説明

揺動式焼却炉

【課題】燃焼空気を供給する配管装置を単純化できて焼却物の燃焼効率を低下させることがない。
【解決手段】一端側に投入部1aが形成されるとともに、他端側に排出部1bが形成された筒状炉本体1に、円弧状底壁2と、この円弧状底壁2の中心と一致する揺動軸心Oの近傍に設置された天壁3とを設け、前記円弧状底壁2の揺動軸心Oを中心として炉本体1を揺動自在に支持する揺動支持装置21と、炉本体1を所定の角度範囲で往復回動させる揺動駆動装置とを設け、炉本体1の天壁3に複数の燃焼空気ノズル4を貫設し、前記天壁3の上部近傍に配設された固定側の空気供給管5と前記燃焼空気ノズル4とを自在継手8,9を介して接続する配管装置6とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、筒状の炉本体を揺動させて都市ごみや産業廃棄物を攪拌し燃焼させる揺動式(スイング式)焼却炉に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のロータリキルンは、たとえば特公平2−47649号公報に開示されており、回転式炉本体が横置きの円筒形に形成されており、この炉本体が一定速度で一定方向に連続回転されるため、炉本体内の廃棄物(焼却物)は限られた一定方向および一定速度で移動するため、廃棄物の攪拌運動が単純で攪拌効率が悪く、燃焼効率が低いという問題があった。このため、従来のロータリキルンでは、炉本体に複数の燃焼空気ノズルを周方向にわたって配設して燃焼用空気(あるいは燃焼排ガス)を炉内に噴射させ、廃棄物の攪拌を促進させて燃焼効率を向上させている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、回転する炉本体に燃焼用空気を供給する場合、配管装置が極めて複雑になるという問題があった。
【0004】本発明は、炉本体を単純な回転運動を行う構造に代えて、往復回動すなわち揺動(スイング)式を採用することで廃棄物の攪拌能力を低下させることなく、燃焼空気供給用の配管装置を簡略化すことができ、焼却物の燃焼効率を低下させることがない揺動式焼却炉を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために請求項1記載の発明は、一端側に投入部が形成されるとともに、他端側に排出部が形成された横置き筒状の炉本体に、円弧状底壁とこの底壁の軸心近傍に形成された天壁とを設け、前記円弧状底壁の軸心に一致する揺動軸心を中心として炉本体を揺動自在に支持する揺動支持装置と、炉本体を所定の角度範囲で往復回動させる揺動駆動装置とを設け、炉本体の前記天壁に複数の燃焼空気ノズルを貫設し、前記天壁の上部近傍に配設された固定側の空気供給管と、前記燃焼空気ノズルに自在継手を介して接続する配管装置とを設けたものである。
【0006】上記構成によれば、炉本体に配設される燃焼空気ノズルは、揺動による変位の少ない揺動軸心近傍の天壁に設置されており、この燃焼空気ノズルと炉本体の上部で固定側に配設された空気供給管とを自在継手を有する配管装置で接続することにより、燃焼空気を炉本体内に供給することができ、配管装置を極めて簡単な構造とすることができる。しかも炉本体は廃棄物を往復移動させる揺動式を採用したので、廃棄物の攪拌能力を高めて効率良く燃焼させることができる。
【0007】また請求項2記載の発明は、上記構成における揺動駆動装置は、炉本体を正立姿勢を中心に所定の揺動角度の範囲で往復回動させるとともに、正立姿勢位置で回動速度が最大になるように設定されたものである。
【0008】上記構成によれば、底壁中心が最下位置となる正立姿勢で回転速度が最大となるように揺動速度を制御することで、廃棄物の往復移動速度の変化を大きくして攪拌をより促進させることができる。
【0009】さらに請求項3記載の発明は、上記構成における揺動駆動装置は、底壁の外周部に周方向に取付けられた円弧状ラックと、この円弧状ラックに噛み合う駆動ピニオンと、この駆動ピニオンを往復回転駆動する回転駆動装置とで構成され、底壁と円弧状ラックの間に、底壁の熱変形を吸収する変形吸収部材を介装したものである。
【0010】上記構成によれば、変形吸収部材により、炉本体の底壁が熱変形しても、駆動ピニオンを正確に円弧状ラックに噛み合わしてスムーズに揺動させることができる。
