説明

揮発性害虫防除シート及びその製造方法

害虫防除装置(23)は、第1の臨界表面張力値を有する、第1の実質的に不浸透性である面(20)を含む。揮発性害虫防除剤は、この第1の面(20)上に付与され、第1の臨界表面張力値よりも少なくとも約5ダイン/cm2低い表面エネルギーを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広く、害虫防除装置に関し、より詳細には、揮発性害虫防除剤を放出する害虫防除装置に関する。
【背景技術】
【0002】
揮発性成分を周辺環境に放出することは、以前から知られている。例えば、ビショップ(Bishopp)らによる欧州特許第0670685号(ビューティフル・ブーケ・カンパニー(Beautiful Bouquet Company)に譲渡)には、蒸気不透過性基層と蒸気不透過性カバー層とを備え、これらの層の間に揮発性液体が配置された、揮発性液体サンプラーが開示されている。基層とカバー層との間に接着リング4が配置されることによって、これらの層が合わせて保持され、これにより、揮発性液体の使用前における揮発が阻止される。この欧州特許のコラム9の43〜47行目には、接着剤の代わりとして、カバー層が、基層に自動接着するポリ二塩化ビニリデン粘着フィルム(cling film)であってもよい、ということが開示されている。この基層を生成するのに用いられるポリマーは、揮発性液体を吸収するポリマーである。しかしながら、揮発性液体は、この基層に吸収される前に、表面張力効果によってシート上に保持されるのが好ましく、これにより、この基層は、そこから揮発性液体がこぼれるのを過度に気にすることなく、直接取り扱うことができる。このサンプラーを使用するために、ユーザは、基層とカバー層とを分離することによって、揮発性液体を周辺環境に晒す。
【0003】
ベイカー(Baker)らによる米国特許第4,445,641号には、毛管作用によって揮発性流体が微孔性プラスチックの孔の中に保持されることが開示されている。蒸発速度は、この微孔性材料における通過特性によって、ゼロ次放出速度を示すように調整される。この微孔性プラスチックは、蒸発調整膜としての機能を果たす。ベイカーらは、さらに、リザーバ及び放出速度制御膜を開示している。このリザーバは、適切な直径の相互接続孔又は連続孔を備えて、その中に毛管作用によって活性成分を保持する、固体で微孔性の高分子構造である。この活性成分は、本質的には、この高分子材料に不溶性である。さらに、活性成分を含浸させた微孔性リザーバ材料周囲の不透過性裏材料には、膜がシーリングされている。
【0004】
多くの種類の虫、特に特定の飛ぶ虫(例えば、蚊)は、何世紀にもわたり、人々に害を与えてきた。揮発性成分を放出してこのような害虫を防除する多数の技法が開発されてきた。このような技法としては、ある体積の空間に十分な濃度の揮発性害虫防除剤を放出することにより、その空間にいる害虫を追い払う又は殺す技法がある。このようなタイプの技術の一例は、フェング(Feng)による米国特許第6,239,044号に開示されている。この米国特許は、ユーザの体(即ち、服)に引っ掛けるためのクリップを備えた、蚊を駆除する/殺す装置を開示している。この装置は、蚊取線香マットを加熱してユーザの周辺に蚊を殺す香を放出する電熱器を備える。
【0005】
パチョレック(Paciorek)らによる米国特許第3,685,734号には、ヒートシールされた外側カバー層12を備えた防虫装置が開示されており、この外側カバー層12を取り外すことによって、吸収部材16とこの吸収部材16から防虫成分を揮発させる穴20とを備えた防虫材料キャリヤ14が露出される。
【0006】
本願と同一出願人であるムナガヴァラサ(Munagavalasa) による米国特許第6,534,079号(この特許は、参照することにより本明細書に組み込まれる)には、活性害虫防除成分でコーティングされた非吸収性且つ不活性の基体が開示されている。この基体から活性害虫防除成分が受動的に蒸発することにより、飛ぶ害虫が防除される。この活性害虫防除成分の溶解度は、基体1cm2当たり40マイクログラム未満であるため、この活性成分は、基体に吸収されずにその表面上にとどまり、これによって、揮発が促進される。
【0007】
本願と同一出願人であるフラシンスキ(Flashinski)らによる米国特許第6,360,477号(この特許は、参照することにより本明細書に組み込まれる)には、揮発性害虫防除成分の入った害虫防除袋が開示されている。この袋は、折り重ねてからヒートシールされた1枚のシートによって形成されていてもよく、これにより、この折り重ねられたシートの対向する2つの面の間に害虫防除活性成分が挟まれ、この袋の開放前における活性成分の揮発が防止される。ユーザがこの袋を開放してもよく、これにより、害虫防除成分が周辺環境に受動的に蒸発することが可能となる。この袋は、クローゼットの中の服を掛けるバー(clothes bar)のような構造から吊るしてもよい。
