説明

揮発性液体を大気中に放出するための装置

【課題】温度の上昇に伴う揮発性液体の過剰な損失を停止できる散布装置を提供する。
【解決手段】散布装置1は、液体を含む貯留槽3および、液体から大気中に延在する多孔質蒸発部材5を含み、貯留槽は、均圧排出口7によってのみ大気に直接開放されている。この排出口は、上昇する大気温度に応じて随意にこれを完全に閉鎖する閉鎖手段8を備えている。従って、この装置は、極めて高温となり得る、例えば自動車車内において遭遇する香料の過剰な損失を顕著に減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性液体を大気中に散布するように適合された装置に関する。
【0002】
揮発性液体を大気中に散布するための装置は、十分知られている。散布のための揮発性液体の例には、香料および殺虫剤が含まれ、大気には、室内および自動車の車内が含まれる。このような装置の1種の極めて一般的なタイプは、本質的に、揮発性液体および蒸発部材、例えば多孔質芯を含む貯留槽からなり、この一方の端部は、液体と接触しており、他方の端部は、大気中に露出しており、液体は、蒸発部材を通って拡散し、大気中に散布される。一般的に、液体は、ストレートの揮発性液体として、またはこれ自体ゲル中にカプセル封入された液体として存在する。以下の記載において、これ自体揮発性の液体の場合のみを記載するが、用語「揮発性液体」の使用は、ゲルの態様をも包含する。
【0003】
ある好都合な位置(一般的には、蒸発部材が貫通し、貯留槽における頸部中に堅く差し込まれ、他の方法で液体を貯留槽中に保持するキャップ中)において、貯留槽の大気との圧力の均等化を可能にし、蒸発部材を貫通しての拡散が継続するのを確実にする、小さい排出口がある。
【0004】
このような装置は、一般的に通常の室内の状況においては満足である一方、これらは、温度が極めて高くなり得る大気、例えば日照が良好な日における自動車の車内においては、あまり良好ではない。このような場合においては、到達する高い室内温度により、過度の蒸発がもたらされ、有効寿命が顕著に減少し得る。これを克服するいくつかの手段が提案されており、1つは、温度が上昇するに従って、蒸発部材を大気から次第に分離し、従って揮発性液体の大気中への逃散を減少させる、自動的な被覆機構を用いることである。このような被覆は、典型的には、ある感温手段(例えばバイメタルストリップ)により作動する。この考えは有用であるが、これは、被覆がしばしば十分に気密性の密封を形成せず、液体の損失が尚多大であるという問題を有する。
【発明の概要】
【0005】
ここで、この問題を、単純な機構により部分的に、または完全に克服することが可能であることが、見出された。従って、本発明は、揮発性液体を大気中に散布するように適合された装置であって、該装置が、該液体を含む貯留槽および、液体から大気中に延在する多孔質蒸発部材を含み、該貯留槽が、均圧排出口によってのみ大気に直接開放されており、該排出口が、排出口を、上昇する大気温度に伴って増大する程度に妨害し、随意にこれを完全に閉鎖する閉鎖手段を備えている、前記装置を提供する。
【0006】
本発明はさらに、揮発性液体を大気中に多孔質蒸発部材から散布し、この一方の端部が、大気との直接の接触から、均圧排出口以外により密閉されている貯留槽中の液体と接触しており、この他方の端部が、散布された液体の量が大気の温度が上昇するに伴って減少するように、大気に対して開放されている方法であって、該方法が、排出口を、温度上昇に伴って増大した程度に妨害することを含む、前記方法を提供する。
【0007】
貯留槽は、所望の揮発性液体を保持するのに適するすべての容器であってもよい。これは、すべての好適な形態で、およびすべての好適な材料で製造されていてもよく、プラスチックが、特に好ましい。多孔質の蒸発部材が、液体が大気中に散布されるための唯一の経路であるため、すべての構造により、これが当該場合であることが確実にならなければならない。好ましい構造(しかしいかなる手段によっても唯一の構造ではない)は、貯留槽に比較的狭い頸部を設けることであり、これを通って、本質的に円筒型の蒸発部材が貫通し、蒸発部材は、頸部において、頸部中に、および蒸発部材の周囲に堅く適合するキャップにより密封される。
【0008】
