説明

揮発性液体揮散装置

【課題】使用時に手間をかけず、揮発性液体を揮散可能な状態に速やかにセッティングすること。
【解決手段】揮発性液体Wが充填された容器2と、該容器の口部13内に配設された保持体3と、該保持体に保持され、揮発性液体を容器外まで吸い上げる吸上げ芯4と、吸上げ芯の上部を覆う蓋体5と、吸い上げられた揮発性液体を揮散させる揮散体6と、を備え、蓋体が、口部に装着される蓋本体30と、操作片35aが形成され、該操作片の引き上げによって蓋本体から離反すると共に吸上げ芯の上部を開放させる引上部31と、を有し、揮散体が、操作片の引き上げ前、蓋体の上方に保持されていると共に、操作片の引き上げ後、開放された吸上げ芯の上部に接触するように保持されている揮発性液体揮散装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性液体を揮散させる揮発性液体揮散装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
芳香剤や消臭剤等の揮発性液体を大気中に揮散させる装置は、様々なものが提供されているが、その基本的構成は容器内に充填された揮発性液体を吸上げ芯で吸い上げ、この吸い上げた揮発性液体を容器外で揮発させて大気中に散布(揮散)する構成とされている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−38996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、揮発性液体は、大気中に触れたままにしておくと揮発が進行してしまうため、使用前の段階では、揮発性液体を収容する容器の口部をネジキャップ等で蓋をしておく構成が一般的である。
そのため、使用する際には、口部からネジキャップ等を取り外す手間が必要であった。特に、容器の上部には、揮発性液体の揮発成分を揮散させる揮散孔が形成されたカバー体が着脱可能に固定される場合が多い。この場合には、ネジキャップ等を取り外した後、カバー体を装着するといった手順となり、余計に手間のかかるものであった。
【0005】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、使用時に手間をかけず、揮発性液体を揮散可能な状態に速やかにセッティングすることができる揮発性液体揮散装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
(1)本発明に係る揮発性液体揮散装置は、揮発性液体を大気中に揮散させる揮発性液体揮散装置であって、前記揮発性液体が充填された容器と、該容器の口部内に配設された保持体と、該保持体に保持され、前記揮発性液体を前記容器外まで吸い上げる吸上げ芯と、前記吸上げ芯の上部を覆う蓋体と、吸い上げられた前記揮発性液体を揮散させる揮散体と、を備え、前記蓋体が、前記口部に装着される蓋本体と、操作片が形成され、該操作片の引き上げによって蓋本体から離反すると共に前記吸上げ芯の上部を開放させる引上部と、を有し、前記揮散体が、前記操作片の引き上げ前、前記蓋体の上方に保持されていると共に、前記操作片の引き上げ後、開放された前記吸上げ芯の上部に接触するように保持されていることを特徴とする。
【0007】
この発明に係る揮発性液体揮散装置においては、使用前の段階では、保持体に保持された吸上げ芯の上部が蓋体で覆われているうえ、蓋体を挟んで吸上げ芯と揮散体とが離間している。そのため、吸上げ芯によって吸い上げられた揮発性液体は、揮散体側に拡がることがないうえ、蓋体の外側の大気に触れることがない。従って、使用前の段階で、揮発性液体が蓋体の外側に揮散されないようになっている。
【0008】
一方、使用する場合には、操作片を介して引上部を上方に引き上げ、蓋本体から離反させる。これにより、先ほどまで覆われていた吸上げ芯の上部を開放することができる。そして、この開放された吸上げ芯の上部に揮散体を接触させる。これにより、吸上げ芯によって容器外まで吸い上げられた揮発性液体は、揮散体の全体に拡がりながら大気に触れることで揮散される(揮発して大気中に散布される)。
【0009】
このように、操作片を介して引上部を引き上げるだけで、揮発性液体を揮散させることができる。特に、従来のように口部からネジキャップ等を取り外すような手間がかかるものとは異なり、引上部を引き上げるだけの簡便な操作で、手間をかけずに揮発性液体を揮散可能な状態に速やかにセッティングすることができる。従って、非常に使い易く、利便性に優れている。
【0010】
(2)本発明に係る揮発性液体揮散装置は、上記本発明の揮発性液体揮散装置において、前記口部の周囲を径方向外側から囲繞すると共に、前記容器の肩部を覆うように該容器に装着された肩カバーと、該肩カバーに上方に向けて延設され、前記揮散体を保持するホルダと、を備えていることを特徴とする。
【0011】
この発明に係る揮発性液体揮散装置においては、容器に装着された肩カバーにホルダが設けられ、このホルダに揮散体が保持されている。従って、使用前の段階で揮散体を蓋体の上方に安定して保持することができると共に、使用時には揮散体を吸上げ芯の上部に安定的に接触させた状態で保持することができる。
【0012】
(3)本発明に係る揮発性液体揮散装置は、上記本発明の揮発性液体揮散装置において、前記口部の周囲を径方向外側から囲繞すると共に、前記容器の肩部を覆うように前記容器に装着された肩カバーと、該肩カバーに着脱自在に固定され、前記揮散体の上方を覆う有頂筒状に形成されると共に揮散孔が形成されたカバー体と、該カバー体の頂壁部の下面に下方に向けて延設され、前記揮散体を保持するホルダと、を備えていることを特徴とする。
【0013】
この発明に係る揮発性液体揮散装置においては、揮散体を保持するホルダが、肩カバーに着脱自在に固定されるカバー体に設けられているので、使用前の段階で揮散体を蓋体の上方に安定して保持することができる。また、使用時には、カバー体を肩カバーから取り外すことで、揮散体を蓋体の上方から一旦離間させることができるので、引上部の引き上げ操作を容易に行い易い。そして、その後再度カバー体を肩カバーに装着することで、揮散体を吸上げ芯の上部に接触するように容易にセットすることができる。
