説明

揚げ物調理装置及び揚げ物調理方法

【課題】少量の油で効率よく被調理物を揚げる。
【解決手段】本発明の揚げ物調理装置3は、被調理物Tを第1エリアA、第2エリアB、第3エリアCの順に移送する移送装置50と、第1エリアAにオイルをミスト状に噴射して被調理物Tの表面にオイルを付着させるオイル付着装置10と、第2エリアBに100℃以上の過熱水蒸気を送り、被調理物Tを加熱するとともに、該被調理物Tの表面に付着しているオイルを加熱して該表面を揚げる加熱装置20と、第3エリアCに40℃以下の冷水をミスト状に噴射して被調理物Tの表面からオイルを飛ばす油きり装置40とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天ぷら、唐揚げ等の揚げ物を調理するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大企業から家庭にいたるまで、現時点での揚げ物の調理方法では、油槽に150〜190℃の熱油を貯え、その熱油の中に、粉材を塗した被調理物を浸して揚げるのが通常である。
【0003】
また、油を使用せずに揚げ物に類する食品を調理する、揚げ物類食品の調理方法としては、特許文献1に示すものが開示されている。その特許文献1の調理方法では、粉材を塗した被調理物に過熱水蒸気を噴射して加熱し、これにより、揚げ物に類する揚げ物類食品を調理する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−149207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の通常の揚げ物の調理方法では、熱油によって、被調理物を芯まで加熱するとともに、表面をカラッと揚げて旨みを引き出すが、大量に発生する古い油の廃棄処分等が問題となる。
【0006】
また、特許文献1の揚げ物類食品の製造方法では、油を使用しないため、油の廃棄処分が問題となることはないが、その反面、油で揚げないため、表面がカラッとした揚げ物独特の油による旨みを引き出すことはできない。
【0007】
そこで、少量の油で効率よく被調理物を揚げることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の揚げ物調理装置は、オイルをミスト状に噴射して被調理物の表面にオイルを付着させるオイル付着装置と、該オイル付着装置でオイルを付着させた後に、前記被調理物に100℃以上の過熱水蒸気を送り、該被調理物を加熱するとともに、該被調理物の表面に付着しているオイルを加熱して該表面を揚げる加熱装置とを備えている。
【0009】
ここで、前記揚げ物調理装置は、特に限定されないが、前記被調理物を第1エリア、第2エリアの順に移送する移送装置を備え、前記オイル付着装置は、前記第1エリアに前記オイルをミスト状に噴射し、前記加熱装置は、前記第2エリアに前記過熱水蒸気を送ることが好ましい。オイルの付着及び加熱を連続的に自動で行うことができるからである。
【0010】
また、前記揚げ物調理装置は、特に限定されないが、前記加熱装置で前記被調理物を加熱するとともに該被調理物の表面を揚げた後に、40℃以下の冷水をミスト状に噴射して該表面からオイルを飛ばす油きり装置を備えていることが好ましい。より旨みを引き出すことができるからである。
【0011】
ここで、前記揚げ物調理装置は、特に限定されないが、前記被調理物を第1エリア、第2エリア、第3エリアの順に移送する移送装置を備え、前記オイル付着装置は、前記第1エリアに前記オイルをミスト状に噴射し、前記加熱装置は、前記第2エリアに前記過熱水蒸気を送り、前記油きり装置は、前記第3エリアに前記冷水をミスト状に噴射することが好ましい。オイルの付着、加熱及び油きりを連続的に自動で行うことができるからである。
【0012】
また、前記揚げ物調理装置は、特に限定されないが、前記第1エリアを囲むとともに、前記移送装置で前記被調理物を搬入する搬入口を備えた第1エリアハウジング部と、前記第2エリアを囲むとともに、前記移送装置で前記被調理物を前記第1エリアから搬入する入口と前記第3エリアに搬出する出口とを備えた第2エリアハウジング部と、前記第3エリアを囲むとともに、前記移送装置で前記被調理物を搬出する搬出口を備えた第3エリアハウジング部とを含み構成された調理炉を備え、前記第1エリアハウジング部の天井部には、前記第2エリアから前記入口を通って該第1エリアに流入した過熱水蒸気を逃がすための排気口が設けられ、前記第3エリアハウジング部の天井部には、前記第2エリアから前記出口を通って該第3エリアに流入した過熱水蒸気を逃がすための別の排気口が設けられていることが好ましい。
【0013】
また、前記揚げ物調理装置は、特に限定されないが、前記第2エリアを囲むとともに入口と出口とを備えた第2エリアハウジング部を備え、前記移送装置は、前記入口及び前記出口を通過する移送用ベルトと、該移送用ベルトを駆動するベルト駆動装置とを含み構成され、前記入口には、前記移送用ベルトの上面から該入口の天井部下面までの入口開口高さを調整する入口開量調節機構が設けられ、前記出口には、前記移送用ベルトの上面から該出口の天井部下面までの出口開口高さを調整する出口開量調節機構が設けられていることが好ましい。
【0014】
また、前記揚げ物調理装置は、特に限定されないが、前記移送装置は、前記被調理物を載せる網状の移送用ベルトと、該移送用ベルトを駆動するベルト駆動装置とを含み構成され、オイルを貯めるオイル槽と、下部が該オイル槽のオイルに浸かるとともに該下部よりも上方の部分が前記移送用ベルトに当接して該移送用ベルトが駆動されるのに従い回転するオイル塗布ローラとを含み構成されたオイル塗布装置を備えていることが好ましい。
【0015】
また、前記揚げ物調理装置は、特に限定されないが、前記オイル塗布装置は、前記オイル供給ローラを前記移送用ベルトに当接する使用位置と当接しない不使用位置との間で駆動するローラ移動装置を含み構成されていることが好ましい。
【0016】
また、前記揚げ物調理装置は、特に限定されないが、前記移送装置は、前記被調理物を載せる網状の移送用ベルトと、該移送用ベルトを駆動するベルト駆動装置とを含み構成され、前記移送用ベルトを拭くための拭布と、該拭布を前記移送用ベルトに押圧する布押圧部材とを含み構成されたベルトワイパーを備えていることが好ましい。
【0017】
また、同目的を達成するため、本発明の揚げ物調理方法では、オイルをミスト状に噴射して被調理物の表面にオイルを付着させた後、前記被調理物に100℃以上の過熱水蒸気を送り、該被調理物を加熱するとともに、該被調理物の表面に付着しているオイルを加熱して該表面を揚げる。
【0018】
