説明

搬送システム、搬送状態計測モジュール、搬送方法、保険金算出方法、及びプログラム

搬送すべき対象物を搬送する搬送システム10は、対象物を格納する格納容器と、格納容器または格納容器内に設けられ、搬送中における対象物の環境を計測する計測部と、計測部が計測した計測結果を記録する記録部と、記録部が記録した計測結果を読み出す読み出し部とを備える。

【発明の詳細な説明】
技術分野
本発明は、搬送システム、搬送状態計測モジュール、搬送方法、保険金算出方法、及びプログラムに関する。特に本発明は、搬送すべき対象物の搬送中の環境を計測し、出力する搬送システムに関する。
背景技術
従来、環境によって品質が劣化しやすい高級ワインは、例えば12本入りのケースに梱包され、このケースが例えば600〜850ケース程度収容できる低温輸送コンテナ(リーファコンテナ)に更に格納されて搬送されていた。そして、低温輸送コンテナは、輸送中のコンテナ内の温度を管理していた。
しかしながら、低温輸送コンテナでは、ワイン以外の貨物が混載される場合や、冷気の吹き出し口を貨物が圧迫する等して冷気の循環が悪い場合がある。この場合、当該ワインの温度がコンテナ庫内に設置されたセンサーにより測定された温度と乖離することがある。したがって、低温輸送コンテナは、コンテナ内部の温度を管理しても、個々のケースの温度を管理することができなかった。さらには、低温輸送コンテナで管理できる温度以外には、輸送中のワインの環境を確認することが困難であった。例えば、ボトルやラベルに外傷や汚れがない場合には、ワインの品質を劣化させる揺れが、搬送中にどの程度発生したかを確認することができなかった。仮に気象衛星による天候情報が提供されるようになり、航路で荒天遭遇した可能性が高いことが想像されたとしても、実際にどの程度ワインが揺れたかについての正確な情報をつかむことが出来なかった。
振動により劣化したワインは、理由を説明して割引で販売できれば、正直なワインショップであると思われるが、何も知らずに劣化したものを高価な金額で販売してしまった場合、店の信用を著しく落としてしまうことになる。また、振動によって劣化したワインは3ヶ月程度安置されることにより多少品質が改善する場合もあるが、劣化の有無が不明なままやみくもにすべてのワインを3ヶ月も安置することは、保管料負担の観点からも無駄であった。また、保険会社は、搬送中の環境に起因する搬送物の劣化を補償する保険を提供することができなかった。
そこで本発明は、このような問題を解決することを目的とする。
発明の開示
このような目的を達成するために、本発明の第1の形態によれば、搬送すべき対象物を搬送する搬送システムは、対象物を格納する格納容器と、格納容器または格納容器内に設けられ、搬送中における対象物の環境を計測する計測部と、計測部が計測した計測結果を記録する記録部と、記録部が記録した計測結果を読み出す読み出し部とを備える。
また、対象物と計測結果と計測結果に基づいて支払うべき対象物の保険金とを対応づけて格納する保険金データベースと、読み出し部が読み出した計測結果に基づいて、保険金データベースに格納された保険金支払額を参照することにより、保険金の支払額を算出する保険金算出部とを更に備えてもよい。
保険金算出部が算出した保険金の支払額の実績を保険の契約毎に格納する実績データベースと、実績データベースに格納された保険金の支払額の実績に基づいて、保険の更新時の保険料を算出する保険料算出部を更に備えてもよい。
対象物が搬送される経路上の気象条件に関するデータである気象データを記録する気象データ記録部を更に備え、保険金算出部は、気象データ記録部が記録した気象データに基づいて、読み出し部が読み出した計測結果と気象条件との関連性を出力してもよい。
計測部は、搬送中における対象物の位置を更に計測し、計測部が計測した計測結果を位置に対応付けて格納する実績データベースと、実績データベースを参照することにより位置に対応する計測結果を判断し、位置に応じて環境を制御すべき条件を出力する制御条件出力部とを更に備えてもよい。
格納容器に格納された対象物を搬送する搬送手段を更に備え、搬送手段は、記録部に搬送手段を識別する識別情報を送信し、記録部は、識別情報に計測結果を対応づけて記録してもよい。
記録部は、格納容器または格納容器内に設けられてもよい。また、複数の格納容器を格納する大容器を更に備え、格納容器毎に計測部が設けられ、記録部は、大容器又は大容器内に設けられ、計測部と記録部との間で通信する通信部を更に備えてもよい。