【0011】さらにまた、請求項4記載の発明は、請求項1または2記載の構成において、揺動駆動装置は、設置基盤と炉本体との間に連結されて伸縮駆動させることにより炉本体を所定の揺動角度の範囲で揺動軸心を中心に揺動させる伸縮駆動装置により構成されたものである。
【0012】上記構成によれば、伸縮駆動装置の伸縮駆動により極めて簡単な構成で炉本体を揺動させることができ、消費エネルギーも少なく、メンテナンスも容易で、炉本体の熱変形に影響されることもない。
【0013】
【発明の実施の形態】ここで、本発明に係る揺動式焼却炉の実施の形態を図1〜図6に基づいて説明する。
【0014】この揺動式焼却炉は、図1,図2に示すように、炉本体1の一端側に焼却物の投入部1aが形成されるとともに、他端側に焼却残滓の排出部1bが形成されている。そして投入部1aおよび排出部1b端縁を除く炉本体1が、円弧状底壁2と、この円弧状底壁2の軸心と一致する揺動軸心Oの上部近傍に接近する円弧凸形断面(平面や多角形であってもよい)の天壁3とで略半円形断面の筒状に形成され、天壁3には複数の円弧状補強リブ3aが突設されている。そして、この炉本体1は水平あるいは排出部1bが下位となる排出角α(100:3〜5の勾配)を持って、円弧状底壁2の揺動軸心Oを中心として回動自在に配置され、揺動軸心Oを中心に所定の揺動角:θで往復回動させることにより、炉本体1内に投入された焼却物を円弧状底壁2の内面で往復移動させて効果的に攪拌して燃焼させることができる。
【0015】また、天壁3の幅方向中央部には、燃焼空気を炉本体1内に吹込む複数の燃焼空気ノズル4が揺動軸心Oに接近して貫設されており、炉本体1の上方で固定側に設置された空気供給管5が配管装置6を介して燃焼空気ノズル4に接続されている。この配管装置6は、天壁3の上方近傍に配設された固定空気ヘッダー7と可動範囲の比較的小さい自在継手8,9とを具備し、揺動軸心Oに近くかつ炉本体1の揺動に対して変動および変位も小さい燃焼空気ノズル4に、簡単な構造で炉本体1の揺動に対してスムーズに追従して燃焼空気を供給するように構成されている。
【0016】すなわち、炉本体1の投入部1aは、図3に示すように円筒状に形成され、その前部に入口部フード11が設置されている。この入口部フード11には、廃棄物の投入シュート13が形成されるとともに、起動時および昇温時に点火される補助バーナー14が設置されており、また入口部フード11と投入部1aの間は、入口シール装置12によりシールされて外部と遮断されている。また炉本体1の排出部1bは、円形状に形成されるとともに排出部フード15が設置され、出口シール装置16によりシールされるとともに、排出部1bから排出される排ガスを二次燃焼させ、さらに焼却残滓を排出するように構成される。
【0017】炉本体1の前後両側には、揺動軸心Oを中心として揺動角θの範囲で炉本体1を揺動自在に支持する揺動支持装置21が配設されるとともに、炉本体1の中央部に、揺動角θの範囲で炉本体1を揺動させる揺動駆動装置31が設けられている。また、揺動駆動装置31の後部に配管装置6が配設されている。
【0018】前記回動支持装置21は、図2,図4に示すように、炉本体1の底壁2外面に周方向に沿って揺動軸心を中心とするチャンネル形断面の円弧形レール22が取付けられており、設置基盤20上に設置された主架台23に、円弧形レール22に嵌合する複数のガイドローラ24が配設され、さらにガイドローラ24の左右両側に配置された副架台25に、ガイドレール23に嵌合されて案内する摺接ガイド部材26が設けられている。なお、円弧形レール22の上端部間には、天壁3上を通って互いに連結するレール補強材27が連結されている。
【0019】揺動駆動装置31は、図5,図6に示すように、ラック・ピニオン機構により構成されており、炉本体1には、底壁2の外面に炉本体1の熱変形を吸収するために変形吸収部材である板ばね装置32を介して円弧状ラック33が周方向に沿って取付けられ、さらに円弧状ラック33の上端部間にラック補強材34が連結されている。一方駆動機基台35上には、回転駆動装置である正逆回転可能な揺動用モータ36が設置され、この揺動用モータ36の出力軸に減速機を介して回転駆動される駆動ピニオン37が円弧状ラック33に噛合されている。そして、図示しない揺動制御装置により、炉本体1の底壁2中心が最下位置となる正立姿勢で揺動速度が最大となるように設定される。これにより、炉本体1内における廃棄物の攪拌をより促進することができる。
