説明

搬送容器に貼付されたラベルの記録情報更新装置及び更新方法

【課題】 仕分けや入出荷等を行う物流システムにおけるピッキング指示システムで使用する再利用可能な搬送容器に貼付されたラベルの記録内容をコンベア上で書き換えることが可能な記録情報更新装置及び更新方法を実現する。
【解決手段】 再利用可能な搬送容器(25)に貼付されたラベル(24)の記録情報更新装置(21)において、前記ラベルを当該ラベルに記録された記録情報の消去及び書込みが可能な可逆感熱紙で構成し、前記搬送容器が搬送される物流システムのコンベア(26)の近傍に沿って、消去手段(22)及び書込み手段(23)を配置し、前記消去手段及び書込み手段へのコンベア上の前記搬送容器の接近に伴い、搬送容器の側面に貼付されたラベルに向かって当該消去手段及び書込み手段を移動させ、前記ラベルの古い記録情報の消去と、新たな記録情報の書込みとをコンベア上で連続して実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物流システムにおける再利用可能な容器(通い箱と称す)のラベル表記方法に関し、再利用可能な容器に貼付された表記の消去及び書き込みが可能なラベルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
物流システムにおける、通い箱使用の代表例として、ピッキング指示システムが挙げられる。
従来のピッキング指示システムとしては以下の装置が知られている。
第3図は、その一実施例によるピッキング指示システムの全体的構成を示す斜視図であり、多数の収納部1を有する保管棚2がコンベヤライン10に沿って配列され、各収納部1には個別取出表示器4が設けられ、さらに取り出し作業終了時に操作されるスイッチ7が設けられている。
保管棚2の上部には物品取出数表示器6が設けられている。
【0003】
一方、コンベヤライン10により再利用可能な搬送容器であるバケット(通い箱)11が搬送され、該バケット11にはICカード12が取り付けられている。該カード12には、各顧客に対応して付された当該カード自身の番号や、作業者に与えられるべきピッキング指示に関する情報や、さらにはバケット11が搬送されるべき方向に関する情報等、システム内で該バケットを搬送しかつピッキング作業を行うに必要なすべての情報が格納されているとともに、それらの情報を表示する機能を有している。
【0004】
また、コンベヤライン10の付近には、複数の保管棚で成る保管棚ブロックごとに読み書き自在機13が設けられており、該読み書き自在機13は、バケット11に取り付けられたICカード12の情報を、例えばマイクロウェーブ(極超短波)等の信号によって該カードに接触せずに読み取ると共に、該カード12に新しい情報を書き込む機能とそれらの情報を該カードに表示させる機能とを有している。(このようなICカードによる非接触の情報読取りをRFID(RADIO-FREQUENCY-IDENTIFICATION)と称する。)
【0005】
以上の構成において、バケット11が読み書き自在機13の前に到着すると、読み書き自在機13はICカード12の情報を読み取って、当該バケット11へ投入すべき物品の種類すなわち収納部1の位置及びその収納部からピッキングすべき物品の数を、それぞれ個別取出表示器4及び物品取出数表示器6に表示することができる。
【0006】
作業者はその表示に従って必要な物品すなわち個別取出表示器4が点灯した収納部1の物品を、必要な数すなわち物品取出数表示器6に表示された数だけピッキングして当該バケット11へ投入することもできるが、通常、作業者はICカード12の表示に基づいてピッキング作業を行うものである。
【0007】
ピッキングが終了すると、作業者は保管棚2に取り付けられているスイッチ7を押す。読み書き自在機13からはICカード12に作業完了指令が与えられ、該カード12は次の物品に関するピッキング情報の表示に移る。
そして保管棚2における他の個別取出表示器4が点灯し、物品取出数表示器6が個数を表示すると作業者は前述と同様のピッキングを行い、これを順次繰り返すことになる。
【0008】