【特許文献1】欧州特許第0670685号明細書
【特許文献2】米国特許第4,445,641号明細書
【特許文献3】米国特許第6,239,044号明細書
【特許文献4】米国特許第3,685,734号明細書
【特許文献5】米国特許第6,534,079号明細書
【特許文献6】米国特許第6,360,477号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
効果的に機能する一方で最小量の揮発性材料しか必要としない揮発装置は、これからも必要とされ続けるであろう。寿命期間に揮発性材料の全て又はほとんど全てを揮発させる装置は、無駄を省くという点及び最大揮発速度をもたらすという点から有益である。さらに、使用前の揮発を最小限に抑えることのできる装置も、同様に有益である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、害虫防除装置は、第1の臨界表面張力値を有する、第1の実質的に不浸透性である面を含む。揮発性害虫防除剤は、この第1の面上に付与され、第1の臨界表面張力値よりも少なくとも約5ダイン/cm2低い表面エネルギーを有する。
【0010】
本発明の更なる態様によれば、害虫防除装置は、第1及び第2の実質的に不浸透性である面を含む。揮発性害虫防除剤は、これらの面の間に付与される。この害虫防除剤の引き付け特性は、第1の面を実質的に単に第2の面と取り外し可能に接触した状態に維持することにより、害虫防除剤の揮発を阻止する。
【0011】
本発明の別の態様によれば、害虫防除装置を製造する方法は、少なくとも1つの実質的に不浸透性である面を用意するステップと、この面を揮発性害虫防除剤で湿潤させるステップとを含む。この害虫防除剤は、前記面上に薄くて実質的に均一なフィルムを形成する。
【0012】
本発明のその他の態様及び利点については、以下の詳細な説明を考察すれば明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
揮発性液体害虫防除剤が、シート23の実質的に不浸透性である面20上に付与されている。この防除剤の表面エネルギーは、面20の臨界表面張力値よりも少なくとも約5ダイン/cm2低い(即ち、ダイン・レベル差)。また、この防除剤の表面エネルギーは、面20の臨界表面張力値よりも少なくとも約10ダイン/cm2低くてもよい。このダイン・レベル差によって、面20の効果的な湿潤が促進され、この防除剤によって、面20の利用可能な全表面積が均一に湿潤される。このような効果的な湿潤によって、均一で薄く連続的なフィルムがもたらされ、このフィルムによって、防除剤が周辺環境に晒されている場合における単位面積当たりの最大揮発量が増加する。ダイン・レベル差がなく、より効果の低い湿潤面では、局部においてムラ若しくはプーリングが生じることがあり、これは最適な揮発を妨げる可能性がある。防除剤の揮発速度は、その全てが揮発するまで、ほぼ一定のままである。
【0014】
所定の表面エネルギーの防除剤に対して上記ダイン・レベル差が満たされる限り、面20の材料は特に重要なわけではない。面20には、あらゆる適切な材料を用いてもよく、例としては、ナイロン、ポリエステル、若しくはガラスのような、高分子材料又は非高分子材料が挙げられる。面20は、この揮発性液体に対して不活性であるのが最適である。シート23の厚さは、あらゆる適切な厚さであってよく、例としては、0.002インチ(0.05mm)が挙げられる。シート23は、透明なOPET(oriented polyethylene terephthalate:延伸ポリエチレン・テレフタレート)であってもよく、その表面エネルギー若しくは臨界表面張力値は、約50ダイン/cm2より高くてもよい。このシート23のサイズは、あらゆる適切なサイズであってよく、例としては、10.5インチ(26.67cm)×14.5インチ(36.83cm)が挙げられる。シート23は、図2及び図7に見られるように、折り目24に沿って折り畳んでもよく、これにより、面20は、対向する第1の面26及び第2の面29を画定する。或いは、別々のシート33及び36(図8)が、第1の面33a及び第2の面36aを画定することもできる。これらの面33a及び36aは、同じ材料から形成されても異なる材料から形成されてもよい。面20は、防除剤がシート23に吸収されずにこの面20上に付与されるように、実質的に非吸収性であるべきである。このように吸収性が望ましくない理由は、ある量の防除剤がシート23の内部に無限に若しくは永久に保持されることによって、防除剤が浪費されるからである。実質的に非吸収性であるシートの更なる利点は、そのシートによって保持される液体の量が、シートの厚さではなく利用可能な表面積によって決まる、という点である。従って、本発明によるシートは薄くしてもよく、これにより、材料費及び運送費を削減することができる。
