説明

揮散容器

【課題】不具合を防止しつつ、設計の自由度を高めることができる揮散容器を提供する。
【解決手段】ゲル剤2を収容した容器状のゲル剤収容部11と、ゲル剤収容部11の開口部31を下方へ向けた状態でゲル剤収容部11を支持する容器状の支持部41とからなる。支持部41の周面52が底面51へ向かうに従って内側に傾斜するような半球状に形成し、この周面52に揮散口71を開設する。ゲル剤収容部11を支持部41にセットした状態で、揮散口71の下端部がゲル剤収容部11の開口部31の下側に位置するように当該揮散口71を配置する。ゲル剤収容部11の開口部31からゲル剤2が膨出した際にゲル剤2に当接するリブ81を支持部41の底面51に立設し、各リブ81を支持部41の周面52側から支持部中心方向へ向けて延設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮散体を揮散させる揮散容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゲル状の芳香剤等を揮散する際には、揮散容器が使用されていた(例えば、特許文献1から特許文献4参照。)。
【0003】
これらの揮散容器は、ゲル剤を収容したゲル剤収容部と、該ゲル剤収容部を支持する支持部とによって構成されており、該支持部は、前記ゲル剤収容部の開口部を下方へ向けた状態で、当該ゲル剤収容部を支持できるように構成されている。
【0004】
前記支持部は、容器状に形成されており、垂直に起立した周面に揮散口が設けられている。(例えば、特許文献2から特許文献4参照。)。これにより、前記ゲル剤収容部に収容されたゲル剤から揮散した芳香剤等の薬剤を外部に放出できるように構成されている。
【0005】
また、前記支持部としては、デザイン性を高めたものが知られており(例えば、特許文献1参照。)。当該揮散容器の支持部は、その周壁の直径が底面に向かうに従って狭くなるように形成されている。
【0006】
このような揮散容器にあっては、前記ゲル剤は、保存状態においてゲル化していた水、有機溶媒等が離水するという現象が起こる場合がある。この場合、前記ゲル剤収容部の開口部より露出したゲル剤表面に水滴が貯まり、当該水滴が滴下し、設置面を汚す場合がある。
【0007】
このため、滴下した水滴が前記揮散口から外部に漏れないように、前記ゲル剤収容部の開口部の真下に前記揮散口が開口しないように工夫する必要がある。
【0008】
すなわち、前述した特許文献1では、第6図及び第7図に示されているように、揮散口の下縁がゲル剤収容部の開口部の投影面より外側に位置するように設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開昭60−180434号公報
【特許文献2】特開平09−299469号公報
【特許文献3】特開平09−299470号公報
【特許文献4】特開平10−005322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このような従来の揮散容器にあっては、揮散口の下縁がゲル剤収容部の開口部の投影面より外側に位置するように設定しなければならなかった。
【0011】
このため、前記ゲル剤収容部の開口部を狭くする、あるいは前記揮散口を外側に設ける等の制約があり、設計の自由度が制限されていた。
【0012】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、不具合を防止しつつ、設計の自由度を高めることができる揮散容器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために本発明の請求項1の揮散容器にあっては、ゲル剤を収容した容器状のゲル剤収容部と、該ゲル剤収容部の開口部を下方へ向けた状態で当該ゲル剤収容部を支持する容器状の支持部とを備え、該支持部の周面が底面へ向かうに従って内側に傾斜するとともに当該周面に揮散口が開設された揮散容器において、前記ゲル剤収容部を前記支持部にセットした状態で、前記揮散口の少なくとも一部が前記ゲル剤収容部の前記開口部の下側に位置するように当該揮散口を配置する一方、前記ゲル剤収容部の前記開口部から前記ゲル剤が膨出した際に当該ゲル剤に当接するリブを前記支持部の前記底面に起立し、当該リブを前記支持部の前記周面側から当該支持部の中心方向へ向けて延設した。
【0014】