上述のシステムでは、バケットに取付けられたICカードで記録された情報を読み取ることは可能であるが、作業者が当該ICカードの内容を直接見ることはできないので、ICカードに加えて、当該ラベルに作業者が読取り可能な情報(文字情報)を印刷する装置もあった。
また、図3におけるバケットに取付けられたICカードを使用せずに、バスケットに貼付されたラベルにバーコード(2次元バーコードを含む)を印刷して、当該バーコードをバーコードリーダによって読取ることによって、バーコードを解析してハンドリングを行う装置もあった。
【0009】
また、再利用可能なラベルとしては、以下のものが知られている。(特許文献1参照)
「可逆性感熱記録材料を用いた可逆感熱紙として、例えば、電子供与性染料前駆体を用いたロイコ系リライタブル感熱紙が開発されている。電子供与性染料前駆体は、酸性雰囲気下で分子内のラクトン環が開環することにより発色し、酸性雰囲気を取り除くとラクトン環が閉環し無色の状態に戻るものである。ロイコ系リライタブル感熱紙はこの電子供与性染料前駆体と可逆顕色剤を組み合わせたものであり、可逆顕色剤とは電子供与性染料前駆体と反応して発色・消色の可逆性を発現するものである。可逆顕色剤には、例えば長鎖アルキル基をもつフェノール系化合物等が用いられる。
【0010】
図4は、上述した可逆感熱紙の特性説明図である。この図において、横軸は温度、縦軸は発色濃度を示している。この図に矢印で示すように、消色状態(A)の可逆感熱記録層(例えば電子供与性染料前駆体と可逆顕色剤からなる)を加熱すると両者は溶融して発色状態(B)となり、これを急冷すると溶融状態に近い状態で固化し固体発色状態(C)が保持される。逆に溶融状態(B)から徐冷すると電子供与性染料前駆体と可逆顕色剤が相分離して元の消色状態(A)に戻る。また、固体発色状態(C)において、溶融状態よりもやや低い温度領域で一定時間保持すると、元の消色状態(A)に遷移する性質がある。この温度領域(溶融温度よりもやや低い温度領域)を「消色温度領域」と呼ぶ。
【特許文献1】特開2002−215038号公報 (0015),(0018)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、従来の再利用可能な搬送容器には搬送容器にラベルを貼付するシステムには以下の問題点がある。
・搬送容器毎に1ラベルが必要であり、ランニングコストが高くなる。
・再利用時には廃棄されるラベルを発行するので、環境に悪影響を及ぼすことになる。
・返却された搬送容器には古いラベルが貼付されているので、古いラベルを剥がすための作業コストが掛かる。
・ラベルを剥がす作業を人手等で実行すると、剥がし忘れが発生して、新しいラベルが貼付されるので、この搬送容器がコンベア上を流れると、2枚のラベルが貼付されているので、ラベルの読取りに伴う作業で混乱が生じることがある。
また、再利用可能なラベルも記録情報の消去及び書き込みは、専用の消去装置及び書込装置を必要とするので、ラベルを一旦剥がして、ラベルの記録内容を書き換えを実行せざるをえなかった。
【0012】
本発明の課題(目的)は、仕分けや入出荷等を行う物流システムにおけるピッキング指示システムで使用する再利用可能な搬送容器に貼付されたラベルの記録内容をコンベア上で書き換えることが可能な記録情報更新装置及び更新方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、再利用可能な搬送容器に貼付されたラベルの記録情報更新装置において、
前記ラベルを当該ラベルに記録された記録情報の消去及び書込みが可能な可逆感熱紙で構成し、前記搬送容器が搬送される物流システムのコンベアの近傍に沿って、消去手段及び書込み手段を配置し、前記消去手段及び書込み手段へのコンベア上の前記搬送容器の接近に伴い、搬送容器の側面に貼付されたラベルに向かって当該消去手段及び書込み手段を移動させ、前記ラベルの古い記録情報の消去と、新たな記録情報の書込みとをコンベア上で連続して実行することを特徴とする。(請求項1)
【0014】
また、前記消去手段は、特定温度に加熱されたローラ若しくは金属プレートで構成し、前記ラベルに密着させる移動手段を備えることを特徴とする。(請求項2)