【0014】
このように、カバー体に設けられたホルダに揮散体が保持されているので、より速やかに揮発性液体を揮散可能な状態にセッティングすることができる。なお、揮散体によって揮発した成分は、カバー体に形成された揮散孔を通じてカバー体の外側に確実に揮散される。
【0015】
(4)本発明に係る揮発性液体揮散装置は、上記本発明の揮発性液体揮散装置において、前記引上部が、ヒンジ部を介して前記蓋本体に回動可能に連結されていることを特徴とする。
【0016】
この発明に係る揮発性液体揮散装置においては、操作片を介して引上部を蓋本体から上方に引き上げると、該引上部はヒンジ部を介して回動しながら蓋本体から離反する。これにより、吸上げ芯の上部を開放することができる。特に、引き上げ後であっても、引上部はヒンジ部を介して蓋本体に連結されているので、両者が分離することがない。よって、引上部を廃棄する等の手間を省くことができる。
【0017】
(5)本発明に係る揮発性液体揮散装置は、上記本発明の揮発性液体揮散装置において、前記肩カバーには、前記操作片の引き上げ後、前記引上部を保持する保持部が設けられていることを特徴とする。
【0018】
この発明に係る揮発性液体揮散装置においては、引き上げ操作をした後の引上部を、肩カバーの保持部を利用して保持することができるので、該引上部のばたつき等をなくすことができるうえ、引上部が元の状態に弾性戻りする等して揮散体に干渉してしまうような可能性をなくすことができる。
【0019】
(6)本発明に係る揮発性液体揮散装置は、上記本発明の揮発性液体揮散装置において、前記引上部が、破断可能な弱化部を介して前記蓋本体に連結されていることを特徴とする。
【0020】
この発明に係る揮発性液体揮散装置においては、操作片を介して引上部を蓋本体から上方に引き上げると、弱化部が破断されながら該引上部が蓋本体から離反する。これにより、吸上げ芯の上部を開放することができる。特に、引き上げ操作を一度行うと、弱化部が破断されるので、該弱化部の状態を確認するだけで、使用前や流通段階で不意に或いは不正に引き上げ操作されたか否かを一目で判断することができる。このように、弱化部による改ざん防止が図られているので、製品への信頼性を高めることができる。
【0021】
(7)本発明に係る揮発性液体揮散装置は、上記本発明の揮発性液体揮散装置において、前記肩カバーには、下方移動可能な可動部が設けられ、該可動部に前記ホルダが設けられていることを特徴とする。
【0022】
この発明に係る揮発性液体揮散装置においては、操作片を介して引上部を引き上げ操作した後、可動部を下方移動させることで、ホルダを同時に下方移動させることができる。これにより、揮散体を吸上げ芯の上部に確実且つ速やかに接触させることができ、より速やかに揮発性液体を揮散可能な状態にセッティングすることができる。
特に、肩カバーから上方に向けて延設されているホルダの突出長さを短くすることができるので、より小型でコンパクト化した製品とすることができる。
【0023】
(8)本発明に係る揮発性液体揮散装置は、上記本発明の揮発性液体揮散装置において、有底筒状に形成され、前記容器を取り出し可能に収容する外装容器を備えていることを特徴とする。
【0024】
この発明に係る揮発性液体揮散装置においては、外装容器内に容器を収容するので、容器自体を隠すことができる。よって、容器自体を安価で簡易的に設計したとしても、外装容器のデザインで高品質な製品を実現することができる。つまり、外装容器のデザインで製品の高品質化を図ることが可能であるので、容器自体にコストを費やす必要がなく、単純に設計することができる。
【0025】
(9)本発明に係る揮発性液体揮散装置は、上記本発明の揮発性液体揮散装置において、前記外装容器に着脱自在に固定され、外装容器の上部を覆う有頂筒状に形成されると共に、揮散孔が形成された外装カバーを備えていることを特徴とする。
【0026】
この発明に係る揮発性液体揮散装置においては、外装容器と外装カバーとで、容器や揮散体等を完全に内部に収容して隠すことができるので、よりデザイン性の優れた製品とすることができる。なお、揮散体によって揮発した成分は、外装カバーに形成された揮散孔を通じて外装カバーの外側に確実に揮散される。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る揮発性液体揮散装置によれば、使用時に引上部を引き上げるだけの簡便な操作で、手間をかけずに揮発性液体を揮散可能な状態に速やかにセッティングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る揮発性液体揮散装置の第1実施形態を示す図であって、使用前における縦断面図である。
【図2】図1に示す揮発性液体揮散装置の使用時における縦断面図である。
【図3】図1に示す容器の口部周辺を拡大した図である。
【図4】図1に示す肩カバー及び蓋体を上方から見た図である。
【図5】図1に示すカバー体を下から見上げた図である。
【図6】第1実施形態の揮発性液体揮散装置の変形例を示す図であって、引上キャップを蓋本体から切り離し可能に構成した蓋体を備えた構成を示す断面図である。
【図7】本発明に係る揮発性液体揮散装置の第2実施形態を示す図であって、使用前における縦断面図である(外装容器及び外装カバーに関しては不図示)。
【図8】図7に示す揮発性液体揮散装置の使用時における縦断面図である。
【図9】図7に示す肩カバーを上方から見た図である。
【図10】本発明に係る揮発性液体揮散装置の第3実施形態を示す図であって、使用前における縦断面図である(外装容器及び外装カバーに関しては不図示)。
【図11】図10に示す肩カバーを上方から見た図である。
【図12】図10に示す揮発性液体揮散装置の使用時における縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第1実施形態)
