説明

揺動選別機の穀粒分配装置

【課題】枝梗付き籾の混じりを少なくして、穀稈切れ、小石、金属片及びその他の異物を回収するとともに、粗選機能を備えていない揺動選別機にあっても、簡単な構成で容易に粗選別作用を付加する。
【解決手段】複数の揺動選別板を多段に積み重ねた揺動選別部の供給側上部に、混合米タンクに貯留された混合米を受け入れるとともに、各揺動選別板に均等供給するための分配ボックス(10)を取り付け、該分配ボックス(10)には、分配供給樋を連設して前記各揺動選別板に混合米を分配供給可能に構成した揺動選別機の穀粒分配供給装置であって、前記分配ボックス(10)の受入口(10a)の口縁(10b)に、粗選別網(11)を着脱自在に内挿した粗選ボックス(12)を取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揺動選別機の穀粒分配装置に関する。
【背景技術】
【0002】
脱ぷ後の籾・玄米の混合米を選別する揺動選別機の穀粒供給装置において、混合米中に混在する枝梗付き籾や、穀稈切れが分配樋の上端部分に引っ掛かって受入口を塞ごうとするのを防止するため、従来、移送拡散盤(101)を内設する樋(102)と数段に積み重ねた揺動選別盤との間に仕切板(104)により内部を区画する分配ボックス(105)を設け、それらを一体的に構成するとともに揺動運動を与えて移送拡散盤(101)を通過したものを分配ボックス(105)を介して各揺動選別盤に配分供給し、仕切板(104)の上端部分を山形状に形成してストローラック(104a)に形成したものがある(図11、及び特許文献1参照)。
【0003】
このものは、仕切版(104)の上端部分がストローラック(104a)に形成されているために、枝梗付き籾や、穀稈切れが、押送終端側へと押送されるので、受入口(106)が塞がれることがなく、混合米が受入口(106)から仕切板(104)によって仕切られて分配ボックス(105)に落入し、各揺動選別盤に円滑かつ等量のものが供給されていくといった作用・効果がある。
【0004】
しかしながら、上記穀粒供給装置にあっては、移送拡散盤(101)の移送始端部と樋(102)の前壁(121)の間に篩線(122)を張設し、移送拡散盤(101)の大部分が断面山形の板状に形成されているから、混合米タンクから混合米が樋(102)内に供給されると、断面山形状の移送拡散盤(101)において受け止められる枝梗付き籾の量が多くなってしまい、したがって、枝梗付き籾が小石、金属片及びその他の異物に混じって移送終端部に搬送され、これら異物とともに機外に排出されてしまう問題があった。
【0005】
一方、揺動選別機の穀粒供給装置においては、上述の枝梗付き籾や、穀稈切れを除去する機能を備えていないものも多数出回っているため、簡単な構成で容易に取り付け可能な粗選別用のオプション部品の供給が望まれている。
【特許文献1】特開2002−086071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題点にかんがみ、枝梗付き籾の混じりを少なくして、穀稈切れ、小石、金属片及びその他の異物を回収するとともに、粗選機能を備えていない揺動選別機にあっても、簡単な構成で容易に粗選別作用を付加することができる揺動選別機の穀粒分配供給装置を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため請求項1記載の発明は、複数の揺動選別板(9…)を多段に積み重ねた揺動選別部(4)の供給側上部に、混合米タンク(7)に貯留された混合米を受け入れるとともに、前記各揺動選別板(9…)に均等供給するための分配ボックス(10)を取り付け、該分配ボックス(10)には、分配供給樋(13)を連設して前記各揺動選別板(9…)に混合米を分配供給可能に構成した揺動選別機の穀粒分配供給装置であって、前記分配ボックス(10)の受入口(10a)の口縁(10b)に、粗選別網(11)を着脱自在に内挿した粗選ボックス(12)を取り付け、前記粗選別網(11)は、高さの異なる一対の枠材(15a,15b)と、側面視が逆へ字状の他対の側部枠材(15c,15d)とにより、概略矩形四辺形状に形成されたものであり、該枠材(15a,15b,15c,15d)の内側には前記側部枠材(15c,15d)間に補強枠(22)を架設して、該補強枠(22)を境界とし、傾斜面部に粗選格子部(17)を、水平面部に異物溜め部(19)をそれぞれ形成し、該粗選格子部(17)は、横断面が山形状の多数の長尺状格子(16…)を多数並設して各長尺状格子(16…)間を穀粒落下口(23)とする一方、前記異物溜め部(19)は、前記補強枠(22)上に配設される多数の長尺状格子(16…)の端面部(16c…)と、前記枠材(15b)上に立設される多数の櫛歯(20…)と、前記側部枠材(15c,15d)の各水平部(15cf,15df)と、前記補強枠(22)と前記枠材(15b)との間に敷設した格子状の底板(18)と、によって凹状に囲繞形成する、という技術的手段を講じた。