計測部は、対象物の複数箇所に設けられ、複数箇所に設けられた計測部と記録部との間で通信する通信部を更に備えてもよい。
計測結果が予め定められた条件を満たしたときに、その旨を報知する報知部を更に備えてもよい。計測結果が予め定められた条件を満たしたときに、報知部がその旨を報知することによって、例えば荷主、輸送人、及び保険会社の合意の下に、海上輸送の場合は避難港へのルート変更、陸上輸送の場合は詰め替え作業、搬送中止など、対象物のさらなる劣化を防ぐための対処方法をアドバイスしてもよい。
計測部は、環境として、温度を計測してもよいし、湿度を計測してもよいし、加速度を計測してもよいし、ダスト濃度を計測してもよいし、結露を計測してもよい。
本発明の第2の形態によれば、搬送すべき対象物の環境を計測する搬送状態計測モジュールは、搬送すべき対象物を格納する格納容器または格納容器内に設けられ、搬送中における対象物の環境を計測する計測部と、格納容器または格納容器内に設けられ、搬送中に計測された計測結果を記録する記録部と、記録部に記録された計測結果を出力する出力部とを備える。また、計測結果が予め定められた条件を満たしたときに、その旨を報知する報知部を更に備えてもよい。
本発明の第3の形態によれば、搬送すべき対象物を搬送する方法は、対象物を格納容器に格納するステップと、格納容器に格納された対象物を搬送するステップと、格納容器または格納容器内に設けられた計測部により、搬送中における対象物の環境を計測するステップと、計測結果を記録するステップと、
記録された計測結果を読み出すステップとを備える。
本発明の第4の形態によれば、対象物の搬送中における、対象物の損害に基づいた保険金の支払額を算出する保険金算出方法は、対象物を格納容器に格納するステップと、格納容器または格納容器内に設けられた計測部により、搬送中における対象物の環境を計測するステップと、計測結果を記録するステップと、記録された計測結果を読み出すステップと、対象物と計測結果と計測結果に基づく対象物の保険金の支払額とを対応づけて管理するステップと、読み出した計測結果に基づいて、保険金の支払額を算出するステップとを備える。
本発明の第5の形態によれば、搬送すべき対象物の搬送を管理するコンピュータ用のプログラムは、対象物を格納する格納容器または格納容器内に設けられた計測部により、搬送中における対象物の環境を計測する計測機能と、計測結果を記録する記録機能と、記録された計測結果を読み出す読み出し機能とをコンピュータに実現させる。
本発明の第6の形態によれば、対象物の搬送中における、対象物の損害に基づいた保険金の支払額を算出するコンピュータ用のプログラムは、対象物を格納する格納容器または格納容器内に設けられた計測部により、搬送中における対象物の環境を計測する計測機能と、計測結果を記録する記録機能と、記録された計測結果を読み出す読み出し機能と、対象物と計測結果と計測結果に基づく対象物の保険金の支払額とを対応づけて管理する管理機能と、読み出した計測結果に基づいて、保険金の支払額を算出する算出機能とをコンピュータに実現させる。
発明を実施するための最良の形態
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、又実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、本実施形態に係る搬送システム10の構成を示す。搬送システム10は、搬送すべき対象物の搬送中における環境を計測し、計測結果を読み出すことにより、対象物12の搬送中の環境を確認することができる。搬送中の搬送システム10は、搬送部40、及び演算部70を備える。搬送部40は、搬送すべき対象物12を格納する格納容器14と、格納容器14内に設けられ、搬送中における対象物12の環境を計測する計測部16と、計測部16が計測した計測結果を記録する記録部18とを有する。計測部16は、例えば、温度センサ、湿度センサ、加速度センサ、照度センサなどを組み込んだICチップであり、環境のパラメータとして、温度、湿度、加速度、塵埃濃度、結露条件、及び明るさ等を計測する。なお、本実施形態において、計測部16は、格納容器14内に設けられているが、他の例として格納容器14の外側の表面に設けられてもよい。格納容器14の外側の表面に設けられた計測部16は、対象物12の振動を計測することができる。また計測部16は、例えばGPSアンテナなどを有し、対象物12の位置を更に計測してもよい。
