搬送ローラーの製造方法及び搬送ユニット並びに印刷装置
【課題】搬送特性の低下を抑制できる搬送ローラーの製造方法を提供する。
【解決手段】記録媒体を搬送する搬送ローラー31を製造方法する。板材を曲げて略円筒状の円筒部材16を形成するとともに、円筒部材の端部に切り欠き形状を有する位置決め部73を形成する第1工程と、円筒部材の長さ方向で位置決め部よりも中央側で円筒部材を支持した状態で円筒部材の所定箇所に曲げ荷重を付与して、第1工程で円筒部材に生じた軸曲がりを矯正する第2工程と、を有する。
【解決手段】記録媒体を搬送する搬送ローラー31を製造方法する。板材を曲げて略円筒状の円筒部材16を形成するとともに、円筒部材の端部に切り欠き形状を有する位置決め部73を形成する第1工程と、円筒部材の長さ方向で位置決め部よりも中央側で円筒部材を支持した状態で円筒部材の所定箇所に曲げ荷重を付与して、第1工程で円筒部材に生じた軸曲がりを矯正する第2工程と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ローラーの製造方法及び搬送ユニット並びに印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、シート状の記録媒体上に情報を記録する印刷装置が用いられており、この印刷装置には記録媒体を搬送する搬送ユニットが設けられている。この搬送ユニットは、回転することで記録媒体を搬送する搬送ローラーを有している。
搬送ローラーには、搬送ローラーを回転させるため又は搬送ローラーの回転により他の機器を駆動させるためのギア等の駆動部材が設けられている。
【0003】
従来、搬送ローラーには中実の棒状部材が一般的に使用されているが、中実の材料は重量およびコストが嵩むという課題があるため、特許文献1には、金属板を曲げ加工して円筒状に成形する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−289496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような従来技術には、以下のような問題が存在する。
金属板を円筒状に曲げ加工した場合には、中立面よりも外周面側は引張力が作用するが、繋ぎ目の存在により、周方向については繋ぎ目と逆側の位置(軸中心を挟んで対向する位置)を中心として収縮する方向の力が作用し、長さ方向についても中央部を中心として収縮する方向の力が作用する。その結果、搬送ローラーには、長さ方向の中央部において外側に繋ぎ目が向いて膨出するように反りが発生する。そのため、搬送ローラーを両端部で支持した場合に振れが生じて同心度が低下し、非常に高い精度を必要とする搬送ローラーにおいて搬送特性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、搬送特性の低下を抑制できる搬送ローラーの製造方法及び搬送ユニット並びに印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明は、以下の構成を採用している。
本発明の搬送ローラーの製造方法は、記録媒体を搬送する搬送ローラーの製造方法であって、板材を曲げて略円筒状の円筒部材を形成するとともに、前記円筒部材の端部に切り欠き形状を有する位置決め部を形成する第1工程と、前記円筒部材の長さ方向で前記位置決め部よりも中央側で前記円筒部材を支持した状態で前記円筒部材の所定箇所に曲げ荷重を付与して、前記第1工程で前記円筒部材に生じた軸曲がりを矯正する第2工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
従って、本発明の搬送ローラーの製造方法では、板材を曲げて円筒部材を形成した際に生じた反り・曲がりを、円筒部材の所定箇所に曲げ荷重を付与することにより矯正できるため、振れ量を小さくすることが可能になり、搬送特性の低下を抑制することができる。特に、本発明では、形成時に大きな応力が残留しやすい端部の位置決め部よりも中央側で円筒部材を支持するため、精度よく円筒部材に曲げ荷重を付与できる。
【0009】
また、本発明では、前記円筒部材における前記記録媒体に当接して搬送する搬送領域以外の位置で、前記円筒部材を支持することが好ましい。
これにより、本発明では、円筒部材に曲げ荷重を付与した際に支持部において加わる荷重で搬送領域に生じた押圧痕等により、記録媒体に対する搬送特性が低下することを防止できる。
【0010】
また、本発明では、前記円筒部材における前記記録媒体に当接して搬送する搬送領域以外の位置に前記曲げ荷重を付与することが好ましい。
これにより、本発明では、円筒部材の搬送領域に曲げ荷重を付与した際に生じた押圧痕等により、記録媒体に対する搬送特性が低下することを防止できる。
【0011】
また、上記の発明における前記第2工程では、前記板材を曲げた一対の端部の繋ぎ目に前記曲げ荷重を付与する構成を好適に採用できる。
これにより、本発明では、長さ方向の中央部において外側に繋ぎ目が向いて膨出するように円筒部材に反り(曲がり)が発生した場合に、効果的に曲がりを矯正することが可能になる。
【0012】
上記の前記第2工程としては、前記円筒部材の所定箇所に曲げ荷重を付与して前記第1工程で前記円筒部材に生じた軸曲がりの方向とは逆方向の曲がりを形成する曲がり形成工程と、前記曲がり形成工程で前記曲げ荷重を付与した方向とは逆方向に前記円筒部材の所定箇所に曲げ荷重を付与する逆荷重付与工程とを含む手順を好適に採用できる。
これにより、本発明では、円筒部材を形成した際の残留応力を一旦緩和できるため、一方向のみに曲げ荷重を付与する場合と比較して、矯正後の曲がりを小さくすることが可能になる。
【0013】
上記発明における前記円筒部材の所定箇所はとしては、前記円筒部材の長さ方向に間隔をあけて配置した複数の第1押圧位置と、前記長さ方向で前記複数の第1押圧位置の間に位置し、且つ前記円筒部材の径方向で前記第1押圧位置と対向する複数の第2押圧位置とを含む構成も好適に採用できる。
これにより、本発明では、円筒部材に対する押圧位置が多くなることで、より細かな矯正が可能になり、円筒部材の振れ量を一層小さくすることができる。
【0014】
また、本発明では、前記第1工程では、プレス金型を用いて前記板材を曲げて前記円筒部材を形成し、前記第2工程では、前記プレス金型に進退自在に設けた軸状部材により前記円筒部材の所定箇所に曲げ荷重を付与する構成も好適に採用できる。
これにより、本発明では、曲げ荷重を付与する装置を別途設けたり、円筒部材をこの荷重を付与する装置に移送する必要がなくなり、生産性の向上及び装置の小型化・低価格化に寄与できる。
【0015】
また、本発明では、前記第2工程後に、前記円筒部材の表面を研磨する第3工程を有する手順も好適に採用できる。
これにより、本発明では、第2工程後にも残留する振れを小さくすることが可能となり、円筒部材の振れ量を一層小さくすることができる。
【0016】
そして、本発明の搬送ユニットは、先に記載の製造方法により製造された搬送ローラーを備えたことを特徴とするものである。
また、本発明の印刷装置は、先に記載の製造方法により製造された搬送ローラーを備えたことを特徴とするものである。
これにより、本発明では、振れ量が小さい搬送ローラーを備えることから、高い搬送特性を有する搬送ユニット及び印刷装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るプリンターの側断面図である。
【図2】搬送部3及び排紙部4の構成を示す概略図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のA矢視図である。
【図3】搬送ローラー機構の概略構成図である。
【図4】ローラー本体の外観斜視図である。
【図5】ローラー本体の基材としての金属板を示す平面図である。
【図6】(a)はローラー本体の要部斜視図、(b)は要部側断面図である。
【図7】(a)〜(c)は金属板のプレス加工を説明するための工程図である。
【図8】(a)〜(c)は金属板のプレス加工を説明するための工程図である。
【図9】(a)〜(c)はローラー本体の矯正工程を説明するための工程図である。
【図10】別形態のローラー本体の矯正工程を説明するための図である。
【図11】別形態のローラー本体の矯正工程を説明するための図である。
【図12】(a)〜(c)は繋ぎ目の他の形状を説明するための図である。
【図13】(a)はローラー本体の要部斜視図、(b)は側面図である。
【図14】(a)はローラー本体の要部斜視図、(b)は側面図である。
【図15】(a)〜(c)は展開係合部を示す金属板の要部平面図である。
【図16】ローラー本体の繋ぎ目とその近傍の要部拡大図である。
【図17】(a)は搬送ローラーを示す平面図、(b)繋ぎ目を示す断面図、(c)は開口を示す断面図、(d)は開口の変形例を示す図である。
【図18】搬送ローラー31の構成例を示す概略図である。
【図19】搬送ローラー31の構成例を示す概略図である。
【図20】金属板60の一対の端面を調整した後の断面図である。
【図21】実施形態に係る抜き工程の工程断面図である。
【図22】(a)〜(c)は展開係合部を示す金属板の要部平面図である。
【図23】(a)、(c)は繋ぎ目を示す図、(b)は金属板の平面図である。
【図24】紙送りの際の搬送ローラーと用紙との関係を示す斜視図である。
【図25】(a)〜(c)は繋ぎ目の形状を説明するための図である。
【図26】(a)は繋ぎ目の形状説明図、(b)は作用説明図である。
【図27】(a)〜(c)は繋ぎ目の形状を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の搬送ローラーの製造方法及び搬送ユニット並びに印刷装置の実施の形態を、図1ないし図27を参照して説明する。
なお、以下の実施の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0019】
まず、本実施形態に係る搬送ローラーが設けられるプリンター(印刷装置)1の構成を、図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るプリンター1の全体構成図である。
プリンター1は、記録媒体である紙等にインクを噴射し、文字や画像等の情報を記録する印刷装置である。プリンター1は、給紙部2と、搬送部(搬送ユニット)3と、排紙部4と、ヘッド部5と、制御部CONTとを有している。
【0020】
給紙部2は、記録媒体である複数枚の記録紙(記録媒体、シート材)Pを保持すると共に、記録紙Pを搬送部3に向けて供給するものであって、給紙トレー21と、給紙ローラー22とを有している。
給紙トレー21は、複数枚の記録紙Pを保持するものであり、水平面との間に所定の角度(45°程度)を形成して設けられている。なお、記録紙Pとしては、インクによる印刷が可能なシート状の記録媒体が用いられ、普通紙、コート紙、OHP(オーバーヘッドプロジェクター)用シート、光沢紙及び光沢フィルム等が用いられる。
【0021】
給紙ローラー22は、回転することで記録紙Pを搬送部3に向けて供給するローラーであり、給紙トレー21の搬送部3側に設けられている。なお、給紙ローラー22の外周面と対向する位置には不図示の分離パッドが設けられており、該分離パッドと給紙ローラー22とが協働して記録紙Pを一枚ずつ搬送部3に供給することができる。
【0022】
搬送部3は、給紙部2から供給された記録紙Pを排紙部4に向けて搬送するものであり、且つ記録紙Pに対する印刷動作が行われる箇所である。搬送部3は、搬送ローラー(円筒軸)31と、従動ローラー32と、プラテン33と、ダイヤモンドリブ34と、駆動部6(図2参照)とを有している。
搬送ローラー31は、回転することで記録紙Pを所定の印刷位置に正確に搬送するためのローラーであって、水平面内且つ記録紙Pの搬送方向と直交する方向で延在し、略円筒状に形成された円筒軸である。搬送ローラー31は、搬送部3に設けられ略U字型の一対の軸受(図示せず)に回転自在に軸支され、駆動部6の駆動により回転する。なお、搬送ローラー31の詳細については後述する。
【0023】
従動ローラー32は、略円柱状の部材であって、搬送ローラー31の軸方向に沿って間隔を空けて複数配置されている。また、従動ローラー32は、後述する搬送ローラー31の高摩擦層50(図3参照)に対向する位置に回転自在に設けられている。従動ローラー32には不図示の付勢バネが設けられており、この付勢バネの付勢力によって、従動ローラー32は搬送ローラー31の高摩擦層50に付勢されて接触している。このため、従動ローラー32は、搬送ローラー31の回転動作に従動して回転する。なお、従動ローラー32の外周面には、高摩擦層50との摺動による摩耗・損傷を緩和するため、例えばフッ素樹脂塗装等の低摩耗処理が施されている。
【0024】
プラテン33は、ヘッド部5による記録紙Pへの印刷を行うときに、記録紙Pを下方から支持する箇所であり、水平面に略平行する上面を有している。
ダイヤモンドリブ34は、プラテン33の上面から上方に向けて突出する突部であり、搬送ローラー31の軸方向に沿って間隔を空けて複数配置されている。また、ダイヤモンドリブ34の頂面は、水平面と略平行に形成されており、この頂面によって印刷時の記録紙Pが下方から支持される。
【0025】
排紙部4は、搬送部3から印刷後の記録紙Pを排出するものであって、排紙ローラー41と、排紙ギザローラー42とを有している。排紙ローラー41と排紙ギザローラー42とは、互いに相反する方向で回転でき、この回転によって記録紙Pを引き出して排出する。
【0026】
ヘッド部5は、搬送部3に載置されている記録紙Pに対してインクを噴射するものであって、噴射ヘッド51と、キャリッジ52とを有している。
噴射ヘッド51は、制御部CONTの指示に従いインクを噴射する機器であって、その不図示の噴射口はダイヤモンドリブ34の頂面に対向して設けられている。キャリッジ52は、その下方に噴射ヘッド51を保持するものであって、搬送ローラー31の軸方向で往復移動自在に設けられている。また、キャリッジ52には、制御部CONTの支持に従い、キャリッジ52を往復移動させる不図示の駆動部が連結されている。
【0027】
次に、搬送ローラー31を回転駆動させる構成について、図2を参照して説明する。
図2は、搬送部3及び排紙部4の構成を示す概略図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のA矢視図である。
【0028】
上述したように、搬送部3は駆動部6を有している。駆動部6は、搬送ローラー31を回転駆動させるものであって、モーター61と、ピニオンギア62とを有している。
モーター61は、制御部CONTの指示に従い搬送ローラー31を回転させる電動機である。すなわち、制御部CONTがモーター61を制御して駆動させ、搬送ローラー31の回転及び記録紙Pの正確な搬送を実現している。ピニオンギア62は、モーター61の出力軸に一体的に接続されているギアである。
【0029】
搬送ローラー31には、長さ方向(軸方向)で記録紙Pに当接して搬送する搬送領域CA(図3参照)よりも一端側(図2(a)中、左側)に第1駆動ギア35と、第2駆動ギア36とが設けられ、搬送領域CAよりも他端側(図2(a)中、左側)に第3駆動ギア37が設けられている。
【0030】
第1駆動ギア35は、搬送ローラー31を回転させるためのギアであって、搬送ローラー31における駆動部6設置側の端部に、圧入によって一体的に接続されている。また、第1駆動ギア35はピニオンギア62と互いに噛合しており、ピニオンギア62及び第1駆動ギア35を介してモーター61の駆動力が搬送ローラー31に伝達され、搬送ローラー31が回転する構成となっている。
【0031】
第2駆動ギア36は、モーター61の駆動力を処理装置としての排紙ローラー41に伝達するためのギアであって、第1駆動ギア35よりも小さい径を有し、第1駆動ギア35と隣接して同軸で配置されている。
第3駆動ギア37は、搬送ローラー31の回転駆動力を他の機器38、例えば噴射ヘッド51のノズルを覆って(キャッピング)吸引するためのポンプに伝達するものである。より詳細には、第3駆動ギア37を介して回転駆動力が伝達される機器としては、搬送ローラー31が記録紙Pを搬送する際には非作動となる機器が設定されている。
なお、第2駆動ギア36及び第3駆動ギア37と搬送ローラー31との接続方法は後述する。
【0032】
排紙ローラー41における駆動部6側の端部には、排紙駆動ギア43が一体的に設けられている。また、排紙駆動ギア43と第2駆動ギア36との間には、中間ギア44が設けられ、中間ギア44は第2駆動ギア36及び排紙駆動ギア43のそれぞれと噛合している。すなわち、第2駆動ギア36、中間ギア44及び排紙駆動ギア43を介して、モーター61の駆動力が排紙ローラー41に伝達され、排紙ローラー41が回転することにより、印刷に関する処理として排紙処理が行われる構成となっている。
【0033】
図3は、搬送ローラー31及び従動ローラー32からなる搬送ローラー機構19の概略構成を示す図である。
搬送ローラー31は、亜鉛メッキ鋼板やステンレス板等の金属板がプレス加工されて円筒状に形成されたローラー本体16と、このローラー本体16の表面に設けられた高摩擦層50とを備えてなるものである。高摩擦層50は、プリンター1で印刷可能な最大幅の記録紙Pに対する搬送領域CAと同等の長さで形成されており、例えばエポキシ系樹脂やポリエステル系樹脂からなる樹脂層と、該樹脂層表面に分散して配置されるセラミックス粒子とを有している。このセラミックス粒子には、酸化アルミニウム(アルミナ)、炭化珪素又は二酸化珪素等が用いられる。セラミック粒子は破砕処理によって粒径が調整されており、また、破砕処理を用いることでセラミック粒子は比較的鋭角な端部を有する形状となっている。
