説明

揮散体及びそれを備えた揮散器

【課題】少ない部品点数で容易且つ安価に製作することができ、装飾性に優れた揮散体及びそれを備えた揮散器を提供する。
【解決手段】吸液性のシートで形成され、放射状に広がる複数枚の花弁17を有する花形を模して形成された揮散部16を複数備えた揮散体13であって、各揮散部16の少なくとも一つの花弁17Aが他の揮散部16の花弁17Aと相互に連続するように形成されたことを特徴とする揮散体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮散体及びそれを備えた揮散器に関し、より詳細には、少ない部品点数で容易且つ安価に製作することができ、装飾性に優れた揮散体及びそれを備えた揮散器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸液部材と揮散体を有し、芳香液などを揮散させる揮散器(芳香液吸上げ型の揮散器)が知られている。このような揮散器としては、揮散体が花弁の形状を有し、香料及び色素などを含む溶液を吸液部材を介して揮散体に供給して揮散成分を揮散させたとき、揮散体に残留する色素によって揮散体の色や模様を時間経過と共に変化させて、装飾性の向上を図った揮散器が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−329794号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の揮散体は、複数の濾紙や化学合成繊維布を適当に湾曲させて吸液部材の外周面に接触させながら、順次重ね合わせて取り付けることによって略花弁状に形成されている。従って、玄関などに配置しても見栄えが良く、鑑賞に耐え得る形状の花を形成するには、花弁部を構成する部材(濾紙や化学合成繊維布)を多数要し、更にこれら多数の部材を吸液部材の外周面に順次、接触させて取り付けるために多くの工数がかかり、コスト高となる問題があった。また、1本の吸液部材に1つの花弁部が取り付けられて花が形成される構成となっているので、例えば、装飾性に優れたブーケなどを形成するためには、多数本の花を束ねなければならず、更に多大な工数と費用とを要し、改善の余地があった。
【0004】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、少ない部品点数で容易且つ安価に製作することができ、装飾性に優れた揮散体及びそれを備えた揮散器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1)吸液性のシートで形成され、
放射状に広がる複数枚の花弁を有する花形または放射状に広がる複数枚の葉を有する群葉形を模して形成された揮散部を複数備えた揮散体であって、
各揮散部の少なくとも一つの花弁または葉が他の揮散部の花弁または葉と相互に連続するように形成されたことを特徴とする揮散体。
(2)複数の前記揮散部を一組とする揮散体ユニットを有し、
前記揮散体ユニットが、各揮散部の一つの花弁または葉の先端部が一点に集約されて相互に連続するように形成されていることを特徴とする上記(1)に記載の揮散体。
(3)前記揮散体ユニットが、花弁または葉と同数の前記揮散部を一組とすることを特徴とする上記(2)に記載の揮散体。
(4)複数の前記揮散部を一組とする揮散体ユニットを有し、
前記揮散体ユニットが、各揮散部の一つの花弁または葉の基部が一点に集約されて相互に連続するように形成されていることを特徴とする上記(1)に記載の揮散体。
(5)複数の前記揮散部を一組とする揮散体ユニットを有し、
前記揮散体ユニットが、各揮散部が環状に連なって相互に連続するように形成されていることを特徴とする上記(1)に記載の揮散体。
(6)吸液性のシートで形成され、
放射状に広がる複数枚の花弁を有する花形または放射状に広がる複数枚の葉を有する群葉形を模して形成された揮散部を複数備え、
各揮散部の少なくとも一つの花弁または葉が他の揮散部の花弁または葉と相互に連続するように形成された揮散体と、
香料及び色素の少なくともいずれか一方が溶媒に溶解された溶液を収容する容器と、
一端に前記揮散体が装着され、他端が前記溶液に浸漬された吸液部材と、を備え、
前記吸液部材を介して供給される前記溶液を、前記揮散体から外部に揮散させることを特徴とする揮散器。
