説明

揚重装置

【課題】汎用性が高く、建物に開口部や支柱設置スペースが無い場合等にも設置でき、また、板状の建物の場合の物流動線が効率良くなり、さらに、躯体施工階での作業の邪魔にならない揚重装置を提供することを目的としている。
【解決手段】工事中の建物2の外側に設置される揚重装置1であって、建物2の外面に対向配置されるフレーム3と、フレーム3を建物2の外側の躯体2a…に支持させる支持手段と、フレーム3の内側に形成された鉛直方向に延在する昇降路A内に配置された搬器5と、昇降路Aの両側にそれぞれ配設された鉛直方向に延在するガイドレール28,28に沿って搬器5を昇降させる昇降手段6とが備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の建築工事や改修工事等に用いられる仮設の揚重装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄筋コンクリート構造の超高層建物の建築工事では、資機材の荷揚げを行うためのタワークレーンの他に、荷揚げと荷受け兼用の自昇式のステージ(以下、昇降式ステージと記す。)が設置される場合が多い。昇降式ステージは、一般に、籠状に組まれたフレームの中にステージ本体が配置されてこのステージ本体を電動チェーンブロック等の昇降機構によってフレーム内で昇降させる構成からなり、建物の吹き抜け部分やエレベータシャフト等の開口部に設置される場合が多い。開口部に設置される昇降式ステージのフレームには、フレーム両側にそれぞれ張り出されて開口部に架け渡されるアウトリガーが設けられており、このアウトリガーによって昇降式ステージが支持されている。また、ステージ本体にも同様のアウトリガーが設けられており、昇降式ステージを荷受けステージとして利用する場合に、そのアウトリガーを張り出させて開口部に架け渡すことで、ステージ本体の荷重を受ける。上記した昇降式ステージとタワークレーンとがそれぞれ現場に設置され、鉄筋材の荷揚げ作業等のように地上から躯体施工階までの荷揚げ作業にはタワークレーンを用いて、転用部材(型枠や支保工等)の盛替え作業や仕上材(ALCパネルや耐火ボード等)の搬入作業には昇降式ステージを用いることで、揚重・搬入作業の効率を向上させることができる。
【0003】
また、近年、転用部材の盛替え作業等に用いる揚重装置として、建物の外側に設置される揚重装置が提案されている。この揚重装置は、建物の外面に対向するとともに内側に鉛直方向に延在する昇降路が形成されたフレームが、建物の上方に配設された屋根架構の外端部から垂設され、このフレームに形成された上記昇降路内に、資機材等を載せるステージ状の搬器が配置され、この搬器が、フレームに取り付けられたガイドに沿って昇降する構成からなる(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平10−245978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した開口部に配設される従来の昇降式ステージ(揚重装置)では、建物によって異なる開口部の形状や大きさに対応させるべく、アウトリガーやステージ本体を改造しなければならず、汎用性が低いという問題がある。また、集合住宅等に多くみられる板状の建物の場合には、エレベータシャフトや階段等が外部配置され、躯体内部に開口部がない場合が一般的であるため、従来の昇降式ステージを設置することができないという問題がある。さらに、仮に建物内部に昇降式ステージを設置できたとしても、板状の集合住宅の場合には、その建物の間取りプランによって、建物内部からの物流動線が非効率的となる場合が多いという問題がある。
【0005】
また、上記した建物の外側に設置される従来の揚重装置では、躯体施工階の上方に、フレームを垂設させるための屋根架構が配置されることになるため、屋根架構が躯体工事の邪魔になる場合があるという問題が存在する。例えば、タワークレーンを用いて躯体施工階に鉄筋材等を搬入する場合には、屋根架構が邪魔になって搬入効率が悪くなるという問題がある。また、上記した建物の外側に設置される従来の揚重装置では、屋根架構を支持するための支柱を建物内に立設させているが、板状の建物の場合には、その支柱を立設するためのスペースを確保することが難しく、支柱が立設できずに屋根架構を設置できない場合がある。