ここで、前記揚げ物調理方法は、特に限定されないが、前記過熱水蒸気で前記被調理物を加熱するとともに該被調理物の表面を揚げた後、40℃以下の冷水を噴射して該表面からオイルを飛ばすことが好ましい。より旨みを引き出すことができるからである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、オイルをミスト状に噴射することによって被調理物の表面にオイルを効率よく行き渡らせるとともに、被調理物及びその表面のオイルを過熱水蒸気で加熱することにより、少量のオイルで効率よく被調理物を揚げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例1の揚げ物調理装置を示す側面断面図である。
【図2】同実施例1のオイル付着装置及び加熱装置並びにその周辺を示す側面断面図である。
【図3】同実施例1のオイル付着装置及び加熱装置並びにその周辺(図2よりも手前側)を示す側面断面図である。
【図4】(a)は、同実施例1の加熱装置及びその周辺を示す正面断面図、(b)は、同実施例1のオイル付着装置及びその周辺を示す正面断面図である。
【図5】本発明の実施例2の調理装置を示す側面断面図である。
【図6】同実施例2の調理装置を示す平面図である。
【図7】同実施例2の調理装置を示す正面図である。
【図8】同実施例2の調理装置を示す正面断面図である。
【図9】同実施例2の調理炉本体から引出部を引き出した際の様子を示す正面断面図である。
【図10】同実施例2の蒸気タンクに水を供給する際の手順を(a)(b)に示す模式図である。
【図11】同実施例2の水タンクに水を供給する際の手順を(a)(b)に示す模式図である。
【図12】(a)は、同実施例2のオイル塗布ローラを当接位置に配した際の側面断面図であり、(b)は、同実施例2のオイル塗布ローラを非当接位置に配した際の側面断面図である。
【図13】同実施例2のベルト洗浄装置で移送用ベルトを洗浄する際の手順を(a)(b)に示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0021】
図1〜図4に示す本実施例1の揚げ物調理装置3は、次に示す調理炉4と、オイル付着装置10と、加熱装置20と、油きり装置40と、移送装置50と、制御装置60とを含み構成されている。
【0022】
[調理炉4]
調理炉4は、被調理物Tを調理するための炉であって、水平方向に一直線状に開通した通路Pを備えるとともに、該通路Pの長さ方向に沿って順に、被調理物Tにオイルを付着させるための第1エリアAと、被調理物Tを加熱するための第2エリアBと、被調理物Tの油きりを行うための第3エリアCとを備えている。詳しくは、この調理炉4は、第1エリアAを通路Pを残して囲んだ第1ハウジング部5と、第2エリアBを通路Pを残して囲んだ第2ハウジング部6と、更にその第2ハウジング部6の外側を通路Pを残して囲むことによって該第2ハウジング部6との間に空室を形成した外側ハウジング部7と、第3エリアCを通路Pを残して囲んだ第3ハウジング部9とを含み構成されている。そして、外側ハウジング部7の内側には、第2ハウジング部6を貫通して延びる仕切8,8が設置されており、それによって、外側ハウジング部7と第2ハウジング部6との間の空室が複数の水蒸気循環室w,w,wに仕切られるとともに、第2ハウジング部6の内側の第2エリアBも複数の加熱室b,b,bに通路Pを残して仕切られている。
【0023】
[オイル付着装置10]
オイル付着装置10は、第1エリアA内にオイルをミスト状に断続的に噴射することによって被調理物Tにオイルを付着させるための装置である。このオイル付着装置10は、第1ハウジング部5の天井部に取り付けられたオイルミスト噴射部材11と、先端部がオイルミスト噴射部材11に接続され、後端部が図示しないオイルタンクに接続されたオイルノズル15と、先端部がオイルミスト噴射部材11に接続され、後端部が図示しないコンプレッサに接続されたエアーノズル16とを含み構成されている。そして、このオイル付着装置10は、オイルノズル15からオイルミスト噴射部材11に供給する常温(10〜30℃程度)のオイルを、エアーノズル16からオイルミスト噴射部材11に供給するエアーの圧力で、該エアーと混合しつつ吹き飛ばすことによって、該オイルミスト噴射部材11から第1エリアA内にオイルをミスト状に噴射する。該オイルをミスト状を噴射するタイミングは、被調理物Tが第1エリアA内の所定位置を通過するタイミングであり、該被調理物Tがきたことは図示しないセンサによって感知する。オイルをミスト状に噴射する時間、噴射する量及びエアーの圧力は、制御装置による設定次第で、適宜変更できるが、噴射する時間は、0.1〜0.2秒間程度であり、エアーの圧力は、0.2〜0.5MPa程度である。
【0024】
[加熱装置20]
加熱装置20は、第2エリアB内に過熱水蒸気を送るとともに、該過熱水蒸気を該第2エリアBと水蒸気循環室w,w,wとで対流させることによって、被調理物Tを加熱する装置である。この加熱装置20は、次に示す水蒸気供給装置21と、水蒸気対流装置31,31,31とを含み構成されている。
【0025】
水蒸気供給装置21は、第2エリアB内に設けられた上下一対の水蒸気噴射部材22,22と、該上下一対の水蒸気噴射部材22,22に過熱水蒸気を供給する、各加熱室b,b,b毎に設けられた複数の水蒸気ノズル25,25,25とを含み構成されている。詳しくは、上下一対の水蒸気噴射部材22,22は、被調理物Tが移送されてくる位置よりも上方に設置された上側の水蒸気噴射部材22と、該移送されてくる位置よりも下方に設置された下側の水蒸気噴射部材22とから構成されている。上下の各水蒸気噴射部材22は、その内部に供給された過熱水蒸気を第2エリアB内に噴射するための複数(無数)の噴出孔23,23・・を備えた通路Pの長さ方向に延びる断面形状が三角形の筒状の部材であって、仕切8,8を貫通して全ての加熱室b,b,bに跨って延びている。また、各水蒸気ノズル25は、後端部が図示しない過熱水蒸気の供給源に接続されるとともに、先端部は二股に分岐して上下一対の水蒸気噴射部材22,22のそれぞれに接続されている。各水蒸気ノズル25,25,25から上下一対の水蒸気噴射部材22,22に供給する過熱水蒸気の温度及び流量は、制御装置60による設定次第で、各水蒸気ノズル25,25,25毎に適宜変更できるが、その温度は、100〜400℃程度である。
【0026】
水蒸気対流装置31,31,31は、第2エリアB内に供給された過熱水蒸気を該第2エリアBと水蒸気循環室w,w,wとで対流させるための装置であって、各水蒸気循環室w,w,w毎に1つずつ設けられている。各水蒸気対流装置31は、第2エリアB内の空気及び過熱水蒸気を水蒸気循環室w内に流入させるための流入孔32と、水蒸気循環室w内に流入させた空気及び過熱水蒸気を第2エリアB内に流出させるための複数の流出孔33,33・・と、第2エリアB内の空気及び過熱水蒸気を流入孔32から水蒸気循環室w内に流入させるため送風機35と、過熱水蒸気の温度を調節するためのヒータ38とを含み構成されている。
【0027】