また、前記書込み手段は、温度制御可能なサーマルヘッドで構成し、前記ラベルに密着させる移動手段を備えることを特徴とする。(請求項3)
また、前記書込み手段は、レーザ発振手段で構成し、記録情報の書込みを非接触で実行することを特徴とする。(請求項4)
【0015】
また、再利用可能な搬送容器に貼付された可逆感熱紙で構成されるラベルの記録情報更新方法であって、
前記搬送容器が搬送される物流システムのコンベアの近傍に沿って、消去手段及び書込み手段を配置し、前記コンベア上の前記搬送容器の接近を検出して、前記消去手段によって、前記ラベルの古い記録情報を消去するステップと、
前記書込み手段によって、前記ラベルへ新しい記録情報を書込むステップとを含むことを特徴とする。(請求項5)
【発明の効果】
【0016】
請求項1〜5に記載の発明は、同じラベルの記録内容を消去して、更新するので使い捨てのラベルが不要となり、コストダウンが可能になる。
また、使い捨てラベルが無くなるので、環境負荷を低減することができる。
更に、ラベル剥がしの作業が不要になるので、この点からもコストダウンが可能になると共に、剥がし忘れによるトラブルを無くすことができる。
また、従来から行われているICカードによる非接触の情報読取り(RFID)と併用することによって、大量のデータハンドリングとラベルによる可視化の両立を可能にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1を用いて本発明の記録情報更新装置及び更新方法の実施例の説明をする。
図1は、本発明の再利用可能な搬送容器に貼付されたラベルの記録情報を更新するシステムの斜視図である。
図1において、21は記録情報更新装置であって、該記録情報更新装置には、記録情報消去手段である加熱ローラ22aを有する情報消去部22及び情報書込み手段であるサーマルヘッド23aを有する情報書込み部23を備えている。
前記情報消去部及び情報書込み部は、後述のラベル24に対して密着されるように矢印方向に移動可能に装着されている。
なお、図1では、移動方向である矢印は、水平方向にのみ示されているが、ラベルの位置に応じて垂直方向に移動するように構成することも可能である。
また、図1では、前記情報消去部及び情報書込み部は、それぞれ別体に形成されているが、情報消去部と情報書込み部を一体に形成しても良い。
前記ラベル24は、コンベア26上を移動する再利用可能な搬送容器(例えば、通い箱等)25の側面に貼付されており、記録情報を消去及び書込みが可能な可逆感熱紙で構成されている。
【0018】
次に、図1の動作を以下に説明する。
コンベア26上の再利用可能な搬送容器25が移動して図示しない検出装置によって、記録情報更新装置の接近すると、先ず、情報消去部22に装着された加熱ローラ22aをラベル24に密着させて、該加熱ローラによってラベルの可逆感熱記録層(例えば電子供与性染料前駆体と可逆顕色剤からなる)を加熱することによって、図3の発色状態Cから
溶融状態図3の(B)にして、これを徐冷すると電子供与性染料前駆体と可逆顕色剤が相分離して元の消色状態(A)に戻るので、ラベルに記録された古い記録情報を消去できる。
次に、加熱ローラによって、古い記録情報が消去されたラベルに対して、情報記録部23に装着されたサーマルヘッド23aを密着するように移動させて、図3の消色状態(A)のラベルの可逆感熱記録層(例えば電子供与性染料前駆体と可逆顕色剤からなる)を加熱すると両者は溶融して発色状態(B)となり、これを急冷すると溶融状態に近い状態で固化し固体発色状態(C)が保持されるので、新しい情報を記録することができる。
図1では、消去手段として加熱ローラを使用しているが、特定温度に加熱される金属プレートを使用することもできる。
【0019】
サーマルヘッドによって、ラベル24に記録される情報としては、文字や記号のみでなく、バーコードや二次元バーコード等の種々のものが可能である。
また、サーマルヘッドによる記録に代えて、レーザービームによりラベルとは非接触の状態で記録することも可能である。
レーザービームによるものを図2に示す。
図2において、27はレーザー発振器で、28はレーザービームであること以外は図1と同様である。