【0034】
また、この搬送ローラー31は、その両端部が軸受け70に回転可能に保持されている。また、前記ローラー本体(円筒軸)16は、金属板がプレス加工され、対向する一対の端部(端面)が互いに近接させられ、あるいは当接させられて円筒状に形成されたものである。したがって、このローラー本体16は、前記一対の端部間に繋ぎ目が形成されているが、本実施形態では、この繋ぎ目が搬送領域CAの近傍と、両端部において異なる構成となっている。
【0035】
具体的には、図4に示すように、本実施形態における繋ぎ目80は、ローラー本体16における搬送領域CAを含む中央部分に形成される中央直線部86と、ローラー本体16の両端部に形成される屈曲部85とから構成される。中央直線部86には、上述した高摩擦層50が形成される。中央直線部86は、図5に示すように、平面視略矩形の金属板60における長さ方向中央部に位置する一対の端部(端面)61a、61bが曲げ加工で円筒状に成形されたときに接合することで形成される。また、屈曲部85は、金属板60における長さ方向両端部に位置し、端面61aから幅方向(円筒状に成形されたときには中心軸16a周りの周方向)に突出する矩形状の突部61cと、端面61bを幅方向(円筒状に成形されたときには中心軸16a周りの周方向)に欠落させた矩形状の凹部61dとが中心軸16a方向に沿って同一幅で同一ピッチで形成され、図4に示すように、円筒状に成形されたときに嵌合する凹凸部110によって、中心軸16aと交差する方向に延びる交差部85a及び交差部85bを含んで九十九折り状に形成される。
【0036】
また、図6(a)に示すように、ローラー本体16(搬送ローラー31)の一端側には、図2に示した第2駆動ギア36と位置決めした状態で連結するためのDカット状の切り欠き形状を有する係合部(位置決め部)73が形成されている。この係合部73は、円筒状のローラー本体16(搬送ローラー31)の端部に形成されたもので、図6(b)に示すようにその一部が平面視矩形状に切り欠かれて開口73aを形成し、これによって図6(c)に示すように端部側面の外形が見掛け上D字状に形成されたものである。
したがって、歯車等の連結部品(図示せず)を、この見掛け上D字状に形成された係合部73に係合させることにより、該連結部品をローラー本体16に対し空回りさせることなく、取り付けることができる。また、この係合部73については、中空パイプ(ローラー本体16)の内部孔に通じる溝状の開口73aが形成されていることから、この開口73aを利用することによっても、連結部品を現像ローラ510に対し空回りさせることなく取り付けることができる。具体的には、連結部品に凸部を形成しておき、この凸部を前記開口73aに嵌合させることにより、空回りを防止する構成とすることもできる。
【0037】
なお、図6(a)では図示していないが、ローラー本体16(搬送ローラー31)の他端側には、同様に係合部73が形成されており、図6(b)に示すように、この係合部73に第3駆動ギア37を係合させることによって位置決めして固定することができる。
なお、図6(a)、(b)では繋ぎ目80の図示を省略している。
【0038】
ここで、搬送ローラー31についての詳細な説明として、その製造方法について図5、図7乃至図11を参照して説明する。
搬送ローラ31を製造する工程は、ローラー本体16の基材を曲げて円筒状に形成するプレス工程(第1工程)と、プレス工程で形成したローラー本体16の両端に係合部73を形成する工程(第1工程)と、プレス工程(及び係合孔73を形成する工程)で形成したローラー本体16に生じた軸曲がりを矯正する矯正工程(第2工程)と、を含んでいる。
【0039】
なお、本実施形態では、上記工程に加えて、軸曲がりを矯正したローラー本体16の表面を研磨するセンタレス加工工程(第3工程)も付加している。
以下、各工程について説明する。
【0040】
(プレス工程)
搬送ローラー31を製造するには、まず、矩形板状または帯状の大型金属板を用意する。この大型金属板としては、例えば厚さ1mm程度の亜鉛メッキ鋼板が用いられる。続いて、この大型金属板をプレス加工することで切断処理し、図5に示すように前記ローラー本体16に対応する大きさの細長い略矩形板状の金属板60、すなわちローラー本体16の基材となる金属板60を形成する。
【0041】
ただし、この大型金属板をプレス加工するに際しては、前記の切断処理と同時に、前述した一対の端部間に形成される繋ぎ目において屈曲部を形成するべく、対向する一対の長辺となる端部61a、61bの、長さ方向における両端部に、矩形波状の凹凸部110を形成する。また、各長辺(端部)においては、その両端部に形成した凹凸部110間に、直線部111を形成する。
【0042】
なお、これら一対の長辺(端部61a、61b)は、プレス加工によって近接させられ、あるいは当接させられるため、当然ながら互いに対応する(対向する)箇所間では、一方の長辺の凹凸部110が凸部となる場合に、他方の長辺の凹凸部110では凹部となるように形成する。また、逆に一方の長辺の凹凸部110が凹部となる場合に、他方の長辺の凹凸部110では凸部となるように形成する。
【0043】
次いで、金属板60を図7(a)〜(c)、図8(a)〜(c)のプレス加工工程図に示すように円筒状(パイプ状)にプレス加工し、その両側(長辺側)の端部61a、61bを近接させ、あるいは当接させる。
すなわち、まず、図7(a)に示す雄型101と雌型102とで金属板60をプレス加工し、金属板60の両側部62a、62bを円弧状(望ましくは略1/4円弧)に曲げる。なお、図7(a)においては、各部材を分かりやすくするため、金属板60と雄型101と雌型102との間にそれぞれ間隔を開けてこれらの部材を記しているが、この間隔は実際には存在せず、金属板60と雄型101、雌型102とはそれぞれの接触部においてほぼ密着している。これは、後述する図7(b)、(c)、図8(a)〜(c)においても同様である。
【0044】
続いて、図7(a)で得られた金属板60の幅方向(曲げ方向)における中央部を、図7(b)に示す雄型103と雌型104とでプレス加工し、円弧状(望ましくは略1/4円弧)に曲げる。
次いで、図7(c)に示すように、図7(b)で得られた金属板60の内部に芯型105を配置し、図7(c)に示す上型(プレス金型)106と下型(プレス金型)107とを用いて、図8(a)〜(c)に示すようにして金属板60の両側部62a、62bの各端面(端部)61a、61bを近接させる。
【0045】
ここで、図7(c)および図8(a)〜(c)に示す芯型105の外径は、形成する円筒状の中空パイプの内径と等しくしてある。また、上型106のプレス面106cの半径と下型107のプレス面107aの半径は、それぞれ、形成する中空パイプの外径の半径と等しくしてある。また、図8(a)〜(c)に示すように上型106は左右一対の割型であり、これら割型106a、106bは、それぞれ独立して昇降可能に構成されている。
【0046】
そして、図7(c)に示す状態から、図8(a)に示すように右側の上型106aを下型107に対して相対的に下降させ(以下、同様に型の移動は相対的移動を意味する)、金属板60の一方の側をプレス加工し、略半円形状に曲げる。なお、下型107も上型106と同様左右一対の割型とし(割面107b参照)、この図8(a)に示す工程の際に、同じ側の下型を上昇させてもよい。
次いで、図8(b)に示すように、芯型106を少し(一方の側の端部61aと他方の側の端部61bとを近接させることができる程度に)下降させるとともに、他方の側の上型106bを下降させ、金属板60の他方の側をプレス加工し、略半円形状に曲げる。
【0047】
その後、図8(c)に示すように、芯型105および一対の上型106a、106bをともに下降させ、円筒状の中空パイプ(ローラー本体16)を形成する。この状態で左右両側の端部61a、61bは、当接した状態となる。すなわち、この円筒状の中空パイプにあっては、基材である金属板60の両端部61a、61bが互いに近接して当接したことにより、これら両端部61a、61b間に繋ぎ目が形成される。
【0048】
続いて、このように形成された円筒状の中空パイプ(ローラー本体16)に対して、両端に係合部73を形成する。係合部73の形成方法としては、研磨加工や切削加工、さらには上述したプレス加工等を採ることができる(プレス加工については後述する)。
【0049】
上記のプレス工程で形成されたローラー本体16は、上述したように、中立面よりも外周面側は引張力が作用し、繋ぎ目80の存在により、周方向については繋ぎ目と逆側の位置(軸中心を挟んで対向する位置)を中心として収縮する方向の力が作用し、長さ方向についても中央部を中心として収縮する方向の力が作用する。その結果、図9(a)に示すように、ローラー本体16には、長さ方向の中央部において外側に繋ぎ目80が向いて膨出するように反り(軸曲がり)が発生する(以下、この方向の軸曲がりを上曲がり、逆方向の軸曲がりを下曲がりと称する)。そのため、引き続いて行う矯正工程で、この軸曲がりを矯正する。
【0050】
(矯正工程)
本実施形態における矯正工程は、プレス工程で生じた軸曲がりの方向とは逆の方向の曲がりを一旦形成する曲がり形成工程と、この曲がり形成工程で曲げ荷重を付与した方向とは逆方向に曲げ荷重を付与する逆荷重付与工程とを有している。
以下、各工程について図9(a)〜(c)を参照して説明する。
【0051】
図9(a)に示すように、上曲がりが生じたローラー本体16に対しては、上型106に進退自在に設けた軸状部材としての押圧ピン106m、106nと、下型107に進退自在に設けた軸状部材としての押圧ピン107m、107nとにより曲げ荷重を付与する。押圧ピン106mは、上型106にローラー本体16の長さ方向の略中央を押圧する位置に設けられている。押圧ピン106nは、上型106にローラー本体16の長さ方向の両端部近傍で係合部73よりも中央側を支持・押圧する位置にそれぞれ設けられている。押圧ピン107mは、下型107にローラー本体16の長さ方向の略中央を押圧する位置に設けられている。押圧ピン107nは、下型107にローラー本体16の長さ方向の両端部近傍で係合部73よりも中央側を支持・押圧する位置にそれぞれ設けられている。
【0052】
そして、プレス工程で上曲がりが生じたローラー本体16に対しては、曲がり形成工程において、下型107に設けられた押圧ピン107nを突出させてローラー本体16の両端部近傍を下方から支持させるとともに、上型106に設けられた押圧ピン106mを突出させてローラー本体16の中央部における繋ぎ目80を上方から支持させ、さらにこれら押圧ピン107n、106mを突出させることにより、ローラー本体16を押圧して曲げ荷重を付与する。このとき、図9(b)に示すように、ローラー本体16が下曲がりとなるように、押圧ピン106mによりローラー本体16を押圧して曲げ荷重を付与する。
【0053】
続いて、逆荷重付与工程では、図9(b)に示すように、下型107に設けられた押圧ピン107mを突出させてローラー本体16の中央部を下方から支持させるとともに、上型106に設けられた押圧ピン106nを突出させてローラー本体16の両端部近傍を上方から支持させ、さらにこれら押圧ピン107m、106nを突出させることにより、ローラー本体16を押圧して曲げ荷重を付与する。
これにより、図9(c)に示すように、ローラー本体16の軸曲がりが矯正される。
【0054】
(センタレス加工工程)
次いで、本実施形態では、形成した中空パイプ(ローラー本体16)の真円度を高め、振れを少なくするべく、前記中空パイプ(ローラー本体16)の外周面を研磨するセンタレス加工工程(第3工程)を付加している。
このセンタレス研磨は、この表面の全面に亘って実施され、例えばセンタレス研磨後の表面の十点平均粗さRzが1.0μm以下とされる。
これにより、この中空パイプは、センターレス研磨加工前に比べその真円度がより良好になり、また、振れ量も小さいローラー本体16となる。
【0055】
(実施例)
上記のプレス工程で円筒形状に成形された複数のローラー本体16の軸曲がり量(反り量)は、100〜150μmであったが、曲がり形成工程で下曲がりとなったローラー本体16の軸曲がり量(反り量)は、250μm前後となった。さらに、逆荷重付与工程で逆荷重を付与することにより、ローラー本体16の軸曲がり量は、20〜50μmとなった。そして、このように軸曲がりが矯正されたローラー本体16に対してセンターレス研磨加工を行うことにより、振れ量を50〜100μmに抑えることができた。
【0056】
このようにして形成される繋ぎ目80には、図5に示した凹凸部110が嵌合したことにより、図4に示したようにローラー本体16の両端部に交差部85a、85bを有する屈曲部85が形成される。
【0057】
このようにしてローラー本体16を形成したら、このローラー本体16の表面に高摩擦層50を形成する。
この高摩擦層50の形成方法としては、乾式法及び湿式法(またはこれらを併用した方法)が採用可能であるが乾式法が好適に採用される。
【0058】
次に、前記搬送ローラー機構19を備えてなるプリンター(印刷装置)1の動作について、図1、図2を参照して説明する。
給紙ローラー22によって給紙された記録用紙Pは、搬送ローラー機構19の上流側近傍に至ると、モーター61の駆動により、搬送ローラー31と従動ローラー32との間に引き込まれ、両ローラーの駆動によって下流側に位置する噴射ヘッド51の下方に向けて定速で搬送される。
【0059】
その際、搬送ローラー31には高摩擦層50が形成されており、従動ローラー32がこの高摩擦層50に当接する位置に配置されているので、これら搬送ローラー31と従動ローラー32との間で記録用紙Pを挟持する力が大きくなり、記録用紙Pの搬送性がより良好になっている。
【0060】
そして、記録用紙Pの印刷開始端が、噴射ヘッド51の直下の所定の印刷位置に到達すると、印刷が開始される。
その後、記録用紙Pの始端が排紙部4、すなわち排紙ローラー41及び排紙ギザローラー42に至ると、これらに挟持された記録用紙Pの排紙動作が開始される。
【0061】
ここで、排紙ローラー41の回転駆動は、第1駆動ギア35を介して搬送ローラー31に伝達されたモーター61の駆動力が第2駆動ギア36を介して伝達され、搬送ローラー31の駆動による記録用紙Pの搬送処理の間にも行われるが、これら第1駆動ギア35及び第2駆動ギア36がいずれも搬送ローラー31の搬送領域CAよりも一端側に配置されているため、搬送ローラー31(ローラー本体16)に加わるトルクは搬送領域CAには作用しない。そのため、搬送領域CAにおける繋ぎ目80(中央直線部86)にずれが生じず、従って、記録用紙Pが斜めに搬送されてしまう等の不具合を生じさせず、搬送精度、ひいては印刷精度が低下することを抑制できる。
【0062】
一方、第1駆動ギア35を介して搬送ローラー31に伝達されたモーター61の駆動力は、第3駆動ギア37を介して他の機器38に伝達される。この場合、第3駆動ギア37は、搬送領域CAを挟んで第1駆動ギア35と逆側である搬送ローラー31の他端側に配置されているため、搬送領域CAには他の機器38の動作に応じたトルクが加わることになるが、第3駆動ギア37は搬送ローラー31が記録用紙Pを搬送する際には非作動となる機器38に連結されているため、機器38の作動時には記録用紙Pの搬送は行われず、従って搬送精度、ひいては印刷精度が低下することはない。さらに、本実施形態では、送領域CAにおける搬送ローラー31の繋ぎ目80が中央直線部86であり、繋ぎ目80の長さが最小限に抑えられていることから、繋ぎ目80に起因する搬送精度及び印刷精度の低下を一層抑制することができる。
【0063】
以上説明したように、本実施の形態では、プレス工程で生じた反りを矯正工程で矯正するため、搬送ローラー31を回転させたときの振れを小さくすることが可能になり、搬送特性の低下を抑制することができる。特に、本実施形態では、ローラー本体16の繋ぎ目が外側に膨出するように反りが生じたものに対して長さ方向の中央部で繋ぎ目に曲げ荷重を付与しているため、効果的に軸曲がりを矯正することができる。さらに、本実形態では、形成時に大きな応力が残留しやすい端部の係合部73よりも中央側でローラー本体16を支持するため、精度よくローラー本体16に曲げ荷重を付与でき、効果的にローラー本体16の軸曲がりを矯正することが可能である。
【0064】
また、本実施形態では、プレス工程で生じた軸曲がりを曲がり形成工程で逆方向の曲がりを形成した後に、逆荷重付与工程で逆荷重を付与することにより、プレス工程でローラー本体16に生じた残留応力を一旦緩和できるため、一方向のみに曲げ荷重を付与する場合と比較して、矯正後の曲がりを小さくすることが可能になる。
加えて、本実施形態では、ローラー本体16の軸曲がりの矯正を、上型106、下型107に設けた押圧ピン106m、106n、107m、107nを用いて行うため、ローラー本体16に曲げ荷重を付与する装置を別途設けたり、ローラー本体16に荷重を付与する装置に移送する必要がなくなり、生産性の向上及び装置の小型化・低価格化に寄与できる。
【0065】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0066】