詳しくは、流入孔32は、第2ハウジング部7の天井部に貫設されている。また、複数の流出孔33,33・・は、被調理物Tが移送されてくる位置よりも上方に空気及び過熱水蒸気を送るための上側の流出孔33,33・・と、該移送されてくる位置よりも下方に空気及び過熱水蒸気を送るための下側の流出孔33,33・・とを含み構成されている。そして、上側の流出孔33,33・・は、第2ハウジング部6の両側の側壁部に、通路Pの長さ方向に並べて貫設されている。また、下側の流出孔33,33・・は、第2ハウジング部6の両側の側壁部における上側の流出孔33,33・・よりも下方に、該上側の流出孔33,33・・の真下に重ならないように通路Pの長さ方向にそれぞれずらして、該通路Pの長さ方向に並べて貫設されている。そして、上側の各流出孔33には、該流出孔33に水蒸気循環室w内の空気及び過熱水蒸気を案内するためのガイド34が設けられている。また、送風機35は、水蒸気循環室w内における流入孔32の真上に設置されたフィン36と、該フィン36を回転駆動する、水蒸気循環室wの外部に設置されたモータ37とを含み構成されている。また、ヒータ38は、水蒸気循環室w内における流入孔32とフィン36との間に設置されている。各水蒸気循環室w,w,w内におけるフィン36,36,36の回転速度及びヒータ38,38,38の発熱量は、制御装置60による設定次第で、各水蒸気対流装置31,31,31毎に適宜変更することができる。
【0028】
[油きり装置40]
油きり装置40は、第3エリアC内に冷水をミスト状に断続的に噴射することによって被調理物Tの表面からオイルを飛ばすための装置である。この油きり装置40は、第1ハウジング部5の天井部に取り付けられた冷水ミスト噴射部材41と、先端部が冷水ミスト噴射部材41に接続され、後端部が図示しない冷水タンクに接続された冷水ノズル45と、先端部が冷水ミスト噴射部材41に接続され、後端部が図示しないコンプレッサに接続されたエアーノズル(図示略)とを含み構成されている。そして、この油きり装置40は、冷水ノズル45から冷水ミスト噴射部材41に供給する常温(10〜30℃程度)の冷水を、エアーノズル(図示略)から冷水ミスト噴射部材41に供給するエアーの圧力で、該エアーと混合しつつ吹き飛ばすことによって、該冷水ミスト噴射部材41から冷水を第3エリアC内にミスト状に噴射する。該冷水をミスト状に噴射するタイミングは、被調理物Tが第3エリアC内の所定位置を通過するタイミングであり、該被調理物Tがきたことは図示しないセンサによって感知する。冷水をミスト状を噴射する時間、噴射する量及びエアーの圧力は、制御装置による設定次第で、適宜変更できるが、噴射する時間は、0.1〜0.2秒間程度であり、エアーの圧力は、0.2〜0.5MPa程度である。
【0029】
[移送装置50]
移送装置50は、被調理物Tを通路Pに沿って第1エリアA、第2エリアB、第3エリアCの順に移送するための装置である。この移送装置50は、調理炉4よりも通路Pの一方及び他方の長さ方向側にそれぞれ1対ずつ設けられた2対のスプロケット51−51,51−51と、該2対のスプロケット51−51,51−51に掛けられた網状ベルト52と、一方の1対のスプロケット51−51を駆動する駆動装置(図示略)とを含み構成されている。詳しくは、網状ベルト52は、2対のスプロケット51−51,51−51に架けられたことによって環状になっており、その環状になった網状ベルト52の上側部分は、通路Pを通過しており、下側部分は調理炉4の下方を通過している。また、駆動装置(図示略)は、動力源となるモータ(図示略)と、その動力を1対のスプロケット51−51に伝える動力伝達機構(図示略)とを含み構成されている。この駆動装置(図示略)で1対のスプロケット51−51を回転駆動する速さは、制御装置60による設定次第で適宜変更することができが、被調理物Tが調理炉4を通過するのにかかる時間は3〜30分程度である。
【0030】
[制御装置60]
制御装置60は、オイル付着装置10、加熱装置20、油きり装置40及び移送装置50を、入力された調理プログラムに従い制御するコンピュータである。この制御装置60は、一度入力された調理プログラムを記憶し、該調理プログラムが選択されれば即座に再現できるように構成されている。
【0031】
以上に示した揚げ物調理装置3を用いて実際に被調理物Tを調理する際のようすを{1}被調理物Tの搬入、{2}オイルミストによるオイルの付着、{3}過熱水蒸気による加熱、{4}冷水ミストによる油きり、{5}被調理物Tの搬出 の順に以下に説明する。
【0032】
{1}被調理物Tの搬入
調理炉4よりも移送方向の上流側において、作業者が、紛材を塗した被調理物Tを、網状ベルト52の上面に載置する。
【0033】
{2}オイルミストによるオイルの付着
次に、被調理物Tが移送装置50によって第1エリアAに移送される。そして、図示しないセンサにより被調理物Tが感知されると、オイル付着装置10からオイルがミスト状に噴射され、それによって、被調理物Tの表面にオイルが付着する。
【0034】
{3}過熱水蒸気による加熱
次に、被調理物Tが移送装置50によって第2エリアBに移送される。ここで、加熱装置20により送り込まれる過熱水蒸気熱風により、被調理物Tが芯まで加熱されるとともに、被調理物Tの表面に付着しているオイルが加熱させられることにより該表面が揚げられる。
【0035】
{4}冷水ミストによる油きり
次に、被調理物Tが移送装置50によって第3エリアCに移送される。そして、図示しないセンサにより被調理物Tが感知されると、油きり装置40から冷水がミスト状に噴射され、それによって、被調理物Tの表面からオイルが飛ばされる。
【0036】
{5}被調理物の搬出
次に、被調理物Tは移送装置50によって調理炉4よりも移送方向の下流側に移送され、ここで、作業者が、被調理物Tを回収する。
【0037】
本実施例1によれば、次の[A]〜[G]の効果を得ることができる。
[A]オイルをミスト状に噴射することによって被調理物Tの表面にオイルを効率よく行き渡らせるとともに、被調理物T及びその表面のオイルを過熱水蒸気で加熱することにより、少量のオイルで効率よく被調理物Tを揚げることができる。そのため、揚げ物独特の油による旨みを失わせることもなく、オイルの使用量を抑えることができる。そのため、健康的で、美味しく、かつ、環境によい食品を提供することができる。
[B]従来のように高温のオイルに被調理物を投入することがないため、投入の度にオイルの温度が下がってしまうという問題が解消される。そのため、温度変化によるオイルの劣化が起こり難く、より旨みを引き出すことができる。また、更に、劣化した古いオイルも発生しないため、該古いオイルの廃棄処分も不要となる。
[C]過熱水蒸気で加熱するため、旨みを被調理物T内に閉じ込めることができる。