多孔質の蒸発部材は、液体を貯留槽から、この内部の多孔性により輸送し、次にこれが大気中に蒸発するのを可能にするのに適するすべての部材であってもよい。これは、当該分野において知られており、当該分野により用いられている多孔質の芯の1種であってもよく、これは、すべての好適な手段(例えば押し出しおよび成形)によるすべての好適な材料(例えば繊維、炭素、セラミックス、プラスチック)製であってもよい。
【0009】
均圧排出口は、すべての適切な位置にあってもよい。前述の場合において、これは、多孔質蒸発部材を貯留槽中に密封するキャップ中にあってもよい。しかし、他の構造が可能である。排出口は、装置の輸送中にある方法で被覆されており、被覆を、装置を使用に供する際に取り外す。これは、一般的に、排出口と、使用の際に大気中に露出される多孔質の蒸発手段の当該端部とを共に被覆するキャップを有することにより、行われる。
【0010】
排出口は、排出口を大気温度が上昇するに従って増大した程度で妨害する閉鎖手段を備えている。このことは、温度が上昇するに従って、排出口の有効な大きさが一層小さくなり、装置が圧力を均等にするための能力が低下し、多孔質の蒸発部材を流れて上昇することができる液体の量もまた減少することを意味する。所望により、閉鎖手段は、排出口を完全に閉鎖し、液体の大気中へのすべての逃散をほぼ完全に防止することができる。
【0011】
閉鎖手段は、すべての好適な閉鎖手段であってもよい。1種のこのような好ましい手段は、温度応答性移動部材およびこれに取り付けられた閉鎖部材を含む。
【0012】
温度応答性移動部材は、温度が上昇するに従って、閉鎖部材を、排出口を増大した程度に妨害するように移動させる、当該分野において知られているすべての好適な部材であってもよい。単純および安価のために、これが、上昇する温度の下で、閉鎖部材が適切な排出口制限方向に移動するように変形する部材を含むのが好ましい。好ましくは、温度応答性移動部材は、上昇する温度に伴って所望の程度の閉鎖を付与するのに十分な程度に変形する単一の成分である。
【0013】
このような部材の例は、コイルバネである。このようなバネは、温度が上昇するに従って膨張することが知られており、この特性を用いることができる。しかし、好ましい温度応答性移動部材は、バイメタル部材である。これは、異なる熱膨張率を有する2種の金属を一緒に融合させることにより製造される部材である。温度が上昇するに従って、異なる膨張速度により、要素が変形する。最も一般的なバイメタル部材は、バイメタルストリップ、即ち等しい長さの2種の金属ストリップを一緒に融合させて製造した細長いストリップである。加熱の際に、このストリップは、低い方の熱膨張率を有する金属を有する側の方向に曲がる。従って、この場合においては、このようなストリップを、排出口に関して、低い方の熱膨張率を有する金属が、排出口に比較的近く、一方の端部が固定され、他方の端部が自由に移動し、この自由な端部がこれに閉鎖部材が取り付けられたように配向させることができる。ストリップが曲がるに従って、これは、閉鎖部材を、排出口に一層近くし、随意に最終的にはこれを完全に密封する。さらなる可能性は、バイメタルコイルであり、これは、上昇する温度に伴って伸び、従ってコイルの長軸に沿って膨張する。
【0014】
閉鎖部材は、すべての好適な閉鎖部材であってもよく、当業者は、すべての所定の場合のための多くの好適な閉鎖部材を容易に思い付くことができる。例えば、閉鎖部材は、上昇する温度に伴って、円形の排出口の方向にニードル弁の方式で移動する、円錐状の部材であってもよい。円錐状の部材が、排出口に一層近く接近するに従って、これは、排出口の面積を減少させ、従って貯留槽の内側および外側の圧力の均等化の可能性を、さらに大きい程度に減少させ、随意に最終的にはこれを完全に密封する。
【0015】