例えば、上記実施形態では、矯正工程が曲がり形成工程及び逆荷重付与工程を有する構成を例示したが、これに限定されるものではなく、図9(a)に示した状態から押圧ピン106m、107nにより、ローラー本体16の軸曲がりをゼロとする量で曲げ荷重を付与して図9(c)に示す状態としてもよい。
この場合でも、係合部73よりも中央側でローラー本体16を支持することで、プレス工程で円筒形状に成形された複数のローラー本体16の軸曲がり量(反り量)を100〜150μmから、30〜140μmに抑えることができ、さらに、このように軸曲がりが矯正されたローラー本体16に対してセンターレス研磨加工を行うことにより、振れ量を20〜80μmに抑えることができる。
【0067】
また、上記実施形態では、押圧ピン106m、106nと押圧ピン107m、107nとをそれぞれ対向配置し、一方側でローラー本体16の両端部を押圧し、他方側でローラー本体16の中央部を押圧する構成としたが、これに限られず、例えば図10に示すように、下型107にローラー本体16の長さ方向に所定間隔をあけた位置(第1押圧位置)で係合部73よりも中央側に複数の押圧ピン107pを設け、上型106に押圧ピン107pの間に位置し、且つローラー本体16の径方向で押圧ピン107pと対向する位置(第2押圧位置)で係合部73よりも中央側に複数の押圧ピン106pを設ける構成としてもよい。
これにより、本実施形態では、ローラー本体16に対する押圧位置が多くなることで、より細かな矯正が可能になり、ローラー本体16の振れ量を一層小さくすることができる。
【0068】
また、上記実施形態では、ローラー本体16における搬送領域CAを含む中央部も押圧する構成としたが、例えば、図11に示すように、ローラー本体16において高摩擦層50を含む搬送領域CAと離間した位置に押圧ピン106p、107pを配置する構成としてもよい。
この構成では、ローラー本体16の搬送領域CAに曲げ荷重を付与した際に生じた押圧痕等により、記録媒体に対する搬送特性が低下することを防止できる。
また、押圧ピン106p、107pの双方がローラー本体16に曲げ荷重を付与するのではなく、押圧ピン106p、107pの一方は係合部73よりも中央側を支持するのみで、他方のみが係合部73よりも中央側に曲げ荷重を付与する構成としてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、ローラー本体16の繋ぎ目80における屈曲部85が、矩形状の突部61cと矩形状の凹部61dとにより形成される構成としたが、この形状以外にも、例えば図12(a)に示すように、屈曲部85における交差部85aが周方向(図12(a)における上下方向)に対して傾斜して中心軸16aと平行な軸に対して角度αで交差する構成としてもよい。このようにすれば、金属板のプレス加工において一対の端面を近接させた際、突部61cの先端を対応する凹部61dに嵌合させ易くなり、したがって、ローラー本体16に歪みや捩れ等が生じるのを抑制することができる。
また、図12(b)に示すように、屈曲部85が円弧形状の繰り返し(sin波形状)の繋ぎ目で形成される構成や、図12(c)に示すように、三角形状の突部61cと凹部61dとにより繋ぎ目がジグザグ状に形成される構成であってもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、ローラー本体16の端部に設けられるDカット状の切り欠き形状を有する係合部73を示したが、図13(a)、(b)に示すように、ローラー本体16の端部に溝74aとDカット部74bとを有した係合部(位置決め部)74を形成することもできる。この係合部74において、Dカット部74bはローラー本体16の外端に形成されており、溝74aはDカット部74bより内側に形成されている。溝74aは、図13(a)に示すように、ローラー本体16がその周方向に略半分切り欠かれて形成されたものである。Dカット部74bは、溝74aの外側において該溝74aと直交する方向に延在する開口74cを有し、この開口74cの両側に、一対の折曲片74d、74dを有したものである。すなわち、図13(b)に示すようにこれら一対の折曲片74d、74dがローラー本体16の中心軸側に折曲させられたことにより、これら折曲片74d、74dに対応する部分が、ローラー本体16の円形の外周面から凹んだ状態となっている。
【0071】
したがって、歯車等の連結部品(図示せず)を、前記溝74aに係合させまたはDカット部74bに係合させることにより、該連結部品をローラー本体16(搬送ローラー31)に対し空回りさせることなく、取り付けることができる。また、この係合部74では、折曲片74d間に形成された開口74cを利用することによっても、連結部品をローラー本体16に対し空回りさせることなく取り付けることができる。具体的には、連結部品に凸部を形成しておき、この凸部を前記開口74cに嵌合させることにより、空回りを防止することができる。
【0072】
また、図14(a)、(b)に示すように、ローラー本体16の端部に溝75aと開口75bとを有した係合部(位置決め部)75を形成することもできる。この係合部75において、開口75bはローラー本体16の外端に形成されており、溝75aは開口75bより内側に形成されている。溝75aは、図14(a)に示すように、ローラー本体16がその周方向に略半分切り欠かれて形成されたものである。開口75bは、溝75aの外側においてローラー本体16の一部が平面視矩形状に切り欠かれ、これによって図14(b)に示すように端部側面の外形が見掛け上D字状に形成されたものである。
【0073】
したがって、歯車等の連結部品(図示せず)を、前記溝75aに係合させまたは開口75bによって形成された見掛け上D字状に形成された部位に係合させることにより、該連結部品をローラー本体16に対し空回りさせることなく、取り付けることができる。また、この係合部75でも、図6(a)〜(c)に示した係合部73と同様に、開口75bを利用することによって、連結部品をローラー本体16に対し空回りさせることなく取り付けることができる。
【0074】
このような係合孔71や係合部73、74、75を形成するには、上述したように、金属板60をプレス加工して得られたローラー本体16に対して、さらに切削加工や研磨加工等を施すことで行うことができる。
しかしながら、このようにローラー本体16に対してさらに加工を施すのでは、係合部の形成だけのために別途加工工程を追加することで、コストや時間についての効率が低下してしまう。そこで、ローラー本体16にプレス加工する前に、プレス加工によって係合部となる展開係合部を金属板に形成しておき、この金属板をプレス加工してローラー本体16とする際に、係合部も同時に形成するのが好ましい。
【0075】
具体的には、大型の金属板を、図5に示した細長い矩形板状の金属板60にプレス加工する際、この大型金属板から小型の金属60への加工と同時に、切欠状、突片状、孔状、あるいは溝状等の展開係合部を形成する。例えば、図15(a)に示すように、金属板60の端部を所定形状に切り欠いて展開係合部76bとしておくことにより、この金属板60をプレス加工することで図13(a)、(b)に示した係合部74を形成することができる。すなわち、展開係合部76bとして、一対の切欠部(凹部)74e、74eと一対の突片74f、74fとを形成しておくことにより、係合部74を形成することができる。ただし、この例では、金属板60をプレス加工した後、一対の突片74f、74fを内側に折りプレス加工して折曲片74dとする必要があるため、加工工程についてのコストや時間の効率化を十分に高めるにはやや不十分である。
【0076】
そこで、図15(c)に示すように、金属板60の端部を所定形状に切り欠いて展開係合部76cとしておくことにより、この金属板60をプレス加工することで図14(a)、(b)に示した係合部75を形成することができる。すなわち、展開係合部76cとして、一対の切欠部(凹部)75c、75cと一対の突片75d、75dとを形成しておくことにより、係合部75を形成することができる。この例では、金属板60をプレス加工した際に一対の突片75d、75dも円弧状に曲げることにより、これら突片75d、75d間に、図14(b)に示した開口75bを形成することができる。したがって、プレス加工によって形成したローラー本体16に対し、さらに加工を追加する必要がなく、これにより加工工程についてのコストや時間の効率化を十分に高めることができる。
【0077】
また、上記実施形態で示した高摩擦層50を形成するセラミックス粒子(例えばアルミナ粒子)としては、粒径が15μm以上90μm以下の範囲とされ、かつ、中心径となる加重平均の粒径(平均粒径)が、45μmとなるように調整されたものが用いることが好ましい。
すなわち、アルミナ粒子(無機粒子)としてその平均粒径(中心径)が、図16に示すように、繋ぎ目80の外周面側での距離d1(30μm)より大となるものが用いられる。また、特にその粒径分布(粒度範囲)については、繋ぎ目80の外周面側での距離d1より小となり、かつ、内周面側での距離d2(10μm)より大となる粒子を含んでいるのが好ましく、さらに、その粒径分布における最小粒径が、繋ぎ目80における一対の端面61a、61b間の最短距離、つまり内周面側での距離d2より大であるのが好ましい。
【0078】
このようにして高摩擦層50を形成すると、特に繋ぎ目80には、金属板60の端面61a、61b間の隙間に起因する溝が形成されることなく、端面61a、61b間の隙間が主にアルミナ粒子95によって埋め込まれる。
すなわち、アルミナ粒子95としてその平均粒径が、繋ぎ目80の、外周面側での距離d1より大となるものを用いているので、アルミナ粒子95はその大半が繋ぎ目80内に入り込むことなく、図16に示すようにローラー本体16の外周面上に樹脂膜151を介して付着している。したがって、繋ぎ目80には金属板60の端面61a、61b間に隙間が形成されているにもかかわらず、アルミナ粒子95がこの隙間上を覆うことにより、この隙間に起因する溝が実質的に形成されなくなる。
【0079】
また、アルミナ粒子95として、繋ぎ目80の外周面側での距離d1より小となり、かつ、内周面側での距離d2(10μm)より大となる粒子95aを含む粒径分布(粒度範囲)のものを用いているので、このような粒子95aが繋ぎ目80に形成された隙間に入り込んでここに留まることにより、繋ぎ目80による溝が確実に形成されなくなる。
また、使用時等において、ローラー本体16(搬送ローラ31)に隙間を狭める方向に力が働いても、ここに入り込んだアルミナ粒子95aがこの力に抗するため、ローラー本体16(搬送ローラー31)の変形が抑えられる。したがって、この搬送ローラー15を備えた搬送ローラー機構19にあっては、搬送ローラー15の変形に起因する搬送ムラが防止される。
【0080】
さらに、アルミナ粒子95として、その粒径分布における最小粒径が、繋ぎ目80における一対の端面61a、61b間の最短距離、つまり内周面側での距離d2より大であるものを用いているので、ローラー本体16の表面にアルミナ粒子95を配して高摩擦層50を形成した際、繋ぎ目80に形成された隙間を通り抜けてローラー本体16内にアルミナ粒子95が入り込むことが無い。したがって、その後ローラー本体16内を清浄化するなどの処理が軽減され、その分、生産性を向上することができる。
【0081】
また、上記実施形態で示したローラー本体16に形成された繋ぎ目80の一部には、図17(a)に示すように、開口70が設けてもよい。
ローラー本体16に形成される繋ぎ目80は、図17(b)に示すように、一対の端面61a,61bの内周側が密着し、外周側が離間した溝状になっている。或いは、繋ぎ目80は、一対の端面61a,61b同士が当接することなく、端面61a,61bが僅かに離間して、隙間として形成される場合もある。そして、この繋ぎ目80が搬送ローラー31の全長に亘って形成されるので、軸受に供給したグリスが搬送ローラー31の表面に付着すると、グリスは繋ぎ目80を毛細管現象により伝わり流れるようになる。特に、搬送ローラー31の強度を向上させるため、繋ぎ目80(端面61a,61bの最大距離d1)を小さくする程、グリスの毛細管現象が強くなって、グリスが繋ぎ目80に沿って流れやすくなる。
【0082】
そこで、図17(c)に示すように、ローラー本体16に形成された繋ぎ目80の一部には、開口170が設けられる。この開口170は、図17(c)に示すように、繋ぎ目80を形成する一対の端面61a、61bにそれぞれ設けられた切欠部76,77により形成される。端面61a、61bを突き合わせたときに、切欠部76,77の間の最大距離d2が例えば1mm程度以上となるように設定され、開口170として機能する。
開口170は、搬送ローラー31(ローラー本体16)の全長に亘って形成された繋ぎ目80のうち、高摩擦層50が形成された領域と軸受26に支持される領域を除く領域に設けられる。つまり、高摩擦層50は搬送ローラー31のほぼ中央部に形成され、搬送ローラー31の両端側が軸受に支持されるので、搬送ローラー31には少なくとも2つの開口170が設けられる。
【0083】
開口170は、軸受に供給(塗布)されたグリス(潤滑油)が繋ぎ目80(端面61a、61bの隙間)に沿って高摩擦層50まで達することを防止する目的で設けられる。すなわち、繋ぎ目80の一部に開口170を設けることで、グリスの毛細管現象を止めている。具体的には、繋ぎ目80のうち、軸受26に支持される領域と高摩擦層50が形成された領域の間に開口170を設けることで、グリスが高摩擦層50に達することを防止している。そして、開口170の大きさ(一対の切欠部76,77間の最大距離d2)を調整することで、グリスの毛細管現象を確実に止めることができる。
【0084】
なお、繋ぎ目80を形成する一対の端面61a、61bのそれぞれに、開口170を形成するための切欠部76,77を形成する場合に限らない。つまり、図17(d)に示すように、繋ぎ目80を形成する一対の端面61a、61bの一方(例えば端面61a)にのみに切欠部78を形成して、切欠部78と端面61bとにより開口170が形成される場合であってもよい。また、開口170の形状としては、矩形に限らず、円形等であってよい。
【0085】
また、ローラー本体16に形成される繋ぎ目80の形状を、図18に示すような形状にしてもよい。すなわち、繋ぎ目80は、第1端面174と第2端面175とが、ローラー本体16の外周面16a側で互いに接している。第1端面174と第2端面175との間の隙間は、径方向外側から内側に向かうに従い漸次幅広となっている。また、第1端面174及び第2端面175の形状は、折曲部以外では、ローラー本体16の全長に亘り同一の形状となっている。
また、第1端面174と外周面16aとで形成される第1角度α、及び第2端面175と外周面16aとで形成される第2角度βは、いずれも90°より小さく形成されている。
【0086】
繋ぎ目80の第1端面174及び第2端面175は外周面16a側で互いに接しており、繋ぎ目80において外周面16a側の平滑度が向上している。そのため、搬送ローラー31が回転してもその外周面は記録紙Pと安定して接触することができる。このため、記録紙Pを高い精度で搬送することができる。
【0087】
繋ぎ目80の形状は、図19に示すように、繋ぎ目80の第1端面174と外周面16aとで形成される第1角度αは、90°より小さく形成され、第2端面175と外周面16aとで形成される第2角度βは、90°以上の大きさで形成してもよい。すなわち、接続部80における第1端面174及び第2端面175が、周方向に関して所定の方向に傾いた形状としてもよい。
【0088】
なお、繋ぎ目80の形状は、以下の工程を経て形成される。すなわち、順送プレス加工における打ち抜き加工によって金属板60を形成した後に、金属板60の第1端面174及び第2端面175に対して、端面調整加工を実施し、第1端面174及び第2端面175の、外周面16aに対する傾きを調整する。
図20に示すように、プレス加工によって第1端面174及び第2端面175の外周面16aに対する傾きを調整する。この調整により、第1端面174と外周面16aとで形成される第1角度α、及び第2端面175と外周面16aとで形成される第2角度βは、いずれも90°より小さくなる。
したがって、金属板60を曲げ加工して円筒状のローラー本体16を成形したときに、第1端面174と第2端面175とは少なくとも外周面16a側で互いに接することになる。
【0089】
ローラー本体16(搬送ローラー31)は、鋼板コイルによる巻きぐせが残った金属板60を用いて形成されるので、コイルの内周側であった面がローラー本体16の内周面となるように形成することが好ましい。
すなわち、鋼板コイルによる金属板60の巻きぐせは、鋼板コイルの内周面であった面が凹面となるような反りである。つまり、ローラー本体16を形成する金属板60には、ローラー本体16の内周面側に反るような巻きぐせが残っている。
【0090】
そのため、少なくともローラー本体16の繋ぎ目80を開く方向には巻きぐせが作用しなくなる。したがって、ローラー本体16の外周面側に反るような巻きぐせが残っている場合と比較して、ローラー本体16の繋ぎ目80を開き難くするができる。これにより、ローラー本体16の繋ぎ目80を開く方向に応力が作用した場合であっても、繋ぎ目80が開くことを防止することができ、高い搬送精度が得られる搬送ローラー31が得られる。
【0091】