【0015】
上記のように、面33a及び36aは、異なるタイプの材料から形成されてもよい。この点に関しては、面33a及び36a上に付与される所定の揮発性液体の表面エネルギーが、これらの面の臨界表面張力値よりも少なくとも約5ダイン/cm2低く、上記湿潤をもたらす限り、これらの面33a及び36aの材料は、特に重要なわけではない。面20、33a、36aの臨界表面張力値は、アメリカ合衆国、03743、ニューハンプシャー州、クレアモント、メインストリート91−Nにある、ディヴァースィファイド・エンタープライズィズ(Diversified Enterprises)により販売されている、マーカーペンを用いて測定される。本明細書中で述べる揮発性液体の典型的なダイン・レベルは約35ダイン/cm2であることにより、少なくとも約5ダイン/cm2の差を得るためには、面20の表面張力値は約40ダイン/cm2以上であることが必要とされる。ポリエステル及びナイロンのフィルムは、典型的には表面張力値が40ダイン/cm2よりもはるかに高いので、シート23に適した材料であることが多い。適切なポリエステル及びナイロンのフィルムの供給業者は多数あり、例としては、イリノイ州、シカゴのMSパッケージング(MS packaging)が挙げられる。未処理のポリプロピレン及びポリエチレンのフィルムは、表面エネルギーが40ダイン/cm2よりも低い傾向にあるので、35ダイン/cm2の液体には適さない可能性がある。しかしながら、これらのフィルムにコロナ処理、火炎処理、又はその他の処理を施すことにより、その表面エネルギーを、必要なダイン・レベル差を得るのに十分な程度まで上昇させることができる。従って、所定の揮発性液体と組み合わせて、必要とされる少なくとも約5ダイン/cm2の差を満たす限り、本発明は、ポリプロピレン、ポリエチレン、その他のポリマー、若しくはその他の材料、又はこれらの材料の積層物を含む。また、この差を満たすのに十分な程度に表面エネルギーの低い揮発性液体が選択される場合には、未処理のポリエチレン又はポリプロピレンであっても適する、ということにも注目すべきである。
【0016】
防除剤の引き付け特性を用いることによって、対向する面26及び29又は別々のシート33及び36を取り外し可能なシーリング方式で合わせて保持し、別個の接着剤、ヒートシール、又はその他のシーリング構造を必要とすることなく、この防除剤の使用前における揮発を阻止することができる。この引き付け特性は、上記ダイン・レベル差から得られる毛管力から成り得る。或いは、この引き付け特性は、防除剤の粘性若しくは粘着性から得ることもでき、この場合、この害虫防除剤は、固体から成っていてもペースト状であってもよく、上記ダイン・レベル差を満たしても満たさなくてもよい。接着剤又はヒートシールの必要性がないという点は、特に、保管寿命がほんの短い装置をエンドユーザが必要としている場合に有益である。
【0017】
この害虫防除剤には、殺虫剤、ノックダウン剤、又は防虫剤のいずれかとして機能するのに適したものであれば、いずれの害虫防除組成物も含まれ得る。この適切な害虫防除組成物としては、トランスフルスリン(transfluthrin)、テフルスリン(tefluthrin)、ヴェイパースリン(vaporthrin)が挙げられる。この害虫防除剤は、液体から成っていても固体から成っていてもよく、揮発としては、固体から気体への揮発、若しくは液体から気体への揮発、又はこれらを組み合わせた揮発があり得る。
【0018】
この害虫防除剤には、トランスフルスリン又はその他の組成物が溶解された溶剤も含まれ得る。適切な溶剤とは、害虫防除組成物が完全に可溶化するものであり、炭化水素溶剤、グリコール・エーテルなどが挙げられる。適切な炭化水素溶剤の例としては、エクソンモービル・ケミカル・カンパニー(ExxonMobil Chemical Company)から入手可能であって、ISOPAR(登録商標)L、ISOPAR(登録商標)M、及びISOPAR(登録商標)Vという商品名で市販されている炭化水素溶剤がある。適切なグリコール・エーテルとしては、DOWANOL(登録商標)DPnB溶剤として市場に出ているジプロピレン・グリコール・n−ブチル・エーテル、DOWANOL(登録商標)TPM溶剤として市場に出ているトリプロピレン・グリコール・メチル・エーテル、及びPROGLYDE(登録商標)DMM溶剤として市場に出ているジプロピレン・グリコール・ジメチル・エーテルが挙げられる。これらのグリコール・エーテル溶剤は全て、ダウ・ケミカル・カンパニー(Dow Chemical Company)から入手可能である。
【0019】