すなわち、ゲル剤から揮散される薬剤は、一般的に空気より重い。このため、ゲル剤収容部の開口部を下方へ向けた状態で支持部に支持することで、前記ゲル剤収容部内のゲル剤から揮散された薬剤を、前記ゲル剤収容部より効率良く供給することができる。
【0015】
このとき、前記ゲル剤から揮散された薬剤は、容器状に形成された前記支持部の底面側に貯留される。このため、この薬剤を前記支持部から効率的に外部へ供給するには、前記支持部の周面に開設された揮散口を、できるだけ前記底面側に設けることが望ましい。
【0016】
一方、前記支持部の前記周面は、デザイン上、前記底面へ向かうに従って内側に傾斜するように構成されており、本願発明では、この傾斜した周面に開口する揮散口は、少なくともその一部が前記ゲル剤収容部の前記開口部の下側に位置するように当該揮散口が前記底面側に配置され、揮散薬剤の揮散効率の向上が図られている。
【0017】
このとき、前記揮散口は、その開口部分の一部が前記ゲル剤収容部の前記開口部の下方に回り込んでしまう。つまり、本願発明では、前記ゲル剤収容部を前記支持部にセットした状態で、前記揮散口の少なくとも一部が前記ゲル剤収容部の前記開口部の下側に位置するように当該揮散口が配置されている。
【0018】
ここで、前記ゲル剤は、離水する場合がある。これにより、前記ゲル剤収容部の前記開口部より露出した前記ゲル剤の表面に水滴が貯まり、この水滴が前記揮散口を介して外部に漏れる恐れがある。
【0019】
そこで、本願発明では、前記支持部の前記底面に、リブが起立されており、前記ゲル剤収容部の前記開口部から前記ゲル剤が膨出した際に当該ゲル剤が前記リブに当接するように構成されている。
【0020】
このため、前記開口部から膨出した前記ゲル剤は、前記リブによって下方から支持されるとともに、当該ゲル剤の表面に付着した水滴は、前記リブの上縁や側面に沿って流れることで、当該支持部の底部に案内される。
【0021】
このとき、前記リブは、前記支持部の前記周面側から当該支持部の中心方向へ向けて延設されている。このため、前記リブの上縁に沿って流れた水滴は、当該支持部の中心部に集められる。
【0022】
また、請求項2の揮散容器においては、前記リブの上縁が前記周面側から前記中心方向へ向かうに従って低くなるように設定した。
【0023】
すなわち、前記リブは、その上縁が周面側から中心方向へ向かうに従って低くなるように設定されており、当該リブに伝った水滴は、前記上縁に沿って前記中心方向へ案内される。
【0024】
また、前記ゲル剤収容部の開口部から膨出した前記ゲル剤は、中心部が下方に突出するように球面状に膨出する場合がある。
【0025】
このとき、前記リブは、その上縁が中心方向へ向かうに従って低くなるように設定されているため、当該リブは、その上縁が下方に膨出した前記ゲル剤の表面に線接触する。
【0026】
これにより、前記リブの上縁が前記ゲル剤表面に点接触する場合と比較して、接触面積の増大が図られる。
【0027】
さらに、請求項3の揮散容器では、前記リブを複数設けるとともに、各リブの先端を離間して各リブの先端側に連通空間を設け、前記各リブで区画された各側方空間を前記連通空間を介して連通可能に構成した。
【0028】
すなわち、前記支持部の前記周面側から中心方向へ延設された前記リブは、複数設けられており、前記開口部より膨出した前記ゲル剤が前記各リブの上縁に接した状態においては、各リブの側方に設けられた側方空間が当該リブによって区画されてしまう。
【0029】
このとき、前記各リブの先端は、離間するように構成されており、各リブの先端側に連通空間が形成されている。このため、前記各リブで区画された側方空間内で揮散した薬剤は、前記連通空間を介して各側方空間に流通し、その濃度が一定化される。そして、濃度が一定化された薬剤は、各側方空間に連通した揮散口より外部へ供給される。
【0030】
加えて、請求項4の揮散容器にあっては、前記ゲル剤収容部における前記開口部の周縁部に被係合部を設ける一方、前記リブの前記周面側の端部に上方へ延出する舌片を設け、前記ゲル剤収容部を前記支持部にセットした状態で、前記ゲル剤収容部の前記被係合部と係合する係合部を前記舌片の先端部に設けた。
【0031】
すなわち、前記ゲル剤収容部における前記開口部の周縁部には、被係合部が設けられており、前記リブの前記周面側の端部には、上方へ延出する舌片が設けられるとともに、該舌片の先端部には、前記ゲル剤収容部を前記支持部にセットした状態で、前記ゲル剤収容部の前記被係合部と係合する係合部が設けられている。