搬送システム10は、格納容器14に格納された対象物12を搬送する搬送手段20を更に備え、搬送手段20は、記録部18に搬送手段20を識別する識別情報を送信し、記録部18は、搬送装置20から取得した識別情報に計測結果を対応づけて記録する。これにより、搬送システム10は、記録した計測結果を搬送手段毎に確認することができる。
演算部70は、記録部18が記録した計測結果を読み出す読み出し部52と、搬送時の環境に起因する対象物12の劣化の度合いを計測結果に対応づけて格納する劣化条件データベース56と、対象物12の劣化に起因して支払われるべき保険金の支払額を、劣化の度合いに対応づけて格納する支払額データベース57と、計測結果に基づいて保険金の支払額を算出する保険金算出部54とを有する。劣化条件データベース56及び支払額データベース57は、対象物12と、計測結果と、計測結果に基づいて支払うべき対象物12の保険金とを対応づけて格納する保険金データベースの一例である。なお、本実施形態において、劣化条件データベース56及び支払額データベース57は別に設けられているが、これらは一つのデータベースとして管理されてもよい。
さらに演算部70は、保険金算出部54が算出した保険金の支払額の実績を、保険の契約毎に格納する実績データベース58と、実績データベース58に格納された保険金の支払額の実績に基づいて、当該保険の更新時の保険料を算出する保険料算出部60とを有する。さらに演算部70は、対象物が搬送される経路上の気象条件に関するデータである気象データを記録する気象データ記録部24を有する。この場合、保険金算出部54は、気象データ記録部64が記録した気象データに基づいて、読み出し部52が読み出した計測結果と気象条件との関連性を出力する。
例えば、航路上において35℃を越える気温が気象データ記録部64に記録されており、読み出し部52が読み出した温度の計測結果が例えば、最高気温32℃である場合、保険金算出部54は、計測結果と気象条件との関連性が高いと出力する。また、航路上における波の高さが基準よりも低いという気象データが気象データ記録部64に記録されており、読み出し部52が読み出した加速度の計測結果が基準よりも高い値、例えば1G以上である場合、保険金算出部54は、加速度の計測結果と気象条件との関連性が低いと出力する。
このように、保険金算出部52は、計測結果と気象条件との関連性の高さを出力する。従って、搬送システム10の利用者は、対象物12の劣化に起因する計測結果のうちで気象条件との関連性が低い計測結果を特定できる。気象条件との関連性が低い計測結果は、例えば加速度の計測結果の場合、格納容器14の取扱い(ハンドリング)等の搬送方法との関連性が高いと推定する。そして、当該利用者は、搬送方法を改善することにより、劣化の再発を低減できる可能性があると判断できる。
また、保険金算出部52が計測結果と気象条件との関連性の高さを出力するので、保険会社は、対象物12の品質劣化の原因を推定することができ、保険引き受け判断(アンダーライティング)の際の参考にすることができる。
また、実績データベース58は、読み出し部52が読み出した対象物12の環境の計測結果を、対象物12の位置の計測結果に対応付けて更に格納する。例えば、実績データベース58は、読み出し部52が読み出した温度の計測結果を、対象物12の緯度/経度に対応付けて格納する。そして、演算部70は、実績データベース58を参照することにより、位置に対応する計測結果を判断し、位置に応じて対象物12の環境を制御すべき条件を出力する制御条件出力部62を更に備える。例えば、制御条件出力部62は、実績データベース58を参照することにより、対象物12の緯度/経度に対応する温度の計測結果を判断し、対象物12の環境を制御すべき条件、例えばワインの温度を制御すべき緯度/経度及び制御すべき温度を出力する。
これにより演算部70は、対象物12の環境を搬送経路上の位置に応じて適切に制御する条件を出力することができる。
搬送部40は、複数の格納容器14a、b・・・を格納する大容器26を更に備え、格納容器14毎に計測部16a、b・・が設けられる。記録部18は、大容器26又は大容器26内に設けられ、計測部16と記録部18との間で通信する送信部22及び受信部24を更に備える。送信部22及び受信部24は本発明における通信部の例である。また、搬送部40は、計測結果が予め定められた条件を満たしたときに、その旨を報知する報知部30を更に備える。
