量とは、白い紙の提示部1上に描画される両眼分離画像102,103間の距離で換算すると、約15.5mm〜23.3mmとなる。
【0028】
この提示部1と視点位置との距離Dに対する、両眼分離画像102,103間の距離Sは、下記の式1のようになる。
【0029】
S=2×D×tan(θ/2)
ここで、上記式中のθは視角(°)である。したがって、提示部1と視点位置との距離Dを変更させたい場合には、視角θを2000秒〜3000秒の何れかの角度とし、両眼分離画像102,103間の距離Sを変化させる。これにより、任意の提示部1と視点位置との距離Dから両眼分離画像102,103を見させる場合でも、両眼分離画像102,103間の距離Sを調整して、2000秒〜3000秒の何れかの視角θで両眼分離画像102,103を見させることができる。
【0030】
なお、両眼分離画像102,103で表される視標は、図5に示したようなひし形、丸や十字形状などの単純形状でもよく、観察者が知覚可能な大きさがあればよい。なお、図5に示した例では、両眼分離画像102,103として、大きさが5°の視角で視認されるひし形形状を採用している。
【0031】
また、視標は、図6に示すような顔や、クマ、車といった絵柄でもよい。ただし、両眼分離画像102,103は、左眼用画像102と右眼用画像103とは、両眼分離画像を融像できる形状が望ましいため、同一形状であることが望ましい。
【0032】
以上説明したように、毛様体筋弛緩器具は、観察者の毛様体筋が弛緩することを誘発するために、任意画像で構成される視標を、両眼に対応させて分離して提示する提示部1を有する。そして、毛様体筋弛緩器具は、提示部1によって、視標を見るための観察者の視角を2000秒から3000秒までの範囲内の何れかの視角とする視差量の両眼分離画像を、視標として提示することができる。したがって、この毛様体筋弛緩器具によれば、提示部1に描いた両眼分離画像102,103を観察させるだけで、観察者の毛様体筋の弛緩を誘発することができる。したがって、この毛様体筋弛緩器具によれば、観察者にフィルタメガネ2を装着させて通常の姿勢で提示部1上の両眼分離画像102,103を見させるだけで、眼精疲労などの回復といった効果を得ることができる。
【0033】
また、この毛様体筋弛緩器具によれば、両眼分離画像102,103を2000秒〜3000秒の何れかの視角で視認させるための構成として、提示部1とフィルタメガネ2とからなるようなアナグリフ方式のような簡素な構成とすることができる。したがって、その構成が大掛かりになることはない。
【0034】
つぎに、上述したように観察者の毛様体筋の弛緩を誘発できる他の毛様体筋弛緩器具の構成について説明する。
【0035】
図7に示す毛様体筋弛緩器具は、複数の提示部1A,1B,1C,1Dである用紙のそれぞれに、両眼分離画像102,103を描いて冊子10を構成している。提示部1A,1B,1C,1Dのそれぞれに描かれた各両眼分離画像102,103は、2000秒から3000秒までの範囲内の視角のうちそれぞれ異なる視角によって観察者に観察されるように、両眼分離画像102,103間の間隔が調整されている。
【0036】
各両眼分離画像102,103の視差量の変化量は、特に限定はしないが、視角を1秒ずつ変化させた1001パターンの両眼分離画像102,103を作成してもよく、100秒ずつ変化させた11パターンの両眼分離画像102,103を作成してもよい。
【0037】
そして、冊子10を構成する提示部1A,1B,1C,1Dのうちから、観察者によって複数の両眼分離画像102,103のうちから何れかの選択された両眼分離画像102,103を提示することができる。具体的には、異なる視差量の両眼分離画像102,103を複数のページに記載し、特定の視差量の両眼分離画像102,103を提示したい場合は、対応するページを開けばよいこととなる。
【0038】
なお、図7に示した例では、各両眼分離画像102,103が同一の形状であったが、図8に示すように、各両眼分離画像102,103の視差量ごとに異なる形状としても良く、顔やクマ、車といった絵柄でもよい。ただし、両眼分離画像102,103は、左眼用画像102と右眼用画像103とは、両眼分離画像を融像できる形状が望ましいため、同一形状であることが望ましい。
【0039】