また、この溶剤中には、コロイダル・シリカ粒子を分散させ、使い切り合図(use-up cue)(以下に述べる)として機能させてもよく、このコロイダル・シリカ粒子としては、CAB−O−SIL(登録商標)によって識別されると共に、マサチューセッツ州、ボストンのカボット・コーポレイション(Cabot Corporation)によって供給されるものが挙げられる。
【0020】
面26及び29の一方又は両方に、周辺バリヤ44を設けてもよい。この周辺バリヤ44を設けることによって、シート23の製造、保管、又は移動中に、揮発性液体が毛管作用又はその他の潜在力により面26にわたって広がった場合、この揮発性液体が面26からこぼれないようにすることができる。この周辺バリヤ44は、場合によっては、取扱タブ部分45及び46に加え、更なる握り面として機能することが可能であり、これによって、ユーザは、広げたシート23の側部を揮発性液体に触れずに取り扱うことができる。取扱タブ部分45及び46を、効果的な掴み面として機能するのに適したサイズにすることによって、ユーザは、揮発性液体に触れないで済むようになる。これらのタブ部分45及び46を引き離すことにより、面26及び29が露出して、揮発が開始される。図3A及び図3Bは、周辺バリヤ44を、シート23の面20にヒートシールされた又はその他の方法で接着された周辺フレーム層47として示している。この周辺フレーム層47は、ポリプロピレンから構成されてもよいし、揮発性液体がこぼれるのを阻止するのに十分な剛性の壁若しくは堤防をもたらすのに適した、十分に弾性の高いその他の材料から構成されてもよい。このような材料の方が、薄くて過度に可撓性のある材料よりも好まれ得る。当然、この周辺フレーム層47は、シート23と同じ材料から構成されても異なる材料から構成されてもよい。また、周辺バリヤ44は、溝53(図4A及び図4B)から成っていてもよい。さらに、周辺バリヤ44は、取り外し可能なヒートシール50(図6)から成っていてもよい。このヒートシール50の剥離強度は、ユーザがこれらの2つのシートを手で容易に分離することができるように、約1ポンド/平方インチ(約454g/2.54cm2)未満であるべきである。この取り外し可能なヒートシール50は、本質的には溶接部であり、この溶接部は、ユーザが各面26及び29の取扱タブ部分45及び46を握り、これらの面26及び29を裂かずに引き離すまで、一時的にこれらの面26及び29をその周辺部において接合している。このヒートシール50は、シーリング剤から成っていてもよく、このシーリング剤は、面20に、好ましくは、面20全体ではなく、その周辺部に付与される。或いは、フレーム層47が設けられている場合には、ヒートシール50は、このフレーム層47の部分を接合してもよい。シーリング剤は、熱に晒されると、面26及び29よりもすぐに接合する材料である。このようなシーリング剤を用いることによって、面20を裂くのではなく、このシーリング剤を分解するようにして、面26及び29を容易に分離することができる。このようなシーリング剤を用いることは、当該分野では周知のことである。あらゆる適切なシーリング剤を用いてもよいが、シーリング剤は、透明且つ無色でオレフィンを基材としないのが好ましい。
【0021】
取付デバイス56(図10)を、シート23に、好ましくは、シート面20と反対側のシート面59上における取扱タブ部分45及び46の一方又は両方に固定してもよい。この取付デバイス56は、第1の接着面65及び第2の接着面68を有する、幅0.5インチ(1.27cm)の両面テープ62であるのが好ましく、第1の接着面65は、シート面59に接着され、第2の接着面68は、図8に見られるような支持面70(例えば、壁73)に接着することができる。このような両面テープは、ミネソタ・マイニング・アンド・マニュファクチャリング・カンパニー(Minnesota Mining & Manufacturing Company)(即ち、3M)から入手可能であり、例としては、この3M社の再配置可能なテープ9415PC又はテープ9425PCがある。テープ62の第1の永久的な面65は、シート23にしっかりと固定されたままであり、再配置可能な第2の面68は、いくつかの支持面(例えば、窓、塗装壁、木製扉の表面、家具など)に固定することができる。両面テープが好ましいが、シート23を支持面に取り付ける又は掛けるのに適したものであれば、その他のあらゆる手段が本発明の範囲内に含まれる。
【0022】