以下、本発明に係る揮発性液体揮散装置の第1実施形態について、図1から図5を参照して説明する。
本実施形態の揮発性液体揮散装置1は、図1及び図2に示すように、揮発性液体Wを揮散(揮発させて大気中に散布する)装置であって、容器2と、挿入筒(保持体)3と、吸上げ芯4と、蓋体5と、揮散体6と、外装容器7と、外装カバー8と、を備えている。
【0030】
なお、図1は、使用前における揮発性液体揮散装置1の縦断面図である。図2は、使用時における揮発性液体揮散装置1の縦断面図である。また、各構成品のそれぞれの中心軸は、共通軸上に位置している。本実施形態では、この共通軸を容器軸Oといい、この容器軸Oに直交する方向を径方向、容器軸Oを中心に周回する方向を周方向とする。また、揮発性液体Wとしては、例えば、芳香剤、消臭剤や殺虫剤等である。
【0031】
容器2は、外装容器7内に収容される交換可能な内装容器として機能するものであり、底部10、胴部11、肩部12及び口部13を有する有底筒状に形成され、内部に揮発性液体Wが充填されている。なお、本実施形態の容器2は、胴部11が平面視長方形状に形成されている。また、本実施形態において、容器軸Oに沿って口部12側を上側といい、底部10側を下側という。
【0032】
口部13の内周面には、図3に示すように、挿入筒3の係合凸部20aが係合される係合凹部13aが形成されている。なお、図3は、図1に示す容器2の口部13周辺を拡大した図である。口部13の外周面には、蓋体5の雌ねじ部32aが螺合される雄ねじ部13bが形成されていると共に、該雄ねじ部13bと肩部12との間に径方向外方に突出した環状の鍔部13cが形成されている。
【0033】
挿入筒3は、容器2の口部13内に配設された部材であり、具体的には容器2の口部13に装着されると共に、一部が口部13内から下方に向かって容器2の内部に差し込まれている。
詳細に説明すると、挿入筒3は、口部13内に嵌り、係合凹部13aに係合される係合凸部20aが外周面に形成された外筒20と、該外筒20の径方向内側に配設され、下方に向かって延在した内筒21と、外筒20の上端部と内筒21の上端部とを連設すると共に口部13の上端面に押し当たる環状のストッパ壁22と、を備えている。
【0034】
そして、外筒20の係合凸部20aを口部13に形成された係合凹部13aに係合することにより、挿入筒3を口部13に装着可能とされている。この際、ストッパ壁22が口部13の上端面に押し当たるので、容器軸O方向に対して挿入筒3が位置決めされるようになっている。
内筒21は、図1に示すように、下端部に向かうにしたがって一旦急激に縮径した後、なだらかに縮径する漏斗状に形成されている。そして、最も内径が細くなった下端部で主に吸上げ芯4を保持している。
【0035】
この吸上げ芯4は、不織布等により長尺な円柱状に形成されており、揮発性液体Wを容器2外まで吸い上げる役割を担っている。そして、吸上げ芯4は、挿入筒3を貫入するように差し込まれ、上述したように内筒21の下端部で主に保持されている。この際、吸上げ芯4は、下端部が容器2の底部10付近に達し、上端部が口部13よりも上方に突出するように保持されている。
【0036】
ところで、内筒21には、図1及び図3に示すように、容器2の内部と外部とを連通させる連通路23が形成されている。これにより、この連通路23を通じて容器2の外部から容器2の内部に空気を流通させることができ、容器2内の空気置換を行うことが可能とされている。従って、吸上げ芯4によって吸い上げられた揮発性液体Wの分だけ空気置換を行うことができ、容器2内が負圧になることを防止することができるようになっている。これにより、揮発性液体Wの吸い上げを良好に促すことが可能とされている。
【0037】
蓋体5は、図1から図4に示すように、使用前の段階では吸上げ芯4の上部を覆い、使用時の段階では吸上げ芯4の上部を開放させる部材である。なお、図4は、図1に示す肩カバー40及び蓋体5を上方から見た図である。
詳細に説明すると、この蓋体5は、口部13に装着された蓋本体30と、操作片35aが形成され、該操作片35aの引き上げによって蓋本体30から離反すると共に吸上げ芯4の上部を開放させる引上キャップ(引上部)31と、で構成されている。
【0038】
蓋本体30は、口部13の雄ねじ部13bに螺合される雌ねじ部32aが内周面に形成され、口部13の外周面側に螺着される装着筒32と、この装着筒32の上方に位置し、吸上げ芯4の上部の周囲を径方向外側から囲むと共に、引上キャップ31が離反可能に係合する被係合筒33と、装着筒32の上端部と被係合筒33の下端部とを連設する環状のフランジ部34と、を有している。
【0039】
このように構成された蓋本体30は、上述したように装着筒32の螺着により口部13に装着されている。この際、フランジ部34は、挿入筒3のストッパ壁22の上面に押し当たっている。これにより、容器軸O方向に対して蓋本体30が位置決めされるようになっている。特に、蓋本体30を口部13に装着することで、ストッパ壁22を口部13の上端面との間で挟み込む形になるので、挿入筒3の装着状態をより安定化させることができる。
【0040】
また、フランジ部34の下面には、挿入筒3の内筒21の内周面に嵌合する環状の嵌合突起34a(図3参照)が下方に向けて延設されている。また、被係合筒33の外周面には、径方向外方に向けて環状突起33aが突設されている。なお、蓋本体30が口部13に装着された際、吸上げ芯4は、被係合筒33よりも上方に突出するように挿入筒3に保持されている。
【0041】
引上キャップ31は、平面視円形状に形成され、被係合筒33及び吸上げ芯4の上部を覆う頂壁部35と、この頂壁部35の下面から下方に向けて延設され、被係合筒33の外周面側に係合する係合筒36と、頂壁部35の下面から下方に向けて延設され、係合筒36を径方向の外側から囲むと共に下端開口縁がフランジ部34上に当接するキャップ筒37と、を備えている。
【0042】
