説明

揮散器

【課題】交換時期を示す目安を明確に視認でき、気化性固体状物の減容状態に応じた交換時期を容易に判別することができる揮散器を提供することを目的としている。
【解決手段】空気に触れることで減容しつつ気化ガスを揮散する気化性固体状物2と、気化性固体状物2を保持する保持具3と、を備える揮散器1であって、保持具3には、気化性固体状物2を囲繞する環部31と、環部31の内周面に突設された支持部33と、が備えられ、支持部33が、環部31の内周面に対して交差する方向に向けて延設されていると共に気化性固体状物2の外周部の内側に埋設されており、支持部33を介して気化性固体状物2が支持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気に触れることで減容しつつ気化ガスを揮散する気化性固体状物を有する揮散器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の揮散器として、従来、例えば下記特許文献1に記載されているような、ゲル状又は固体状の芳香剤、防虫剤、殺虫剤、除虫剤等(気化性固体状物)が中空のケースの内側に充填された構成が知られている。上記したケースの内側には、角筒状の筒状部材がケースと同軸に配設されており、この筒状部材は、ケース内周面に突設された突出部を介してケースに支持されている。また、筒状部材及び突出部は、上記した気化性固体状物内にそれぞれ埋設されており、これら筒状部材及び突出部によって気化性固体状物が保持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−82506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した気化性固体状物は、空気に触れて気化ガスを揮散するのに伴い体積が徐々に縮小され、その体積の縮小に伴い気化ガスの揮散量が減少される。したがって、気化性固体状物を有する揮散器では、気化性固体状物の体積が一定以下になると、気化ガスの揮散量が不十分となり、揮散器の効能が十分に発揮されなくなる。このため、気化性固体状物を有する揮散器では、気化性固体状物が無くなるまで使用せず、気化性固体状物が小さくなって効能が発揮されなくなった時点で新しく交換することが望ましい。
【0005】
しかしながら、上記した従来の揮散器では、気化性固体状物の減容状態を目視で確認して交換時期を判断するため、交換時期を示す明確な目安がなく、交換時期が判別しにくいという問題がある。
【0006】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、交換時期を示す目安を明確に視認でき、気化性固体状物の減容状態に応じた交換時期を容易に判別することができる揮散器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る揮散器は、空気に触れることで減容しつつ気化ガスを揮散する気化性固体状物と、該気化性固体状物を保持する保持具と、を備える揮散器であって、前記保持具には、前記気化性固体状物を囲繞する環部と、該環部の内周面に突設された支持部と、が備えられ、該支持部が、前記環部の内周面に対して交差する方向に向けて延設されていると共に前記気化性固体状物の外周部の内側に埋設されており、前記支持部を介して前記気化性固体状物が支持されていることを特徴としている。
【0008】
このような特徴により、気化性固体状物は、その内側に埋設された支持部によって環部の内側に保持されている。また、気化性固体状物が空気に触れる状態に置かれると、気化性固体状物から気化ガスが揮散されると共に、気化性固体状物が外表面側から徐々に減容される。このように気化性固体状物の減容が進むに従い、気化性固体状物に埋設された支持部は基端側から先端側に向かって徐々に露出されていき、気化性固体状物が或る一定の大きさまで減容されると、気化性固体状物が支持部から外れて落下する。
なお、上記した「気化性固体状物」は、固体若しくはゲル状(半固体)の気化性を有する物体である。
【0009】
また、本発明に係る揮散器は、前記気化性固体状物が、前記環部の外側に膨出されていることが好ましい。
【0010】
これにより、気化性固体状物のうち、環部の外側に膨出された部分が露出されるので、気化性固体状物における露出面積が広くなる。気化性固体状物は、空気に触れて気化ガスを揮散するため、気化性固体状物の露出面積(空気に触れる表面積)が大きくなるほど、気化ガスの発生量が多くなる。したがって、気化性固体状物が環部の外側に膨出されて露出面積が広くなることで、気化ガスの発生量が増加される。
【0011】
また、本発明に係る揮散器は、前記環部に、該環部を介してカプセル状に組み合わされた一対のカップが脱着可能にそれぞれ装着されており、該一対のカップによって、前記気化性固体状物の両側の膨出部がそれぞれ成形されると共に該気化性固体状物が密封されていることが好ましい。