【0006】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、汎用性が高く、建物に開口部や支柱設置スペースが無い板状の建物の場合等にも設置でき、また、板状の集合住宅の建物等の場合でも効率の良い物流動線を確保でき、さらに、躯体施工階での作業の邪魔にならない揚重装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、工事中の建物の外側に設置される揚重装置であって、前記建物の外面に対向配置されるフレームと、該フレームを前記建物の外側の躯体に支持させる支持手段と、前記フレームの内側に形成された鉛直方向に延在する昇降路内に配置された搬器と、前記昇降路の両側にそれぞれ配設された鉛直方向に延在するガイドレールに沿って前記搬器を昇降させる昇降手段とが備えられていることを特徴としている。
【0008】
このような特徴により、支持手段によって建物の外側の躯体にフレームが支持されることで、揚重装置が建物の外面に壁掛けされたように設置される。
【0009】
請求項2記載の発明は、前記フレームが凹形状に形成され、前記昇降路の上端が開放されていることを特徴としている。
【0010】
このような特徴により、揚重装置の上方から搬器にALCパネル等の荷物を載せることが可能である。
【0011】
請求項3記載の発明は、前記支持手段には、前記フレームを支持した状態のまま建物の外面に沿って水平方向に移動させる移動機構が備えられていることを特徴としている。
【0012】
このような特徴により、揚重装置を吊り上げることなく水平方向にスライドさせることが可能となり、揚重装置の水平方向の位置を適宜変更できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る揚重装置によれば、揚重装置は建物の外面に壁掛けされたように設置されるため、建物に開口部や支柱設置スペースが無い場合等にも設置でき、また、躯体施工階での作業の邪魔になることがない。また、建物の外面に揚重装置が設置されるため、板状の建物の場合に外廊下やバルコニーを利用した物流動線とすることができ、効率的で有効な物流動線を実現することができる。さらに、本発明に係る揚重装置によれば、支持手段を構成する部材を改造したり取り替えたりしなくても、種々の建物にそのまま使用することができ、汎用性の高い揚重装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る揚重装置の実施の形態について、図面に基いて説明する。
【0015】
図1は本発明の実施の形態に係る揚重装置1を表す立面図であり、図2は本発明の実施の形態に係る揚重装置1を表す断面図であり、図3は本発明の実施の形態に係る揚重装置1を表す平面図である。
図1,図2,図3に示すように、揚重装置1は、型枠支保工等の転用部材の盛替えやALCパネル等の仕上げ材の荷揚げに使用される荷揚げと荷受けを兼ねた工事中の揚重装置である。また、揚重装置1は、建物2の外側に設置されるいわゆる外付けタイプの揚重装置であり、特に板状の建物2の建築工事に適した揚重装置である。揚重装置1の概略構成は、建物2の外面に対向配置されるフレーム3と、フレーム3を建物2の外側の躯体(バルコニースラブ2a…)に支持させる支持手段4と、フレーム3の内側に形成された鉛直方向に延在する昇降路A内に配置された搬器5と、搬器5を昇降させる昇降手段6とから構成されている。
【0016】
フレーム3は、地盤等の上に建てられた仮設足場等ではなく、建物2の外側の躯体にのみ支持されて建物2の外面に壁掛け状態で設置された仮設材であり、後述する荷重受梁12,12によってその鉛直荷重を上層階にあるバルコニースラブ2aで受けている。つまり、フレーム3は、建物2の外面に引っ掛けられて地盤等から離れた状態で配置されている。
【0017】
また、フレーム3は、トラスを構成する鋼製の仮設材であり、例えば、トラス状のマルチトラス7,7と、対向配置されたマルチトラス7,7同士を連結するブレース8…とから構成されている。マルチトラス7は、複数の棒材によってトラス状に形成された枠材9…をジョイント材10…を介して連結させた構成からなる。ブレース8…は、棒材をX状に組んだ構成からなるXブレースであり、一対のマルチトラス7,7間に介装されて各マルチトラス7,7にそれぞれピン結合されている。なお、本発明に係るフレームは、上記した構成からなるフレーム3に限定されるものではなく、その他の構成からなるフレームを用いることができ、例えば、トラス以外の形状からなる枠材からなるフレームであってもよく、或いは、単管パイプを格子状に組んだ構成からなるフレームであってもよく、或いは、鋼管からなるフレームであってもよい。
【0018】
