説明

揚重装置及びそれを用いた着床管理方法

【課題】停止時の荷台の跳ね上がりや、吊索の乱巻き及び外れなどを防止するようにした。
【解決手段】揚重装置1は、荷台2と、荷台2に設けたシーブ13、23を巻き回して先端を建築物の周囲躯体の所定箇所に固定して配置されたワイヤーロープ11、21と、ワイヤーロープ11、21を巻き取り又は送出することで荷台2を昇降させるウインチ12、22と、ワイヤーロープ11、21の先端にワイヤーロープ11、21の張力を検出するロードリミッタ4とを備えている。荷台2が到着階F1のアウトリガー受け台に当接し、ワイヤーロープ11、21が低張力となっていることをロードリミッタ4によって検出したときに、荷台2の着床が確認され、ウインチ12、22が停止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築工事などで資機材を載せた荷台を昇降させて揚重する揚重装置及びそれを用いた着床管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、仮設エレベータ等の建設工事用の揚重装置には、2台のウインチを用いて荷台を昇降させるロープ式の揚重装置がある。このロープ式の揚重装置は、荷台の両端がワイヤーロープでそれぞれ懸吊され、これら2本のワイヤーロープの端部にそれぞれ取り付けられたウインチなどで荷台を昇降させるものである(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1は、ウインチのワイヤーロープに連結されていて昇降可能な荷台が設けられ、その荷台を任意の地階床面に着床させるときに、リミットスイッチ(着床確認スイッチ)により着床を確認してウインチを停止させると共に、荷台に設けたシリンダのロッド先端を荷台の左右両側に伸ばして床面に預けて停止させるものである。
【特許文献1】特開2001−213584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の揚重装置では、着床確認スイッチにより荷台が着床したとき、ウインチの駆動を停止させると、実際のワイヤーロープの張力が不明であるという欠点があり、ワイヤーロープに張力がかかっている場合には、荷台上の積荷を取り除いたときに荷台が跳ね上がるという問題があった。また、その場合、積荷を取り除いた後、荷台が所定の着床位置より上方に移動してワイヤーロープが弛んだ状態、すなわちウインチが巻き出し過ぎの状態となることから、再びウインチを始動させたときにウインチが乱巻きしたり、シーブからワイヤーロープが外れるといった問題があった。
【0004】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、停止時の荷台の跳ね上がりや、吊索の乱巻き及び外れなどを防止するようにした揚重装置及びそれを用いた着床管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る揚重装置は、荷台と、荷台を吊索で吊って昇降させる巻上機とを備えた揚重装置であって、吊索は、荷台に設けた滑車を巻き回し、吊索の先端が建築物の周囲躯体の所定箇所に固定され、吊索の先端に吊索の張力を検出する張力検知装置を備え、荷台が着床階の周囲躯体に係止したとき、吊索の低張力状態を張力検知装置によって検出し、巻上機を停止させるように構成されていることを特徴としている。
また、本発明に係る揚重装置を用いた着床管理方法は、荷台と、荷台に設けた滑車を巻き回して先端を建築物の周囲躯体の所定箇所に固定された吊索と、吊索を巻き取り又は送出することで荷台を昇降させる巻上機と、吊索の先端に吊索の張力を検出する張力検知装置とを備えた揚重装置を用いた着床管理方法であって、荷台が着床階の周囲躯体に係止し、吊索の低張力を張力検知装置によって検出したときに荷台の着床が確認され、巻上機を停止させるようにしたことを特徴としている。
本発明では、荷台が所定の着床階の周囲躯体に係止して停止する。さらに、ウインチは継続して吊索を送出することから、この吊索の張力は低下することになる。このときの低張力を吊索のそれぞれの固定端に設けられている張力検知装置により検出したとき、着床確認となり巻上機が停止する。このときの荷台の吊索には、張力が小さい状態で停止しているため、荷台が跳ね上がることなく荷台上の荷を取り除くことができる。