以上の構成により、搬送システム10は、搬送中における対象物12の環境を格納容器毎に計測し、読み出すことができる。従って、搬送システム10によれば、対象物12の外観上の傷や汚れがなくても、対象物12の搬送中の環境を確認することができる。更に、読み出した計測結果に基づいて対象物12の劣化の程度を判定し、劣化の程度に応じた対象物12の保険金の支払額を、適切に算出することができる。
なお、搬送部40の他の実施例として、互いに接続された計測部16及び記録部18を個々の対象物12に直接取り付け、読みとり装置が記録部18に記録された計測結果を必要に応じて読み出してもよい。例えば、高級ワインのワインボトルに、計測部16及び記録部18が組み込まれたICチップを貼り付けることによって、消費者は、ワインショップやレストランでの当該ワインの購入前に、読みとり装置を用いてそのワインの搬送状態の履歴を確認することができる。
記録媒体80は、計測部16、記録部18、搬送装置20、送信部22、受信部24、出力部28、報知部30、読み出し部52、保険金算出部54、保険料算出部60、及び制御条件出力部62の動作を行わせるプログラムを格納する。他の方法として、搬送システム10は、そのようなプログラムを、通信回線を介して取得してもよい。
図2は、本実施形態にかかる搬送部40の他の例を示す。複数の計測部16c、16d、16eは、対象物12の複数箇所に設けられ、送信部22は、複数箇所に設けられた計測部16からの計測結果を記録部18に送信する。この構成によれば、搬送システム10は、特に対象物12が比較的大きな装置、例えば医療機器などである場合に、輸送時の環境によって劣化を起こしやすい複数の箇所の環境を各々計測することができる。また、記録部18は、格納容器14または格納容器14内に設けられてもよい。これにより、計測部16と記録部18との間の接続が格納容器14において完結する。したがって、計測部16と記録部18との間の接続が容易になり、複数の格納容器14のレイアウトの自由度が増す。また、送信部22及び受信部24が無線送受信機で構成する必要がないので、安価、簡便な方法で計測部16と記録部18とを接続することができる。
図3は、対象物12がワインの場合における、劣化条件データベース56のデータフォーマットの一例を示す。劣化条件データベース56は、搬送時の環境に起因するワインの劣化の度合いを計測結果に対応づけて格納する。ワインは、温度、湿度、振動等の条件により、劣化の程度が左右される。そこで、劣化条件データベース56は、ワインの搬送時の環境として、温度、湿度、及び加速度等の計測結果に、ワインの劣化の度合いを示す劣化指数をそれぞれ対応づけて格納する。従って、保険金算出部54は、劣化条件データベース56を参照することにより、計測条件毎の計測結果に基づいてワインの劣化の度合いを適切に判断することができる。
図4は、対象物12がゲノム解析装置の場合における、データベース56のデータフォーマットの一例を示す。ゲノム解析装置は、精密医療機器の一例であり、温度、加速度(振動、衝撃)、雰囲気中の塵や埃の濃度、及び結露等の条件により劣化の程度が左右される。そこで、劣化条件データベース56は、計測条件である、温度、加速度、ダスト濃度、及び結露条件の計測結果に、ゲノム解析装置の劣化の度合いを示す劣化指数をそれぞれ対応づけて格納する。
このように、劣化条件データベース56は、対象物12の種類毎に、対象物12の劣化の度合いを示す劣化指数を、対象物12の劣化の原因となりやすい計測条件とその計測結果に対応づけて格納する。したがって、保険金算出部54は、対象物12の種類毎に、対象物12の劣化の度合いを計測結果に基づいて的確に判断することができる。
図5は、支払額データベース57のデータフォーマットの一例を示す。支払額データベース57は、対象物12の劣化に対して支払われるべき保険金の支払額を、対象物12の劣化の度合いに対応づけて格納する。本実施形態では、劣化の度合いとは、一例として保険金算出部54が劣化条件データベース56から抽出した劣化指数を合計した合計劣化指数である。複数の異なる計測条件に基づく劣化指数を合計することにより、保険金算出部54は、対象物12の劣化の状態を多面的に判断することができる。ここで、図3及び図4に示したように、劣化指数は計測結果に対応づけて管理されている。