また、フレーム3は全体的な形状が凹形状に形成されている。具体的には、フレーム3は、鉛直方向に延在する鉛直部3a,3aが間隔をあけて平行に配設されてその鉛直部3a,3aの下端部間に水平方向に延在する水平部3bが架設された構成からなる。そして、上記した鉛直部3a,3a及び水平部3bによって囲まれた空間が、搬器5を昇降させるための昇降路Aとなる。この昇降路Aは、鉛直部3a,3aの上端部間に水平部が架設されていないため、その上端が開放された状態になっている。また、両側の鉛直部3a,3a間には、鉛直部3a,3a間の間隔を所定寸法に保持するための繋ぎ材11…が架設されており、昇降路Aの幅は所定寸法に保持されている。
【0019】
支持手段4は、フレーム3からの鉛直荷重及び水平力を建物2のバルコニースラブ2a…にそれぞれ流してフレーム3を支持するものであり、型枠の建て込み作業等を行っている躯体施工階(N階)で鉛直荷重を受けてその下階(N−1階、N−2階、N−3階)で水平方向の荷重を支持するものである。具体的には、N階に載置された荷重受梁12,12と、N−1階、N−2階及びN−3階にそれぞれ固定される振れ止め部材13…とが備えられている。
【0020】
図4は荷重受梁12とバルコニースラブ2aとの係合部分の拡大図である。
図1,図2,図3,図4に示すように、荷重受梁12は、鉛直荷重を受けるための部材であり、例えばH型鋼などの鋼材からなる。荷重受梁12は、フレーム3に取り付けられている。具体的には、荷重受梁12の上には、H型鋼などの鋼材からなる取付支柱14,14が立設されており、取付支柱14には、フレーム3のマルチトラス7に把持するように固定される取付金具15,15が上下に付設されており、この取付金具15,15を介して取付支柱14がマルチトラス7に固定されている。なお、取付支柱14,14の下端は荷重受梁12の上面に溶接等によって固定されており、荷重受梁12と取付支柱14,14とは一体化されている。また、荷重受梁12は、フレーム3から建物2側に張り出すように設けられており、荷重受梁12の張り出された先端部はN階のバルコニースラブ2a上に載置されている。
【0021】
また、荷重受梁12の先端部には、ワイヤーやチェーン等の引張り材16を取り付けるためのピース17が付設されている。そして、このピース17に引張り材16が取り付けられてレバーブロック等の引張り装置18でその引張り材16が建物2内部側に引っ張られている。これにより、荷重受梁12がバルコニースラブ2aから外れて揚重装置1が落下することが防止される。また、図1に示すように、取付支柱14,14には、クレーン等で揚重装置1を吊り上げる際にワイヤー等を玉掛けするための吊りピース30が付設されている。
【0022】
図5は振れ止め部材13とバルコニースラブ2aとの係合部分の拡大図である。
図1,図2,図3,図5に示すように、振れ止め部材13…は、水平方向の力を受けて揚重装置1の振れを止めるための部材であり、例えば公知のベランダブラケットからなる。図5に示すように、このベランダブラケットからなる振れ止め部材13…は、L形に形成された角鋼等からなる本体部21と、本体部21の一方の部分21aに付設されたクランプ19,19と、本体部21の他方の部分21bに設けられた固定ジャッキ20とが備えられた構成からなる。
【0023】
クランプ19,19は、マルチトラス7の鉛直方向に延在する部分(棒材)を把持する部材であり、本体部21の一方の部分21aに上下二箇所に設けられている。振れ止め部材13は、クランプ19,19がフレーム3の建物2側のマルチトラス7を把持することで、フレーム3に取り付けられている。また、本体部21の他方の部分21bには、その軸方向に移動可能に外装されて所定位置で係止される移動部材22が装着されており、この移動部材22を貫通するように固定ジャッキ20が設けられている。固定ジャッキ20は、本体部21の他方の部分21bと平行に延在して軸回転させることで前後に移動するネジ式のジャッキであり、その先端(図5における左側の端部)には、バルコニースラブ2aに当接させるための当接面20aが設けられている。振れ止め部材13は、固定ジャッキ20を締め込んで当接面20aと本体部21の一方の部分21a(図5では一方の部分21aに付設されたローラ26)とでバルコニースラブ2a先端の立上り部分を挟み込むことで、バルコニースラブ2aに固定されている。
【0024】
また、図4,図5に示すように、支持手段4に、フレーム3を支持した状態のまま建物2の外面に沿って水平方向に移動させる移動機構23が備えられていることが好ましい。つまり、荷重受梁12をバルコニースラブ2a上に載置させたままの状態で、フレーム3を建物2の外面に沿って水平方向にスライドさせることが可能な構成にする。具体的には、移動機構23は、荷重受梁12に付設された第1,第2のローラ24,25と、振れ止め部材13に付設された第3のローラ26とから構成されている。
【0025】