また、ローラー本体16の周方向(曲げ方向)と鋼板コイルの巻回方向(金属板60の圧延方向)とが同一となっている。そのため、ローラー本体16を形成する金属板60の曲げ方向と巻きぐせによる反りの方向とを一致させることができる。これにより、ローラー本体16を形成する金属板60の巻きぐせが、ローラー本体16の繋ぎ目80を閉じる方向に作用する。したがって、ローラー本体16の繋ぎ目80の開きをより効果的に防止することができる。
【0092】
また、ローラー本体16の抜き工程において金属板60の切断面に形成されるダレ、バリ等がローラー本体16の内周側に配置されるようにすることが好ましい。
すなわち、ローラー本体16(搬送ローラー31)は、例えば図21(a),(b)に示すような抜き加工によって型抜きされた金属板60を母材として形成される。つまり、ローラー本体16の母材である金属板60は、図21(a)に示す雄型131に対向する上面C2が外周面となる円筒状に曲げ加工されている。そして、一対の端面61a,61bが対向して突き合わされた継ぎ目80が形成される。
そのため、抜き工程において図21(b)に示すように型抜きされた金属板60に、ダレsd、せん断面sp、破断面bs、バリ(図示略)が形成された場合でも、比較的滑らかなダレsdが形成された上面C2を、ローラー本体16の外周側にすることが好ましい。言い換えれば、バリや破断面bsに連続する金属板60の下面C1をローラー本体16の内周側にすることが好ましい。
【0093】
これにより、金属板60の一対の端面61a,61bを突き合わせて継ぎ目80を有するローラー本体16を形成する際に、バリや破断面bsの凹凸が障害となって継ぎ目80が開くことを防止できる。
したがって、ローラー本体16の継ぎ目80の精度を向上させ、高い搬送精度が得られる搬送ローラー15を提供することができる。また、バリがローラー本体16の内周面側になり、ローラー本体16の外周面から突出することを防止でき、バリ取り工程を省略して生産性を向上させることができる。
【0094】
また、図15に示した展開係合部の構成の他に、図22(a)〜(c)に示すように、展開係合部を金属板60の両端部に形成することなく、その幅方向(曲げ方向)における中心線の近傍に形成することもできる。すなわち、図22(a)に示すように端部に細長い矩形状の切欠からなる展開係合部76dを形成することで、図6に示した係合部73を形成することができる。また、図22(b)に示すようなT字状の切欠からなる展開係合部76eを形成することで、図13に示した係合部74を形成することができ、さらに、図22(c)に示すような略T字状の切欠からなる展開係合部76fを形成することで、図14に示した係合部75を形成することができる。
このように展開形成部76d〜76fを曲げ方向における中心線の近傍に形成すれば、これら展開形成部76d〜76fから得られる係合部73〜75を、より精度良く形成することができる。
【0095】
また、本実施形態に係る搬送ローラー31(ローラー本体16)では、その繋ぎ目80を、円筒状の中空パイプからなるローラー本体16の中心軸と平行になるように形成したが、本発明はこれに限定されることなく、例えば基材となる金属板60の一対の端部間に形成される繋ぎ目を、円筒状パイプ(ローラー本体)の外周面上における、該円筒状パイプの中心軸に平行な直線上において、該直線に対して線分で重なることなく、一つあるいは複数の点でのみ重なるように形成してもよい。
【0096】
具体的には、図23(a)に示すように繋ぎ目81として、ローラー本体16の中心軸16aに平行となることなくこれに交差するように、ローラー本体16の外周面をその周方向に延びつつ、ローラー本体16の一端から他端にかけて延在するように形成してもよい。このように繋ぎ目81を形成するには、基材となる金属板として、先に示したような細長い矩形状の金属板60でなく、図23(b)に示すように細長い平行四辺形の金属板60aを用い、符号16bで示す直線が中心軸となるようにプレス加工する。これにより、図23(a)に示したローラー本体16が得られ、繋ぎ目81が中心軸16aに対して非平行となる。
【0097】
なお、図23(a)に示したローラー本体16では、その繋ぎ目81が、ローラー本体16の一端から他端にかけて、その周面を一周未満しか回らないように形成している。これは、金属板60aのプレス加工を容易にするためである。ただし、図23(c)に示すように繋ぎ目82が、ローラー本体16の一端から他端にかけて、その周面を一周以上回るように、すなわち螺旋状に回るように形成してもよい。その場合には、基材となる金属板として、図23(b)に示した細長い平行四辺形の金属板60aにおける、角度θをより鋭角にすればよい。
【0098】
このように繋ぎ目を、円筒状パイプ(ローラー本体16)の中心軸に平行な直線に対して線分で重なることなく、一つあるいは複数の点でのみ重なるように形成すれば、このローラー本体16を有してなる搬送ローラー31は、従動ローラーと協働して用紙Pを搬送する際、つまり紙送りをする際、用紙Pの搬送速度が一定になり、搬送ムラがより確実に防止されたものとなる。
【0099】
すなわち、図24に示すように搬送ローラー31が紙送りの際に用紙Pと接する箇所は、基本的にはその外周面上の直線L、つまり中心軸16aと平行な直線となる。したがって、先に示したように搬送ローラー31(ローラー本体16)の繋ぎ目80がローラー本体16の中心軸16aと平行である場合、この搬送ローラー31はその繋ぎ目80全体が一時的(瞬間的)に用紙Pに接することになる。すると、本実施形態の搬送ローラー31では前述したようにその繋ぎ目80に起因して溝が形成されていないため、問題にはならないものの、仮に繋ぎ目80に起因して溝が形成されていると、この溝が一時的にかつ同時に用紙Pに接し、したがって用紙Pの全幅が一時的に繋ぎ目80に起因する溝に接することになる。その結果、この溝では搬送ローラー31の他の外周面に比べて凹みがあり、用紙Pに対する接触抵抗が小となっているため、用紙Pの搬送速度が一時的に低下し、搬送ムラを生じてしまう。
【0100】
しかして、図23(a)、(c)等に示したように繋ぎ目を形成すれば、仮にこれら繋ぎ目に起因して溝が形成されたとしても、この溝が紙送りの際に同時に用紙Pに接触する箇所が、一つあるいは複数の点のみとなる。したがって、搬送ローラー31の他の面(線)が当たるときに比べほとんど接触抵抗に変化がなく、これにより、用紙Pの搬送速度が一定になり、搬送ムラが防止されるようになる。
【0101】
また、円筒状の中空パイプからなる搬送ローラー31(ローラー本体16)の繋ぎ目については、前述した例以外にも、例えば図25(a)に示すように、ローラー本体16の中心軸と平行な直線部85aとこれに直交する直線部85bとからなる、矩形波状の折曲部85を有して形成されていてもよい。このような折曲部85を有してなる繋ぎ目にあっても、この繋ぎ目に起因して仮に溝が形成された場合に、この溝が紙送りの際に用紙Pの幅全体に同時に接触することがないため、用紙Pの搬送速度がほぼ一定になり、搬送ムラが防止される。
【0102】
また、この折曲部85については、図25(b)に示すようにローラー本体16の長さ全体に亘って形成されていてもよく、図25(c)に示すように、その中央部を除く両端部に選択的に形成されていてもよい。図25(c)に示したように折曲部85を両端部にのみ形成する場合には、これら折曲部85間はローラー本体16の中心軸と平行な中央直線部86となる。ただし、図示しないものの、折曲部85間の中央直線部を、図23(a)に示したように中心軸16aと非平行となる斜め線に形成してもよい。
また、このように折曲部85を両端部にのみ形成し、その間の中央部については中央直線部86とした場合、先に示した高摩擦層50の形成領域を中央部直線部86に対応させるのが好ましい。
【0103】
繋ぎ目に折曲部85を形成し、したがってこの折曲部85を凹凸による嵌合部にすると、これら折曲部85(嵌合部)では設計通りに嵌合させ、凸部の先端とこれに対応する凹部との間を隙間なく近接させる(突き合わせる)のが難しくなる。したがって、ローラー本体16の全長に亘って折曲部85を形成すると、ローラー本体16に歪みや捩れ等が生じ易くなる。そこで、図25(c)に示したように折曲部85を両端部にのみ形成すれば、このような歪みや捩れ等が生じるのを抑えることができる。また、特に用紙Pに直接接する領域となる高摩擦層50に対応する中央部を、折曲部85とすることなく中央直線部86とすることにより、用紙Pに直接接する領域に歪みや捩れ等が生じるのを確実に防止することができる。
【0104】
また、図25(b)に示したように、折曲部85をローラー本体16の長さ全体に亘って形成した場合、図26(a)に示すようにこの折曲部85からなる繋ぎ目87を、直線部85bからなる複数の交差部87aと、該交差部87aの一方の側の端部間を結ぶ第1直線部87bと、他方の側の端部間を結ぶ第2直線部87cとからなるように形成してもよい。ここで、第1直線部87bおよび第2直線部87cはローラー本体16の中心軸に略平行となるように形成し、交差部87aはこれら第1直線部87bおよび第2直線部87cと直交するように、つまりローラー本体16の中心軸に直交するように形成する。また、第2直線部87cは第1直線部87bより短く形成する。
【0105】
このような構成の繋ぎ目87を形成する場合、特に、第2直線部87cにおいて互いに対向する一対の端部間の距離d3を、第1直線部87bにおいて互いに対向する一対の端部間の距離d4より長く形成するのが好ましい。なお、ここでいう一対の端部間の距離d3、d4は、いずれもローラー本体16における外周面に形成される隙間における端部間の距離とする。
【0106】
このようにすれば、ローラー本体16の、円筒状中空パイプとしての形状や寸法の精度をより高くすることができ、したがって、ローラー本体16の変形等に起因する搬送ムラを防止することができる。すなわち、このようなローラー本体16を形成するための基材となる金属板では、第2直線部87cを構成する一方の端部は、隣り合う一対の交差部87a、87aとこれらの端部間を結ぶ第2直線部87cとを外形とする凸片87dとなる。したがって、金属板をプレス加工してこの凸片87dを対向する端部に近接させようとした際、図26(b)中に二点鎖線で示すように、この凸片87dの先端側が円周面状に十分に曲げられずに、対向する端部に対して寸法t1分浮いた状態になり、結果としてこの第2直線部87cおいて段差を形成してしまう。すると、この段差に起因して、得られるローラー本体16には変形等が生じ易くなり、形状や寸法について良好な精度が得られにくくなってしまう。
【0107】
そこで、この第2直線部87cにおける端部間の距離d3を、この第2直線部87cより長く形成されている第1直線部87bにおける端部間の距離d4よりも長くすることにより、図26(b)中に実線で示すように、凸片87dの先端側が浮く分の寸法t2が前述のt1に比べて少なく(小さく)なり、これによって第2直線部87cにおいて段差が形成されるのを抑えることができる。
なお、図26(b)では、理解を容易にするため寸法t2も大きく記しているが、実際にはこの寸法t2はほとんど零に近くなり、実質的な段差がなくなるようになる。つまり、このように第2直線部87cにおいて段差が形成されるのを抑えることにより、この段差に起因するローラー本体16の変形等を抑え、形状や寸法についての精度を高めることができるのである。
【0108】
また、図25(c)に示したように、折曲部85をローラー本体16の両端部にのみ形成した場合、図27に示すようにこの折曲部85における交差部87a(直線部85b)において互いに対向する一対の端部間の距離d5を、中央直線部86において互いに対向する一対の端部間の距離d6より短く形成するのが好ましい。
このようにすれば、距離d5が相対的に短くなって交差部87aにおける端部間の隙間が非常に狭くなるため、ローラー本体16を形成するための基材となる金属板をプレス加工した際、一方の端部と他方の端部との間の長さ方向(軸方向)でのずれが、交差部87aを構成する一対の対向する端部によって規制されるようになる。したがって、得られるローラー本体16(搬送ローラー15)に歪みや捩れ等が生じにくくなり、このような歪みや捩れ等に起因する搬送ムラが防止される。
【0109】
なお、図25(c)に示したように、折曲部85をローラー本体16の両端部にのみ形成した場合には、図27に示すようにこの折曲部85の凸片87dを構成する第2直線部87cにおいて互いに対向する一対の端部間の距離d7を、中央直線部86において互いに対向する一対の端部間の距離d6より短く形成してもよく、また、長く形成してもよい。
【0110】
距離d7を距離d6より短く形成すれば、繋ぎ目の全長を見た場合に、対向する一対の端部間にできる隙間がより均一化し易くなり、これによって得られるローラー本体16の形状や寸法についての精度がより高くなる。すなわち、中央直線部86の長さは折曲部85における第2直線部87cの長さより長くなり、したがって中央直線部86における一対の端部間の方が第2直線部87cに比べて精度良く近接させることができる。よって、相対的に端部間の精度をより良好にすることができる中央直線部86の方の一対の端部間の距離を、第2直線部87cに比べて長くしてその隙間を大きくしても、この隙間を十分均一にすることが可能になり、したがって得られるローラー本体16の歪みや捩れ等に起因する搬送ムラが防止される。
【0111】
一方、距離d7を距離d6より長く形成すれば、図26(b)に示したように凸片87dの先端側が浮く分の寸法t2が少なく(小さく)なり、これによって第2直線部87cにおいて段差が形成されるのが抑えられる。よって、このように第2直線部87cにおいて段差が形成されるのが抑えられることにより、この段差に起因するローラー本体16の変形等が抑えられ、形状や寸法についての精度が高めることによって搬送ムラが防止される。
【0112】
また、前記実施形態では本発明に係る搬送ローラーを、搬送ローラー機構19における搬送ローラー31に適用する構成としたが、排紙ローラー41や排紙ギザローラー42に適用する構成とすることもでき、さらには、搬送ローラー機構19における従動ローラー32(ローラー32a)に適用することもできる。
【符号の説明】
【0113】
1…プリンター(印刷装置)、 16…ローラー本体(円筒部材)、 31…搬送ローラー、 41…排紙ローラー(処理装置)、 60…金属板、 73、74、75…係合部(位置決め部)、 86…中央直線部、 106…上型(プレス金型)、 106m、106n…押圧ピン(軸状部材)、 107…下型(プレス金型)、 107m、107n…押圧ピン(軸状部材)、 120…矯正ローラー、 120A…矯正ローラー(第1矯正ローラー)、 120B…矯正ローラー(第2矯正ローラー)
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ローラーの製造方法及び搬送ユニット並びに印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、シート状の記録媒体上に情報を記録する印刷装置が用いられており、この印刷装置には記録媒体を搬送する搬送ユニットが設けられている。この搬送ユニットは、回転することで記録媒体を搬送する搬送ローラーを有している。
搬送ローラーには、搬送ローラーを回転させるため又は搬送ローラーの回転により他の機器を駆動させるためのギア等の駆動部材が設けられている。
【0003】
従来、搬送ローラーには中実の棒状部材が一般的に使用されているが、中実の材料は重量およびコストが嵩むという課題があるため、特許文献1には、金属板を曲げ加工して円筒状に成形する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−289496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような従来技術には、以下のような問題が存在する。
金属板を円筒状に曲げ加工した場合には、中立面よりも外周面側は引張力が作用するが、繋ぎ目の存在により、周方向については繋ぎ目と逆側の位置(軸中心を挟んで対向する位置)を中心として収縮する方向の力が作用し、長さ方向についても中央部を中心として収縮する方向の力が作用する。その結果、搬送ローラーには、長さ方向の中央部において外側に繋ぎ目が向いて膨出するように反りが発生する。そのため、搬送ローラーを両端部で支持した場合に振れが生じて同心度が低下し、非常に高い精度を必要とする搬送ローラーにおいて搬送特性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、搬送特性の低下を抑制できる搬送ローラーの製造方法及び搬送ユニット並びに印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明は、以下の構成を採用している。
本発明の搬送ローラーの製造方法は、記録媒体を搬送する搬送ローラーの製造方法であって、板材を曲げて略円筒状の円筒部材を形成するとともに、前記円筒部材の端部に切り欠き形状を有する位置決め部を形成する第1工程と、前記円筒部材の長さ方向で前記位置決め部よりも中央側で前記円筒部材を支持した状態で前記円筒部材の所定箇所に曲げ荷重を付与して、前記第1工程で前記円筒部材に生じた軸曲がりを矯正する第2工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