(7)前記揮散体が、複数の前記揮散部を一組とする揮散体ユニットを有し、
前記揮散体ユニットが、各揮散部の一つの花弁または葉の先端部が一点に集約されて相互に連続するように形成されていることを特徴とする上記(6)に記載の揮散器。
(8)前記揮散体が、複数の前記揮散部を一組とする揮散体ユニットを有し、
前記揮散体ユニットが、各揮散部の一つの花弁または葉の基部が一点に集約されて相互に連続するように形成されていることを特徴とする上記(6)に記載の揮散器。
(9)前記揮散体が、複数の前記揮散部を一組とする揮散体ユニットを有し、
前記揮散体ユニットが、各揮散部が環状に連なって相互に連続するように形成されていることを特徴とする上記(6)に記載の揮散器。
(10)雄しべ及び/又は雌しべを模して形成され、前記吸液部材の一端に固着された上部固定部材と、
ガクを模して前記吸液部材に挿通可能なリング状に形成された下部固定部材と、を更に備え、
前記揮散体が、前記上部固定部材と前記下部固定部材とで挟持されて前記吸液部材に装着されることを特徴とする上記(6)〜(9)のいずれかに記載の揮散器。
(11)複数の揮散体が、異なる位相で重ね合わされて前記吸液部材に装着されたことを特徴とする上記(6)〜(10)のいずれかに記載の揮散器。
(12)前記溶液を収容する容器を包装する非吸液性包装部材をさらに備えることを特徴とする上記(6)〜(11)のいずれかに記載の揮散器。
【発明の効果】
【0006】
本発明の揮散体によれば、放射状に広がる複数枚の花弁を有する花形または放射状に広がる複数枚の葉を有する群葉形を模して形成された揮散部を備え、各揮散部の少なくとも一つの花弁または葉が他の揮散部の花弁または葉と相互に連続するように形成されているので、各揮散部(花形または群葉形)の花弁または葉と共用されて少ない材料で装飾性に優れた揮散体を容易にかつ安価に製作することができる。また、揮散体は、吸液性のシートを切り抜くだけで形成できるので、プレス加工などにより短時間で安価且つ容易に製作することができる。また、揮散体は、シート状に広がって形成されるので、少数の揮散体によって広い面積を効果的に装飾することができる。
【0007】
揮散体は、複数の前記揮散部を一組とする揮散体ユニットを有し、該揮散体ユニットは各揮散部の一つの花弁または葉の先端部が一点に集約されて相互に連続するように形成されていることが好ましい。これにより、各揮散部(花形または群葉形)の花弁または葉と共用されて一点に集約される花弁または葉によって、視覚的にあたかも花形または群葉形(揮散部)がもう一つ以上増えたかのような錯覚を見る人に与えることができる。
【0008】
揮散体ユニットは、花弁または葉と同数の前記揮散部を一組とすることが好ましい。これにより、揮散体のバランスが向上し、装飾性を高めることができる。
【0009】
揮散体ユニットは各揮散部が環状に連なって相互に連続するように形成されていることが好ましい。これにより、揮散部の溶液を均一にして、安定して揮散させることができる。
【0010】
また、本発明の揮散器によれば、香料や色素が溶媒に溶解された溶液を収容する容器と、一端に上記の花形または群葉形を模して形成された揮散体が装着され、他端が溶液に浸漬された吸液部材を備え、吸液部材を介して供給される溶液を揮散体から外部に揮散させるようにしたので、装飾性に優れた花形または群葉形(揮散部)を視覚的に鑑賞すると共に、香りを楽しむことができる揮散器を安価に提供できる。
【0011】
揮散体は、雄しべや雌しべを模して形成され、吸液部材の一端に固着された上部固定部材と、ガクを模して形成された下部固定部材とで挟持して吸液部材に装着することが好ましい。これにより、更に実際の花の形状に近似させることができ、装飾性を向上させることができる。
【0012】
また、揮散体は、異なる位相で複数枚が重ね合わされ、吸液部材の一端に装着されることが好ましい。これにより、少ない揮散体によって見栄えのする豪華な花を表現することができ、例えば、アジサイなどのように多くの小花を有して空間的に広がりのある花を表現するのに好適である。
【0013】
本発明の揮散器における容器の材質としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ガラス、陶器、金属、これらの混合物などが例示される。
【0014】