図4に示すように、第1のローラ24は、荷重受梁12からの鉛直荷重をバルコニースラブ2a先端の立上り部分に流しつつその立上り部分の天端面上を転動するローラであり、荷重受梁12の下面に付設されて荷重受梁12とバルコニースラブ2a先端の立上り部分との間に介在されている。第2のローラ25は、バルコニースラブ2a先端の立上り部分の側面上を転動するローラであり、荷重受梁12の下面に垂設されたピース27に付設され、N階のバルコニースラブ2a先端の立上り部分の内側面に当接されている。図5に示すように、第3のローラ26は、振れ止め部材13からの水平力をバルコニースラブ2a先端の立上り部分に流しつつその立上り部分の側面上を転動するローラであり、振れ止め部材13の本体部21の一方の部分21aに付設され、N−1階、N−2階、N−3階のバルコニースラブ2a先端の立上り部分の外側面に当接されている。
【0026】
一方、図1,図2,図3に示すように、上記したフレーム3の内側(昇降路A)内には、搬器5および昇降手段6からなる公知の工事用エレベータ35が組み込まれている。この工事用エレベータ35としては、各種の工事用エレベータを用いることができ、本実施の形態では、ロングスパンエレベータがフレーム3の内側に組み込まれている。なお、一般のロングスパンエレベータは、規格化されたピッチ(1800mm)対応の荷台寸法になっているが、上記したフレーム3を構成するマルチトラス7も同様に規格化されたピッチ(1800mm)で形成されているため、組み込み容易である。
【0027】
工事用エレベータ35を構成する搬器5は、転用部材や仕上げ材等の荷物が載せられるとともに昇降手段6によって昇降路A中を昇降するものであり、ステージ状の荷台32に周囲を囲う手摺33が立てられた構成からなる。
【0028】
また、工事用エレベータ35を構成する昇降手段6は、昇降路Aの両側にそれぞれ配設された鉛直方向に延在するガイドレール28,28に沿って搬器5を昇降させる昇降機構である。具体的には、ガイドレール28,28に沿ってラックを設けるとともに搬器5にピニオンを駆動させる図示せぬ駆動機を搭載させて、当該駆動機により駆動するピニオンを上記ラックに噛合させることで搬器5を昇降させるラック式の昇降機構である。また、上記したガイドレール28,28は、フレーム3の水平部3b上に載置されたベース受梁31,31上に立設されているとともに、公知のロングスパンエレベータと同様に単管とクランプでフレーム3の鉛直部3a,3aの内側面に固定されている。
【0029】
次に、上記した構成からなる揚重装置1の設置方法について説明する。
まず、取付支柱14,14に付設された吊りピース30,30にワイヤーロープ等を玉掛けし、鉄筋材の荷揚げ等を行うためのクレーンで吊り上げて、荷重受梁12,12が躯体施工階のN階にくるように揚重装置1を所定位置まで運び、荷重受梁12,12をN階のバルコニースラブ2a上に載せる。このとき、振れ止め部材13…を広げた状態、つまり、固定ジャッキ20の当接面20aと本体部21の一方の部分21a(移動機構23が備えられている場合には第3のローラ26)との間を広げた状態にしておく。そして、荷重受梁12,12をバルコニースラブ2a上に載せて揚重装置1を所定位置に配置した後、固定ジャッキ20を締め込んで、躯体施工階の下階(N−1階、N−2階、N−3階)のバルコニースラブ2a…の立上り部分を固定ジャッキ20の当接面20aと本体部21の一方の部分21a(移動機構23が備えられている場合には第3のローラ26)とでそれぞれ挟み込み、振れ止め部材13…を下階(N−1階、N−2階、N−3階)のバルコニースラブ2a…にそれぞれ固定させる。また、荷重受梁12,12をバルコニースラブ2a上に載せて揚重装置1を所定位置に配置した後、荷重受梁12,12に付設されたピース17に引張り材16を取り付けて、この引張り材16を引張り装置18で建物2内部側に引っ張って揚重装置1を固定する。以上のようにして、揚重装置1は建物2の外側に設置される。
【0030】
次に、上記した構成からなる揚重装置1を水平方向にスライドさせる方法について説明する。
まず、引張り材16を引っ張っている引張り装置18を取り外す。また、締め込まれた固定ジャッキ20を緩めてその当接面20aをバルコニースラブ2aの立上り部分から離間させ、バルコニースラブ2a…の立上り部分に固定されていた振れ止め部材13…をそれぞれ解除する。次に、移動機構23によって揚重装置1を建物2の外面に沿って水平に移動させる。具体的には、荷重受梁12,12に付設された第1のローラ24をバルコニースラブ2aの立上り部分の天端面上で転動させるとともに、荷重受梁12,12に付設された第2のローラ25を上記立上り部分の内側の側面上で転動させ、さらに、振れ止め部材13…の本体部21にそれぞれ付設された第3のローラ26をバルコニースラブ2aの立上り部分の外側の側面上で転動させることで、揚重装置1をスライドさせる。そして、所定の位置まで揚重装置1を移動させた後、上述した揚重装置1の設置の場合と同様に、振れ止め部材13…をバルコニースラブ2a…にそれぞれ固定させるとともに、荷重受梁12,12に取り付けられた引張り材16を引張り装置18で建物2内部側に引っ張って揚重装置1を固定する。