このような毛様体筋弛緩器具によれば、観察者が見るための視角が異なる視差量となっている両眼分離画像102,103を複数用意しておき、選択させることができる。これにより、毛様体筋の弛緩効果が最大に発揮される両眼分離画像102,103の視差量には個人差があるが、予め設定された複数の異なる視差量の両眼分離画像102,103のうち、特定のものを選択できる機能を有するようにした。これにより、観察者にとって適した視差量の両眼分離画像102,103を見させることによって、2000秒〜3000秒の範囲内であっても観察者にとって最も効果が高い視角で両眼分離画像102,103を見て毛様体筋の弛緩効果を与えることができる。
【0040】
また、複数の異なる視差量の両眼分離画像102,103を順次に見させている時に、観察者の水晶体の厚みを視機能検査機器で測定して、最も毛様体筋の弛緩効果が現れた両眼分離画像102,103を求めるようにしても良い。これにより、観察者ごとに最も毛様体筋の弛緩効果が得られる両眼分離画像102,103の視差量が異なっても、各観察者に対して最も毛様体筋の弛緩効果が得られる両眼分離画像102,103を見させることができる。また、観察者の視機能の回復又は衰えにより、最も毛様体筋の弛緩効果が発揮される両眼分離画像102,103の視差量に変化がある。これに対し、観察者にとって最も毛様体筋の弛緩効果が得られる両眼分離画像102,103を測定すれば、観察者にとって最も毛様体筋の弛緩効果が得られるように両眼分離画像102,103を更新して、見させることができる。
【0041】
更に、図8に示したように、各両眼分離画像102,103で異なる絵柄とすることによって、幼児が毛様体筋弛緩器具を使用する場合に、当該幼児に適した視差量付近の両眼分離画像102,103の絵柄を日毎に変えることができ、検査などを飽きさせることなく行わせ、検査などに対する集中力を持続させることができる。
【0042】
図9には、他の毛様体筋弛緩器具として、2000秒から3000秒までの範囲内で連続的に両眼分離画像102,103を見るための視角を変化させるように当該両眼分離画像102,103を変化させる画像操作部4,5を備える構成を示す。そして、この毛様体筋弛緩器具は、当該画像操作部4,5の操作によって、特定の視差量の両眼分離画像102,103を設定可能とする。
【0043】
具体的には、画像操作部4,5は、当該画像操作部4,5を操作させることにより、図9(a)のよう左眼用画像102と右眼用画像103との位置関係から、図9(b)に示すように左眼用画像102’を移動させ、更に図9(c)に示すように左眼用画像102’’を連続的に移動させることができる。これにより、左眼用画像102と右眼用画像103との位置関係を変化させる。
【0044】
画像操作部4,5は、図9(d)に示すように、操作者(観察者)に両眼分離画像102,103を見るのに必要な視角を提示する視角提示部4と、両眼分離画像102,103を見るために必要な視角を変化させる操作部5とからなる。操作部5は、所定の可動幅Wの範囲で左眼用画像102をスライド可能となっている。また、視角提示部4は、当該視角提示部4の左端部が2000秒の視角を示し、当該視角提示部4の右端部が3000秒の視角を示す目盛4a,4bが描かれている。
【0045】
そして、操作者(観察者)は操作部5のスライド軸5aと視角提示部4の目盛4a,4bとから現在の視差量を見て操作部5をスライド操作する。これによって、左眼用画像102と右眼用画像103との位置関係を任意に設定して、所望の視角で両眼分離画像102,103を見ることができる。
【0046】
このような毛様体筋弛緩器具によれば、2000秒〜3000秒という観察者の毛様体筋の弛緩を促すことができる範囲で左眼用画像102と右眼用画像103との位置関係に基づく視差量を連続的に変化させることができる。したがって、この毛様体筋弛緩器具によれば、観察者にとって最も毛様体筋の弛緩効果を得られる視角を連続的に選択させることができる。
【0047】
また、この毛様体筋弛緩器具によれば、図5,6に示した毛様体筋弛緩器具では2000秒〜3000秒のうちの単一の視角でしか両眼分離画像102,103を見ることができず、図7,8に示した毛様体筋弛緩器具では2000秒〜3000秒のうち段階的に変化させた視角でした両眼分離画像102,103を見ることができなかった。これに対し、図9に示した毛様体筋弛緩器具によれば、左眼用画像102と右眼用画像103との位置関係を連続的に変化させて、2000秒〜3000秒の範囲で視角を連続的に変化させて両眼分離画像102,103を見させることができる。
【0048】
なお、この毛様体筋弛緩器具は、視角を2000秒から3000秒という細かい距離範囲で両眼分離画像102,103を動かすため、操作者(観察者)によっては視角提示部4の両端間で操作部5を動かす距離が短くなるおそれがある。そこで、操作部5に対する大きな動作を、両眼分離画像102,103の小さい移動に変換する機能を設けることが望ましい。