本発明の揮散器に用いることができる香料としては、水性、油性のいずれでもよく、例えば、ハッカ油、ペパーミント油、スペアミント油、イグサ、ヒノキ、シトロネラ、シトラール、シトロネラール、レモン、レモングラス、オレンジ、ユーカリ、ローズ、ミュゲ、ジャスミン、ヒノキチオール、ラベンダー等の精油成分、ムスク、シベット、アンバーグリス、カストリウム等の動物性香料、及びそれから得られる芳香成分を有するものを挙げることができる。
【0015】
また、色素は、水性、油性のいずれでもよく、不揮発性で溶媒に溶けるものであればよい。色素としては、例えば、赤色102号、赤色225号、青色1号、黄色4号、緑色3号、だいだい205号、ベニバナ等の天然色素等を挙げることができる。
【0016】
さらに、溶液中には揮散成分として所期の作用効果を得ることができる常温で揮散する成分を用いることができる。例えば、消臭剤、忌避剤、或いは殺虫剤、殺菌剤、殺ダニ剤等の薬剤(薬液)が挙げられる。揮散成分の溶媒としては水性、油性、これらの混媒のいずれでもよく、例えば、水(精製水、脱イオン水)、灯油、アルコール類(エタノール、プロパノール、ブトキシメタノール、フェノキシエタノール、グリコール、プレピレングリコール)、各種界面活性剤などが挙げられる。
【0017】
吸液部材は、例えば、直径約1〜10mm、長さ約30〜150mmの棒状部材であり、上端から略1/3付近の位置で130〜140°の角度に折り曲げられたものを用いることができる。折り曲げ角度は揮散器全体の視覚により調整でき、折り曲げなくてもよい。吸液部材の一端には、吸液部材の直径より大径に形成された上部固定部材が一体的に固着されている。吸液部材の他端は、溶液に浸漬されており、毛細管現象によって溶液を吸い上げて揮散体に供給する。なお、吸液部材としては、溶液を吸い上げることができれば上記棒状部材に限定されず、例えばキャピラリーチューブ等であってもよい。また、吸液部材の形状は上記の他に、らせん形状、植物の茎を模した形状等でもよい。
【0018】
吸液部材及び上部固定部材の材質としては、無機材料、有機材料のいずれも用いることができる。好ましくは樹脂であり、具体的にはポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルロース、パルプ、不織布、およびこれらの混合材料等の1種あるいは2種以上を挙げることができる。例えば、ポリプロピレン・ポリエチレンの複合繊維、ポリエステル等である。
【0019】
本発明の揮散体の材質としては、溶液を保持でき、且つ、溶液中の有効成分(揮散成分)を揮散させることができるものであれば任意の材質が使用可能である。具体的には、繊維、樹脂、パルプ等の有機材料やガラス等の無機材料の多孔性材料を用いることができる。揮散体の材質として、例えば、紙、布である。紙としては、例えば、濾紙、クレープペーパ、書道用紙、和紙、洋紙、特殊紙(すいとり紙等)を用いることができる。布としては、例えば、ポリエステル、綿、アクリルを用いることができる。また、揮散体が複数の材質からなっていてもよく、例えば、合成繊維、ポリエステル、ナイロン、不織布等の単品またはこれらを複合したものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る揮散体および揮散器の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係る揮散器の一実施形態を示す斜視図、図2は図1における揮散器の縦断面図、図3は本発明に係る揮散体の一実施形態を示す平面図、図4は図3におけるA−A線での縦断面図、図5は図3における揮散体の底面図、図6は図3における揮散体の側面図である。
図7は本発明に係る揮散器のさらなる一実施形態を示す斜視図、図8は図7おける揮散体の平面図である。
図9は本発明に係る揮散体のさらなる一実施形態を示す平面図である。
図10は本発明に係る揮散器のさらなる一実施形態を示す斜視図、図11は図10における揮散体の平面図である。
【0021】
図1及び図2に示すように、本実施形態の揮散器100は、内部に香料や色素などの有効成分を含有する溶液10を収容する容器11と、吸液部材12と、揮散体13を備える。吸液部材12の一端12aには揮散体13が装着され、他端12bは溶液10に浸漬されている。吸液部材12は、容器11から溶液10を吸い上げて揮散体13に供給し、溶液10に含有される香料等の揮散成分を揮散体13から外部に揮散させる。