【0032】
このため、前記ゲル剤収容部を前記支持部にセットした際には、前記リブの端部に設けられた舌片先端の係合部が前記ゲル剤収容部の前記被係合部に係合することによって、前記支持部からの前記ゲル剤収容部の不用意な離脱が防止される。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように本発明の請求項1の揮散容器にあっては、ゲル剤を収容したゲル剤収容部を、その開口部を下向きにした状態で支持できるため、空気より重い揮散薬剤を、前記ゲル剤収容部から効率的に取り出すことができる。
【0034】
このとき、下向きに配置した前記ゲル剤収容部の開口部から前記ゲル剤が膨出することがあるが、このゲル剤を前記支持部に設けられたリブで支持することができる。これにより、前記ゲル剤の不用意な飛び出しを確実に防止することができる。
【0035】
そして、空気より重い揮散薬剤は、前記支持部の底部側に貯まる傾向にある。しかし、前記支持部の周面に設けられた供給口を底面寄りの部位まで設けることで、前記支持部内に貯留した前記揮散薬剤を効率的に外部へ供給することができる。
【0036】
これにより、前記ゲル剤収容部を下向きに配置したことによる不具合を防止しつつ、前記ゲル剤から揮散した揮散薬剤を効率的に供給することができる。
【0037】
一方、前記ゲル剤収容部の開口部から露出した前記ゲル剤の表面は、水滴が付着することがある。このとき、前記支持部の前記底面には、前記開口部から膨出した前記ゲル剤に当接する前記リブが立設されており、前記ゲル剤表面に付着した水滴を前記リブに沿って案内することで、当該水滴を前記支持部の底部に集めることができる。
【0038】
このとき、前記リブは、前記支持部の前記周面側から当該支持部の中心方向へ向けて延設されている。このため、前記水滴を前記リブの上縁に沿って流すことで、この水滴を当該支持部の中心部に集めることができる。
【0039】
このように、前記ゲル剤表面に発生した水滴を前記リブによって前記支持部の底部に案内することができるので、前記ゲル剤表面からの水滴の滴下を未然に防止することができる。
【0040】
このため、本願発明のように前記支持部の周面を底面側へ向かうに従って内側に傾斜するデザインとするとともに、揮散効率を高める為に前記揮散口の少なくとも一部が前記ゲル剤収容部の前記開口部の下側に位置するように当該揮散口を下部側に配置した場合であっても、該揮散口から外部への前記水滴の漏れを確実に防止することができる。
【0041】
したがって、前記ゲル剤収容部の開口部の真下に前記揮散口が開口しないように、前記開口部を小さくしたり、前記揮散口を高位置に配置しなければならなかった従来と比較して、液漏れ等の不具合を防止しつつ、デザイン設計時の自由度を高めることができる。
【0042】
また、請求項2の揮散容器においては、前記リブの上縁が周面側から中心方向へ向かうに従って低くなるように設定したため、当該リブに伝った水滴を、前記上縁に沿って前記支持部の中心部に集めることができる。
【0043】
一方、前記ゲル剤収容部の開口部から膨出した前記ゲル剤は、中心部が下方に位置するように球面状に突出することとなる。このとき、前記リブは、その上縁が中心方向へ向かうに従って低くなるように設定されているため、当該リブの上縁を、下方に膨出した前記ゲル剤の表面に線接触させることができる。
【0044】
これにより、前記リブの上縁が前記ゲル剤表面に点接触する場合と比較して、接触面積の増大を図ることができ、当該リブによる前記水滴の収集効果を高めることができる。
【0045】
さらに、請求項3の揮散容器では、前記支持部の前記周面側から中心方向へ向けて延在する前記リブが複数設けられており、前記開口部より膨出した前記ゲル剤が前記各リブの上縁に接した状態において、各リブの側方に設けられた側方空間が当該リブによって区画されてしまう。
【0046】
このとき、前記各リブの先端は、離間するように構成されており、各リブの先端側に連通空間が形成されている。このため、前記各リブで区画された各側方空間内で揮散した薬剤を、前記連通空間を介して各側方空間に流通することができ、各側方空間での揮散薬剤の濃度を一定にすることができる。
【0047】
これにより、濃度が一定化された薬剤を、各側方空間に連通した揮散口より外部へ供給することができ、供給方向によって薬剤濃度が変化するといった不具合を未然に解消することができる。