更に、従来から行われているICカードによる非接触の情報読取り(RFID)と併用することによって、大量のデータハンドリングとラベルによる可視化の両立を可能にすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
請求項1〜5に記載の発明は、同じラベルの記録内容を消去して、更新するので使い捨てのラベルが不要となり、コストダウンが可能になり、使い捨てラベルが無くなるので、環境負荷を低減することができ、従来から行われているICカードによる非接触の情報読取り(RFID)と併用することによって、大量のデータハンドリングとラベルによる可視化の両立を可能にすることができるという効果を奏するので、産業上の利用可能性は極めて大きい。
また、本発明は、ピッキングシステムで使用する通い箱に限定するものでなく、パレットやカゴ車等にも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の再利用可能な搬送容器に貼付されたラベルの記録情報を更新するシステムの斜視図である。
【図2】本発明の再利用可能な搬送容器に貼付されたラベルの記録情報を更新するシステムの斜視図である。
【図3】従来のピッキング指示システムの全体的構成を示す斜視図である。
【図4】本発明でラベルとして使用する可逆感熱紙の特性説明図である。
【符号の説明】
【0022】
21 記録情報更新装置
22 情報消去部
22a 加熱ローラ
23 情報書込み部
23a サーマルヘッド
24 ラベル
25 搬送容器
26 コンベア
27 レーザー発振器
28 レーザービーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再利用可能な搬送容器に貼付されたラベルの記録情報更新装置において、
前記ラベルを当該ラベルに記録された記録情報の消去及び書込みが可能な可逆感熱紙で構成し、
前記搬送容器が搬送される物流システムのコンベアの近傍に沿って、消去手段及び書込み手段を配置し、
前記消去手段及び書込み手段へのコンベア上の前記搬送容器の接近に伴い、搬送容器の側面に貼付されたラベルに向かって当該消去手段及び書込み手段を移動させ、
前記ラベルの古い記録情報の消去と、新たな記録情報の書込みとをコンベア上で連続して実行することを特徴とする再利用可能な搬送容器に貼付されたラベルの記録情報更新装置。
【請求項2】
前記消去手段は、特定温度に加熱されたローラ若しくは金属プレートで構成し、前記ラベルに密着させる移動手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の再利用可能な搬送容器に貼付されたラベルの記録情報更新装置。
【請求項3】
前記書込み手段は、温度制御可能なサーマルヘッドで構成し、前記ラベルに密着させる移動手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の再利用可能な搬送容器に貼付されたラベルを記録情報更新装置。
【請求項4】
前記書込み手段は、レーザ発振手段で構成し、記録情報の書込みを非接触で実行することを特徴とする請求項1又は2に記載の再利用可能な搬送容器に貼付されたラベルの記録情報更新装置。
【請求項5】
再利用可能な搬送容器に貼付された可逆感熱紙で構成されるラベルの記録情報更新方法であって、
前記搬送容器が搬送される物流システムのコンベアの近傍に沿って、消去手段及び書込み手段を配置し、前記コンベア上の前記搬送容器の接近を検出して、
前記消去手段によって、前記ラベルの古い記録情報を消去するステップと、
前記書込み手段によって、前記ラベルへ新しい記録情報を書込むステップと、
を含むことを特徴とするラベルの記録情報更新方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−231647(P2006−231647A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−48220(P2005−48220)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(502380361)トーヨーカネツソリューションズ株式会社 (50)
【Fターム(参考)】