【0006】
また、本発明に係る揚重装置では、荷台の両端位置を検知し、荷台の姿勢を水平状態に補正するための傾斜調整手段が設けられていることが好ましい。
また、本発明に係る揚重装置を用いた着床管理方法は、荷台の着床前に、荷台の姿勢が水平状態となるように補正されることが好ましい。
本発明では、荷台の両端位置を検知し、巻上機の駆動速度を変速させ、荷台の両端部の昇降速度(上下動速度)に差をつけて荷台の傾斜調整を行うことで、荷台の姿勢を水平状態に補正させることができる。これにより、荷台は、着床位置への着床が正確に行えるようになる。
【0007】
また、本発明に係る揚重装置では、荷台の着床前に荷台の位置を検出して減速走行させるようにする荷台減速手段が設けられていることが好ましい。
また、本発明に係る揚重装置を用いた着床管理方法は、荷台の着床前に荷台の位置を検出して減速走行させることが好ましい。
本発明では、荷台は減速されて着床されるため、その着床時の衝撃が緩和され、荷台の損傷を防ぐことができる。
【0008】
また、本発明に係る揚重装置では、荷台には、略水平方向に伸縮するアウトリガーが設けられていることが好ましい。
本発明では、荷台の着床前に、荷台からアウトリガーを張り出し、例えば着床階に設けたアウトリガー用の受け台にアウトリガーを係止させることで、荷台を着床させることができる。
【0009】
また、本発明に係る揚重装置では、荷台を吊り下げる滑車を備え、巻上機によって上下方向に移動可能な移動架台が設けられ、移動架台の滑車を介して荷台が設けられていることが好ましい。
本発明では、必要に応じて移動架台を最上階の床面より下方に移動させることで、最上階に揚重装置が配置されない状態となり、作業スペースを有効利用することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の揚重装置及びそれを用いた着床管理方法によれば、荷台を吊っている吊索の張力が低張力であることを張力検知装置で検出することで荷台の着床を確認してから、巻上機を停止させるため、着床中の荷台の吊索には張力がかかっていない状態とすることができる。そのため、荷台上の積荷を取り除いたときの荷台の跳ね上がりを防止することができ、揚重作業の安全性を向上できる。また、荷台の積荷を取り除いた後の吊索が弛むことがなく、巻上機における巻き出し過ぎを防止できることから、巻上機の乱巻きや吊索が滑車から外れるといった揚重装置の故障やトラブルを防止することができ、作業の効率化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の揚重装置及びそれを用いた着床管理方法の実施の形態について、図1乃至図7に基づいて説明する。
図1は本発明の実施の形態による揚重装置の全体を示す立面図、図2は揚重装置の昇降手段を示す側面図、図3は図1に示す揚重装置の荷台のA−A線矢視図、図4は図3に示す揚重装置の荷台のB−B線矢視図、図5は図3に示す揚重装置の荷台のC−C線断面図、図6(a)、(b)は揚重装置の着床手順を説明する工程図、図7(a)、(b)は図6(b)に続く揚重装置の着床手順を説明する工程図、図8は荷台における着床停止管理を示すフローチャートである。
【0012】
図1に示すように、揚重装置1は、例えば建設工事において、床スラブの開口部Rを利用して資材や人員等を載せる荷台2を鉛直方向に昇降させる運搬装置である。
荷台2は、例えば施工中の最上階である発進階F0と最下階である到着階F1との間を上下移動するものであり、発進階F0及び到着階F1で停止されるだけでなく、その途中にある途中階Faでも停止可能である。
【0013】
図1に示すように、揚重装置1には、荷台2の両端部2a、2bを吊ってそれぞれ昇降させる2つの昇降手段(第一昇降手段10、第二昇降手段20)が備えられており、これら第一及び第二昇降手段10,20を同期駆動させて荷台2の両端部2a、2bを同速度で同方向にそれぞれ上下動させることで、荷台2が鉛直方向に昇降される。
【0014】