【0048】
加えて、請求項4の揮散容器にあっては、前記ゲル剤収容部における前記開口部の周縁部には、被係合部が設けられており、前記リブの前記周面側の端部には、上方へ延出する舌片が設けられるとともに、該舌片の先端部には、前記ゲル剤収容部を前記支持部にセットした状態で、前記ゲル剤収容部の前記被係合部と係合する係合部が設けられている。
【0049】
このため、前記ゲル剤収容部を前記支持部にセットした際には、前記リブの端部に設けられた舌片先端の係合部を前記ゲル剤収容部の前記被係合部に係合することで、前記支持部からの前記ゲル剤収容部の不用意な離脱を防止することができる。
【0050】
これにより、前記ゲル剤収容部を保持して移動する等の利用形態が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施の形態を示す側面図である。
【図2】同実施の形態を示す図で、(a)はゲル剤収容部の側面図であり、(b)はゲル剤収容部の底面図である。
【図3】同実施の形態のゲル剤収容部にゲル剤を収容する状態を示す説明図であり、(a)はゲル剤を充填する状態を示す図で、(b)は充填したゲル剤をゲル化する状態を示す図である。
【図4】同実施の形態の支持部を示す平面図である。
【図5】図3のA−A線に沿った断面図を示す説明図である。
【図6】図4の要部を示す拡大図である。
【図7】同実施の形態のスタッキング状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明の一実施の形態を図に従って説明する。
【0053】
図1から図6は、本実施の形態にかかる揮散容器1を示す図であり、この揮散容器1は、ゲル剤2(図5参照)に含まれた芳香剤等の薬剤を揮散するものである。
【0054】
図2には、前記揮散容器1の上部を構成するゲル剤収容部11が示されており、該ゲル剤収容部11は、図2の(a)に示すように、半球状に形成されている。該ゲル剤収容部11の上部には、キャップ取付部12が設けられており、該キャップ取付部12には、図2の(a)中に破線で示したように、先細り形状にデザインされたキャップ13が取り付けられるように構成されている(図1参照)。
【0055】
このゲル剤収容部11内に前記ゲル剤2を収容する際には、図3の(a)に示したように、前記ゲル剤収容部11を逆さまに配置して前記ゲル剤2を充填する。この際に、前記ゲル剤収容部11が満杯になるまで前記ゲル剤2を充填することは困難であり、当該ゲル剤収容部11内の上部には、僅かな空間が生ずる。
【0056】
この状態において、充填口をシールした後、図3の(b)に示すように、当該ゲル剤収容部11を反転させて冷却し充填したゲル剤2をゲル化する。このとき、前記ゲル剤収容部11の上部、具体的には前記キャップ取付部12には、前記ゲル剤2が充填されない空間が形成され、販売時の見栄えが悪くなってしまう。
【0057】
そこで、本実施の形態のように、前記キャップ取付部12に前記キャップ13を取り付けることによって、この空間を隠蔽すことができる。これにより、販売時において美観が高い商品とすることができる。
【0058】
このゲル剤収容部11は、有色透明に形成されており、内部には、前記ゲル剤2が充填されている。これにより、内部のゲル剤2が減少した際には、当該ゲル剤収容部11の外側から確認できるように構成されている。
【0059】
前記ゲル剤収容部11の下部には、内側に後退した段差面21がリング状に形成されており、該段差面21の内縁からは、円筒部22が下方へ向けて延出している。該円筒部22の下縁には、リング状の突出部23が全周に渡って形成されており、この突出部23によって当該ゲル剤収容部11における前記円筒部22の周面には、被係合部24が形成されている。
【0060】
前記円筒部22の内側には、図2の(b)に示したように、円形の開口部31が設けられており、該開口部31は、当該ゲル剤収容部11内に連通している。
【0061】
これにより、前記開口部31を上方へ向けた状態で、当該開口部31から当該ゲル剤収容部11内に前記ゲル剤2を注入してゲル化させることで、前記ゲル剤2が充填された前記ゲル剤収容部11を形成できるように構成されており、ゲル化されてなる前記ゲル剤2は、その下部周縁が前記段差面21に支持されることによって、当該ゲル剤収容部11の前記開口部31を下方へ向けた下向き状態を形成しても、前記ゲル剤2の不用意な飛び出しを防止できるように構成されている。