シート23は、使い切り合図76(図10及び図11)をさらに含んでいてもよく、この使い切り合図76は、シート23から揮発性液体の全て又はほとんど全てが揮発したことをユーザに示す。例えば、CAB−O−SIL(登録商標)のコロイダル・シリカ粒子が上記溶剤に含まれている場合、揮発性液体が蒸発すると、この粒子が白い残留物として残り、液体が完全に揮発したことをユーザに示す。或いは、この使い切り合図76は、変色ステッカー79であってもよい。このステッカー79は、ライナー82を含んでいてもよく、このライナー82は、面26及び29が分離されるのと同時に又はほぼ同時に、ユーザによって除去される。このライナー82は、矢印83(図10)の方向に引くことによって除去され得る。ライナー82が除去されると、ステッカー79は第1の色(例えば、赤)を示す。所定時間後、シート面20から液体が完全に又はほとんど完全に揮発すると、ステッカー79は、第2の色(例えば、緑)に変化して、シート23の寿命がきたことをユーザに示す。この変色ステッカー79は、例えば「廃棄」というような文字を含んでいてもよく、この文字は、所定時間後に現れて、シート23の寿命がきたことをユーザに伝える。このような一般的なタイプの変色技術を利用したステッカーは、アメリカ合衆国、10901、ニューヨーク州、サファーンにある、テムテック(Temtec)(ブレイディ・ワールドワイド(Brady Worldwide)の分社)から入手可能であると共に、TEMPbadge(登録商標)で市場に出ていると思われる。使い切り合図として変色ステッカーが用いられ得るが、使い切り合図若しくは指示器に適したものであれば、その他のあらゆる形態を用いてもよい。例えば、揮発性液体は、時間が経つにつれて香りが弱くなる香料(例えば、花又は柑橘系の香り)を含んでいてもよい。液体が完全に又はほとんど完全に揮発すると、平均的なユーザには香りが感じられなくなることによって、シート23を交換する必要があることを伝える。また、ステッカー79用のライナー82は、図10及び図11に示されているように、さらに両面テープ62を被覆してもよい。このライナー82を剥がして第2の接着面68を露出させることにより、ステッカー79が周囲空気に晒される。変色ステッカー79は、シート23の寿命にほぼ等しい所定時間が経つと、第1の色から第2の色へ変化するのが好ましい。この点に関し、シート23は、その寿命期間、害虫防除に効果的な濃度で揮発するのが好ましい。
【0023】
シート23の面20に液体を付与した後、折り目24に沿ってこのシート23を折り畳むことにより、図7に見られるように、面20の対向する面26と面29とが密着する。この液体の面20に対する引き付け特性によって、対向する面26及び29が合わせて保持され、これにより、シート23は、面26及び29が均一に密着するように合わせて押圧又は接着された折り畳み状態に維持され、液体の使用前における揮発が効果的に阻止される。この引き付け特性は、毛管力として説明することができる。この液体の毛管力は、使用前における揮発が阻止されるか或いは実質的に阻止されるように、取り外し可能に面26及び29を合わせて押圧又は接着するのに十分な強さであり、これにより、更なるシーリング構造(例えば、接着シール)を必要とすることなく、シート23をユーザに供給することができる。
【0024】
上記及び下記に示される原理によれば、害虫防除装置を製造する方法は、面20のような第1の面を防除剤で湿潤させて、この面上に実質的に連続した薄いフィルムを形成することを含む。防除剤の表面エネルギーは、この面の臨界表面張力値よりも少なくとも約5ダイン/cm2低い。また、この表面エネルギーは、この臨界表面張力値よりも少なくとも約10ダイン/cm2低くてもよい。さらに、第2の面を、この第1の面に付与してもよい。この方法は、面26に対して面29を対向させること、又は、別々のシート33及び36を接合することを含み得る。側端部85〜88(図2)は、折り目24と共に袋を画定するように、合わせてシーリングしてもよい。次に、この袋の中に、トランスフルスリン又はその他の適切な組成物から成り得る揮発性液体害虫防除剤をピペットで入れる。その後、この揮発性液体害虫防除剤は、面20に接触し、上述したように均一に広がる。また、取付デバイス及び/又は使い切り合図を設けてもよい。
【実施例1】
【0025】
10.5インチ(26.7cm)×14.5インチ(36.8cm)のシート2枚を、83.5(重量)%のトランスフルスリンと16.5%のジプロピレン・グリコール・ジメチル・エーテル(PROGLYDE(登録商標))DMMとから成る害虫防除剤112.6mgでコーティングした。このトランスフルスリンは、95.8%純度工業用トランスフルスリンであった。生後14日の雌のネッタイイエカ(Culex quinquefasciatus)20匹を入れた10インチ(25cm)×10インチ×10インチのナイロン製網かごを2つ、20m3の密閉された正方形の試験室に置いた。2つのかごのうちの1つは床上168cmの高い位置に置き、もう1つは床上46cmの低い位置に置いた。高い位置のかごは、南側の壁から1m且つ西側の壁から86cm離した。低い位置のかごは、北側の壁から1m且つ東側の壁から86cm離した。特記されない限り、蚊をかごの中に入れる前に、試験室を排気装置で空気パージした。上記2枚のシートは、試験室の壁の床上5フィート(1.52m)のところに配置した。下の表1に見られるように、これらのシートは、試験室に配置した2時間後、平均ノックダウンが51%であった。特記されない限り、以下の各実施例の試験手順は、この実施例1の手順と同一であった。