【0008】
また、請求項2記載の発明は、前記粗選格子部(17)は、前記格子(16…)の格子間ピッチを10〜15mmに形成する一方、前記異物溜め部(19)は、前記櫛歯(20…)の櫛歯間ピッチ及び前記底板(18)の格子間ピッチを2〜5mmに形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の籾摺選別機の穀粒分配供給装置によれば、揺動選別部(4)の揺動に伴う粗選ボックス(12)の揺動により、まず、直径20mm程度の大異物が粗選格子部(17)で受け止められて異物溜め部(19)に収容され、短冊状の枝梗付き籾は粗選格子部(17)の穀粒落下口(23)から漏下する。一方、異物溜め部(19)は、籾粒よりも大きな異物は通過できないが、籾粒は通過することができる2〜5mmピッチの櫛歯(20…)及び格子状の底板(18)が形成されており、例えば、籾摺選別作業を一時中断したときに、異物溜め部(19)に混合米が流入しても、籾摺選別作業を再開すれば、すみやかに混合米を異物溜め部(19)から漏下させ、異物溜め部(19)では異物のみを溜めることが可能となる。
【0010】
そして、籾摺選別作業を一時中断したとき、又は籾摺選別作業を終了したときは、異物溜め部(19)に溜まった異物を手で拾うか、又は粗選ボックス(12)から粗選別網(11)を手で取り外して、異物溜め部(19)に溜まった異物のみを機外に取り出すことができる。
【0011】
さらに、粗選機能を備えていない揺動選別機にあっては、混合米を受け入れる分配ボックス(10)に、粗選ボックス(12)を取り付けるだけで、粗選機能を備えた揺動選別機に改造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の一実施形態について図面を参照して説明する。図1乃至図3において、本発明の穀粒分配供給装置を具備する籾摺選別機1は、横長の箱型機枠2内の一方上部(図1では右上部)に設けた籾摺部3と、箱型機枠2の他方上部(図1では左上部)に設けられ、複数の選別板から構成される揺動選別部4と、籾摺部3下方に配置され、籾摺部3からの摺落米を風選する風選経路及び排塵ファンからなる風選部5と、風選部5により風選された籾と玄米の混合米を揚穀する混合米揚穀機6と、揚穀された混合米を一時貯留させて前記揺動選別部4に供給する混合米タンク7と、揺動選別部4側部に設けられて選別された玄米を精品として機外に取り出す精品揚穀機8と、から全体が構成される。
【0013】
図3及び図4に示すように、前記揺動選別部4は複数枚の揺動選別板9を多段状に積み重ねて構成されるもので、全体が安全カバー2aで覆われている。揺動選別部4はその下方に揺動機構(図示せず)が設けられ、本実施の形態では、図3のa方向に往復動させて前記複数の揺動選別板9を一体で揺動させる構成となっている。符号10は揺動選別部4の供給側上部に設けた分配ボックスであり、該分配ボックス10は、混合米タンク7に貯留された混合米を受け入れ、各揺動選別板9に均等供給するように形成され、前記揺動選別部4と一体的に取り付けられている。
【0014】
そして、分配ボックス10の受入口10aの口縁10bには、粗選別網11を内挿した粗選ボックス12が取り付けられる。図4を参照すれば、該粗選ボックス12の取り付けの際は、分配ボックス10の口縁10bに粗選ボックス12の取り付け用のねじ孔10c…を穿設しておき、粗選ボックス12の側面に張り出した一対のフランジ12aとともにねじ止めすることで、粗選ボックス12を分配ボックス10に固設することができる。一方、粗選ボックス12は、前面壁12b,後面壁12c,左側面壁12d,右側面壁12e、及び受けフランジ12f…が形成されているので、粗選別網11を粗選ボックス12内に内挿することで、ねじ止め不要で挿脱可能に支持することができる。また、前記粗選別網11は粗選ボックス12から容易に取り外すことができるよう、軽量素材で形成することが好ましく、本実施形態では、プラスチック樹脂材により形成して重量を92グラムとすることができた。
【0015】
図5に示すように、分配ボックス10には、分配供給樋13を連設して各揺動選別板9…に混合米を分配供給可能に構成するとともに、該分配ボックス10中央部には、分配ボックス10内の混合米の層厚を均(なら)すための均平板14が回動軸14aによって回動可能に支持されている。