【0062】
この揮散容器1は、図5に示したように、前記ゲル剤収容部11の前記開口部31を下方へ向けた下向き状態で、当該ゲル剤収容部11を支持する容器状の支持部41を備えている。
【0063】
この支持部41は、上方へ向けて開口した容器状に形成されており、円形の底面51と、該底面51の周縁より上方へ向けて延出した周面52とを備えている。該周面52は、半球状に形成されており、当該周面52は、その上縁から前記底面51へ向かうに従って内側に傾斜するとともに、その傾斜角が前記底面51へ向かうに従って変化するように構成されている。
【0064】
前記底面51の中央部には、上方に膨出した円形の膨出部61が形成されており、当該底面51の下面側には、この膨出部61によって円形の凹部62が形成されている。これにより、当該揮散容器1を重ねてスタッキングする際には、図7に示すように、前記キャップ13の一部を上段に配置された揮散容器1の前記凹部62内に収容できるように構成されており、スタッキング効率が高められるように構成されている。
【0065】
前記周面52には、図1及び図4に示したように、前記ゲル剤2から揮散した揮散薬剤を当該支持部41より外部へ放出する為の揮散口71,・・・が複数設けられている。
【0066】
各揮散口71,・・・は、円形に形成されており、大径のものと小径のものとが周方向に交互に配置されている。この周方向に配列された前記各揮散口71,・・・は、当該支持部41の上縁側にて周方向に配列された上段構成部75と、前記底面51側にて周方向に配列された下段構成部76とを構成しており、該下段構成部76を構成する揮散口71,・・・によって当該支持部41の底部側に貯留した前記揮散薬剤の外部への放出を促進できるように構成されている。
【0067】
これにより、前記各揮散口71,・・・は、前記ゲル剤収容部11を当該支持部41にセットした状態で、前記下段構成部76の下端部が前記ゲル剤収容部11の前記開口部31の下側に位置するように構成されており、前記各揮散口71,・・・は、その下端部が前記ゲル剤収容部11の前記開口部31の真下に形成される投影面77内に位置するように構成されている。
【0068】
この支持部41の前記底面51には、図5及び図6に示したように、薄板状のリブ81,・・・が四ヶ所に立設されており(図4参照)、前記ゲル剤収容部11の前記開口部31から前記ゲル剤2が膨出した際に、図5に示したように、当該ゲル剤2が前記各リブ81,・・・に当接するように構成されている。前記各リブ81,・・・は、前記支持部41の前記周面52側から当該支持部41の支持部中心82方向へ向けて延設されており、各リブ81,・・・は、図6に示したように、そのリブ上縁83,・・・が前記周面52側から前記支持部中心82方向へ向かうに従って低くなるように、その高さ寸法が設定されている。
【0069】
前記各リブ81,・・・は、図4に示したように、等間隔をおいて周方向に配置されており、各リブ81,・・・は、前記支持部中心82を中心とした放射状に延設されている。各リブ81,・・・の一端は、前記周面52に連設されており、各リブ81,・・・の他端は、前記膨出部61から離間するように構成されている。
【0070】
これにより、該膨出部61と前記各リブ81,・・・との間には、間隙91,・・・が形成されており、前記各リブ81,・・・同士は、その先端が離間するように構成されている。
【0071】
また、前記膨出部61の高さ寸法は、図6に示したように、前記各リブ81,・・・の他端の高さよりやや低めに設定されており、各リブ81,・・・の先端側には、前記各間隙91,・・・や前記膨出部61の上方空間100で構成された連通空間101が形成されている。
【0072】
これにより、前記各リブ81,・・・に前記ゲル剤2が接した状態において(図5参照)、図4に示すように、各リブ81,・・・で区画された各リブ81,・・・側部の各側方空間111,・・・は、前記連通空間101を介して連通するように構成されている。
【0073】
前記各リブ81,・・・の前記周面52側の端部からは、図5及び図6に示したように、可撓性を有した薄板状の舌片121,・・・が上方へ向けて延出しており、各舌片121,・・・の先端部には、前記支持部中心82側へ向けて突出する係合部122,・・・が設けられている。
【0074】