従って、保険金算出部54は、劣化条件データベース56を参照することにより、読み出し部52が読み出した計測結果が、複数種類の計測条件のそれぞれを程度分けしたレベルのいずれに該当するかを判断する。そして、該当するレベルに対応して格納された劣化指数を複数抽出し、抽出した複数の劣化指数に基づいて対象物12の劣化の度合いを判断する。そして、判断した劣化の度合いに基づいて支払額データベース57を参照することにより、対象物12の劣化に対して支払うべき保険金を算出することができる。
つまり、保険金算出部54は、対象物12の複数の計測条件の複数のレベルによるマトリクスを構成する劣化条件データベース56参照することにより、適切に場合分けされた対象物12の環境を判断することができる。例えば、図3で説明したワイン用の劣化条件データベース56の場合、温度、湿度、及び加速度の計測条件がそれぞれ3通りに程度分けされているので、最低3×3×3=9通りのマトリクスとなる。そして保険金算出部54は、適切に場合分けされた対象物12の環境に基づいて抽出した複数の劣化指数を束ねることにより、対象物12の損害に対して支払われるべき保険金を算出することができる。
図6は、実績データベース58のデータフォーマットの一例を示す。実績データベース58は、保険金算出部54が算出した保険金の支払額の実績と対象物12の搬送条件とを対応づけて格納する。例えば、実績データベース58は、保険の契約を識別する証券IDと、保険の対象である対象物の種類と、支払額を算出した日と、複数の経路を識別する経路IDと、複数の経路のそれぞれにおける輸送手段と、梱包形態と、複数の経路のそれぞれにおける対象物の劣化の程度を示す経路別劣化指数と、経路別劣化指数を合計した合計劣化指数と、合計劣化指数に基づく保険金の支払額の実績とを関係づけて格納する。
したがって、制御条件出力部62は、保険金の支払額が下がる搬送条件を実績データベース58から抽出して出力することができる。例えば、制御条件出力部62は、保険金の支払額が下がる搬送手段、搬送経路、及び梱包形態を実績データベース58から抽出して出力することができる。従って、搬送システム10によれば、保険金の支払額が下がる搬送条件、換言すれば対象物の劣化が少ない搬送条件を顧客に提示することができる。
図7は、搬送システム10が保険金を算出する動作を示す。まず、格納容器14が対象物12を格納し(S100)、搬送装置20が格納容器14に格納された対象物12を搬送する(S102)。計測部16は、格納容器14または格納容器14内に設けられた計測部16により、搬送中における対象物12の環境を計測する(S104)。記録部18は、計測結果を記録する(S106)。ここで、報知部30は、記録された計測結果が、対象物12の品質を大きく劣化させ得る異常な結果であるか否かを判断する(S108)。例えば、報知部30は、計測結果に基づいて劣化条件データベース56から抽出した劣化指数の合計値が、あらかじめ定めた基準値を超えた場合に、計測結果が異常であると判断する。ステップ108において、計測結果が異常であると判断された場合には、報知部30は、対象物12の搬送を中止すべき旨、又は対象物12の搬送条件を改善すべき旨を報知する(S110)。
計測結果が予め定められた条件を満たしたときに、報知部がその旨を報知することによって、例えば荷主、輸送人、及び保険会社の合意の下に、海上輸送の場合は避難港へのルート変更、陸上輸送の場合は詰め替え作業、搬送中止など、対象物のさらなる劣化を防ぐための対処方法をアドバイスしてもよい。
つまり、搬送システム10を用いれば、対象物の劣化が許容レベルを越える前に、対象物のさらなる劣化を低減する対処方法を実行することができる。したがって、搬送システム10は、対象物の搬送に伴う損害を低減することができる。
ステップ108において、異常な計測結果でないと判断された場合には、搬送システム10は、記録された計測結果を読み出すべき要求があるか否かを判断する(S112)。ステップ112において、計測結果を読み出すべき要求がない場合には、ステップ104に戻り、計測部16は対象物12の環境を計測する。ステップ112において、計測結果を読み出すべき要求がある場合には、読み出し部52は、記録された計測結果を読み出す(S114)。
次に、気象データ記録部64は、搬送中における気象データを取得する(S115)。次に、保険金算出部54は、読み出された計測結果に基づいて劣化条件データベース56及び支払額データベース57を参照し、保険金の支払額を算出する(S116)。ステップ116において保険金算出部54は、気象データに基づいて、読み出し部52が読み出した計測結果を、気象条件に起因する計測結果と、搬送条件に起因する計測条件とに区別してもよい。最後に、保険金算出部60は、読み出し部52が読み出した計測結果と保険金算出部54が算出した保険金とを、保険の契約毎に実績データベース58に格納する(S118)。以上で本フローは終了する。