[D]加熱装置20は、被調理物Tが移送されてくる位置よりも上方に上側の水蒸気噴射部材22を備え、該移送されてくる位置よりも下方に下側の水蒸気噴射部材22を備えているのに加え、被調理物Tが移送されてくる位置よりも上方に過熱水蒸気を送るための上側の流出孔33,33・・と、該移送されてくる位置よりも下方に過熱水蒸気を送るための下側の流出孔33,33・・とを備えているため、被調理物Tを上下均等に加熱することができる。
[E]冷水をミスト状に噴射して被調理物Tの表面からオイルを飛ばすので、オイル独特のギラギラ感、ベトベト感をなくし、より旨みを引き出すことができる。
[F]移送装置50を備えているので、被調理物Tを自動で、かつ、連続して揚げることができる。また、このように自動で、かつ、連続的に揚げるため、仕上がりの状態が略均一になり、品質が安定する。
[G]揚げ物の調理のみならず、オイル付着装置10や油きり装置40を休止させて使用した場合には、炊き物、煮物、蒸し物、焼き物等の調理にも使用することができる。
【実施例2】
【0038】
図5〜図13に示す本実施例2の調理装置63(揚げ物調理装置)は、次に示す調理炉70と、オイル付着装置110と、加熱装置120と、油きり装置160と、移送装置170と、オイル塗布装置180と、ベルトワイパー190と、ベルト洗浄装置200と、制御装置210とを含み構成されている。
【0039】
[調理炉70]
調理炉70は、被調理物Tを調理するための炉であって、支持フレーム65の上に載置された断熱材66の上に載置されている。この調理炉70は、被調理物Tを搬入する搬入口73と搬出する搬出口95とを備えるとともに、その搬入口73から搬出口95にまで水平方向に一直線状に開通した通路Pを備えている。その通路Pの長さ方向に沿って順に、被調理物Tにオイルを付着させるための第1エリアAと、被調理物Tを加熱するための第2エリアBと、被調理物Tの油きりを行うための第3エリアCとを備えている。詳しくは、この調理炉70は、次に示す第1エリアハウジング部71と、第2エリアハウジング部81と、第3エリアハウジング部91とを含み構成されている。
【0040】
第1エリアハウジング部71は、第1エリアAを通路Pの上方及び側方から囲んでおり、その通路Pの上流側の端が、前述の搬入口73となっている。また、この第1エリアハウジング部71の天井部には、第2エリアハウジング部81の入口83から流入した過熱水蒸気を逃がすための排気口76が貫設されており、その上方には、該過熱水蒸気を逃がす方向を横方向(水平方向)に案内するための排気案内部材77が取外し可能に取り付けられている。そして、この第1エリアハウジング部71と第2エリアハウジング部本体81aと後述する第3エリアハウジング部91とで、調理炉本体70aを構成している。
【0041】
第2エリアハウジング部81は、第2エリアBの上部を通路Pの上方及び側方から囲むとともに分解可能に構成された第2エリアハウジング部本体81aと、第2エリアBの下部を通路Pの下方及び側方から囲むとともに通路Pの長さ方向に直交する方向に引き出し可能に設けられた引出部81b,81bとから構成されている。そして、第2エリアハウジング部本体81aは、その通路Pの上流側の端に、移送装置170で被調理物Tを第1エリアAから搬入するための入口83を備え、通路Pの下流側の端に、移送装置170で被調理物Tを第3エリアCに搬出するための出口85を備えている。そして、入口83には、後述する移送用ベルト175の上面から該入口83の天井部下面までの入口開口高さh1を調節する入口開量調節機構84が設けられ、出口85には、後述する移送用ベルト175の上面から該出口85の天井部下面までの出口開口高さh2を調節する出口開量調節機構86が設けられている。そして、入口開量調節機構84は、入口83の上方に設けられて下端部が該入口83の天井部を構成する入口板84cと、手動で回すための入口開閉ハンドル84aと、該入口開閉ハンドル84aの回転力を上下方向の変位力に変えて入口板84cに伝える動力伝達機構84bとを含み構成されている。また、出口開量調節機構86は、出口85の上方に設けられて下端部が該出口85の天井部を構成する出口板86cと、手動で回すための出口開閉ハンドル86aと、該出口開閉ハンドル86aの回転力を上下方向の変位力に変えて出口板86cに伝える動力伝達機構86bとを含み構成されている。また、第2エリアハウジング部本体81aの内側には、通路Pをその上方及び側方から囲む邪魔板88が設けられるとともに、該邪魔板88を貫通して上下方向に延びて第2エリアBを通路Pの長さ方向に仕切る仕切89が設置されており、それによって、第2エリアハウジング部本体81aと邪魔板88との間の空間が複数の蒸気循環室B2,B2に仕切られるとともに、邪魔板88の内側のエリアも複数の加熱室B1,B1に仕切られている。また、各引出部81bには、該引出部81bを引き出す際に手で掴むための取っ手82,82が取付られている。また、引出部81b,81bの下方には、該引出部81b,81bの引出時に第2エリアハウジング部本体81aから落ちた油や隙間から漏れた油等を受けるためのトレー67,67が載置されている。
【0042】
第3エリアハウジング部91は、第3エリアCを通路Pの上方及び側方から囲んでおり、その通路Pの下流側の端が、前述の搬出口95となっている。また、この第3エリアハウジング部91の天井部には、第2エリアハウジング部81の出口85から流入した過熱水蒸気を逃がすための排気口96が貫設されており、その上方には、該過熱水蒸気を逃がす方向を横方向(水平方向)に案内するための排気案内部材97が取外し可能に取り付けられている。
【0043】
[オイル付着装置110]
オイル付着装置110は、第1エリアA内にオイルをミスト状に断続的に噴射することによって被調理物Tにオイルを付着させるための装置である。このオイル付着装置110は、第1エリアハウジング部71の天井部に取り付けられたオイルミスト噴射部材111と、先端部がオイルミスト噴射部材111に接続され、後端部が図示しないオイルタンクに接続されたオイル管115(オイルノズル)と、先端部がオイルミスト噴射部材111に接続され、後端部が図示しないコンプレッサに接続された空気管116(エアーノズル)とを含み構成されている。そして、このオイル付着装置110は、オイル管115(オイルノズル)からオイルミスト噴射部材111に供給する常温(10〜30℃程度)のオイルを、空気管116(エアーノズル)からオイルミスト噴射部材111に供給するエアーの圧力で、該エアーと混合しつつ吹き飛ばすことによって、該オイルミスト噴射部材111から第1エリアA内にオイルをミスト状に噴射する。該オイルをミスト状を噴射するタイミングは、被調理物Tが第1エリアA内の所定位置を通過するタイミングであり、該被調理物Tがきたことは図示しないセンサによって感知する。オイルをミスト状に噴射する時間、噴射する量及びエアーの圧力は、制御装置210による設定次第で、適宜変更できるが、噴射する時間は、0.1〜0.2秒間程度であり、エアーの圧力は、0.2〜0.5MPa程度である。