また、揚重装置1には、開口部Rを上下方向に移動可能とされ、鋼材などで枠組みされてなる移動架台3が設けられている。この移動架台3は、揚重作業中は、図1に示すように最上階をなす発進階F0より上方に移動架台3の略上半分を起立させた状態で配置されている。そして、荷台2は、この移動架台3の天井部3aに後述するワイヤーロープ11、21、シーブ13、23を介して懸吊されている。
【0015】
図2に示すように、第一昇降手段10は、ワイヤーロープ11、11(吊索)と、ウインチ12(巻上機)と、複数のシーブ13、13、…(滑車)とから概略構成されており、荷台2の一端部2a(2b)を吊るワイヤーロープ11をウインチ12で巻き取り或いは送り出すことで荷台2を鉛直方向に上下動(昇降)させるものである。ウインチ12は、途中階Faの床面に設置されている。
なお、第一昇降手段10では、1台のウインチ12で2本のワイヤーロープ11、11を略平行に送出させているが、以下の説明では必要に応じて、一方のワイヤーロープ11であるものとして説明する。
【0016】
ワイヤーロープ11が巻き回されるシーブ13は、発進階F0の下面側の反力壁6に設けられている第一シーブ13a、13aと、移動架台3の床面3bに設けられている第二シーブ13b、13b、13bと、移動架台3の天井フレーム3aに設けられている第三シーブ13c、13c、13cと、荷台2の一端部2a(2b)に設けられている第四シーブ13d、13dとからなる。
そして、ワイヤーロープ11は、これらのシーブ13a、13b、13c、13dを適宜巻き回し(本実施の形態では、ウインチ12側から順に第一シーブ13a、第二シーブ13b、第三シーブ13c、第四シーブ13d、第三シーブ13c、第四シーブ13d、第三シーブ13c、第二シーブ13b、第一シーブ13a、第二シーブ13bの順で巻き回されている)、その先端11aが反力壁6に固定されている。つまり、荷台2は、第三シーブ13cにより吊られた状態となり、ウインチ12でワイヤーロープ11を巻き取ると上昇し、ワイヤーロープ11を送り出すと下降する。
また、図1に示す第二昇降手段20も、第一昇降手段10と同様の構成をなし、ワイヤーロープ21、21(吊索)と、ウインチ22、22(巻上機)と、複数のシーブ23、23、…(滑車)とから概略構成されている。そして、シーブ23の配置、数量などの第一昇降手段10と同様の構成をなしている。
【0017】
そして、図2に示すように、ワイヤーロープ11(21)の先端(固定端11a、22a)は、ロードリミッタ4(張力検知装置)を介して反力壁6(周囲躯体)に固定されている。このロードリミッタ4、4では、荷台2が各階F0、F1、Faに着床したことを確認するためにワイヤーロープ11、21にかかる張力が低張力となったことを検出することができる。本実施の形態で使用するロードリミッタ4には、吊り荷の質量のみを検出して過負荷を防止する汎用の装置を採用できる。
なお、ロードリミッタ4は、ワイヤーロープ11(21)における低張力、つまり無負荷状態、或いは無負荷状態に近い所定の低張力を検出できるように設定しておく。
【0018】
ここで、移動架台3を上下方向に移動させる構成について図1に基づいて概略説明しておく。
先ず、移動架台3の縦枠3cの略中央には、略水平方向に伸縮可能な張出し固定部材3A、3Aが設けられていて、移動架台3が発進階F0より上方に起立した状態で配置される場合には、この張出し固定部材3A、3Aを張り出して発進階F0の床スラブに載置させるようにして係止させることで移動架台3を固定させている。そして、移動架台3は、上述した第一及び第二昇降手段10、20を使用して昇降することができる。すなわち、移動架台3を下降させて発進階F0の床面より下方に配置させる場合など、張出し固定部材3A、3Aを縮めて固定を解除し、ウインチ12、22でワイヤーロープ11、12を巻き出すことで移動架台3は下方に移動し、反対にウインチ12、22を巻き取ることで、移動架台3を上昇移動させることができる。このように、必要に応じて移動架台3を最上階の床面より下方に移動させることで、最上階に揚重装置1が配置されない状態となり、作業スペースを有効利用することができる。
【0019】
次に、図3に示すように、荷台2は、荷台本体30と、荷台本体30の下面に固定されて荷台本体30の側面より略水平方向に伸縮可能な略棒状の着床用アウトリガー31、31とからなる。この着床用アウトリガー31は、荷台2の両側に夫々2台ずつ配置されている。