あるいはまた、閉鎖部材は、排出口の方向に移動し、随意に最終的にはこれを完全に閉鎖するキャップであってもよい。排出口は、この上方の端部において、これが終了する表面と同一平面にある孔において終了することができるか、またはこれは、表面の上方に直立する隆起した台座において終了することができる。他の代替は、カップ状の部材であり、これは、カップが排出口をさらに一層妨害し、随意に最終的には排出口を完全に密封するように排出口の方向に移動し、これは再び、孔のみまたは隆起した台座の一部であってもよい。他の可能性は、例えば貯留槽の密封キャップ中に形成した、対応する環状チャネルの方向に移動する、環状閉鎖部材であり、排出口は、チャネルの底部から貯留槽の内部まで延在する。完全な密封が望ましい場合には、チャネルと接触する閉鎖部材の当該部分は、良好な密封を形成するのに適する部材または材料、例えば好適に弾性の材料、例えばゴムまたはプラスチック材料製のガスケットを備えていてもよい。当業者は、本発明の範囲内にある多くの可能な変法を理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の好ましい態様の縦方向の断面図である。
【図2】本発明の第2の好ましい態様の縦方向の断面図である。
【図3】本発明の第3の好ましい態様の縦方向の断面図である。
【図4】本発明の第4の好ましい態様の縦方向の断面図である。
【図5】本発明の第5の好ましい態様の縦方向の断面図である。
【0017】
本発明を、添付した図面を参照してさらに記載する。これらは、好ましい態様を示し、いかなる方法によっても本発明を限定しない。
【0018】
一般的に1で示した香料ディスペンサーは、2つの本体部、即ち上部2および下方の貯留槽部3からなり、貯留槽は、大気中に散布されるべき揮発性の液体香料を含む。貯留槽の頸部4中に、多孔質芯5が取り付けられており、これは、頸部中に堅く適合し、芯の周囲に堅く適合しているインサート6により一定の個所に保持されている。このインサートは、排出口7を含み、これは、貯留槽中の液体の大気との唯一の直接の接触であり、これは、空気圧力を均等にする作用を奏する。この特定の態様において、排出口7の上方の端部は、これがインサートの最上部に接近するに従って拡大されている。(態様に依存して、このような拡大は、常に必要であるかまたは望ましいわけではない場合がある)。排出口のこの拡大された端部のすぐ上方に、円錐状プラグ8が配置されており、このプロフィールは、拡大された端部のプロフィールと整合する。この円錐状プラグは、バイメタルストリップ9の末端に配置されており、これは、上方の本体部2の壁中の突出部10に固定されている。
【0019】
バイメタルストリップおよび円錐状プラグは、温度の上昇によりストリップが頸部4の方向に曲がり、従って円錐状プラグが排出口7の拡大された端部中に移動し、従って空気の流れを妨げ、圧力の均等化を阻害し、芯5からの蒸発の速度が低下するように配置されている。従って、高い温度(例えば高温の日における自動車の車内)において、香料は、すべては損失されない。温度が降下するに従って、円錐状プラグは後退し、従って増大した蒸発が再び可能になる。
【0020】
図2の態様は、図1の態様と密接に類似しており、差異は、図1の突出部10が、環状の棚11で置換されており、これにバイメタルストリップ9が固定されており、ストリップが、直線状ではなく湾曲していることである−これにより、同一の空間において一層高度にバイメタルの材料を用い、従って自由端部において一層大きく移動させることが可能になる。
【0021】
図3の態様は、バイメタルストリップ9が、温度が上昇した際に頸部4から湾曲して離れる点で、異なる。通常の温度において、バイメタルストリップ9の末端におけるキャップ12は、芯5を一定の個所に保持するインサート6上に配置される。キャップは、圧力の貯留槽3中の大気との均等化を可能にする排出口7上に配置される。キャップは、中空であり、均圧化を可能にするための開口部13を有する。
【0022】
図3の態様において、排出口の部分的な、または完全な閉鎖を、キャップ12から排出口7を貫通して垂れ下がり、この下端において円錐状部材15を有するロッド14により達成する。この円錐状部材は、空気の大気から貯留槽3への流れを妨げ、所望によりこれを、バイメタルストリップが、上昇する温度の下で上方に湾曲するに従って、これがロッドおよび排出口の下方の開放部に一層近い関連する円錐状部材を引くという事実により、完全に閉鎖するように適合されている。
【0023】
図4の態様は、本質的に図1の態様と同一であるが、この場合において、排出口7の上端は、隆起して頸部16を形成し、円錐状プラグ8は、頸部16の上方に適合し、貯留槽を大気から減少させ、所望により完全に遮断するように設計されたカップ17により置換される。