【0044】
[加熱装置120]
加熱装置120は、第2エリアB内に過熱水蒸気を送るとともに、該過熱水蒸気を加熱室B1,B1と蒸気循環室B2,B2とで対流させることによって、被調理物Tを加熱する装置である。この加熱装置120は、次に示す蒸気供給装置121と、蒸気対流装置151,151とを含み構成されている。
【0045】
[蒸気供給装置121]
蒸気供給装置121は、第2エリアBに過熱水蒸気を供給するための装置である。この蒸気供給装置121が供給する過熱水蒸気の温度及び流量は、制御装置210による設定次第で適宜変更できる。この蒸気供給装置121は、次に示す蒸気管122と、蒸気タンク125(及びその周辺機器126,127,128)と、水圧管132(及びその周辺機器133,134)と、水タンク135(及びその周辺機器136,137,138)と、給水管142(及びその周辺機器144)とを含み構成されている。
【0046】
蒸気管122は、蒸発タンク125内に発生した過熱水蒸気を第2エリアBに流す管である。この蒸気管122の後端部は蒸気タンク125に接続され、先端部は第2エリアハウジング部本体81a(蒸気循環室B2,B2)の天井部に接続されている。
【0047】
蒸気タンク125は、その底部に水を貯めるとともにその上方に過熱水蒸気を発生させるためのタンクである。この蒸気タンク125に対しては、その底部の水を加熱してタンク内に過熱水蒸気を発生させる蒸発装置128と、水量が所定の基準水量M以上あるか否かを検出するための基準水量センサ126と、水量が所定の最少限水量N以上あるか否か否かを検出する最少限水量センサ127とが設けられている。この蒸気タンク125内の過熱水蒸気の気圧及び温度は、制御装置210による設定次第で適宜変更できるが、気圧は0.3〜0.4MPa程度であり、温度は105〜150℃程度である。
【0048】
水圧管132は、水タンク135内の水を蒸気タンク125内に流す管である。この水圧管132の後端部は水タンク135に接続され、先端部は蒸気タンク125に接続されている。また、この水圧管132の中間部には、水タンク135側の水圧が蒸気タンク125側の水圧よりも大きくなった際には弁を開き、水タンク135側の水圧が蒸気タンク125側の水圧よりも小さくなった際には弁を閉じる水圧管逆止弁133と、制御装置210によって開閉制御される水圧管電磁弁134とが設けられている。そして、それらの水圧管逆止弁133と水圧管電磁弁134とが、蒸気タンク125内の水が水圧管132に逆流するのを防止する逆流防止機構133,134を構成している。なお、このように水圧管電磁弁134に加えて水圧管逆止弁133をも設けているのは、より確実に逆流を防止するためである。
【0049】
水タンク135は、蒸気タンク125に供給する水を貯めるためのタンクである。この水タンク135に対しては、エアーの圧力で該水タンク135内の水圧を蒸気タンク125内の水圧よりも高く加圧するコンプレッサ138が空気管139を介して接続されるとともに、水量が所定の下限水量L以上あるか否かを検出する下限センサ137と、水量が所定の上限水量H以上あるか否かを検出する上限センサ136とが設けられている。この水タンク135内のエアーの気圧は、制御装置210による設定次第で適宜変更できるが、0.3〜0.6MPa程度である。
【0050】
給水管142は、水タンク135内に水を供給する管である。この給水管142の後端部は給水源(蛇口等)に接続され、先端部は水タンク135に接続されている。そして、この給水管142の中間部には、制御装置210によって開閉制御される給水管電磁弁144が設けられている。
【0051】
次に、制御装置210による制御に基づいて蒸気タンク125内に水を供給する際の手順を説明する。まず、図10(a)に示すように、基準水量センサ126で蒸発タンク125内の水量が基準水量Mを下回ったと検知した際には、図10(b)に示すように、水圧管電磁弁134を開いて、水タンク135内の水を蒸気タンク125内に流入させる。そして、基準水量センサ126で蒸気タンク125内の水量が基準水量Mに達したと検知した際には、水圧管電磁弁134を閉じて水の供給を停止する。よって、蒸発タンク125内の水量は、常に、基準水量M付近に保たれる。また、万が一にも最少限水量センサ127で蒸気タンク125内の水量が最少限水量Nを下回ったと検知した際には、調理装置63全体の運転を緊急停止する。
【0052】
次に、制御装置210による制御に基づいて水タンク135内に水を供給する際の手順を説明する。まず、図11(a)に示すように、下限センサ137で水タンク135内の水量が下限水量Lを下回ったと検知した際には、図11(b)に示すように、水圧管電磁弁134を閉じるとともに、コンプレッサ138による加圧を停止して水タンク135内の水圧を減圧してから、給水管電磁弁144を開いて水タンク135内に水を供給する。そして、上限センサ136で水タンク135内の水量が上限水量Hに達したと検知した際には、給水管電磁弁144を閉じて水の供給を停止するとともに、コンプレッサ138による加圧を再開する。
【0053】
[蒸気対流装置151,151]
蒸気対流装置151,151は、第2エリアB内に供給された過熱水蒸気を加熱室B1,B1と蒸気循環室B2,B2とで対流させるための装置であって、各蒸気循環室B2,B2毎に1つずつ設けられている。各蒸気対流装置151は、加熱室B1内の空気及び過熱水蒸気を蒸気循環室B2内に流入させるための流入孔152と、蒸気循環室B2内に流入させた空気及び過熱水蒸気を加熱室B1内に流出させるための複数の流出孔153,153・・と、加熱室B1内の空気及び過熱水蒸気を流入孔152から水蒸気循環室B2内に流入させるため送風機155と、過熱水蒸気の温度を調節するためのヒータ158とを含み構成されている。
【0054】
詳しくは、流入孔152は、邪魔板88の天井部に貫設されている。また、複数の流出孔153,153・・は、上側の流出孔153,153と、それよりも下方に設けられた流出孔153,153,153とを含み構成されている。そして、上側の流出孔153,153は、邪魔板88の両側の側壁部に、通路Pの長さ方向に並べて貫設されている。また、下側の流出孔153,153,153は、邪魔板88の両側の側壁部における上側の流出孔153,153よりも下方に、該上側の流出孔153,153の真下に重ならないように通路Pの長さ方向にそれぞれずらして、該通路Pの長さ方向に並べて貫設されている。そして、各下側の流出孔153には、該流出孔153に蒸気循環室B2内の空気及び過熱水蒸気を案内するためのガイド154が設けられている。また、送風機155は、蒸気循環室B2内における流入孔152の真上に設置されたフィン155aと、該フィン155aを回転駆動する、第2エリアハウジング部本体81aの天井部の上に設置されたモータ155bとを含み構成されている。また、ヒータ158は、蒸気循環室B2内における第2エリアハウジング部本体81aの内側面と、邪魔板88の外側面との間に設けられている。各蒸気循環室B2,B2内におけるフィン155a,155aの回転速度及びヒータ158,158・・の発熱量は、制御装置210による設定次第で、各蒸気対流装置151,151毎に適宜変更することができる。