【0022】
容器11は、上方に開口部が設けられて中空の円筒状に形成されており、内部に香料等の揮散成分や色素などが溶媒に溶解された溶液10が収容されている。開口部には、長尺の円柱状に形成された吸液部材12が嵌挿されている。また、容器11は、円筒状に限らず溶液10が収容できればよく、壺状、立方体、動植物、キャラクターを模したもの等の各種形状に変形できる。
【0023】
図3から図6に示すように、揮散体13は、吸液性を有するシート状部材をプレス加工などにより花形に切抜加工して形成される。本実施形態においては、揮散体13は、4つの揮散部16を一組として形成された揮散体ユニットからなり、アジサイの花を模した形状に形成されている。各揮散部16は、それぞれ放射状に形成された4枚の花弁17を有する花形として形成されている。そして、それぞれの揮散部16を構成する4枚の花弁17の内、1枚の花弁17Aは、他の揮散部16の花弁17Aと相互に連続するように形成されている。さらに、各揮散部16の花弁17Aはその先端部が一点に集約されて相互に連続するように揮散体ユニットが形成されている。
なお、図3から図6に示す本実施形態における揮散体13は、4つの揮散部16を一組として形成された揮散体ユニットのみから構成されているが、揮散体ユニット周辺部(各花弁17)にさらなる花弁が形成された構造とすることもできる。また、揮散体ユニットにおける花弁と揮散部の数は同数であることが好ましいが、これに限定されない。
【0024】
4つの花弁17Aの先端部が集約する中心部には、吸液部材12の直径よりわずかに小さな中心穴18が明けられている。また、各揮散部16の中心部には、小穴19が開けられている(図4参照)。小穴19には、揮散体13の表面側から雄しべ(雌しべを含む)を模して合成樹脂などによって形成された飾り板20の軸部20aが挿通される。軸部20aが、ガクを模して形成された係止リング21に嵌合することで、飾り板20は揮散体13に固定される。
【0025】
尚、実際のアジサイの各部の名称と、本実施形態での名称は異なるが、便宜上、花弁、雄しべ、雌しべ、ガクと言う。
【0026】
上記のように形成された揮散体13は、その中心穴18に吸液部材12が挿通され、更に該吸液部材12にガクを模して形成された下部固定部材15が挿通されて、上部固定部材14と下部固定部材15とで挟持されて吸液部材12の一端12aに接触した状態で装着される。装着される揮散体13の数は限定されず、1枚であっても装飾性を十分発揮できるが、複数の揮散体13が異なる位相で重ね合わされていることで外観が更に向上するため好ましい。ここで異なる位相で重ね合わされていることとは、図1に示すように、揮散体13の上面視において、揮散部16,16の中心(飾り板20)が上下方向で重ならないようにずらして配置することを意味する。なお、図1、図2においては2枚の揮散体13を重ね合わせた状態を示している。
【0027】
本実施形態の揮散体13は、それぞれが4つの花弁17を有して集合する4つの揮散部16から形成された揮散体ユニットで構成されている。この揮散体ユニットにおける各揮散部16の花弁17Aの先端部を一点に集約させて相互に連続させたので、揮散体ユニットの中心部に4つの花弁17Aを有する5番目の小花があるかのように表現することができ、装飾性に優れた揮散体13が得られる。そして、一端12aに雄しべや雌しべを模して形成された上部固定部材14が固着されている吸液部材12を中心穴18に挿通することにより、実際の花の形状に近似させることができる。また、揮散体13が装着された吸液部材12を数本組み合わせることにより、小花が多数あり、非常に豪華な見栄えのある花(ブーケ)を容易に表現することができる。
【0028】
図1に示すように、一端12aに複数の揮散体13が装着された吸液部材12の他端12bが、溶液10に浸漬されて揮散器100が組み付けられる。これにより、溶液10は他端12bから吸い上げられ、一端12aに接触している中心穴18を介して花弁17Aに浸透し、さらに花弁17へと伝わって揮散体13全体に拡散して、溶液10中の揮散成分が揮散体13の表面から外部に揮散される。
【0029】
尚、揮散体13や吸液部材12には、予め所定量の溶液10を保持させておくことで、使用開始と同時に、保持された溶液10中の有効成分が揮散する効果を得られるようにしてもよい。
【0030】