【0024】
図5の態様において、閉鎖部材は、環状部材18であり、これは、上方の本体部2から、バイメタルコイル19によりつるされている。環状閉鎖部材は、カラー20と共に形成されており、これを貫通して多孔質芯5が突出しており、カラーは、閉鎖部材が芯5上を摺動自在に移動するのを可能にする。芯は、貯留槽3中に、貯留槽の頸部4中に堅く適合するインサート6により保持されている。このインサートの上方の表面上に、チャネル21が形成されており、これは、閉鎖部材がこの中に適合するように寸法がとられ、位置している。このチャネルからインサートを貫通して貯留槽に、排出口7が通じている。完全な密封が望ましい場合には、環状閉鎖部材18の底部は、典型的にはゴムガスケットを含む。
【0025】
作動の際に、バイメタルコイル19は、上昇する温度に伴って膨張し、環状閉鎖部材19をチャネル21の方向に移動させる。これが移動するに従って、これは、次第に貯留槽の大気との接触を遮断し、従って貯留槽中の揮発性液体が芯を上昇する能力を低下させる。所望により、環状部材を、排出口を完全に閉鎖するように構成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性液体を大気中に散布するように適合された装置であって、該装置が、該液体を含む貯留槽および、液体から大気中に延在する多孔質蒸発部材を含み、該貯留槽が、均圧排出口によってのみ大気に直接開放されており、該排出口が、排出口を、上昇する大気温度に伴って増大する程度に妨害し、随意にこれを完全に閉鎖する閉鎖手段を備えている、前記装置。
【請求項2】
閉鎖手段が、温度応答性移動部材およびこれに取り付けられた閉鎖部材を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
温度応答性移動部材が、閉鎖部材が適切な排出口制限方向に移動するように、上昇する温度の下で変形する部材を含む、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
温度応答性移動部材が、上昇する温度に伴って、所望の程度の閉鎖をもたらすのに十分な程度に変形する単一の成分である、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
温度応答性移動部材が、コイルバネである、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
温度応答性移動部材が、バイメタル部材である、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
バイメタル部材が、バイメタルストリップおよびバイメタルコイルから選択されている、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
閉鎖部材が、円形の排出口に適合するニードル弁である、請求項2に記載の装置。
【請求項9】
閉鎖部材が、オリフィスを閉鎖するキャップである、請求項2に記載の装置。
【請求項10】
揮発性液体を大気中に多孔質蒸発部材から散布し、この一方の端部が、大気との直接の接触から、均圧排出口以外により密閉されている貯留槽中の液体と接触しており、この他方の端部が、散布された液体の量が大気の温度が上昇するに伴って減少するように、大気に対して開放されている方法であって、該方法が、排出口を、温度上昇に伴って増大した程度に妨害することを含む、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−101805(P2011−101805A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267068(P2010−267068)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【分割の表示】特願2006−541780(P2006−541780)の分割
【原出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(501105842)ジボダン エス エー (158)
【Fターム(参考)】