そして、図4及び図5に示すように、着床階をなす各発進階F0、到着階F1、途中階Faの開口部R側の周囲躯体には、張り出した荷台2の着床用アウトリガー31、31の先端部31a、31aを下方より受けるように係止させるアウトリガー受け台5、5が設けられている。すなわち、下降中の荷台2を所定の着床階に停止させるときには、床用アウトリガー31、31を張り出しておくことで、このアウトリガー31、31がアウトリガー受け台5、5に接触して停止することになる。
【0020】
また、図1に示すように、揚重装置1の発進階F0、到着階F1及び途中階Faには、荷台2に搭載された着床用アウトリガー31、31を伸縮させるために荷台2の位置を検出するアウトリガー張出し位置センサー41、42(このアウトリガー張出し位置センサー41、42と後述する検出用反射板32、32とを併せたものが本発明の傾斜調整手段、荷台減速手段に相当する)が設けられている。このアウトリガー張出し位置センサー41、42は、荷台2の昇降経路(開口部R)の両側方にそれぞれ配設されており、両側のアウトリガー張出し位置センサー41、42の検知高さは同じ高さに設定されている。
【0021】
そして、上述したアウトリガー張出し位置センサー41、42は、例えば反射型の光電センサーをなし、荷台2の両端部2a、2bには、そのアウトリガー張出し位置センサー41、42からの光を反射させるための検出用反射板32、32(傾斜調整手段、荷台減速手段)がそれぞれ外側(センサー側)に向けて配設されている。
【0022】
アウトリガー張出し位置センサー41、42は、検出用反射板32、32を検出したときに、着床用アウトリガー31、31を張り出す制御のほかに、荷台2の姿勢を水平に補正する制御と、荷台の速度を減速させるように切り替える制御とが行える構成を備えている。
すなわち、揚重装置1の傾きを調整するときには、アウトリガー張出し位置センサー41、42によって検出用反射板32、32を検出し、第一及び第二昇降手段10、20のうちの一方の駆動速度を変速させ、荷台2の両端部2a、2bの昇降速度(上下動速度)に差をつけて荷台2の傾斜調整を行うようにすることができる。
【0023】
次に、揚重装置1における着床管理方法について図6、図7、図8などを参照しながら説明する。
ここでは、発進階F0から出発した荷台2が到着階F1に着床する場合を一例として説明する。なお、図6及び図7は、説明の都合上、移動架台3を省略し、ワイヤーロープ11、21の巻き回しを簡略化したものとする。
図1及び図6(a)に示すように、積荷Mを載せた荷台2が発進階F0を出発し、所定速度をもって下降する(図8のステップS1)。このとき、第一及び第二昇降手段10、20のワイヤーロープ11、21には、積荷Mおよび荷台2の負荷が掛かっている。なお、荷台2は下降するにしたがって、揺れの影響などにより少しずつ水平状態でなくなり傾くものとされる。
【0024】
そして、図6(b)に示すように、降下する荷台2の端部2a(2b)がアウトリガー張出し位置センサー41(42)により荷台2の検出用反射板32を検知(図8のステップS2)した時点で、荷台2の姿勢が水平状態に補正される(図8のステップS3)。この荷台2の傾斜調整の具体的な方法として、例えば、両側のアウトリガー張出し位置センサー41、42の検知の時間差から荷台2の傾斜角度を算出し、その傾斜角度がほぼゼロとなるように両ウインチ12、22のそれぞれの巻上げ速度を調整(例えば、一方のウインチ12(22)を停止させるなど)して荷台2の姿勢を水平状態に補正する。これにより、荷台2は、着床位置に対して精度よく確実に着床することができる。
また、図8に示すように、ステップS3による荷台2の姿勢補正とほぼ同時に、ステップS4で荷台2の着床用アウトリガー31、31が張り出すと共に、ステップS5で荷台2の昇降速度が減速走行に切り替わり、ステップS6で荷台2はさらに減速下降する。
【0025】