【0016】
次に、図6乃至図9を参照して粗選別網11の形状について説明する。図6は粗選別網11の平面図、図7は粗選別網11の斜視図、図8は別の方向から見た斜視図、図9は図6のA−A’線縦断面図、図10は図7のB−B’線縦断面図である。
【0017】
粗選別網11は、高さの異なる一対の枠材15a,15bと、側面視が略逆へ字状の他対の側部枠材15c,15dとにより、概略矩形四辺形状に形成されている。そして、枠材15a,15b,15c,15dの内側には、側部枠材15c,15d間に補強枠22が架設され、該補強枠22を境界として、傾斜面部に粗選格子部17を、水平面部に異物溜め部19をそれぞれ形成している。
【0018】
そして、粗選格子部17は、側部枠材15c,15d間で切断したときの横断面が山形状の多数の長尺状格子16…から形成され(図10参照)、この格子16…の山形の尖端16aが上方側に向けられ、かつ、格子16…の長尺方向は枠材15aから補強枠22に向けて下方に緩傾斜させて架設される。そして、この格子16…を側部枠材15c,15d間に多数並設して形成される。該各長尺状格子16…間を穀粒落下口(23…)とする。
【0019】
一方、異物溜め部19は、側部枠材15c,15dの水平部15cf,15dfと、補強枠22上に配設される多数の格子端面部16c…と、枠材15b上に横一線状に立設した多数の櫛歯20…と、補強枠22と枠材15bとの間に敷設した格子状の底板18と、によって凹状に囲繞形成される。符号16bは格子16…の斜面16b,16bである。
【0020】
また、補強枠22上に配設した多数の格子端面部16c…は、底辺の長さを8.5mmとなし、隣り合う格子端面部16c,16c間には、略台形状の選別孔21…を形成する。このときの、選別孔21間のピッチは8.0〜9.5mmとするのが好ましい。そして、底板18の格子間は、穀粒落下口24…を形成し、枠材15b上に立設した櫛歯20…間は、選別孔25…を形成する。
【0021】
そして、粗選格子部17は、格子16…の格子間ピッチを10〜15mmに形成する一方、異物溜め部19は、櫛歯20…の櫛歯間ピッチ及び底板18の格子間ピッチを2〜5mmに形成する。特に、格子16…の格子間ピッチは14.5mmが好適であり、櫛歯20…の櫛歯間ピッチ及び底板18の格子間ピッチは2mmが好適である。
【0022】
以上のように構成された籾摺選別機1において、籾摺部3により摺り出された摺米は、風選部5により籾殻等が風選されて籾と玄米の混合米となり、該混合米は混合米揚穀機6により揚穀された後、混合米タンク7に供給され、該混合米タンク7から揺動選別部4の供給側上部に設けた粗選ボックス12に供給される。粗選ボックス12においては、揺動選別部4の揺動に伴う粗選ボックス12の揺動により、まず、粗選別網11の粗選格子部17に形成される格子16によって、籾粒と比較して大きい、例えば、直径が約20mm以上の小石、金属片、木屑、藁屑及びその他の大異物が受け止められて、粗選格子部17から異物溜め部19に収容される。
【0023】
このとき、短冊状の枝梗付き籾にあっては、山形状の格子16…の斜面16b,16bを滑落するとともに、格子16…の格子間ピッチが10〜15mmと広いために、粗選格子部17から漏下し、下方の分配ボックス10に供給されることになる。一方、異物溜め部19は、籾粒よりも大きな異物は通過できないが、籾粒は通過することができる2〜5mmピッチの櫛歯20…及び格子状の底板18が形成されており、例えば、籾摺選別作業を一時中断したときに、混合米タンク7からの混合米の流下により、異物溜め部19に混合米が流入したとしても、籾摺選別作業を再開すれば、すみやかに混合米を異物溜め部19から漏下させ、異物溜め部19では異物のみを溜めることが可能となる。
【0024】
さらに、藁屑とともに枝梗付き籾が異物溜め部19に収容されて異物に混じる場合があるが、本実施形態においては、揺動選別部4の揺動に伴う粗選ボックス12の揺動作用と、異物溜め部19に形成された格子状の底板18及び櫛歯20…とによって、枝梗付き籾の籾粒のみが枝梗からはずれ、籾粒のみを異物溜め部19から漏下させる機能も備えている。
【0025】
次に、分配ボックス10に供給された籾と玄米の混合米は、該分配ボックス10の均平板14によって層厚が均され、分配供給樋13を経て各揺動選別板9…の供給口から各揺動選別板9…に供給され、玄米、混合米および籾に揺動選別される。
【0026】