このように構成された引上キャップ31は、蓋本体30の被係合筒33に離反可能に係合されている。また、頂壁部35の一部には、径方向外方に向けて鍔状に膨らんだ操作片35aが形成されている。これにより、指先を引っ掛けて操作片35aを引き上げ操作することが可能とされており、引上キャップ31を蓋本体30から容易に離反できるように設計されている。そして、引上キャップ31が蓋本体30から離反して、上方に引き上げられることで、吸上げ芯4の上部が開放されるようになっている。
【0043】
ところで、本実施形態のキャップ筒37の下端部には、フランジ部34の上面に接触しながら径方向外方に延在したアーム板38が連結されている。このアーム板38は、容器軸Oを挟んで操作片35aとは反対方向に向けて延在すると共に、蓋本体30の装着筒32とフランジ部34との接続部分にヒンジ部39を介して回動可能に連結されている。
これにより、引上キャップ31は、蓋本体30から離反した後、ヒンジ部39を中心に上方に跳ね上がるように回動しながら蓋本体30から離れるようになっている。
【0044】
また、係合筒36の内周面には、蓋本体30の被係合筒33に形成された環状突起33aに係合する環状の係合爪36a(図3参照)が形成されている。これにより、引上キャップ31は、引き上げ操作される前に、蓋本体30から容易に離反しないように設計されている。しかも、環状突起33aと係合爪36aとは、係合時に高いシール性を維持するように密に係合し合っている。そのため、引上キャップ31を引き上げ操作する前に、環状突起33aと係合爪36aとの間を通じて空気が吸上げ芯4側に侵入しないようにようい設計されている。
【0045】
しかも、頂壁部35の下面には、被係合筒33の内周面に嵌合する環状のシール突起35b(図3参照)が形成されている。これにより、より一層シール性が高められており上述した空気の侵入をより強固に防止している。
更に、頂壁部35は、中心部が上方に膨らんだ膨出部35cとされている。この膨出部35cによって、吸上げ芯4の上部との間に隙間が開くように設計されている。
【0046】
ところで、容器2には、口部13の周囲を径方向外側から囲繞すると共に肩部12を覆う肩カバー40が装着されている。
この肩カバー40は、口部13の外周面に形成された鍔部13cの周囲を囲む環状の内壁部41と、この内壁部41の径方向外側に位置すると共に、胴部11よりも一回り大きく形成された平面視長方形状の外壁部42と、内壁部41の上端部と外壁部42の上端部とを連設する天板部43と、を備えている。
【0047】
このように構成された肩カバー40は、内壁部41が鍔部13cの外側に嵌合することで、口部13に装着されている。この際、内壁部41の内周面には、鍔部13cの下側で径方向内側に突出する環状の凸部41aが形成されている。これにより、肩カバー40は、上方に外れ難い設計とされている。
【0048】
また、天板部43上には、該天板部43の外周縁から径方向内側に入った位置において、外周縁に沿うように周壁筒44が形成されている。そして、この周壁筒44の外周面には、径方向外方に向けて突出した環状の凸部44aが形成されている。また、天板部43上には、短手方向L1に間隔を開けた状態で長手方向L2に平行に延在した補強壁45が、周壁筒44の内側に連設するように形成されている。
更に、天板部43には、蓋本体30から離反した引上キャップ31の膨出部35cが嵌合する嵌合孔(保持部)46が形成されている。これにより、操作片35aの引き上げによって蓋本体30から離反した引上キャップ31を、肩カバー40に保持することが可能とされている。
【0049】
上述した肩カバー40には、図1に示すように、有頂筒状に形成されたカバー体50が着脱自在に固定されている。このカバー体50は、揮散体6の上部を覆うカバーであり、周壁筒44に外嵌された状態で天板部43上に載置される周壁部51と、周壁部51の上端部を塞ぐ頂壁部52とで構成されている。周壁部51の内周面には、周壁筒44の凸部44aに嵌合する環状の凹部51aが形成されている。
このように構成されたカバー体50は、周壁部51を天板部43上に載置し、凸部44aに凹部51aを嵌合させることで肩カバー40に着脱自在に固定されている。
【0050】
ところで、頂壁部52の下面には、図1及び図5に示すように、揮散体6を保持するホルダ60が下方に向けて延設されている。なお、図5は、図1に示すカバー体50を下から見上げた図である。
本実施形態のホルダ60は、縦断面視L字形状に形成されており、揮散体6を挟んで長手方向L2に対向するように設けられている。そして、揮散体6を両側から抱え込みながら吊り下げるように保持している。
【0051】
この際、操作片35aの引き上げ前、即ち、引上キャップ31が蓋本体30から離反する前の段階では、揮散体6は蓋体5の上方に保持されている。具体的には、引上キャップ31上に載置された状態で保持されている。
一方、操作片35aの引き上げによって引上キャップ31が蓋本体30から離反して、吸上げ芯4の上部が開放された段階では、図2に示すように、揮散体6は吸上げ芯4の上部に接触するように保持されるようになっている。なお、吸上げ芯4は、蓋本体30の被係合筒33よりも上方に突出しているので、揮散体6が吸上げ芯4の上部に接触した際に、被係合筒33と揮散体6との間に若干の隙間が開くようになっている。これにより、この隙間を通じて内筒21に形成された連通路23に向けて空気を流通させることが可能とされている。
【0052】
揮散体6は、揮発性液体Wを含浸可能な多孔質の含浸体であり、略直方体状に形成されている。この揮散体6は、吸上げ芯4に接触すると、該吸上げ芯4によって吸い上げられた揮発性液体Wを含浸させると共に揮散させる役割を果している。
なお、本実施形態では、揮散体6はホルダ60によって強固に保持されているわけではなく、容器軸O方向に移動可能な状態で保持されている。但し、ホルダ60が縦断面視L字形状に形成されているので、揮散体6がホルダ60から落下することはない。
【0053】
また、本実施形態のカバー体50は、図1及び図5に示すように、頂壁部52及び周壁部51のそれぞれに、平面視円形状の揮散孔53が複数形成されている。従って、揮散体6によって大気中に揮散された揮発性液体Wの揮発成分は、揮散孔53を通じてカバー体50の外側に揮散されるようになっている。