そして、図7(a)に示すように、着床用アウトリガー31、31の先端部31a、31aが到着階F1のアウトリガー受け台5、5(着床階の周囲躯体)に当接した状態で係止して荷台2が所定の着床階(到着階F1)に停止する。さらに、図7(b)に示すように、ウインチ12、22は継続してワイヤーロープ11、21を送出することから、ワイヤーロープ11、21の張力は低下することになる。このときの低張力をワイヤーロープ11、21のそれぞれの固定端11a、21aに設けられているロードリミッタ4、4により検出したときに着床確認となり、ウインチ12、22が停止する(図8のステップS7、S8、S9、S10)。
また、荷台2は減速されて着床されるため、その着床時の衝撃が緩和され、荷台2の損傷を防ぐことができる。
【0026】
このように、アウトリガー張出し位置センサー41、42による検出用反射板32、32の検出と、ロードリミッタ4によるワイヤーロープ11、21の張力検出とがなされた場合は、それらの検出信号が例えば図示しない制御装置に送信され、それぞれの検出に対応した制御が行なえるように構成されている。つまり、上述したようにアウトリガー張出し位置センサー41、42による検出時(ステップS2)には、荷台2を水平姿勢に補正する制御(ステップS3)と、荷台の速度を減速させる制御(ステップS5)と、着床用アウトリガー31、31の張出し制御(ステップS4)とが行なわれ、ロードリミッタ4、4の検出時(ステップS7)ではウインチ12、22の停止制御(ステップS9)が行なわれる。
そして、着床中の荷台2は、ワイヤーロープ11、21の張力が小さいか或いは無負荷な状態で停止しているため、荷台2が跳ね上がることなく荷台2上の積荷Mを取り除くことができる。
【0027】
上述した本実施の形態による揚重装置及びそれを用いた着床管理方法では、荷台2を吊っているワイヤーロープ11、21の張力が低張力であることをロードリミッタ4で検出することで荷台2の着床を確認してから、ウインチ12、22を停止させるため、着床中の荷台2のワイヤーロープ11、21には張力がかかっていない状態とすることができる。そのため、荷台2上の積荷Mを取り除いたときの荷台2の跳ね上がりを防止することができ、揚重作業の安全性を向上できる。
また、荷台2の積荷Mを取り除いた後のワイヤーロープ11、21が弛むことがなく、ウインチにおける巻き出し過ぎを防止できることから、ウインチの乱巻きやワイヤーロープがシーブから外れるといった揚重装置1の故障やトラブルを防止することができ、作業の効率化を図ることができる。
【0028】
以上、本発明による揚重装置及びそれを用いた着床管理方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施の形態では到着階F1に停止する場合を着床管理方法の一例としているが、これに限定されず、例えば到着階F1から出発して発進階F0に移動させる場合や、途中階Faに着床する場合についても同様の着床方法により荷台2を停止させることができる。
なお、本実施の形態ではアウトリガー張出し位置センサー41、42が荷台2の荷台減速手段を兼ねているが、アウトリガー張出し位置センサー41、42とは別に減速用センサーを設けるようにしてもかまわない。
また、本実施の形態ではアウトリガー張出し位置センサー41、42を用いて着床用アウトリガー31、31の位置を検出し、荷台2の姿勢が水平状態となるように補正を行っているが、これに限定されず、例えば、これとは別に荷台の位置検出スイッチ(センサー)の水平補正用センサーを設けてもかまわない。さらに、荷台2は、必ずしも水平補正を行った後に着床させることはなく、この作業工程を省略することも可能である。要は、荷台2が所定の着床位置に着床したとき、荷台2を吊っているワイヤーロープ11、21の緊張力が低下したことをロードリミッタ4によって検出してウインチ12、22を停止させるように管理されていればよいのである。
【0029】
そして、移動架台3を設けたものとなっているがこれに限定されることはなく、この移動架台3を設けない構成としてもよく、例えば、荷台2を昇降させるワイヤーロープ11、21をウインチ12、22から最上階の天井部のシーブ13(23)を介して荷台2に繋ぐようにしてもよい。
また、本実施の形態では着床用アウトリガー31をアウトリガー受け台5に係止させることで荷台2を着床階に着床させる方法としているが、これに限定されることはなく、例えば階下階において着床用アウトリガー31を使用せずに荷台2を直接、床上に係止させて着床させるようにしてもよい。