そして、籾摺選別作業を一時中断したとき、又は籾摺選別作業を終了したときは、異物溜め部19に溜まった大異物を手で拾うか、粗選ボックス12から粗選別網11を手で取り外し、異物溜め部19に溜まった大異物を機外に取り出すことができる。このとき、異物溜め部19における枝梗付き籾の混じりはなく、異物のみを機外に取り出すことができた。
【0027】
ところで、本実施形態の揺動選別機の穀粒供給装置にあっては、粗選機能を備えていない揺動選別機にあっても、簡単な構成で容易に粗選別作用を付加することができる。すなわち、混合米タンク7から分配ボックス10に混合米を直接受け入れる形式の揺動選別機にあっては、分配ボックス10の口縁10bに粗選ボックス12の取り付け用のねじ孔10c…を穿設しておき、粗選ボックス12の側面に張り出した一対のフランジ12aとともにねじ止めすることで、粗選ボックス12を分配ボックス10に固設され、粗選機能を備えた揺動選別機に改造することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】籾摺選別機全体の外観正面図である。
【図2】同籾摺選別機の平面図である。
【図3】同籾摺選別機の背面側から見た一部破断斜視図である。
【図4】分配ボックス上に粗選ボックスを固定し、粗選ボックス内に粗選別網を内挿する際の斜視図である。
【図5】同上の概略縦断面図である。
【図6】粗選別網の平面図である。
【図7】同上の拡大斜視図である。
【図8】別の方向から見た粗選別網の斜視図である。
【図9】図6のA−A’線断面図である。
【図10】図7のB−B’線断面図である。
【図11】従来の穀粒供給装置の概略図である。
【符号の説明】
【0029】
1 籾摺選別機
2 箱型機枠
3 籾摺部
4 揺動選別部
5 風選部
6 混合米揚穀機
7 混合米タンク
8 精品揚穀機
9 揺動選別板
10 分配ボックス
11 粗選別網
12 粗選ボックス
13 分配供給樋
14 均平板
15 枠材
16 格子
17 粗選格子部
18 底板
19 異物溜め部
20 櫛歯
21 選別孔
22 補強枠
23 穀粒落下口
24 穀粒落下口
25 選別孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の揺動選別板(9…)を多段に積み重ねた揺動選別部(4)の供給側上部に、混合米タンク(7)に貯留された混合米を受け入れるとともに、前記各揺動選別板(9…)に均等供給するための分配ボックス(10)を取り付け、該分配ボックス(10)には、分配供給樋(13)を連設して前記各揺動選別板(9…)に混合米を分配供給可能に構成した揺動選別機の穀粒分配供給装置であって、
前記分配ボックス(10)の受入口(10a)の口縁(10b)に、粗選別網(11)を着脱自在に内挿した粗選ボックス(12)を取り付け、
前記粗選別網(11)は、高さの異なる一対の枠材(15a,15b)と、側面視が略逆へ字状の他対の側部枠材(15c,15d)とにより、概略矩形四辺形状に形成されたものであり、
該枠材(15a,15b,15c,15d)の内側には前記側部枠材(15c,15d)間に補強枠(22)を架設して、該補強枠(22)を境界とし、傾斜面部に粗選格子部(17)を、水平面部に異物溜め部(19)をそれぞれ形成し、
該粗選格子部(17)は、横断面が山形状の多数の長尺状格子(16…)を多数並設して各長尺状格子(16…)間を穀粒落下口(23)とする一方、
前記異物溜め部(19)は、前記補強枠(22)上に配設される多数の長尺状格子(16…)の端面部(16c…)と、前記枠材(15b)上に立設される多数の櫛歯(20…)と、前記側部枠材(15c,15d)の各水平部(15cf,15df)と、前記補強枠(22)と前記枠材(15b)との間に敷設した格子状の底板(18)と、によって凹状に囲繞形成したことを特徴とする揺動選別機の穀粒分配供給装置。
【請求項2】
前記粗選格子部(17)は、前記格子(16…)の格子間ピッチを10〜15mmに形成する一方、前記異物溜め部(19)は、前記櫛歯(20…)の櫛歯間ピッチ及び前記底板(18)の格子間ピッチを2〜5mmに形成してなる請求項1記載の揺動選別機の穀粒分配供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−119394(P2009−119394A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297643(P2007−297643)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【Fターム(参考)】