【0049】
具体的には、図10に示すように、操作者(観察者)の所定範囲Wの回転動作を左眼用画像102のスライド動作に変換する機構を設けている。このような毛様体筋弛緩器具の操作部5は、左眼用画像102に接続されたスライド軸5aと、支点5bを中心として回転操作がされる回転レバー5cとを有する。提示部1には、回転レバー5cを回転動作させる規制となる案内溝6が設けられている。この案内溝6は、回転レバー5cと図示しない貫通軸によって接続されている。また、回転レバー5cには、当該回転レバー5cの回転操作をスライド軸5aのスライド動作に変換するために、図10(d)に示すように、溝部5eが設けられると共に、スライド軸5aと接続され回転レバー5cの回転操作時に当該溝部5e内で往復移動可能する接続軸5dが設けられる。
【0050】
このような構成により、毛様体筋弛緩器具は、回転レバー5cのA方向の回転操作を、B方向の並進動作に変換して、スライド軸5aを介して左眼用画像102をスライド動作させることができる。したがって、この毛様体筋弛緩器具によれば、図9に示した可動幅Wよりも長い距離の範囲Wで操作をさせて、図10(a)のよう左眼用画像102と右眼用画像103との位置関係から、図10(b)に示すように左眼用画像102’を移動させ、更に図10(c)に示すように左眼用画像102’’を連続的に移動させることができる。
【0051】
つぎに、上述した毛様体筋弛緩器具において、観察者の眼位ずれ量に応じて両眼分離画像102,103の視差量を変化させる構成について、図11を参照して説明する。なお、図11では、図9のような操作部5をスライド操作させて左眼用画像102をスライド動作させる構成を示しているが、図10のように回転操作を左眼用画像102のスライド動作に変換する構成を採用しても良い。
【0052】
この毛様体筋弛緩器具は、画像操作部4,5が、観察者の眼位ずれ量に応じて両眼分離画像102,103の視差量を変化させ、当該観察者が両眼分離画像102,103を見るための実質的な視角を2000秒から3000秒までの範囲内の何れかの視角とすることを特徴とするものである。これにより毛様体筋弛緩器具は、眼位ずれ量を両眼分離画像102,103の視差量に反映させて、観察者の視機能による両眼分離画像102,103の視差量に対する認識の個人差を軽減する。
【0053】
観察者の眼位ずれとは、左眼、右眼に異なる画像を提示し、各画像を中心位置で重ね合わせる作業を行ったときの位置ずれを指す。眼位ずれがない正常な場合であれば、左右の異なる画像を中心位置で重ね合わせることができる。眼位ずれがあり異常である場合、本人は中心位置で重なり合っていると認識しているものの、実際には左右の映像が中心位置で重なっておらず、左右の映像間に距離(位置ずれ)が発生する。そして、この位置ずれが観察者の眼位ずれであり、当該眼位ずれがあると、両眼分離画像102,103の視差量に対する認識に個人差が発生する。
【0054】
したがって、この毛様体筋弛緩器具は、観察者の眼位ずれ量を両眼分離画像102,103の視差量に加える補正機構7を備えている。具体的には、補正機構7は、図11(d)に示すように、提示部1にガイド溝7aを設け、当該ガイド溝7aに対し、貫通軸7bが操作部5が接続されるようにする。また、補正機構7は、操作部5がガイド溝7aに沿ってスライド操作させる時に、当該操作部5の位置に対して視角提示部4の目盛4a,4bの支持位置を補正する指示矢印7cが取り付けられている。この指示矢印7cは、操作部5のスライド操作と共にスライドして移動するようになっている。この視角提示部4に対する操作部5の位置と、補正機構7の位置のとのスライド方向における差は、観察者の眼位ずれ量となっている。したがって、観察者の眼位ずれ量に応じて操作部5と補正機構7の指示矢印7cとの位置を調整する。なお、図11(d)に示す補正機構7は、上述した視角提示部4及び操作部5(画像操作部4,5)に追加した構成であるために別個に説明しているが、当該視角提示部4及び操作部5と一体に構成された画像操作部4,5,7として機能するものである。
【0055】
したがって、この毛様体筋弛緩器具によれば、観察者に眼位ずれがある場合でも、当該観察者個々の眼位ずれの量に応じて操作部5と補正機構7の指示矢印7cとの距離を調整することができ、図11(a)〜(c)のように実質的に2000秒〜3000秒の間の視角で両眼分離画像102,103を見させることができる。
【0056】