従って、本発明の搬送ローラーの製造方法では、板材を曲げて円筒部材を形成した際に生じた反り・曲がりを、円筒部材の所定箇所に曲げ荷重を付与することにより矯正できるため、振れ量を小さくすることが可能になり、搬送特性の低下を抑制することができる。特に、本発明では、形成時に大きな応力が残留しやすい端部の位置決め部よりも中央側で円筒部材を支持するため、精度よく円筒部材に曲げ荷重を付与できる。
【0009】
また、本発明では、前記円筒部材における前記記録媒体に当接して搬送する搬送領域以外の位置で、前記円筒部材を支持することが好ましい。
これにより、本発明では、円筒部材に曲げ荷重を付与した際に支持部において加わる荷重で搬送領域に生じた押圧痕等により、記録媒体に対する搬送特性が低下することを防止できる。
【0010】
また、本発明では、前記円筒部材における前記記録媒体に当接して搬送する搬送領域以外の位置に前記曲げ荷重を付与することが好ましい。
これにより、本発明では、円筒部材の搬送領域に曲げ荷重を付与した際に生じた押圧痕等により、記録媒体に対する搬送特性が低下することを防止できる。
【0011】
また、上記の発明における前記第2工程では、前記板材を曲げた一対の端部の繋ぎ目に前記曲げ荷重を付与する構成を好適に採用できる。
これにより、本発明では、長さ方向の中央部において外側に繋ぎ目が向いて膨出するように円筒部材に反り(曲がり)が発生した場合に、効果的に曲がりを矯正することが可能になる。
【0012】
上記の前記第2工程としては、前記円筒部材の所定箇所に曲げ荷重を付与して前記第1工程で前記円筒部材に生じた軸曲がりの方向とは逆方向の曲がりを形成する曲がり形成工程と、前記曲がり形成工程で前記曲げ荷重を付与した方向とは逆方向に前記円筒部材の所定箇所に曲げ荷重を付与する逆荷重付与工程とを含む手順を好適に採用できる。
これにより、本発明では、円筒部材を形成した際の残留応力を一旦緩和できるため、一方向のみに曲げ荷重を付与する場合と比較して、矯正後の曲がりを小さくすることが可能になる。
【0013】
上記発明における前記円筒部材の所定箇所はとしては、前記円筒部材の長さ方向に間隔をあけて配置した複数の第1押圧位置と、前記長さ方向で前記複数の第1押圧位置の間に位置し、且つ前記円筒部材の径方向で前記第1押圧位置と対向する複数の第2押圧位置とを含む構成も好適に採用できる。
これにより、本発明では、円筒部材に対する押圧位置が多くなることで、より細かな矯正が可能になり、円筒部材の振れ量を一層小さくすることができる。
【0014】
また、本発明では、前記第1工程では、プレス金型を用いて前記板材を曲げて前記円筒部材を形成し、前記第2工程では、前記プレス金型に進退自在に設けた軸状部材により前記円筒部材の所定箇所に曲げ荷重を付与する構成も好適に採用できる。
これにより、本発明では、曲げ荷重を付与する装置を別途設けたり、円筒部材をこの荷重を付与する装置に移送する必要がなくなり、生産性の向上及び装置の小型化・低価格化に寄与できる。
【0015】
また、本発明では、前記第2工程後に、前記円筒部材の表面を研磨する第3工程を有する手順も好適に採用できる。
これにより、本発明では、第2工程後にも残留する振れを小さくすることが可能となり、円筒部材の振れ量を一層小さくすることができる。
【0016】
そして、本発明の搬送ユニットは、先に記載の製造方法により製造された搬送ローラーを備えたことを特徴とするものである。
また、本発明の印刷装置は、先に記載の製造方法により製造された搬送ローラーを備えたことを特徴とするものである。
これにより、本発明では、振れ量が小さい搬送ローラーを備えることから、高い搬送特性を有する搬送ユニット及び印刷装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るプリンターの側断面図である。
【図2】搬送部3及び排紙部4の構成を示す概略図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のA矢視図である。
【図3】搬送ローラー機構の概略構成図である。
【図4】ローラー本体の外観斜視図である。
【図5】ローラー本体の基材としての金属板を示す平面図である。
【図6】(a)はローラー本体の要部斜視図、(b)は要部側断面図である。
【図7】(a)〜(c)は金属板のプレス加工を説明するための工程図である。
【図8】(a)〜(c)は金属板のプレス加工を説明するための工程図である。
【図9】(a)〜(c)はローラー本体の矯正工程を説明するための工程図である。
【図10】別形態のローラー本体の矯正工程を説明するための図である。
【図11】別形態のローラー本体の矯正工程を説明するための図である。
【図12】(a)〜(c)は繋ぎ目の他の形状を説明するための図である。
【図13】(a)はローラー本体の要部斜視図、(b)は側面図である。
【図14】(a)はローラー本体の要部斜視図、(b)は側面図である。
【図15】(a)〜(c)は展開係合部を示す金属板の要部平面図である。
【図16】ローラー本体の繋ぎ目とその近傍の要部拡大図である。
【図17】(a)は搬送ローラーを示す平面図、(b)繋ぎ目を示す断面図、(c)は開口を示す断面図、(d)は開口の変形例を示す図である。
【図18】搬送ローラー31の構成例を示す概略図である。
【図19】搬送ローラー31の構成例を示す概略図である。
【図20】金属板60の一対の端面を調整した後の断面図である。
【図21】実施形態に係る抜き工程の工程断面図である。
【図22】(a)〜(c)は展開係合部を示す金属板の要部平面図である。
【図23】(a)、(c)は繋ぎ目を示す図、(b)は金属板の平面図である。
【図24】紙送りの際の搬送ローラーと用紙との関係を示す斜視図である。
【図25】(a)〜(c)は繋ぎ目の形状を説明するための図である。
【図26】(a)は繋ぎ目の形状説明図、(b)は作用説明図である。
【図27】(a)〜(c)は繋ぎ目の形状を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の搬送ローラーの製造方法及び搬送ユニット並びに印刷装置の実施の形態を、図1ないし図27を参照して説明する。
なお、以下の実施の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0019】
まず、本実施形態に係る搬送ローラーが設けられるプリンター(印刷装置)1の構成を、図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るプリンター1の全体構成図である。
プリンター1は、記録媒体である紙等にインクを噴射し、文字や画像等の情報を記録する印刷装置である。プリンター1は、給紙部2と、搬送部(搬送ユニット)3と、排紙部4と、ヘッド部5と、制御部CONTとを有している。
【0020】
給紙部2は、記録媒体である複数枚の記録紙(記録媒体、シート材)Pを保持すると共に、記録紙Pを搬送部3に向けて供給するものであって、給紙トレー21と、給紙ローラー22とを有している。
給紙トレー21は、複数枚の記録紙Pを保持するものであり、水平面との間に所定の角度(45°程度)を形成して設けられている。なお、記録紙Pとしては、インクによる印刷が可能なシート状の記録媒体が用いられ、普通紙、コート紙、OHP(オーバーヘッドプロジェクター)用シート、光沢紙及び光沢フィルム等が用いられる。
【0021】
給紙ローラー22は、回転することで記録紙Pを搬送部3に向けて供給するローラーであり、給紙トレー21の搬送部3側に設けられている。なお、給紙ローラー22の外周面と対向する位置には不図示の分離パッドが設けられており、該分離パッドと給紙ローラー22とが協働して記録紙Pを一枚ずつ搬送部3に供給することができる。
【0022】
搬送部3は、給紙部2から供給された記録紙Pを排紙部4に向けて搬送するものであり、且つ記録紙Pに対する印刷動作が行われる箇所である。搬送部3は、搬送ローラー(円筒軸)31と、従動ローラー32と、プラテン33と、ダイヤモンドリブ34と、駆動部6(図2参照)とを有している。
搬送ローラー31は、回転することで記録紙Pを所定の印刷位置に正確に搬送するためのローラーであって、水平面内且つ記録紙Pの搬送方向と直交する方向で延在し、略円筒状に形成された円筒軸である。搬送ローラー31は、搬送部3に設けられ略U字型の一対の軸受(図示せず)に回転自在に軸支され、駆動部6の駆動により回転する。なお、搬送ローラー31の詳細については後述する。
【0023】
従動ローラー32は、略円柱状の部材であって、搬送ローラー31の軸方向に沿って間隔を空けて複数配置されている。また、従動ローラー32は、後述する搬送ローラー31の高摩擦層50(図3参照)に対向する位置に回転自在に設けられている。従動ローラー32には不図示の付勢バネが設けられており、この付勢バネの付勢力によって、従動ローラー32は搬送ローラー31の高摩擦層50に付勢されて接触している。このため、従動ローラー32は、搬送ローラー31の回転動作に従動して回転する。なお、従動ローラー32の外周面には、高摩擦層50との摺動による摩耗・損傷を緩和するため、例えばフッ素樹脂塗装等の低摩耗処理が施されている。
【0024】
プラテン33は、ヘッド部5による記録紙Pへの印刷を行うときに、記録紙Pを下方から支持する箇所であり、水平面に略平行する上面を有している。
ダイヤモンドリブ34は、プラテン33の上面から上方に向けて突出する突部であり、搬送ローラー31の軸方向に沿って間隔を空けて複数配置されている。また、ダイヤモンドリブ34の頂面は、水平面と略平行に形成されており、この頂面によって印刷時の記録紙Pが下方から支持される。
【0025】
排紙部4は、搬送部3から印刷後の記録紙Pを排出するものであって、排紙ローラー41と、排紙ギザローラー42とを有している。排紙ローラー41と排紙ギザローラー42とは、互いに相反する方向で回転でき、この回転によって記録紙Pを引き出して排出する。
【0026】
ヘッド部5は、搬送部3に載置されている記録紙Pに対してインクを噴射するものであって、噴射ヘッド51と、キャリッジ52とを有している。
噴射ヘッド51は、制御部CONTの指示に従いインクを噴射する機器であって、その不図示の噴射口はダイヤモンドリブ34の頂面に対向して設けられている。キャリッジ52は、その下方に噴射ヘッド51を保持するものであって、搬送ローラー31の軸方向で往復移動自在に設けられている。また、キャリッジ52には、制御部CONTの支持に従い、キャリッジ52を往復移動させる不図示の駆動部が連結されている。
【0027】
次に、搬送ローラー31を回転駆動させる構成について、図2を参照して説明する。
図2は、搬送部3及び排紙部4の構成を示す概略図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のA矢視図である。
【0028】
上述したように、搬送部3は駆動部6を有している。駆動部6は、搬送ローラー31を回転駆動させるものであって、モーター61と、ピニオンギア62とを有している。
モーター61は、制御部CONTの指示に従い搬送ローラー31を回転させる電動機である。すなわち、制御部CONTがモーター61を制御して駆動させ、搬送ローラー31の回転及び記録紙Pの正確な搬送を実現している。ピニオンギア62は、モーター61の出力軸に一体的に接続されているギアである。
【0029】
搬送ローラー31には、長さ方向(軸方向)で記録紙Pに当接して搬送する搬送領域CA(図3参照)よりも一端側(図2(a)中、左側)に第1駆動ギア35と、第2駆動ギア36とが設けられ、搬送領域CAよりも他端側(図2(a)中、左側)に第3駆動ギア37が設けられている。
【0030】
第1駆動ギア35は、搬送ローラー31を回転させるためのギアであって、搬送ローラー31における駆動部6設置側の端部に、圧入によって一体的に接続されている。また、第1駆動ギア35はピニオンギア62と互いに噛合しており、ピニオンギア62及び第1駆動ギア35を介してモーター61の駆動力が搬送ローラー31に伝達され、搬送ローラー31が回転する構成となっている。
【0031】
第2駆動ギア36は、モーター61の駆動力を処理装置としての排紙ローラー41に伝達するためのギアであって、第1駆動ギア35よりも小さい径を有し、第1駆動ギア35と隣接して同軸で配置されている。
第3駆動ギア37は、搬送ローラー31の回転駆動力を他の機器38、例えば噴射ヘッド51のノズルを覆って(キャッピング)吸引するためのポンプに伝達するものである。より詳細には、第3駆動ギア37を介して回転駆動力が伝達される機器としては、搬送ローラー31が記録紙Pを搬送する際には非作動となる機器が設定されている。
なお、第2駆動ギア36及び第3駆動ギア37と搬送ローラー31との接続方法は後述する。
【0032】
排紙ローラー41における駆動部6側の端部には、排紙駆動ギア43が一体的に設けられている。また、排紙駆動ギア43と第2駆動ギア36との間には、中間ギア44が設けられ、中間ギア44は第2駆動ギア36及び排紙駆動ギア43のそれぞれと噛合している。すなわち、第2駆動ギア36、中間ギア44及び排紙駆動ギア43を介して、モーター61の駆動力が排紙ローラー41に伝達され、排紙ローラー41が回転することにより、印刷に関する処理として排紙処理が行われる構成となっている。
【0033】
図3は、搬送ローラー31及び従動ローラー32からなる搬送ローラー機構19の概略構成を示す図である。
搬送ローラー31は、亜鉛メッキ鋼板やステンレス板等の金属板がプレス加工されて円筒状に形成されたローラー本体16と、このローラー本体16の表面に設けられた高摩擦層50とを備えてなるものである。高摩擦層50は、プリンター1で印刷可能な最大幅の記録紙Pに対する搬送領域CAと同等の長さで形成されており、例えばエポキシ系樹脂やポリエステル系樹脂からなる樹脂層と、該樹脂層表面に分散して配置されるセラミックス粒子とを有している。このセラミックス粒子には、酸化アルミニウム(アルミナ)、炭化珪素又は二酸化珪素等が用いられる。セラミック粒子は破砕処理によって粒径が調整されており、また、破砕処理を用いることでセラミック粒子は比較的鋭角な端部を有する形状となっている。
【0034】
また、この搬送ローラー31は、その両端部が軸受け70に回転可能に保持されている。また、前記ローラー本体(円筒軸)16は、金属板がプレス加工され、対向する一対の端部(端面)が互いに近接させられ、あるいは当接させられて円筒状に形成されたものである。したがって、このローラー本体16は、前記一対の端部間に繋ぎ目が形成されているが、本実施形態では、この繋ぎ目が搬送領域CAの近傍と、両端部において異なる構成となっている。
【0035】
具体的には、図4に示すように、本実施形態における繋ぎ目80は、ローラー本体16における搬送領域CAを含む中央部分に形成される中央直線部86と、ローラー本体16の両端部に形成される屈曲部85とから構成される。中央直線部86には、上述した高摩擦層50が形成される。中央直線部86は、図5に示すように、平面視略矩形の金属板60における長さ方向中央部に位置する一対の端部(端面)61a、61bが曲げ加工で円筒状に成形されたときに接合することで形成される。また、屈曲部85は、金属板60における長さ方向両端部に位置し、端面61aから幅方向(円筒状に成形されたときには中心軸16a周りの周方向)に突出する矩形状の突部61cと、端面61bを幅方向(円筒状に成形されたときには中心軸16a周りの周方向)に欠落させた矩形状の凹部61dとが中心軸16a方向に沿って同一幅で同一ピッチで形成され、図4に示すように、円筒状に成形されたときに嵌合する凹凸部110によって、中心軸16aと交差する方向に延びる交差部85a及び交差部85bを含んで九十九折り状に形成される。
【0036】
また、図6(a)に示すように、ローラー本体16(搬送ローラー31)の一端側には、図2に示した第2駆動ギア36と位置決めした状態で連結するためのDカット状の切り欠き形状を有する係合部(位置決め部)73が形成されている。この係合部73は、円筒状のローラー本体16(搬送ローラー31)の端部に形成されたもので、図6(b)に示すようにその一部が平面視矩形状に切り欠かれて開口73aを形成し、これによって図6(c)に示すように端部側面の外形が見掛け上D字状に形成されたものである。
したがって、歯車等の連結部品(図示せず)を、この見掛け上D字状に形成された係合部73に係合させることにより、該連結部品をローラー本体16に対し空回りさせることなく、取り付けることができる。また、この係合部73については、中空パイプ(ローラー本体16)の内部孔に通じる溝状の開口73aが形成されていることから、この開口73aを利用することによっても、連結部品を現像ローラ510に対し空回りさせることなく取り付けることができる。具体的には、連結部品に凸部を形成しておき、この凸部を前記開口73aに嵌合させることにより、空回りを防止する構成とすることもできる。
【0037】
なお、図6(a)では図示していないが、ローラー本体16(搬送ローラー31)の他端側には、同様に係合部73が形成されており、図6(b)に示すように、この係合部73に第3駆動ギア37を係合させることによって位置決めして固定することができる。
なお、図6(a)、(b)では繋ぎ目80の図示を省略している。
【0038】
ここで、搬送ローラー31についての詳細な説明として、その製造方法について図5、図7乃至図11を参照して説明する。