【0054】
外装容器7は、図1及び図2に示すように、上述した容器2を取り出し可能に収容する容器であって、容器2よりも一回り大きいサイズの有底筒状に形成されている。外装容器7の深さは、容器2の口部13が露出する程度の深さに設計されている。外装容器7の上端開口縁には、径方向外側に突出した環状の凸部7aが形成された周壁筒7bが立設されている。
【0055】
外装カバー8は、外装容器7に着脱自在に固定され、外装容器7の上部を覆う有頂筒状に形成されたカバーである。
この外装カバー8は、外装容器7上に載置される周壁部65と、周壁部65の上端部を塞ぐ頂壁部66とで構成されている。周壁部65の下端部には、外装容器7の周壁筒7bの凸部7aに嵌合する環状の凹部65aが形成されている。これにより外装カバー8は、凸部7aに凹部65aを嵌合させることで外装容器7に着脱自在に固定されている。
【0056】
そして、これら外装容器7と外装カバー8とで、容器2、揮散体6やカバー体50等の各構成品を内部に収容して隠すことができるようになっている。また、外装容器7や外装カバー8には、図示しない装飾等が施されており、高級感及び高品質感が感じられる設計とされている。
また、外装カバー8には、カバー体50と同様に頂壁部66及び周壁部65のそれぞれに、揮散孔67が複数形成されている。従って、カバー体50の外側に揮散された揮発性液体Wの揮発成分を、これら揮散孔67を通じて外装カバー8の外側に揮散させることが可能とされている。
【0057】
次に、このように構成された揮発性液体揮散装置1を使用して、揮発性液体Wを揮散させる場合について説明する。
はじめに、使用前の段階では、図1に示すように、引上キャップ31が蓋本体30に係合しているので、挿入筒3に保持された吸上げ芯4の上部が蓋体5で覆われている。また、蓋体5を挟んで吸上げ芯4と揮散体6とが離間している。そのため、吸上げ芯4によって吸い上げられた揮発性液体Wは、揮散体6側に拡がることがないうえ、蓋体5の外側の大気に触れることがない。従って、使用前の段階で、揮発性液体Wが蓋体5の外側に揮散されることがない。
【0058】
また、引上キャップ31の係合筒36と蓋本体30の被係合筒33とは、環状突起33aと係合爪36aとの係合により確実に係合しているので、振動や衝撃等の影響で係合が解かれて、引上キャップ31が浮き上がってしまうような現象が生じ難い。よって、この点においても、使用前に揮発性液体Wが蓋体5の外側に揮散されてしまうようなことがない。
【0059】
続いて、使用する場合について説明する。
まず、外装カバー8を外装容器7から取り外し、カバー体50を露出させる。続いて、露出したカバー体50を肩カバー40から取り外す。すると、ホルダ60を介してこのカバー体50に揮散体6が保持されているので、カバー体50の取り外しによって、揮散体6を蓋体5上から離間させることができる。
【0060】
次に、操作片35aを介して引上キャップ31を上方に引き上げる、すると、引上キャップ31は、ヒンジ部39を中心に回動しながら蓋本体30から離反する。これにより、図2に示すように、先ほどまで覆われていた吸上げ芯4の上部を開放することができる。この際、開放された吸上げ芯4の上部は、蓋本体30の被係合筒33よりも上方に突出した状態となっている。
【0061】
また、引上キャップ31に関しては、そのままヒンジ部39を中心に略180度回動させる。そして、引上キャップ31の膨出部35cを、肩カバー40の天板部43に形成された嵌合孔46に押し込んで嵌合させる。これにより、引き上げ操作した後の引上キャップ31を、肩カバー40に保持させておくことができる。
【0062】
このように、吸上げ芯4の上部の開放と、引上キャップ31の保持と、を行った後、先ほど取り外したカバー体50を肩カバー40に装着する。この際、カバー体50の凹部51aを肩カバー40の凸部44aに確実に嵌め込んで、カバー体50を肩カバー40に確実に装着させる。続いて、先ほど取り外した外装カバー8を外装容器7に装着する。このときも同様に、外装カバー8の凹部65aを外装容器7の凸部7aに確実に嵌め込んで、外装カバー8を外装容器7に確実に装着させる。これにより、図2に示す状態となる。
【0063】
ところで、カバー体50を装着した際、揮散体6が容器軸Oに沿って下降するので、開放された吸上げ芯4の上部に接触する。この際、上述したように、吸上げ芯4の上部が被係合筒33よりも上方に突出しているので、揮散体6と被係合筒33との間には若干の隙間が確保された状態となる。よって、挿通路23を利用して確実な空気置換を行える。
【0064】
そして、揮散体6が吸上げ芯4の上部に接触することで、吸上げ芯4によって容器2外まで吸い上げられた揮発性液体Wは、揮散体6に含浸されて該揮散体6の全体に拡がる。また、これと同時に揮散体6の表面で大気に触れるので、揮発性液体Wが揮散される(即ち、大気中に触れて揮発し、揮発した成分が大気中に散布される)。この揮発成分は、揮散孔53を通じてカバー体50の外側に揮散された後、さらに揮散孔67を通じて外装カバー8の外側に揮散される。
その結果、揮発性液体揮散装置1の周囲に揮散させることができる。
【0065】
このように、操作片35aを介して引上キャップ31を引き上げるだけで、揮発性液体Wを揮散させることができる。特に、従来のように口部13からネジキャップ等を取り外すような手間がかかるものとは異なり、引上キャップ31を引き上げるだけの簡便な操作で、手間をかけずに揮発性液体Wを揮散可能な状態に速やかにセッティングすることができる。従って、非常に使い易く、利便性に優れている。
【0066】
また、本実施形態の揮発性液体揮散装置1によれば、以下の作用効果を奏することができる。
まず、引上キャップ31は、ヒンジ部39を介して蓋本体30に連結されているので、引き上げ後であっても、両者が分離することがない。そのため、引上キャップ31を廃棄するような手間を省くことができる。
しかも、嵌合孔46を利用して引き上げ後の引上キャップ31を保持できるので、引上キャップ31のばたつき等をなくすことができるうえ、引上キャップ31が元の状態に弾性戻りする等して揮散体6に干渉してしまうような可能性をなくすことができる。