勿論、シーブ13、23の数量、取り付け位置、ワイヤーロープ11、21の巻き回し方法など具体的な構成その他は、実施するべき作業内容や作業条件を考慮して最適設計すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態による揚重装置の全体を示す立面図である。
【図2】揚重装置の昇降手段を示す側面図である。
【図3】図1に示す揚重装置の荷台のA−A線矢視図である。
【図4】図3に示す揚重装置の荷台のB−B線矢視図である。
【図5】図3に示す揚重装置の荷台のC−C線断面図である。
【図6】(a)、(b)は揚重装置の着床手順を説明する工程図である。
【図7】(a)、(b)は図6(b)に続く揚重装置の着床手順を説明する工程図である。
【図8】荷台における着床停止管理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0031】
1 揚重装置
2 荷台
3 移動架台
4 ロードリミッタ(張力検知装置)
11、21 ワイヤーロープ(吊索)
12、22 ウインチ(巻上機)
13、23 シーブ(滑車)
31 着床用アウトリガー
32 検出用反射板(傾斜調整手段、荷台減速手段)
41、42 アウトリガー張出し位置センサー(傾斜調整手段、荷台減速手段)
F0 発進階
F1 到着階
Fa 途中階


【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷台と、該荷台を吊索で吊って昇降させる巻上機とを備えた揚重装置であって、
前記吊索は、前記荷台に設けた滑車を巻き回し、前記吊索の先端が建築物の周囲躯体の所定箇所に固定され、
前記吊索の先端に前記吊索の張力を検出する張力検知装置を備え、
前記荷台が着床階の周囲躯体に係止したとき、前記吊索の低張力状態を前記張力検知装置によって検出し、前記巻上機を停止させるように構成されていることを特徴とする揚重装置。
【請求項2】
前記荷台の両端位置を検知し、前記荷台の姿勢を水平状態に補正するための傾斜調整手段が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の揚重装置。
【請求項3】
前記荷台の着床前に前記荷台の位置を検出して減速走行させるようにする荷台減速手段が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の揚重装置。
【請求項4】
前記荷台には、略水平方向に伸縮するアウトリガーが設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の揚重装置。
【請求項5】
前記荷台を吊り下げる滑車を備え、前記巻上機によって上下方向に移動可能な移動架台が設けられ、
該移動架台の前記滑車を介して前記荷台が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の揚重装置。
【請求項6】
荷台と、該荷台に設けた滑車を巻き回して先端を建築物の周囲躯体の所定箇所に固定された吊索と、前記吊索を巻き取り又は送出することで前記荷台を昇降させる巻上機と、前記吊索の先端に前記吊索の張力を検出する張力検知装置とを備えた揚重装置を用いた着床管理方法であって、
前記荷台が着床階の周囲躯体に係止し、前記吊索の低張力を前記張力検知装置によって検出したときに前記荷台の着床が確認され、前記巻上機を停止させるようにしたことを特徴とする揚重装置を用いた着床管理方法。
【請求項7】
前記荷台の着床前に、前記荷台の姿勢が水平状態となるように補正されることを特徴とする請求項5に記載の揚重装置を用いた着床管理方法。
【請求項8】
前記荷台の着床前に前記荷台の位置を検出して減速走行させることを特徴とする請求項6または7に記載の揚重装置を用いた着床管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−290799(P2007−290799A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−118195(P2006−118195)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】