【0012】
これにより、揮散器を製造する際、まず、環部に一対のカップをそれぞれ装着させてカプセル状の成形型を組み立てる。その後、その環部と一対のカップとからなる成形型の内側に気化性固体状物の成形材料を充填する。これにより、環部が周設されていると共に両側に膨出部を有する気化性固体状物が成形される。また、カプセル状に組み合わされた一対のカップによって気化性固体状物が密封され、気化性固体状物と空気との接触が遮断される。つまり、気化性固体状物の成型時に成形型として用いられた一対のカップは、気化性固体状物を密封する密封容器としてそのまま利用されており、一対のカップは、気化性固体状物を成形するための成形型と、気化性固体状物を密封する密封容器と、を兼ねている。そして、上記した揮散器を使用する際には、環部から上記した一対のカップをそれぞれ取り外すことで、気化性固体状物の膨出部が空気に触れる状態となり、気化性固体状物の膨出部から気化ガスが揮散される。
【0013】
また、本発明に係る揮散器は、前記支持部が、前記環部の径方向に沿って延在されていると共に前記環部の周方向に互いに間隔をあけて複数配設されていることが好ましい。
【0014】
これにより、周方向に並べられた複数の支持部によって気化性固体状物が支持され、これら複数の支持部の各先端の先方の空間よりも気化性固体状物が小さくなったところで、気化性固体状物が複数の支持部から外れて落下する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る揮散器によれば、気化性固体状物が或る一定の大きさまで減容されると、気化性固体状物が支持部から外れて落下するので、気化性固体状物が支持部から落下することが交換時期を示す目安となる。したがって、交換時期を示す目安を明確に視認でき、気化性固体状物の減容状態に応じた交換時期を容易に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態を説明するための揮散器の半断面図である。
【図2】本発明の実施の形態を説明するための気化性固体状物及び保持具の斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態を説明するための気化性固体状物、保持具及び一対のカップの半断面図である。
【図4】本発明の実施の形態を説明するための気化性固体状物の成形方法を表した半断面図である。
【図5】本発明の実施の形態を説明するための揮散器の使用状態を表した断面図である。
【図6】本発明の実施の形態を説明するための揮散器の使用状態を表した断面図である。
【図7】本発明の実施の形態を説明するための揮散器の使用状態を表した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る揮散器の実施の形態について、図面に基いて説明する。
なお、図1に示す符号Oは、後述する内環部31(本発明の環部に相当する。)の中心軸線を示しており、以下「軸線O」と記す。また、本発明では、この軸線Oに沿った方向を「軸方向」とし、軸線Oに直交する方向を「径方向」とし、軸線O回りの方向を「周方向」とする。また、本実施の形態では、軸方向の一方側(図1における上側)を「上」とし、軸方向の他方側(図1における下側)を「下」とする。
【0018】
図1に示すように、揮散器1は、空気に触れることで減容しつつ気化ガスを揮散する気化剤2(本発明の気化性固体状物に相当する。)と、気化剤2を保持する保持具3と、気化剤2を密封する一対のカップ4A,4Bと、保持具3を支持すると共に気化剤2を収容したケース5と、を備えている。なお、上記した気化剤2と保持具3と一対のカップ4A,4Bとによってケース5に対して脱着可能な揮散器本体10(図3に示す)が形成されており、本実施の形態における揮散器1は、揮散器本体10を交換することで繰り返し使用可能な揮散器である。
【0019】
図1、図2に示すように、気化剤2は、空気に触れることで例えば芳香、消臭、防虫、殺虫、除虫等の効果を持つ気化ガスを発生する物体であり、一定の形状を有するブロック状の気化剤である。また、気化剤2は、後述する内環部31の内側に保持されていると共にその内環部31の内側から外側に膨出されている。詳しく説明すると、気化剤2は、気化性を有する原材料(成形材料21)を略球状に成形したゲル状(半固体)のボール状物であり、後述する内環部31の軸方向端部(開口端)から内環部31の外方に向けて膨出された半球状の膨出部20A,20Bが上下にそれぞれ形成されている。なお、気化剤2は、ゲル状の物体でなくてもよく、固体であってもよい。
【0020】