【0055】
[油きり装置160]
油きり装置160は、第3エリアC内に冷水をミスト状に断続的に噴射することによって被調理物Tの表面からオイルを飛ばすための装置である。この油きり装置160は、第3エリアハウジング部91の天井部に取り付けられた冷水ミスト噴射部材161と、先端部が冷水ミスト噴射部材161に接続され、後端部が図示しない冷水タンクに接続された冷水管165(冷水ノズル)と、先端部が冷水ミスト噴射部材161に接続され、後端部が図示しないコンプレッサに接続された空気管166(エアーノズル)とを含み構成されている。そして、この油きり装置160は、冷水管165(冷水ノズル)から冷水ミスト噴射部材161に供給する常温(10〜30℃程度)の冷水を、空気管166(エアーノズル)から冷水ミスト噴射部材161に供給するエアーの圧力で、該エアーと混合しつつ吹き飛ばすことによって、該冷水ミスト噴射部材161から冷水を第3エリアC内にミスト状に噴射する。該冷水をミスト状に噴射するタイミングは、被調理物Tが第3エリアC内の所定位置を通過するタイミングであり、該被調理物Tがきたことは図示しないセンサによって感知する。冷水をミスト状を噴射する時間、噴射する量及びエアーの圧力は、制御装置210による設定次第で、適宜変更できるが、噴射する時間は、0.1〜0.2秒間程度であり、エアーの圧力は、0.2〜0.5MPa程度である。
【0056】
[移送装置170]
移送装置170は、被調理物Tを通路Pに沿って第1エリアA、第2エリアB、第3エリアCの順に移送するための装置である。この移送装置170は、次に示すベルト支持機構171と、移送用ベルト175と、ベルト駆動装置とを含み構成されている。
【0057】
ベルト支持機構171は、移送用ベルト175を環状に支持するための機構である。このベルト支持機構171は、調理炉70よりも通路Pの一方及び他方の長さ方向側にそれぞれ1対ずつ設けられた2対のスプロケット172−172,172−172と、調理炉70よりも下方に設けられた複数個のローラ173,173・・とからなる。
【0058】
移送用ベルト175は、被調理物Tを搬入口73から第1エリアA、第2エリアB、第3エリアCを通過させて搬出口95にまで移送するための網状のベルトであって、ベルト支持機構171によって次に示す環状に支持されている。すなわち、この移送用ベルト175は、搬入口73から通路Pを通過して搬出口95にまで延びる移送部175aと、該移送部175aの搬出口95側の端から調理炉70の下方を通過して移送部175aの搬入口73側の端に繋がる戻り部175bとからなるとともに、戻り部175bの中間部には下方に突出する第1突出部175xと第2突出部175yとが形成される環状に架けられている。
【0059】
駆動装置(図示略)は、一対のスプロケット172−172を回転駆動することによって、移送用ベルト175を駆動する装置であって、動力源となるモータ(図示略)と、その動力を1対のスプロケット172−172に伝える動力伝達機構(図示略)とを含み構成されている。この駆動装置(図示略)で1対のスプロケット172−172を回転駆動する速さは、制御装置210による設定次第で適宜変更することができるが、被調理物Tが調理炉70を通過するのにかかる時間は3〜30分程度である。
【0060】
[オイル塗布装置180]
オイル塗布装置180は、移送用ベルト175に被調理物Tが焦げ付かないように該移送用ベルト175にオイルを塗るための装置である。このオイル塗布装置180は、次に示すオイル槽182と、オイル塗布ローラ184と、ローラ移動装置185とを含み構成されている。
【0061】
オイル槽182は、オイルを貯めるための移送用ベルト175の幅方向に延びる上方に開口した槽であって、支持フレーム65に取り付けられたオイル塗布装置フレーム181に対して水平方向に変位可能に取り付けられている。また、オイル塗布ローラ184は、オイル槽182のオイルUを移送用ベルト175に塗布するための該移送用ベルト175の幅方向に延びるローラであって、オイル槽182の両端に突設されて上方に突出したローラ支持フレーム183,183に回転可能に支持されている。このオイル塗布ローラ184は、下部が該オイル槽182のオイルUに浸かるとともに、使用位置に配された際には、該下部よりも上方の部分が移送用ベルト175に当接して該移送用ベルト175が駆動されるのに従い回転する。また、ローラ移動装置185は、オイル槽182をオイル塗布装置フレーム181に対して水平方向に変位させることによって、オイル塗布ローラ184を前述の使用位置と移送用ベルト175に当接しない不使用位置との間で駆動する装置であって、オイル塗布装置フレーム181に固着されている。
【0062】
そして、移送用ベルト175にオイルを塗布する必要のある調理(焦げ付き易い調理)をする際には、図12(a)に示すように、制御装置210による制御に基づきローラ移動装置185でオイル塗布ローラ184を使用位置に移動させる。その一方、移送用ベルト175にオイルを塗布する必要のない調理(焦げ付き難い調理)をする際には、図12(b)に示すように、制御装置210による制御に基づきローラ移動装置185でオイル塗布ローラ184を不使用位置に移動させる。
【0063】
[ベルトワイパー190]
ベルトワイパー190は、移送用ベルト175に塗布したオイルや付着した被調理物Tの粕などを拭き取るための部材であって、次に示す拭布193と、布押圧部材194とを含み構成されている。
【0064】
拭布193は、移送用ベルト175を拭くための該移送用ベルトの幅方向に延びる布であって、支持フレーム65に取り付けられたベルトワイパーフレーム191に貫設された取付孔192,192に取り付けられてる。また、布押圧部材194は、取付孔192,192に取り付けられた拭布193を弾性力で移送用ベルト175に押圧するための弾性部材であって、ベルトワイパーフレーム191に固着されている。
【0065】
[ベルト洗浄装置200]
ベルト洗浄装置200は、移送用ベルト175の第1突出部175xの下方に設けられて上方に開口した、洗浄液Xを入れる洗浄槽201と、該洗浄槽201をエアーの圧力で昇降させる洗浄槽昇降装置202(エアーシリンダ)と、移送用ベルト175の第2突出部175yの下方に設けられて上方に開口した、濯ぎ水Yを入れる濯ぎ槽205と、該濯ぎ槽205をエアーの圧力で昇降させる濯ぎ槽昇降装置206(エアーシリンダ)とを含み構成されている。
【0066】