【0067】
また、揮散体6を保持するホルダ60がカバー体50に設けられているので、使用前の段階で揮散体6を蓋体5の上方に安定して保持することができる。また、使用時には、カバー体50を肩カバー40から取り外すことで、揮散体6を蓋体5の上方から一旦離間させることができるので、引上キャップ31の引き上げ操作を容易に行い易い。そして、その後、再度カバー体50を肩カバー40に装着することで、揮散体6を吸上げ芯4の上部に接触するように容易にセットすることができる。
このように、カバー体50に設けられたホルダ60に揮散体6が保持されているので、速やかに揮発性液体Wを揮散可能な状態にセッティングすることができる。
【0068】
また、使用時の段階では、外装容器7と外装カバー8とによって、容器2自体が完全に内部に隠されているので、容器2を安価で簡易的に設計したとしても、外装容器7や外装カバー8のデザインで高品質な製品を実現することができる。つまり、外装容器7や外装カバー8によって高級感や高品質感を十分に出すことができるので、容器2自体にコストを費やすことなく単純に設計することができる。従って、効率良く容器2を量産できるうえ、低コスト化に繋げることができる。
【0069】
なお、本実施形態では、使用を開始した後、再度使用前の状態に戻して、使用を一旦停止することが可能である。この場合には、外装カバー8及びカバー体50をそれぞれ取り外した後、引上キャップ31の膨出部35cを嵌合孔46から離脱させる。そして、ヒンジ部39を中心に引上キャップ31を逆方向に回動させながら、係合筒36を蓋本体30の被係合筒33に再度係合させる。この際、係合筒36の係合爪36aを被係合筒33の環状突起33aに確実に係合させる。その後、カバー体50を肩カバー40に装着すると共に、外装カバー8を外装容器7に装着させる。
【0070】
このようにすることで、使用前の段階と同じように、吸上げ芯4の上部を蓋体5で覆うことができると共に、蓋体5を挟んで吸上げ芯4と揮散体6とを離間させることができるので、揮発性液体Wが揮発して蓋体5の外側に揮散されてしまうことを防止することができる。従って、揮発性液体Wを無駄に揮散させてしまうことなく、使用を一旦停止することが可能である。
【0071】
なお、上述した第1実施形態において、ヒンジ部39を介して引上キャップ31を蓋本体30に連結した構成としたが、図6に示すように、アーム板38を、破断可能な薄肉部70を介して蓋本体30の装着筒32とフランジ部34との接続部分に連結させても構わない。
このように構成した場合には、操作片35aを介して引上キャップ31を上方に引き上げ、蓋本体30から離反させた後、薄肉部70を破断させて引上キャップ31を蓋本体30から分離させることができる。従って、この場合には、肩カバー40に引上キャップ31を保持する嵌合孔46が不要になるので、肩カバー40の構成の簡略化を図ることができる。
【0072】
なお、この場合であっても、引上キャップ31が分離する点が異なるだけで、その他の作用効果は第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。なお、薄肉部70に代えて、ミシン目のような弱化部を介して引上キャップ31を蓋本体30に連結しても構わない。
【0073】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る揮発性液体揮散装置の第2実施形態について、図7から図9を参照して説明する。なお、第2実施形態において第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0074】
第2施形態と第1実施形態との異なる点は、カバー体50を備えていない点、揮散体6が肩カバー81側に保持されている点である。以下に、本実施形態の揮発性液体揮散装置80について、詳細に説明する。
なお、図7は、使用前における揮発性液体揮散装置80の縦断面図である。但し、外装容器7及び外装カバー8の図示を省略している。図8は、使用時における揮発性液体揮散装置80の縦断面図である。図9は、図7に示す肩カバー81を上方から見た図である。
【0075】
本実施形態の揮発性液体揮散装置80を構成する肩カバー81は、図7から図9に示すように、第1実施形態のようにカバー体50を装着するための周壁筒44や補強壁45が形成されておらず、内壁部41と、外壁部42と、天板部43と、で構成されている。
そして、天板部43の上面には、揮散体6を保持するホルダ82が上方に向けて延設されている。本実施形態のホルダ82は、揮散体6の四隅をそれぞれ径方向の外側から抑えるように、天板部43の短手方向L1及び長手方向L2にそれぞれ間隔を開けた状態で4つ設けられている。これらホルダ82は、横断面視L字形状に形成されているうえ、上端部に天板82aを有している。これにより、揮散体6は、上方に抜けないように設計されている。
なお、本実施形態においても、揮散体6はホルダ82によって強固に保持されているわけではなく、容器軸O方向に移動可能な状態で保持されている。
【0076】
このように構成された揮発性液体揮散装置80を使用する場合には、外装カバー8を外装容器7から取り外すと、揮散体6及びホルダ82が露出する。そして、4つのホルダ82によって保持されている揮散体6を取り外す。その後、第1実施形態と同様に、操作片35aを介して引上キャップ31を上方に引き上げて蓋本体30から離反させて、吸上げ芯4の上部を開放させる。また、引上キャップ31の膨出部35cを嵌合孔46に嵌め込んで、該引上キャップ31を肩カバー81に保持させる。続いて、揮散体6を4つのホルダ82の内側に戻し、該ホルダ82によって揮散体6を保持させる。そして、最後に外装カバー8を外装容器7に装着する。これにより、図8に示す状態となる。
【0077】
本実施形態の場合も、揮散体6をホルダ82に戻した時点で、該揮散体6は容器軸Oに沿って下降するので、開放された吸上げ芯4の上部に接触する。これにより、吸上げ芯4によって吸い上げた揮発性液体Wを、揮散体6を利用して揮散させることができる。