上記実施形態においては、揮散体ユニットは花弁と同数の4つの揮散部を一組とする形状として説明したが、花弁と揮散部の数は限定されず、任意数の組合せが可能である。しかし、揮散部の数が少ないと見栄えがせず、また多すぎると煩雑となってこれも見栄えがしないので、揮散部の数は、3〜7個とするのが好ましく、更に好ましくは4〜6個程度とするのがよい。例えば、5枚の花弁を有する5つの揮散部からなる梅などの花を模して形成してもよい。また、花弁の数が異なる揮散部を複数集約させて、例えば、3〜4枚の花弁を有する揮散部を2〜7個集約させて、揮散体ユニットを形成してもよい。さらに、揮散部の集約点が複数個存在する揮散体ユニットを形成してもよい。
【0031】
また、本発明の揮散体は、揮散体ユニットにさらなる花弁を形成した構造としてもよい。この場合、例えば揮散ユニットにおいて相互に隣接する揮散部16の2枚の花弁17の各先端部と、さらなる2枚の花弁の各先端部とが一点に集約されて、相互に連続するように新たに花弁を形成することで、4枚の花弁を有する新たな揮散部(花形)が形成された構造としてもよい。これにより、装飾性をさらに向上させることができる。
【0032】
図7に、本発明に係る揮散器のさらなる一実施形態を示す。本実施形態の揮散器500は、図1に示した揮散器100と同様に、内部に香料や色素などの有効成分を含有する溶液50を収容する容器51と、吸液部材52と、揮散体53を備える。吸液部材52の一端(図示せず)には揮散体53が装着され、他端(図示せず)は溶液50に浸漬されている。吸液部材52は、容器51から溶液50を吸い上げて揮散体53に供給し、溶液50に含有される揮散成分を揮散体53から外部に揮散させる。
【0033】
揮散体53は、吸液性を有するシート状部材をプレス加工などにより切抜加工して形成される。図7、8に示すように、本実施形態においては、揮散体53は4つの揮散部56を一組として形成された揮散体ユニットからなる。各揮散部56は、それぞれ放射状に形成された5枚の小葉57を有するモミジの群葉形を模した形状(葉が群れて生い茂る様子を模した形状)に形成されている。そして、それぞれの揮散部56を構成する5枚の小葉57の内、1枚の小葉57Aは、他の揮散部56の小葉57Aと相互に連続するように形成されている。揮散体53ではさらに、各揮散部56が環状に連なって相互に連続するように揮散体ユニットが形成されている。揮散体ユニットがかかる形状であることにより、吸液部材52から供給される溶液50が揮散体53から均一に、安定して揮散することができる。
なお、図7または8に示す本実施形態における揮散体53は、この揮散体ユニットのみで構成されているが、揮散体ユニット周辺部(各小葉57)にさらなる小葉が形成された構造とすることもできる。
【0034】
本発明の揮散器500の吸液部材52に装着される揮散体53の数は限定されず、1枚であっても装飾性を十分発揮できるが、複数の揮散体53が異なる位相で重ね合わされていることで外観が更に向上するため好ましい。ここで異なる位相で重ね合わされていることとは、図7に示すように、揮散体53の上面視において、揮散部56,56の中心が上下方向で重ならないようにずらして配置することを意味する。
【0035】
図7においては、図8に示す揮散体53を2枚重ね合わせた状態を示している。揮散体53には、吸液部材52の直径よりわずかに小さな中心穴58が開けられている。上方に設置される揮散体53は、その中心穴58に吸液部材52が挿通され、上部固定部材54と、該吸液部材52に挿通されたチューブ状のスペーサー部材60の上端とで挟持されて吸液部材52の一端に接触した状態で装着される。また、下方に設置される揮散体53は、その中心穴58に吸液部材52が挿通され、該吸液部材52に挿通されたスペーサー部材60の下端と、下部固定部材(図示せず)とで挟持されて吸液部材52の一端に接触した状態で装着される。なお、本実施形態の上部固定部材54は、揮散体53と同質の材料を用い、モミジの葉を模した形状に形成されることで、装飾性を更に高めている。ここで、スペーサー部材60は、2枚の揮散体53間の距離を保つ役割を果たすと同時に、その両端で揮散体53を固定する。また、スペーサー部材60は、吸液により揮散体53の重みが増して吸液部材52が傾いたりするのを防止する。スペーサー部材60の材質は非吸液性材料であれば特に限定されないが、揮散器の外観を保つために透明な樹脂などが好ましい。