以上の動作によれば、搬送システム10は、対象物12の搬送中における対象物12の環境を計測し、計測結果に基づいて対象物12の劣化に対する保険金の支払額を適切に算出することができる。また、対象物12の取扱業者は、輸送に伴う対象物の劣化を把握できるので取引上の信用を失うリスクを軽減できる。例えばワインショップやレストランは、輸送に伴うワインの劣化の程度を把握できるので、劣化したワインは、劣化の可能性を表示した上で安価で販売する等の対応をとることにより、ワインを無駄にすることなく、かつ店の信用を保つことができる。また、例えば揺れによる劣化があると判断されたワインは、3ヶ月程度静かに寝かせて品質を改善させてから出荷することによって、廃棄することなく高品質な状態で出荷できる場合もある。また、ワインはブドウの種類(カベルネソービニヨン、ビノノアール、シラー等)やそのブレンドによって、搬送システム10が算出する劣化指数と、実際の劣化の程度との相関が異なることが考えられる。したがって、搬送システム10が算出する劣化指数と実際の劣化の程度との相関をワインの種類毎に統計的に分析することによって、ワイン毎の飲み頃についてのアドバイスを提供することも可能になる。
さらに、保険金の支払額が自動的に計算されるので、通常省略することの出来ない日本海事検定協会等のサーベーヤーによる検査、保険会社社員による立会、契約者との損害額協定等の手続きを省略することができる。
図8は、搬送システム10が更新時の保険料を算出する動作を示す。まず、保険料算出部60は、実績データベース58を参照して(S200)、保険金算出部54が算出した保険金の支払額を、当該保険の契約を識別する証券ID毎に参照する。そして、一定期間における証券ID毎の保険金の支払実績に基づいて、契約を更新する場合の適切な保険料を算出する(S202)。例えば、保険料算出部60は、過去1年間の保険料支払額の合計を証券ID毎に算出し、前年の支払額合計と比較する。そして、過去1年間の保険料支払額の合計が前年の支払額の合計よりも低ければ、翌年の保険料を安くする。保険料算出部60は、過去1年間の保険料支払額の合計が同様の保険における平均支払保険金額よりも低い場合に、翌年の保険料を安くしてもよい。最後に、算出した保険料をユーザに出力する(S204)。以上で本フローは終了する。以上の動作によれば、搬送システム10は、計測した搬送条件に基づく保険金の支払実績を参照して、保険の契約毎に、適切な保険料を算出することができる。
図9は、搬送システム10が対象物12の環境を制御すべき条件を出力する動作を示す。まず、制御条件出力部62は、実績データベース58を参照して(S300)、対象物12の搬送中における位置に対する環境の変化を判断する(S302)。例えば、制御条件出力部62は、対象物12の一例であるワインの搬送経路が赤道を通過する場合において、コンテナの温度や湿度等の環境を制御しないときの、経度及び緯度に対するコンテナの温度及び湿度の変化を実績データベース58から抽出する。次に、位置に応じて制御すべき環境の制御条件を判断する(S304)。例えば、ワインの搬送経路において、赤道に近いある緯度を境に、コンテナの温度が、ワインの劣化を左右する温度の一例である25℃を越える場合、制御条件出力部62は、対象物12を格納するリーファコンテナがこの緯度を通過する時にリーファコンテナの温度調節器のスイッチを入れるべきであると判断する。最後に、制御条件出力部62は、判断した環境の制御条件を出力する(S306)。以上で本フローは終了する。
このように、搬送システム10は、対象物12の環境を位置に基づいて制御する制御条件を出力するので、対象物12の環境は対象物12の位置に基づいて適切に制御される。例えば、搬送システム10が、赤道を通過する前後の所定の緯度おいてリーファコンテナの温度調節器のスイッチをオン/オフすべき旨を出力することにより、電力の使用量をセーブしながら適切な輸送環境が実現される。
なお記録媒体80は、上記のステップ102からステップ306の動作を搬送システム10に行わせるプログラムを格納する。搬送システム10は、記録媒体80からこれらのプログラムを読みとって実行する。