また、毛様体筋弛緩器具は、用紙などの提示部1に両眼分離画像102,103を描いたものを観察者に所定の視角で観察させるものであったが、図12に示すようにシルバー塗装された平面スクリーン30に対して、直線偏光または円偏光で分離された両眼分離画像102,103の映像を表示させるものであっても良い。
【0057】
図12の構成は、平面スクリーン30に両眼分離画像102,103の映像を表示させるために、映像制御装置20から、観察者の左右の眼に対応した2台のプロジェクタ40R、40Lに左眼用映像信号、右眼用映像信号を供給する。そして、プロジェクタ40R、40Lは、それぞれ、左眼用映像光、右眼用映像光を平面スクリーン30に対して投影する。
【0058】
なお、このような構成を採用する場合、偏光メガネ(不図示)を装着した観察者は、平面スクリーン30に対して所定の視点位置とする必要がある。また、プロジェクタ40R、40Lからそれぞれ異なる偏光方向の映像光を出射する場合には、プロジェクタ40R、40Lの出射口にそれぞれ異なる偏光方向のフィルタを取り付ける。これに対し、フィルタメガネ2は、左右で異なる偏光方向のフィルタが取り付けられているものとする。
【0059】
映像制御装置20は、プロジェクタ40R、40Lと接続されたインターフェース21,表示制御部22,ハードディスク装置などからなる映像記憶部23及び操作部24を備える。
【0060】
映像記憶部23には、上述したひし形や丸形、顔などの各種絵柄の両眼分離画像102,103が記憶されている。なお、映像記憶部23には、各種の色の組み合わせで両眼分離画像102,103を記憶していても良いが、表示制御部22で両眼分離画像102,103の色加工をする場合には、記憶している必要はない。
【0061】
操作部24は、上述したように操作者(観察者)が操作部5を操作することと同様に、平面スクリーン30に表示させている両眼分離画像102,103を調整する場合に操作される。この操作部24は、キーボードやポインティングデバイスなどからなるものでも良いが、図9に示したスライド機構を模したものであっても良く、図10に示した回転レバー状のものであっても良い。
【0062】
表示制御部22は、映像記憶部23に記憶された両眼分離画像102,103を加工して、インターフェース21を介してプロジェクタ40R、40Lに出力する制御を行う。表示制御部22は、上述したように両眼分離画像102,103の間隔を調整して、観察者が両眼分離画像102,103を見るための視角を調整する操作が操作部24に対してなされた場合に、両眼分離画像102,103間の間隔を変更する映像加工処理を行う。このとき、表示制御部22は、所定の観察者の視点位置から両眼分離画像102,103を見たときの視角を2000秒〜3000秒の何れかとするように両眼分離画像102,103の視差量を調整する。このように両眼分離画像102,103の視差量が調整された映像をプロジェクタ40R、40Lにより投影し、両眼分離画像102,103を平面スクリーン30に表示させることができる。
【0063】
なお、このような構成にかぎらず、両眼分離画像102,103を提示できる立体映像提示システムであれば、どのような構成を採用してもよい。両眼分離方式の現行技術としては、アナグリフ方式、偏光方式、時分割方式等が存在し、映像表示方式としては、HMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)方式、ディスプレイ方式、プロジェクション方式等が存在するが、任意の技術を用いて良い。
【0064】
このような構成を採用することにより、任意の形状や絵柄を選択して両眼分離画像102,103を提示し、両眼分離画像102,103を見るときの視角を2000秒〜3000秒の何れかとするように両眼分離画像102,103の視差量を映像制御装置20で調整できる。
【0065】
また、映像制御装置20は、自動的に、両眼分離画像102,103の視差量を段階的に順次増減させることもでき、連続的に増減させることもできる。
【0066】
更に、予め操作部24によって観察者の眼位ずれ量を入力することにより、映像制御装置20によって、当該眼位ずれ量に応じて両眼分離画像102,103を自動算出して、適切な視差量の両眼分離画像102,103を表示することができる。
【0067】
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0068】
1 提示部
2 フィルタメガネ
2L 左眼用フィルタ(赤色)
2R 右眼用フィルタ(青色)
3L 左眼視線
3R 右眼視線
4,5 画像操作部