次に、制御装置210による制御に基づいて、該ベルト洗浄装置200で移送用ベルト175を洗浄する際の様子を以下に説明する。
【0067】
まず、図13(a)に示すように、洗浄槽201及び濯ぎ槽205を下げた状態から、図13(b)に示すように、洗浄槽201を洗浄槽昇降装置202で上昇させて第1突出部175xを洗浄液Xに浸けるとともに、濯ぎ槽205を濯ぎ槽昇降装置206で上昇させて第2突出部175yを濯ぎ水Yに浸ける。また、加熱装置120を稼動させて第2エリアB内に過熱水蒸気を対流させる。そして、その状態のまま、移送用ベルト175をベルト駆動装置(図示略)で駆動して数週(3週くらい)回すことにより、該移送用ベルト175の各部を暖めながら洗浄し濯ぐ。そして、洗浄終了後は、洗浄槽201を洗浄槽昇降装置202で降下させて第1突出部175xを洗浄液Xから退出させるとともに、濯ぎ槽205を濯ぎ槽昇降装置206で降下させて第2突出部175yを濯ぎ水Yから退出させる。
【0068】
なお、以上では、洗浄槽201と濯ぎ槽205とを同時に上昇させる場合を示したが、場合によっては、まずは、洗浄槽201のみを上昇させるとともに移送用ベルト175を回すことにより該移送用ベルト175を洗浄し、次に、洗浄槽201を下降させ濯ぎ槽205を上昇させるとともに移送用ベルト175を回すことにより該移送用ベルト175を濯ぐようにしてもよい。
【0069】
[制御装置210]
制御装置210は、オイル付着装置110、加熱装置120(蒸気供給装置121及び蒸気対流装置151)、油きり装置160、移送装置170、オイル塗布装置180及びベルト洗浄装置200を制御する装置(コンピュータ)であって、それらの各装置110,120(121,151),160,170,180,200の一部を構成している。この制御装置210は、入力された調理プログラムに従い各装置を制御して調理を行う。また、この制御装置210は、一度入力された調理プログラムを記憶し、該調理プログラムが選択されれば即座に再現できるように構成されている。また、この制御装置210には、決められた時間に加熱装置120の運転を開始して、調理炉70内の第2エリアBを予め暖めておくためのスタートタイマーが設けられている。
【0070】
以上に示した調理装置63を用いて実際に被調理物Tを調理する際のようすを{1}被調理物Tの搬入、{2}オイルミストによるオイルの付着、{3}過熱水蒸気による加熱、{4}冷水ミストによる油きり、{5}被調理物Tの搬出 の順に以下に説明する。
【0071】
{1}被調理物Tの搬入
調理炉70よりも移送方向の上流側(搬入口73の外)において、作業者が、紛材を塗した被調理物Tを、移送用ベルト175の上面に載置する。
【0072】
{2}オイルミストによるオイルの付着
次に、被調理物Tが移送装置170によって第1エリアAに移送される。そして、図示しないセンサにより被調理物Tが感知されると、オイル付着装置110からオイルがミスト状に噴射され、それによって、被調理物Tの表面にオイルが付着する。
【0073】
{3}過熱水蒸気による加熱
次に、被調理物Tが移送装置170によって第2エリアBに移送される。ここで、加熱装置120により送り込まれる過熱水蒸気熱風により、被調理物Tが芯まで加熱されるとともに、被調理物Tの表面に付着しているオイルが加熱させられることにより該表面が揚げられる。
【0074】
{4}冷水ミストによる油きり
次に、被調理物Tが移送装置170によって第3エリアCに移送される。そして、図示しないセンサにより被調理物Tが感知されると、油きり装置160から冷水がミスト状に噴射され、それによって、被調理物Tの表面からオイルが飛ばされる。
【0075】
{5}被調理物の搬出
次に、被調理物Tは移送装置170によって調理炉70よりも移送方向の下流側(搬出口95の外)に移送され、ここで、作業者が、被調理物Tを回収する。
【0076】
本実施例2によれば、次の[A]〜[N]の効果を得ることができる。
[A]オイルをミスト状に噴射することによって被調理物Tの表面にオイルを効率よく行き渡らせるとともに、被調理物T及びその表面のオイルを過熱水蒸気で加熱することにより、少量のオイルで効率よく被調理物Tを揚げることができる。そのため、揚げ物独特の油による旨みを失わせることもなく、オイルの使用量を抑えることができる。そのため、健康的で、美味しく、かつ、環境によい食品を提供することができる。
[B]従来のように高温のオイルに被調理物を投入することがないため、投入の度にオイルの温度が下がってしまうという問題が解消される。そのため、温度変化によるオイルの劣化が起こり難く、より旨みを引き出すことができる。また、更に、劣化した古いオイルも発生しないため、該古いオイルの廃棄処分も不要となる。
[C]過熱水蒸気で加熱するため、旨みを被調理物T内に閉じ込めることができる。
[D]加熱装置120は、邪魔板88は下方に開口しており、また、該邪魔板88の側面には流出孔153,153・・が設けられているため、被調理物Tを上下均等に加熱することができる。
[E]冷水をミスト状に噴射して被調理物Tの表面からオイルを飛ばすので、オイル独特のギラギラ感、ベトベト感をなくし、より旨みを引き出すことができる。
[F]移送装置170を備えているので、被調理物Tを自動で、かつ、連続して揚げることができる。また、このように自動で、かつ、連続的に揚げるため、仕上がりの状態が略均一になり、品質が安定する。
[G]揚げ物の調理のみならず、オイル付着装置110や油きり装置160を休止させて使用した場合には、炊き物、煮物、蒸し物、焼き物等の調理にも使用することができる。
【0077】
[H]第2エリアハウジング部81の引出部81b,81bは引き出し可能になっているため、該第2エリアBの清掃が簡単である。また、第2エリアハウジング部本体81aも分解可能に構成されているため、この点でも第2エリアBの清掃が簡単である。
[I]第2エリアハウジング部81の入口83及び出口85には、それぞれ入口開量調節機構84及び出口開量調節機構86がついているため、それらで入口83及び出口85を被調理物Tが通り得る必要最小限にまで小さく閉じることにより、第2エリアB内の保温性を高めることができる。
[J]第1エリアハウジング部71及び第3エリアハウジング部91には、排気口76,96が設けられているため、第2エリアハウジング部81の入口83から第1エリアハウジング部71に流入した過熱水蒸気、及び第2エリアハウジング部81の出口85から第3エリアハウジング部91に流入した過熱水蒸気を素早く排気することができる。
[K]水タンク135内の水圧を蒸気タンク125内の水圧よりも高く加圧するコンプレッサ138を備えているため、蒸気タンク125内に高温の過熱水蒸気を発生させることにより該蒸気タンク125内が高圧になった場合にも、該蒸気タンク125内に水を問題なく供給することができる。また、その際の加圧方法も、コンプレッサ138によるエアーの圧力での加圧であるため、スクリューポンプで加圧する場合よりも効率的であり、また、コストも低く抑えることができる。