これにより、前記ゲル剤収容部11を前記支持部41にセットする際には、前記各舌片121,・・・が外側に傾倒することで、各舌片121,・・・に設けられた前記係合部122,・・・が、前記ゲル剤収容部11の前記円筒部22に突設された前記突出部23を乗り越えて当該突出部23の上方に位置するように構成されており、この状態において、前記舌片121の前記係合部122と前記ゲル剤収容部11の前記被係合部24とが係合するように構成されている。
【0075】
以上の構成にかかる本実施において、前記ゲル剤収容部11内のゲル剤2から揮散される揮散薬剤は、一般的に空気より重い。このため、前記ゲル剤収容部11の開口部31を下方へ向けた状態で前記支持部41に支持することで、前記ゲル剤収容部11内のゲル剤2から揮散された揮散薬剤を、前記ゲル剤収容部11より効率良く供給することができる。
【0076】
このとき、前記ゲル剤2から揮散された揮散薬剤は、容器状に形成された前記支持部41の底面51側に貯留される。このため、この揮散薬剤を前記支持部41から効率的に外部へ供給するには、前記支持部41の周面52に開設された揮散口71,・・・を、できるだけ前記底面51側に設けることが望ましい。
【0077】
一方、前記支持部41の前記周面52は、デザイン上、前記底面51へ向かうに従って内側に傾斜する半球状の形成されており、この周面52に開口した前記下段構成部76を構成する前記各揮散口71,・・・は、その下端部が前記ゲル剤収容部11の前記開口部31の下側に位置するように配置され、前記揮散薬剤の揮散効率の向上が図られている。
【0078】
このとき、前記揮散口71,・・・は、その開口部分の下端部が前記ゲル剤収容部11の前記開口部31の下方に回り込んでしまう。すなわち、本実施の形態の揮散容器1では、前記ゲル剤収容部11を前記支持部41にセットした状態で、前記下段構成部76を構成する各揮散口71,・・・の下端部が前記ゲル剤収容部11の前記開口部31の下側に位置するように前記下段構成部76の各揮散口71,・・・が配置されている。
【0079】
ここで、前記ゲル剤2は、離水する場合がある。これにより、前記ゲル剤収容部11の前記開口部31より露出した前記ゲル剤2の表面に水滴が貯まり、この水滴が前記下段構成部76の各揮散口71,・・・の下端部から外部に漏れることが考えられる。
【0080】
そこで、本実施の形態の揮散容器1では、前記支持部41の前記底面51に、リブ81,・・・が立設されており、前記ゲル剤収容部11の前記開口部31から前記ゲル剤2が膨出した際に当該ゲル剤2が前記各リブ81,・・・に当接するように構成されている。
【0081】
このため、前記開口部31から膨出した前記ゲル剤2は、前記各リブ81,・・・によって下方から支持されるとともに、当該ゲル剤2の表面に付着した水滴は、前記リブ81,・・・のリブ上縁83,・・・や、当該リブ81,・・・の側面に沿って流れることで、当該支持部41の底部に案内される。
【0082】
このとき、前記各リブ81,・・・は、前記支持部41の前記周面52側から当該支持部41の支持部中心82方向へ向けて延設されている。このため、前記各リブ81,・・・の前記リブ上縁83,・・・に沿って流れた水滴は、当該支持部41の中心部に集められる。
【0083】
そのため、前記揮散口71,・・・の下段構成部76からの外部への水滴の漏れを確実に防止することができる。
【0084】
このように、前記ゲル剤2を収容した前記ゲル剤収容部11を、その開口部31を下向きにした下向き状態で支持することができる。このため、空気より重い揮散薬剤を、前記ゲル剤収容部11から効率的に取り出すことができる。
【0085】
このとき、下向きに配置した前記ゲル剤収容部11の開口部31から前記ゲル剤2が膨出することがあるが、このゲル剤2を前記支持部41に設けられた前記各リブ81,・・・で支持することができる。これにより、当該ゲル剤2の不用意な飛び出しを確実に防止することができる。
【0086】
そして、空気より重い揮散薬剤は、前記支持部41の底部側に貯まる傾向にある。しかし、前記支持部41の周面52に設けられた前記下段構成部76を構成する前記各揮散口71,・・・を、その下端部が前記ゲル剤収容部11の前記開口部31の下側に位置するように配置することで、前記支持部41内に貯留した前記揮散薬剤を効率的に外部へ供給することができる。
【0087】
これにより、前記ゲル剤収容部11を下向きに配置したことによる不具合を防止しつつ、前記ゲル剤2から揮散した揮散薬剤を効率的に外部へ供給することができる。