【0031】
また、上記した構成からなる揚重装置1の上階への盛替えは、鉄筋材の荷揚げ等を行うためのクレーンを用いて行う。
具体的には、取付支柱14,14に付設された吊りピース30,30にワイヤーロープ等を玉掛けして前記クレーンで吊り上げ、荷重受梁12,12を所定階のバルコニースラブ2a上に載せる。その後、上述した揚重装置1の設置の場合と同様に、振れ止め部材13…をバルコニースラブ2a…にそれぞれ固定させるとともに、荷重受梁12,12に取り付けられた引張り材16を引張り装置18で建物2内部側に引っ張って揚重装置1を固定する。
なお、油圧機構等を使用して揚重装置1をセルフクライミングさせてもよい。
【0032】
上記した構成からなる揚重装置1によれば、支持手段4によって建物2の外側の躯体(バルコニースラブ2a…)にフレーム3が支持されることで、揚重装置1が建物2の外面に壁掛けされたように設置されるため、建物2に開口部や支柱設置スペースが無い場合等にも揚重装置1を設置することができる。このため、例えば建物2が板状の建物である場合であっても、当該揚重装置1を設置することができる。
【0033】
また、上記した構成からなる揚重装置1によれば、バルコニースラブ2a…側の建物2の外面に揚重装置1が設置されているため、バルコニーを利用した物流動線となる。このため、例えば建物2が板状の集合住宅である場合には、居室内等の建物内部を通す物流動線に比べて効率的で有効な物流動線となる。なお、仮に揚重装置1が外廊下側の建物2の外面に設置されている場合であっても、同様に、外廊下を利用した物流動線となり、効率的で有効な物流動線を実現することができる。
【0034】
また、上記した構成からなる揚重装置1によれば、バルコニースラブ2a…側の建物2の外面に揚重装置1が設置されているため、躯体施工階(N1階)に仮設の支柱等が配置されることがなく、躯体施工階における型枠の建て込み作業や鉄筋の配筋作業の邪魔になることがない。
【0035】
また、上記した構成からなる揚重装置1によれば、支持手段4を構成する荷重受梁12,12や振れ止め部材13…を改造したり取り替えたりしなくても、種々の建物2にそのまま使用することができ、汎用性の高い揚重装置1を実現することができる。
【0036】
また、上記した構成からなる揚重装置1によれば、フレーム3が凹形状に形成され、昇降路Aの上端が開放された構成になっているため、揚重装置1の上方から搬器5にALCパネル等の荷物を載せることが可能である。これによって、例えば、クレーン等で吊り上げた荷物をそのまま搬器5に載せることができ、搬器5に対する荷物の積み込み作業の効率化を図ることができる。
【0037】
また、上記した構成からなる揚重装置1によれば、支持手段4には、フレーム3を支持した状態のまま水平方向に移動させる移動機構23が備えられているため、揚重装置1を吊り上げることなく水平方向にスライドさせることが可能となり、揚重装置1の同一階における位置変更を容易に行うことができる。これによって、揚重装置1と施工場所との位置を近づけて揚重装置1から施工場所までの距離を短くすることができ、盛替え作業や搬入作業の更なる効率化を図ることができる。例えば、支保工等の転用部材の盛替え作業を行う場合には、型枠の建て込み場所や型枠の脱型場所に近い位置まで揚重装置1を移動させてから、転用部材の盛替え作業を行う。一方、ALCパネル等の仕上げ材を搬入する場合には、仕上げ材の仮置場所に近い位置まで揚重装置1を移動させてから、仕上げ材の搬入作業を行う。これによって、揚重装置1から運び出す際の人手による運搬距離(横引き距離)が短くなり、一層効率的に盛替え作業や搬入作業を行うことができる。
【0038】
以上、本発明に係る揚重装置の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記した実施の形態では、揚重装置1の支持手段4に荷重受梁12,12と振れ止め部材13…とが備えられ、荷重受梁12,12を建物2のバルコニースラブ2aに載せて鉛直荷重を受け、振れ止め部材13…でバルコニースラブ2aの立上り部分に固定して水平力を受けているが、本発明は、バルコニースラブ2a以外の躯体に荷重受梁12,12を載せて鉛直荷重を受けてもよく、また、バルコニースラブ2a以外の躯体に振れ止め部材13…を固定させて水平力をうけてもよい。例えば、外廊下のスラブや居室のスラブで鉛直荷重や水平力を受ける構成にしてもよく、或いは、梁等のスラブ以外の構造体で鉛直荷重や水平力を受ける構成にしてもよい。