4 視角提示部
5 操作部
6 案内溝
7 補正機構
10 冊子
20 映像制御装置
21 インターフェース
22 表示制御部
23 映像記憶部
24 操作部
30 平面スクリーン
40 プロジェクタ
101 立体画像
102,103 両眼分離画像
【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察者の毛様体筋が弛緩することを誘発するために、任意画像で構成される視標を、両眼に対応させて分離して提示する提示部を用いて、前記視標を見るための前記観察者の視角が2000秒から3000秒までの範囲内の何れかの視角とする視差量の両眼分離画像を、前記視標として提示することを特徴とする提示方法。
【請求項2】
前記提示部は、複数の両眼分離画像のうちから何れかの選択された両眼分離画像を提示するものであり、
各両眼分離画像が、2000秒から3000秒までの範囲内の視角のうちそれぞれ異なる視角によって前記観察者に観察される視差量となっていることを特徴とする請求項1に記載の提示方法。
【請求項3】
2000秒から3000秒までの範囲内で連続的に当該両眼分離画像を見るための視角を変化させるように前記両眼分離画像の視差量を変化させる画像操作部を用いて、特定の視差量の両眼分離画像を設定可能とすることを特徴とする請求項1に記載の提示方法。
【請求項4】
前記画像操作部は、観察者の眼位ずれ量に応じて前記両眼分離画像の視差量を変化させる補正部を備え、該補正部によって、当該観察者が視標を見るための実質的な視角を2000秒から3000秒までの範囲内の何れかの視角とすることを特徴とする請求項3に記載の提示方法。
【請求項5】
前記提示部に、前記両眼分離画像を投影する手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の提示方法。
【請求項1】
観察者の毛様体筋が弛緩することを誘発するために、任意画像で構成される視標を、両眼に対応させて分離して提示する提示部を用いて、前記視標を見るための前記観察者の視角が2000秒から3000秒までの範囲内の何れかの視角とする視差量の両眼分離画像を、前記視標として提示することを特徴とする提示方法。
【請求項2】
前記提示部は、複数の両眼分離画像のうちから何れかの選択された両眼分離画像を提示するものであり、
各両眼分離画像が、2000秒から3000秒までの範囲内の視角のうちそれぞれ異なる視角によって前記観察者に観察される視差量となっていることを特徴とする請求項1に記載の提示方法。
【請求項3】
2000秒から3000秒までの範囲内で連続的に当該両眼分離画像を見るための視角を変化させるように前記両眼分離画像の視差量を変化させる画像操作部を用いて、特定の視差量の両眼分離画像を設定可能とすることを特徴とする請求項1に記載の提示方法。
【請求項4】
前記画像操作部は、観察者の眼位ずれ量に応じて前記両眼分離画像の視差量を変化させる補正部を備え、該補正部によって、当該観察者が視標を見るための実質的な視角を2000秒から3000秒までの範囲内の何れかの視角とすることを特徴とする請求項3に記載の提示方法。
【請求項5】
前記提示部に、前記両眼分離画像を投影する手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の提示方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−63318(P2013−63318A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−269588(P2012−269588)
【出願日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【分割の表示】特願2008−92748(P2008−92748)の分割
【原出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(598041566)学校法人北里研究所 (180)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【分割の表示】特願2008−92748(P2008−92748)の分割
【原出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(598041566)学校法人北里研究所 (180)
【Fターム(参考)】
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