【0088】
一方、前記ゲル剤収容部11の開口部31から露出した前記ゲル剤2表面には、水滴が付着することがある。このとき、前記ゲル剤2表面に付着した水滴を、前記支持部41の前記底面51に立設された前記各リブ81,・・・に沿って案内することで、当該水滴を前記支持部41の底部に集めることができる。
【0089】
このとき、前記各リブ81,・・・は、前記支持部41の前記周面52側から前記支持部中心82方向へ向けて延設されている。このため、前記水滴を前記各リブ81,・・・のリブ上縁83,・・・に沿って流すことで、この水滴を当該支持部41の中心部に集めることができる。
【0090】
このように、前記ゲル剤2表面に発生した水滴を前記各リブ81,・・・によって前記支持部41の底部に案内することができるので、前記ゲル剤2表面からの水滴の滴下を未然に防止することができる。
【0091】
このため、前記支持部41の周面52を底面51側へ向かうに従って内側に傾斜した半球状のデザインとするとともに、揮散効率を高める為に前記下段構成部76を構成する前記各揮散口71,・・・の下端部が前記ゲル剤収容部11の前記開口部31の下側に位置するように各揮散口71,・・・を配置した場合であっても、これらの揮散口71,・・・から外部への前記水滴の漏れを確実に防止することができる。
【0092】
したがって、前記ゲル剤収容部11の開口部31の真下に前記揮散口71,・・・が開口しないように、前記開口部31を小さくしたり、前記揮散口71,・・・を高位置に配置しなければならなかった従来と比較して、液漏れ等の不具合を防止しつつ、デザイン設計時の自由度を高めることができる。
【0093】
また、前記各リブ81,・・・のリブ上縁83,・・・を、前記周面52側から前記支持部中心82方向へ向かうに従って低くなるように設定したため、当該リブ81,・・・に伝った水滴を、前記リブ上縁83,・・・に沿って前記支持部41の中心部に集めることができる。
【0094】
一方、前記ゲル剤収容部11の前記開口部31からゲル剤2が膨出する場合は、その中心部が下方に位置するように球面状に突出することとなる。このとき、前記各リブ81,・・・は、そのリブ上縁83,・・・が前記支持部中心82方向へ向かうに従って低くなるように設定されている。このため、当該リブ81,・・・のリブ上縁83,・・・を、下方に膨出した前記ゲル剤2の表面に線接触させることができる。
【0095】
これにより、前記各リブ81,・・・のリブ上縁83,・・・が前記ゲル剤2表面に点接触する場合と比較して、接触面積の増大を図ることができ、当該リブ81,・・・による前記水滴の収集効果を高めることができる。
【0096】
そして、前記支持部41の前記周面52側から前記支持部中心82方向へ向けて延在する前記各リブ81,・・・は複数設けられており、前記開口部31より膨出した前記ゲル剤2が前記各リブ81,・・・のリブ上縁83,・・・に接した状態では、各リブ81,・・・の側方に設けられた側方空間111,・・・が前記各リブ81,・・・によって区画されてしまう。
【0097】
このとき、前記各リブ81,・・・の先端は、離間するように構成されるとともに、各リブ81,・・・の先端側に設けられた膨出部61の高さ寸法は、前記各リブ81,・・・の他端の高さより低く設定されており、各リブ81,・・・の先端側には、各リブ81,・・・と膨出部61間に形成された各間隙91,・・・と前記膨出部61の上方空間とによって連通空間101が形成されている。
【0098】
このため、前記各リブ81,・・・に前記ゲル剤2が接した状態において、前記各リブ81,・・・で区画された前記各側方空間111,・・・内で揮散した揮散薬剤を、前記連通空間101を介して、各側方空間111,・・・に流通することができ、各側方空間111,・・・での揮散薬剤の濃度を一定にすることができる。
【0099】
これにより、濃度が一定化された揮散薬剤を、各側方空間111,・・・に連通した前記各揮散口71,・・・より外部へ供給することができるので、供給方向によって薬剤濃度が変化するといった不具合を未然に解消することができる。
【0100】
そして、前記ゲル剤収容部11における前記開口部31の周縁部には、前記被係合部24が設けられており、前記各リブ81,・・・の前記周面52側の端部には、上方へ延出する舌片121,・・・が設けられるとともに、各舌片121,・・・の上端部には、前記ゲル剤収容部11を前記支持部41にセットした状態で、前記ゲル剤収容部11の前記被係合部24と係合する係合部122,・・・が設けられている。