搬送ローラ31を製造する工程は、ローラー本体16の基材を曲げて円筒状に形成するプレス工程(第1工程)と、プレス工程で形成したローラー本体16の両端に係合部73を形成する工程(第1工程)と、プレス工程(及び係合孔73を形成する工程)で形成したローラー本体16に生じた軸曲がりを矯正する矯正工程(第2工程)と、を含んでいる。
【0039】
なお、本実施形態では、上記工程に加えて、軸曲がりを矯正したローラー本体16の表面を研磨するセンタレス加工工程(第3工程)も付加している。
以下、各工程について説明する。
【0040】
(プレス工程)
搬送ローラー31を製造するには、まず、矩形板状または帯状の大型金属板を用意する。この大型金属板としては、例えば厚さ1mm程度の亜鉛メッキ鋼板が用いられる。続いて、この大型金属板をプレス加工することで切断処理し、図5に示すように前記ローラー本体16に対応する大きさの細長い略矩形板状の金属板60、すなわちローラー本体16の基材となる金属板60を形成する。
【0041】
ただし、この大型金属板をプレス加工するに際しては、前記の切断処理と同時に、前述した一対の端部間に形成される繋ぎ目において屈曲部を形成するべく、対向する一対の長辺となる端部61a、61bの、長さ方向における両端部に、矩形波状の凹凸部110を形成する。また、各長辺(端部)においては、その両端部に形成した凹凸部110間に、直線部111を形成する。
【0042】
なお、これら一対の長辺(端部61a、61b)は、プレス加工によって近接させられ、あるいは当接させられるため、当然ながら互いに対応する(対向する)箇所間では、一方の長辺の凹凸部110が凸部となる場合に、他方の長辺の凹凸部110では凹部となるように形成する。また、逆に一方の長辺の凹凸部110が凹部となる場合に、他方の長辺の凹凸部110では凸部となるように形成する。
【0043】
次いで、金属板60を図7(a)〜(c)、図8(a)〜(c)のプレス加工工程図に示すように円筒状(パイプ状)にプレス加工し、その両側(長辺側)の端部61a、61bを近接させ、あるいは当接させる。
すなわち、まず、図7(a)に示す雄型101と雌型102とで金属板60をプレス加工し、金属板60の両側部62a、62bを円弧状(望ましくは略1/4円弧)に曲げる。なお、図7(a)においては、各部材を分かりやすくするため、金属板60と雄型101と雌型102との間にそれぞれ間隔を開けてこれらの部材を記しているが、この間隔は実際には存在せず、金属板60と雄型101、雌型102とはそれぞれの接触部においてほぼ密着している。これは、後述する図7(b)、(c)、図8(a)〜(c)においても同様である。
【0044】
続いて、図7(a)で得られた金属板60の幅方向(曲げ方向)における中央部を、図7(b)に示す雄型103と雌型104とでプレス加工し、円弧状(望ましくは略1/4円弧)に曲げる。
次いで、図7(c)に示すように、図7(b)で得られた金属板60の内部に芯型105を配置し、図7(c)に示す上型(プレス金型)106と下型(プレス金型)107とを用いて、図8(a)〜(c)に示すようにして金属板60の両側部62a、62bの各端面(端部)61a、61bを近接させる。
【0045】
ここで、図7(c)および図8(a)〜(c)に示す芯型105の外径は、形成する円筒状の中空パイプの内径と等しくしてある。また、上型106のプレス面106cの半径と下型107のプレス面107aの半径は、それぞれ、形成する中空パイプの外径の半径と等しくしてある。また、図8(a)〜(c)に示すように上型106は左右一対の割型であり、これら割型106a、106bは、それぞれ独立して昇降可能に構成されている。
【0046】
そして、図7(c)に示す状態から、図8(a)に示すように右側の上型106aを下型107に対して相対的に下降させ(以下、同様に型の移動は相対的移動を意味する)、金属板60の一方の側をプレス加工し、略半円形状に曲げる。なお、下型107も上型106と同様左右一対の割型とし(割面107b参照)、この図8(a)に示す工程の際に、同じ側の下型を上昇させてもよい。
次いで、図8(b)に示すように、芯型106を少し(一方の側の端部61aと他方の側の端部61bとを近接させることができる程度に)下降させるとともに、他方の側の上型106bを下降させ、金属板60の他方の側をプレス加工し、略半円形状に曲げる。
【0047】
その後、図8(c)に示すように、芯型105および一対の上型106a、106bをともに下降させ、円筒状の中空パイプ(ローラー本体16)を形成する。この状態で左右両側の端部61a、61bは、当接した状態となる。すなわち、この円筒状の中空パイプにあっては、基材である金属板60の両端部61a、61bが互いに近接して当接したことにより、これら両端部61a、61b間に繋ぎ目が形成される。
【0048】
続いて、このように形成された円筒状の中空パイプ(ローラー本体16)に対して、両端に係合部73を形成する。係合部73の形成方法としては、研磨加工や切削加工、さらには上述したプレス加工等を採ることができる(プレス加工については後述する)。
【0049】
上記のプレス工程で形成されたローラー本体16は、上述したように、中立面よりも外周面側は引張力が作用し、繋ぎ目80の存在により、周方向については繋ぎ目と逆側の位置(軸中心を挟んで対向する位置)を中心として収縮する方向の力が作用し、長さ方向についても中央部を中心として収縮する方向の力が作用する。その結果、図9(a)に示すように、ローラー本体16には、長さ方向の中央部において外側に繋ぎ目80が向いて膨出するように反り(軸曲がり)が発生する(以下、この方向の軸曲がりを上曲がり、逆方向の軸曲がりを下曲がりと称する)。そのため、引き続いて行う矯正工程で、この軸曲がりを矯正する。
【0050】
(矯正工程)
本実施形態における矯正工程は、プレス工程で生じた軸曲がりの方向とは逆の方向の曲がりを一旦形成する曲がり形成工程と、この曲がり形成工程で曲げ荷重を付与した方向とは逆方向に曲げ荷重を付与する逆荷重付与工程とを有している。
以下、各工程について図9(a)〜(c)を参照して説明する。
【0051】
図9(a)に示すように、上曲がりが生じたローラー本体16に対しては、上型106に進退自在に設けた軸状部材としての押圧ピン106m、106nと、下型107に進退自在に設けた軸状部材としての押圧ピン107m、107nとにより曲げ荷重を付与する。押圧ピン106mは、上型106にローラー本体16の長さ方向の略中央を押圧する位置に設けられている。押圧ピン106nは、上型106にローラー本体16の長さ方向の両端部近傍で係合部73よりも中央側を支持・押圧する位置にそれぞれ設けられている。押圧ピン107mは、下型107にローラー本体16の長さ方向の略中央を押圧する位置に設けられている。押圧ピン107nは、下型107にローラー本体16の長さ方向の両端部近傍で係合部73よりも中央側を支持・押圧する位置にそれぞれ設けられている。
【0052】
そして、プレス工程で上曲がりが生じたローラー本体16に対しては、曲がり形成工程において、下型107に設けられた押圧ピン107nを突出させてローラー本体16の両端部近傍を下方から支持させるとともに、上型106に設けられた押圧ピン106mを突出させてローラー本体16の中央部における繋ぎ目80を上方から支持させ、さらにこれら押圧ピン107n、106mを突出させることにより、ローラー本体16を押圧して曲げ荷重を付与する。このとき、図9(b)に示すように、ローラー本体16が下曲がりとなるように、押圧ピン106mによりローラー本体16を押圧して曲げ荷重を付与する。
【0053】
続いて、逆荷重付与工程では、図9(b)に示すように、下型107に設けられた押圧ピン107mを突出させてローラー本体16の中央部を下方から支持させるとともに、上型106に設けられた押圧ピン106nを突出させてローラー本体16の両端部近傍を上方から支持させ、さらにこれら押圧ピン107m、106nを突出させることにより、ローラー本体16を押圧して曲げ荷重を付与する。
これにより、図9(c)に示すように、ローラー本体16の軸曲がりが矯正される。
【0054】
(センタレス加工工程)
次いで、本実施形態では、形成した中空パイプ(ローラー本体16)の真円度を高め、振れを少なくするべく、前記中空パイプ(ローラー本体16)の外周面を研磨するセンタレス加工工程(第3工程)を付加している。
このセンタレス研磨は、この表面の全面に亘って実施され、例えばセンタレス研磨後の表面の十点平均粗さRzが1.0μm以下とされる。
これにより、この中空パイプは、センターレス研磨加工前に比べその真円度がより良好になり、また、振れ量も小さいローラー本体16となる。
【0055】
(実施例)
上記のプレス工程で円筒形状に成形された複数のローラー本体16の軸曲がり量(反り量)は、100〜150μmであったが、曲がり形成工程で下曲がりとなったローラー本体16の軸曲がり量(反り量)は、250μm前後となった。さらに、逆荷重付与工程で逆荷重を付与することにより、ローラー本体16の軸曲がり量は、20〜50μmとなった。そして、このように軸曲がりが矯正されたローラー本体16に対してセンターレス研磨加工を行うことにより、振れ量を50〜100μmに抑えることができた。
【0056】
このようにして形成される繋ぎ目80には、図5に示した凹凸部110が嵌合したことにより、図4に示したようにローラー本体16の両端部に交差部85a、85bを有する屈曲部85が形成される。
【0057】
このようにしてローラー本体16を形成したら、このローラー本体16の表面に高摩擦層50を形成する。
この高摩擦層50の形成方法としては、乾式法及び湿式法(またはこれらを併用した方法)が採用可能であるが乾式法が好適に採用される。
【0058】
次に、前記搬送ローラー機構19を備えてなるプリンター(印刷装置)1の動作について、図1、図2を参照して説明する。
給紙ローラー22によって給紙された記録用紙Pは、搬送ローラー機構19の上流側近傍に至ると、モーター61の駆動により、搬送ローラー31と従動ローラー32との間に引き込まれ、両ローラーの駆動によって下流側に位置する噴射ヘッド51の下方に向けて定速で搬送される。
【0059】
その際、搬送ローラー31には高摩擦層50が形成されており、従動ローラー32がこの高摩擦層50に当接する位置に配置されているので、これら搬送ローラー31と従動ローラー32との間で記録用紙Pを挟持する力が大きくなり、記録用紙Pの搬送性がより良好になっている。
【0060】
そして、記録用紙Pの印刷開始端が、噴射ヘッド51の直下の所定の印刷位置に到達すると、印刷が開始される。
その後、記録用紙Pの始端が排紙部4、すなわち排紙ローラー41及び排紙ギザローラー42に至ると、これらに挟持された記録用紙Pの排紙動作が開始される。
【0061】
ここで、排紙ローラー41の回転駆動は、第1駆動ギア35を介して搬送ローラー31に伝達されたモーター61の駆動力が第2駆動ギア36を介して伝達され、搬送ローラー31の駆動による記録用紙Pの搬送処理の間にも行われるが、これら第1駆動ギア35及び第2駆動ギア36がいずれも搬送ローラー31の搬送領域CAよりも一端側に配置されているため、搬送ローラー31(ローラー本体16)に加わるトルクは搬送領域CAには作用しない。そのため、搬送領域CAにおける繋ぎ目80(中央直線部86)にずれが生じず、従って、記録用紙Pが斜めに搬送されてしまう等の不具合を生じさせず、搬送精度、ひいては印刷精度が低下することを抑制できる。
【0062】
一方、第1駆動ギア35を介して搬送ローラー31に伝達されたモーター61の駆動力は、第3駆動ギア37を介して他の機器38に伝達される。この場合、第3駆動ギア37は、搬送領域CAを挟んで第1駆動ギア35と逆側である搬送ローラー31の他端側に配置されているため、搬送領域CAには他の機器38の動作に応じたトルクが加わることになるが、第3駆動ギア37は搬送ローラー31が記録用紙Pを搬送する際には非作動となる機器38に連結されているため、機器38の作動時には記録用紙Pの搬送は行われず、従って搬送精度、ひいては印刷精度が低下することはない。さらに、本実施形態では、送領域CAにおける搬送ローラー31の繋ぎ目80が中央直線部86であり、繋ぎ目80の長さが最小限に抑えられていることから、繋ぎ目80に起因する搬送精度及び印刷精度の低下を一層抑制することができる。
【0063】
以上説明したように、本実施の形態では、プレス工程で生じた反りを矯正工程で矯正するため、搬送ローラー31を回転させたときの振れを小さくすることが可能になり、搬送特性の低下を抑制することができる。特に、本実施形態では、ローラー本体16の繋ぎ目が外側に膨出するように反りが生じたものに対して長さ方向の中央部で繋ぎ目に曲げ荷重を付与しているため、効果的に軸曲がりを矯正することができる。さらに、本実形態では、形成時に大きな応力が残留しやすい端部の係合部73よりも中央側でローラー本体16を支持するため、精度よくローラー本体16に曲げ荷重を付与でき、効果的にローラー本体16の軸曲がりを矯正することが可能である。
【0064】
また、本実施形態では、プレス工程で生じた軸曲がりを曲がり形成工程で逆方向の曲がりを形成した後に、逆荷重付与工程で逆荷重を付与することにより、プレス工程でローラー本体16に生じた残留応力を一旦緩和できるため、一方向のみに曲げ荷重を付与する場合と比較して、矯正後の曲がりを小さくすることが可能になる。
加えて、本実施形態では、ローラー本体16の軸曲がりの矯正を、上型106、下型107に設けた押圧ピン106m、106n、107m、107nを用いて行うため、ローラー本体16に曲げ荷重を付与する装置を別途設けたり、ローラー本体16に荷重を付与する装置に移送する必要がなくなり、生産性の向上及び装置の小型化・低価格化に寄与できる。
【0065】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0066】
例えば、上記実施形態では、矯正工程が曲がり形成工程及び逆荷重付与工程を有する構成を例示したが、これに限定されるものではなく、図9(a)に示した状態から押圧ピン106m、107nにより、ローラー本体16の軸曲がりをゼロとする量で曲げ荷重を付与して図9(c)に示す状態としてもよい。
この場合でも、係合部73よりも中央側でローラー本体16を支持することで、プレス工程で円筒形状に成形された複数のローラー本体16の軸曲がり量(反り量)を100〜150μmから、30〜140μmに抑えることができ、さらに、このように軸曲がりが矯正されたローラー本体16に対してセンターレス研磨加工を行うことにより、振れ量を20〜80μmに抑えることができる。
【0067】
また、上記実施形態では、押圧ピン106m、106nと押圧ピン107m、107nとをそれぞれ対向配置し、一方側でローラー本体16の両端部を押圧し、他方側でローラー本体16の中央部を押圧する構成としたが、これに限られず、例えば図10に示すように、下型107にローラー本体16の長さ方向に所定間隔をあけた位置(第1押圧位置)で係合部73よりも中央側に複数の押圧ピン107pを設け、上型106に押圧ピン107pの間に位置し、且つローラー本体16の径方向で押圧ピン107pと対向する位置(第2押圧位置)で係合部73よりも中央側に複数の押圧ピン106pを設ける構成としてもよい。
これにより、本実施形態では、ローラー本体16に対する押圧位置が多くなることで、より細かな矯正が可能になり、ローラー本体16の振れ量を一層小さくすることができる。
【0068】
また、上記実施形態では、ローラー本体16における搬送領域CAを含む中央部も押圧する構成としたが、例えば、図11に示すように、ローラー本体16において高摩擦層50を含む搬送領域CAと離間した位置に押圧ピン106p、107pを配置する構成としてもよい。
この構成では、ローラー本体16の搬送領域CAに曲げ荷重を付与した際に生じた押圧痕等により、記録媒体に対する搬送特性が低下することを防止できる。
また、押圧ピン106p、107pの双方がローラー本体16に曲げ荷重を付与するのではなく、押圧ピン106p、107pの一方は係合部73よりも中央側を支持するのみで、他方のみが係合部73よりも中央側に曲げ荷重を付与する構成としてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、ローラー本体16の繋ぎ目80における屈曲部85が、矩形状の突部61cと矩形状の凹部61dとにより形成される構成としたが、この形状以外にも、例えば図12(a)に示すように、屈曲部85における交差部85aが周方向(図12(a)における上下方向)に対して傾斜して中心軸16aと平行な軸に対して角度αで交差する構成としてもよい。このようにすれば、金属板のプレス加工において一対の端面を近接させた際、突部61cの先端を対応する凹部61dに嵌合させ易くなり、したがって、ローラー本体16に歪みや捩れ等が生じるのを抑制することができる。