以上発明の実施の形態を説明したが、本出願に係る発明の技術的範囲は上記の実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態に種々の変更を加えて、特許請求の範囲に記載の発明を実施することができる。そのような発明が本出願に係る発明の技術的範囲に属することもまた、請求の範囲の記載から明らかである。
産業上の利用可能性
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、搬送中における対象物の環境を格納容器毎に計測し、計測結果を読み出すことにより、対象物に外観上の傷や汚れがなくても、対象物の搬送中の環境を確認することを可能にする搬送システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本実施形態に係る搬送システム10の構成を示すブロック図である。
図2は、搬送部40の他の実施例を示すブロック図である。
図3は、劣化条件データベース56のデータフォーマットの一例を示す図である。
図4は、劣化条件データベース56のデータフォーマットの他の例を示す図である。
図5は、支払額データベース57のデータフォーマットの一例を示す図である。
図6は、実績データベース58のデータフォーマットの一例を示す図である。
図7は、搬送システム10が保険金を算出する動作を示すフローチャートである。
図8は、搬送システム10が保険料を算出する動作を示すフローチャートである。
図9は、搬送システム10が対象物12の環境を制御すべき条件を出力する動作を示すフローチャートである。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送すべき対象物を格納する格納容器と、
前記格納容器または前記格納容器内に設けられ、搬送中における前記対象物の環境を計測する計測部と、
前記計測部が計測した計測結果を記録する記録部と、
前記記録部が記録した計測結果を読み出す読み出し部と
を備えることを特徴とする搬送システム。
【請求項2】
前記対象物と前記計測結果と前記計測結果に基づいて支払うべき対象物の保険金とを対応づけて格納する保険金データベースと、
前記読み出し部が読み出した前記計測結果に基づいて、前記保険金データベースに格納された保険金支払額を参照することにより、前記保険金の支払額を算出する保険金算出部と
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の搬送システム。
【請求項3】
前記保険金算出部が算出した前記保険金の支払額の実績を保険の契約毎に格納する実績データベースと、
前記実績データベースに格納された前記保険金の支払額の前記実績に基づいて、当該保険の更新時の保険料を算出する保険料算出部を更に備えることを特徴とする請求項2に記載の搬送システム。
【請求項4】
前記対象物が搬送される経路上の気象条件に関するデータである気象データを記録する気象データ記録部を更に備え、
前記保険金算出部は、前記気象データ記録部が記録した前記気象データに基づいて、前記読み出し部が読み出した前記計測結果と前記気象条件との関連性を出力することを特長とする請求項2に記載の搬送システム。
【請求項5】
前記計測部は、搬送中における前記対象物の位置を更に計測し、
前記計測部が計測した前記計測結果を、前記位置に対応付けて格納する実績データベースと、
前記実績データベースを参照することにより、前記位置に対応する前記計測結果を判断し、前記位置に応じて前記環境を制御すべき条件を出力する制御条件出力部と
を更に備えることを特長とする請求項2に記載の搬送システム。
【請求項6】
前記格納容器に格納された前記対象物を搬送する搬送手段を更に備え、
前記搬送手段は、前記記録部に前記搬送手段を識別する識別情報を送信し、
前記記録部は、前記識別情報に前記計測結果を対応づけて記録することを特徴とする請求項1に記載の搬送システム。
【請求項7】
前記記録部は、前記格納容器または前記格納容器内に設けられることを特徴とする請求項1に記載の搬送システム。
【請求項8】
複数の前記格納容器を格納する大容器を更に備え、前記格納容器毎に前記計測部が設けられ、
前記記録部は、前記大容器又は前記大容器内に設けられ、
前記計測部と前記記録部との間で通信する通信部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の搬送システム。