【実施例2】
【0026】
実施例2のシートは、蚊をかごの中に入れる前に、試験室に(空気パージせずに)2時間放置して試験室中における害虫防除剤の濃度を高めたこと以外は、実施例1のシートと同一であった。表1は、蚊をかごの中に入れた2時間後、平均ノックダウンが78%であったことを示している。
【実施例3】
【0027】
実施例3のシートは、試験室に7日間放置したこと以外は、実施例1のシートと同一であった。この7日の間、試験室を1日に15分間空気パージして、典型的な家庭における換気をシミュレートした。7日後、試験室を空気パージしてから4時間後に蚊をかごの中に入れた。その2時間後、下の表1に見られるように、平均ノックダウンは100%であった。
【実施例4】
【0028】
120平方インチ(約774cm2)の処理領域を備えた、10インチ(25.4cm)×14インチ(35.5cm)のポリプロピレンシートを、2枚用意した。純Transfluthrin104.3mgと、タカサゴRD−1436瞬間放出香料(Takasago RD-1436 Instant Release Fragrance)3mgと、ジプロピレン・グリコール・ジメチル・エーテル(PROGLYDE(登録商標))DMM7.6mgとから成る溶液を、各シートの処理領域に付与した。この香料は、アメリカ合衆国、ニュージャージー州のタカサゴ・インターナショナル(Takasago International)から入手可能である。下の表1に見られるように、この実施例4のシートは、2時間後、平均ノックダウンが96%であった。
【実施例5】
【0029】
10インチ(25.4cm)×22インチ(55.8cm)の超透明ポリエステルシートを2枚利用した。これらのシートはそれぞれ、185平方インチ(約1193.5cm2)の処理領域を画定するポリプロピレン・フレーム層を備える。トランスフルスリン208.7mgとジプロピレン・グリコール・ジメチル・エーテル(PROGLYDE(登録商標))DMM41.2mgとから成る溶液を、この処理領域に付与した。これらのシートを、実施例1と同じ手順を用いて試験した。この実施例5のシートは、試験室に配置した2時間後、平均ノックダウンが78%であった。
【実施例6】
【0030】
実施例6のシートは、試験室に15日間放置したこと以外は、実施例5のシートと同一であった。この15日の間、1日に15分間空気パージを行った。15日後、蚊をかごの中に入れた。その2時間後、以下の表1に見られるように、平均ノックダウンは99%であった。
【0031】
[比較例A]
比較例Aは、コンセントに嵌めるプラグと、6%のピナミン・フォルテ(Pynamin Forte)溶液を収容する液体リザーバと、この液体リザーバ及び220VACで作動する電熱器と通じるセラミック芯とを備えた、電気式液体防虫剤加熱器である。このような防虫剤加熱器は、45日分の防虫効果をもたらすことができるものとして宣伝されていると共に、イタリア、トレントのゾベーレ・インダストリエ・チミーチェ(Zobele Industrie Chimiche)から入手可能である。蚊をかごの中に入れる前に、この比較例Aの装置を24時間「エージング」し、即ち、20m3の試験室内で24時間作動させ、蚊をかごの中に入れる直前の24時間の間に、15分間の空気パージを1回行った。
【0032】
[比較例B]
比較例Bは、ピナミン・フォルテ40mgと、ピペロニル・ブトキシド(「PBO」)40mgと、m−フタロジニトリル(「IPM」)20mgとを含浸させた、厚さ2.5mmのマットであった。このようなマットも、ゾベーレ・インダストリエ・チミーチェから入手可能である。このマットを、ベープ・フマキラーPTC加熱器(Vape Fumakilla PTC heater)として識別されると共に110VACで作動する従来の電熱器で加熱した。このマットを、試験室の床に置いた。このマットを最初に加熱するのと同時に、蚊をかごの中に入れた。
【0033】
表1に示されているように、対照では、蚊のノックダウンが全く見られなかった。この対照では、試験室に殺虫剤の無い状態で、試験室の空気パージを行った後に、蚊をかごの中に入れた。
【0034】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0035】