従って、本実施形態の場合であっても、揮散体6の保持方法が異なるだけで、第1実施形態と同様に、手間をかけずに揮発性液体Wを揮散可能な状態に速やかにセッティングすることができる。
【0078】
特に、4つのホルダ82が天板部43上に設けられているので、使用前の段階で揮散体6を蓋体5の上方に安定して保持できると共に、使用時には揮散体6を吸上げ芯4の上部に安定的に接触させた状態で保持することができる。
【0079】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る揮発性液体揮散装置の第3実施形態について、図10から図12を参照して説明する。なお、第3実施形態において第2実施形態と同一の構成については、同一の符号を付しその説明を省略する。
【0080】
第3施形態と第2実施形態との異なる点は、蓋体5の構成が異なる点、ホルダ82が容器軸Oに沿って下方移動可能に構成されている点である。以下に、本実施形態の揮発性液体揮散装置90について、詳細に説明する。
なお、図10は、使用前における揮発性液体揮散装置90の縦断面図である。但し、外装容器7及び外装カバー8の図示を省略している。図11は、図10に示す肩カバー100を上方から見た図である。図12は、使用時における揮発性液体揮散装置90の縦断面図である。
【0081】
本実施形態の揮発性液体揮散装置90を構成する蓋体91は、口部13に装着された蓋本体92と、操作片99が形成され、該操作片99の引き上げによって蓋本体92から離反すると共に吸上げ芯4の上部を開放させるプルリング(引上部)93と、で構成されている。
【0082】
蓋本体92は、図10及び図11に示すように、口部13の雄ねじ部13bに螺合される雌ねじ部94aが内周面に形成され、口部13の外周面側に螺着される装着筒94と、装着筒94の上端部に連設された環状の頂壁部95と、を有している。
頂壁部95の上面には、径方向に延在する凸状のリブ96が周方向に間隔を開けて複数形成されている。本実施形態では、容器軸Oを中心に45度毎にリブ96が形成されている。但し、この角度に限定されるものではない。
【0083】
プルリング93は、平面視円形状に形成され、破断可能な弱化部97を介して頂壁部95に連結されたプレート98と、このプレート98の上面に連結され、指先を引っ掛け可能なリング状の操作片99と、を有している。
そして、操作片99に指先を引っ掛けながら上方に引き上げることで、弱化部97を破断させながらプレート98を操作片99と共に引き上げることができ、結果的にプルリング93を蓋本体92から離反させることが可能とされている。つまり、プレート98と操作片99とから構成されるプルリング93は、弱化部97を介して蓋本体92に連結されており、引き上げ操作によって蓋本体92から切り離し可能とされている。
【0084】
なお、プレート98の下面には、引き上げ操作される前の段階で、挿入筒3の内筒21の内周面に嵌合する環状の嵌合突起98aが下方に向けて延設されている。また、プレート98の中心は、上方に膨らんだ膨出部98bとされており、吸上げ芯4の上部との間に隙間が開くようになっている。
【0085】
本実施形態の肩カバー100は、長手方向L2における天板部43の両端にそれぞれ2つの開口が形成されている。そして、この開口内に収まるように、平面視C形状に形成された可動壁101が容器軸Oを挟んで対向するように配設されている。これら可動壁101は、容器軸O方向に反転可能な反転壁102を介して外壁部42に連結されている。この反転壁102は、外壁部42との接続部分を基点として、容器軸O方向に反転するようになっており、反転によって可動壁101を容器2の肩部12に向けて下方移動させることが可能とされている。
つまり、これら可動壁101及び反転壁102は、下方移動可能な可動部103として機能する。なお、プルリング93の引き上げ操作前の段階では、可動壁101は天板部43に対して面一となるように調整されている。
【0086】
そして、このように構成された可動壁101上にそれぞれホルダ82が2つずつ設けられている。よって、可動壁101の下方移動に伴って、ホルダ82も容器軸O方向に下方移動するようになっている。これにより、天板部43から上方に向けて延設されているホルダ82の突出長さを短くすることが可能とされている。
【0087】
このように構成された揮発性液体揮散装置90を使用する場合には、まず、4つのホルダ82によって保持されている揮散体6を取り外す。そして、操作片99に指先を引っ掛けながら上方に引き上げ、弱化部97を破断させながらプレート98を操作片99と共に引き上げる。これにより、プルリング93を蓋本体92から切り離して離反させることができ、吸上げ芯4の上方を開放させることができる。
続いて、揮散体6を4つのホルダ82の内側に戻し、これらホルダ82によって揮散体6を保持させる。そして、最後に外装カバー8を外装容器7に装着する。これにより、図12に示す状態となる。
【0088】
本実施形態の場合も、揮散体6をホルダ82に戻した時点で、該揮散体6は容器軸Oに沿って下降するので、開放された吸上げ芯4の上部に接触させることができる。しかも、外装カバー8を装着する際に、ホルダ82は外装カバー8の頂壁部66によって押し下げられる。これにより、反転壁102が下方に向けて反転し、可動壁101が容器軸O方向に沿って下方移動する。そのため、ホルダ82を容器軸O方向に沿って下方移動させることができ、天板部43から上方に向けて延設されている突出長さを短くすることができる。つまり、プルリング93の高さ分だけ突出長さを短くすることができる。
従って、高さのあるプルリング93を採用したとしても、外装カバー8の高さを第1実施形態及び第2実施形態とほぼ同じにすることができ、小型でコンパクト化した製品とすることができる。
【0089】
このように、本実施形態の場合であっても、第2実施形態と同様に、手間をかけずに揮発性液体Wを揮散可能な状態に速やかにセッティングすることができると共に、吸上げ芯4によって吸い上げた揮発性液体Wを、揮散体6を利用して揮散させることができる。