【0020】前記板ばね装置32は、一端部が連結板32aにより所定角度で連結固定されたV字形板ばね32b,32cがそれぞれ底壁2とラック支持部材32dとにそれぞれ対称方向に交互に連結固定されており、底壁2が熱変形しても、これら板ばね32b,32cの変形により変位を吸収して、円弧状ラック33を正常な形状に保持することができ、駆動ピニオン37と円弧状ラック33とを正常に噛み合わせてスムーズに揺動させることができる。
【0021】配管装置6は、図1,図2に示すように、炉本体1の天壁3の上方に、揺動軸心Oと平行に固定空気ヘッダー7が配設され空気供給管5が接続されている。この固定空気ヘッダー7には、所定位置に回転継手9を介して枝管41が接続され、この枝管41がそれぞれ燃焼空気ノズル4に接続されるとともに、中間部に蛇腹状のベローズ継手8がそれぞれ介装され、図2に仮想線で示すように、回転継手9とベローズ継手8とにより炉本体1の揺動に追従することができる。ここで回転継手9とベローズ継手8とを組み合わせたが、炉本体1の揺動による任意な長さや変位に追従可能であれば、他の伸縮継手や自在継手などの組み合わせであってもよい。なお、図示しないが、枝管41または固定空気ヘッダー7に、空気供給管5から各燃焼空気ノズル4への燃焼空気量を調整する空気ダンパーや絞り弁などの空気調整手段が介装されている。
【0022】上記構成において、廃棄物は投入シュート13から揺動する炉本体1の投入部1aに供給され、揺動駆動装置31により炉本体1が揺動されて廃棄物が攪拌されるとともに予熱乾燥されて排出部1b側に送られる。さらに攪拌されつつ移動されるとともに燃焼空気ノズル4から燃焼空気が吹込まれて燃焼される。さらに、焼却残滓や灰が排出部1bから排出部フード15の灰出し口に排出され、燃焼排ガスが排出部フード15に排出されて二次燃焼後、熱回収されて排出される。この時、炉本体1は揺動角度θの中心位置となる正立姿勢で最高速度となるように揺動軸心Oを中心に揺動されることから、廃棄物の周方向に移動する速度変化が大きく、極めて効率良く攪拌されて燃焼される。
【0023】上記実施の形態によれば、炉本体1を揺動軸心O周りに揺動させるとともに、炉本体1の天壁3に配設された燃焼空気ノズル4と固定側の空気供給管5とを、固定空気ヘッダー7および自在継手8,9を有する極めて簡単な配管装置6により接続して、揺動する炉本体に対して燃焼空気を供給することができる。したがって、揺動式の炉本体により廃棄物の攪拌を効率良く行え、しかも配管装置に係る設備コストを低減することができるとともに、メンテナンスや部品交換作業も容易に行うことができる。
【0024】また揺動制御装置により揺動駆動装置31を底壁2の中心が最下位置となる正立姿勢で揺動回転速度が最大となるように炉本体1の揺動を制御するので、炉本体1内で往復揺動する廃棄物の速度変化を大きくして攪拌をより促進させることができる。
【0025】さらに、それぞれ底壁2とラック支持部材32dとの間に、連結材32aによりV字形に連結されたV字形板ばね32b,32cを複数個周方向に配置した板ばね装置32を介して連結固定したので、底壁2が熱変形しても、これら板ばね32b,32cの変形によりその変位を吸収することができ、円弧状ラック33を正常な円弧形状に保持することができて、駆動ピニオン37と円弧状ラック33とを正常に噛み合わせスムーズに揺動させることができる。
【0026】図7および図8は、炉本体1の揺動駆動装置51の変形例を示す。この実施の形態では、ラック・ピニオン機構に代えて一対の伸縮駆動装置を使用したものである。
【0027】すなわち、揺動駆動装置51は、本体52aが設置基盤20のブラケット53に揺動軸心Oに平行な第1支持ピン54を介して揺動自在に固定されるとともに、出力ロッド52bが円弧状底壁2の支持部材55に揺動軸心Oに平行な第2支持ピン56を介して揺動自在に連結された伸縮駆動装置である一対の揺動シリンダ装置52により構成されたものである。
【0028】上記構成によれば、一対の揺動シリンダ装置52を相対して伸縮駆動することにより、極めて簡単な構成で炉本体1を揺動軸心Oを中心に揺動角度θの範囲で揺動させることができる。したがって、炉本体1の揺動に要する消費エネルギーも少なく、メンテナンスも容易で、炉本体1の熱変形に影響されることもない。