【0036】
本発明の揮散器500はさらに、溶液50を収容する容器51の外側を、包装部材61で包装することで、さらに装飾性を高めることができる。包装部材61の材質としては、布帛、不織布、紙などが挙げられる。
【0037】
本発明の揮散器500はさらに、容器51の外側を、非吸液性包装部材62で包装することが好ましい。容器51を上記包装部材61に装着する場合は、包装部材61のさらに外側を、非吸液性包装部材62で包装することが好ましい。非吸液性包装部材62は、揮散体53を下方から支持する役割を果たす。これにより、揮散体53が溶液50を含浸して重みが増加したり、傾いたりしても、揮散体53の立体的形態を保持することができる。なお、複数箇所で支持できるよう、包装形態や高さを調整するのがよい。非吸液性包装部材62の材質としては、非吸液性であれば特に限定されないが、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ナイロン(登録商標)、ポリスチレンなどが挙げられる。材質が非吸液性であることで、溶液50を含浸することなく、揮散体53を支持することができる。また、非吸液性包装部材62は、容器51の底部に向けてすぼまる形態(上方が広がる形態)とすることで、揮散体53に含浸された溶液50が滴り落ちても周囲を汚すことがない。
【0038】
図9は、本発明に係る揮散体のさらなる一実施形態を示す平面図である。揮散体73は、吸液性を有するシート状部材をプレス加工などにより切抜加工して形成される。本実施形態においては、揮散体73は4つの揮散部76を一組として形成された揮散体ユニットからなる。各揮散部76は、それぞれ放射状に形成された5枚の小葉77を有するモミジの群葉形を模した形状(葉が群れて生い茂る様子を模した形状)に形成されている。そして、それぞれの揮散部76を構成する5枚の小葉77の内、1枚の小葉77Aは、他の揮散部76の小葉77Aと相互に連続するように形成されている。揮散体73ではさらに、各揮散部76の小葉77Aはその先端部が一点に集約されて相互に連続するように揮散体ユニットが形成されている。また、図9に示す揮散体73は、吸液部材等を挿通するための中心穴78を揮散体73の中心に設けているため、揮散体73が溶液を含浸しても一方に偏ることなく、より均一に溶液を揮散させることができる。
【0039】
なお、図9に示す実施形態における揮散体73は、4つの揮散部76を一組として形成された揮散体ユニットのみから構成されているが、揮散体ユニット周辺部(各小葉77)にさらなる小葉77が形成された構造とすることもできる。また、揮散体ユニットにおける小葉77と揮散部76の数は同数であることが好ましいが、これに限定されない。
【0040】
図10に、本発明に係る揮散器のさらなる一実施形態を示す。本実施形態の揮散器800は、図1に示した揮散器100と同様に、内部に香料や色素などの有効成分を含有する溶液80を収容する容器81と、吸液部材82と、揮散体83を備える。吸液部材82の一端(図示せず)には揮散体83が装着され、他端(図示せず)は溶液80に浸漬されている。吸液部材82は、容器81から溶液80を吸い上げて揮散体83に供給し、溶液80に含有される揮散成分を揮散体83から外部に揮散させる。
【0041】
揮散体83は、吸液性を有するシート状部材をプレス加工などにより切抜加工して形成される。図10、11に示すように、本実施形態においては、揮散体83は3つの揮散部86を一組として形成された揮散体ユニットからなる。各揮散部86は、それぞれ放射状に形成された5枚の小葉87を有するイチゴの群葉形を模した形状(葉が群れて生い茂る様子を模した形状)に形成されている。そして、それぞれの揮散部86を構成する5枚の小葉87の内、1枚の小葉87A(基部)は、他の揮散部86の小葉87A(基部)と相互に連続するように形成されている。揮散体83ではさらに、各揮散部86の小葉87A(基部)が一点に集約されて相互に連続するように揮散体ユニットが形成されている。
なお、図10または11に示す本実施形態における揮散体83は、この揮散体ユニットのみで構成されているが、揮散体ユニット周辺部(各小葉87)にさらなる葉が形成された構造とすることもできる。
【0042】