特に、本実施形態の場合には、プルリング93の引き上げ操作を一度行うと、弱化部97が破断されるので、該弱化部97の状態を確認するだけで、使用前や流通段階で不意に或いは不正にプルリング93が引き上げ操作されたか否かを一目で判断することができる。このように、弱化部97による改ざん防止が図られているので、製品への信頼性を高めることができる。
【0090】
なお、外装カバー8を装着する際に、仮に揮散体6が吸上げ芯4を押し下げてしまい、揮散体6が蓋本体92の頂壁部95上に載ってしまった場合であっても、頂壁部95上に複数のリブ96が形成されているので、リブ96とリブ96との隙間を通じて空気の流通経路を確保することができる。従って、空気置換を確実に行うことができ、揮発性液体Wの揮散を確実に促すことができる。
【0091】
なお、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【0092】
例えば、上記各実施形態では、使用時に容器2を外装容器7内に収容した場合を例に挙げて説明したが、外装容器7を用いなくても構わない。同様に、外装カバー8に関しても、必須なものではなく用いなくても構わない。
また、胴部11が平面視長方形状に形成された容器2を例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではなく、平面視円形状や多角形状の容器としても構わない。
【0093】
また、カバー体50及び外装カバー8の周壁部51、65及び頂壁部52、66のそれぞれに揮散孔53、67を形成したが、周壁部51、65又は頂壁部52、66のいずれか一方に揮散孔53、67を形成しても構わない。この際、揮散孔53、67の形状は、円形に限定されるものではなく、楕円形状や多角形状であっても構わないし、スリット状でも構わない。
【符号の説明】
【0094】
W…揮発性液体
1、80、90…揮発性液体揮散装置
2…容器
3…挿入筒(保持体)
4…吸上げ芯
5、91…蓋体
6…揮散体
7…外装容器
8…外装カバー
12…容器の肩部
13…容器の口部
30、92…蓋体の蓋本体
31…引上キャップ(蓋体の引上部)
35a、99…操作片
39…ヒンジ部
41、81、100…肩カバー
46…嵌合孔(保持部)
50…カバー体
53…カバー体の揮散孔
60、82…ホルダ
67…外装カバーの揮散孔
93…プルリング(蓋体の引上部)
97…弱化部
103…可動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性液体を大気中に揮散させる揮発性液体揮散装置であって、
前記揮発性液体が充填された容器と、
該容器の口部内に配設された保持体と、
該保持体に保持され、前記揮発性液体を前記容器外まで吸い上げる吸上げ芯と、
前記吸上げ芯の上部を覆う蓋体と、
吸い上げられた前記揮発性液体を揮散させる揮散体と、を備え、
前記蓋体は、前記口部に装着される蓋本体と、操作片が形成され、該操作片の引き上げによって蓋本体から離反すると共に前記吸上げ芯の上部を開放させる引上部と、を有し、
前記揮散体は、前記操作片の引き上げ前、前記蓋体の上方に保持されていると共に、前記操作片の引き上げ後、開放された前記吸上げ芯の上部に接触するように保持されていることを特徴とする揮発性液体揮散装置。
【請求項2】
請求項1に記載の揮発性液体揮散装置において、
前記口部の周囲を径方向外側から囲繞すると共に、前記容器の肩部を覆うように該容器に装着された肩カバーと、
該肩カバーに上方に向けて延設され、前記揮散体を保持するホルダと、を備えていることを特徴とする揮発性液体揮散装置。
【請求項3】
請求項1に記載の揮発性液体揮散装置において、
前記口部の周囲を径方向外側から囲繞すると共に、前記容器の肩部を覆うように前記容器に装着された肩カバーと、
該肩カバーに着脱自在に固定され、前記揮散体の上方を覆う有頂筒状に形成されると共に揮散孔が形成されたカバー体と、
該カバー体の頂壁部の下面に下方に向けて延設され、前記揮散体を保持するホルダと、を備えていることを特徴とする揮発性液体揮散装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の揮発性液体揮散装置において、
前記引上部は、ヒンジ部を介して前記蓋本体に回動可能に連結されていることを特徴とする揮発性液体揮散装置。
【請求項5】
請求項4に記載の揮発性液体揮散装置において、
前記肩カバーには、前記操作片の引き上げ後、前記引上部を保持する保持部が設けられていることを特徴とする揮発性液体揮散装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の揮発性液体揮散装置において、
前記引上部は、破断可能な弱化部を介して前記蓋本体に連結されていることを特徴とする揮発性液体揮散装置。
【請求項7】
請求項2に記載の揮発性液体揮散装置において、
前記肩カバーには、下方移動可能な可動部が設けられ、該可動部に前記ホルダが設けられていることを特徴とする揮発性液体揮散装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の揮発性液体揮散装置において、
有底筒状に形成され、前記容器を取り出し可能に収容する外装容器を備えていることを特徴とする揮発性液体揮散装置。
【請求項9】
請求項8に記載の揮発性液体揮散装置において、
前記外装容器に着脱自在に固定され、外装容器の上部を覆う有頂筒状に形成されると共に、揮散孔が形成された外装カバーを備えていることを特徴とする揮発性液体揮散装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−10776(P2011−10776A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156342(P2009−156342)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】