保持具3は、軸方向に延在する外環部30と、外環部30の内側に配設された内環部31と、外環部30と内環部31とを連結する連結部32と、気化剤2を支持する支持部33と、を備えている。外環部30は、軸線Oを中心軸線にして配設された円筒形状のリングである。内環部31は、気化剤2を囲繞する円筒形状のリングであり、気化剤2の軸方向中央部分の外周に軸線O回りに周設されている。また、内環部31は、外環部30よりも小径のリングであり、軸線Oを共通軸にして外環部30と同軸上に配設されている。連結部32は、軸線Oに対する垂直面(径方向)に沿って延設された円環状の板部であり、外環部30と内環部31との間に配設されている。連結部32の外縁は外環部30に一体に連結されており、連結部32の内縁は内環部31に一体に連結されている。上記した外環部30と内環部31とは軸方向の長さ寸法が略同一であり、また、連結部32は外環部30や内環部31の軸方向の中央部分に配設されており、外環部30と内環部31と連結部32とは縦断面視H字状に形成されている。
【0021】
支持部33は、内環部31の内周面に突設された板部であり、略球状の気化剤2の外周部の内側に埋設されている。つまり、支持部33は、気化剤2の中心部分を回避した位置に配設されている。また、支持部33は、内環部31の内周面に対して交差する方向に向けて延設されている。詳しく説明すると、支持部33は、縦向き(板厚方向を水平にした向き)に配設された矩形状の板部であり、内環部31の径方向に沿って延設されている。また、支持部33は、径方向の寸法が軸方向の寸法よりも長い長方形状の板部である。この支持部33の基端(内環部31の径方向外側の端部)は、内環部31の内周面に一体に連結されており、支持部33は、内環部31の内周面に片側支持されている。
【0022】
また、支持部33は、周方向に互いに間隔をあけて複数配設されている。具体的には、4枚の支持部33が周方向に均等に配置されており、軸線Oを挟んで対向する支持部33,33は、軸線Oを対称軸にして線対称に形成されている。また、支持部33の突出長さ(径方向の長さ寸法)は、内環部31の内周半径よりも短く、支持部33は、内環部31の内周面から内環部31の中心(軸線O)の手前まで延設され、軸線Oを挟んで対向する支持部33,33の各先端面の間には、所望の効果が期待できる気化剤2の最小径よりも大きい間隔があけられている。
【0023】
図1、図3に示すように、一対のカップ4A,4Bは、上記した内環部31に脱着可能にそれぞれ装着されており、内環部31を介してカプセル状に組み合わせられるカップである。これら一対のカップ4A,4Bは、上記した気化剤2の上下の膨出部20A,20Bをそれぞれ成形するための成形型であると共に、内環部31を介して組み合わされることで、気化剤2を密封する密閉容器となる部材である。
【0024】
詳しく説明すると、カップ4A,4Bの開口端には、軸方向に延設する円筒形状の嵌合筒部41が設けられている。この嵌合筒部41は、カップ4A,4Bの開口端よりも大径であって内環部31の外側に脱着可能に嵌合される筒部であり、開口端から径方向外側に向けて延びた段差部40を介してカップ4A,4Bの開口端に連結されている。具体的には、下側のカップ4Aは、その上端に設けられた嵌合筒部41が内環部31の下部(連結部32よりも下側の部分)の外周に嵌合されることで、内環部31に装着されている。また、上側のカップ4Bは、その下端に設けられた嵌合筒部41が内環部31の上部(連結部32よりも上側の部分)の外周に嵌合されることで、内環部31に装着されている。
【0025】
また、一対のカップ4A,4Bは、略半球状のカップであり、上下対称に配設されることで略球状を成している。球状に組み合わされた一対のカップ4A,4Bの内側には上記した気化剤2が収容されており、これらのカップ4A,4Bによって気化剤2の膨出部20A,20Bの外表面が被覆されている。なお、カップ4A,4Bの内周面は、気化剤2の膨出部20A,20Bの外表面に密接されている。
【0026】
また、一対のカップ4A,4Bのうちの一方のカップ(下側のカップ4A)には、気化剤2の成形材料21(図4に示す。)を注入するための注入口42が形成され、その注入口42は、封止部材43によって封止されている。注入口42は、カップ4Aの内部に連通された円筒形状の筒部であり、カップ4Aの底部の中央部分からカップ4Aの外方側(下側)に向けて突出されている。封止部材43は、上記した筒状の注入口42に被着される有底円筒形状のキャップであり、注入口42に対して嵌合若しくは螺合されている。
【0027】
図1に示すように、ケース5は、上下に分割可能なカプセル状の容器であり、その概略構成としては、気化剤2の下部(膨出部20A)を収容すると共に保持具3を支持する台座50と、台座50の上方に被せられて気化剤2の上部(膨出部20B)を収容する上蓋51と、を備えている。
【0028】