また、本発明は、荷重受梁12,12と振れ止め部材13…とからなる支持手段4に限定されるものではなく、例えば、建物が鉄骨造である場合、フレームと建物の鉄骨梁とをボルト接合することでフレームを建物の躯体に支持させる支持手段であってもよく、その他の構成によってフレームを建物の躯体に支持させる支持手段であってもよい。
【0039】
上記した実施の形態では、フレーム3は凹形状になっているが、本発明は、フレームの形状を四角形の環状にすることもでき、或いは、フレームの形状を凹形状のフレーム3を上下反転させた門形の形状にすることもでき、フレームの形状をその他の形状に変更することは可能である。
【0040】
また、上記した実施の形態で説明した移動機構23が備えられていない構成であってもよく、例えば、第1,第2,第3のローラ24,25,26が備えられてなく、荷重受梁12,12がバルコニースラブ2aの上に直接載置され、振れ止め部材13…の本体部21の他方の部分21bがバルコニースラブ2aの立上り部分の外側面に当接された構成にしてもよい。
【0041】
また、上記した実施の形態では、昇降手段6がラック式の昇降機構からなっているが、本発明は、ラック式以外の昇降手段であってもよく、例えば、搬器をワイヤーロープ等の吊索で懸吊してこの吊索をウインチ等の巻上機で巻取って上昇させるロープ式の昇降機構からなる昇降手段であってもよい。
【0042】
また、上記した実施の形態では、公知のロングスパンエレベータからなる工事用エレベータ35をフレーム3の内側に組み込むことで搬器5および昇降手段6が形成されているが、本発明は、フレーム3内に組み込む工事用エレベータは適宜変更可能であり、上記したロングスパンエレベータ以外の公知の工事用エレベータを組み込んでもよく、また、この揚重装置のために製作された搬器や昇降手段が備えられていてもよい。
【0043】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係る揚重装置の実施の形態を説明するための揚重装置の立面図である。
【図2】本発明に係る揚重装置の実施の形態を説明するための揚重装置の断面図である。
【図3】本発明に係る揚重装置の実施の形態を説明するための揚重装置の平面図である。
【図4】本発明に係る揚重装置の実施の形態を説明するための支持手段を表す拡大断面図である。
【図5】本発明に係る揚重装置の実施の形態を説明するための支持手段を表す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 揚重装置
2 建物
2a バルコニースラブ(躯体)
3 フレーム
4 支持手段
5 搬器
6 昇降手段
23 移動機構
28 ガイドレール
A 昇降路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工事中の建物の外側に設置される揚重装置であって、
前記建物の外面に対向配置されるフレームと、該フレームを前記建物の外側の躯体に支持させる支持手段と、前記フレームの内側に形成された鉛直方向に延在する昇降路内に配置された搬器と、前記昇降路の両側にそれぞれ配設された鉛直方向に延在するガイドレールに沿って前記搬器を昇降させる昇降手段とが備えられていることを特徴とする揚重装置。
【請求項2】
請求項1記載の揚重装置において、
前記フレームが凹形状に形成され、前記昇降路の上端が開放されていることを特徴とする揚重装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の揚重装置において、
前記支持手段には、前記フレームを支持した状態のまま建物の外面に沿って水平方向に移動させる移動機構が備えられていることを特徴とする揚重装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−7996(P2008−7996A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−177976(P2006−177976)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.レバーブロック
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】