[L]オイル塗布装置180があるため、移送用ベルト175にオイルを簡単に塗布することができる。
[M]ベルトワイパー190があるため、移送用ベルト175を簡単に拭くことができる。
[N]ベルト洗浄装置200があるため、移送用ベルト175を簡単に洗浄することができる。
【0078】
なお、本発明は上記実施例1,2に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で各部の構成や形状を任意に変更して実施することもできる。
【符号の説明】
【0079】
3 揚げ物調理装置
10 オイル付着装置
20 加熱装置
40 油きり装置
50 移送装置
63 揚げ物調理装置
70 調理炉
71 第1エリアハウジング部
73 搬入口
76 排気口
81 第2エリアハウジング部
83 入口
84 入口開量調節機構
85 出口
86 出口開量調節機構
91 第3エリアハウジング部
95 搬出口
96 排気口
110 オイル付着装置
120 加熱装置
160 油きり装置
170 移送装置
180 オイル塗布装置
182 オイル槽
184 オイル塗布ローラ
185 ローラ移動装置
190 ベルトワイパー
193 拭布
194 布押圧部材
A 第1エリア
B 第2エリア
C 第3エリア
T 被調理物
U オイル槽のオイル
h1 入口開口高さ
h2 出口開口高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルをミスト状に噴射して被調理物(T)の表面にオイルを付着させるオイル付着装置(10,110)と、該オイル付着装置(10,110)でオイルを付着させた後に、前記被調理物(T)に100℃以上の過熱水蒸気を送り、該被調理物(T)を加熱するとともに、該被調理物(T)の表面に付着しているオイルを加熱して該表面を揚げる加熱装置(20,120)とを備えた揚げ物調理装置。
【請求項2】
前記被調理物(T)を第1エリア(A)、第2エリア(B)の順に移送する移送装置(50,170)を備え、
前記オイル付着装置(10,110)は、前記第1エリア(A)に前記オイルをミスト状に噴射し、
前記加熱装置(20,120)は、前記第2エリア(B)に前記過熱水蒸気を送る請求項1記載の揚げ物調理装置。
【請求項3】
前記加熱装置(20,120)で前記被調理物(T)を加熱するとともに該被調理物(T)の表面を揚げた後に、40℃以下の冷水をミスト状に噴射して該表面からオイルを飛ばす油きり装置(40,160)を備えた請求項1又は2記載の揚げ物調理装置。
【請求項4】
前記被調理物(T)を第1エリア(A)、第2エリア(B)、第3エリア(C)の順に移送する移送装置(50,170)を備え、
前記オイル付着装置(10,110)は、前記第1エリア(A)に前記オイルをミスト状に噴射し、
前記加熱装置(20,120)は、前記第2エリア(B)に前記過熱水蒸気を送り、
前記油きり装置(40,160)は、前記第3エリア(C)に前記冷水をミスト状に噴射する請求項3記載の揚げ物調理装置。
【請求項5】
前記第1エリア(A)を囲むとともに、前記移送装置(170)で前記被調理物(T)を搬入する搬入口(73)を備えた第1エリアハウジング部(71)と、前記第2エリア(B)を囲むとともに、前記移送装置(50)で前記被調理物(T)を前記第1エリア(A)から搬入する入口(83)と前記第3エリア(C)に搬出する出口(85)とを備えた第2エリアハウジング部(81)と、前記第3エリア(C)を囲むとともに、前記移送装置(170)で前記被調理物(T)を搬出する搬出口(95)を備えた第3エリアハウジング部(71)とを含み構成された調理炉(70)を備え、
前記第1エリアハウジング部(71)の天井部には、前記第2エリア(B)から前記入口(83)を通って該第1エリア(A)に流入した過熱水蒸気を逃がすための排気口(76)が設けられ、前記第3エリアハウジング部(91)の天井部には、前記第2エリア(B)から前記出口(85)を通って該第3エリア(C)に流入した過熱水蒸気を逃がすための別の排気口(96)が設けられた請求項4記載の揚げ物調理装置。
【請求項6】
前記第2エリア(B)を囲むとともに入口(83)と出口(85)とを備えた第2エリアハウジング部(81)を備え、
前記移送装置(170)は、前記入口(83)及び前記出口(85)を通過する移送用ベルト(175)と、該移送用ベルトを駆動するベルト駆動装置とを含み構成され、
前記入口(83)には、前記移送用ベルト(175)の上面から該入口(83)の天井部下面までの入口開口高さ(h1)を調整する入口開量調節機構(84)が設けられ、前記出口(85)には、前記移送用ベルト(175)の上面から該出口(85)の天井部下面までの出口開口高さ(h2)を調整する出口開量調節機構(86)が設けられた請求項2又は4、5に記載の揚げ物調理装置。
【請求項7】
前記移送装置(170)は、前記被調理物(T)を載せる網状の移送用ベルト(175)と、該移送用ベルトを駆動するベルト駆動装置とを含み構成され、
オイルを貯めるオイル槽(182)と、下部が該オイル槽のオイルに浸かるとともに該下部よりも上方の部分が前記移送用ベルト(175)に当接して該移送用ベルトが駆動されるのに従い回転するオイル塗布ローラ(184)とを含み構成されたオイル塗布装置(180)を備えた請求項2又は4〜6のいずれか一項に記載の揚げ物調理装置。
【請求項8】
前記オイル塗布装置(180)は、前記オイル供給ローラ(184)を前記移送用ベルト(175)に当接する使用位置と当接しない不使用位置との間で駆動するローラ移動装置(185)を含み構成された請求項7に記載の揚げ物調理装置。
【請求項9】
前記移送装置(170)は、前記被調理物(T)を載せる網状の移送用ベルト(175)と、該移送用ベルトを駆動するベルト駆動装置とを含み構成され、
前記移送用ベルト(175)を拭くための拭布(193)と、該拭布(193)を前記移送用ベルトに押圧する布押圧部材(194)とを含み構成されたベルトワイパー(190)を備えた請求項2又は4〜8のいずれか一項に記載の揚げ物調理装置。
【請求項10】
オイルをミスト状に噴射して被調理物(T)の表面にオイルを付着させた後、前記被調理物(T)に100℃以上の過熱水蒸気を送り、該被調理物(T)を加熱するとともに、該被調理物(T)の表面に付着しているオイルを加熱して該表面を揚げる揚げ物調理方法。
【請求項11】
前記過熱水蒸気で前記被調理物(T)を加熱するとともに該被調理物(T)の表面を揚げた後、40℃以下の冷水をミスト状に噴射して該表面からオイルを飛ばす請求項10記載の揚げ物調理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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