台座50は、上端が開口された椀状の有底筒体であり、台座50の上端開口部には、上記した外環部30が脱着可能に装着されている。詳しく説明すると、台座50の概略構成としては、下方に向かう従い漸次縮径された周壁部52と、周壁部の下端に設けられた底部53と、が備えられている。周壁部52の上端部の内周面には、内径が全周に亘って段差状に拡径された装着部54が形成されており、この装着部54の内側に、上記した外環部30の下部が脱着可能に嵌合されている。
【0029】
上蓋51は、下端が開口された略半球形状の蓋体であり、上記した外環部30に脱着可能に装着されている。詳しく説明すると、上蓋51の下端部の内周面には、内径が全周に亘って段差状に拡径された装着部55が形成されており、この装着部55の内側に、上記した外環部30の上部が脱着可能に嵌合されている。
また、上記した台座50(周壁部52)及び上蓋51には、複数の開口56が形成されており、これらの開口56を介してケース5の内外が連通されている。
【0030】
次に、上記した気化剤2と保持具3と一対のカップ4A,4Bとからなる揮散器本体10の製造方法について説明する。
【0031】
まず、図4に示すように、保持具3の内環部31に一対のカップ4A,4Bをそれぞれ装着させる工程を行う。具体的に説明すると、一方のカップ4Aの嵌合筒部41を内環部31の一端部の外周に嵌合させると共に、他方のカップ4Bの嵌合筒部41を内環部31の他端部の外周に嵌合させる。これにより、一対のカップ4A,4Bが内環部31を介してカプセル状に組み合わされ、これら一対のカップ4A,4Bからなる略球状の成形型が完成する。なお、これら一対のカップ4A,4Bからなる成形型の内側には、リング状の内環部31及び複数の支持部33がそれぞれ配置されている。
【0032】
次に、一対のカップ4A,4Bからなる上記した成形型の中に気化剤2の成形材料21を充填して気化剤2を成形する工程を行う。具体的に説明すると、予め、一方のカップ4Aに設けられた注入口42から封止部材43を取り外しておく。また、一対のカップ4A,4Bのうち、注入口42が設けられた一方のカップ4Aが他方のカップ4Bの上方に配置されるように成形型(一対のカップ4A,4B)をセットする。そして、図示せぬ注入機によって、上方に向けて突出された注入口42から流体状の気化剤2の成形材料21を一対のカップ4A,4Bの内側に注入し、一対のカップ4A,4Bの内側に成形材料21を充填する。これにより、一対のカップ4A,4Bの内側にゲル状の気化剤2が成形される。この気化剤2の軸方向中央部分には内環部31が周設され、また、気化剤2の内側には、複数の支持部33が埋設されている。また、気化剤2の成形完了後、注入口42に封止部材43を被着させて注入口42を封止する。これにより、一対のカップ4A,4Bが密閉され、気化剤2が外気から遮断される。つまり、一対のカップ4A,4Bが、気化剤2を収容する密閉容器となり、気化剤2の気化が抑制される。
以上により、気化剤2と保持具3と一対のカップ4A,4Bとからなる揮散器本体10が完成する。
なお、商品の流通段階においては、一対のカップ4A,4Bを装着した状態の揮散器本体10をケース5内に配置しておくことができる。この時、キャップが被着された円筒形状の注入口42が、台座50の底部53上に載置されることで、揮散器本体10の安定した収納状態が維持される。
【0033】
次に、上記した構成からなる揮散器1の使用方法について説明する。
【0034】
まず、揮散器本体10から一対のカップ4A,4Bをそれぞれ取り外す工程を行う。具体的に説明すると、例えば、図1に示すように揮散器本体10がケース5の内側に収容されている場合には、まず、台座50から上蓋51を取り外してケース5を開封し、ケース5内の揮散器本体10を取り出す。続いて、保持具3の内環部31を介して組み合わされたカプセル状の一対のカップ4A,4Bを開封する。すなわち、一対のカップ4A,4Bの各嵌合筒部41を内環部31から引き抜き、一対のカップ4A,4Bを内環部31からそれぞれ取り外す。これにより、気化剤2の膨出部20A,20Bが露出される。なお、一対のカップ4A,4Bを取り外す前に、上記した注入口42に被着された封止部材43を取り外すことが好ましい。これにより、注入口42からカプセル状の一対のカップ4A,4Bの内側に外気が流入し、一対のカップ4A,4Bが内環部31及び気化剤2から取り外し易くなる。
【0035】