また、図12(b)に示すように、屈曲部85が円弧形状の繰り返し(sin波形状)の繋ぎ目で形成される構成や、図12(c)に示すように、三角形状の突部61cと凹部61dとにより繋ぎ目がジグザグ状に形成される構成であってもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、ローラー本体16の端部に設けられるDカット状の切り欠き形状を有する係合部73を示したが、図13(a)、(b)に示すように、ローラー本体16の端部に溝74aとDカット部74bとを有した係合部(位置決め部)74を形成することもできる。この係合部74において、Dカット部74bはローラー本体16の外端に形成されており、溝74aはDカット部74bより内側に形成されている。溝74aは、図13(a)に示すように、ローラー本体16がその周方向に略半分切り欠かれて形成されたものである。Dカット部74bは、溝74aの外側において該溝74aと直交する方向に延在する開口74cを有し、この開口74cの両側に、一対の折曲片74d、74dを有したものである。すなわち、図13(b)に示すようにこれら一対の折曲片74d、74dがローラー本体16の中心軸側に折曲させられたことにより、これら折曲片74d、74dに対応する部分が、ローラー本体16の円形の外周面から凹んだ状態となっている。
【0071】
したがって、歯車等の連結部品(図示せず)を、前記溝74aに係合させまたはDカット部74bに係合させることにより、該連結部品をローラー本体16(搬送ローラー31)に対し空回りさせることなく、取り付けることができる。また、この係合部74では、折曲片74d間に形成された開口74cを利用することによっても、連結部品をローラー本体16に対し空回りさせることなく取り付けることができる。具体的には、連結部品に凸部を形成しておき、この凸部を前記開口74cに嵌合させることにより、空回りを防止することができる。
【0072】
また、図14(a)、(b)に示すように、ローラー本体16の端部に溝75aと開口75bとを有した係合部(位置決め部)75を形成することもできる。この係合部75において、開口75bはローラー本体16の外端に形成されており、溝75aは開口75bより内側に形成されている。溝75aは、図14(a)に示すように、ローラー本体16がその周方向に略半分切り欠かれて形成されたものである。開口75bは、溝75aの外側においてローラー本体16の一部が平面視矩形状に切り欠かれ、これによって図14(b)に示すように端部側面の外形が見掛け上D字状に形成されたものである。
【0073】
したがって、歯車等の連結部品(図示せず)を、前記溝75aに係合させまたは開口75bによって形成された見掛け上D字状に形成された部位に係合させることにより、該連結部品をローラー本体16に対し空回りさせることなく、取り付けることができる。また、この係合部75でも、図6(a)〜(c)に示した係合部73と同様に、開口75bを利用することによって、連結部品をローラー本体16に対し空回りさせることなく取り付けることができる。
【0074】
このような係合孔71や係合部73、74、75を形成するには、上述したように、金属板60をプレス加工して得られたローラー本体16に対して、さらに切削加工や研磨加工等を施すことで行うことができる。
しかしながら、このようにローラー本体16に対してさらに加工を施すのでは、係合部の形成だけのために別途加工工程を追加することで、コストや時間についての効率が低下してしまう。そこで、ローラー本体16にプレス加工する前に、プレス加工によって係合部となる展開係合部を金属板に形成しておき、この金属板をプレス加工してローラー本体16とする際に、係合部も同時に形成するのが好ましい。
【0075】
具体的には、大型の金属板を、図5に示した細長い矩形板状の金属板60にプレス加工する際、この大型金属板から小型の金属60への加工と同時に、切欠状、突片状、孔状、あるいは溝状等の展開係合部を形成する。例えば、図15(a)に示すように、金属板60の端部を所定形状に切り欠いて展開係合部76bとしておくことにより、この金属板60をプレス加工することで図13(a)、(b)に示した係合部74を形成することができる。すなわち、展開係合部76bとして、一対の切欠部(凹部)74e、74eと一対の突片74f、74fとを形成しておくことにより、係合部74を形成することができる。ただし、この例では、金属板60をプレス加工した後、一対の突片74f、74fを内側に折りプレス加工して折曲片74dとする必要があるため、加工工程についてのコストや時間の効率化を十分に高めるにはやや不十分である。
【0076】
そこで、図15(c)に示すように、金属板60の端部を所定形状に切り欠いて展開係合部76cとしておくことにより、この金属板60をプレス加工することで図14(a)、(b)に示した係合部75を形成することができる。すなわち、展開係合部76cとして、一対の切欠部(凹部)75c、75cと一対の突片75d、75dとを形成しておくことにより、係合部75を形成することができる。この例では、金属板60をプレス加工した際に一対の突片75d、75dも円弧状に曲げることにより、これら突片75d、75d間に、図14(b)に示した開口75bを形成することができる。したがって、プレス加工によって形成したローラー本体16に対し、さらに加工を追加する必要がなく、これにより加工工程についてのコストや時間の効率化を十分に高めることができる。
【0077】
また、上記実施形態で示した高摩擦層50を形成するセラミックス粒子(例えばアルミナ粒子)としては、粒径が15μm以上90μm以下の範囲とされ、かつ、中心径となる加重平均の粒径(平均粒径)が、45μmとなるように調整されたものが用いることが好ましい。
すなわち、アルミナ粒子(無機粒子)としてその平均粒径(中心径)が、図16に示すように、繋ぎ目80の外周面側での距離d1(30μm)より大となるものが用いられる。また、特にその粒径分布(粒度範囲)については、繋ぎ目80の外周面側での距離d1より小となり、かつ、内周面側での距離d2(10μm)より大となる粒子を含んでいるのが好ましく、さらに、その粒径分布における最小粒径が、繋ぎ目80における一対の端面61a、61b間の最短距離、つまり内周面側での距離d2より大であるのが好ましい。
【0078】
このようにして高摩擦層50を形成すると、特に繋ぎ目80には、金属板60の端面61a、61b間の隙間に起因する溝が形成されることなく、端面61a、61b間の隙間が主にアルミナ粒子95によって埋め込まれる。
すなわち、アルミナ粒子95としてその平均粒径が、繋ぎ目80の、外周面側での距離d1より大となるものを用いているので、アルミナ粒子95はその大半が繋ぎ目80内に入り込むことなく、図16に示すようにローラー本体16の外周面上に樹脂膜151を介して付着している。したがって、繋ぎ目80には金属板60の端面61a、61b間に隙間が形成されているにもかかわらず、アルミナ粒子95がこの隙間上を覆うことにより、この隙間に起因する溝が実質的に形成されなくなる。
【0079】
また、アルミナ粒子95として、繋ぎ目80の外周面側での距離d1より小となり、かつ、内周面側での距離d2(10μm)より大となる粒子95aを含む粒径分布(粒度範囲)のものを用いているので、このような粒子95aが繋ぎ目80に形成された隙間に入り込んでここに留まることにより、繋ぎ目80による溝が確実に形成されなくなる。
また、使用時等において、ローラー本体16(搬送ローラ31)に隙間を狭める方向に力が働いても、ここに入り込んだアルミナ粒子95aがこの力に抗するため、ローラー本体16(搬送ローラー31)の変形が抑えられる。したがって、この搬送ローラー15を備えた搬送ローラー機構19にあっては、搬送ローラー15の変形に起因する搬送ムラが防止される。
【0080】
さらに、アルミナ粒子95として、その粒径分布における最小粒径が、繋ぎ目80における一対の端面61a、61b間の最短距離、つまり内周面側での距離d2より大であるものを用いているので、ローラー本体16の表面にアルミナ粒子95を配して高摩擦層50を形成した際、繋ぎ目80に形成された隙間を通り抜けてローラー本体16内にアルミナ粒子95が入り込むことが無い。したがって、その後ローラー本体16内を清浄化するなどの処理が軽減され、その分、生産性を向上することができる。
【0081】
また、上記実施形態で示したローラー本体16に形成された繋ぎ目80の一部には、図17(a)に示すように、開口70が設けてもよい。
ローラー本体16に形成される繋ぎ目80は、図17(b)に示すように、一対の端面61a,61bの内周側が密着し、外周側が離間した溝状になっている。或いは、繋ぎ目80は、一対の端面61a,61b同士が当接することなく、端面61a,61bが僅かに離間して、隙間として形成される場合もある。そして、この繋ぎ目80が搬送ローラー31の全長に亘って形成されるので、軸受に供給したグリスが搬送ローラー31の表面に付着すると、グリスは繋ぎ目80を毛細管現象により伝わり流れるようになる。特に、搬送ローラー31の強度を向上させるため、繋ぎ目80(端面61a,61bの最大距離d1)を小さくする程、グリスの毛細管現象が強くなって、グリスが繋ぎ目80に沿って流れやすくなる。
【0082】
そこで、図17(c)に示すように、ローラー本体16に形成された繋ぎ目80の一部には、開口170が設けられる。この開口170は、図17(c)に示すように、繋ぎ目80を形成する一対の端面61a、61bにそれぞれ設けられた切欠部76,77により形成される。端面61a、61bを突き合わせたときに、切欠部76,77の間の最大距離d2が例えば1mm程度以上となるように設定され、開口170として機能する。
開口170は、搬送ローラー31(ローラー本体16)の全長に亘って形成された繋ぎ目80のうち、高摩擦層50が形成された領域と軸受26に支持される領域を除く領域に設けられる。つまり、高摩擦層50は搬送ローラー31のほぼ中央部に形成され、搬送ローラー31の両端側が軸受に支持されるので、搬送ローラー31には少なくとも2つの開口170が設けられる。
【0083】
開口170は、軸受に供給(塗布)されたグリス(潤滑油)が繋ぎ目80(端面61a、61bの隙間)に沿って高摩擦層50まで達することを防止する目的で設けられる。すなわち、繋ぎ目80の一部に開口170を設けることで、グリスの毛細管現象を止めている。具体的には、繋ぎ目80のうち、軸受26に支持される領域と高摩擦層50が形成された領域の間に開口170を設けることで、グリスが高摩擦層50に達することを防止している。そして、開口170の大きさ(一対の切欠部76,77間の最大距離d2)を調整することで、グリスの毛細管現象を確実に止めることができる。
【0084】
なお、繋ぎ目80を形成する一対の端面61a、61bのそれぞれに、開口170を形成するための切欠部76,77を形成する場合に限らない。つまり、図17(d)に示すように、繋ぎ目80を形成する一対の端面61a、61bの一方(例えば端面61a)にのみに切欠部78を形成して、切欠部78と端面61bとにより開口170が形成される場合であってもよい。また、開口170の形状としては、矩形に限らず、円形等であってよい。
【0085】
また、ローラー本体16に形成される繋ぎ目80の形状を、図18に示すような形状にしてもよい。すなわち、繋ぎ目80は、第1端面174と第2端面175とが、ローラー本体16の外周面16a側で互いに接している。第1端面174と第2端面175との間の隙間は、径方向外側から内側に向かうに従い漸次幅広となっている。また、第1端面174及び第2端面175の形状は、折曲部以外では、ローラー本体16の全長に亘り同一の形状となっている。
また、第1端面174と外周面16aとで形成される第1角度α、及び第2端面175と外周面16aとで形成される第2角度βは、いずれも90°より小さく形成されている。
【0086】
繋ぎ目80の第1端面174及び第2端面175は外周面16a側で互いに接しており、繋ぎ目80において外周面16a側の平滑度が向上している。そのため、搬送ローラー31が回転してもその外周面は記録紙Pと安定して接触することができる。このため、記録紙Pを高い精度で搬送することができる。
【0087】
繋ぎ目80の形状は、図19に示すように、繋ぎ目80の第1端面174と外周面16aとで形成される第1角度αは、90°より小さく形成され、第2端面175と外周面16aとで形成される第2角度βは、90°以上の大きさで形成してもよい。すなわち、接続部80における第1端面174及び第2端面175が、周方向に関して所定の方向に傾いた形状としてもよい。
【0088】
なお、繋ぎ目80の形状は、以下の工程を経て形成される。すなわち、順送プレス加工における打ち抜き加工によって金属板60を形成した後に、金属板60の第1端面174及び第2端面175に対して、端面調整加工を実施し、第1端面174及び第2端面175の、外周面16aに対する傾きを調整する。
図20に示すように、プレス加工によって第1端面174及び第2端面175の外周面16aに対する傾きを調整する。この調整により、第1端面174と外周面16aとで形成される第1角度α、及び第2端面175と外周面16aとで形成される第2角度βは、いずれも90°より小さくなる。
したがって、金属板60を曲げ加工して円筒状のローラー本体16を成形したときに、第1端面174と第2端面175とは少なくとも外周面16a側で互いに接することになる。
【0089】
ローラー本体16(搬送ローラー31)は、鋼板コイルによる巻きぐせが残った金属板60を用いて形成されるので、コイルの内周側であった面がローラー本体16の内周面となるように形成することが好ましい。
すなわち、鋼板コイルによる金属板60の巻きぐせは、鋼板コイルの内周面であった面が凹面となるような反りである。つまり、ローラー本体16を形成する金属板60には、ローラー本体16の内周面側に反るような巻きぐせが残っている。
【0090】
そのため、少なくともローラー本体16の繋ぎ目80を開く方向には巻きぐせが作用しなくなる。したがって、ローラー本体16の外周面側に反るような巻きぐせが残っている場合と比較して、ローラー本体16の繋ぎ目80を開き難くするができる。これにより、ローラー本体16の繋ぎ目80を開く方向に応力が作用した場合であっても、繋ぎ目80が開くことを防止することができ、高い搬送精度が得られる搬送ローラー31が得られる。
【0091】
また、ローラー本体16の周方向(曲げ方向)と鋼板コイルの巻回方向(金属板60の圧延方向)とが同一となっている。そのため、ローラー本体16を形成する金属板60の曲げ方向と巻きぐせによる反りの方向とを一致させることができる。これにより、ローラー本体16を形成する金属板60の巻きぐせが、ローラー本体16の繋ぎ目80を閉じる方向に作用する。したがって、ローラー本体16の繋ぎ目80の開きをより効果的に防止することができる。
【0092】
また、ローラー本体16の抜き工程において金属板60の切断面に形成されるダレ、バリ等がローラー本体16の内周側に配置されるようにすることが好ましい。
すなわち、ローラー本体16(搬送ローラー31)は、例えば図21(a),(b)に示すような抜き加工によって型抜きされた金属板60を母材として形成される。つまり、ローラー本体16の母材である金属板60は、図21(a)に示す雄型131に対向する上面C2が外周面となる円筒状に曲げ加工されている。そして、一対の端面61a,61bが対向して突き合わされた継ぎ目80が形成される。
そのため、抜き工程において図21(b)に示すように型抜きされた金属板60に、ダレsd、せん断面sp、破断面bs、バリ(図示略)が形成された場合でも、比較的滑らかなダレsdが形成された上面C2を、ローラー本体16の外周側にすることが好ましい。言い換えれば、バリや破断面bsに連続する金属板60の下面C1をローラー本体16の内周側にすることが好ましい。
【0093】
これにより、金属板60の一対の端面61a,61bを突き合わせて継ぎ目80を有するローラー本体16を形成する際に、バリや破断面bsの凹凸が障害となって継ぎ目80が開くことを防止できる。
したがって、ローラー本体16の継ぎ目80の精度を向上させ、高い搬送精度が得られる搬送ローラー15を提供することができる。また、バリがローラー本体16の内周面側になり、ローラー本体16の外周面から突出することを防止でき、バリ取り工程を省略して生産性を向上させることができる。
【0094】
また、図15に示した展開係合部の構成の他に、図22(a)〜(c)に示すように、展開係合部を金属板60の両端部に形成することなく、その幅方向(曲げ方向)における中心線の近傍に形成することもできる。すなわち、図22(a)に示すように端部に細長い矩形状の切欠からなる展開係合部76dを形成することで、図6に示した係合部73を形成することができる。また、図22(b)に示すようなT字状の切欠からなる展開係合部76eを形成することで、図13に示した係合部74を形成することができ、さらに、図22(c)に示すような略T字状の切欠からなる展開係合部76fを形成することで、図14に示した係合部75を形成することができる。
このように展開形成部76d〜76fを曲げ方向における中心線の近傍に形成すれば、これら展開形成部76d〜76fから得られる係合部73〜75を、より精度良く形成することができる。
【0095】
また、本実施形態に係る搬送ローラー31(ローラー本体16)では、その繋ぎ目80を、円筒状の中空パイプからなるローラー本体16の中心軸と平行になるように形成したが、本発明はこれに限定されることなく、例えば基材となる金属板60の一対の端部間に形成される繋ぎ目を、円筒状パイプ(ローラー本体)の外周面上における、該円筒状パイプの中心軸に平行な直線上において、該直線に対して線分で重なることなく、一つあるいは複数の点でのみ重なるように形成してもよい。
【0096】