【0029】
【発明の効果】以上に述べたごとく本発明の請求項1記載の発明によれば、炉本体に配設される燃焼空気ノズルは、揺動による変位の少ない揺動軸心近傍の天壁に設置されており、この燃焼空気ノズルと炉本体の上部で固定側に配設された空気供給管とを自在継手を有する配管装置で接続することにより、燃焼空気を炉本体内に供給することができ、配管装置を極めて簡単な構造とすることができる。しかも炉本体は廃棄物を往復移動させる揺動式を採用したので、廃棄物の攪拌能力を高めて効率良く燃焼させることができる。
【0030】また請求項2記載の発明によれば、底壁中心が最下位置となる正立姿勢で回転速度が最大となるように揺動速度を制御することで、廃棄物の往復移動速度の変化を大きくして攪拌をより促進させることができる。
【0031】さらに請求項3記載の発明によれば、変形吸収部材により、炉本体の底壁が熱変形しても、駆動ピニオンを正確に円弧状ラックに噛み合わしてスムーズに揺動させることができる。
【0032】さらにまた、請求項4記載の発明によれば、伸縮駆動装置の伸縮駆動により極めて簡単な構成で炉本体を揺動させることができ、消費エネルギーも少なく、メンテナンスも容易で、炉本体の熱変形に影響されることもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る揺動式焼却炉の実施の形態を示す概略縦断面図である。
【図2】図1に示すD−D断面図である。
【図3】図1に示すA−A断面図である。
【図4】図1に示すB−B断面図である。
【図5】図1に示すC−C断面図である。
【図6】図5の要部拡大図である。
【図7】同揺動式焼却炉の揺動駆動装置の変形例を示す横断面図である。
【図8】同揺動駆動装置の部分側面図である。
【符号の説明】
1 炉本体
1a 投入部
1b 排出部
2 底壁
3 天壁
4 燃焼空気ノズル
5 空気供給管
6 配管装置
7 固定空気ヘッダー
8 ベローズ継手
9 回転継手
21 揺動支持装置
31 揺動駆動装置
32 板ばね装置
33 円弧状ラック
36 揺動用モータ
37 駆動用ピニオン
41 枝管
51 揺動駆動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】一端側に投入部が形成されるとともに、他端側に排出部が形成された横置き筒状の炉本体に、円弧状底壁とこの底壁の軸心近傍に形成された天壁とを設け、前記円弧状底壁の軸心に一致する揺動軸心を中心として炉本体を揺動自在に支持する揺動支持装置と、炉本体を所定の角度範囲で往復回動させる揺動駆動装置とを設け、炉本体の前記天壁に複数の燃焼空気ノズルを貫設し、前記天壁の上部近傍に配設された固定側の空気供給管と、前記燃焼空気ノズルに自在継手を介して接続する配管装置とを設けたことを特徴とする揺動式焼却炉。
【請求項2】揺動駆動装置は、炉本体を正立姿勢を中心に所定の揺動角度の範囲で往復回動させるとともに、正立姿勢位置で回動速度が最大になるように設定されたことを特徴とする請求項1記載の揺動式焼却炉。
【請求項3】揺動駆動装置は、底壁の外周部に周方向に取付けられた円弧状ラックと、この円弧状ラックに噛み合う駆動ピニオンと、この駆動ピニオンを往復回転駆動する回転駆動装置とで構成され、底壁と円弧状ラックの間に、底壁の熱変形を吸収する変形吸収部材を介装したことを特徴とする請求項1または2記載の揺動式焼却炉。
【請求項4】揺動駆動装置は、設置基盤と炉本体との間に連結されて伸縮駆動させることにより炉本体を所定の揺動角度範囲で揺動軸心を中心に揺動させる伸縮駆動装置により構成されたことを特徴とする請求項1または2記載の揺動式焼却炉。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2000−154910(P2000−154910A)
【公開日】平成12年6月6日(2000.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−328701
【出願日】平成10年11月19日(1998.11.19)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】