次に、図5に示すように、保持具3によって保持された気化剤2をケース5に収納する工程を行う。具体的に説明すると、台座50の装着部54の内側に保持具3の外環部30の下部を嵌合させ、気化剤2を保持する保持具3を台座50に載せる。これにより、台座50の内側に気化剤2の下側の膨出部20Aが収納される。次に、上蓋51の装着部55を保持具3の外環部30の上部に嵌合させ、台座50の上に上蓋51を被着させる。これにより、上蓋51の内側に気化剤2の上側の膨出部20Bが収納される。以上により、気化剤2が、保持具3の内環部31の内側に保持されると共に、その保持具3を介して支持された状態でカプセル状のケース5の内側に収納される。また、ケース5には複数の開口56が形成されており、これらの開口56からケース5内に空気が流入するため、ケース5内に収納された気化剤2は外気に晒された状態となる。
【0036】
次に、上記した構成からなる揮散器1の作用について説明する。
【0037】
図5に示すように、気化剤2が空気に触れる状態に置かれると、気化剤2の外表面が気化して気化剤2から所望の効能を有する気化ガスが揮散される。この気化ガスは、ケース5の複数の開口56からケース5の外部に放出され、これによって、気化ガスによる所望の効果が得られる。また、上記した気化剤2は内環部31の外側に膨出されており、その膨出された部分(膨出部20A,20B)が露出されているので、上記した気化剤2では、広い露出面積(外表面のほぼ全面)が確保され、十分な量の気化ガスが発生される。
【0038】
また、図6に示すように、気化剤2の外表面が気化するのに伴い、気化剤2が外表面側から徐々に減容される。すなわち、略球状の気化剤2は、空気に触れた状態に置かれると、気化ガスを揮散すると共に漸次縮径されていく。このように気化剤2の減容が進むに従い、気化剤2に埋設された支持部33は基端側から先端側に向かって徐々に露出されていき、支持部33の気化剤2に対する定着長(気化剤2に埋設されている部分の長さ)は漸次短くなっていく。
【0039】
そして、図7に示すように、気化剤2が或る一定の大きさまで減容されると、つまり、軸線Oを挟んで対向する支持部33,33の各先端面間の間隔よりも小さくなったところで、気化剤2が支持部33から外れて落下する。すなわち、気化剤2が所望の効果を発揮するのに必要な大きさ(所望の効果が期待できる気化剤2の最小径)よりも小さくなると、気化剤2が支持部33によって支持されなくなり、台座50の底部53上に落下する。
【0040】
上記した揮散器1によれば、気化剤2が所望の効果を発揮するのに必要な大きさよりも小さくなると支持部33から外れて落下するので、気化剤2が落下したことが交換時期を示す目安となる。つまり、気化剤2が支持部33から外れて落下したら新たな揮散器本体10に交換すればよく、交換時期を示す目安を明確に視認でき、気化剤2の減容状態に応じた交換時期を容易に判別することができる。
【0041】
また、上記した揮散器1では、気化剤2が内環部31の外側に膨出されており、気化剤2の広い露出面積が確保されているので、十分な量の気化ガスを発生させることができ、気化ガスによる揮散器1の効能を十分に発揮させることができる。
【0042】
また、上記した揮散器1では、気化剤2の成形時に成形型として用いられた一対のカップ4A,4Bは、気化剤2を密封する密封容器としてそのまま利用されており、一対のカップ4A,4Bは、気化剤2を成形するための成形型と気化剤2を密封する密封容器とを兼ねているので、気化剤2の成形後に成形型(一対のカップ4A,4B)の脱型作業を行う必要が無く、また、気化剤2を密封する密封作業を行う必要もない。これにより、生産性の向上とコストダウンを図ることができる。
【0043】
また、上記した揮散器1では、複数の支持部33が、内環部31の径方向に沿って延在されていると共に内環部31の周方向に互いに間隔をあけて配設されているので、ゲル状の気化剤2を確実に保持することができると共に、気化剤2が上記した所定の大きさまで減容されたところで気化剤2を確実に落下させることができ、交換時期を確実に示すことができる。
しかも、上記した支持部33は、縦置きに配設された板状の部材であるので、強度を確保しつつ支持部33の体積を抑えることができ、コスト削減を図ることができる。
【0044】
以上、本発明に係る揮散器の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、上記した実施の形態では、台座50と上蓋51とからなる分割可能なカプセル状のケース5が備えられ、台座50に保持具3が支持されていると共に、ケース5の内側に気化剤2が収納されているが、本発明は、上記した形状のケース5を有するものに限定されるものではなく、上記したケース5以外の形状のケースを用いることも可能である。さらに、本発明は、ケースが省略され、ケース以外の他の部材によって保持具3が支持されていてもよく、例えば、保持具3を紐等で吊り下げ支持する構成であってもよく、或いは、保持具3に台座等が一体に形成されていてもよい。
【0045】
また、上記した実施の形態では、軸線Oを鉛直にした向きで保持具3が設置されているが、本発明は、保持具3の向きは適宜変更可能であり、例えば軸線Oを水平にした向きで保持具3が設置されていてもよい。