上述したように、本発明は、折り畳みシートに限定されるわけではなく、同じ又は異なる材料から成る別々のシート又は層を含み得る。また、所定のシートの揮発性能は、異なるものであってもよい。さらに、多様なシートサイズも可能である。上記説明を考察すれば、当業者には、本発明に対する多数の変形例が明らかであろう。従って、この説明は、本明細書中に教示した発明概念の単なる例として解釈されると共に、当業者が本発明を製造して使用すると共に本発明を実施する最良の形態を教示することができるようにする目的で提示される。添付の特許請求の範囲内に含まれる全ての変形例に対する独占権は、留保される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】広げた状態で示された防虫シート若しくはポスターの立面図である。
【図2】図1のシートの等角図である。
【図3A】周辺バリヤを備えたシートの立面図である。
【図3B】図3Aの線3B−3Bに沿って見た拡大部分断面図である。
【図4A】別の周辺バリヤを備えたシートの立面図である。
【図4B】図4Aの線4B−4Bに沿って見た拡大部分断面図である。
【図5】図1〜図4のシートのいずれかを、広げた状態で概略的に示す立面図である。
【図6】図1〜図4のシートのいずれかを、折り畳んだ状態で概略的に示す立面図である。
【図7】図6の線7−7に沿って概略的に見た断面図である。
【図8】図7と同様であるが、折り畳みシートではなく別々のシートを示す断面図である。
【図9】壁に取り付けられたシートを示す等角図である。
【図10】拡大部分等角図である。
【図11】図10の線11−11に沿って概略的に見た立面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の臨界表面張力値を有する、第1の実質的に不浸透性である面と、
前記第1の臨界表面張力値よりも少なくとも約5ダイン/cm2低い表面エネルギーを有する、前記第1の面上に付与された揮発性害虫防除剤と、
を備える、害虫防除装置。
【請求項2】
前記害虫防除剤が、前記第1の面上に薄くて実質的に均一なフィルムを形成する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記害虫防除剤が、前記第1の臨界表面張力値よりも少なくとも約10ダイン/cm2低い表面エネルギーを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の面が、少なくとも約40ダイン/cm2の臨界表面張力値を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
第2の面が前記第1の面に付与される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記第2の面が実質的に不浸透性である、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記第2の面が第2の臨界表面張力値を有し、前記害虫防除剤が該第2の臨界表面張力値よりも少なくとも約5ダイン/cm2低い表面エネルギーを有する、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の面及び前記第2の面がそれぞれ、折り畳みシートの対向する第1の表面及び第2の表面によって画定される、請求項5に記載の装置。
【請求項9】
前記第1の面及び前記第2の面がそれぞれ、別々の第1のシート及び第2のシートによって画定される、請求項5に記載の装置。
【請求項10】
前記第1の面及び前記第2の面が同一の材料から形成される、請求項5に記載の装置。
【請求項11】
前記第1の面及び前記第2の面が異なる材料から形成される、請求項5に記載の装置。
【請求項12】
前記第1の面がプラスチックから形成される、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
前記プラスチックがポリエステルである、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記第1の面がガラスから形成される、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記害虫防除剤が、周辺環境に晒されると該周辺環境に揮発する、請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記害虫防除剤の揮発が、液体から気体への揮発から成る、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記害虫防除剤の揮発が、固体から気体への揮発から成る、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記害虫防除剤が溶剤から成る、請求項1に記載の装置。
【請求項19】
前記害虫防除剤がトランスフルスリンから成る、請求項1に記載の装置。
【請求項20】