本発明の揮散器800の吸液部材82に装着される揮散体83の数は限定されず、1枚であっても装飾性を十分発揮できるが、複数の揮散体83が異なる位相で重ね合わされていることで外観が更に向上するため好ましい。ここで異なる位相で重ね合わされていることとは、図10に示すように、揮散体83の上面視において、揮散部86,86の中心が上下方向で重ならないようにずらして配置することを意味する。さらに、揮散体83は互いに近接して重なり合うことが好ましい。これにより、揮散体の総体積を同値とした場合、厚みのある揮散体を1枚で用いるよりも、薄い揮散体を複数枚近接して重ね合わせて用いる方が、揮散体83からの溶液80の揮散がより均一になる。また、近接して重なり合うことで相互に支持するため、揮散体を構成するシートの形状を保ち易く、外観が向上する。
【0043】
図10においては、図11に示す揮散体83を2枚重ね合わせた状態を示している。揮散体83には、吸液部材82の直径よりわずかに小さな中心穴88が開けられている。2枚の揮散体83は互いに近接した状態で、その中心穴88に吸液部材82が挿通され、上部固定部材84と下部固定部材(図示せず)とで挟持されて吸液部材82の一端に接触した状態で装着される。なお、本実施形態の上部固定部材84は、イチゴの花を模した形状に形成されることで、装飾性を更に高めている。さらに、本発明の揮散器800はイチゴの実を模した装飾部材8Aや、イチゴの葉を模した装飾部材8Bを併用することで、装飾性を更に高めている。
【0044】
また、本発明の揮散器800は揮散器500と同様に、溶液80を収容する容器81の外側を、包装部材61や非吸液性包装部材62で包装することができる。
【0045】
上記実施形態においては、揮散部は複数の花弁を有する花形として説明し、さらなる実施形態においては、複数の葉を有する群葉形として説明したが、これに限定されるものではない。また、本実施形態で示したアジサイ以外の花形、例えばサクラや、モミジ、イチゴ以外の葉、例えばクローバー等の形状を模してもよい。さらに、放射状に形成された複数の小片を有し、小片と同数のパターンからなる任意の形状のものに適用することができる。
【0046】
また、本発明の揮散体は、単にアジサイ等の花形や、モミジやイチゴ等の群葉形を模して平板状に切り抜くだけでなく、プレス加工などによって立体的に成型すれば、更に装飾性が向上する。更に、溶液10中に例えば、青色や赤色などの色素を含有させておけば、有効成分の揮散に共なってアジサイなどの花形を模した揮散体13が、時間経過と共に青色または赤色に変色して、実際のアジサイに近い状態を再現することもでき、優れた装飾性が得られる。また、溶液50中には赤色や黄色の色素を含有させることで、モミジの群葉形を模した揮散体53が徐々に変色して、実際の紅葉に近似した状態を表現することができる。さらに、揮散体自体を着色しておき、色素の吸液により色変わりさせれば、より視覚的な効果を高めることができる。
【0047】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。例えば、容器を花瓶の形状に形成してもよく、このような容器に花形を模した揮散体を取り付ければ、外観が更によくなって装飾性が向上する。さらに、見栄えを向上するために、他の花、葉、果実、動物、オブジェ等を併用してもよい。
【0048】
また、本発明の揮散体の用途としては、上記実施形態に係る揮散器のみに限定されない。例えば、揮散成分を含有した溶液を使用時に噴霧、塗布等の処理をすることで揮散体に含浸させ、容器11、51、または81の代替として台座等の適当な支持体に揮散体を設置して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る揮散器の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1における揮散器の縦断面図である。
【図3】本発明に係る揮散体の一実施形態を示す平面図である。
【図4】図3におけるA−A線での縦断面図である。
【図5】図3における揮散体の底面図である。
【図6】図3における揮散体の側面図である。
【図7】本発明に係る揮散器のさらなる一実施形態を示す斜視図である。
【図8】図7における揮散体の平面図である。
【図9】本発明に係る揮散体のさらなる一実施形態を示す平面図である。
【図10】本発明に係る揮散器のさらなる一実施形態を示す斜視図である。