【0101】
このため、前記ゲル剤収容部11を前記支持部41にセットした際には、前記リブ81,・・・の端部に設けられた各舌片121,・・・先端の前記係合部122,・・・が前記ゲル剤収容部11の前記被係合部24に係合することで、前記支持部41からの前記ゲル剤収容部11の不用意な離脱を防止することができる。
【0102】
これにより、前記ゲル剤収容部11を保持して移動する等の利用形態が可能となり、利便性が向上する。
【0103】
なお、本実施の形態では、前記ゲル剤収容部11の前記開口部31から膨出したゲル剤2が前記各リブ81,・・・に当接した場合を例に挙げて説明したが、例えば前記ゲル剤2が前記ゲル剤収容部11の奥側でゲル化された場合など当該ゲル剤2が前記開口部31から膨出しない場合であっても、前述した水滴の外部への漏れ防止効果を奏することができる。
【0104】
具体的に説明すると、前記ゲル剤収容部11内において前記ゲル剤2からの離水した水滴は、前記ゲル剤収容部11の内壁面及び前記開口部31の開口縁を伝って流れ出る。
【0105】
このとき、前記ゲル剤収容部11には、収容されたゲル剤2の重さが加えられており、前記開口部31の開口縁は前記支持部41に設けられた前記各リブ81,・・・に当接した状態で支持される。
【0106】
この場合、各リブ81,・・・が前記開口部31の開口縁に接触するため、該開口縁を伝って流出した前記水滴は、前記各リブ81,・・・に沿って前記支持部41の底部に案内される。
【0107】
このため、このような場合であっても、離水した水滴を前記支持部41の底部に導く効果を得ることができ、水滴の外部への漏れ防止効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0108】
1 揮散容器
2 ゲル剤
11 ゲル剤収容部
24 被係合部
31 開口部
41 支持部
51 底面
52 周面
71 揮散口
81 リブ
82 支持部中心
83 リブ上縁
101 連通空間
111 側方空間
121 舌片
122 係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル剤を収容した容器状のゲル剤収容部と、該ゲル剤収容部の開口部を下方へ向けた状態で当該ゲル剤収容部を支持する容器状の支持部とを備え、該支持部の周面が底面へ向かうに従って内側に傾斜するとともに当該周面に揮散口が開設された揮散容器において、
前記ゲル剤収容部を前記支持部にセットした状態で、前記揮散口の少なくとも一部が前記ゲル剤収容部の前記開口部の下側に位置するように当該揮散口を配置する一方、
前記ゲル剤収容部の前記開口部から前記ゲル剤が膨出した際に当該ゲル剤に当接するリブを前記支持部の前記底面に起立し、当該リブを前記支持部の前記周面側から当該支持部の中心方向へ向けて延設したことを特徴とする揮散容器。
【請求項2】
前記リブの上縁が前記周面側から前記中心方向へ向かうに従って低くなるように設定したことを特徴とする請求項1記載の揮散容器。
【請求項3】
前記リブを複数設けるとともに、各リブの先端を離間して各リブの先端側に連通空間を設け、前記各リブで区画された各側方空間を前記連通空間を介して連通可能に構成したことを特徴とする請求項1又は2記載の揮散容器。
【請求項4】
前記ゲル剤収容部における前記開口部の周縁部に被係合部を設ける一方、
前記リブの前記周面側の端部に上方へ延出する舌片を設け、前記ゲル剤収容部を前記支持部にセットした状態で、前記ゲル剤収容部の前記被係合部と係合する係合部を前記舌片の先端部に設けたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の揮散容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−251004(P2011−251004A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127054(P2010−127054)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000102544)エステー株式会社 (127)
【Fターム(参考)】