前記害虫防除剤がテフルスリンから成る、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
前記害虫防除剤がヴェイパースリンから成る、請求項1に記載の装置。
【請求項22】
前記第1の面が周辺バリヤを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項23】
前記周辺バリヤが取り外し可能なヒートシールである、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記周辺バリヤが周辺フレーム層である、請求項22に記載の装置。
【請求項25】
前記周辺バリヤが溝である、請求項22に記載の装置。
【請求項26】
取付デバイスをさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項27】
前記取付デバイスが両面テープである、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
使い切り合図をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項29】
前記使い切り合図がコロイダル・シリカ粒子から成る、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記使い切り合図が変色ステッカーである、請求項28に記載の装置。
【請求項31】
前記使い切り合図が香料である、請求項28に記載の装置。
【請求項32】
第1及び第2の実質的に不浸透性である面を備え、
前記第1の面と前記第2の面との間に付与された揮発性害虫防除剤を備え、該害虫防除剤の引き付け特性が、前記第1の面を実質的に単に前記第2の面と取り外し可能に接触した状態に維持することにより、該害虫防除剤の揮発が阻止される、
害虫防除装置。
【請求項33】
前記引き付け特性が毛管力から成る、請求項32に記載の装置。
【請求項34】
前記第1の面及び前記第2の面がそれぞれ、第1の臨界表面張力値及び第2の臨界表面張力値を有し、前記害虫防除剤が、該第1の臨界表面張力値及び該第2の臨界表面張力値のそれぞれよりも少なくとも約5ダイン/cm2低い表面エネルギーを有する、請求項33に記載の装置。
【請求項35】
前記引き付け特性が粘着性から成る、請求項32に記載の装置。
【請求項36】
少なくとも1つの実質的に不浸透性である面を用意するステップを含み、
前記面を揮発性害虫防除剤で湿潤させるステップを含み、該害虫防除剤が前記面上に薄くて実質的に均一なフィルムを形成する、
害虫防除装置を製造する方法。
【請求項37】
前記害虫防除剤が、前記少なくとも1つの面の第1の臨界表面張力値よりも少なくとも約5ダイン/cm2低い表面エネルギーを有する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記少なくとも1つの面に第2の面を付与するステップをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記第2の面が第2の臨界表面張力値を有し、前記害虫防除剤が該第2の臨界表面張力値よりも少なくとも約5ダイン/cm2低い表面エネルギーを有する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
層と層との間に取り外し可能なヒートシールを形成することによって袋を作成するステップをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記湿潤ステップが、前記害虫防除剤を前記袋にピペットで入れることにより行われる、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記害虫防除装置に取付デバイスを設けるステップをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
前記害虫防除装置に使い切り合図を設けるステップをさらに含む、請求項36に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2007−521304(P2007−521304A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518749(P2006−518749)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2004/021117
【国際公開番号】WO2005/004597
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(500106743)エス.シー. ジョンソン アンド サン、インコーポレイテッド (168)
【Fターム(参考)】