具体的には、図23(a)に示すように繋ぎ目81として、ローラー本体16の中心軸16aに平行となることなくこれに交差するように、ローラー本体16の外周面をその周方向に延びつつ、ローラー本体16の一端から他端にかけて延在するように形成してもよい。このように繋ぎ目81を形成するには、基材となる金属板として、先に示したような細長い矩形状の金属板60でなく、図23(b)に示すように細長い平行四辺形の金属板60aを用い、符号16bで示す直線が中心軸となるようにプレス加工する。これにより、図23(a)に示したローラー本体16が得られ、繋ぎ目81が中心軸16aに対して非平行となる。
【0097】
なお、図23(a)に示したローラー本体16では、その繋ぎ目81が、ローラー本体16の一端から他端にかけて、その周面を一周未満しか回らないように形成している。これは、金属板60aのプレス加工を容易にするためである。ただし、図23(c)に示すように繋ぎ目82が、ローラー本体16の一端から他端にかけて、その周面を一周以上回るように、すなわち螺旋状に回るように形成してもよい。その場合には、基材となる金属板として、図23(b)に示した細長い平行四辺形の金属板60aにおける、角度θをより鋭角にすればよい。
【0098】
このように繋ぎ目を、円筒状パイプ(ローラー本体16)の中心軸に平行な直線に対して線分で重なることなく、一つあるいは複数の点でのみ重なるように形成すれば、このローラー本体16を有してなる搬送ローラー31は、従動ローラーと協働して用紙Pを搬送する際、つまり紙送りをする際、用紙Pの搬送速度が一定になり、搬送ムラがより確実に防止されたものとなる。
【0099】
すなわち、図24に示すように搬送ローラー31が紙送りの際に用紙Pと接する箇所は、基本的にはその外周面上の直線L、つまり中心軸16aと平行な直線となる。したがって、先に示したように搬送ローラー31(ローラー本体16)の繋ぎ目80がローラー本体16の中心軸16aと平行である場合、この搬送ローラー31はその繋ぎ目80全体が一時的(瞬間的)に用紙Pに接することになる。すると、本実施形態の搬送ローラー31では前述したようにその繋ぎ目80に起因して溝が形成されていないため、問題にはならないものの、仮に繋ぎ目80に起因して溝が形成されていると、この溝が一時的にかつ同時に用紙Pに接し、したがって用紙Pの全幅が一時的に繋ぎ目80に起因する溝に接することになる。その結果、この溝では搬送ローラー31の他の外周面に比べて凹みがあり、用紙Pに対する接触抵抗が小となっているため、用紙Pの搬送速度が一時的に低下し、搬送ムラを生じてしまう。
【0100】
しかして、図23(a)、(c)等に示したように繋ぎ目を形成すれば、仮にこれら繋ぎ目に起因して溝が形成されたとしても、この溝が紙送りの際に同時に用紙Pに接触する箇所が、一つあるいは複数の点のみとなる。したがって、搬送ローラー31の他の面(線)が当たるときに比べほとんど接触抵抗に変化がなく、これにより、用紙Pの搬送速度が一定になり、搬送ムラが防止されるようになる。
【0101】
また、円筒状の中空パイプからなる搬送ローラー31(ローラー本体16)の繋ぎ目については、前述した例以外にも、例えば図25(a)に示すように、ローラー本体16の中心軸と平行な直線部85aとこれに直交する直線部85bとからなる、矩形波状の折曲部85を有して形成されていてもよい。このような折曲部85を有してなる繋ぎ目にあっても、この繋ぎ目に起因して仮に溝が形成された場合に、この溝が紙送りの際に用紙Pの幅全体に同時に接触することがないため、用紙Pの搬送速度がほぼ一定になり、搬送ムラが防止される。
【0102】
また、この折曲部85については、図25(b)に示すようにローラー本体16の長さ全体に亘って形成されていてもよく、図25(c)に示すように、その中央部を除く両端部に選択的に形成されていてもよい。図25(c)に示したように折曲部85を両端部にのみ形成する場合には、これら折曲部85間はローラー本体16の中心軸と平行な中央直線部86となる。ただし、図示しないものの、折曲部85間の中央直線部を、図23(a)に示したように中心軸16aと非平行となる斜め線に形成してもよい。
また、このように折曲部85を両端部にのみ形成し、その間の中央部については中央直線部86とした場合、先に示した高摩擦層50の形成領域を中央部直線部86に対応させるのが好ましい。
【0103】
繋ぎ目に折曲部85を形成し、したがってこの折曲部85を凹凸による嵌合部にすると、これら折曲部85(嵌合部)では設計通りに嵌合させ、凸部の先端とこれに対応する凹部との間を隙間なく近接させる(突き合わせる)のが難しくなる。したがって、ローラー本体16の全長に亘って折曲部85を形成すると、ローラー本体16に歪みや捩れ等が生じ易くなる。そこで、図25(c)に示したように折曲部85を両端部にのみ形成すれば、このような歪みや捩れ等が生じるのを抑えることができる。また、特に用紙Pに直接接する領域となる高摩擦層50に対応する中央部を、折曲部85とすることなく中央直線部86とすることにより、用紙Pに直接接する領域に歪みや捩れ等が生じるのを確実に防止することができる。
【0104】
また、図25(b)に示したように、折曲部85をローラー本体16の長さ全体に亘って形成した場合、図26(a)に示すようにこの折曲部85からなる繋ぎ目87を、直線部85bからなる複数の交差部87aと、該交差部87aの一方の側の端部間を結ぶ第1直線部87bと、他方の側の端部間を結ぶ第2直線部87cとからなるように形成してもよい。ここで、第1直線部87bおよび第2直線部87cはローラー本体16の中心軸に略平行となるように形成し、交差部87aはこれら第1直線部87bおよび第2直線部87cと直交するように、つまりローラー本体16の中心軸に直交するように形成する。また、第2直線部87cは第1直線部87bより短く形成する。
【0105】
このような構成の繋ぎ目87を形成する場合、特に、第2直線部87cにおいて互いに対向する一対の端部間の距離d3を、第1直線部87bにおいて互いに対向する一対の端部間の距離d4より長く形成するのが好ましい。なお、ここでいう一対の端部間の距離d3、d4は、いずれもローラー本体16における外周面に形成される隙間における端部間の距離とする。
【0106】
このようにすれば、ローラー本体16の、円筒状中空パイプとしての形状や寸法の精度をより高くすることができ、したがって、ローラー本体16の変形等に起因する搬送ムラを防止することができる。すなわち、このようなローラー本体16を形成するための基材となる金属板では、第2直線部87cを構成する一方の端部は、隣り合う一対の交差部87a、87aとこれらの端部間を結ぶ第2直線部87cとを外形とする凸片87dとなる。したがって、金属板をプレス加工してこの凸片87dを対向する端部に近接させようとした際、図26(b)中に二点鎖線で示すように、この凸片87dの先端側が円周面状に十分に曲げられずに、対向する端部に対して寸法t1分浮いた状態になり、結果としてこの第2直線部87cおいて段差を形成してしまう。すると、この段差に起因して、得られるローラー本体16には変形等が生じ易くなり、形状や寸法について良好な精度が得られにくくなってしまう。
【0107】
そこで、この第2直線部87cにおける端部間の距離d3を、この第2直線部87cより長く形成されている第1直線部87bにおける端部間の距離d4よりも長くすることにより、図26(b)中に実線で示すように、凸片87dの先端側が浮く分の寸法t2が前述のt1に比べて少なく(小さく)なり、これによって第2直線部87cにおいて段差が形成されるのを抑えることができる。
なお、図26(b)では、理解を容易にするため寸法t2も大きく記しているが、実際にはこの寸法t2はほとんど零に近くなり、実質的な段差がなくなるようになる。つまり、このように第2直線部87cにおいて段差が形成されるのを抑えることにより、この段差に起因するローラー本体16の変形等を抑え、形状や寸法についての精度を高めることができるのである。
【0108】
また、図25(c)に示したように、折曲部85をローラー本体16の両端部にのみ形成した場合、図27に示すようにこの折曲部85における交差部87a(直線部85b)において互いに対向する一対の端部間の距離d5を、中央直線部86において互いに対向する一対の端部間の距離d6より短く形成するのが好ましい。
このようにすれば、距離d5が相対的に短くなって交差部87aにおける端部間の隙間が非常に狭くなるため、ローラー本体16を形成するための基材となる金属板をプレス加工した際、一方の端部と他方の端部との間の長さ方向(軸方向)でのずれが、交差部87aを構成する一対の対向する端部によって規制されるようになる。したがって、得られるローラー本体16(搬送ローラー15)に歪みや捩れ等が生じにくくなり、このような歪みや捩れ等に起因する搬送ムラが防止される。
【0109】
なお、図25(c)に示したように、折曲部85をローラー本体16の両端部にのみ形成した場合には、図27に示すようにこの折曲部85の凸片87dを構成する第2直線部87cにおいて互いに対向する一対の端部間の距離d7を、中央直線部86において互いに対向する一対の端部間の距離d6より短く形成してもよく、また、長く形成してもよい。
【0110】
距離d7を距離d6より短く形成すれば、繋ぎ目の全長を見た場合に、対向する一対の端部間にできる隙間がより均一化し易くなり、これによって得られるローラー本体16の形状や寸法についての精度がより高くなる。すなわち、中央直線部86の長さは折曲部85における第2直線部87cの長さより長くなり、したがって中央直線部86における一対の端部間の方が第2直線部87cに比べて精度良く近接させることができる。よって、相対的に端部間の精度をより良好にすることができる中央直線部86の方の一対の端部間の距離を、第2直線部87cに比べて長くしてその隙間を大きくしても、この隙間を十分均一にすることが可能になり、したがって得られるローラー本体16の歪みや捩れ等に起因する搬送ムラが防止される。
【0111】
一方、距離d7を距離d6より長く形成すれば、図26(b)に示したように凸片87dの先端側が浮く分の寸法t2が少なく(小さく)なり、これによって第2直線部87cにおいて段差が形成されるのが抑えられる。よって、このように第2直線部87cにおいて段差が形成されるのが抑えられることにより、この段差に起因するローラー本体16の変形等が抑えられ、形状や寸法についての精度が高めることによって搬送ムラが防止される。
【0112】
また、前記実施形態では本発明に係る搬送ローラーを、搬送ローラー機構19における搬送ローラー31に適用する構成としたが、排紙ローラー41や排紙ギザローラー42に適用する構成とすることもでき、さらには、搬送ローラー機構19における従動ローラー32(ローラー32a)に適用することもできる。
【符号の説明】
【0113】
1…プリンター(印刷装置)、 16…ローラー本体(円筒部材)、 31…搬送ローラー、 41…排紙ローラー(処理装置)、 60…金属板、 73、74、75…係合部(位置決め部)、 86…中央直線部、 106…上型(プレス金型)、 106m、106n…押圧ピン(軸状部材)、 107…下型(プレス金型)、 107m、107n…押圧ピン(軸状部材)、 120…矯正ローラー、 120A…矯正ローラー(第1矯正ローラー)、 120B…矯正ローラー(第2矯正ローラー)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送する搬送ローラーの製造方法であって、
板材を曲げて略円筒状の円筒部材を形成するとともに、前記円筒部材の端部に切り欠き形状を有する位置決め部を形成する第1工程と、
前記円筒部材の長さ方向で前記位置決め部よりも中央側で前記円筒部材を支持した状態で前記円筒部材の所定箇所に曲げ荷重を付与して、前記第1工程で前記円筒部材に生じた軸曲がりを矯正する第2工程と、を有することを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記円筒部材における前記記録媒体に当接して搬送する搬送領域以外の位置で、前記円筒部材を支持することを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記円筒部材における前記記録媒体に当接して搬送する搬送領域以外の位置に前記曲げ荷重を付与することを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記第2工程では、前記板材を曲げた一対の端部の繋ぎ目に前記曲げ荷重を付与することを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記第2工程は、前記円筒部材の所定箇所に曲げ荷重を付与して前記第1工程で前記円筒部材に生じた軸曲がりの方向とは逆方向の曲がりを形成する曲がり形成工程と、
前記曲がり形成工程で前記曲げ荷重を付与した方向とは逆方向に前記円筒部材の所定箇所に曲げ荷重を付与する逆荷重付与工程とを含むことを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記円筒部材の所定箇所は、前記円筒部材の長さ方向に間隔をあけて配置した複数の第1押圧位置と、前記長さ方向で前記複数の第1押圧位置の間に位置し、且つ前記円筒部材の径方向で前記第1押圧位置と対向する複数の第2押圧位置とを含むことを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記第1工程では、プレス金型を用いて前記板材を曲げて前記円筒部材を形成し、
前記第2工程では、前記プレス金型に進退自在に設けた軸状部材により前記円筒部材の所定箇所に曲げ荷重を付与することを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記第2工程後に、前記円筒部材の表面を研磨する第3工程を有することを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載の製造方法により製造された搬送ローラーを備えたことを特徴とする搬送ユニット。
【請求項10】
請求項1から7のいずれか一項に記載の製造方法により製造された搬送ローラーを備えたことを特徴とする印刷装置。
【請求項1】
記録媒体を搬送する搬送ローラーの製造方法であって、
板材を曲げて略円筒状の円筒部材を形成するとともに、前記円筒部材の端部に切り欠き形状を有する位置決め部を形成する第1工程と、
前記円筒部材の長さ方向で前記位置決め部よりも中央側で前記円筒部材を支持した状態で前記円筒部材の所定箇所に曲げ荷重を付与して、前記第1工程で前記円筒部材に生じた軸曲がりを矯正する第2工程と、を有することを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記円筒部材における前記記録媒体に当接して搬送する搬送領域以外の位置で、前記円筒部材を支持することを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記円筒部材における前記記録媒体に当接して搬送する搬送領域以外の位置に前記曲げ荷重を付与することを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記第2工程では、前記板材を曲げた一対の端部の繋ぎ目に前記曲げ荷重を付与することを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記第2工程は、前記円筒部材の所定箇所に曲げ荷重を付与して前記第1工程で前記円筒部材に生じた軸曲がりの方向とは逆方向の曲がりを形成する曲がり形成工程と、
前記曲がり形成工程で前記曲げ荷重を付与した方向とは逆方向に前記円筒部材の所定箇所に曲げ荷重を付与する逆荷重付与工程とを含むことを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記円筒部材の所定箇所は、前記円筒部材の長さ方向に間隔をあけて配置した複数の第1押圧位置と、前記長さ方向で前記複数の第1押圧位置の間に位置し、且つ前記円筒部材の径方向で前記第1押圧位置と対向する複数の第2押圧位置とを含むことを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記第1工程では、プレス金型を用いて前記板材を曲げて前記円筒部材を形成し、
前記第2工程では、前記プレス金型に進退自在に設けた軸状部材により前記円筒部材の所定箇所に曲げ荷重を付与することを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の搬送ローラーの製造方法において、
前記第2工程後に、前記円筒部材の表面を研磨する第3工程を有することを特徴とする搬送ローラーの製造方法。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載の製造方法により製造された搬送ローラーを備えたことを特徴とする搬送ユニット。
【請求項10】
請求項1から7のいずれか一項に記載の製造方法により製造された搬送ローラーを備えたことを特徴とする印刷装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2011−98366(P2011−98366A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253765(P2009−253765)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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