【0046】
また、上記した実施の形態では、径方向に延在する矩形板状の支持部33が周方向に複数配設されているが、本発明は、支持部の数や位置、形状は適宜変更可能である。
具体的には、上記した実施の形態では、4枚の支持部33が周方向に均等に配設されているが、本発明は、2枚の支持部が軸線Oを挟んで対称に配置されてもよく、或いは1枚の支持部で気化剤2を支持することも可能である。
また、上記した実施の形態では、支持部33が縦置きに配設された矩形状の板部からなるが、板状の支持部が横置きに配置されていてもよく、或いは、棒状の支持部であってもよい。
また、上記した実施の形態では、支持部33が内環部31の内周面に対して垂直に突設されており、支持部33が径方向に延在されているが、本発明は、径方向以外の方向に延在する支持部であってもよく、例えば、径方向内側に向かって下向きに傾斜した支持部であってもよい。
また、本発明は、気化剤2の中心部分を回避した位置に支持部33が配設されていればよく、支持部の先端部分、及び/又は中間部分を周方向に連結してもよい。この場合、例えば環状の連結部材によって全ての支持部を周方向に連結してもよいが、例えば平面視円弧状の連結部材によって複数の支持部のうちの一部を連結してもよい。さらに、支持部が、周方向に沿った円環状または円弧状のフランジ部であってもよい。
【0047】
また、上記した実施の形態では、成形型と密閉容器とを兼ねる一対のカップ4A,4Bが備えられ、下側のカップ4Aに円筒形状の注入口42が設けられ、その注入口42にキャップ状の封止部材43が装着されているが、本発明は、注入口が単なる開口であってもよく、また、注入口をシール材(封止部材)によって封止することも可能である。また、上記した一対のカップ4A,4Bを成形型として使用しない場合には、注入口及び封止部材を省略することも可能である。さらに、本発明は、上記した一対のカップ4A,4Bを省略することも可能である。例えば、気化剤2の成形後に成形型を脱型し、その後、気化剤2にカバーや被覆シートを被着させてもよい。
【0048】
また、上記した実施の形態では、略球状の気化剤2が設けられているが、本発明は、気化性固体状物の形状は適宜変更可能であり、例えば、立方体形状や円柱形状、角柱形状の気化性固体状物であってもよい。
【0049】
また、上記した実施の形態では、保持具3に、円筒形状の外環部30と、円筒形状の内環部31と、円環状の連結部32と、が備えられているが、本発明は、外環部30や連結部32を適宜省略することも可能であり、また、円筒形状以外の他の形状の環部(内環部31)であってもよく、例えば、断面視円形のOリング状の環部であってもよい。
【0050】
その他、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 揮散器
2 気化剤(気化性固体状物)
3 保持具
4A、4B 一対のカップ
20A、20B 膨出部
31 内環部(環部)
33 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気に触れることで減容しつつ気化ガスを揮散する気化性固体状物と、該気化性固体状物を保持する保持具と、を備える揮散器であって、
前記保持具には、前記気化性固体状物を囲繞する環部と、該環部の内周面に突設された支持部と、が備えられ、
該支持部が、前記環部の内周面に対して交差する方向に向けて延設されていると共に前記気化性固体状物の外周部の内側に埋設されており、
前記支持部を介して前記気化性固体状物が支持されていることを特徴とする揮散器。
【請求項2】
請求項1に記載の揮散器において、
前記気化性固体状物が、前記環部の外側に膨出されていることを特徴とする揮散器。
【請求項3】
請求項2に記載の揮散器において、
前記環部には、該環部を介してカプセル状に組み合わされた一対のカップが脱着可能にそれぞれ装着されており、
該一対のカップによって、前記気化性固体状物の両側の膨出部がそれぞれ成形されると共に該気化性固体状物が密封されていることを特徴とする揮散器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の揮散器において、
前記支持部は、前記環部の径方向に沿って延在されていると共に前記環部の周方向に互いに間隔をあけて複数配設されていることを特徴とする揮散器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−330(P2011−330A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146944(P2009−146944)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】