【図11】図10における揮散体の平面図である。
【符号の説明】
【0050】
10、50、80 溶液
11、51、81 容器
12、52、82 吸液部材
12a 吸液部材の一端
12b 吸液部材の他端
13、53、73、83 揮散体
14、54、84 上部固定部材
15、 下部固定部材
16、56、76、86 揮散部
17 花弁
57、77、87 小葉
60 スペーサー部材
61 包装部材
62 非吸液性包装部材
8A、8B 装飾部材
100、500、800 揮散器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸液性のシートで形成され、
放射状に広がる複数枚の花弁を有する花形または放射状に広がる複数枚の葉を有する群葉形を模して形成された揮散部を複数備えた揮散体であって、
各揮散部の少なくとも一つの花弁または葉が他の揮散部の花弁または葉と相互に連続するように形成されたことを特徴とする揮散体。
【請求項2】
複数の前記揮散部を一組とする揮散体ユニットを有し、
前記揮散体ユニットが、各揮散部の一つの花弁または葉の先端部が一点に集約されて相互に連続するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の揮散体。
【請求項3】
前記揮散体ユニットが、花弁または葉と同数の前記揮散部を一組とすることを特徴とする請求項2に記載の揮散体。
【請求項4】
複数の前記揮散部を一組とする揮散体ユニットを有し、
前記揮散体ユニットが、各揮散部の一つの花弁または葉の基部が一点に集約されて相互に連続するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の揮散体。
【請求項5】
複数の前記揮散部を一組とする揮散体ユニットを有し、
前記揮散体ユニットが、各揮散部が環状に連なって相互に連続するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の揮散体。
【請求項6】
吸液性のシートで形成され、
放射状に広がる複数枚の花弁を有する花形または放射状に広がる複数枚の葉を有する群葉形を模して形成された揮散部を複数備え、
各揮散部の少なくとも一つの花弁または葉が他の揮散部の花弁または葉と相互に連続するように形成された揮散体と、
香料及び色素の少なくともいずれか一方が溶媒に溶解された溶液を収容する容器と、
一端に前記揮散体が装着され、他端が前記溶液に浸漬された吸液部材と、を備え、
前記吸液部材を介して供給される前記溶液を、前記揮散体から外部に揮散させることを特徴とする揮散器。
【請求項7】
前記揮散体が、複数の前記揮散部を一組とする揮散体ユニットを有し、
前記揮散体ユニットが、各揮散部の一つの花弁または葉の先端部が一点に集約されて相互に連続するように形成されていることを特徴とする請求項6に記載の揮散器。
【請求項8】
前記揮散体が、複数の前記揮散部を一組とする揮散体ユニットを有し、
前記揮散体ユニットが、各揮散部の一つの花弁または葉の基部が一点に集約されて相互に連続するように形成されていることを特徴とする請求項6に記載の揮散器。
【請求項9】
前記揮散体が、複数の前記揮散部を一組とする揮散体ユニットを有し、
前記揮散体ユニットが、各揮散部が環状に連なって相互に連続するように形成されていることを特徴とする請求項6に記載の揮散器。
【請求項10】
雄しべ及び/又は雌しべを模して形成され、前記吸液部材の一端に固着された上部固定部材と、
ガクを模して前記吸液部材に挿通可能なリング状に形成された下部固定部材と、を更に備え、
前記揮散体が、前記上部固定部材と前記下部固定部材とで挟持されて前記吸液部材に装着されることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の揮散器。
【請求項11】
複数の揮散体が、異なる位相で重ね合わされて前記吸液部材に装着されたことを特徴とする請求項6〜10のいずれかに記載の揮散器。
【請求項12】
前記溶液を収容する容器を包装する非吸液性包装部材をさらに備えることを特徴とする請求項6〜11のいずれかに記載の揮散器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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