【請求項9】
前記計測部は、前記対象物の複数箇所に設けられ、
前記複数箇所に設けられた前記計測部と前記記録部との間で通信する通信部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の搬送システム。
【請求項10】
前記計測結果が予め定められた条件を満たしたときに、その旨を報知する報知部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の搬送システム。
【請求項11】
前記計測部は、前記環境として、温度を計測することを特徴とする請求項1に記載の搬送システム。
【請求項12】
前記計測部は、前記環境として、湿度を計測することを特徴とする請求項1に記載の搬送システム。
【請求項13】
前記計測部は、前記環境として、加速度を計測することを特徴とする請求項1に記載の搬送システム。
【請求項14】
前記計測部は、前記環境として、ダスト濃度を計測することを特徴とする請求項1に記載の搬送システム。
【請求項15】
前記計測部は、前記環境として、結露を計測することを特徴とする請求項1に記載の搬送システム。
【請求項16】
搬送すべき対象物を格納する格納容器または前記格納容器内に設けられ、搬送中における前記対象物の環境を計測する計測部と、
前記格納容器または前記格納容器内に設けられ、搬送中に計測された計測結果を記録する記録部と、
前記記録部に記録された前記計測結果を出力する出力部と
を備えることを特徴とする搬送状態計測モジュール。
【請求項17】
前記計測結果が予め定められた条件を満たしたときに、その旨を報知する報知部を更に備えることを特徴とする請求項17に記載の搬送状態計測モジュール。
【請求項18】
搬送すべき対象物を搬送する方法であって、
前記対象物を格納容器に格納するステップと、
前記格納容器に格納された前記対象物を搬送するステップと、
前記格納容器または前記格納容器内に設けられた計測部により、搬送中における前記対象物の環境を計測するステップと、
計測結果を記録するステップと、
記録された前記計測結果を読み出すステップと
を備える対象物の搬送方法。
【請求項19】
対象物の搬送中における、前記対象物の損害に基づいた保険金の支払額を算出する保険金算出方法であって、
前記対象物を格納容器に格納するステップと、
前記格納容器または前記格納容器内に設けられた計測部により、搬送中における前記対象物の環境を計測するステップと、
計測結果を記録するステップと、
記録された前記計測結果を読み出すステップと、
前記対象物と前記計測結果と前記計測結果に基づく対象物の保険金の支払額とを対応づけて管理するステップと、
読み出した前記計測結果に基づいて、前記保険金の支払額を算出するステップと
を備えることを特徴とする保険金算出方法。
【請求項20】
搬送すべき対象物の搬送を管理するコンピュータ用のプログラムであって、
前記対象物を格納する格納容器または前記格納容器内に設けられた計測部により、搬送中における前記対象物の環境を計測する計測機能と、
計測結果を記録する記録機能と、
記録された前記計測結果を読み出す読み出し機能と
を前記コンピュータに実現させることを特徴とするプログラム。
【請求項21】
対象物の搬送中における、前記対象物の損害に基づいた保険金の支払額を算出するコンピュータ用のプログラムであって、
前記対象物を格納する格納容器または前記格納容器内に設けられた計測部により、搬送中における前記対象物の環境を計測する計測機能と、
計測結果を記録する記録機能と、
記録された前記計測結果を読み出す読み出し機能と、
前記対象物と前記計測結果と前記計測結果に基づく対象物の保険金の支払額とを対応づけて管理する管理機能と、
読み出した前記計測結果に基づいて、前記保険金の支払額を算出する算出機能と
を前記コンピュータに実現させることを特徴とするプログラム。

【国際公開番号】WO2004/038626
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【発行日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−523882(P2003−523882)
【国際出願番号】PCT/JP2002/011052
【国際出願日】平成14年10月24日(2002.10.24)
【出願人】(399106192)三井住友海上火災保険株式会社 (19)
【Fターム(参考)】